奈良・吉野の山歩き。森と林業の現在を知る【奈良の草木研究】

工芸は風土と人が作るもの。中川政七商店では工芸を、そう定義しています。

風土とはつまり、産地の豊かな自然そのもの。例えば土や木、水、空気。工芸はその土地の風土を生かしてうまれてきました。

手仕事の技と豊かな資源を守ることが、工芸を未来に残し伝えることに繋がる。やわらかな質感や産地の景色を思わせる佇まい、心が旅するようなその土地ならではの色や香りが、100年先にもありますように。そんな願いを持って、私たちは日々、日本各地の作り手さんとものを作り、届けています。

このたび中川政七商店では新たなパートナーとして、全国の里山に眠る多様な可食植物を蒐集し、「食」を手がかりに日本の森や林業に新たな価値を創出する、日本草木研究所さんとともにとある商品を作ることになりました。

日本の森にまなざしを向ける日本草木研究所と、工芸にまなざしを向ける中川政七商店。日本草木研究所さんの取り組みは、工芸を未来へ繋ぐことでもあります。

両者が新商品の素材として注目したのは、中川政七商店創業の地である奈良の草木。この「奈良の草木研究」連載では、日本草木研究所さんと奈良の草木を探究し、商品開発を進める様子を、発売まで月に1回程度ご紹介できればと思います。

連載3回目となる今回のテーマは「奈良の山探究」。日本草木研究所さんと中川政七商店スタッフが奈良・吉野エリアの山に分け入り、林業の現在や奈良の森が持つ課題、そこで育つ草木について学んできました。



吉野の山の特徴

日本一の多雨地域とされる紀伊半島の、ほぼ中央に位置する吉野の森。森林面積は79,223haと広く、そのうち民有林(※国有林以外の森林)が97%ほどを占めるといいます。雨によって豊かな森が育まれてきたこの地域では、木々の根が土の急激な動きを抑えることで災害を防止してきたとともに、豊かな土壌が育まれてきました。そこで育つ杉やヒノキは多くの方がご存じのとおり、「吉野杉」「吉野桧」と呼ばれるブランド木材として建材などに重宝されています。

その歴史は古く、実は日本最古の人工林とされるのが吉野の森。特徴の一つである密植多間伐の育林方法で育てられた木は、大阪城や伏見桃山城など、関西圏域を中心とした神社仏閣の普請材として使われてきました。

「法隆寺のような昔の神社仏閣は基本的には天然林で造られてるんですよ。見てもらったらわかるけど、天然林ってすごく年輪が細かい。あれはいろんな時間を経て最後まで残った強い木なんです。それで、人工の木で同じくらいの強度のものをつくろうとしたのが吉野の森というわけやね。

吉野では木と木の間隔を密にして植えていく“密植”をするんです。こうすると陽が入らないので枝が横に伸びずに、上に伸びていく。他にも若いうちに木の枝を切る“枝打ち”をして、横へ木が伸びていくことをさらに防ぎます。そうすると細かくて均一した年輪ができるんですよ」

そう話すのは今回、山の案内人としてお世話になった中井章太さん。吉野の山の管理をする山守(やまもり)であるとともに、今は吉野町の町長も務めておられます。

中井さん:

「吉野杉や吉野桧の良さは何と言っても品質やね。さっきもお話しした通り、吉野の木は年輪が均一で幅が狭いから強度があるんです。吉野杉って実は、昔から醸造の樽材として重宝されてきたんですよ。密度が高いから酒漏れをおこさないし、他にも木の香りや色艶に優れているのも選ばれてきた理由の一つです。この品質の高さには土壌の良さも影響しているやろうね」

そうして吉野で生まれた育林方法はその後日本各地や海外にまで広がり、今では全国の林業に採用されているそう。日本の森の礎を築いたともいえる山の今に、ますます興味が募ります。

さあ、いざ森へ。

林業関係の仕事に従事されている皆さまにもサポートに加わっていただき、中川政七商店スタッフ6人と日本草木研究所の代表・古谷さんに、中井さんが山守として管理されている山をご案内いただきました。

山と生きてきた人の営みを感じる

取材に入ったのは小雨が降る初春のとある日。雨粒の不規則なリズムと川の音が耳に心地よく響きます。見上げれば、吉野の美林。木々のたくましさに、自然への畏敬の念を抱かずにはいられません。湿気をはらんだ風が頬をなで、自分が森に包み込まれるような、不思議な感覚が身体にしみこんできました。

中井さん:

「ここの山の土はふっくらしてるでしょ。だから滑りにくいんですよ。僕はこの山の7代目の山守で、山の所有者である山主とは別にその家から山の管理を任されてる、いわば山のお世話をする立場やね。

昔は我々の先祖が山奥に住んでて、吉野の地域には山守がたくさんいたんですよ。山主と山守が一緒になって山を守ってきたのが吉野の特徴です。その制度が300年ほど前から続いてたんやけど、今はこういう時代になってきて、地方の人が減っていくと同時に山守も減ってきています。だからこれからの課題は、今まで受け継がれてきた山をどうやって次の世代に繋いでいくかやね。

