【わたしの好きなもの】麻の葉もなか チョコ

あんこが苦手なんです


もなか菓子と言えば、中にぎっしりと詰まっているあんこと、もなか皮の香ばしいハーモニーが美味しさの肝だと思うのですが、「あんこが苦手なんだよなー」と言うひとも中にはいますよね。私もその一人で、もなか菓子は生まれてこの方ずっと避けてきたお菓子でした。

ですが、この「麻の葉もなかチョコ」は素直に美味しい!もうひとつ食べたい!と思わせる魅惑的な美味しさがありました。ぜひ私のようなあんこが苦手な方におすすめしたいです。



単刀直入に、中のあんこがもはやあんこではないのです。こっくりとしたあんこ特有の甘さは残しつつ、ビターチョコレートと2種類のクーベルチュールチョコレートの風味が、あんこをパウチから絞り出したときから香ります。口に入れるとチョコレートが広がります。

甘すぎず、後味も軽くて「あともう一個」と手が伸びる味わいです。



中川政七商店のもなか菓子は自分でパウチに入った餡を絞り出して、もなか皮に挟んで食べる「手作りタイプ」。だからいつも作りたてでもなか皮がパリパリ香ばしい。食感も美味しいのが中川政七商店の手作りもなかのうれしいポイントでもあります。


麻の葉もなかチョコは季節限定のフレーバーです。茶色のブリキ缶に金色のロゴマークがまるでチョコレートのよう。これからの季節でしたらバレンタインの贈りものにもおすすめです。

編集担当 今井

【わたしの好きなもの】お顔の蒸しタオル

男性にも使ってほしい!ヒゲ剃りに欠かせない一品


初めて見た時は、女性が使うものという印象、そう思っていました。

しかし、男性ならではの使い方があります。
男の美容、朝のヒゲ剃りです。

理髪店でヒゲを剃る機会は減りましたが、剃る前は必ず、蒸したタオルで良くヒゲを蒸らしますよね。あれは、気持ちいいからだけでなく、蒸らすことで、ひげが30%~40%ほど膨張し、しっかり深剃りができるそうです。
しかも、ひげが柔らかくなるので抵抗が減り、肌も保湿されるのでカミソリ負けもしにくくなります。




顔を洗った後、お顔の蒸しタオルを水で濡らし絞ったら、レンジで温めます。私は気持ちちょっと水分を多めに含ませます。温まったら、手のひらで温度を確認して顔に乗せます。
始めのうちは熱いので、少し経ったら手のひらで顔を抑えるように押すと、より効果がアップします。
このタオルは男性の私でも頬までちゃんと覆えるサイズ感も嬉しいポイント。




シェービングフォームをたっぷり塗って順剃り、逆剃り、張り手と一番楽しい時間を過ごします。
剃り終わって、シェービングフォームを洗い流したら、今度は蒸しタオルを冷水で冷やしたものを顔に乗せ、肌を引き締めます。

蒸した時としない時の明らかに違う剃り心地に感動。
鏡の前で顔をパンパンと軽く叩き「完璧」と思わず言いたくなります。

顔を温めたことにより、気分もスッキリし、さらに血行も良くなるので、顔色も明るくなるなど、いいこと尽くめ。
僕にとっては最高の一日をスタートさせるのに欠かせない一品です。


編集担当 中川政七商店 コレド室町店 初見

【わたしの好きなもの】招き猫のにぎにぎ

こどもの成長をひしひしと感じるにぎにぎ

娘が段々と物を掴み始めてきた頃に、いろんなものに触れて欲しく「招き猫のにぎにぎ」を買ってあげました。
和風な雰囲気となんとも言えない猫の愛らしい表情がたまらないこのにぎにぎ。少し固めで、こどもの手の動きの体操に役立ってくれそう。娘も絶対気に入ってくれるはず。

ただ、買ってあげたときはまだにぎにぎが大きかったようで、掴むのが難しそうでした。そもそも「なんだこれは!?」と全く興味を示してくれず…。僕と妻がこのにぎにぎを気に入って買ったのですが、こどもへのプレゼントは難しいなと痛感し、失敗したかなと思っていました。

ですが、うれしいことに日を増すごとに娘は物をしっかりと掴んでくれるようになり、そして猫のにぎにぎにも興味を示すようになってくれました!




