マンションで「季節を楽しむ」ための工芸品たち

日本には春・夏・秋・冬の「四季」があり、それぞれの季節に風情を感じられるのが大きな魅力です。

今日はそんな季節の移り変わりをより一層楽しめる工芸品をまとめました。アパートやマンション住まいでも取り入れやすいものを中心にご紹介します。

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【春】

節分の豆まきに欠かせない「枡」は、邪気を払う縁起物だった

 

ハレの日を祝うもの 大垣市「大橋量器」の木枡

節分の豆まきでお馴染み、縁起の良い枡(ます)のお話をご紹介します。

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産地:岐阜

母の日の贈りもの、一生ものの日傘

 

今や1年を通して活躍する日傘。一つひとつ丁寧に作られ、「一生ものの日傘」と呼ばれるものを東京で見つけました。

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産地:東京

【夏】

ほのかに香る小さな渦、和歌山の老舗企業がつくる蚊とり香

 

花火や夏祭り、キャンプなどの虫除け対策にこんな蚊とり線香はいかがですか?なんと直径5.5センチ!の小ささで、持ち運びも便利。さらに4種類のやさしい香りが楽しめます。

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産地:和歌山

体感温度を2度下げるポータブル冷房。その名も、うちわ。

 

生産量9割を占める丸亀で、改めてうちわのことを知る

暑い日にうちわを使うと、人の体感温度は2度も下がるそうです。日本に400年以上も続く暮らしの知恵・うちわのお話を。47工程もある手作業を、職人さんに見せてもらってきました。

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産地:丸亀・琴平

水の中を泳ぐ金魚

江戸切子の進化系がここに。美しき日本のグラスには、金魚が泳いでいた

 

但野硝子加工所 但野英芳さん

優雅に泳ぐ金魚が描かれたオールドグラス。作っているのは但野硝子加工所2代目、伝統工芸士の但野英芳さんです。

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産地:江東

【秋】

使ってみました。飛騨が生んだ調理道具、有道杓子 (奥井木工舎)

 

飛騨高山で「うとうしゃくし」という調理用具を見つけました。なんでも、軽くて丈夫でお鍋や具材を傷つけにくいとか。その秘密を探るべく、工房にお邪魔してきました。

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産地:飛騨高山

かもしか道具店の陶のフライパン

器の耐熱温度はなぜ違う?レンジ、オーブン、直火OKの差をプロに聞く

 

三重県の萬古焼メーカー〈かもしか道具店〉さんに学ぶ、陶磁器の基礎

陶磁器でも、オーブンにかけられるものもあれば、ダメなものもあります。その違いは何なのでしょう。素材?分厚さ?製法?三重県菰野町の「かもしか道具店」で教わりました。.

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産地:菰野町

【冬】

冬の、できたて線香花火

「冬の、できたて線香花火」が、澄んだ暗闇をやわらかく彩る

 

筒井時正玩具花火製造所「冬の、できたて線香花火」

冬に花火?そう、冬だからこそ感じられる趣があるのです。

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産地:筑後

佐世保独楽

なぜ「お正月には凧あげて独楽をまわして」遊ぶのか?

 

独楽を何度か投げているうちに体がポカポカに。体を動かして温まることから、独楽まわしは冬の遊びなんだそうです。

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産地:佐世保

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気になった記事はありましたか?読み返してみると、また新しい発見があるかもしれません。

それでは、次回もお楽しみに。

波佐見焼の豆皿(BARBAR)食卓をもっと鮮やかに彩る「あ」「うん」の狛ねこ

猫と植物模様の陽刻の妙!モチーフは輸出用につくられた古伊万里焼き?

今回ご紹介するのは、鮮やかに食卓を彩る「あ・うん」の波佐見焼の豆皿です。

モチーフは、「狛犬」ならぬ「狛猫」。明治時代初期に輸出用につくられた古伊万里焼きです。陽刻(ようこく)*1)の技法で、猫と植物模様がクラシカルに表現されています。対になった2匹の狛猫は、魔除けの役割も担っているのだそう。

紅茶に添えるお砂糖やクッキー、ちょっとした洋菓子のふるまい用として。アクセサリーなど、大切にしている装身具を置くための、インテリアとしても活躍します。

*1)陽刻(ようこく):文字・模様・画像が浮き出るように彫刻すること

波佐見焼の豆皿 BARBAR
波佐見焼の豆皿

豊臣秀吉が率いた「焼き物戦争」とは?

