【あの人の贈りかた】おうち時間に安らぎと楽しみを(スタッフ森岡)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は労務担当の森岡がお届けします。



やわらかい香りで、おうちで安らぐ時間を。「牛乳瓶に入った消臭芳香剤」

入社してすぐの店舗研修中に、お店で商品を見た時からそのフォルムに一目惚れしました。柔らかい色、日本らしい香り。「中川政七商店らしい商品だなぁ」と感じたことをよく覚えています。

芳香剤として使い終わった後、花瓶として使えるところも気に入っている点。

贈りものとして直接手渡す際に「少し重みがある」というデメリットはありますが(笑)、渡した際のリアクションも良く「牛乳瓶懐かしい〜」と想い出話に花が咲きます。

贈り物をする際「ものだけではなく、温かな気持ちもいっしょに贈れたら」と、いつも考えています。「牛乳瓶に入った消臭芳香剤」を贈りたいのは、私の「優しく柔らかい香りに包まれてほしいな、おうちで安らいでほしいな」という、相手へのささやかな想いからです。

余談ではありますが、プレゼントした友人が、自宅の机の上にこの商品を開けずに置いておいたところ、遊びに来たお母さまに「この牛乳飲んでいい~?」と聞かれたとのこと。

そういうほんわかエピソードも生んでくれる贈り物です。

<贈りもの>
・中川政七商店「牛乳瓶に入った消臭芳香剤」

どんな人の食器棚にも馴染む。「THE GLASS TALL 350ml」

友人の結婚祝いは欲しいものを本人に直接聞き、プレゼントすることが多いのですが、予算にまだ余裕がある場合はこのグラスをペアで送ったりします。

実はあのコーヒーチェーンのカップと同じ形状、容量なだけあって、飲みやすい!持ちやすい!そして洗いやすい!私も自宅で愛用しています。

食器やコップのテイストの好みは人それぞれあるかと思いますが、どんな人の食器棚にも馴染むという点も贈り物に最適です。

普段も特別な日もたくさん使ってほしいなと思い、「シンプルだからこそ、美しい」が体現されているこのグラスを贈っています。

<贈りもの>
・THE「THE GLASS TALL 350ml」

日本らしい繊細さと美しさを感じるお菓子。アトリエうかい「フールセック・丸缶」

「長蛇の列ができ、午前中には売り切れる幻のクッキー」として長く知ってはいましたが、行列に並ぶ勇気がなく、密かに「いつか食べてみたい」と想いを募らせていたアトリエうかいさんのクッキー缶。

そんなアトリエうかいさんが、身近な大阪高島屋にできたと聞いた時は小躍りしました(笑)。

昨年の夏、韓国人の友人に会いに韓国へ行く際、お土産は何にしようか迷っていました。
友人は日本生活が長く、かつグルメ。そして日本を離れて二年ほど経つので、日本らしさも感じてもらいたい‥‥。

そんな時「そうだ!アトリエうかいのクッキー缶!」と思いつき、買いに走りました。もちろんお土産用と自分用に二つ。

案の定とても喜んでくれて、「さすが日本の有名店のお菓子だね。見た目もさることながら繊細な味がする」と、写真付きで感想を送ってくれました。アトリエうかいさんのクッキーから日本人の手仕事の繊細さや美しさを感じ、それを他国の人は「日本らしさ」として受け取ってくれているのだと、何だか私まで嬉しくなりました。

<贈りもの>
・アトリエうかい「フールセック・丸缶」

※中川政七商店での販売はありません

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 労務担当 森岡咲菜

【暮らすように、本を読む】#08「柳宗民の雑草ノオト」

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。

<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>

先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



足元に咲く、春を見つけに。『柳宗民の雑草ノオト』

春は散歩が楽しい。都会も田舎も関係なく、足元の草花が一斉に芽吹き、つやつやと健康そうな葉を付ける。

民芸運動の創始者・柳宗悦の息子である園芸研究家・柳宗民による、足元の草花にスポットをあてた本書は、60種の植物の鮮やかなスケッチと共に、奥ゆかしい解説が掲載されています。自宅の庭、あるいは散歩に訪れた野辺や山道で出会う雑草。それらを専門的な知識だけでなく、自らの体験と共に語られる、図鑑としても、エッセイとしても楽しめる一冊です。