僕が中学生の頃は村の半分くらいが山行き(やまいき。山で仕事をする人のこと)さんで、歩いてたら仕事してはるところに出会うのが日常やった。そうやって山の仕事を見てきたんやけど、今はもうその景色もないからね。

そういう理由で今日見てもらう山は荒れてる場所もあるんやけど、荒れているところも含めて吉野の山の特徴を知ってもらえたら嬉しいです」

中井さんのお話に耳をすませながら、一歩ずつ土を踏みしめ、濃く茂る木々の隙間を息をきらして歩きます。ふかふかとした土の踏み心地が足裏に心地よく、土壌がよく育っているのが伝わってきました。

歩いていくと、山と生きてきた人々の息遣いがそこここに。

枝打ちされ、下部がすっきりとした木々、

苔むした切り株、

夏の下草刈りの際、休憩するために使用したという山小屋。

全てを飲み込む大きな自然のなかに人の営みが小さく宿ります。私たちが普段何気なく消費している、木を原料とする数々の“もの”は、悠久の歴史が育んだ自然とそこから積み上げられた人の技があってのことだと改めて深い感謝の気持ちを抱きました。

中井さん:

「この山には杉もヒノキも生えてるんやけど、育つ場所はその場所の持つ特性によってちょっと違うんです。山の上のほうは風が強いんやけど、中腹から下は風が弱くて土壌も良くなる。ヒノキは風に強いから尾根の方に植えて、土壌がいい中腹は杉とヒノキが混合してます。下の方は杉やね。

ちなみに皆さん、杉とヒノキの見分けはつきますか?葉っぱを見たら分かりやすいけど幹だけやとちょっと難しいよね。木肌を見てもらったら違いが分かるんですよ。荒いのがヒノキです」

左が杉、右がヒノキ

知っているようで知らない、自分たちの暮らしを支える草木のこと。一つひとつ丁寧に教えてくださる中井さんや皆さまのもと、土に足を沈め、木肌をなで、葉をちぎって香りをかぎながら、1時間ほどかけて山を歩きました。

奈良の森を学ぶ

山道を歩き終えた後は、中井さんに改めて吉野の森と林業についてお話を伺います。

中井さん:

「最盛期は集落のうち半分くらいが林業従事者やったんですけど、今は一つの集落に3人とか。日本全体でも、漁業従事者数が13万人くらいなのに対して、林業従事者数は4.5万人ほどと言われてます。第一次産業のなかでも特に少ないのが林業従事者やね。

山守も少なくなってきて、今は一人あたり150から200haくらいを見とるんですよ。でも現実的には(そんな広範囲を)世話できひんよね。山守の他に、どれだけ仕事師(=山の仕事をする人)さんがいるかも山の循環に関わります。

あとは、昔やったら山の間伐と植林の仕事のどちらもしてたんやけど、今の林業は間伐がメインになってて。それも危惧していることの一つです。木の蓄積量が増えてきてまずは間伐せなあかんから、新しく林業に就く人は『伐る』っていう概念からしか山に関われへんのです。

植林をして草刈りをして、そして伐採してっていうサイクルができる山がほんまに減ってきた。そうやって伐ることばかりになってしまうと、木のありがたみとか怖さが感じられにくくなるんちゃうかなって思うんですよ」

育てることなく、“商品”としての最後の工程だけに携わる。そのことで林業の楽しさも、木への愛情も減ってしまうと中井さんは懸念します。加えて目下の課題は、林業に興味を持つ人自体が減少していること。中井さんのお話にもあった通り、日本では国土の約7割を森林が占めるにも拘らず、その仕事に就く人の数は他の第一次産業よりも圧倒的に少なく、また想像に違わず高齢化も進んでいます。

そこで新たに取り組み始めていると話すのが、今回のように吉野の森林の散策ツアーを催すこと。山行きたちが案内人となり、木々を素材にモノやサービスを作る方、一般の方と共に吉野の山に入る機会も設けているようです。

「今は町長としての職務を果たさなければならないので、以前のように多くはできひんのですけど、課題感を持って山のツアーなどをやってきました。

山について知る機会が少ないと、当たり前やけど山への関心も低くなってしまいますよね。ただ、山に一回でも入ったら、言葉にしがたい気持ちを受け取れて興味も高まると思うんですよ。そうやって新しく関わってくれる人たちが、林業の課題に何か新しいアイデアを発見してくれるかもしれへん、と思ってね。

でもやっぱり企画力とか上手に案内する力とか、僕たちに足りてへん部分もあると思うんです。だから森や林業に興味を持ってくれるきっかけとして、今回の商品みたいな新しい機会があるのは嬉しいですね」

深い緑と森の香りに包まれる心地よさ。湿った土が足裏を受け止めてくれる安心感。心に滞った澱に風が抜けるような、静謐な時間。私たちがそこで受け取れるものは、決して物質的なものだけではありません。その形のないものを、今回の商品からも受け取っていただけたなら。吉野の山歩きを通じ、私たちは改めてそんな想いを抱いたのでした。

