パラレルキャリアで伝統工芸に挑む。異色ユニット「仕立屋と職人」に密着

自らを「金髪女とひげロン毛」と称して伝統工芸の世界に挑む、ちょっと変わったユニットがあります。

ユニット名は「仕立屋と職人」。

「金髪女」ことワタナベユカリさんは縫製のプロ。

夏にお会いした時は涼しげな「銀髪」でした
夏にお会いした時は涼しげな「銀髪」でした

「ひげロン毛」こと石井挙之さんはグラフィックデザイナー。

石井さん

「僕らみたいなコンビニの明かりが似合いそうな人間が、伝統工芸の世界を『こんな面白いんだよ』って近い人たちに伝えられたら、すごく強いと思うんです」

関東出身の二人が現在住むのは滋賀県長浜市木之本町。「ある目的」を持って2017年から活動拠点をこの町に移しました。ローカルやナチュラルといった形容詞の真逆を行くようなファッションも、あえて貫いているといいます。

仕立屋と職人

ユニット名を染め抜いた事務所の暖簾をくぐって、そのユニークな取り組みの一端を覗かせてもらいました。

仕立屋と職人

パラレルキャリア×伝統工芸

「仕立屋と職人」は4人のメンバーで構成されています。

右下から時計回りに石井さん、ユカリさん、堀出さん、古澤さん
右下から時計回りに石井さん、ユカリさん、堀出さん、古澤さん

工芸産地に住まい、時に職人に弟子入りしてものづくりを担当するユカリさんと、情報整理やデザインを手がける石井さん。

そして東京に拠点を置き、二人の体感知やアイディアを事業に組み立てる古澤さん、出来上がったアイテムの販路を開拓する堀出さん。

実はメンバーの4人とも、フリーランスや会社勤めなど別の仕事を持っています。いわばパラレルキャリアとして「仕立屋と職人」を立ち上げ、伝統工芸の世界に携わっているのです。

お互いが役割分担をしながら今年10月には、取り組み第一弾である福島県郡山市の伝統工芸、三春張子のジュエリーブランド「harico」をリリース。

harico

このharicoをともに制作する「デコ屋敷本家 大黒屋」さんとの出会いこそ、「仕立屋と職人」立ち上げのきっかけでした。

はじまりは福島県郡山市。職人への「弟子入り」

2016年10月。都内のデザイン会社に勤めたあと各地の地域おこしプロジェクトや留学など、自身の活動のあり方を模索してきた石井さんは、福島県郡山市にいました。

目的は、クリエイターが地域に滞在しながら地域の問題解決に取り組むというイベントへの参加。そのホームステイ先が「デコ屋敷本家 大黒屋」 (以下、大黒屋) さんでした。

大黒屋

「デコ屋敷」は、和紙を使った張子のデコ(=人形)を300年以上作り続けてきた集落。中でも21代続く「大黒屋」で1ヶ月、石井さんは職人一家と寝食を共にします。

そこに、石井さんの滞在中の制作を手伝うため旧友のユカリさんが合流。

大黒屋21代目の橋本さんと交流を深めていく中で、「職人として胸を張れるような作業着が欲しかったが、頼み先がわからない」との悩みを耳にします。二人はすぐに「僕たちが作ります」と手をあげました。

「私はもともと縫製の技術は持っていましたが、職人の作業着を作るのは初めてです。

自分の仕事に誇りを持てるような、かっこよく機能的な作業着にしたい。

だから職人の仕事を理解するために、弟子入りさせてもらったんです」

これこそが、現在の活動にも生きる「仕立屋と職人」の特徴のひとつ。職人と至近距離でものづくりを理解すること。

イベント終了後も再び大黒屋に戻り、約4ヶ月間本当に弟子入りして、職人さんたちと一緒に働きました。

完成した作業着は、福島伝統の会津木綿を使用し、用途に合わせて作業用と外着用のリバーシブルに。留め具に洗える張子ボタンを開発したことが、のちのちジュエリーブランドの種となった
完成した作業着は、福島伝統の会津木綿を使用し、用途に合わせて作業用と外着用のリバーシブルに。留め具に洗える張子ボタンを開発したことが、のちのちジュエリーブランドの種となった

夢中になったのは、ネット検索で絶対に引っかからないもの

「一緒に働くほど、聞けば聞くほど、職人さんの話って本当に面白いんですよ。その人まるごと作っているものを好きになるんです」

大黒屋

「そういう『実際のところ』って、ネット検索では絶対に出てこない。これをうまく世の中に伝えていけたら、衰退産業と言われている伝統工芸の世界にもきっとファンが増えます。僕らが好きになったように。

今回は作業着を作るという形での恩返しだったけれど、それでおしまいにしていいんだろうか?

僕らよそ者の視点と、縫製やデザインの技術で、もっともっとできることがあるんじゃないか。作業着を試作しながら、そんな話をするようになりました」

職人の生き様を仕立てる!

この頃から東京で二人の相談に乗っていたのが、石井さんの留学時代の友人、古澤さん。

自身は東京のデザイン会社でサービスデザインの仕事をする傍ら、福島で伝統工芸の世界にのめり込んでいく二人と長い長い議論を何度も重ね、ついに自分たちのやりたいことをピタリと言い当てる言葉を掘り当てました。

「私たちのやりたいことは、職人の生き様を仕立てること」

「仕立屋と職人」というユニット名は、ここから来ています。

「ものを作ることがゴールじゃない。自分たちがものづくりの現場で面白い!と思った職人の生き様を、世の中の人に伝わるカタチに仕立てて届けることが私たちのミッションなんだ」