例えば、「ツクシ」の本名は「スギナ」であって、「ツクシ」はその胞子茎のことであること。藤紫色の花を持つ「ムラサキハナナ」はホウレンソウに似た味がすること。「オオイヌノフグリ」や「ヘビイチゴ」など、植物名の頭に付いた動物の名前は、「贋(にせもの)」という意味で使われるものが多いということ。「どんな草でも、どこかに美しさがあり、役立つ面がある」と語る通り、身近で出会う雑草の名前やそのルーツ、性質を知ると、慣れ親しんだ景色が新鮮なものに感じられます。

「空色のカーペットを敷き詰めたように咲くオオイヌノフグリの姿は、春の訪れを告げる早春の風物詩だ」「厄介な雑草の一つだが、いざ抜きとろうとすると、その花の可憐さに、しばし躊躇してしまうのが、このカラスノエンドウだ」と、美しい表現と共に景色を切り取り、嫌な顔を向けられがちな雑草すら、我が子のように可愛がる著者。彼の語り口がどこか可笑しく、「次はどんな雑草がくるのだろう」と、飽きずにページをめくってしまいます。

そんな雑草たちは時々、「グルメ」の一面をみせます。寒天に実を閉じ込め、冷やして食べる「シロバナノヘビイチゴ」。佃煮にして炊きたてのご飯の上に載せて食べる「ツクシ」。食糧難の時代にひたし物として食卓を支えた「ナズナ」。「栽培物の葉菜にはない、自然の恵みの味わいがする」と、ご馳走としての雑草の魅力を語ります。

2月。肌寒さを残しながら、ふいに注ぐ陽気に春の気配を感じる頃。本書を片手に草花と友人になった気分で、足元に咲く、ちいさな自然を訪ねてみませんか。

ご紹介した本

『柳宗民の雑草ノオト』 文:柳宗民、画:三品隆司

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『柳宗民の雑草ノオト』

先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。

VALUE BOOKS
長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/

文:北村有沙
1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。


【はたらくをはなそう】中川政七商店 店長 長島佑佳

長島 佑佳
中川政七商店 広島T-SITE店


2022年 新卒15期生として入社 中川政七商店エスパル仙台店 配属
2023年 中川政七商店広島T-SITE店 店長



「寄り添いの心をもち、素直で丁寧な仕事がしたい」

就職活動中に、これだけは!と大切に持っていた指針です。
心から届けたいものを、直接顔を見て届けられること。就職活動をしていた時期がちょうどコロナ禍ということもあり、向かい合ってコミュニケーションを取ることの大切さや価値について、考えを巡らせていました。

学生の頃から中川政七商店で暮らしの道具を見ることが大好きで、もともとよく通っていた私。働いている店員さんはいつ訪れても穏やかで、接客の姿からは、商品が心から好きなのだな〜ということが伝わってきました。

そんな印象を持ちつつ、働く場所としてチャレンジがしたい!と強く思ったきっかけは、会社説明会を通して知った「接心好感」という言葉と、自分が大切にしたいことの、双方がピタッと一致した!!という感覚があったからです。

接心好感とは中川政七商店が接客において掲げる標語のようなもので、「お客様の心に接し、心地好いブランド体験を提供することで、商品、お店、ブランド、会社を好きになってもらう」という考え方。

お店によって、いろいろな接客スタイルがあると思いますが、人それぞれに異なる“心地よさ”を何よりも大切にする言葉が自分のなかでしっくりきて、働くうえで心に留めておきたい言葉だな‥‥と共感の想いを持ちました。

お店に立つうえで意識したい!と思っていることは、入社当初から変わらず「いつでも機嫌よくいること」です。

日々嬉しいこと、落ち込むこと、いろいろとあるけれど、店頭に立っているときはいつでも、機嫌よくフラットな気持ちでいたい。ニコニコと笑顔で仕事ができると、お客様にも、一緒に働く仲間にも、ポジティブな空気となって伝わると思うのです。

