食卓の小さな道具が、豊かな暮らしと豊かな森をつくる。木の七味入れ「kodachi」【地産地匠アワード】

土地の風土や素材、産地や業界の課題に、真摯に向き合って生まれたプロダクト。

そこには、日本のものづくりの歴史を未来につなぐそれぞれの物語がつまっています。

「地産地匠アワード」は、地域に根ざすメーカーとデザイナーとともに、新たな「暮らしの道具」の可能性を考える試みです。

2026年の受賞プロダクトの中から、木の七味入れ「kodachi」をご紹介します。それぞれの背景にある物語をぜひお楽しみください。


※受賞商品「kodachi」は、中川政七商店 公式オンラインショップおよび、中川政七商店 奈良本店、渋谷店、ニュウマン高輪店、福岡天神店にて販売しています。

・「kodachi -Shichimi Spice Holder-」

見逃されていた広葉樹の価値を見直すプロダクト

愛らしいサイズ感の中に込められた職人の技。一つひとつ異なる木の表情が、食卓に森の風景を運んでくる。無垢の木の佇まいが印象的な七味入れ「kodachi」は、中央アルプスと南アルプスに挟まれた土地、長野県 南部の伊那谷で生まれました。

「僕たちの軸足は木のものづくり。それによって暮らしに変化をもたらして、そして森林課題を解決したいんです」

そう話すのは、長野県伊那市を拠点に活動する株式会社「やまとわ」の代表 中村博さん。

株式会社やまとわ 代表取締役CEO/里山材 家具職人 中村博さん

山の幸や木材を供給し、水質を浄化し、酸素を生み出し、洪水や土砂崩れを防ぐ。

普段意識することは少ないかもしれませんが、森林が持つ自然の仕組みは私たちに本当にたくさんの恩恵を与えてくれています。そんな山や森の機能が、放置林の増加や過度な伐採、樹種のバランスの偏りなど、知らず知らずのうちにさまざまな要因で低下してしまっている。

そこに危機感を抱いた中村さんは、志を同じくする仲間との出会いを経て2016年に「やまとわ」を創業。以来、国内の森の資源を活かしたプロダクト開発と製造、それを用いた暮らしの提案を通じて、森と私たちの暮らしの距離を近づける活動をおこなってきました。

やまとわのオフィス兼工房
大自然に囲まれた環境

「森の木の中で、やっぱり建築用途に使いやすい針葉樹ばかりがフォーカスされてしまっていて、広葉樹はなかなか利用されていないんです。

細くて曲がっていても、特徴がばらばらでも、その魅力を活かして、日常で使ってもらえるプロダクトにできる。そんなメッセージも込められればいいなと」

樹種が多くて仕分けが難しいことや、針葉樹と比べて成長に倍ほどの時間がかかることなどから、商業的な価値が低いとされてきた広葉樹。利用価値が見い出せないから放置される森が出て来たり、新たに植えられるのが針葉樹ばかりで生態系のバランスが崩れたりと、広葉樹の利活用は森林を巡る大きな課題のひとつです。

「まずは広葉樹を暮らしの中で楽しく使ってもらう。そうすれば、森の課題みたいな話にも、多少は興味を持ってもらえるんじゃないかという思いがありますね」

通常は使用されない細い木や短い木でも作れることが、小さな七味入れの大きな特徴

「私も、取り入れるのにハードルが低い小さなアイテムから使っていただいて、森に少しでも興味を持ってもらえたらと思いました」

同社の取締役で、木工と設計ディレクターを務める吉田さんもそんな風に振り返ります。

株式会社やまとわ 取締役/木工と設計ディレクター 吉田かおりさん

東京出身で、お子様の誕生を契機に長野に移住した吉田さん。自身が感動した森の魅力を広く届けるため、‟その道のプロ”と一緒にものづくりができないかと考えていました。

そこで声をかけたのが、東京を拠点としながらも長野の山と深いかかわりを持つ、料理家の蓮池陽子さんでした。

料理家の目線で追及した、使いやすく素敵な「木の七味入れ」

料理家・蓮池陽子さん

東京 池袋育ちながら、母方の実家である宮城岩出山の自然が大好きだったという蓮池さん。大学の友人の誘いでアウトドアに興味を持ち、その流れでアウトドアクッキングのワークショップ講師へ。その職場でなぜか里山ガイドに駆り出されるようになり、山の面白さに目覚めたのだとか。

「小中学生の子どもたちを案内することになって、カエルの種類を覚えたり、カブトムシを取ってみせたり。そうこうするうちに、食には興味があったので、山菜やキノコを採るようになって、それがツアーみたいになっていって。というのが原点ですかね。