にぎにぎのおなかの部分を押すと、ピュッと笛の音が鳴るのですが、どうやらこれが気になる様子。大人が鳴らすと、「私にちょうだい!」と言わんばかりに満面の笑みで欲しがります。
まだ娘はその笛の音を鳴らせるほどの力はありませんが、小さな手でずっと持っていたり、こればかりと舐め舐めしています。

なかなか泣き止んでくれないときにあやす道具としても使えるので、親にもうれしい道具です。
笛の音を鳴らしながらにぎにぎを見せると、気が逸れるのか、おもちゃが欲しくて泣いていたのかはわかりませんが、泣き止んでくれることもあります!




他にもうれしい点がいくつかあります。顔や胴体部分の外側は綿100%の安心な素材で作られていること。こどもはなんでも口に入れますから、ちゃんとした素材で作られているのはうれしいですよね。
また、洗うこと(手洗い)ができるので、ひったひたになるまで舐められても問題なし。洗っていつも清潔にしておくことができます。
洗いたては笛が鳴りにくくなりますが、しっかり乾かして何度か押せばまたちゃんと鳴り出しますよ。




最初は掴むのに必死だったのに、7ヶ月になった今やしっかり持って、たまに投げ飛ばしたりするくらいです。
いつのまにそんなことができるようになったのかと、こどもの成長をひしひしと感じることができています。




こどもも気に入ってくれたので、お出かけのときも持ち歩きます。
でもお出かけして早々に地面に落としてしまって、それをこどもに持たすわけにもいかないので、ずっとかばんにしまい込むこともしばしば。
それだとかわいそうなので、お出かけのストック用に他の「こけし」や「犬張子」も買い足してみようかなと思っています。