余裕がないな‥‥とまだまだ反省する日々ではありますが、立ち止まっては思い出し「これだけは守るぞ!」という気概で過ごしています(笑)。

目の前のことに必死で、一瞬で過ぎていった入社後の一年。そして今年、店長として新たな一歩が始まりました。

変化を続けていくお店は、一日として同じ日はなく、発見と学び、出会いの連続です。

店長としてスタートしたばかりで、不安に感じることもありますが、周りには尊敬し頼れる先輩方がたくさんいらっしゃり、いつも優しい言葉と刺激をくださります。

まずは目の前のことをコツコツと。そして私がここにいる理由、“初心”を忘れず、どんな時も楽しむ気持ちでいたい!と思います。

<愛用している商品>

花ふきん 麻

定番ふきんのなかで私の推しは、やっぱり麻の生地です。毎日使ってもへたらず丈夫。だんだんと生地が柔らかく馴染んでくる様子に、愛着が湧いてきます!毎日の暮らしに欠かせません。

植物由来の全身用オイル

夜のスキンケアの際、手の平に数滴垂らし、顔を包み込むようにしてフレッシュなゆずの香りを楽しんでいます。サラッとした軽いつけ心地もお気に入りです。

しめつけないくつした

毎日履いていても疲れない!靴下でこんなにも感動したのは初めてです。優しくフィットするのにずり落ちない。デザインも目を引く可愛らしさで、靴下で遊ぶ楽しみを教えてもらいました。



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。

【旬のひと皿】お餅といちごのきなこクリーム

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



朝4時起床。冷え切ったハンドルを握り、夜明け前の道を運転した。

車はほとんど通ってなくて信号も点滅している。人もまだ歩いてないなーと思っていたら、ランニングをしている方を見つけてびっくり。「急いでいるわけではないよね?」「そんな訳ないよね」「早朝から凄いねぇ」と同乗する母と話しながら目的地へ向かう。

大きな道に入ると急に車が増えてきた。大型トラックがたくさん。新鮮な食材もこうやって仕事をしている方のお陰で、受け取ることができるのだなーと思いながら慎重に運転する。

20分ほどで到着。目的地は、奈良中央卸市場。空はまだ真っ暗。星を見ながらキラキラ輝く(ように見えた)建物の中へ入ると、活気のある元気な掛け声。所々シャッターの閉まっている場所もあるけれど、忙しそうにエンジン全開で働く店の人を見ながら、仕事の邪魔にならないように避けながら、市場散策。いろいろ食材を見つけて、帰る頃には世が明けていた。

世の中はいろんな循環で成り立っているなと思うことが多い。食材も、作ってくださる方がいて、八百屋さんがいて、お店があって、食べる人がいて。飲食店や家庭の食卓は食材のゴール地点。アンカー役をできることに感謝して、今年も心を込めて料理を作っていきたいと思います。

さて、そんなふうに料理に向き合う気持ちを引き締めたところで、2024年一つ目の「旬のひと皿」をご紹介します。

今回はお餅を使ったレシピ。多くの家庭でお正月のお雑煮に登場するお餅ですが、「お餅やお雑煮のこうでなくちゃ!」基準は、全国さまざま。育った地域によるものが大きいのではないかなと思っています。いずれにしても、記憶の味に優(まさ)る美味しい味はなかなか追い越せません。

奈良のお雑煮は具がたくさん入った、白味噌仕立てのお雑煮。お餅は取り出し、別皿に用意したきなこをつけて食べるそうです。そんな奈良のお雑煮からインスピレーションを受け、今回のひと皿はお餅にきなこを合わせました。

もう一つ“奈良らしさ”から合わせたのは、この時期、産直市場やスーパーに多く並ぶいちご。あまり知られていないのですが、奈良はいちごの産地なのです。

そんな3つの材料を中心に使って、おやつに食べられるお餅レシピをご紹介します。まだまだ寒い季節。お茶やコーヒーと一緒に、ほっと一息つきましょう。

<お餅といちごのきなこクリーム>

材料(お餅4個分)