だんだんと、微生物がいるからこそ山は循環してるんだな、とか。すごいシステムだな、面白い!みたいなことに気づいていきました」

こちらが採りすぎなければ、また翌年になると自然に生えてくる植物たち。その生命の力強さにもひかれたといいます。

「全国の山がどんどん荒廃していく中で、ひとりでは無理でも、自分の力が活かせるところがあればそこで一緒にやってみたいという思いはずっと持っていました。

『やまとわ』さんのことは元々注目していたんですが、イベントを見学しにいったりしてつながりができて、今回お声がけいただいて。飛び跳ねるほど嬉しかったですね」

木の七味入れというアイデアは、蓮池さんの一言から始まりました。

「木の食卓の道具って、お皿とかスプーン、お箸、木べらとか、素敵なものがすでにたくさんあるんです。でも、素敵な木の七味入れはあまり無いかも、と思って提案しました。

私はデザイナーではないので、最初はどこまで何を伝えればいいのか悩んだんですが、途中から『いいものを作りたいんだから、要望は全て言ってみよう!』と開き直って。サイズとか使い勝手とか、かなり細かくお伝えしましたね。

それを形にしてくれた職員さんは本当に大変だったと思います(笑)」

蓋と本体の木目が揃うと穴が見える、という細かいこだわりも。
サイズや穴の位置など、佇まいと勝手を追求してさまざまな樹種で試作を繰り返した
蓋が緩すぎず、絶妙なきつさですぽっと抜けてしまわないように調整。茶道で使う「棗(なつめ)」の蓋の具合を参考にしたのだとか

「特に、この穴の位置にはこだわりました。デザイン的にもそうなんですが、なによりも使い勝手が良いのを最優先に考えて。職人さんからすると、もう少し下に穴がある方が作りやすいと思うんですが、七味の粉を出す際には穴が極力上にある方が出しやすいはずだと思って、ご無理を承知でお願いしました。

使い勝手が悪いものは、後から使わないものになってしまうので、そうならないように心がけたつもりです。

でも最終的には私がオーダーしていない、細かなところも想像以上に仕上げていただいて。職人さんはすごいなと改めて思いました」

使い手を想いながらブラッシュアップを繰り返す

「kodachi」の設計・製造を担当しているのは、木工と設計 職人の関優一朗さん。長野県の出身で、工芸技術を学べる京都の大学を経て「やまとわ」に就職しました。

木工と設計 職人 関優一朗さん。「やまとわ」の新卒第一号として6年前に入社した

「蓮池さんからいただいた穴の位置のリクエストは結構難しかったですね。

ユーザーの手元に届いた後の使い勝手や強度、デザインとしてどうなのか、職人としてどう作ったらいいのかっていうことを並行して考えて、試行錯誤しました。作ってみてブラッシュアップしての繰り返しで。

4種類の樹種を使っていてそれぞれ堅さも違います。『さくら』や『かえで』は特に削りづらくて、難しかった。なんとか完成出来て良かったなと思っています」

とにかく夢中で試作を繰り返しながら、精度の高さと量産スピードを両立するポイントを探っていったそうです。

蓮池さんがもっともこだわった穴の位置。なにより使い勝手を考えた時にゆずれなかったポイント

食卓に置きたくなる素敵な佇まいで、使い勝手もよい七味入れ。使い手目線で蓮池さんがリクエストしたポイントに、木を熟知した作り手として応える関さん。両者のやり取りを経て、手のひらに収まる小さな木の道具の完成度はどんどんと上がっていきました。

蓋の閉まり具合を入念に確かめる
中村さんも現役の職人として工房に入る

商品に応じて治具を開発したり、最適な機械を選んだり、時には改造を施したり。機械化が進んでも、人の手が入る余地はまだまだ無数に存在します。

「工作機械は使いますが、完全なコンピューター制御は難しく、どうしても職人仕事が6割ぐらいは残ります。そこにロマンがあると思うし、作っている人が楽しいかどうかみたいなことも、やっぱり大切かなと。

会社の中にも、職人もいればPCで仕事する人たちもいる。その多様な関係性みたいなのがものすごく大事なんじゃないのかなと思いますね」(中村さん)

食卓の小さな道具が、豊かな暮らしと豊かな森をつくる

「都会で生活をしている人たちが、森のことを完全に知らない状態になっている。それが末恐ろしいなって思っているんです」と蓮池さん。

この七味入れが、森を考えるきっかけになることに期待を込めています。

「山や森のことを考えるきっかけを作っていきたい。そこが『やまとわ』さんと私で合致している部分なので、これからも一緒に何かを作ったり、イベントなんかもやっていきたいなと思ってます。プロダクトの第2弾、第3弾もそうだし、中身の七味自体も検討しています。

やっぱり料理家としては『美味しい』ということは大前提にしつつ、そこにメッセージのあるものを届けられたらすごくいいなと思っています」

「賞をいただくのは小学生依頼で、とても晴れやかな気持ち」と受賞の喜びを話す蓮池さん

同じように、自然との関係性に課題を感じてきた中村さん。それでも、これまでの「やまとわ」の活動を通じて、少しずつ見える世界が変わってきたと、手ごたえを感じています。

「僕一人では何もできなかったと思うけど、会社としてみんなでやってきて、当時は想像もしてなかった大きな山の管理を任されたりもして。

続けていけば必ず、その山自体を変えていくことができる。そうすれば、たとえば下流域の水質とか、生き物の状態とかが変わっていくんだな、というのがリアルに見えてきて、解像度もどんどん上がってきています。

