【あの人の贈りかた】忙しい友人へ贈る、“あったら嬉しい”食卓道具(スタッフ山添)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は小売課スーパーバイザーの山添がお届けします。

食事の時間だけでも“のんびり過ごしてね”の思いを込めて「ガラスの箸置き」

贈りものを選ぶのにいつも悩みます。でも、その悩んだ時間は贈りものを渡したときの話題になったりするので、それも含めて「贈りもの」とすればよいのかなと思っています。

よく贈りものに選ぶのは、無くても困らないけれど、あると嬉しいもの。
箸置きもその一つで、無くても困りませんが、箸置きを使った食事はいつもより少し優雅になる気がします。

お箸を一度もおろさずに終わるほど、忙しい時や落ち着かない時間を過ごす友人には、「箸置きを使って、夕食の時だけでものんびりしてね」と一言添えて渡すと、その気持ちも含めて喜んでもらえます。

もう一つ、贈りものを選ぶときに、季節感も一緒に届けたいと思っています。

ガラスの箸置きは、やわらかな曲線のガラスのなかにキラキラと気泡が入っていて、見ているだけでとても涼やかな気持ちになるアイテム。多忙な日々をおくる友人への、夏の贈りものにおすすめです。

<贈りもの>
・中川政七商店「ガラスの箸置き」

字を書くことが苦手な人も、楽しく書ける「筆ペン」

時間があるときは、贈りものを渡すときにメッセージカードや一筆箋に一言添えるようにしています。

内容は、贈りものを選んだ時の気持ちを書くことがほとんど。面白いエッセイ集を贈ったときには「笑顔になりますように」とか、先ほどの箸置きだったら「夕食だけでものんびり過ごしてね」と書きました。

この、一言を書くときに使っているのが筆ペン。じつは字が下手なのですが、ごまかせる気がして使っています。あくまでも気がしているだけですが(笑)。

奈良の筆屋「あかしや」の職人が作った筆ペンは、毛筆にコシがあり書き心地が良いので、書いている時間がとても楽しいのです。

字を書くことへ苦手意識がある方にも、この楽しさをぜひ味わってほしいなと、贈りものとしてもよく選んでいます。

<贈りもの>
・中川政七商店「筆ペン」

ここでしか買えない「樫舎 季節の和菓子」

左手前「着せ綿」(季節限定)、右奥「葛焼き」

贈りものを選ぶときには、「ここでしか買えないもの」もよく選んでいます。

例えば、友達のお家に遊びに行く当日に、時間がある時は、地元の和菓子を選んで持っていくことが多いです。和菓子屋さんに行くと、定番とは別に、季節を菓子にしつらえたものもあり、見た目でも楽しませてくれるので、食べる時の話題にも一役買ってくれます。

自分が暮らす奈良では樫舎さんが大好き。最近だと、七夕に近い時期に天の川を模した和菓子と、合いそうな番茶を友人宅へ持っていき、とても喜んでもらえました。

以前に樫舎さんを会社にお招きし、花びら餅を作る過程を見せていただいたのですが、最高の素材の一番いいところを引き出すための技術はもちろん、素材を無駄にしないように、最後の最後まで丁寧に作られる姿にとても感動しました。

私自身も毎回お店へ行くのが楽しみな、自信を持って贈れる贈りものです。

<贈りもの>
・樫舎「和菓子」
・公式サイト:http://www.kasiya.jp

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 小売課 スーパーバイザー 山添雄太

【旬のひと皿】ぬか漬けとさば味噌のおにぎり

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



夏はぬか漬けが食べたい。

食欲のなくなる真夏は冷蔵庫にあると特に嬉しい。そして身体にも嬉しい。ぬか床をダメにして、やり直しになってしまったこともあるけれど、自分でつくるぬか漬けには育てていける楽しみがあります。

当初は自宅にあった古い陶器の壺でぬか漬けをしていたのですが、欠けた部分に手を勢いよくぶつけて、怪我をしてしまいました。念のため病院でレントゲンを撮ってもらいましたが、先生に状況を話すのが恥ずかしかったこと(笑)。まさかぬか床を混ぜていて怪我をするとは、情けない話です‥‥。