森の魅力を詰め込んだ品が心穏やかに過ごす時間のお供となり、森を繋ぐ一つの機会となるようにと、プロジェクトは引き続き歩みを進めてまいります。


<次回記事のお知らせ>

中川政七商店と日本草木研究所のコラボレーション商品は、2024年の夏頃発売予定。「奈良の草木研究」連載では、発売までの様子をお届けします。
次回のテーマは「草木を守り、繋ぐ人」。商品に使用予定の草木を守り、そして繋ぐ活動をする2つの事業者にお話を伺います。ぜひお楽しみに。

<短期連載「奈良の草木研究」>

文:谷尻純子
写真:奥山晴日

【暮らすように、本を読む】#11「丁寧に暮らしている暇はないけれど。」

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。

<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>

先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



忙しくても、ズボラでも。無理せず整う暮らしのコツ。

『暮らしのおへそ』(主婦と生活社)をはじめ、フリーの編集者・ライターとして、さまざまな女性誌や書籍を手がける一田憲子さん。これまで取材先で出会った人やその暮らしから持ち帰ったアイデアを、自分なりに咀嚼して暮らしに落とし込むことで、時間をかけずに豊かに過ごすコツを見つけてこられました。本書では、その具体的な方法や考え方を、愛用する日用品と共に衣食住のそれぞれのシーンごとに紹介しています。

「丁寧な暮らし」という言葉を耳にする機会も増え、手間暇かけて育む豊かな生活に憧れを持つ人は少なくないことでしょう。私もその一人です。しかし、ズボラな自分にそれを叶えるのは到底無理だと諦めていました。

著者もまた忙しい日々を送り、掃除も片付けも苦手な「面倒くさがり」であると語ります。「同時進行で二つのことをするのが苦手」「疲れがたまってくると、次々に毎日やることのシャッター閉まっていく」など、人間味溢れる一面はどれも私の身にも覚えのあるものばかり。丁寧に暮らす暇はない、「それでも」、心地よく過ごすため、ほんの少しの時間でも日々工夫を繰り返す。何より励まされるのは、できないことは認めながらも自分にフィットする暮らしを見つける、そのプロセスを楽しんでいること。

ゴミ捨てついでにゴミ箱の中まで拭く。洋服は畳まず吊るし、下着は引き出しに投げ込むだけ。キッチンクロスは洗わず10分火にかける。忙しい日こそ揚げ物をつくる。

なにげない工夫から思いがけないことまで。ズボラだからこそ、日常のルーティンのなかに「ついでの掃除」を組み込んだり、行動パターンに沿った「収納場所」をつくるのだそう。それでも気分がのらない時は、無理せず自分を休めるのも大事だとも。「これならできるかも」と思える気軽なアイデアを、一つ二つと実践していくうち、ズボラでも自然と暮らしが整う仕組みになっているのが、本書のすごいところ。

なるべく頑張りたくないけど、健やかに、自分らしく暮らしを楽しみたい。そんなわがままを叶えてくれる一冊です。

ご紹介した本

一田憲子『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』

先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。

VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。

【あの人の贈りかた】季節の巡りや暮らしの時間をより豊かに感じる品(スタッフ村垣)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は商品開発担当の村垣がお届けします。


親子で過ごす季節の行事に「きせつのしつらいえほん」

仕事を通して意味を知った、日本で古くから続く季節の行事。
暮らしに取り入れることで、四季の自然の変化に気づいたり、家族の幸せを願って過ごす時間の大切さを知り、私の暮らしを豊かなものにしてくれました。

同世代の友人には小学生の子どもをもつ母親が多く、学校や家庭で年中行事を楽しんでいる様子が伺えます。
節分でお父さん鬼に、子どもたちが力いっぱい豆を投げつける話を聞いたり、一緒に買い物をしている時、ひな祭りの食卓用に器を選ぶ友人の姿を見たりすると、嬉しい気持ちになります。

そんな季節の行事に関心を持つ友人に贈りたいのが、「きせつのしつらいえほん」。

日本の代表的な九つの行事(お正月、七夕、クリスマスなど)について、いわれ(意味)やしつらいを、シンプルでわかりやすい言葉と愛らしいイラストで説明している絵本です。

親子で読んだり内容について話したりしながら、一緒に料理や飾りつけをして、行事を知りながら楽しんでほしい。
次の季節も待ち遠しくなり、より素敵な思い出として記憶に残ったらと思い、贈っています。

<贈りもの>
中川政七商店「きせつのしつらいえほん」

“ほんの気持ち”を気軽に贈る「丈夫でへたりにくいキッチンスポンジ」

ちょっとしたお礼やお返しなど「ほんの気持ち」を伝えたい時は、ふきんや洗剤などの消耗品を贈るのが私の定番。

形が残るものは大げさだし、食べたら無くなるお菓子などは少し寂しい。
しばらくの間、相手の役に立つところに、程よく気持ちが込められる気がして贈っています。

自分も愛用していて、心からおすすめできるのが「丈夫でへたりにくいキッチンスポンジ」です。

一番のポイントは「買い替え時が分からない!」とのお声を多数いただくほど、へたりにくく長持ちするところ。
泡立ち、水切れも抜群で、食器洗いが快適になる、ハイスペックなキッチンスポンジです。