会社の人材もバラエティ豊かになってきて。それぞれ得技は違うけど、やりたいことが一緒になれば世の中は変わっていくんだなと。そんな希望が持てているので、すごくわくわくしています。

この七味入れはその典型というか。蓮池さんも含めて色々な人の特技と思いが重なって完成しているもので、今の僕たちを表現してくれていると思うんです」

食卓の上の小さな道具が、私たちの暮らしを少し豊かに、楽しくしてくれる。そして知らず知らずのうちに、その豊かさをもたらす森に思いを馳せる人が増えていく。「kodachi」が広がった先には、そんな素敵な未来が広がっています。

・「kodachi -Shichimi Spice Holder-」

<関連特集>

文:白石雄太
写真:阿部高之

“織る”から“植える”へ。藺草の可能性をひらく新発想のラグ「izaiza」【地産地匠アワード】

土地の風土や素材、産地や業界の課題に、真摯に向き合って生まれたプロダクト。

そこには、日本のものづくりの歴史を未来につなぐそれぞれの物語がつまっています。

「地産地匠アワード」は、地域に根ざすメーカーとデザイナーとともに、新たな「暮らしの道具」の可能性を考える試みです。

2026年の受賞プロダクトの中から、藺草の産地・熊本でうまれた「izaiza」をご紹介します。それぞれの背景にある物語をぜひお楽しみください。

※受賞商品「izaiza」は、中川政七商店 公式オンラインショップおよび、中川政七商店 奈良本店、渋谷店、ニュウマン高輪店、福岡天神店にて販売中です。

・「itiiti izaiza SHIKAKU」
・「itiiti izaiza MARU」
・「itiiti izaiza YATSUSHIRO」

畳文化を支えた藺草(いぐさ)の魅力を、もう一度暮らしの中へ

「これ、本当に藺草(いぐさ)なんですか?」

思わずそう尋ねたくなる、一枚のラグ。熊本県八代市で育てられた藺草を使いながら、「畳」とはまったく異なる表情を見せる新発想のラグ「izaiza(イザイザ)」です。名前の由来は「『藺』草に『座』る」を意味する「藺座(いざ)」という造語から。

立体的に植え込まれた藺草が、毛足のあるラグのような柔らかさと、ほどよい張りを併せ持つ新感覚の質感を生み出しています。古くから畳やゴザに使われてきた素材とは思えないほど新鮮な佇まいですが、近づくと、どこか懐かしい畳の香りがふわり。

「izaiza」の試作品

このラグを手がけたのは、プロダクトユニット「itiiti(イチイチ)」の田中典子さん、村上貴美さんと、クリエイティブディレクターの佐藤かつあきさん。国内有数の藺草の産地・熊本県を拠点に、地域の素材と向き合いながら、新たな可能性を探っています。

プロダクトユニット「itiiti」の田中ノリコさん
プロダクトユニット「itiiti」の村上キミさん
株式会社かつあきのクリエイティブディレクター 佐藤かつあきさん

藺草は稲のようにすっと伸びる多年草。優れた調湿性や心地よい肌触り、心をほっとさせる特有の香りなど、天然素材ならではの魅力を持ち、日本の畳文化を支えてきました。なかでも八代市は「藺草のまち」として知られ、国内トップクラスの生産量を誇ります。

「でも近ごろはそれが教科書にも載っていないし、畳が藺草から作られていることも認識してもらえなくなってきていますね」と、田中さん。

住宅事情やライフスタイルの変化による畳需要の減少に加え、安価な輸入品の増加、市場価格の低下、藺草専用の機械メーカーの撤退などが重なり、藺草農家は年々減少しているのだそうです。

乾燥させた藺草。すっと伸びる姿が潔く、美しい。「藺草が青々と育っている田んぼの景色も美しいんですよ」と田中さん
八代の藺草畑

「まずは藺草を知ってもらうことが大事なんです」

田中さんの言葉には、産地の現状をそばで見てきたからこその、強い思いが込められていました。

藺草に親しむ入り口を作る、これまでにない提案

「畳に座るんじゃなくて、藺草に座りたかったんです」

田中さんのその一言に、このプロダクトの原点がありました。一般的に藺草は、ゴザや畳表として織り上げられたのち、さまざまな製品へ加工されていきます。しかし田中さんが見つめていたのは、その手前にある、一本一本の藺草という素材そのもの。

「藺草を知ってもらう入り口として、これまで藺草のアクセサリーなどを作ってきましたが、それだと女性がメインになるんですよね。もっと広く知ってもらうために、インテリアや暮らしの中で使えるものができたらいいなと思って」(田中さん)

カラフルに染められた藺草を使用。藺草を染める専門業者は、国内でわずか2組だとか

伯父が元々藺草農家だという田中さんにとって、藺草は子どものころから身近な存在でした。その可能性を広げようと、藺草のアクセサリーや、短くカットした藺草の断面を見せる椅子など、畳やゴザとは異なる表現にも挑戦してきました。

染めた藺草の粒に一つずつ糸を通して紡ぐ「igusa」ピアス。空気のように軽い着け心地と藺草の香りをまとう、新感覚のアクセサリーとして注目されている

「伯父が藺草農家をやめることになった時に、自分がこの立場にいたのに、やめさせてしまったような悔しさがあって。だから、藺草をつないでいかなければいけないと思いました」(田中さん)