これはもう新しい容器に変えようと、探していたときに見つけたのが中川政七商店さんの琺瑯のぬか漬け容器です。

蓋が木で出来ているところが素敵で、長方形なので冷蔵庫の収まりも良く気に入っています。冷蔵庫を開けるたび、目にするたびに、気分がルンッとするのです。

東京に住んでいる頃に、友人に連れていってもらったお店の忘れられない味と景色があります。

当時、友人同士がルームシェアをしていて、仕事休みの前日に時々泊まりに行っては、遅くまで夜な夜な仕事の話をしたりして。次の日に「あそこに行こう!」といつもみんなの意見が一致するのは、くたくたの身体にも心にも染みわたる、滋味に富む料理が出てくるお店でした。

丁寧につくられたお料理の締めに出てくるのは、おひつに入ったごはんと、どーんと大きなお皿に盛られた、たくさんの種類のお漬物(もちろんぬか漬けも)。

お店の方も私たちの顔を覚えてくださっていて、仲良くしていただきました。またどこかでお会いできたらいいな。今は移転されてしまいましたが、素晴らしいおもてなしと、いい時間を過ごさせていただいたなと、今でも思い出す美味しい記憶です。

今年の6月から、食品衛生法の改正により道の駅などで販売されていたような個人の方がつくってこられたお漬物は、基準を満たさない場合は今までのように販売できなくなったそうです。

とても残念ではありますが、受け継がれてきた大切な食文化がそうやってなくなっていくのは寂しい。自分でもつくることで、少しでも繋いでいけたらいいなと思います。

そういうわけで、今回のレシピは自分で漬けたぬか漬けを使います。

ぬか漬けはそのまま食べてもおいしいのですが、料理に使う際は「ぬか漬け」に捉われず、“美味しいきゅうり”という感覚でいろんなところに使っています。ぬか床は“きゅうりの一時保管場所”というような気持ちで。

今回はおにぎりのレシピですが、そのほかにもサラダに混ぜたり、細かく刻んでマヨネーズと合わせてピクルス代わりに。餃子のタネにしのばせて夏の爽やかな風を閉じ込めても美味しそう。餃子のタレには梅干しの副産物である梅酢を入れれば、夏の暑さもしのげそうです。

<ぬか漬けと漬けとさば味噌のおにぎり>

材料(2人分)

・さば缶(味噌煮)…1缶
・きゅうりのぬか漬け‥1本
・焼き海苔(おにぎり用/手巻き寿司用はお好みで)…適量 
・ごはん…お茶碗2杯分
・白炒りごま…大さじ2
・味噌…小さじ1~2

ごはんに対してさばの分量が多いとおにぎりが崩れやすいので注意が必要ですが、美味しさはたっぷり。きゅっとおにぎりにしてパクッと食べていただきたい一品です。

今回はシンプルな海苔を使いましたが、韓国海苔と一緒に食べるのもおすすめ。

一段と暑い今年の夏。食欲のない日にも、ぬか漬け、味噌、ごま、昔から食べられてきた食べものの力を借りて、少しでも体調よく夏を乗り越したいですね。

作りかた

まずは前日までにぬか漬けづくり。
きゅうりを洗ってヘタを切り、ぬか床に漬けたら、好みの漬かり具合になるまで楽しみに待つ。お好みのお野菜も一緒に漬けても。

ぬか漬けが出来上がったら、次のステップへ。
きゅうりのぬか漬けを取り出し、洗ってから少し存在感が残るくらいに刻む。

さば缶を開けてさばを取り出し、ボウルに入れる。ヒレや骨が固そうな場合は崩す前に取り除いておく。少しほぐしてから、ごはんとぬか漬け、ごま、味噌(少しずつ入れて味を調整)を入れて混ぜ合わせる。

手水をとり塩(分量外)をつけたら、ごはんとぬか漬けをおにぎりにする。食べやすい大きさに切った海苔を添えて完成。

うつわ紹介

・うつわ:【WEB限定】明山窯 GRAIN WARE PLATE AKATSUCHI

・ぬか漬け容器:かきまぜやすい琺瑯のぬか漬け容器

写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【四季折々の麻】8月:風が通り抜けて涼しく着られる「麻のかや織」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