・お餅…4個
・いちご…お好みの量

◆きなこクリーム
・きなこ…大さじ2
・生クリーム…200ml
・砂糖…大さじ2

今回は奈良のブランドいちご「古都華(ことか)」を使用しました。いちごがない場合は、酸味のあるフルーツを合わせていただいても美味しいです。

作り方

お餅は上部がこんがりする程度に焼く。焼いている間にきなこクリームを作る。材料をすべてボウルに入れ、氷水で冷やしながらツノが立つまで泡立てる。いちごを食べやすい大きさに切り、お餅ときなこクリームと一緒にうつわに盛る。きなこ(分量外)をふるい、完成。

アレンジ編:<余ったきなこクリームの使い方>

きなこクリームが余ったら、トーストに載せたり季節のフルーツに合わせたり、コーヒーに加えたりしてお召し上がりいただくのもおすすめです。今回はどら焼きと合わせてみました。あんこときなこクリームで、とっても幸せな味に。

うつわ紹介

・基本のひと皿:美濃焼のどんぐり皿

・アレンジのひと皿:HASAMI プレート イエロー

写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。

世界のメゾンも愛するニット生地。和歌山のテキスタイルメーカー・A-GIRL’Sのものづくり

「何を基準に服を選ぼう?」
「どんな服を着よう?」

見た目が好みか、自分に似合うか、だけを基準に服を手に取っていた若い頃から、最近は、もう少し別のものさしも持つようになりました。

例えば、着心地。

やわらかで、動きやすく、ストレスなく着られるか。長く大事に着たい服だからこそ、無理なく着られることをとても大事にしています。

また、もう一つ気になるのは、ものづくりの姿勢です。

せっかく迎えるなら、素敵だな、応援したいと感じるつくり手さんのものを手にしたい。最近は、そんなふうにも思うようになりました。

もちろん、纏うことで自分の気持ちが晴れやかになることも大切。なんだかんだ言いつつも、直観的に心を動かされるデザインは服を選ぶうえで譲れない視点です。

そうやって迎え、クローゼットに並んだお気に入りの洋服たち。たくさん持っていたあの頃よりはいささかスッキリしましたが、どれも着るたびに少し強くなれそうな、そして今日も自分らしく過ごせそうな力を、私にくれるのです。

今回ご紹介するのは、中川政七商店の洋服づくりの頼りとなるつくり手の一社・A-GIRL’S(以下、エイガールズ)さん。ニットの生地開発を行うテキスタイルメーカーで、和歌山に拠点を持ちながら、国内はもちろん世界のメゾンからも信頼されるつくり手さんです。

どんなものづくりの矜持があるのか知りたくて、和歌山まで訪ねました。

老舗ファクトリーを背景にテキスタイル開発を行う、和歌山のニッター

JR和歌山駅から電車で2駅。ホームに降りると、木々の緑に染まる山を背景に、小さな工場や民家を抱いた街並みが広がります。穏やかな景色が続く道を、のんびりした気持ちで歩くこと4分。昔ながらの工場や住宅地のなかで、ひときわ目を引くクールな建物に出会ったら、それはきっと、今回ご紹介するエイガールズでしょう。

手前にショールームがあり、奥に見えるのがエイガールズの本社。窓が大きく、コンクリートむき出しの壁に、すっきりと手入れされた庭の植栽が印象的です。清々しい気持ちを受け取りながら扉を押すと、取締役の尾崎孝夫さんと、中川政七商店担当の西秀敏さんが迎えてくださいました。

奥が西さん、手前が尾崎さん

ところで皆さんは、そもそも「ニット」とはどんな生地を指すかご存知でしょうか。多くの方がまず思い浮かべるのは、毛糸で編まれた、冬によく着る暖かいあの生地かもしれません。もちろんそれも間違いではないのですが、ニットというのは、一本の糸で輪を作りながら編まれた生地全般のこと。生地の作り方には主に、経(たて)糸と緯(よこ)糸で構成される「織り」と、一本の糸をループにして絡ませ、布地に仕立てることを基本とする「編み」があり、ニットは編みの技法を使ってつくられます。