もっと多くの人に届けられる形を考えるなかで浮かんだのが、素材を一本ずつ打ち込む「タフティング」という技法。

「これでラグを作ったら、藺草の世界が変わるんじゃないかと思いました」(田中さん)

「タフティング」は専用の器具で布に毛糸を打ち込み、ラグやカーペットが手軽に作れるというもの。体験やワークショップでも人気を集めています。高密度でしなやかな繊維を持つ、藺草の特性を活かしやすい技法でもありました。

収穫したばかりの藺草

とはいえ、そのアイデアがすぐに形になったわけではありません。

「本当にできたら面白いと思っていたけれど、漠然としていて、構想のまま長く止まっていました」(村上さん)

そんな時、SNSで「藺草でつくられたラグかも!という写真を目にした」という田中さん。「先にやられたと思って、本当に悔しくて泣いてしまった」と振り返ります。

よくよく確認すると、それは藺草ではなく毛糸のラグでしたが、その時の悔しさが「早く進めなければ」という強い原動力になりました。

藺草は乾燥するとコシが強くなるため、加工前に水に浸して、1本ずつ整えながら柔軟性をもたせる
布に打ち込まれた藺草。

藺草を布へ打ち込む様子を「田植えみたい」という田中さん。

「藺草を土に植える『イ植え』の風景と、タフティングで藺草を打ち込む構造が重なるんです。藺草農家の原風景が、そのまま映し出されているようで」

制作を重ねるなかで、「農業」と「ものづくり」は別々のものではないと感じるようになりました。

構想が大きく動き出したのは、2026年に佐藤さんとコラボレーションを始めてからでした。度重なる災害を受ける熊本の支援活動を続けてきた佐藤さんは、八代市での活動をきっかけにitiitiの2人に声をかけ、行動をともにするようになります。そのなかで試作のラグを目にし、「これは新しい。広がりがある」と直感したといいます。

「藺草農家さんにとっては、藺草はゴザや畳表になるのが当たり前。“織る素材”から、一本一本を主役にして“藺草そのものを活かす”という使い方は、身近で藺草を見てきた田中さんだからこそ生まれたもの。タフティングでラグにする発想は、畳から脱却して量産もできるかもしれない、とても新しいアイデアでした」(佐藤さん)

以前から気になっていた「地産地匠アワード」への応募を視野に入れ、プロダクトを洗練させる試行錯誤が始まりました。色や柄、コンセプトだけでなく、藺草の歴史や文化まで掘り下げながら、「何を伝えるべきか」を3人で整理する日々。

izaizaのカラーリングは、藺草畑の緑と水路を流れる水の青がモチーフ。細部まで相談を重ね、プロダクトとして磨き上げた

田中さん曰く、「悩んでいるところの一歩先のヒントをくださる存在」だったという佐藤さん。担ったのは、プロダクトそのものをデザインするのではなく「その価値をどう伝えるか」を考えるディレクションの役割でした。

新しい形を生み出すitiitiの2人と、その価値を見つめ、伝え方を編み直す佐藤さん。それぞれの視点が重なることで「izaiza」は、畳だけではない藺草の可能性を暮らしにひらく、新しい提案へと育っていきました。

藺草は収穫後に、色艶の保持や耐久性向上のため、天然染土を溶かした泥水に浸す「泥染め」を行う。「畳の香りは藺草だけの香りと思われがちですが、実は藺草本来の香りに泥染めの染料の香りが重なったものなんですよ」と田中さん。染土の調合や香りは、農家ごとに違いがあるそう

新しい挑戦を後押しした、八代への想い

一方、佐藤さんは、本業であるデザインを通して、さまざまな社会活動に取り組んできました。

「東京や福岡など拠点を変えながら、妻の実家がある熊本に引っ越してきたんです。そして2016年4月に熊本で大きな地震が起きた。この大変な状況で、お世話になっている熊本に何かできないか、しなきゃと思うようになって。

復興には息の長い支援活動と、多くの人の関心が必要です。クリエイティブの力が少しでも役に立てばと、地元のクリエイターと一緒に一般社団法人『BRIDGE KUMAMOTO』を立ち上げました」

2016年の熊本地震で、石垣の崩落や建造物の倒壊など甚大な被害を受けた熊本城。2021年に天守閣の復旧が完了した

熊本では地震だけでなく豪雨もたびたび発生し、2025年にも深刻な被害に見舞われました。そのたびに佐藤さんたちは、被災地で使われたブルーシートをアップサイクルしたプロダクトの制作や、支援金・助成金を集める活動などを通して地域を支えてきました。

熊本城内には、2016年の大地震の爪痕が今なお残る場所も多い

2025年の九州豪雨災害では八代市の藺草農家も大きな被害を受け、itiitiの2人も車が水没するなど、被災を経験しています。

豪雨で地域全体が大きな傷を負うなか、企業から託された寄付金をどう活用するか考えていた佐藤さん。頭に浮かんだのが、八代市の藺草を使って活動をしていたitiitiと、新しいプロダクトを生み出すことでした。