波佐見町の前身である波佐見村で本格的に磁器の生産が始まったのは1500年代末のこと。きっかけは、豊臣秀吉による朝鮮出兵、文禄・慶長の役 (1592~1598年)でした。

この戦いは別名を「焼き物戦争」とも呼ばれています。各地の大名たちは、朝鮮王朝時代の焼き物と築窯(ちくよう)の高い技術を得るために、朝鮮から多くの陶工たちを引き連れました。

彼らに技術を伝承してもらいながら、波佐見村「木の畑ノ原」「古皿屋」「山似田」の3か所に巨大な階段状連房式登窯*2)を築き、1599年、本格的に磁器づくりが始まりました。

*2)連房式登窯(れんぼうしきのぼりがま):焼成室(房)を斜面に複数連ねた窯の総称で、現在一般的に狭義の「登り窯」と呼ばれている窯のことを指す。波佐見で18世紀に出現した窯は、全長100メートルを超え、焼成室は30室以上、全長160メートルを超えるものも見られた。

分業の職人仕事で支えられる波佐見焼

長崎県波佐見町の風景
長崎県で唯一海と面していない波佐見町

明治期以降の長い間、隣町の有田町でつくられる「有田焼」として販売がされてきたため、名前が表に出ることは少なかったですが、日常使いのうつわの一大生産地として、日本の陶磁器市場を支えてきました。

波佐見焼は、量産をたいへん得意とします。町内に点在するいくつもの工房は、それぞれが専門の役割を担っており、「型屋」「素地屋」「窯屋」など分業体制をとることによって、それぞれの技術は高い精度で発展してきました。工波佐見町が一体となり、一枚のうつわがつくられています。

波佐見町「型屋」の岩永喜久美さんの作業風景
長崎県波佐見町「村松生地」の信輔さん作業風景
釉薬はすべて手作業で塗る

たくさん・手早くつくるために技術は磨かれ進歩する。そのことを今に教えてくれるのが、波佐見の焼き物です。

気持ちが高揚し、ワクワクする陶磁器を生みだす「BARBAR」

陶磁器の伝統が息づく長崎県波佐見町で、「自分達がかっこいいと思うもの、気持ちが高揚し、ワクワクする陶磁器」を手がけるブランドがあります。

今回ご紹介した「狛猫 たたら3寸皿」を手がける「BARBAR」です。彼らの信念は、以下の3つ。

1.ものづくりの現場で培われてきた技術
2.時代を超えても変わらない魅力
3.自由で枠にとらわれないアイデア

「楽しい!かっこいい!おもしろい!」。ダイレクトに感覚を呼び覚ます、現在進行形の波佐見焼を、このシリーズから感じてみてください。

波佐見焼マルヒロの直営店

掲載商品

BARBAR 狛猫 たたら3寸皿
1,600円(税抜)

豆皿の写真は、お料理上手のTammyさんが撮ってくださいました。他にも普段の食卓のコーディネイトの参考になるような写真がたくさんあります。Instagramも、ぜひ覗いてみてください。

文:中條美咲

産地のうつわはじめ

益子焼
九谷焼

たおやかな曲線の美。春を招く木瓜の花

特集「産地のうつわはじめ」

中川政七商店の全国各地の豆皿
11窯元の豆皿をご紹介していきます

日本五大紋がモチーフの、春を招く縁起のいい花

モダンでありながらどこか懐かしさを感じるこのかたち、ある花がモチーフとされています。

それは、平安時代に中国大陸から日本に渡ったとされる「木瓜(もっこう)」。日本では代表的な家紋のひとつとして、使用する家も藤に次いで2番目に多いのだとか。

木瓜型は、子孫繁栄の象徴でもある鳥の巣を表現したものといわれます。神社の御簾の帽額(もこう)に多く使われた文様から「もっこう」と呼ばれるようになりました。

美しいデザインと、有田焼ならではの多彩な色使いが食卓に花を添えてくれます。

与山窯の豆皿

「有田焼」のはじまり

江戸時代の初め、朝鮮人陶工・李参平らによって有田町の泉山で磁器の原料となる陶石を発見し、日本で初めて白磁のうつわを焼いたことから「有田焼」が始まったと伝えられています。透き通るような素地の白さと、繊細で華やかな絵付けが特徴です。