伸縮性や着心地が良いのがニット全般の特徴ですが、さらには「経編み」「緯編み」に大別され、緯編みのなかにも「よこ編み」「丸編み」と技法があって、それぞれ仕上がりも異なります。経編みは主に合成繊維を使うことが多く、伸びが少なくしっかりした生地に仕上がるのが特徴。例えばセットアップやパンツ、レギンス、スポーツアイテムなどによく利用される編み方です。

一方よこ編みでつくられた生地は伸縮性があり、主に採用されるのはセーターやマフラー、靴下など。そして丸編みは風合いがやわらかく伸縮性にも富むのが特徴で、ジャケットやパンツ、インナー、Tシャツなどさまざまなアイテムで広く使われます。意外なところだと、スウェットも“ニット”なんですよ。

なかでもここ和歌山は丸編みニットの産地で、1909年にスイスから5台の編み機が入ったことから、編みの生地づくりがスタートしたといわれる地。国内の丸編みニットの40%ほどが和歌山でつくられており、地場産業として知られています。

「ひと口にニットと言っても、編み方も糸もさまざま。産地によって得意とするものづくりも違っていて、例えば北陸はポリエステルやナイロンなどの合成繊維を扱うのが得意です。また尾州(愛知・岐阜エリア)はウールが得意な地。一方で和歌山は綿を得意としています。これは、すぐ近くに流れる紀の川付近で綿花を栽培していたのがはじまりと言われていて、そこからものづくりが広がったそうです。

とは言え、和歌山は世界の丸編み産地と比べても技術力が高く、インナーからアウターまでいろんな生地を編み立てる技を持っているのが強み。例えば綿とポリエステルとか、綿とウールなどの組み合わせでの生地づくりもしています。うちでも綿糸を基本に長く続けていますが、最近では天然繊維全般、例えばウール糸やカシミヤ糸などを使った生地も扱っています」(尾崎さん)

バブル期には150社ほどのニット関連企業があった和歌山ですが、ここ最近では縮小して50社程度に。それでも、市内には今もニット関連企業や染屋さん、縫製屋さんなどが点在し、少し歩いたら編みのものづくりに関わる企業に出会うほど。そんな営みの地で、エイガールズも創業から長く、丸編みニットを専業として事業を展開してきました。

80年以上続く老舗ファクトリーのヤマヨテクスタイルをグループに持ち、創業以来、工場は持たずにテキスタイルの企画・開発を進めてきた同社。今も企画した布の70%ほどは県内のグループ工場でつくり、その他の製造も近隣の工場と取り組むことがほとんどだといいます。

「編み、染め、縫製まで車で40分圏内くらいで完結するので、うちの丸編みニットは完全にメイドイン和歌山。今風に表現すると、サスティナブルですよね」(尾崎さん)

世界のメゾンからも厚い支持

2004年以来、パリで毎年2回開かれる、世界最高峰の国際的なテキスタイルの見本市「プルミエール・ヴィジョン」に出展しているエイガールズでは、売上の40%を海外が占めます。和歌山の本社には、国内のハイブランドや世界的なメゾンなど、さまざまな企業からお客様が訪れるそう。

国内外問わず厚い信頼を集める同社ですが、とはいえ、生地をつくる編み機は国内の他メーカーも、海外のつくり手も、ある程度は共通のもの。何が差別化のポイントとなるのか不思議に思い尋ねると、「編み機を扱う技術が違うんですよね」とのお返事がありました。

「一般的には難しいと言われるような編み機と素材の組み合わせでも、当社の関連工場や、和歌山のつくり手さんは、培ってきた高い調整技術でそれを可能にするんです。例えば同じ編み機でも、使う素材が天然繊維の場合は、合成繊維に比べて編むうちにケバがたつので針が折れやすい。だから、機械を扱うには熟練の技術が必要となるんですよ。他には切れやすくて扱いの難しい極細糸を使った編みにも強いので、さまざまな表情の生地がつくれるんです。