まわりの友人や知り合いから、おめでたの報告も段々と増えて来たので、出産祝いにもぴったりだと考えています。
きっと喜ばれるので、その時が来たら贈ろうと思います。

編集担当 森田

世界が認める碁石の最高峰。宮崎にだけ残る「ハマグリ碁石」とは

碁石の最高峰「ハマグリ碁石」

「手談(しゅだん)」という言葉があります。

文字通り、手で会話をすること。といっても「手話」をするわけではありません。

碁盤を挟んで向かい合い、碁を一局打てば心が通じ合うことを意味し、「囲碁」の別名として使われる言葉です。

対局者は碁石を通じて相手のことを理解する
対局者は碁石を通じて相手を理解する

この、言葉を必要としない会話の主役とも言えるのが、盤上に打たれる碁石たち。

古くから、囲碁を好む人たちは碁石の実用性だけでなく、その見た目・手触り・打ち味・音の響きにまでこだわり、よいものを求めてきました。

「白黒をつける」と言うように、碁石には白石と黒石がありますが、実は、高品質とされるものはそれぞれ原料が異なります。

黒石は、三重県熊野の那智黒石から作ったものが最高級品。

一方、白い碁石の原料は“石”ではなく”貝”。

ハマグリで作った「ハマグリ碁石」は縞目の美しさ、柔らかな乳白色の輝き、手に馴染む重量感などが素晴らしく、白い碁石の最高峰として世界でも人気を集めています。

ハマグリ碁石
碁石の最高峰「ハマグリ碁石」

碁石のために生まれてきた貝を使った「日向のハマグリ碁石」

このハマグリ碁石の産地として名を馳せたのが、宮崎県の日向(ひゅうが)市です。

南北4キロメートルに渡って続く大きな海岸「お倉ヶ浜」では、かつて浜一面にハマグリの貝殻が打ち上げられていたとか。

かつて、ハマグリが浜一面に打ちあがっていた「お倉ヶ浜」
かつて、ハマグリが浜一面に打ちあがっていた「お倉ヶ浜」

そもそも、碁石がハマグリで作られるようになったのは17世紀後半のこと。

当時は愛知県 桑名などのハマグリを用いて、大阪で碁石の製造がおこなわれていました。

そこから明治の中頃になり、行商で日向を訪れた富山の薬売りが大阪に持ち帰ったことがきっかけで、日向のハマグリの存在が知られるように。

それまで主流だった貝よりも厚みがあり、組織も緻密で美しかったためすぐに評判となったそうです。

貝からくり抜かれて削られる前の状態
貝からくり抜かれて削られる前の状態。縞目の美しさが重要

当初は日向で採れたハマグリを大阪に送っていました。

しかし、大阪で碁石製造の技術を学んだ日向出身の原田清吉という人が「日向のハマグリは日向で碁石に仕上げたい」と考え、1908年頃、日向で初めて碁石作りを開始。

それが日向の碁石作りの始まりです。

「日向のハマグリは寿命が14、5年だと言われています。外敵が少ない環境で寿命をまっとうしたハマグリが、海底や砂浜の中に埋まっていた。

それが大波や台風によって浜に打ち上げられ、それを人々が拾って、ということを繰り返してきたわけです」

そう話すのは、日向でハマグリ碁石を作り続けてきた「黒木碁石店」の5代目、黒木宏二さん。

黒木碁石店 5代目の黒木宏二さん
黒木碁石店 5代目の黒木宏二さん

お倉ヶ浜は波が荒く、現在はサーフィンのメッカでもあるほど。その荒波に揉まれる中で、厚く大きく成長。

その美しい縞目の模様も相まって、“碁石のために生まれてきた貝”と言っても過言ではないのが、日向のハマグリでした。

わずかな厚みで価値が大きく変わる碁石の世界

「碁石の価値を決める要素として、“厚み”は非常に重要です。厚いほど希少性が高く、高価になります」

日向産のハマグリの一番分厚いぷっくりした部分をくりぬいて使う
日向産のハマグリの一番分厚いぷっくりした部分をくりぬいて使う

縞目の美しさや傷の有無などを除けば、基本的に厚いほど高価になるという碁石の世界。

厚みは「号数」で区別されていて、たとえば36号は10.1ミリ、38号は10.7ミリといった具合。

コンマ数ミリの違いで号数が変わり、それによって金額も数万円〜数十万、時には数百万といった単位で変わります。

くり抜かれた貝を厚みごとに分けておく
くり抜かれた貝を厚みごとに分けておく

わずかな厚みでなぜ?と疑問に思うかもしれませんが、石を原料とする黒石と比べ、ハマグリの貝殻をくり抜いて作る白石は、出せる厚みに限界があります。

それに加えて碁石は、白石を180個、黒石を181個、それぞれ同じ形・厚み・グレードで揃えないと商品になりません。

碁石を1セット揃えるのには大変な労力と時間がかかる
碁石を1セット揃えるのには大変な労力と時間がかかる

13ミリを超えるような厚みの碁石を作ろうとした場合、1セット揃えるだけで数年かかることもあるのだとか。値段が跳ね上がるのもうなづけます。

高く評価されたハマグリ碁石は日向の一大産業となり、さらにその価値を最大限に高めるために碁石製造の工程は進化し、職人の技術も高まりました。

厚みを測りながら削っていく緻密な作業
厚みを測りながら削っていく緻密な作業

別記事で詳細に触れる予定ですが、原料となるハマグリから取れる最大の厚みを見極め、寸分違わぬ精度で碁石の形に削り、磨き上げていく。碁石職人の技術には本当に驚かされます。

日本で唯一の産地となった日向市

日向岬
日向岬

日向のハマグリが見出されてから100年以上が経過。すでに大阪でのハマグリ製造は途絶えてしまい、黒石を含め、日本で碁石製造の技術を受け継ぐ地域は日向だけとなりました。