風が通り抜けて涼しく着られる「麻のかや織」

8月は「立秋」。暦の上では夏の暑さがピークを迎え、秋へ向かっていく季節です。とはいえ年々暑さが増し、今年は立秋を過ぎても気温の高い日が続きそう。そんな残暑も心地好く過ごせるようにと、今月はかや織で麻の服を作りました。

ラインアップは、7月から展開している「モックネックブラウス」「羽織ワンピース」「キュロット」と、8月から加わる「ローブ」を合わせた4アイテム。目の粗いかや織を採用することで、風が通り抜けて涼しく着られるように仕上げています。

また、縫製後に洗い加工をかけることでふんわりとした風合いに。かや織の透け感、風に揺れる様子を涼しげに愉しんでいただけるシリーズです。

【8月】麻のかや織シリーズ

麻のかや織 モックネックブラウス
麻のかや織 羽織ワンピース
麻のかや織 キュロット
麻のかや織 ローブ

今月の「麻」生地

かや織は、「風は通すが蚊は通さない」と重宝されてきた蚊帳(かや)に使われる、目の粗い薄織物。中川政七商店の代名詞といえる「ふきん」にも使っている布地です。

今月の麻生地ではその通気性のよさを活かしつつ、強度・透け感など洋服に適した密度になるよう織り上げました。

使用した麻はリネン。ラミーやヘンプなど麻にも様々な種類とそれに応じた特徴があるなかで、リネンは洋服によく使われる、さらりとした風合いのよい生地で、なじみのある方も多いと思います。

そのリネンの繊維を綿(ワタ)の状態で染めたトップ糸を使い、メランジ感(ムラ感)と奥行きのある風合いを表現しました。綿の段階で染めることで、生地にしてから染めたものに比べて色落ちしにくくなるため、汗をよくかき、お洗濯が多い夏の衣類にぴったりです。

さらには薄地で織り目の粗い生地のため、洗濯後の乾きが早い点も魅力の一つ。今回は麻素材を使うことでさらに乾きが早く、洗うほどに生地がやわらかくなるよう仕上げました。

お手入れのポイント

お洋服を長く楽しんでいただくために、基本的には手洗いをおすすめしています。目の粗い生地のため、ひっかけには要注意。脱水時はネットに入れるようお願いします。

干し方はお好みで。形を整えて乾かせば自然なシワ感に、さらにシワ感を楽しみたい方は、手で絞ってシワをつけて干してみてもよいでしょう。シワ感がお好みでない方は、乾いてからアイロンをかければ上品でふんわりした印象となります。

ゆったりしたシルエットで、気温の変化にも合わせやすい

ゆったりとしたシルエットにデザインしているため、肌離れがよく、とにかく涼しい、今月の麻の洋服。

羽織ワンピースは前を開けても閉じても着られます。ボタンを開けて着れば、ロングカーディガンのような装いに。タンクトップとパンツ、といったラフな格好にも羽織るだけで、よそ行き感が増しますよ。

モックネックブラウスとキュロットは単品で着用いただくのはもちろん、上下でセットアップにしても。キュロットには裏地付きで、インナーが透ける心配もありません。ウエストはゴム仕様のため楽な履き心地で、体型を選ばずきれいに履いていただけます。

ローブは長袖ですがゆったりしていて風通し抜群のため、暑い時期は日よけやクーラーよけとして羽織ったり、朝晩と日中で気温差のある日は袖を延ばしたりロールアップしたりと、環境に合わせて調整できるのが便利なところです。秋には長袖カットソーの上にも着ぶくれせず着用いただけて、長く寄り添う一枚としてご愛用いただけます。