こうして、作業着を完成させたあとも大黒屋と取り組みを続けていくうちに、商品の販路開拓を得意とする掘出さんも活動に合流。

4人になった「仕立屋と職人」が1年半をかけて完成させたのが、300年以上続く張子に「身につける」というコンセプトを与えた、軽くて立体感のある和紙のジュエリーブランドでした。

haricoの「TSUBOMI」シリーズ。裏表で2配色になっている
haricoの「TSUBOMI」シリーズ。裏表で2配色になっている

「福島×張子」の次は、「滋賀×シルク産業」へ

彼らの活動のもうひとつの特徴が、拠点を移動しながら活動すること。

「伝統工芸の伝道師」を掲げ、haricoの開発を続けながら2017年夏、次なる職人の生き様を仕立てるために新天地に拠点を移します。

仕立屋と職人

取り組み第二弾の場所に選んだのが、滋賀県長浜市。250年続くシルク産業の一大産地です。

郡山での取り組みは偶然の出会いから始まりましたが、第二弾はゼロからのスタート。

縁もゆかりもない土地に、どうやって根付き、どのように地域のものづくりと関わっていくのか。

現在の長浜の事務所の様子
現在の長浜の事務所の様子

「ではこれから、僕たちも取材させてもらった織物工場に行ってみましょう」

拠点を移してからちょうど1年ほど経った2018年夏、彼らが今まさに向き合っている長浜のフィールドに、私もお邪魔してきました。

わざわざ二足のわらじをはいて、なぜ、どうやって伝統工芸の世界に取り組むのか。

その答えはメンバーそれぞれにどうやら違うようです。

作り手でも売り手でも行政でもコンサルでもない「仕立屋と職人」の現在の活動と、その先に4人それぞれが描く展望のお話は、次回に続きます。

<掲載商品>
harico (仕立屋と職人xデコ屋敷本家大黒屋)

<取材協力>
仕立屋と職人
http://shitateya-to-shokunin.jp/

文:尾島可奈子

隈研吾が獺祭のためにつくった「夢のような」照明、発売へ。

建築家、隈研吾。

新国立競技場の設計に携わるなど国内外で活躍する建築家が、ある日本の酒造のために設計した照明が今年、特別に一般販売されます。手がけた建築の照明を販売することは、数々のプロジェクトの中でも初の試みです。

照明の名は「酒吊りライト」。

酒吊りライト

山口県東部、岩国市の「獺祭 (だっさい) ストア 本社蔵」のためにつくられました。

酒吊りライト

ここは、お米を磨き抜いた味わいで一躍、世界的人気となった銘酒「獺祭」の製造元である、旭酒造の本社兼店舗。

獺祭の試飲・購入ができる場所として、2016年に隈研吾建築都市設計事務所 (以下、隈研吾建築事務所) が設計しました。

銘酒「獺祭」の製造元である、旭酒造の本社兼店舗

しかし、わずか2年後の2018年夏、西日本を襲った集中豪雨で被災。

2018年夏、西日本を襲った集中豪雨で被災した旭酒造本社

店舗は一時腰の高さまで浸水し、営業中止を余儀なくされます。

2018年夏、西日本を襲った集中豪雨で被災した旭酒造本社
2018年夏、西日本を襲った集中豪雨で被災した旭酒造本社

「設計した建築が被災するのは、僕にとっても初めての経験でした」

建築家・隈研吾

隈研吾建築事務所は店舗の復旧に全面協力するとともに、製造元である旭酒造にひとつの提案をします。

「酒吊りライトを販売して、その売り上げを義捐金として復興活動に寄付するのはどうでしょうか」

こうして始まった酒吊りライトプロジェクト。

なぜシンプルに義捐金を送るのではなく、ライトの販売を通じた支援の形をとったのか。

支援の象徴として選んだ「酒吊りライト」とは、一体どんなものなのか。

隈研吾さんご本人と、獺祭ストア設計のプロジェクト担当で支援の発起人の一人である隈研吾建築事務所の堀木俊さんに、お話を伺いました。

夢のような家を目指して

まず、もともとの店舗はどのような経緯で作られたのでしょうか。

「獺祭ストアは昔、旭酒造の会長一家のご自宅だった建物です。築100年以上になる古民家で、獺祭の製造工場が隣接しています。

山をずっと登った先にあって、そばをきれいな川が流れていて」

旭酒造本社リニューアル前の様子
リニューアル前の様子

「そういう美しい谷あいにたつ『夢のような家』のイメージがはじめに浮かんで、設計がはじまりました」

清らかな環境の中、米粒を徹底的に磨き上げることで生まれる、今までにない味わいの日本酒。

そんな獺祭の澄んだ世界観を体現するべく、外装は木、内装は和紙という、たった2つの素材だけで構成するストアが誕生しました。

旭酒造 本社兼店舗の外装
旭酒造本社兼店舗の外装
店内の酒吊りライト
獺祭独特のお米の活かし方を表現するため、磨かれた米を漉き込んだ和紙の壁
獺祭独特のお米の活かし方を表現するため、磨かれた米を漉き込んだ和紙の壁

照明は、建築の「ハート」

ストアの中でもひときわ目を引くのが、やわらかに室内を照らす酒吊りライトです。この店舗のためだけに、ゼロから構想して作られました。

店内の様子

そもそも設計する建築の照明まで手がけることは、よくあるのでしょうか。

「そうですね。僕らにとって『光』はその空間の世界観を決定づける、とても大事なものです。

そういう意味で照明は、建築のハートみたいな部分。出来るだけ自分たちで作るようにしています」

建築家・隈研吾

では、どんな思いで獺祭ストアの「ハート」は作られたのか。お話を伺うと、素材、形、技術、3つのポイントが浮かび上がってきました。

【素材:和紙】そこにあるだけで光の質を変えるもの

「酒吊りライト」の素材には内壁と同じく和紙が使われています。手がける建築は常に「形からでなく、マテリアルから発想する」という隈さん。和紙の選択には、どんな狙いがあるのでしょうか。