「はまぐり碁石の里」
囲碁に関する『学び』と『食』の発信基地として営業している「はまぐり碁石の里」

その日向も、多くの課題を抱えています。

「日向に昔は10社以上あった碁石会社ですが、今はうちを含めて3社しか残っていません」

と黒木さんが言うように、業界内では代替わりをせず、店・会社を辞めてしまうケースが後を絶たないとか。

原料の枯渇。そして「幻の碁石」へ

特に大きな課題が、原料となるハマグリの枯渇。

「4、50年前の時点で、日向ではほぼハマグリが採れなくなり、絶滅に近い状態です」

残念ながら、日向産のハマグリは海底も含めてほとんど取り尽くされてしまい、今では「幻の碁石」と呼ばれるほど、滅多に流通しない存在となってしまいました。

「弊社では、三代目である私の父が新たな原料確保の道を探し、メキシコ産ハマグリの輸入に乗り出しました」

向かって左が日向産のハマグリ。右はメキシコ産
向かって左が日向産のハマグリ。右はメキシコ産

現在、流通しているハマグリ碁石はほとんどがメキシコ産のハマグリを使用しています。そのメキシコ産ハマグリも、安定して輸入し続けられる保証はどこにもありません。

そんな中で、日向だけに残っているハマグリ碁石製造の技術・文化を途絶えさせないために、またハマグリ碁石を求める囲碁愛好家たちの期待に応えるために、できることをやるしかない。

碁石の最高峰「ハマグリ碁石」
ハマグリ碁石を途絶えさせないために

原料が変わっても、変わらないものづくりの技術とプライド、そして時代に合わせた工夫で、碁石の価値を高めていく。

碁石職人
黒木宏二さん

次回は、そんな碁石店の挑戦と碁石製造の舞台裏、さらに熟練の碁石職人の技術にフォーカスしていきたいと思います。

・コンマ数ミリが価値を分ける。日本にわずか数人、石の声を聞く職人たち

・「白黒つけない」サクラ色の碁石が誕生、その裏側にある囲碁の未来に関わる話

<取材協力>
黒木碁石店(ミツイシ株式会社)
http://www.kurokigoishi.co.jp/

文:白石雄太
写真:高比良有城

※こちらは、2019年1月5日の記事を再編集して公開しました。

雪降る季節に楽しみたい、冬の特別な和菓子

まだまだ寒い日が続く1月。寒いのは苦手ですが、しんしんと降る雪を眺めてると、冬が終わるのも惜しいほど。日本人は古来から、雪の美しさを工芸やお菓子でも表現してきました。

今日は、この季節ならではの「雪をモチーフにした和菓子」をご紹介します。

新潟 「大杉屋惣兵衛」の六華

新潟県上越市の「大杉屋惣兵衛」は、創業1592年(文禄元年)の老舗。越後高田の大飴屋さんとして知られていますが、今回ご紹介したいのは、和三盆糖の小さな落雁「六華(むつのはな)」です。

これは、江戸後期に鈴木牧之(すずき・ぼくし)が越後魚沼の雪国の生活をまとめた『北越雪譜』に描かれた雪の結晶をかたどったもの。箱に詰められた落雁の雪文様は、ふたつとして同じものがありません。

ちなみに、私はこちらのお菓子を石川県片山津の「中谷宇吉郎 雪の科学館」で購入しました。雪の結晶に魅せられた後は、これはもう手に取らずにはいられず!新潟のお店にも伺ってみたいです。

新潟 「大杉屋惣兵衛」の六華。パッケージ
包み紙に青一色で描かれた大きな椿は、雪椿でしょうか。包みをあけるのもわくわくします

新潟 「大杉屋惣兵衛」の六華
箱の中には整然と並んだ小さな落雁。なんと、すべて違う文様なんです!