「農家さんにトラクターを一台買ってあげられるほどの予算ではない。でも、新しいプロダクトを生み出して、産地全体を盛り上げることはできるかもしれないと考えました」(佐藤さん)

藺草農家を支えたいitiitiの2人と、佐藤さんの思いが重なり、3人の挑戦が動き出しました。試作していたラグを「izaiza」へと昇華させ、「地産地匠アワード」へ応募。見事グランプリに輝き、藺草の新しい可能性を広く発信するきっかけとなりました。

佐藤さんの事務所前に広がる、のどかな公園。震災前まではビルが建っていたそう。「このあたりに駐車場が多いのは、震災で建物が倒壊したところを活用しているから」と佐藤さん

さらに今回の取材後、2026年7月に再び熊本を襲った大地震により、現地はいまも厳しい状況にあります。今回も佐藤さんはいち早く新たな支援プロジェクトを立ち上げ、itiitiの2人も八代へ駆けつけ、藺草農家を支えています。

藺草の未来を考えることは、その土地の文化や人の営みを支え、次の世代へつないでいくことでもあるようです。

藺草の可能性を、未来へつなぐために

「izaiza」に使われているのは、畳には使われない、最も短い等級の藺草です。

「藺草は成長すると160cmを超えることもあります。長さによって8段階に選別されますが、短いものは畳表には使えず、廃棄されたり、燃やされたりしているのが現状です。『izaiza』やアクセサリーでは、そんな藺草を活用しています」(田中さん)

たびたび八代を訪れ、藺草農家との信頼関係を築いてきたitiitiの2人と佐藤さん。「クリエイターとして生きているからこそ、できる支援があると思っている」と、藺草の未来と産地を支える活動に力を注いでいる

畳になれなかった藺草が、誰かの暮らしを彩るラグになる。それは廃材活用というだけでなく、素材の可能性を最後まで信じる挑戦でもあります。農家からも「捨てるはずだったものが、誰かに喜ばれるものになるのがうれしい」という声が届いているそうです。

藺草の田んぼの色や景色、香り、機械の音。その一つひとつが、藺草とともに育ってきた田中さんの原風景。「藺草という言葉が出てくるだけで、もう、幸せですよ」。その言葉から、藺草への深い想いと愛情が伝わってくる

さまざまな熱い思いを抱く3人に、これからの展望を尋ねました。

「毛糸だけでなく、藺草でタフティングの体験をしてもらえたら面白いですよね。藺草を『畳の材料』ではなく、自分の手で形にできる素材として親しんでもらう。ものづくりの楽しさを入り口に、地域の素材や文化に興味を持つ子どもたちが増えてくれたらうれしいです」(村上さん)

「八代に藺草の資料館や博物館、ショップなど、もっと見て触れてもらえる場ができるといいですね。農家さんの現場を見てもらえるツアーなどもできたら。田んぼを見たり、香りを感じたり。私たちがハブ役になって、藺草の背景まで含めた体験を届けたいです」(田中さん)

「まだまだ魅力に変えられるものはたくさんあると思うので、それをどう形にしていくのか考えていきたいですね。オープンな施設で触れてもらい、いろんな人がラグなどを作れるようにしたり、プロダクトを販売したり。ホテルや国際会議場、駅などでもitiitiさんの作品が採用されて、多くの方に触れてもらいたい。工芸は、最初から伝統工芸だったわけではないんですよね」(佐藤さん)

3人の思いの先にあるのは、藺草の魅力を次の世代へつなぐこと。「izaiza」は、今はまだ小さな挑戦かもしれません。けれど、一本の藺草から、新しい物語はもう始まっています。

100年後、このラグが当たり前のように暮らしの中にあり、「藺草にはこんな使い方もある」と語られていたなら。それは、新しい工芸の始まりと言えるのかもしれません。

・「itiiti izaiza SHIKAKU」
・「itiiti izaiza MARU」
・「itiiti izaiza YATSUSHIRO」

<関連特集>

文:安倍真弓
写真:黒田タカシ

【はたらくをはなそう】中川政七商店 店長 大槻紘子

大槻紘子
中川政七商店 奈良本店 店長

2019年 中川政七商店 ルミネ大宮店 配属
2021年 ルミネ池袋店 配属
2021年 中川政七商店 大丸心斎橋店 店長
2022年 中川政七商店 奈良本店 副店長
2023年 中川政七商店 エスパル仙台店 店長
2025年 中川政七商店 奈良本店 店長


ーー中川政七商店に入社した理由を教えてください。

実家が宮城県の山中にあり、人は少ないものの昔ながらの環境や文化が豊かな場所で、この先も残ってほしいという思いがありました。そこから地域ブランディングやデザインに興味を持ち進学したのですが、就職先を検討する際にどこを見てもあまりしっくり来なかったんです。ある時には「地域の過疎は止まらないからデザイン会社に入っても解決にならない」というようなことを言われ、打ちのめされていました。