生産地は日本最大規模の家庭用品の産地、和歌山県海南市。
暖かな気候で、もともとは棕櫚(シュロ)がよく採れたことから、箒やたわし作りが盛んになり、家庭用品産業が発展した地域です。

このスポンジは、昔から生活の道具を考えてきた産地の技術の結晶。楽しく家事の時間を過ごしてほしい気持ちも込めて、気軽に贈っています。

<贈りもの>
中川政七商店「丈夫でへたりにくいキッチンスポンジ」

編み物時間の癒しに「編み針キャップ」

郷土玩具や豆皿などの“小さくてかわいいもの”が大好きで、眺めていると心が躍ります。

共感してくれそうな友人に贈るのはもちろん、そんな小さくてかわいいもの。相手の趣味に合わせて選んだあと、一緒になって「かわいいね!素敵だね」と笑い合える時間が大好きです。

最近は編み物仲間の誕生日に、ニット帽モチーフの「編み針キャップ」を贈りました。
こちらは棒網みをする際、網目が外れないように、編み針の先に取り付けて使うもの。
2cmほどの小ささですが、ニット帽の網目まで再現されていて、ずっと眺めていられる愛らしい佇まいをしています。

編み物はだいたい同じ動作の繰り返しで、編み続けるには根気が必要。「もう疲れた~」と思った時に編み棒の先のキャップに目がとまり、かわいらしさに癒されて、「もう少し頑張るぞ!」と励みになることを願いました。

<贈りもの>
・DARUMA「編み針キャップ」
・販売サイト:https://daruma-store.jp/?pid=107368609

※中川政七商店での販売はありません

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 商品開発担当 村垣利枝

【スタッフのコーディネート】草木染めの色かさねスカート

この夏、中川政七商店からお届けするのは、福岡の宝島染工さんと作った草木染めの洋服。手しごとならではの偶然が生んだ生地の表情と、軽やかさと力強さを感じる自然の色が特徴です。

一枚でも主役になる印象的な柄ですが、実は色々な着こなし方もできて、コーディネートの幅が広いのも嬉しいところ。夏の空の下どんなコーディネートで出かけたいか、スタッフ4人に教えてもらいました。

この記事では「草木染めの色かさねスカート」を取り上げます。皆さまのご参考になれば幸いです。

甘さのあるトップスと合わせて

スタッフ身長:159cm

「普段からよくロングスカートを履いていますが、足首くらいまである長めの丈を履くことが多いので、今回のスカートではいつもの私より少し短めの丈に挑戦しています。足さばきがよく、ぽってりしたサンダルとも合わせやすい絶妙な丈感ですね」

「手捺染でつけた不規則で大胆な模様がカモフラージュ柄のような印象も受けるので、甘めのトップスを合わせて、甘さと辛さのバランスを意識したコーディネートにしてみました。カジュアルに着たかったのでインナーにはゆったりめのTシャツを着ています。染めがきれいなのでご近所用というよりも、少し遠くに遊びに行くときに着たいです」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねスカート 墨
・HEP サンダル DRV BRACK

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

やさしい黄色に黒を合わせて、きりっとかっこよく

スタッフ身長:157cm

「大きめの柄と綿素材でカジュアルさのあるスカートですが、シャツに合わせればきちんとした場にも着て行けそう。短め丈なので、涼しい時期はワンポイントのある靴下を合わせて着るのも可愛いなと思います」

「普段は黒や濃いピンクのようなくっきりした色の服をよく着ます。やさしい黄色のスカートは着方次第では甘い印象になりますが、大人っぽくかっこいいアイテムに見えるようなコーディネートを意識しました。バッグと靴は黒を合わせ、全体をきりっと引き締めています」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねスカート 黄

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

きちんとした場でも着られるように

スタッフ身長:162cm

「墨色は全体がシックな色なので派手になりすぎず、程よくスタイリングのアクセントになってくれるのがいいですね。アクセサリーなどの小物類に頼らなくても華やかさが出るなと思いました」

「普段のお出かけはもちろんですが、せっかくならたくさん着たいので、職場や子どもの行事にも着ていけるよう少し落ち着いた雰囲気のコーディネートにしました。スカートの柄を活かせるように、他は黒をベースにシンプルにまとめています」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねスカート 墨
国産牛革のボストンバッグ 黒
強撚綿のプルオーバー 薄グレー
小さな工芸のブローチ 錫

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

爽やかな印象をそのまま楽しむ

スタッフ身長:162cm

「一枚で主役になるスカートは一見少し合わせづらそうですが、着てみると意外とどんな服装にも合うなと思いました!透け感のない綿素材で布幅もあり、すねくらいまで隠れるので使いやすいのもいいところですね」