「有田焼」の特徴は大きく3つ

一般的にいわれる伝統様式は、藍一色で伸びやかに描かれた「古伊万里様式」、余白を生かした絵画的な色絵の「柿右衛門様式」、染付・色絵・青磁の技法を駆使した「鍋島藩窯様式」の大きく3つに分けられます。

磁器と陶器のちがい

磁器の原料には「陶石」と呼ばれる岩石を用います。陶石は、白くて堅く、吸収性がありません。一方の陶器は、土(粘土)を原料に用います。吸水性があり、磁器に比べると素地の焼きはやわらかいことが特徴です。

1616年に採石が始まった泉山磁石場は、400年間に渡り削り取られてきたことで、一山のほとんどが掘り尽くされ、白い磁肌を見せながら大きく扇形に広がっています。

白く光る石の発見から始まった、吉田山の陶業

佐賀県嬉野市に位置する肥前吉田(ひぜんよしだ)は、400年以上の歴史を持つ有田焼の産地です。

1577年(天正5年)、吉田村を流れる羽口川の上流、鳴谷川の川底で白く光る石が見つかりました。当時の日本にはまだ本当の磁器はなく、これが磁鉱石の最初の発見といわれています。

たおやかな曲線と、有田焼ならではの発色

有田焼といえば、透き通るような白磁に描かれる鮮やかな色釉が魅力のひとつ。釉薬の奥からほんのり浮かびあがる繁茂の姿をたおやかな曲線が包みます。

木瓜のかたちを活かすために、色釉はあえて単色使いに。有田焼ならではの発色の力強さを感じられる一皿です。

繰り返すことで柔軟に。深い伝統と良質でリベラルなものづくり

この地で窯を開いた辻与製陶所 与山窯(つじよせいとうしょ よざんがま)。創業は、1854~1860年(安政年間)に遡ります。

与山窯は、有田において御用焼を営む「辻家」の出。初代与介が吉田の地に窯を開き、現在は六代目へとバトンが継がれています。

磁器から焼締まで製品の幅は広く、「深い伝統と技術」と「時代にあった良質でリベラルなものづくり」を繰り返し積み重ねてゆくことで、柔軟でモダンな独自のスタイルが確立されています。

掲載商品

有田焼の豆皿 木瓜型
1,296円(税込)

豆皿の写真は、お料理上手のTammyさんが撮ってくださいました。他にも普段の食卓のコーディネイトの参考になるような写真がたくさんあります。Instagramも、ぜひ覗いてみてください。

文:中條美咲

産地のうつわはじめ

 

益子焼
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美濃焼

 

萬古焼
珉平焼
小石原焼
鍋島焼
有田焼
有田焼

ふわりと淡く醸し出す繊細な青の風合い、 鍋島青磁

特集「産地のうつわはじめ」

中川政七商店の全国各地の豆皿
11窯元の豆皿をご紹介していきます

鍋島といえば「青磁」

今回ご紹介するのは、凛とした風情でハレの日の祝う、「鍋島焼」。佐賀県伊万里市で江戸時代から続く窯元「虎仙窯(こせんがま)」でつくられた、青がきれいな豆皿です。

鍋島焼の手法のひとつ「鍋島青磁(なべしませいじ)」は、同市、大川内山(おおかわちやま)でとれる原石を使っています。天然の青磁は、採掘される山の層によって色のゆらぎも多く、釉薬と粘土がマッチせずに割れてしまうことも多いのだそう。

そんな青磁の釉薬は、厚くのせないと美しく発色しません。うつわ全体に青磁釉をたっぷりつけて焼きあげられた一枚は、ふわりと淡く醸し出す繊細な青の風合いが特徴です。

完成までに一段と手間暇がかかり、量産が難しい「鍋島青磁」。

食卓を華やかにひき立てる「輪花」と、魔除けの効果があるとされる「籠目」模様の2種類をご用意しました。

鍋島焼 虎仙窯の豆皿

お殿様が愛した門外不出のうつわ

・将軍家お抱えの「鍋島焼」
その昔、将軍家や諸大名への献上品・贈答品として、日本で唯一、藩直営の御用窯として焼かれた鍋島焼。

格式高い品物をつくるために集められた選りすぐりの陶工・絵付師たちを招き、妥協を許さない優雅で精緻な焼き物は、採算度外視でつくられたそう。

近世陶磁器の最高峰とも言われ、気品あふれる高貴な色みと、繊細な絵付けが特徴とされます。

・「鍋島焼」様々な技法
「藍鍋島」と呼ばれる染付、染付と鉄釉を併用した「銹鍋島」、染付材料の呉須を釉薬の中に入れて作った「瑠璃鍋島」、鮮やかな色絵が美しい「色鍋島」、そして「鍋島青磁」。