「和紙は不思議な素材で、ただ乳白な膜というだけではないんですね。

トランスルーセント (半透明) な素材って他にもすりガラスとか色々あるけれども、和紙はなぜかそこに置いただけで、光の質を変える力があります」

建築家・隈研吾

「なぜそういう作用を僕らに及ぼすかと言えば、やっぱり僕らの中に、和紙と暮らしてきた記憶が埋め込まれているからなんじゃないかなと思います。

内側から発光する和紙の壁
内側から発光する和紙の壁

「最初にイメージした夢のような家、その内装を繭のような空間にしたいと思ったときに、和紙はぴったりの素材だったんです」

【形:袋吊り】製造プロセスに宿る、削ぎ落とされたデザイン

もう一つ特徴的なのが、何と言ってもこのしずくのような形状です。

酒吊りライト

「酒吊り」という名前の由来にもなっているこの形は、古い日本酒づくりの工程にヒントを得たそう。

「『袋吊り』という工程で使う、もろみを入れてお酒を絞り出す袋をモチーフにしているのですが、僕らはそうしたものづくりのプロセスに普段からとても興味を持っています」

「例えば何かを貯蔵するための樽や加工のための道具など、プロセスの中にあるデザインってとてもかっこいいんですね。

作っているものの臨場感や、削ぎ落とされたいいデザインがそこに宿っている。これまでの案件でも設計のヒントになったことがありました。

今回もそうした素材がないか調べる中で出会ったのが、この袋吊りです」

酒吊りライトの設計図
酒吊りライトの設計図

「実は特殊な作り方をしているのですが、今見ても、やっぱりすごい技術だなと思いますね。本当にシームレスに作られているもの」

建築家・隈研吾と酒吊りライト

隈さんが改めて感心するように、このライト、照明に詳しい人から見てもとても珍しい構造をしているそうです。

立体を支えるために通常入っているはずの骨組みが、一切使われていないのです。

【技術:立体漉和紙】時代を超えて長生きするものに

酒吊りライトに使われているのは「立体漉和紙」という技術。プロジェクト担当の堀木さんが全国から探し出したそうです。

隈さんのもとで獺祭ストア設計プロジェクトを担当した堀木さん
隈さんのもとで獺祭ストア設計プロジェクトを担当した堀木さん

「設計の初期段階では竹ひごを入れる案も出ていましたが、それだとライトにも空間にも影ができてしまいます」

隈さんのもとで獺祭ストア設計プロジェクトを担当した堀木さん

「骨組みを入れずに作れる方法がないかとあちこちに当たっていったら、偶然にもお隣の鳥取県にあったんですね。しかも隈が以前に仕事で訪れたことのあった、青谷 (あおや) という土地のメーカーさんでした」

全国でも珍しいという「立体漉和紙」の技術を持っていたのは、谷口・青谷和紙さん。

谷口・青谷和紙の工場
谷口・青谷和紙の作業風景

鳥取で1000年以上前から受け継がれる「因州和紙」の産地、青谷町の和紙メーカーです。

「フレームがないほうが和紙の暖かみが一番表せます。三次元のものづくりができる谷口さんの技術が活かせれば、それが実現できる。

谷口さんもとても親身に相談に乗ってくれて、製造できる最大のサイズに挑戦して作ってくれました」

谷口・青谷和紙の作業風景
その立体成形の技法は、門外不出なのだとか

こうした現代の技術を駆使した新しいものづくりを、隈さんは大切にしていると言います。

「和紙はずっと昔からある、いわば人間の友達みたいな素材。そこに現代だからこそのテイストを与えると、そのものは時代を超えて長生きするものになるんじゃないかなと思っています」

建築家・隈研吾

「単にノスタルジックにものを作るのではなく、現代の我々だからこそできることを埋め込みたいという思いはいつも持っていますね」

記憶に残り続ける、復興の明かりに

こうして完成した酒吊りライトの灯る空間はしかし、わずか2年で自然の脅威の前に、失われることに。

被災した建物

なぜ、義捐金を送るのでなく、ライトの売り上げを寄付する、という支援の形をとったのでしょうか。

「もちろんシンプルにお金を渡すという支援の形もできますが、ものを介することで獺祭ストアや今年あった災害のことが、ライトと一緒に世の中の人の記憶に、残り続けるのではないかと考えたからです」

建築家・隈研吾

「思い出すきっかけになれば、例えば今再開している獺祭ストアに、今度行ってみようという人が現れるかもしれない。

あの美しい風景や復興の取組みが、食卓やリビングに灯る酒吊りライトの明かりとともに人の記憶の中に刻印されていけば、それは素晴らしいことだなと思っています。

建築というのはその場の人をハッピーにするだけでなく、遠くの場所や人とも絆が築けたら本懐ですから」

建築家・隈研吾

この取組みを旭酒造も快諾し、支援プロジェクトが始動。ライトは注文が入ってから、谷口・青谷和紙さんが一点ずつ生産することになりました。

流通は、日本の工芸をベースにした生活雑貨メーカーの中川政七商店に依頼。同社のオンラインショップでの限定販売が決まりました。

全国の家々に灯る明かりはたとえ離れていても、被災地域の復興を照らします。

<酒吊りライト 限定販売>

酒吊りライト

■取り扱い:中川政七商店 公式オンラインショップ (サイズ大・小の2種類あり)
サイズ大 商品ページ
サイズ小 商品ページ
*売上金から実費 (ライト制作にかかる材料・加工費とお客様への送料) を引いたものが平成30年7月豪雨災害義援金として赤十字に寄付されます。

<取材協力> *掲載順
隈研吾建築都市設計事務所
http://kkaa.co.jp/

旭酒造株式会社 「獺祭ストア 本社蔵」
山口県岩国市周東町獺越2128
0827-86-0800
https://www.asahishuzo.ne.jp/
※「獺祭ストア 本社蔵」は9月より営業を再開しています。

谷口・青谷和紙株式会社
http://www.aoyawashi.co.jp/

文:尾島可奈子
写真:mitsugu uehara、Mitsumasa Fujitsuka、隈研吾建築都市設計事務所、谷口・青谷和紙株式会社

まるで生きているよう。100年ぶりに蘇った「ある女性たち」を訪ねて、秋の京都へ

秋の京都。

寺社へのお参りと紅葉を一緒に楽しむ人も多いかもしれません。

その日伺ったのは書院から眺める紅葉が美しいと評判の眞如寺 (しんにょじ) 。

金閣寺、銀閣寺とともに臨済宗大本山相国寺の山外塔頭 (さんがいたっちゅう。本山の敷地外にある子院) を成す眞如寺 (しんにょじ) 。京都市にあり、五山十刹のうち十刹のひとつに数えられた古刹です
金閣寺、銀閣寺とともに臨済宗大本山相国寺の山外塔頭 (さんがいたっちゅう。本山の敷地外にある子院) を成す眞如寺 (しんにょじ) 。京都市にあり、五山十刹のうち十刹のひとつに数えられた古刹です