あとは先ほどお話しした通り、染めなどの工場も近隣にあるので、一貫して日本の高い技術で風合いの良い生地を仕上げられる。それらがお取引先さんから支持を頂いている大きな理由ですね」(尾崎さん)

エイガールズの取引先の一社・丸和ニットの編み機。エイガールズで糸の開発やテキスタイルのデザインを行い、協力工場に製造を依頼する

いわく「差別化とこだわりのポイントは風合い」なのだそう。特に、同社が得意とするニットの一つ・カットソー生地は肌に直接あたるもののため、風合いが非常に大切なのだといいます。他には真似ができないような手ざわりや、纏った際に自分の気持ちが上がるラグジュアリーな素材感を目指すのが、エイガールズ流のものづくりです。

「すべての生地の風合いにこだわっていて、他には体感できないようなやわらかさや肌ざわりを追及しています。それはお話ししてきたように、糸の原料から編み方、染めの技術まで一貫してこの地で進めるからこそ実現できること。日本の生地づくりは基本的に分業なんですけど、その分業ならではの良さって、それぞれが“匠”であることなんですよ。それを和歌山で最初から最後まで手がけられるのが、この産地のいいところですね」(尾崎さん)

通常、編みでは難易度の高い柄や風合いの表現も、和歌山の技術がタッグを組み実現する

またそのこだわりは糸にまで及びます。ものづくりに臨む際には糸から開発する場合も多々あるそうで、原料は基本的に別注。つまり、綿(わた)から選んでつくることもよくあるのだと続けます。

「日本はもちろんですが、インドなどの海外からも糸の原料を仕入れ、オリジナルの糸をつくっています。糸も編みも加工も、組み合わせ次第で表現は無限。主には自分たちで開発した生地をお客様に提案していますが、お客様のオリジナル生地づくりもしています。また弊社の生地で製品までつくってから収めることもしていて、ご要望に応じて様々な提案をさせていただいています」(西さん)

他社にはまねできないような表現の幅や、それを可能にする技術を、協力工場と共に叶えるエイガールズ。とはいえ創業当初は他と変わらない、いちテキスタイルメーカーだったと振り返ります。転機は20年ほど前にパリで開かれるプルミエール・ヴィジョンに出展したこと。国際的なテキスタイルの見本市ではありますが、当時はまだ、日本からは4社ほどの参加でした。

「早い時期に海外のお客様とお付き合いをはじめたことで、どんな生地がどんな場所で求められるのか、またどんな技術がそれを可能にするのかの知見が溜まっていったことは大きいですね。国によって求められるものって全然違うんですよ。日本では反応が悪くても、海外では支持されるものもあります(笑)。そうやって続けてきたことが、いろんなご提案をできる基礎になっているんだと思います」(尾崎さん)

そう話す尾崎さんも、実は世界的な賞の受賞歴がある、テキスタイルのプロ中のプロ。2016年には「最も影響力のある6人のテキスタイルデザイナー」の1人に選ばれたほどです。

和歌山ニットを世界へ

そんなエイガールズが旗を振り、2022年から始まったのが「WAKAYAMA KNIT PROJECT(和歌山ニットプロジェクト)」。グループ会社に老舗ファクトリーを持つ同社ではありますが、近年は新たに、産地の別工場とも仕事に取り組んでいます。

「どこの産地も一緒ですが、後継者がいなかったり、若い人が入ってこない問題でシュリンクしているじゃないですか。このままだと、うちのものづくりは続いても、和歌山という産地自体が存在しなくなる。

僕たちは自社工場を持っていないので、ものをつくる実際の工程は(グループの工場はあるものの)他の企業さんにお願いするしかないんですね。でも、このままだと5年後、10年後には産地がなくなってしまう可能性がある。そうなると自分たちのものづくりができなくなると危機感がつのっていました。

最近では海外から輸入されたテキスタイルや製品が、国内市場の多くを占めています。このままだと、どんどん苦しくなっていきますよね。『今のままではマズい、自分たちだけでなく業界を盛り上げなくては』と、和歌山のニッターでやる気のある若手の社長さんたちを誘って、一緒にものづくりをする取り組みを始めたんです。これは単に一緒に生地をつくるだけじゃなくて、それを一つのブランドとして進める試みです。