そんな時にお客さんとして入ったエスパル仙台店で、書籍「日本の工芸を元気にする!」を手に取り、工芸を元気にできれば産地や文化を元気にできるんだ!と思い、とても胸が熱くなりました。そして実際に会社説明会に行き、千石さんの「販売員はものづくりの最前線である」という言葉にも心を掴まれ、今こうしてお店に立っています。

まだまだ勉強中ではありますが、数年間、店長職を務めてきた中で、「お客様に商品の魅力を伝えよう」「産地を元気にしよう」と共感して店頭に立ってくれている店舗スタッフひとりひとりが財産だなとつくづく感じています。素敵で心強い仲間とともに沢山のお客様に魅力をお伝えし、使い手を増やしていければと思います。

ーー接客をする中で、思い出深いエピソードはありますか。

湯呑みを見ていらっしゃった男性にお声がけすると、どうやらお茶好きの奥様への誕生日プレゼントをお探しとのこと。デザインや重さ、産地の特性や1点ずつのゆらぎをご案内すると、「ころ湯呑 有田焼 白磁ろくろ」をお選びになりました。

奥様は「夕ご飯終わりのゆっくりした時間に隣でお茶を飲んでる」ということだったので、お客様も一緒にお茶を楽しんだらもっと素敵な時間になりそうだなと思い、ご提案してみました。すると、「確かに、俺もいいお茶教えてもらうかな」と別の湯呑みも合わせてご購入いただきました。お茶をお2人で楽しむ暮らしや、器を愛でる気持ちのお手伝いができ、とても嬉しかったです。

ーー好きな工芸品を教えてください。

太宰府天満宮で買ったうそどりの笛です。旅行の思い出としてその土地のお飾りや道具を買うようにしているのですが、見た目が可愛らしいのと、気が向いたときに鳥のお尻に口をあてて笛を吹くとかなり気が抜けて楽しいので一番気に入っています。災厄を「嘘」に変えて幸運を招く縁起の良い鳥 とされていて、縁起がいいそうです。

ーー普段、お仕事以外の時間はどんな過ごし方をしていますか。

好きなバンドのライブに行ったり、スタッフさんとごはんに行ったりしています。年々、「見たいものを見れるうちに」と言う気持ちが高まっており、連休をいただいて旅行に出かけたりもしています。

ーー奈良本店の周りはどんなところですか。

世界遺産や歴史的建造物、途方もない時間を経て受け継がれている文化の痕跡が至る所にあることがとても面白く、お出かけする内容に困りません!また、昔からのお餅屋さんや鶏肉屋さん、お洋服屋さん、銭湯など色々なお店が今も元気に残っているところが奈良町の本当に素敵なところだなと思っています。

<愛用している商品>

〇強撚綿のプルオーバー

おすすめ理由:とても暑がりなので、涼しい服を着ようとするのですが、生地が薄いものは気づいたらシワになりがちです。強撚綿のプルオーバーは綿素材なのに編み方の工夫で全くぺたぺたせず、着心地がよい上に皺がほとんどつかないので、機能的にもデザイン的にも本当に重宝しています。家に5着あって、夏はこれが無ければ過ごせません。



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。

【旬のひと皿】パプリカと鶏肉のさっぱり煮

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



旬のひと皿 パプリカと鶏肉のさっぱり煮

夏がはじまる少し前に、海を見に行ってきました。海岸端の少し小高い場所にある民宿は、70代中頃のオーナーさんから引き継いだ地元の若い方がリフォームされた場所でした。

1階部分は海を見渡しながら休憩できる共有スペースになっていて、お部屋があるのは2階。階段を登ると客室は6部屋ほどあり、奥の方まで案内していただいて「こちらでどうぞ」と部屋のドアをあけてもらいました。部屋に入ると、目の前には海が。2面の大きな窓があり、両方から日本海を望める素敵な景色です。

窓をあけてみるとそよそよとカーテンが揺れて、気持ちのよい風が入ってくる。歩いて行ける距離に温泉もあり、陽の沈む頃に向かってみると地元の方が日常で使われているところのよう。少しだけ地元の人になったような気分で久しぶりの温泉につかりました。

疲れていた身体がびっくりするほど元気になっていて、外へ出ると水平線に近づいてくる夕日を見ながらなんと豊かな場所や景色だろうとぼーっと見ていました。

奈良に帰ってきた頃には梅雨も明け一気に夏が始まっていました。真夏の時期に真っ赤な食材で元気の出るものを作りたいなと、今回は赤い土鍋で「暑い夏を乗り切ろう!」メニューです。

「プーレ オ ビネイグル(鶏のワインビネガー煮)」はフランス・リヨン地方の郷土料理。学生時代、フランス料理を学んでいた頃に教わり、「酢を入れて煮る!?」と当時は思ったのですが、お肉も柔らかくなり酸味は飛ばしているので酸っぱ過ぎません。爽やかな酸味があり夏の食欲の低下する時期にも食べやすいです。

今回は、より馴染みのある味でと思い、日本のお酢を入れて作りました。パプリカを大きめにカットして煮込み、鶏肉も主役!パプリカも主役!みんな主役な元気色の煮込みをどうぞ。