実は紅葉ではなく、取材で知った「ある女性」をどうしても拝見したくて、お寺にお邪魔していました。

ある女性たちを追って、京都・眞如寺へ

私が知っていた「ある女性」の、元の姿がこちら。

真如寺

眞如寺が所蔵しているお像で、お寺にゆかりのある尼僧さんの生前の姿を表したものとのこと。17世紀に作られたと考えられています。

しかしほんの数年前までは、写真のように表面が剥離し、女性か男性かも判別がしづらくなっていました。

そしてその日、お寺で再会した姿がこちら。

眞如寺

お顔はやわらかな肌色に、女性らしいふっくらとした表情。見違えるように生まれ変わっています。

今にもなにか声をかけられそうな雰囲気です。

眞如寺

100年ぶりの再会

実はこちらのお像、およそ100年ぶりの大修理を終えたばかり。作られた当初に近い姿に蘇りました。

手がけたのは京都にある「公益財団法人 美術院」。日本で唯一国宝の仏像修理も許されている、文化財修理のプロ集団です。

美術院

実は眞如寺には尼僧像が合計4体あり、今お寺にある3体の修繕を終えて最後の1体に取り掛かっている現場に、先日取材していた美術院で出会ったのでした。

修理を終えた別のお像
修理を終えた別のお像
お一人ずつ、人柄まで感じとられるような違った雰囲気です
お一人ずつ、人柄まで感じとられるような違った雰囲気です

美術院での取材記事はこちら:「数百年前の仏像を目にできるのは、このプロ集団のおかげです」

「修理は、ここではなくお寺に戻られたときがやっと完成ですね。

あるべき場所に、あるべき姿でお戻しできると、お像がどこかホッとされたようなお顔に見えるんです。その瞬間が一番安心しますね」

こちらが現在修理中の最後の1体
こちらが現在修理中の最後の1体

4体の修理を任されてきた技師の高田さんの言葉を聞いて、ぜひ修理を終えたお像も拝見したい!と訪れた眞如寺。

尼僧像が安置されている仏殿。通常中には入れず、外から拝観します
尼僧像が安置されているのは御本尊と同じ仏殿の中。通常中には入れず外から拝観しますが、今回は特別に、間近で見せていただけることに

修理前の姿を写真で拝見した分、一層目の前の姿が生き生きと映ります。

美術院で見せていただいた、修理前の様子
美術院で見せていただいた、修理前の様子

修理までの道のり

こうした修理にはもちろん、費用も時間もかかります。

眞如寺の修理プロジェクトも、2014年に始まってから1年に1体ずつのペースで修復が行われて来ました。

お像の数が多ければなおさら、気軽に頼めるものでもありません。4体連続して大々的な修理に出すことができたのは「色々なご縁が重なったおかげ」だと、ご住職の江上さんは語ります。

ご住職の江上正道さん
ご住職の江上正道さん

「この修理は、全国的な尼門跡寺院の文化財修復プロジェクトの一環で行われています。

皇室の皇女さまや公家の女性が出家されたお寺を尼門跡寺院と呼ぶのですが、そういったお寺の文化財を修復して残していこうという取り組みです」

主体となっているのは東京上野にある「公益財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団」
プロジェクトは東京上野にある「公益財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団」が運営

眞如寺は尼門跡寺院ではありませんが、縁あって宝鏡寺というお寺で出家された歴代門跡の菩提所となっています。

所蔵する像はいずれもその方々が亡くなった後に生前を偲んで彫られたもの。尼僧像ばかり4体も一つのお寺にあるということは、全国的にも珍しいそうです。

仏殿の右側に、尼僧像が4体並んでいます
仏殿の右側に、尼僧像が4体並びます

以前からお寺とお付き合いのあった研究機関のすすめで申請したところ、お像の希少性が認められ、特例的に修理が認められることに。

さらに、費用面は主旨に賛同した民間企業がバックアップ。

こうして、晴れて美術院に修理依頼が届けられ、4年間をかけた修理プロジェクトが始まりました。

作られた当初の姿を目指して

「修理をお願いしてわかったことですが、前回の明治期の修理があまりよくなかったようで、修理せずに良い状態が保てる期間を過ぎてしまっていたようなんですね」

これを美術院では、わずかに残されていた当初の彩色層を元に、作られた当時の色彩に復元。一部欠損していた袈裟の模様なども、肖像画を参考にしながら再現していきました。

えりあわせの部分に、元々の色彩が残されていました。ここに近づけるため、白い板の上で色を試作していきます
えりあわせの部分に、元々の色彩が残されていました。ここに近づけるため、白い板の上で色を試作していきます
こうした肖像画も復元の貴重な手がかりです
こうした肖像画も復元の貴重な手がかりです

「1体ずつ戻って来られたときには、元々はこんなお姿だったのかと、感動いたしました。

お顔の仕上げはお化粧のようなものですから、女性の技師さんに4体ともやっていただけて、本当にありがたいことと感じています」

「今」を生きる文化財

最後の1体は仙寿院宮 (せんじゅいんのみや) さまという、江戸時代の尼僧の方の坐像。来年3月の完成を控えます。

「仙寿院宮さまは、若くして亡くなられた皇女さまです。

その菩提を厚く弔うようにと父である後水尾 (ごみずのお) 天皇が望まれたことが、江戸初期の眞如寺復興の礎にもなっています。私どもにとって、とても大切なお方です。

実は、仙寿院宮さまとお隣に並ぶ尼僧さんとは姉妹関係にあって、袈裟の模様がお揃いなんです。無事4体揃われる日が今から楽しみです」

修復中の袈裟部分
修復中の袈裟部分
眞如寺
こちらがお隣の尼僧像

紅葉シーズンを迎え、眞如寺では今年から秋の特別拝観を始めるそうです。

仏殿の中は立ち入れませんが、外から少し、尼僧像の姿も見ることができます。また期間中は生前、尼僧さんたちの目を楽しませるために描かれたと考えられている、美しい花鳥の屏風絵が公開されます。

客殿にある、江戸時代後期に活躍した画家、原 在中(はら ざいちゅう)による襖絵
客殿にある、江戸時代後期に活躍した画家、原 在中 (はら・ざいちゅう) による襖絵

お寺というと御釈迦様などいわゆる「仏像」を拝してお参りする、というイメージですが、ともに並ぶ小さなお像やしつらえにも物語がさまざま。

文化財は「過去に作られたもの」ではなく、それを絶やさぬよう誰かの手によって守り継がれている「今」のものなのだと思わせてくれる出会いでした。

紅葉を愛でにお参りに行く機会があったら、周りのものにも目を向けてみると、面白い物語に出会えるかもしれません。

<取材協力>*掲載順
眞如寺
京都市北区等持院北町61
https://shinnyo-ji.com
*秋の特別拝観は11月10日〜12月9日まで。

公益財団法人 美術院
http://www.bijyutsuin.or.jp/

文:尾島可奈子
写真:木村正史

知るほど全部ほしくなる。フィリップ・ワイズベッカーの描く「日本の郷土玩具」が九谷焼の絵皿に。

フランス人アーティストが出会った日本の郷土玩具。

JR東日本、資生堂やとらやなど、日本の企業広告や書籍の挿画も数多く手がけるフィリップ・ワイズベッカーが1年をかけて、全国の郷土玩具の作り手を訪ねる旅に出ました。

ワイズベッカー

そして2018年秋、旅の道中に描いた12枚のデッサンから、新しいワイズベッカー作品が生まれることに。

十二支のオリジナルイラスト(中川政七商店×フィリップ・ワイズベッカー)