ふんわりしていてシワ感も気になりにくいため、クシュっとまとめてカバンにポンと入れ、ぜひ旅行にもお持ちください。

※掲載写真には一部、オンラインショップ限定カラー品もございます
※時期により在庫のない場合もございます。何卒ご了承ください

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

ゼリーや琥珀糖にも。「奈良の森のシロップ」使い方レシピ【奈良の草木研究】

工芸は風土と人が作るもの。中川政七商店では工芸を、そう定義しています。

風土とはつまり、産地の豊かな自然そのもの。例えば土や木、水、空気。工芸はその土地の風土を生かしてうまれてきました。

手仕事の技と豊かな資源を守ることが、工芸を未来に残し伝えることに繋がる。やわらかな質感や産地の景色を思わせる佇まい、心が旅するようなその土地ならではの色や香りが、100年先にもありますように。そんな願いを持って、私たちは日々、日本各地の作り手さんとものを作り、届けています。

このたび中川政七商店では新たなパートナーとして、全国の里山に眠る多様な可食植物を蒐集し、「食」を手がかりに日本の森や林業に新たな価値を創出する、日本草木研究所さんと商品作りをご一緒することになりました。

日本の森にまなざしを向ける日本草木研究所と、工芸にまなざしを向ける中川政七商店。日本草木研究所さんの取り組みは、工芸を未来へ繋ぐことでもあります。

両者が新商品の素材として注目したのは、中川政七商店創業の地である奈良の草木。この「奈良の草木研究」連載では、日本草木研究所さんと奈良の草木を探究し、商品開発を進める様子を、発売まで月に1回程度ご紹介してきました。

いよいよ最終回となる6回目の今回は、新商品「奈良の森のシロップ」の楽しみかたを紹介します。ミネラルウォーターや炭酸水で割って飲んでいただくほか、さまざまな使いかたができる今回のシロップ。中川政七商店おすすめのレシピで、ぜひ森の香りをご堪能ください。

日本草木研究所コラボ シロップ 奈良の森
日本草木研究所コラボ サイダー 奈良の森 200ml ※そのまま飲めるサイダーもございます

【基本の飲みかた】森のシロップのソーダ

シロップを炭酸水で割れば、夏にぴったりの爽やかなソーダドリンクに。草木がふわりと香り、大和橘のほんのりとした酸味と苦みで後味はさっぱりとお飲みいただけます。

材料(1杯分)

・奈良の森のシロップ‥適量
・炭酸水‥シロップの4倍の量

作りかた

1. グラスにシロップを注ぐ
2. 炭酸水を入れ、マドラーで混ぜて完成

森のシロップの番茶割り

番茶に少し加えると、レモンティーのような飲み口に。甘いおやつとの相性もバツグンです。

材料(1杯分)

・奈良の森のシロップ‥小さじ1~2
・番茶‥200ml

作りかた

1. 好みの濃さで番茶を作る
2. 湯飲みやマグカップに注ぎ、シロップをたらしてひとまぜしたら完成

森と柑橘の寒天ゼリー

奈良の森のシロップがあれば簡単にゼリーも完成。柑橘のほのかな酸味とやさしい甘みで、暑い夏のおやつにもおすすめです。粉寒天の量は、固さの好みに合わせて調整ください。

材料(2人分)

・奈良の森のシロップ‥75ml
・柑橘(お好みのもの)‥適量
・ミントの葉‥適宜
・粉寒天‥1~2g ※固めがお好きな場合は2g
・水‥160ml

作りかた

1. 鍋に水と粉寒天を入れ、沸騰したら弱火で1分ほどかき混ぜる
2. 火を止めてシロップを加える
3. 粗熱が取れたら型に注ぎ、冷蔵庫で1~2時間冷やし固める
4. 食べやすく切った柑橘と、好みでミントをのせたら完成

森のシロップのかき氷

少し贅沢にシロップを使った、お茶碗サイズのかき氷はいかがでしょうか。ひとさじ運べば口いっぱいに清涼感が広がります。

材料(1人分)

・奈良の森のシロップ‥適量
・氷‥適量

作りかた

1. かき氷機に氷をセットして、うつわに削り出す
2. シロップをかけて完成

森の琥珀糖

三時のおやつや、夜のお茶時間のお供としておすすめしたいのが琥珀糖。しっかりと乾燥させ、外はかりっと、中はぷるんと仕上げてお召し上がりください。

材料(縦21×横12×高さ2cmのバット1台分)