左から色鍋島、鍋島染付、鍋島青磁
左から色鍋島、鍋島染付、鍋島青磁

鍋島焼には、ひと括りでは語りつくせない様々な技法があります。いずれも、将軍家への献上品という気品を忘れず、現代に受け継がれる贅沢なうつわです。

・黄色い石から生まれる、透明な青
空気をまとったように軽く、透明で美しい青。それは、大川内山で採石される黄みがかった「青磁原石」から生まれてきます。原石を細かく砕き水に溶かして釉薬状にして、白磁にかけて焼き上げる。

青磁の釉薬掛け
青磁の器。黄色い石から美しい青磁色に
青磁の器。黄色い石から美しい青磁色に

青磁の表面には、目には見えない無数の気泡が存在します。それが光を乱反射させることによって、柔らかく奥ゆきの感じられる風合いを醸します。自然光のもとで様々な表情を見せてくれる青の魅力。青物、和菓子など、ちょっとした一品も、美しく引き立てます。

自分たちの芯となる「青磁」を

「今後、鍋島焼で食べていくために自分たちの芯となるものが一つあった方がいい。基礎から学び集中して技術を磨き、青磁のエキスパートになろう!」

焼き物文化が低迷して苦しい時期に、「虎仙窯」を牽引されるおじいさまは決めました。

鍋島青磁の凛とした風情は、つくり手たちのこうした心意気によって守られ、途絶えることなく、いまに伝わります。

鍋島焼 虎仙窯の豆皿

関連商品

鍋島虎仙窯 鍋島青磁 菊豆皿

鍋島虎仙窯 鍋島青磁 籠目豆皿

鍋島虎仙窯 鍋島青磁 菊楕円豆鉢

豆皿の写真は、お料理上手のTammyさんが撮ってくださいました。他にも普段の食卓のコーディネイトの参考になるような写真がたくさんあります。Instagramも、ぜひ覗いてみてください。

文:中條美咲

産地のうつわはじめ
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小石原焼
鍋島焼
有田焼
有田焼

聞こえてくるのは、身体に染みついた「ろくろ」のリズム

特集「産地のうつわはじめ」

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ろくろのリズムから生まれた「飛び鉋」と「刷毛目」の技法

じーっと覗き込むほどに、職人さんとうつわが奏でるリズムが聞こえてくるような、端正であたたかみのある模様。それが、小石原焼の大きな魅力です。

これらの技法を、「飛び鉋(かんな)」「刷毛目(はけめ)」と呼びます。

化粧土のかかったうつわに鉋の先やハケをあてながら、ろくろを回転させていくことで、一定のリズムが生まれて、みるみると規則的な模様が刻まれていく。

旬の食材が映える、ワクワクと小気味のよい一皿です。

小石原焼 土秀窯の豆皿

福岡県東峰村。里山生まれ、素朴で朗らかな日常雑器

福岡県朝倉郡東峰村(とうほうむら・旧小石原村)は、標高1000メートル級の山々に囲まれ、里山文化がいまに続く、のどかな場所です。

江戸時代中期、陶工・柳瀬三右衛門が現在の大分県日田市の小鹿田村に赴き技法を伝えたため、小石原焼は小鹿田焼(おんたやき)のルーツと言われています。

1931年、民藝運動の主導者・柳宗悦が小鹿田を訪ねた直後に記した「日田の皿山」に、こんな一節がありました。

--私たちは何が美を産むかを学びたいのである。‥‥日田の皿山はまさに現代の反律である。だがそれだけに学ぶ点が極めて多い。吾々に欠けている一面を豊富に有っているからである。そうしてかかる一面には時間に左右されない力がある。(『柳宗悦全集著作篇第十二卷』筑摩書房「日田の皿山」より)