日本の十二支の郷土玩具が描かれた、愛らしい12枚の飾り皿です。

ワイズベッカー 九谷焼 大皿
ワイズベッカー 九谷焼 大皿

器を企画したのは「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げる生活雑貨メーカーの中川政七商店。

オファーに応えたのは石川県を代表する伝統工芸品「九谷焼」の窯元、上出長右衛門窯 (かみでちょうえもんがま) 。

海外アーティストが描く郷土玩具の世界観を、日本の工芸メーカーはどのような器で再現したのか。

洋の東西を超えたものづくりの現場にお邪魔してきました。

創業140年を迎える九谷焼の窯元、上出長右衛門窯

石川県南部を中心に生産され、国の伝統的工芸品にも指定されている九谷焼 (くたにやき) 。

その特徴は美しい藍色の染付 (そめつけ) と、九谷五彩と呼ばれる「青、黄、紫、紺青、赤」の鮮やかな絵付にあります。

上出長右衛門窯は1879年 (明治12年) 創業。まもなく創業140年を迎える、石川県能美市にある九谷焼の老舗です。

九谷古来の技法を生かし割烹食器をメインに器を作り続けてきましたが、近年では世界的デザイナー、ハイメ・アジョンとのコラボや九谷焼の転写技術を生かしたブランド「KUTANI SEAL」を立ち上げるなど (現在は合同会社上出瓷藝が運営) 、従来の九谷焼のイメージを刷新する取組みが注目を集めています。

石川県能美市にある九谷焼の老舗、「上出長右衛門窯(かみでちょうえもんがま)」の徳利
スペイン人デザイナー、ハイメ・アジョンとともに開発した徳利
こちらは来年の干支、亥の絵柄を転写シールであしらった「KUTANI SEAL 干支豆皿セット 亥」
こちらは来年の干支、亥の絵柄を転写シールであしらった「KUTANI SEAL 干支豆皿セット 亥」

その旗手こそが6代目にあたる上出惠悟 (かみで・けいご) さん。

上出さんは東京藝術大学在学中に制作した、九谷焼作品『甘蕉 房 色絵梅文』が評判を呼び、のちに金沢21世紀美術館に収蔵されるという異色の経歴の持ち主でもあります。

360年続く九谷焼の伝統。ワイズベッカーさんが描く日本の郷土玩具。上出さん率いる上出長右衛門窯。

それぞれがどう交わり、12枚の飾り皿は生まれたのか。上出さんご本人に伺います。

フィリップ・ワイズベッカーから見た日本の郷土玩具。上出惠悟から見たフィリップ・ワイズベッカー

——十二支の絵をはじめて見たときは、どんな印象でしたか?

「ワイズベッカーさんの手がけた作品は前々から見て知っていたのですが、今回の十二支を見て、改めて改めて独特な遠近感のある表現のまとめ方がユニークだなと思いました。

ワイズベッカーさんにしかない線の出し方で、一体どういう紙にどんな道具で描いているんだろうと思います。

そういうワイズベッカーさんの線で、日本の郷土玩具が描かれているところのギャップをすごく面白く感じました。

例えば赤べこは、多くの人が一番見慣れている郷土玩具だと思うんですけど、ワイズベッカーさんが描くとこういう風になるんだ、みたいな発見があって面白いですよね」

「会津張子の赤べこ」を求めて、福島県にある野沢民芸を訪ねた際のスケッチ
「会津張子の赤べこ」を求めて、福島県にある野沢民芸を訪ねた際のスケッチ

——再現の上で大事にしたことはありますか?

「基本的には割烹食器をメインに作っているので、小鉢とか向付と言われるような、小さな器に細かな絵付をする仕事が普段は多いんです。

でも今回は大きなお皿にとてもシンプルな線で構成されたワイズベッカーさんの絵を載せるので、そのまま描くと間が抜けちゃうんですね。

シンプルな線と独特な間の取り方みたいなものがワイズベッカーさんの絵の大きな特徴だと思うので、その魅力をどこまでお皿に手描きで落とし込めるかが、普段にはない難しさでした」

絵と文様の違い

これまでもスペイン人デザイナー、ハイメ・アジョンとのコラボ商品など、海外アーティストとのものづくり実績がある上出長右衛門窯。しかし今回の飾り皿は「経験は活かされているけれど、これまでとまたちょっと違いました」と上出さんは語ります。

「絵と文様って違うんです。絵は多分その人にしか描けなくて、誰でも描けるのが文様。

今日本に残っている文様って、青海波、麻の葉みたいなパターンや家紋もそうですが、要は誰でも描けるからこそ残っているんだと思います。

けれど絵になるとその人自身のセンスに依るところがとても大きいので、別の人が描くと全く別物になっちゃう可能性がある。

ハイメ・アジョンの時は本人と直接デザインを詰めていった結果、絵よりも文様のようになりましたが、今回はワイズベッカーさんのやりたいことを感じ取って、完成された絵をいかに忠実に再現するか、に徹して取り組みました。その分、僕らの技術が試されるものでもありました」

この重役を任されたのが、熟練の絵付師である井上さん。

絵付師の井上さん

絵付の作業場にはアップテンポなBGMが流れる中、黙々と作業する背中は目の前のひと筆に集中する緊張感を常にまとっていました。

流れるような手さばき、筆さばきはどこか神聖さすら感じられるほど。その様子は見ていただいた方が早いでしょう。ワイズベッカーさんの絵が立体的な飾り皿に生きづいていく過程を動画に納めました。

九谷五彩も超えて

井上さんが見せてくれたのは、器作りのうち「上絵付」という工程。

釉薬をかける前に彩色する「染付 (下絵付) 」に対して、釉薬をかけた後に色を施すのが「上絵付」。

ガラス質の絵の具で立体的に彩られる九谷五彩は大変美しいですが、絵の具によって特性が微妙に異なるため、そのことを頭に入れながら何度か焼き直しをして色ムラを減らすなど、時間をかけて完成度を高めて行きます。