<パプリカと鶏肉のさっぱり煮>

材料

・鶏モモ肉…1枚
・赤玉ねぎ…1個(普通の玉ねぎでも可)
・パプリカ…2個
・トマト…1個
・パセリ…少々
・酢…大さじ1

作りかた

鶏モモ肉のスジや余分な脂を取り、塩(分量外)をしてしばらく置く。

両面に軽く塩をふる

玉ねぎはくし切りに、パプリカは4分の1に、トマトは小さめにカットする。

食べ応えがあるように、四等分にカットして種をとる
トマトはこまかく角切りに。皮は剥かなくてもOK
パセリは茎だけカットしておく

土鍋に少し油をひいて火にかける。玉ねぎを入れて塩少々(分量外)をする。

鶏モモ肉は、クッキングペーパーで水分を取ってからフライパンで皮目に焼き色をつける。焼き色がついたらひっくり返して、身の部分は表面の色がさっと変わるくらいでフライパンから取り出す。残った油はだし汁として土鍋に入れる。

お好みの油を少々引いてから、皮を焼いていく
焼き色がついたらひっくり返して、身の色が変わる程度にさっと焼く
お肉の油が残ったところに大匙1程度の水を入れ、だし汁として土鍋に入れる

土鍋の玉ねぎの上にパプリカを並べ入れ、さらに塩少々(分量外)をする。次にカットしたトマトとパセリの茎を入れて、その上に焼いた鶏モモ肉を載せ、お酢を回し入れる。

パプリカを入れて、一度軽く塩をふる
鶏肉の煮汁をパプリカに吸わせるイメージで
お酢を回し入れる

蓋をして15分ほど弱火で煮込んでいく。途中で煮汁を鶏肉に回しかける。

時折、煮汁を底からすくって回しかける

鶏肉に火が入ったことを確認して、パセリをちらして完成。切り分けてうつわに盛り付ける。

うつわ紹介

・美濃焼の豆皿 安南唐草


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【はたらくをはなそう】中川政七商店 店長 岡里ゆかり

岡里ゆかり
中川政七商店 ペリエ千葉店 店長

2019年 中川政七商店 ルミネ新宿店 配属
2020年 中川政七商店 ルミネ新宿店 店長 
2021年 日本市 羽田空港第2ターミナル店 店長
2022年 中川政七商店 ルミネ池袋店 店長
2024年 中川政七商店 ペリエ千葉店 店長
2024年 遊中川→中川政七商店 エキュート上野店 
2025年 中川政七商店 アトレ品川店 店長
2025年 中川政七商店 ペリエ千葉店 店長


作り手の気持ちを届けたい。

お菓子作りに興味を持ち、作り方や販売を学んでいた頃、職人さん一人ひとりの想いを受け取り、それをお客様へ届けられる販売の仕事に魅力を感じるようになりました。

その後は、お菓子作りの楽しさをもっと多くの方に知っていただきたいと、ワークショップの企画・運営にも携わり、作る楽しさを伝える仕事に従事。そして自分のこれからを考えたとき、製菓・製パン業界とは違う世界も見てみたいと思い、出会ったのが中川政七商店です。

届けるものが変わっても、想いは同じ。
作り手の気持ちを届けたい。

入社してまず感じたのは、一緒に働くスタッフさん方の商品に対する想いでした。みなさんが目を輝かせながら商品の魅力を語ってくださる姿を、今でも鮮明に覚えています。

ターミナル駅や空港、駅ナカなど、さまざまな立地の店舗を経験してきました。その中で、立地が変わるとお客様の雰囲気や求められるものも大きく変わることを実感しました。

そして今働くペリエ千葉店は、日常に寄り添うお店。

毎週決まった曜日に立ち寄ることを楽しみにしてくださるお客様。
遠方の娘さんに会いに行く洋服を、「ここで揃えなきゃ!」と信頼を寄せてくださるお客様。
ありがたいことに、中川政七商店に行けば良いものが見つかる。そう期待を持ってご来店くださる方も多くいらっしゃいます。

「ハードルを上げずに工芸を日常に取り入れてほしい」
以前私がとある職人さんにお会いした時にいただいた言葉です。

作り手と使い手をつなぐこと。


「まずは使ってみようかな」そんな気持ちになっていただけるような伝え手であり続けられるよう、これからも店頭に立ちたいと思っています。

最近では、新店の立ち上げに携わる機会も続き、新しく中川政七商店の仲間になったスタッフさんと一緒にお店を作り上げることが増えました。みなさん異なる経験や得意分野を持ち、お互いを支え合いながら作るお店には、同じ中川政七商店であっても、店舗ごとに異なる魅力や空気感が生まれます。

その土地に暮らす方々に長く愛されるお店を、これからもスタッフさんと共に作り続けていきたいと思います。

<愛用している商品>

〇かきまぜやすい琺瑯のぬか漬け容器

おすすめ理由:使いはじめて2年になりました。ラウンド型はかき混ぜやすく、そして木蓋が調湿してくれる為、蓋裏の水滴に悩まされることがありません。

「ぬか漬けはずっとやってみたかった」と話してくださるお客様が多く、ご質問に対して自分の経験もお伝えさせていただいてます。

購入後も「最近漬かりが悪くて困ってます」「こんな野菜を漬けたら美味しかったです!」などお話しに来てくださる方がいる一方、ぬか漬け大ベテランのお客様には、こちらから「こんな時どうしたらいいですか?」とお伺いしたり。商品を通してぬか漬け仲間が増えていくのもうれしいです。



