お祭や祝い事など特別な「ハレ」の日と、普段の生活を区別して暮らしてきた日本人。
「ハレ」の日にはめいっぱい華やかに、その分「ケ」の日々は質素に。
これがかつてのスタンダードだったようですが、私たちの生活にはなんだかしっくり来ません。
日常の中に「ハレ」の要素があったらきっと楽しいし、逆にハレの日だってそんなに形式張って、しきたりを守らなくてもいいのかもしれない。
私たちの暮らしの中で、ハレとケの境界線は昔よりも曖昧になってきているように思います。
現代の私たちにとっての身近な「ハレ」の日といえば、結婚式もそのひとつ。
おめでたいお知らせを聞くと嬉しいものですよね。でもそんなときに迷うのが、結婚祝いの贈り物。
かつて贈られることが多かったという華美な伝統工芸品は、なかなか普段は使いにくいもの。私たちの世代では、実用的なアイテムを贈るのが主流になりつつあるように思います。
だけどやっぱり、「ハレ」の意味が込められたものを贈りたい。とはいえ、日常使いできるようなデザイン性も捨てがたい‥‥
そこで、こんな素敵な商品がありました。
毎日使いたくなる、水引の有田焼タンブラー
真っ白なボディに華やかな絵付けから「白い金」と呼ばれ愛されてきた有田焼。
華美な美術品といったイメージも強い有田焼は、結婚式のお祝い品や引出物としても用いられてきました。
しかしこれらの商品は、現代の私たちの生活に取り入れるのには、少々馴染みにくいつくりであるのも事実。
そこで、有田焼の専門商社であるヤマト陶磁器の山口武之さんが考案したのがこちらです。
お祝いのものに添える「熨斗(のし)」をイメージし、立体的な水引のモチーフが浮かび上がる絵付けがポイントです。
これは「一珍(いっちん)」という有田の伝統技法から生まれたもの。化粧土を細い針穴から絞り出しながら絵を描く、技術が求められる技法です。ひとつひとつが、熟練の職人さんによって手描きされています。
有田焼らしい華やかさと、水引の持つめでたさを持ちながらも、現代のライフスタイルに合ったシンプルなデザインで、日々の暮らしにも取り入れやすそうです。
また、タンブラー型なのもうれしいところ。
なめらかな白磁の飲み口で、冷たいお茶やビールも美味しくいただけます。
夫婦茶碗を贈るような感覚で、2人の「ハレ」の思い出を、日常の「ケ」にもさりげなく肩肘張らずに。
そんな、「これからのハレとケ」のご提案でした。
*こちらは、2018年5月19日の記事を再編集して公開しました