焼成の温度による色の変化を示した見本皿
焼成の温度による色の変化を示した見本皿

これを十二支すべてに行うのだと思うと‥‥途方もない道のりを経て生まれてきた器に、一層の愛着がわいてきます。

しかしこの飾り皿、大変な手間暇をかけた分の収穫も大きかったそうです。

「九谷焼って色を混ぜることを普段あまりしないんです。でもワイズベッカーさんの原画に近い色を再現する過程で、いろんな色をテストさせてもらって、そこから生まれた色が他のアイテムに活用できたケースもありました」

赤べこの「赤」を再現するためのサンプルの数々
赤べこの「赤」を再現するためのサンプルの数々

今まで使ってこなかったような中間色を、自分たちで調合しながら作れたというのはいい経験だったと思います」

伝統的な九谷五彩の枠も超え、何度もサンプルを作りながらようやく完成した12枚の飾り皿。上出さんのギャラリーにずらりと勢揃いした様子がこちらです。

ワイズベッカー 大皿 上出長右衛門窯
ワイズベッカー 大皿 上出長右衛門窯
今年の干支、戌の隣に控える亥の飾り皿
今年の干支、戌の隣に控える亥の飾り皿
先ほど井上さんが絵付していた「伏見人形の唐辛子ねずみ」柄
先ほど井上さんが絵付していた「伏見人形の唐辛子ねずみ」柄

「ワイズベッカーさんの筆のタッチや手のストロークを、そのままそっくり写すことはできません。それでも見た方や触った方、買われた方がうちの職人が描いた絵の中に、ワイズベッカーさんらしさみたいなものを見つけてもらえるとすごく嬉しいです」

飾り皿の販売は中川政七商店のオンラインショップでのみ行われますが、11月から1月まで、4つの直営店で原画巡回展が開催されます。機会があったらぜひ間近で、その一筆一筆の息遣いを感じてみてくださいね。

<掲載商品>

「ワイズベッカー 九谷焼 大皿」 (中川政七商店)
*絵付以外の工程も網羅したものづくり動画を特別公開しています。

<原画巡回展>

下記4店舗で原画巡回展を行います。

2018/11/7~11/20 日本市 日本橋店
2018/11/28~12/11 中川政七商店 二子玉ライズ店
2018/12/19~12/31中川政七商店 GINZA SIX店
2018/1/4~1/15 中川政七商店 ルクアイーレ店

<取材協力>
上出長右衛門窯
石川県能美市吉光町ホ65
0761-57-3344
http://www.choemon.com

文:尾島可奈子

こもガク × 大日本市菰野博覧会を120%楽しむ、公式アプリ「さんちの手帖」の使い方

いよいよ本日スタート!こもガク × 大日本市菰野博覧会とは?

2018年10月12日(金)〜10月14日(日)の3日間に渡って、工芸産地のお祭りが行われます!

場所は萬古焼の産地、三重県菰野町。

菰野町

お祭りの名は「こもガク × 大日本市菰野博覧会」。

「こもガク」とは地元の事業者による、塾とマルシェを組み合わせた体験型のイベントです。「コモノを知って、コモノを学ぶ」をコンセプトに開催されます。

一方の「大日本市博覧会」は、「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げる中川政七商店が、100年後の「工芸大国・日本」を目指し2016年より開始した産地巡礼型の工芸の祭典。

その両者の想いが合致し、2018年は「こもガク × 大日本市菰野博覧会」が開催されることになりました!

こもガク菰野博覧会
特設ページはこちらからどうぞ!

全32ヶ所の見どころがアプリの中に

工房、ショップなどの見どころめぐりに欠かせないのが、公式ガイドアプリ「さんちの手帖」。32ヶ所すべての見どころ情報をアプリで見ることができます。

 

app store さんちの手帖
google play さんちの手帖

 

アプリを使って、どんな楽しみ方ができるのか。「こもガク × 大日本市菰野博覧会」を120%楽しむ、アプリの魅力と使い方をご紹介します!

見どころめぐりを、もっと楽しく便利に

地図を開けば、どの場所にどんな見どころがあるのか一目瞭然。

位置情報をオンにしてアプリを開くと、TOP画面「近くの読み物」タブから地図で見る機能が使えます
位置情報をオンにしてアプリを開くと、TOP画面「近くの読み物」タブから地図で見る機能が使えます

位置情報をオンにすると、自分の今いる位置から近いスポットを確認できます。

さらに、それぞれの見どころに近づくと、さんちの手帖オリジナルの「旅印 (たびいん) 」を獲得できる機能が。

無事に取れました!旅印ゲットの瞬間には「ポン!」という小気味良い音が。ぜひ通知音をオンにしてお楽しみください!

イベント期間中、このアプリで集めた旅印の数に応じて、先着で会場限定のプレゼントがもらえるのです!

旅印を集めてプレゼントをもらおう!

イベント中、集めた「旅印」の数に応じてもらえるプレゼントはこちら。この博覧会だけの豪華ラインナップです!

<プレゼントその1:旅印30個>
かもしか道具店のごはん鍋 3名様/日

かもしか道具店 土鍋

30の見どころを周り旅印を集めてくださった方には先着で、「かもしか道具店のごはん鍋」をプレゼント!

これからの季節、重宝すること間違いなしの土鍋!中川政七商店のお店でも人気の高い、菰野町が誇るかもしか道具店の土鍋をプレゼント。土鍋を手に入れて今年の冬を温かく過ごしてみてはいかがでしょうか。

<プレゼントその2: 旅印15個>
木綿湯布 10名様/日

木綿湯布

今年デビューの中川政七商店による新しい温泉土産「木綿湯布−もめんどうふ−」をプレゼント!

手ぬぐい片手に温泉街をぶらりとするもよし、菰野町の思い出として飾るのもよし、様々な使い方でお楽しみくださいね。

 

<プレゼントその3:旅印5個>
湯の山せんべい 丸缶 30名様/日

湯の花せんべい

昭和32年創業、菰野町の「日の出屋製菓」のおせんべい。サクサクと軽く、ほのかな甘さ独特の食感の昔懐かしい炭酸煎餅。

第19回全国菓子博覧会技術優秀賞も受賞している、菰野町のお菓子をプレゼント!