新潟 「大杉屋惣兵衛」の六華
「北越雪譜」の図も添えられていて、雪の図鑑みたい。照らし合わせて見てみます

京都 「御菓子司 塩芳軒」の雪まろげ・雪華

京織物の街、京都西陣にて創業以来130年以上にわたり、京菓子をつくり続けてきた「御菓子司 塩芳軒(しおよしけん)」。風格のある町屋に、黒い長のれんが目印です。

こちらの季節ごとの生菓子などもおすすめしたいですが、私のお気に入りは「雪まろげ」という純和三盆製のシンプルなお干菓子です。

「雪まろげ」というのは、雪玉ころがしのこと。まん丸の形はほんとうに雪玉のようで、小さな箱から指先でひとつつまんで大切にいただくと、口の中で優しく溶けてなくなります。

京都 「御菓子司 塩芳軒」の雪まろげ・雪華
小さな箱は、模様の入った繊細な薄紙に包まれています

京都 「御菓子司 塩芳軒」の雪まろげ・雪華
紅白のまるい玉が交互に。ほかに抹茶味もあります

京都 「御菓子司 塩芳軒」の雪まろげ・雪華
ころころとした雪の玉。雪のように溶けてなくなってしまうのが少しさみしいです

同じく「御菓子司 塩芳軒」から、もうひとつ。冬の季節だけの「雪華(せっか)」は、お茶のお稽古などにも人気だそう。こちらも上質な和三盆が使われているお干菓子で、指先ほどの小さな雪の結晶の形。箱入りセットではなく、ひとつずつ好きな数を包んでいただけますが、その包み紙もかわいいのでお土産にもおすすめです。こちらは春先までの販売なので、今季はどうぞお早めに。

京都 「御菓子司 塩芳軒」の雪まろげ・雪華
包み紙の上から赤い紐できりり。佇まいの美しい包みは、京都のお土産に

京都 「御菓子司 塩芳軒」の雪まろげ・雪華
雪華の文様はどうやら7種あるようです。小さな六角形の中に繊細な模様をたのしめます

岐阜 「奈良屋本店」の雪たる満・都鳥

岐阜県岐阜市、天保元年(1830年)に創業した「奈良屋本店」。岐阜県なのに奈良?とお思いでしょうか。岐阜市には下奈良(しもなら)という地名があり、こちらの創業者がその出身だったことからこの店名がつけられたのだそうです。

看板商品である「雪たる満・都鳥」は、明治19年に発売されたもので、お砂糖と新鮮な卵白だけでつくった手しぼりのメレンゲ菓子。「雪のように白く、その味は甘く、雪のような口どけ」を実現し、「雪たる満」と名づけたのだそう。薄紙に包まれて、雪だるまと都鳥が仲良く曲げわっぱの中におさまる姿はなんとも言えない可愛らしさ。ちょんちょんとつけられた目がまた愛らしいのです。

岐阜 「奈良屋本店」の雪たる満・都鳥
「雪だるま本舗」のネーミングと、だるまマーク。これまた、とっておきたい包み紙です

岐阜 「奈良屋本店」の雪たる満・都鳥
箱入りもあるけれど、やはり曲げわっぱ入りがおすすめ。直径14センチとサイズ感も抜群。雪だるまと都鳥、仲良く詰め合わせです

岐阜 「奈良屋本店」の雪たる満・都鳥
手しぼりでつくられるので、それぞれの表情に愛嬌たっぷり。さっくりとした歯ざわりで、お茶だけでなく珈琲にも合いそうです

雪の和菓子、お楽しみいただけたでしょうか(美味しくいただいて、おそらく私が一番楽しませていただきました!)。

和菓子屋さんそれぞれの味と形で雪を表現されていて、もちろん食べたらなくなってしまうのですが、それがまた儚い雪を思わせて魅力的でもありました。菓子そのものだけでなく、きれいな紐や味のある包み紙にふれる瞬間もまた、和菓子の魅力ですね。

日本の北から南まで、雪への愛着はそれぞれかと思いますが、その土地ならではの、雪との縁は素敵なものでした。次の冬はどんな雪に出あえるでしょうか。

<取材協力>
「大杉屋惣兵衛」
http://ohsugiya.com
「御菓子司 塩芳軒」
http://www.kyogashi.com
「奈良屋本店」
http://www.naraya-honten.com