「シンプルな服装が好きなので、無地のTシャツとフラットシューズを合わせてすっきりしたコーディネートにしました。メインのスカートの爽やかな印象をそのまま楽しめるように、グレーや白色、ナチュラルな素材で全体をなじませています。ちょっとおしゃれした夏のお出かけ着としてたくさん着たいです」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねスカート 黄 
強撚綿のプルオーバー 薄グレー

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

草木染めの色かさねシリーズご案内

染料について

今回展開する二色はともに、全体をミロバランという木の実で染め上げています。染めの工程で使う材料との反応により、同じミロバランで染めていても異なる発色となるのも草木染めの面白いところ。夏服に広がる柄の染料には、「黄色」は渋木と墨、「墨色」は墨とミロバランを採用しています。

お手入れについて

草木染めの洋服のお洗濯には中性洗剤がおすすめです。一般的な洗剤も使用いただけますが、中性洗剤の方が色落ちがよりゆっくりとなり長く色を楽しめます。
また他の洋服とは一緒に洗わず、単独でのお洗濯をおすすめします。柑橘果汁に反応し色落ちすることがあるため、ついてしまった場合は部分的にでもすぐに洗い流してください。
日焼けにより退色する場合があることから、保管は日陰でお願いいたします。

草木染めは年月とともに、色がゆっくりと変化していきます。時間を共に重ねることにより自分だけの色になる、「育てる服」としてお楽しみください。


※別の記事では「草木染めの色かさねワンピース」を使ったスタッフコーディネートもご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
【スタッフのコーディネート】草木染めの色かさねワンピース

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天然染料・手染めの洋服を、気軽に手に取れる未来へ。宝島染工が臨む「天然染めの中量生産」
【あの人が買ったメイドインニッポン】#29 染め職人・大籠千春さんが“最近買ったもの”

天然染料・手染めの洋服を、気軽に手に取れる未来へ。宝島染工が臨む「天然染めの中量生産」

大人になってから好きになったものって、何がありますか?

食べ物、本、音楽、服‥‥。新しい“好き”が見つかるのはいつでもとても嬉しくて、自分の世界が広がったように、ちょっとだけ誇らしくも感じます。

最近、そんな“好き”に新しく加わったのが天然染料で染めた洋服です。これまでそもそも出会うことが少なく、化学染料との違いを特別に意識したこともなかったのが正直なところなのですが、一つの作り手さんとの出会いが意識を向けるきっかけに。

福岡県三潴郡大木町(みずまぐんおおきまち)で天然染料・手染めのものづくりに取り組む宝島染工さんの仕事に心を奪われ、試しに‥‥とその手から生まれる洋服を暮らしに取り入れてみると、自分だけの静かな幸福感と、それでいて誰かに自慢したくなる晴れやかさに包まれました。

この感動を伝えたくて。今日は宝島染工さんのご紹介をさせてください。

天然染め“らしくない”、ユニークな柄やシルエット

博多市内から熊本方面へと車を走らせること1時間弱。周りを民家と田畑に囲まれたのどかな地に、天然染料・手染めのものづくりを今に引き継ぐ、宝島染工の工場とショールームが点在します。

「宝島倉庫」と名付けられたショールーム兼出荷場は、外から見ると素っ気ない物置場のような印象。ですがその扉を開くと、高い天井からたっぷりとかけられたカーテンが、いきいきと布の表情を変えながら出迎えてくれるのです。

シンプルな室内の中央には、これまた天井から吊られた大きな紙のモビールが。木々が風に葉を鳴らすように、ゆらゆらと揺れています。これらのカーテンやモビールは宝島染工によって染められたもの。無機質な倉庫に植物の息吹を感じられるその美しさに、思わず息をのみました。

「カーテンはシーズンごとにその季節らしい染めに変えています。モビールは藍の染料を使って板締めの技法で染めたもの。藍染めって葉っぱから色素をとるんですよ。それで、木って枝になってるじゃないですか。その理屈で、『葉っぱから作った染料で、もう一度木を作ってみる』というコンセプトで作りました。室内でも植物の美しさを感じられるようにしたいなと思って。

ただ、いろんな場所で取り付けていただけるようにと思って設計したものの、結局組み立ての難易度が高くて、私しか取り付けられなくて。注文いただくこともできるんですけど、私が全国に取り付けに伺うことになっちゃいました(笑)」

あははと笑ってチャーミングに話すのは、宝島染工の代表・大籠千春(おおごもり・ちはる)さん。30歳で宝島染工を立ち上げ、少量生産が当たり前の天然染料・手染めのものづくりの世界で、中量生産に臨む稀有な作り手です。

またその珍しさは洋服のデザインにも。天然染料の洋服と聞くとイメージするのはナチュラルな色とシルエットですが、宝島染工が作るオリジナル商品は、言葉で表すなら“スパイシー”。同社のSNSにはエッジのきいた大胆で繊細な染めの柄と、ユニークなシルエットの洋服の写真がずらりと並んでいます。