関連記事はこちら:「レトロかわいいパッケージに一目惚れ、日の出屋製菓の『湯の花せんべい』」

※ プレゼントの交換場所は、さんちブース(場所:菰野町町民センター) です。
※ こもガク × 大日本市菰野博覧会の期間 (2018年10月12日~14日) 以外に集められた旅印はプレゼント交換の対象にはなりません。

 

「さんちの手帖の使い方」

では、ここからは「旅印」の集め方など、具体的なアプリの使い方をご案内していきます。

 

 

<まず、アプリから博覧会の特設ページへ>

アプリをダウンロードして各見どころを訪ねると、「旅印」を獲得できることを知らせる通知が届きます。事前にアプリ画面から通知の許可をしておいてくださいね。

準備ができたら、まずはアプリのTOPページに設置された「こもガク × 大日本市菰野博覧会」特設バナーをタップ。

トップ画面、緑色のバナーが目印です
トップ画面、緑色のバナーが目印です

 

<見どころを探す>

特設ページの「見どころ」タブから、32ヶ所すべての見どころ情報を見ることができます。

特設ページが表示されたら、見どころタブをタップ。リストから更に気になる見どころをタップすると、詳しい情報がチェックできます!
特設ページが表示されたら、見どころタブをタップ。リストから更に気になる見どころをタップすると、詳しい情報がチェックできます!

イベントを楽しむほど、豪華プレゼントに1歩近づきます。ぜひ全制覇する気持ちで巡ってみてくださいね。

 

<「旅印」を取得する>

各見どころに近づくと、お知らせが届きます。お知らせをタップして旅印を取得しましょう!

アプリを持って歩いていたら、通知が来ました!すかさずタップすると、取得画面が現れるので「押印」ボタンを押しましょう
アプリを持って歩いていたら、通知が来ました!すかさずタップすると、取得画面が現れるので「押印」ボタンを押しましょう
無事に取れました!旅印ゲットの瞬間には「ポン!」という小気味良い音が。ぜひ通知音をオンにしてお楽しみください!
無事に取れました!旅印ゲットの瞬間には「ポン!」という小気味良い音が。ぜひ通知音をオンにしてお楽しみください!
さらに、旅印をタップすると、その見どころの詳細ページが閲覧できます。赤いスタンプマークが旅印獲得の印です!
さらに、旅印をタップすると、その見どころの詳細ページが閲覧できます。赤いスタンプマークが旅印獲得の印です!

通知を逃してしまったら‥‥

通知が消えてしまっても、アプリメニューの「訪問した見どころ」からも旅印を取得することができます

RENEW ×大日本市鯖江博覧会 中川政七商店
通知が消えてしまっても、「訪問した見どころ」からも旅印を取得することができます

 

<「旅印」を確認する>

獲得した「旅印」は、下のメニューの「旅印帖」で確認できます

こもガク × 大日本市菰野博覧会

※画像はイメージです

目指せ全制覇。ぜひふるってご参加下さい!

<Q & A>

Q:プレゼントはどこでもらえますか?

→ A.さんちブース(場所:菰野町町民センター)へお越しください

 

Q:近くにいるのに、旅印の通知がきません

→ A.位置情報サービスはオンになっていますか?また通知を許可していますか?
(左上メニューにある「通知設定」・「位置情報設定」をご確認ください)

 

Q:通知設定も位置情報設定もオンになっていますが、見どころにきても通知がきません

→ A.一度、該当の見どころから200メートル以上離れて再度近づいてみてください

 

Q:使い方がわからないので質問をしたいです

→ A.さんちブース(場所:菰野町町民センター)へお越しください

 

*お使いの端末によって、旅印が獲得できない場合がございます。ご不明な点がございましたら、さんちブースまでお越しください。

 

「さんちの手帖」ダウンロードはこちらから

app store さんちの手帖
google play さんちの手帖

 

美しすぎる工場見学。技術の粋を集めた「組子の家」がすごい

その部屋に入った瞬間、息をのむような景色が目の前に広がっていました。

指勘建具工芸

どうぞ、と出してくれたお茶の姿まで美しい。

指勘建具工芸

「電気を消すと模様が光るように見えるので、『光輪 (こうりん)』と名付けたんですよ」

ここは三重県菰野 (こもの) 町。

3代続く建具専門店「指勘 (さしかん) 建具工芸」の住まい兼ショールームが一般公開されており、その圧倒的な美しさが人気を呼んでいます。

指勘建具工芸の工場見学

3代目の黒田裕次さんに部屋の解説をしていただきました。

指勘建具工芸3代目の黒田裕次さん
指勘建具工芸3代目の黒田裕次さん

「組子の家」の正体

この部屋に使われている技術は「組子 (くみこ) 」。

指勘建具工芸の組子

ふすまや障子などの建具の表面に、細かな木片を組み込んで意匠を表します。釘を一切使わず、多くは麻の葉柄など縁起の良い模様を表現します。

こちらの模様は「八重桜亀甲」と「八重麻の葉」。もともと縁起の良い柄をさらに組み合わせた複雑なつくりです
こちらの模様は「八重桜亀甲」と「八重麻の葉」。もともと縁起の良い柄をさらに組み合わせた複雑なつくりです

「建具は家の中で間仕切りとして機能しますが、間を切るという言葉の中に、昔の人は『魔を切る』、悪いものを家の中に入れない、という験担ぎも持たせていたのだと思います。だから縁起の良い柄が多いんでしょうね」