文・写真:杉浦葉子※この記事は、2017年2月11日の記事を再編集して掲載しました

しめ飾りの種類をいくつ知っていますか?「べにや民芸店」で見るユニークな正月飾り

この時期になるとスーパーの店頭などで売られているのをよく目にするしめ飾り(注連飾り)。

神聖な場所を示すしめ縄に、稲穂や裏白(うらじろ)、だいだい、御幣(ごへい)などの縁起物を付けてつくられており、お正月に年神様を迎える準備のひとつとして飾ります。

このしめ飾り、地域や作り手さんによって特徴が異なるのをご存知でしょうか。

しめ飾り

縁起を担いで年神様をお迎えする目的は同じでも、その土地に伝承する物語が由来になっていたり、暮らしに馴染みの深い道具がモチーフになっていたり、形状は様々。

全国各地でバラエティ豊かなしめ飾りが今もつくられ続けています。

そんなしめ飾りを一堂に集めた展示販売会「日本各地のしめ飾り展」を毎年開催しているのが、東京・駒場にある「べにや民芸店」さん。

べにや民芸店
べにや民芸店
べにや民芸店
店内の様子

展示会開催中の同店にお伺いして、魅力溢れるしめ飾りの数々を見せていただきました。

べにや民芸店「しめ飾り」展
会場には、全国から集まったしめ飾りがびっしり

各地に残るしめ飾り

伊勢地方に伝わる「笑門飾り」
・三重県 伊勢地方に伝わる「笑門飾り」
笑門飾り

まずこちらは三重県伊勢地方の「笑門(しょうもん)」飾り。

昔、須佐之男命(スサノオノミコト)を助けたとされる「蘇民将来」の逸話に由来する飾りで、年神様をお迎えするほかに無病息災の意味も含まれているので、伊勢地方では一年中飾っておくそうです。

笑門飾り
実際にべにや民芸店さんで一年飾った状態のもの。経年変化も楽しめます

ユズリハ、裏白、柊、馬酔木など縁起の良い葉っぱがついています。

愛媛県西予市「宝結び」のしめ飾り
・愛媛県西予市「宝結び」のしめ飾り

続いては、愛媛県西予市でつくられる「宝結び」のしめ飾り。長寿・多幸などを願う吉祥文様「宝結び」を輪のなかに配したデザインは、つくり手である上甲清(じょうこう きよし)さんが着想したオリジナル。

黒米バージョンと白米バージョンの2種類がつくられています。

宝結び

ちなみに、このしめ飾りのように輪っかの中に文様をしっかり編むには高い技術が必要とのこと。

「鶴寿」。現在は作れる人がいない
「鶴寿」。現在は作れる人がいない

参考にと見せていただいたこちらは「鶴寿」と呼ばれるお飾りで、30年以上前に山口県の下関でつくられたのだそう。

文字通り、鶴と寿を表していますが、難易度が非常に高く、当時つくっていた職人さん以外には真似ができず、現代に至ってはつくれる人がいなくなってしまったといいます。

・秋田県「宝珠型」のしめ飾り
・秋田県「宝珠型」のしめ飾り
秋田県「宝珠型」のしめ飾り

秋田の「宝珠型」のしめ飾り。藁(わら)ではなくスゲという植物が使用されており、近くで見るとまた違った風合いを感じるお飾りです。

秋田県「宝珠型」のしめ飾り
近くで見ると質感の違いがわかる
島根県出雲地方の「鶴亀飾り」
・島根県出雲地方の「鶴亀飾り」

こちらは、鶴と亀がついていかにもおめでたい島根県・出雲地方のしめ飾り。このように長寿を意味するモチーフが使われることは非常に多くなります。

鳩・ハサミ・お椀。一風変わったモチーフのしめ飾りも

地方によって、横長だったり、縦長だったりと特徴があるしめ飾り。中には暮らしの道具などをモチーフにしたユニークなものも存在します。

京都「鳩」のしめ飾り
・京都「鳩」のしめ飾り

なにやら鳥のように見えるこちらは、「鳩」をかたどったしめ飾り。京都でつくられています。

べにや民芸店 店主の奥村良太さんいわく、「鶴はよく見ますが、鳩は珍しい」とのこと。よくよく見ると、胴体の部分の輪っかが二重になっていて、鳩の特徴を表しているそうです。