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。

【旬のひと皿】梅とレモンの甘露煮風シロップ

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



旬のひと皿 梅とレモンの甘露煮風シロップ

「最近雨が多いねぇ」と、母と話をしてしていたら梅雨入りしていました。少し前までは、もう夏が来たのかなという気温で、うっかりどんぐりの鉢植えの水を切らしてしまい、瑞々しい葉の一部が茶色くなってしまいました。梅雨の間は水やりを気にする事もなく、植木も喜んでくれそうです。

今回は何をテーマにしようかなと思い、梅を使ったつるっと喉を通る爽やかなゼリーを作りたいなと考えました。梅は発酵しやすいのと、水分が上がるまでに少し時間がかかるのが注意点。どんなやり方が失敗せず、おいしいシロップができるかなと、試しに数種類作ってみました。

まずひとつ目は梅が並び始めた最初に、青梅とレモン、河内晩柑を入れて酵素シロップを。青梅に包丁を入れて種と身を分けて作っています。実の部分はカリカリの砂糖漬けのようになっていてまだ完成までは時間がかかりますが、梅自体も既に美味しくて癖になる食感です。

もうひとつ、青梅と氷砂糖を瓶に入れ毎日揺すってシロップを製作中。こちらも1か月ほど後のお楽しみです。

最終的にこれにしよう!と決めたのは、梅もシロップも一度に美味しく仕上がる甘露煮風!

甘露煮とシロップと両方楽しめ、仕事終わりにシロップを炭酸で割って飲んでみたところ、シュワっと爽やか。疲れもシュワっと吹き飛ぶような美味しさになりました。

今回は大きな4Lサイズの青梅が手に入りましたので、青梅でチャレンジしています。梅に剣山で穴を開けて、色止めのためによく洗い、殺菌した十円玉を入れて作りました。これは綺麗に青梅を煮るための工程ですので、省略してくださっても。黄色く色づいた完熟梅で作る場合には不要です。

急いで作るとせっかくの青梅の灰汁が少し残ってしまい気になるので、しっかり浸水させて、梅を茹でる工程を水を変えて3回。砂糖を入れて煮るときに灰汁を十分にとりながら煮ていき、シロップがとろりとしてきたら完成です。

グラスに梅をひとつとシロップをたらり、炭酸で割って初夏を乗り切るアイテムを今のこの時期に仕込んでおくと楽しみができますね。 

<梅とレモンの甘露煮風シロップ>

材料

・梅…1キログラム
・砂糖…500グラム
・レモン…1~2個(青梅は酸味が強いので1個、完熟梅の場合は2個でも) 

◆寒天ゼリー
・市販の寒天粉末…4グラム
・水…1リットル

作りかた

梅はひと晩(時間がない場合は2~3時間)、水にさらしてアクを取っておく。
(※完熟梅の場合、アク抜きは不要)。

へたを取ってから、煮たときに破れにくくするために、剣山や針などで梅の皮に穴をあける。
(※穴あけも、完熟梅の場合は不要)

爪楊枝や金串などでへたを取る
軽くコロコロと。

水で洗い、鍋に入れていく。
梅がひたひたにかぶるくらいに水を入れ、沸騰しないように30分ほどコトコトと煮る。
(※撮影では土鍋を使用していますが、ステンレスやホーロー鍋が扱いやすくておススメです)

色づきを綺麗にしたい場合、消毒しておいた10円玉を一緒に入れてもよい
弱火でコトコト

梅がやわらかくなってきたら火から下ろす。しっかりとアクを抜き、後味のさっぱりとした甘露煮とシロップにするために、しばらく水にさらす。

ここまでの、梅を煮て水にさらす工程を3回ほど繰り返す。2回目以降は煮る時間を短くする。

梅に直接水が当たらないように、巻きすなどを使えるとよい。※土鍋の場合、急冷すると割れる可能性があるため注意する

レモンは皮を取り、輪切りにする。

梅を一度取り出し、鍋に1リットルの水を入れて戻す。再び火にかけて、3回くらいに分けて砂糖を入れる。レモンも入れる。
梅の味をシロップに浸透させるようなイメージで、じっくり煮ていく。
※土鍋の場合、底が濡れたまま火にかけると割れる可能性があるので注意する。

シロップがとろっと濃度がつくまで煮詰める。煮汁を飲んでみて、梅の味とレモンのさっぱりした味が出ていれば完成。

別途、冷やしておいた寒天ゼリーにシロップをかけて、梅を載せて盛り付ける。

寒天ゼリーは、小鍋に水1リットルと粉寒天4グラムを入れてかき混ぜてから火にかける。鍋底から軽く混ぜながら、鍋のふちがふつふつしてくるまで熱し、容器に流しいれて冷やし固める
種を取って載せるのも食べやすくておススメ

うつわ紹介

・硝子の涼菓皿


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/