一つひとつの洋服は一見「着こなすのが難しそう」と怯むのですが、鏡の前で合わせてみると不思議となじむ。性別も世代も関係なく、着る人の意思を引き立てる服のような印象を受けました。

「藍染めとか草木染めって『ナチュラルで着心地がいい』みたいなイメージがあるじゃないですか。素材も、リネンや綿だけが使われたり。それって間違いじゃないんですけど、宝島染工では少し違うアプローチがしたいなと思ってます。

天然染料のお洋服って価格をそんなに安くはできないので、購買層が比較的お金に余裕のある、30代後半から70代の方になってくるんですね。でもそうなると、自分も年を重ねて味が出ているのに、服も味が出ているみたいになっちゃって。カドが全部とれちゃうんですよ。

だからうちでは柄を大胆にしたり、素材に少しだけキュプラやシルクを入れたり、綿を使うにしても細番手(=細い糸)を使って生地の目を詰めて、纏ったときにしゃんとして見えるような洋服に仕上げているんです」

掲げるのはジェンダーレスでエイジレスなものづくり。先ほどのSNSでは20代から70代までの男女モデルが同じように、同じ服を纏います。年齢も性別も関係なく着られる天然染料の服を作るのも、同社ならではの特徴です。

「年齢や性別を区切ることに私がメリットを感じないというか。天然染料・手染めで作る服を特定の層だけが着るっていうのも、自分がやりたいことと齟齬があるなって。同じ服をご夫婦や親子で着れたりとか、そういう感覚がいいなって思うんです」

事業体さえ健康であれば「どうにでもなる」

大籠さんが宝島染工を起ち上げたのは30歳の頃。高校でデザインを学び、大学では染織を専攻して、卒業後は天然染料を扱う染工房へ就職しました。

「化学染料に興味がないわけではないんです。でも、天然染料の魅力に惹かれちゃって。天然染めのいいところって、思い通りにならないってデメリットもあるんですけど、思い通りにならなくてもきれいなんですよね。化学染料は思い通りに染まらないと『目指すものにそぐわない』って、それがストレスになったりするんですけど、天然染料は100%に仕上がらなくてもきれいだなって思える。そこがいいなと」

婦人服を手がけるその企業で染めのものづくりに没頭した大籠さんですが、天然染料で仕上げた婦人服には、高単価で装飾性の高い商品が多いことに違和感を持ち、自分で着られるような“普通の服”を作りたいと思うように。染めの可能性を探るために経験を積みたいと、化学染料を使って手染めのものづくりを手がける企業へと身を移します。そして5年ほど経験を積み、時代はインターネット普及期へ。買い物や流通に変化の兆しが表れ、さらにはインクジェットプリンターの登場によりものづくりも様変わりしていきました。

自分がこれからやるべきこと、やりたいことを改めて考えたとき、浮かんだのは「やっぱり天然染料・手染めのものづくりがしたい」という想い。ただしどこも小規模の工場ばかりで就職口はなく、色々と考えた末、自分で起ち上げようと決意したといいます。

「閉業された染工房になら設備もあるし、もともとはそんな場所を引き継げないかなって何社か見に行ったんですけど、簡単に言うと女だからダメって言われるんです。会社の信用もないし、大手にいたわけでもないし、地元の事業者さんとのルートもないしで、結構風当たりが厳しくて。だから自分で作るしかないと思って、父が作っていた田んぼを潰して今の工場を作りました。お客さんに来ていただくにはまぁ、便利な場所とは言えないんですけどね(笑)。

でも私、事業体さえ健康であればどうにでもなるという考え方なんです。専門性を高めて特化すべき技術があれば人が集まるから、運送の利便性とWi-Fi環境と空港が近ければ、仕事はできるなって思って」

天然染めが手に取りやすくなるように。中量生産にこだわる理由

OEM(=他企業から依頼を受け、商品を製造すること)とオリジナル商品開発の二軸でものづくりを届ける宝島染工。天然染料・手染めの工房は他にもありますが、やがて宝島染工にはたくさんのOEM依頼が舞い込むようになりました。中川政七商店も同社と共にものづくりに取り組む企業の一社です。

2023年に中川政七商店が宝島染工と作った、藍染めの洋服

多くの企業から支持される理由の一つが、「中量生産」に臨む姿勢。染めの工程を長年の経験と勘に頼って進める事業者も多いなか、同社では工程を全てデータ化し、スケジュールも最初に取り決めたうえで、ものづくりを進めます。誰が、どの工程を、どの程度の時間をかけて作業したのかも全部資料に落としていくそう。

そうやって製造量や納期をきちんとコントロールすることで中量生産を可能にし、特定の層だけでなく、天然染料・手染めの良さを多くの人に届けたい。そんな想いが背景にはあるようです。

「作品を作りたいのか、商品を作りたいのかということだと思うんですよ。少量生産の作り手さんを否定しているわけではなくて、そこでは本当に美しく丁寧なものづくりをされていると思います。

でも商品にできる仕組みを作るのが、自分たちの仕事だなって私は感じてるんですよね。全部データ化するのもそうだし、テキスタイルを開発したり、お取引さんとの窓口に自分が立って、そのブランドのイメージや企業スケールに合う柄や作り方を提案したりするのが自分がやるべき仕事だなって」