鳩のしめ飾り
胴体部分が二重の輪っかで表現されている
静岡県御殿場「ハサミ」型のしめ飾り
・静岡県御殿場「ハサミ」型のしめ飾り
静岡県御殿場「ハサミ」型のしめ飾り

二つのしめ縄がクロスしているように見える、静岡県 御殿場の「ハサミ」型しめ飾り。

御殿場には、ハサミを奉納する珍しい神社があり、それに由来しているのではと言われています。厄を断ち切る、邪心を摘み取るといった意味が込められているお飾りです。

長野県上田 お椀型のしめ飾り「おやす」
・長野県上田 お椀型のしめ飾り「おやす」
おやす

お椀のかたちをした「おやす」と呼ばれるしめ飾り。長野県 上田のもの。

かつては、中におせち料理などを入れてお供えしていたそう。現在は橙(だいだい)などを入れることもあるようです。

奇跡的に続いてきたしめ飾りの伝統

前回の東京オリンピックの年に創業して55年になる「べにや民芸店」では、30年以上も前からしめ飾りを扱ってきたそう。

「やはり、地方によって形が違う面白さがありました。なるべくなら地域に根付いたものがよいと考えていて、ここにあるのは伝統的なものが多いと思います」

と、奥村さん。

べにや民芸店 奥村良太さん
べにや民芸店 奥村良太さん

しめ飾りは、作り手さん自身もはっきりとした由来を知らないままに受け継いでいるケースが多いのだとか。

「それでもこれだけたくさんの種類が今日まで残っているのが不思議ですよね。

『鳩』の飾りを作っている方に『なんで鳩なんですか?』と聞いた時も、『ずっと作ってるから』としか答えてくれませんでした(笑)」

三重県伊賀地方「えびす馬」飾り
・三重県伊賀地方「えびす馬」飾り(写真中央)

中央に見えるのは、三重県 伊賀の「えびす馬」飾り。作り手さんは80台半ば。一昨年に一度引退されたものの、今年再び作ってくれたのだそうです。

奥村さんの知る限り、その方以外に作っている人はいないとのこと。

「えびす馬」に限らず作り手さんの高齢化が進み、伝統的な飾りを伝え続けていくのは難しい状況になっています。

一方、そのデザイン性の高さ・面白さが徐々に広まって、最近は若い方も来店するようになったとのこと。

しめ飾り

「輪飾りと呼ばれる小ぶりなものであれば、水周りや勝手口など家の中で気軽に飾ることができたりして人気です」

京都の輪飾り「ちょろ」
・京都の輪飾り「ちょろ」

玄関だけでなく、家の中の各部屋で飾るタイプであれば、気軽に導入できるかもしれません。そのほか、門柱や門松につけるもの、車のナンバープレートにつけるものも存在します。

しめ飾り
しめ飾り
ナンバープレートにつけるタイプのしめ飾り
ナンバープレートにつけるタイプのしめ飾り

ここまで、日本各地に残るしめ飾りをいくつか紹介してきました。

紹介できたのはほんの一部ですが、気になるものはあったでしょうか。好みのデザインを探したり、部屋のどこに置こうか考えてみたりすると、正月飾りが身近に感じるようになってきます。

また、自分の地元にはどんなタイプの飾りが残っているのか、改めて調べてみても面白いのではないかと思います。

職人がひとつひとつ手作りしているしめ飾り。同じ種類でも、実際に見比べてみると少しずつサイズや形状が異なっていて、選ぶのも楽しいはず。

べにや民芸店さんは、年末30日まで営業中。すでに売り切れてしまっているものもありますが、しめ飾りの多様性に触れられるよい機会です。是非一度、足を運んでみてください。

<取材協力>
べにや民芸店
http://beniyamingeiten.com/index.html

文:白石雄太
写真:カワベミサキ