アプローチ先として国内はもちろんですが、中心に見据えているのは海外市場。売上はあまりないかもしれないけど、まずは和歌山という産地を知ってほしいのが目的です。日本のものづくりは海外で高く評価されているので、海外から発信してこのブランドを知ってもらうことが、産地を知ってもらう近道なのかと思って。

そうしていくことで若い方が、産地を魅力的に感じてくれる可能性があります。私たちは20年前から海外に出ているので、ある程度知識もあるし、これを進めることが産地の存続に繋がるんじゃないかと考えました。

私はアドバイザーという立場で入っていて、プロジェクトに参加する各工場それぞれに、強みのある編み機や技術で生地をつくっていただきます。先日はプロジェクトとしてはじめて、海外でも展示会に出てきたんですよ。とても好評で、次もやっていきたいという声が上がっています」(尾崎さん)

ショールームには、WAKAYAMA KNIT PROJECTで開発された洋服も並ぶ

この日は同プロジェクト参加企業の一社で、エイガールズと中川政七商店による「裏毛ジャカードシリーズ」に使う生地の開発・製造もしていただいた、丸和ニットの代表・辻雄策さんにも話が伺えました。

「弊社の裏毛ジャカード編み機は当初、車のカーシート用の量産生地を編む設備として導入したのですが、時代の移り変わりとともにファッション衣料品用生地を編む設備となり、個性的な技術の生地づくりをしています。

もともとノウハウや技術はあったのですが、お客様のニーズを意識した最終製品に活かす視点が弱くて。それをWAKAYAMA KNIT PROJECTが契機になって、エイガールズさんにアドバイスなども頂きながら、着用されるお客様の反応まで見える生地がつくれました。

いつもは生地の技術や、問題なく完成したかどうかに意識がいきがちだったのですが、お客様が着る服を想像して糸から製品まで考える姿勢はすごく勉強になりました。つくり上げた柄に対するお客様の反応もとても良く、生地をつくるときの視野が広がったように思います。技術だけじゃなくて、デザイン性とか、誰に向けて提案するかとか、その大切さがよくわかりました」(辻さん)

「和歌山のいいところって、最新の技術も取り入れながら、職人の手仕事で今も稼働し続けるヴィンテージの機械を使うこともして、唯一無二の生地づくりを可能にすることなんですよ。それをもっと国内外の多くの方々に知ってもらって、魅力的な商品をつくり続けることが、和歌山ニットをこの先に繋げていく一助になると思うんです」(尾崎さん)

ところで社名の「A-GIRL’S」とは、創業時に代表が「トップ(=A)の女性に支持される、良い素材づくりをしよう」との思いでつけたものだそう。

安きに流れず、価値のわかる企業と質の良いものづくりを続けて、仲間を巻き込んで産地を存続させていく。

纏う人の心地好さ、唯一無二の生地の表情、そして産地の未来を背負ったエイガールズのものづくりには、それを選びたい理由が詰まっていました。


<関連商品>

中川政七商店では、エイガールズさんとつくった「裏毛ジャカード」シリーズを販売中です。袖に入った柄はプリントではなく編みによるもの。軽くてやわらかな生地の風合いに加え、たくさん着て、たくさん洗っても崩れない、その編みの表情もぜひお楽しみください。

裏毛ジャカードのプルオーバー
裏毛ジャカードのジャケット

<関連特集>


取材協力:

株式会社エイガールズ
和歌山県和歌山市三葛3-2
https://www.agirls.co.jp/jp

丸和ニット株式会社
和歌山県和歌山市和田1164
https://maruwa-knit.com/


文:谷尻純子
写真:直江泰治

【あの人の贈りかた】一日の始まりも終わりも、晴れやかな気持ちに(スタッフ福井)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は店舗サポート担当の福井がお届けします。