「時間に左右されない力」

小石原では300年以上に渡り、里山の赤土と白色の化粧土を使い、「飛び鉋」「刷毛目」が目印の日常雑器をつくり続けています。

つくられる物、素材や製法、暮らしのリズムに到るまで、いずれも時代や技術の変化に大きく左右されることはありません。

時間を超えて親しまれる美しさの一端は、「時間に左右されない力」に秘められているのかなぁと。あれこれ問いかけながら、ゆっくりじっくり、時間をかけて付き合っていくのも楽しみのひとつです。

土秀窯、和田さんが手掛ける暮らしの道具

土秀窯(どしゅうがま)代表の和田隆男さん

土秀窯(どしゅうがま)代表の和田隆男さんは、1953年に小石原で生まれます。22歳より小石原の窯元で修行をし、その後独立。

小さな豆皿に均一な模様を刻んでいくのは熟練の技。40数年に渡って身体に染みついたリズムに乗せて、遊び心や作陶の楽しさがスパイスに加わります。

土秀窯 製作風景

2017年の九州北部豪雨では、同地区50軒のうち、半数近い窯元さんが土砂崩れなどの被害を受けました。

幾度もの雨にも風にも負けず、夫婦共に支えあいながら、和田さんは今日も素朴で朗らかな暮らしの道具を生みだします。

土秀窯のうつわ

掲載商品

小石原焼の豆皿
各1,000円(税抜)

豆皿の写真は、お料理上手のTammyさんが撮ってくださいました。他にも普段の食卓のコーディネイトの参考になるような写真がたくさんあります。Instagramも、ぜひ覗いてみてください。

文:中條美咲

産地のうつわはじめ

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Awabi wareが取り組む、珉平焼へのオマージュ

特集「産地のうつわはじめ」

中川政七商店の全国各地の豆皿
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昔からある色・かたちに再編集を

「Awabi ware」の豆皿は、珉平焼(みんぺいやき)にならった鮮やかな釉薬(ゆうやく)と、マッドでつややかな質感が特徴です。

作家である岡本さんは、昔からある色・かたちをモチーフに型をおこし、釉薬を調合しています。

制作方法は大きく二つ。成型から釉薬をかけて焼き上げる工程までをすべてを自身で行う場合と、原型をおこして島外の職人さんに依頼して焼き上げる分業制とがあります。

100年経っても使ってもらえるように。自分以外にも「Awabi ware」をつくり続ける人が存在する重要性を提唱し、実践しているのだそう。

洋食化する現代の食卓に合わせて細やかな再編集がほどこされた製品からは、手仕事の安らぎとプロダクトの安定感、両方の良さが滲み出します。

Awabi wareの豆皿

幅広いバリエーション、多様性に富んだ珉平焼

珉平焼は江戸後期の文政年間(1818-30)、伊賀野村(現在の南あわじ市北阿万伊賀野)で賀集珉平(かしゅう みんぺい)が始めた焼物で、別名を「淡路焼」とも呼ばれています。

京焼の陶工・尾形周平を招いて色絵の技術とデザインを導入後、古今東西のさまざまな技法を写していきました。

そんな珉平焼の特徴は、幅広いバリエーションにあります。江戸時代後期の日本で、これほど多くの種類を焼いていた窯は恐らくなかったのではないかと言われています。

黄色・緑・青・水色・白などの透明感のある釉薬を用いた目を惹く色合いがとても印象的です。

淡路に息づく美しの品、現代の民藝の可能性を求めて

陶芸作家・岡本純一さんは柳宗悦の唱える「民藝論」に共感し、2010年より故郷である淡路島で農的生活の傍ら、独学で作陶を始めます。

2012年、「Awabi ware」を屋号に日用食器の制作を開始。コンセプトは100年後も使われているような「受け継ぐ器」。淡路の美しさと書いて「あわび」、「ウェア」には製品の意味が込められいるそうです。

自宅から車で5分。かつては島の診療所だった趣のある建物にアトリエ兼、予約制のショップを構えます。

自然と人間をつなぐ里山風景の残る淡路島で、岡本さんは手仕事と量産できる製品のあいだに立ちながら、淡路に息づく美しの品を生み出し続けます。

掲載商品

Awabi ware 八角豆皿 瑠璃
1,300円(税抜)

Awabi ware 四方豆皿 トルコブルー
1,500円(税抜)

豆皿の写真は、お料理上手のTammyさんが撮ってくださいました。他にも普段の食卓のコーディネイトの参考になるような写真がたくさんあります。Instagramも、ぜひ覗いてみてください。

文:中條美咲

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