その伝統的な技法を究極まで極めることに挑んだのが、黒田さんの父にして2代目の黒田之男 (くろだ・ゆきお) さん。

40代後半から50代前半の職人として脂ののった時期に1年1作品のペースで大作に取り掛かり、完成したのがこの「全面組子づくり」の部屋です。

1面ずつ見て行きましょう。

着色一切なし。千年以上前の素材も駆使した「白鷺城」

指勘建具工芸の「白鷺城」

「これは姫路城を表したもの。着色したパーツを使わずに、全て素材の色差だけで瓦屋根や白壁の濃淡を表現しているんですよ」

指勘建具工芸の作品「白鷺城」

えっ。

同じ杉なのに、こんなにも色の差が出るのでしょうか。

指勘建具工芸の作品

使う木材は杉やヒバ、桐など。一番色の濃いパーツは神代杉 (じんだいすぎ) といって、千年以上地中に埋まって掘り起こされると、こういう色になるのだそう。

全部で10万パーツを組み上げて、模様を浮かび上がらせていると言います。素材だけで十分贅沢な世界です‥‥。

斜めから見るのがおすすめ。「桑名の花火」

今度は対照的に、色をふんだんに使った鮮やかな作品、「桑名の花火」。

指勘建具工芸の「桑名の花火」
指勘建具工芸の作品「桑名の花火」

「桑名の花火大会をイメージして作ったものです。この作品は斜めから見ると、立体感が増しますよ」

指勘建具工芸の作品「桑名の花火」

作品によって鑑賞するベストポジションも違うとのこと。ちなみに先ほどの「白鷺城」は、正面から見るのが一番良いそうです。

製作費1000万円!実際に注文者が現れた逸品

残る一面は、花柄が影絵のように美しく映し出される「蓮華」。

指勘建具工芸の「蓮華」
指勘建具工芸の作品「蓮華」

「よく見てもらうと、木がこういう風にずっと繋がっているんです」と黒田さんがある部分を示します。

黒田さん

「木材を、紙一重のところまで切り込んで折り合わせているんです。これはかなり高い技術のいるものですね」

指で示す角のところは、ひとつながりの材に切り込みを入れて延々と折り曲げているそう!
指で示す角のところは、ひとつながりの材に切り込みを入れて延々と折り曲げているそう!

「製作費ですか?うーん、材料も良いものを使っているので、トータル1000万円くらいでしょうか」

1000万‥‥!金額にも驚きですが、『これと全く同じように作って欲しい』という注文があったというのも、嬉しい驚きでした。

「もう一度作るとなると材から全て集めるのが大変で (笑) 。父と二人掛かりで納めた大仕事でしたね」

組子は木のトロを使う

この信じらないほど細やかな組子づくりの様子は、近所に構える工場で実際に見学することができます。

ちょうど制作途中の組子がありました
ちょうど制作途中の組子がありました
傍には色別に分けられた組子のパーツが
傍には色別に分けられた組子のパーツが

組子に使われる材は薄さわずか1.5ミリというものも。1.5センチでなく、1.5ミリ、です。

この薄さ!目がチカチカしてきそうです
この薄さ!目がチカチカしてきそうです

作業途中で割れたりしないよう、使うのは年数が経って木目のよく詰まった部分のみ。黒田さんは「木のトロ」と呼んでいました。

向かって右は夏に育った部分。木目がゆったりなのがわかります。組子に使うのは、パーツをあてている目の細やかなところのみ
向かって右は夏に育った部分。木目がゆったりなのがわかります。組子に使うのは、パーツをあてている目の細やかなところのみ

小さな小さなパーツになるまでに、幾度も裁断を繰り返します。

はじめは見上げるほどの大きさです
はじめは見上げるほどの大きさです
設計図に基づいて、必要な長さ、幅を揃えていきます
設計図に基づいて、必要な長さ、幅を揃えていきます
長さ、幅を揃えたら木材の角を直角に整え、最後に必要な厚みにスライス。それぞれに機械を変えて行います
長さ、幅を揃えたら木材の角を直角に整え、最後に必要な厚みにスライス。それぞれに機械を変えて行います
ちなみに、「指勘」の名前の由来となっているのがこの道具。建具は家にぴたっとはまるよう直角が命。そこで直角をはかるために使う「指金」と、初代である黒田勘兵衛さんの名を取って「指勘」という屋号が生まれたそう
ちなみに、「指勘」の名前の由来となっているのがこの道具。建具は家にぴたっとはまるよう直角が命。そこで直角をはかるために使う「指金」と、初代である黒田勘兵衛さんの名を取って「指勘」という屋号が生まれたそう
最後はこんな薄さに!パーツを切り出したら、曲げたい角度に合わせて切り込みを入れていきます
最後はこんな薄さに!パーツを切り出したら、曲げたい角度に合わせて切り込みを入れていきます
ようやくパーツの完成です
ようやくパーツの完成です
台にはパーツの仕様書が。切り込みをどの角度でどの深さまで入れるか、緻密に計算されています。それでも数字通りになることはほぼなく、最後は「勘」で決めていくそう
台にはパーツの仕様書が。切り込みをどの角度でどの深さまで入れるか、緻密に計算されています。それでも数字通りになることはほぼなく、最後は「勘」で決めていくそう

パーツを揃えるまででも大変な道のり。実はここまでで作品の仕上がりはおよそ決まってしまうそうです。これからいよいよ組み上げていきます!

指勘建具工芸の組子づくり
指勘建具工芸の組子づくり
そっと手で押して‥‥
模様を決める最後のパーツは、残りのパーツにしっかり添わせないといけないため、微妙に揺れる人の指はNG。木の板で押し込みます
模様を決める最後のパーツは、残りのパーツにしっかり添わせないといけないため、微妙に揺れる人の指はNG。木の板で押し込みます
指勘建具工芸の組子づくり
このような作業を繰り返して、ようやく模様が完成します!
このような作業を繰り返して、ようやく模様が完成します!

見ているこちらが息をするのを忘れるような細かな作業。

実は、ほんの10年ほど前までの指勘さんは、組子のような意匠のない、シンプルな障子や襖などの建具をメインに作っていたそうです。

このように工場や作品をオープンに公開し、組子の魅力を打ち出していこうと決めたのは、3代目の裕次さんの代から。

美しすぎる工場見学の背景に、一体どんな想いがあるのでしょうか。

つくる以上に、伝える努力を

「昔は技術を習得したら一人前でしたが、今はそれだけで一生食べていける、という時代でもありません。お客さんは建具屋に頼まなくても、ハウスメーカーさんで建具を作ってもらうこともできる」

黒田さん

「一般的な建具も作り続けていますが、指勘にしかできないことを残したい。それは何か?と考えた時、父が極めてきた組子の面白さを、もっと世の中の人に伝えたいと思ったんです。

そうしたら、『もっとこういうデザインができる?』『ワンポイントだけうちの障子に使いたい』など、新しい発想をお客さんからもいただけますしね」

この工場見学が功を奏し、最近はわざわざ遠方から職人希望で見学に来られる人もいるとか。

ワークショップも体験できるので、ぜひ自分の手で組子作りにチャレンジしてみては。

「もうお帰りですか。実はこの奥にもうひとつ見ていただきたいものが‥‥」

そう、この組子の家、まだあっと驚く仕掛けが部屋の奥にあるのです。

それはぜひ、行ってご自分の目で確かめてみてくださいね。

<取材協力>
指勘建具工芸
三重県三重郡菰野町小島1537-1
059-396-1786
http://www.sashikan.com/jp/


文:尾島可奈子
写真:尾島可奈子、指勘建具工芸