暮らしの心地好さと直結する「雪音晒の四重ガーゼフェイスタオル」

タオルって種類が多すぎて、結局何が自分の好みか決めきれない。どれも良いような気がするし、どれもしっくりきてないような気もする‥‥。

そんな私のタオル難民生活に終止符を打ったのが、この「雪音晒の四重ガーゼタオル」です。

ガーゼの優しい肌触りと、こすらずとも水分がすーーっと吸収されていく心地好さ。
吸水性だけじゃなく、乾きの早さと、薄手で嵩張らないので機能面も◎
毎朝このタオルで顔を拭くと幸せな気持ちになります。

ギフトのザ・定番というイメージもあって、無難すぎるかなと倦厭していたけれど、毎日肌に触れるものが、ストレスなく気持ちよく使えることで、1日のはじまりも、おわりも晴れやかな気持ちになる。毎日の暮らしに直結しているなぁ、とこのタオルで実感して以来、ギフトにもよく利用しています。

「この心地よさを届けたい!」っていう、私のエゴもありますが(笑)、自分が実感しているからこそ、気持ちを込めて自信を持って贈ります。

タオルと入浴剤のセットや、タオルと保湿クリームのセット、タオルとルームソックスのセット‥‥など、贈る相手にあわせて組み合わせを変えながら選べるのも良いところです。

<贈りもの>
・中川政七商店「雪音晒の四重ガーゼフェイスタオル」

相手の暮らしや好みをイメージして味を選べる「番茶 小袋」

贈りものって悩むけれど、相手を想いながら選んでる時間が楽しくて、ギフト選びは結構好きな時間です。

中でもよく贈っているのが、この番茶シリーズ。
種類も豊富で、一年を通じて定番の4種がありつつ、季節ごとに新作がでるのも魅力的です。

ティーパック3袋入りなので、誰でも淹れやすく、特別な茶器も要りません。

友人の家にお呼ばれしたときに2、3種類くらい持って行き、一緒に何を飲むか選んだり、ギフトに+αで添えることもよくあります。

例えば、出産祝いには、頑張った友人に向けてカフェインの少ない「茶の木番茶」を添えたり、仕事が忙しそうな友人には、リフレッシュできるように香り豊かなハーブ系を選んだり‥‥。
いろんな種類があるからこそ、手紙を添えるような気持ちで、相手の好みや暮らしをイメージして選んでいます。

個人的には珈琲や紅茶も好きだけど、最近は、どんな場面でも、誰とでも、長くゆったり過ごせるお茶の魅力を実感しています。

<贈りもの>
・中川政七商店「番茶 小袋」各種

手のひらに広がるやさしい香りで、ほっと一息「kiu祈雨 出雲和漢 ×やまもも 化粧石鹸 『縁』

外出先で手作り石鹸や、釜炊き石鹸を見つけると、ついつい吸い寄せられてしまう私。
優しい香りとコロンとした見た目、手仕事という魅力も相まって、つい手に取ってしまいます。

今は液体ソープを使う人が多いだろうし、私も普段は泡立ちが早くて、保管も楽ちんな液体タイプを使うことが多いですが、はじめて手作り石鹸を使ったとき、湯上り後のしっとり感や、肌にしっくりくる感じに驚きました。

kiuの「やまもも化粧石鹸」は、保存料や着色料は使わず厳選された素材だけを使った手作り石鹸。
島根県・出雲の玉造温泉水と、植物エキスでできたしっとりマイルドな使い心地で、もっちりとした泡が顔を包んでくれるのも気持ちがいいです。透き通った桃色も綺麗で大好きな石鹸です。

固形だからこそ、泡を丁寧に立てたり、手のひらに広がる香りをゆっくり楽しんだり、忙しい毎日だからほっと一息つける時間を過ごしてほしいな、という気持ちを込めて贈っています。

お世話になった方や、友人の節目の時に、手紙を書くのは気恥ずかしいけど、感謝やエールの気持ちが伝わるように選んでます。

<贈りもの>
・「kiu祈雨 出雲和漢 ×やまもも 化粧石鹸 『縁』」
・ブランドサイト:https://kiu-izumo.com/

※こちらの品は中川政七商店でも販売中。時期により在庫状況が異なりますので、ご了承ください。


贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 小売課 店舗サポートグループ 福井雅奈子