この日は2024年の初夏に中川政七商店が発売する商品の染めの最中だった
染め専用の道具もたくさんあるなか、今回の柄入れはあえて“ラップ”で。身近な道具を使い、誰でも、専用道具がなくなっても染められるよう工夫を重ねる

国内を中心に受けるOEMは、生産量では同社の6割程度。一方で売上にすると、オリジナル商品と割合が逆転するのだといいます。けれど、自社商品だけを作る判断はあえてしないそう。その理由を大籠さんはこう話します。

「自社商品だけになると、貴重な無駄がなくなる気がして。各社のデザイナーさんとお仕事をしていると『何でそんなことを思いつくんだろう』って、うちでは思いつかないようなデザインを上げてこられる場合もあるんです。そういう、社外のデザイナーさんとできるスペシャルな仕事に自分は喜びを感じるんですよね。あとはご一緒する企業さんのものづくりを叶えるために、自分たちにできることを考えるのに面白さや意義も感じるし」

経年変化が味を出す。天然染料の魅力

改めて、天然染料・手染めのものづくりの良さとはどこにあるのでしょう。何となく「自然でいいな」というイメージは持つものの、これを機に大籠さんが思う、着る人にとっての魅力を聞いてみました。

「天然染料のほうが洗っていくと風合いが出るってイメージですね。普通はお洋服って、お店で購入したときが“完全な”状態だと思うんですけど、天然染料の洋服って育っていくんです。化学染料だと着る回数を重ねると、完全品からどんどんマイナスになっていくような印象があるかもしれないですけど、藍染めとか草木染めの場合は何年か経ったときのほうがいいってこともあるんですよね。『未使用で無傷の状態よりいい色になってる』ってことがあると、私は思うんです。

ただ化学染料が悪いって言いたいわけでは全然なくて。プラスチックのコップもいいところはあるけど、クリスタルのコップだと透明度が高くてきらきらしてて、食卓に並べると気持ちいい。同じ“コップ”でも、受け取る気持ちが違ったりしますよね」

もう一つ大籠さんに質問です。天然染料の洋服を迎えたい気持ちはあるけれど、お手入れが少し大変なイメージが。どう付き合っていくのが、長く“育てて”いくコツなのでしょう。

「かまってやることですね。忘れないでいるというか。天然染料で染めたものって日焼けもするし、経年変化もするんです。忘れて使わなくなると、日焼けも見過ごしちゃう。例えば藍染めならたまに洗うだけで日焼けはきれいになじむし、そうやってかまってやることでコンディションが長く保ててきれいに着れる。放っておくって、服にとっても寂しいですよね。

うちでは気軽に着られるように、お手入れもできるだけ自宅でできるように作っています。難しくしちゃうと、みんな着ないですよね。例えば私も、全部の服にアイロンをかけて着るかって言われたらかけないですし(笑)。天然染料の洋服を、デイリーユースにしたいから」

会話を重ねるうちに、どんどんハマっていく天然染料の魅力。出会う機会の少なかった洋服も、宝島染工が中量生産に臨むことで、これまでより気軽に迎えられるようになりつつあります。

「ありがたいことに天然染めに興味を持ってくれる方がちょっとずつ増えてきて、私としては『農道を走ってたのに国道に出ちゃった』みたいな感じなんです(笑)。でも『もっともっと大きくしたい』とは思ってなくて、今より少し大きいくらいの規模が自分の望むものづくりを叶えるにも、工場の体力的にも、最適かなって思うんですよね。大きくしたいわけじゃなくて、長く続くのがいいことって感覚で。作る人も着てくれる人も気持ちよくいられるような環境にしないと、お互い結局、長くいられないと思うんですよ。

今の規模をちゃんと保って回して人がしっかり働ける形態を整えていけば、私がいなくても自走できる組織になる。今は私がいないとオリジナル商品の開発はできてない状態ですけど、それが例えば、外部のデザイナーが入っても自走できるような工場になるのが次の形態だと思います。

天然染めって今はまだ特別な洋服だけど、たくさん作って誰でも買えるようにしたくって。安くはできないんだけど、買いたいときに手に入って、『特別だけど特別じゃなくなる』のような感覚までいきたいですね」

やわらかな陽光がさす染め場でたたんだ端切れを藍に染め、ゆらぎあるその模様を見せてくれた大籠さん。染料の発色を確認するためあえて白色を選んでいるという作業着には、藍の色が美しく散らばります。

「天然染料はままならないからこそ、美しい」。大籠さんのその言葉を、宝島染工で染められた洋服を身につけるたびに思い出し、毎回、今日が少し特別な日になるのです。



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中川政七商店では、宝島染工さんと作った「草木染め」シリーズを販売中です。天然の草木を染料に、手捺染で色を重ねた洋服や小物たち。裾をふわりとゆらしながら、夏空のもとのお出かけ着としてお楽しみください。

草木染めの色かさねワンピース
草木染めの色かさねスカート
草木染めの色かさねストール
草木染めのバッグ

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文:谷尻純子
写真:藤本幸一郎

【スタッフのコーディネート】草木染めの色かさねワンピース

この夏、中川政七商店からお届けするのは、福岡の宝島染工さんと作った草木染めの洋服。手しごとならではの偶然が生んだ生地の表情と、軽やかさと力強さを感じる自然の色が特長です。

一枚でも主役になる印象的な柄ですが、実は色々な着こなし方もできて、コーディネートの幅が広いのも嬉しいところ。夏の空の下どんなコーディネートで出かけたいか、スタッフ4人に教えてもらいました。

この記事では「草木染めの色かさねワンピース」を取り上げます。皆さまのご参考になれば幸いです。

さらりと着て、夏の旅行へ

スタッフ身長:159cm

「暑い夏は重ね着をするのが少し億劫で、丈が長めのワンピースにサンダルやスニーカーというスタイルが多いです。このワンピースは全体的に肌の露出が少なく、しっかり丈の長さがあるのもいいところ。一枚でさらりと着たいです」

「一枚でさまになるのでお出かけにもぴったり。今回は旅行先で着るイメージでコーディネートしてみました。身幅がゆったりしているので長距離の移動もこのワンピースなら楽ちんですね。そのままでも可愛いのですが、お出かけ気分を高めるためにベレー帽や革っぽい見た目のサンダルできちんと感も出してみました」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねワンピース 黄 
・HEP サンダル DRV BRACK

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

気の置けない友人たちとの時間に

スタッフ身長:157cm

「柄にインパクトがあるのでストールを巻き、全体をなじませてみました。ぽってりとしたサボと光沢感のあるバッグで、ナチュラルな雰囲気になりすぎないよう少しエッジもきかせています。合わせるアイテムでグッと大人な印象にもできるので、何を合わせるか考えるのが楽しかったです」

「イメージしたのは友人とのお茶や、飲み会に出かけるときのコーディネート。ちょっと大胆な柄は、洋服好きの友人たちと会う時間にぴったりだなと思います。手染めで染め上げているので一枚として同じ柄がないなど、この服ならではの魅力もあって会話に花が咲きそうです」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねワンピース 墨

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

おしゃれしつつも、動きやすさと両立を

スタッフ身長:162cm

「爽やかな黄色にピリッとスパイシーな柄が入り、そのまますとんと着ても全身がぼやけないのが魅力。衿元や袖のバランスも絶妙で、少しアクセサリーを足すだけでこなれた雰囲気になるので嬉しいです」

「我が家は子どもがまだ小さいので、母として動きやすいコーディネートが日々欠かせません。やわらかな生地のパンツや歩きやすいサンダルと合わせて、活動的に過ごす日の服装を意識しました」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねワンピース 黄
播州織の高密度ワイドパンツ 生成
HEP サンダル BNH IVORY
天日干しリネンの巾着バッグ 生成

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

子どもと一緒に、公園とカフェへ

スタッフ身長:162cm

「普段は柄ものをあまり着ないので、自分らしさも出るようシンプルなアイテムと合わせてみました。メインのワンピースが目立つように他は黒色でまとめ、ワントーンでコーディネートしています。このワンピースは手染めならでは独特の表情がありつつも、着ると顔なじみがよく派手すぎないのでお気に入りです」

「子どもと一緒に公園に行った後、そのままカフェに寄ってお茶もできるようなコーディネートに。太陽の照りつけが容赦ない日でも日焼けの不安がないよう、衿元の開きにはハイネックTシャツを合わせました」

<合わせたアイテム>
草木染めの色かさねワンピース 墨
強撚綿のハイネックプルオーバー 黒
涼やか綿の重ね着パンツ テーパード 黒
国産牛革のポシェット 黒

※上記以外のアイテムはスタッフ私物です

草木染めの色かさねシリーズご案内

染料について

今回展開する二色はともに、全体をミロバランという木の実で染め上げています。染めの工程で使う材料との反応により、同じミロバランで染めていても異なる発色となるのも草木染めの面白いところ。夏服に広がる柄の染料には、「黄色」は渋木と墨、「墨色」は墨とミロバランを採用しています。

お手入れについて

草木染めの洋服のお洗濯には中性洗剤がおすすめです。一般的な洗剤も使用いただけますが、中性洗剤の方が色落ちがよりゆっくりとなり長く色を楽しめます。
また他の洋服とは一緒に洗わず、単独でのお洗濯をおすすめします。柑橘果汁に反応し色落ちすることがあるため、ついてしまった場合は部分的にでもすぐに洗い流してください。
日焼けにより退色する場合があることから、保管は日陰でお願いいたします。

草木染めは年月とともに、色がゆっくりと変化していきます。時間を共に重ねることにより自分だけの色になる、「育てる服」としてお楽しみください。


※別の記事では「草木染めの色かさねスカート」を使ったスタッフコーディネートもご紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
【スタッフのコーディネート】草木染めの色かさねスカート

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