・奈良の森のシロップ‥小さじ1
・上白糖‥200g
・粉末寒天‥4g
・水‥200ml

作りかた

1. 鍋に粉寒天、砂糖、水を入れて煮詰める
2. 1をバットに流し入れ、シロップを加える
3. ゴムベラで全体を混ぜ、粗熱がとれたら冷蔵庫で1時間固める
4. 包丁で食べやすい大きさに切り分ける
5. クッキングシートにのせ、風通しの良い場所で1週間ほど乾燥させる
6. 表面が固くなり、全体が白っぽくなれば完成


文:谷尻純子
写真:奥山晴日

【暮らすように、本を読む】#13「おいしいおしゃべり」

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。

<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



思い出の真ん中に、とっておきの味

作家の阿川佐和子さんによる『おいしいおしゃべり』は、1990年代に連載していたエッセイをまとめたもの。和田誠さんのかわいいイラストが表紙の本書は、2000年に幻冬社から出版された文庫版です。家族と過ごした子ども時代の思い出から、アメリカでの滞在記まで、ふっと笑えるユーモアと共に語られます。阿川さんが40歳くらいの頃に書かれたであろう、60を超えるエピソードは、「そういえば思い出したんだけど」とでも言うように、軽やかにはじまります。

冒頭のエピソード「酒と反省の日々」では、「おいしい食べ物と親しい友とゆったりした時間」が揃って初めてお酒は魅力的になる、と語ります。お酒だけでなく、家族の食卓に並んだ「ニラブタ」や、旅先で出会った「小籠包」、夏休みの思い出「キュウリ胡椒」など、登場するごちそうはどれも、身近な人との何気ないやりとりと共に描かれます。軽快な語り口は、気の置けない女友達のおしゃべりを聞いているようで、時々、自分のおいしい記憶ともつながり、どこか懐かしい気分になるのです。

「『飛ぶ教室』と私」の中では、小学校の図書館でアルバイトをしていた時のエピソードが語られています。生徒からおすすめの本を聞かれるたび、答えていたのがケストナーの『飛ぶ教室』。男の子に交じって遊び、本もほとんど読まなかった子ども時代に偶然手に取り、ユーモアとその背後にあるあたたかさに魅了されたそう。「皆さんの子どもの頃を決して忘れないで」というケストナーからの言葉を、大人になっても大切にしている阿川さん。エッセイの中で描かれる家族との笑える思い出や、おいしいものと出会った時の素直な喜びは、子ども心を忘れない彼女の誓いの先にあるような気がします。

読者を楽しませたいというサービス精神は「あとがき」にも。「とにかく最後まで召し上がっていただいた皆様への感謝の念を込め、食後のデザートはいかがでしょう」と、唐突にはじまる白玉団子のレシピを紹介。心地よい文章で満たされた心は、ほんわかとした甘さの余韻に浸ることでしょう。

ご紹介した本

阿川 佐和子『おいしいおしゃべり』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『おいしいおしゃべり』

ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。

VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。

【あの人の贈りかた】今暮らす場所や、ふるさと。その地の想い出を込めて(スタッフ安田)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は販促企画ディレクターの安田がお届けします。

“好き”で使い続ける麻のハンカチに、奈良の想い出を刺繍「motta」

実は、ちょっとした贈りもの、というのが苦手でした。たまに会えた友人に「久しぶり!」の嬉しい気持ちを表したい。でも贈る相手の好みを考えていると自信がなくなり、これ!というものを選べなかったのです。

贈りもの選びのヒントをもらったのは、退職祝いに中川政七商店のハンカチ「motta」をいただいた時のこと。ありそうでない、珍しい麻のハンカチです。

生地の風合いや柄がかわいらしく、麻なのにしわになりにくいから洗いざらしですぐ持っていける。たくさん持っているハンカチの中でいつの間にか出番が多くなりました。そうか!自分が使って「すき!」と思ったものを贈ってもいいんだ、と気づきました。

奈良に本社のある中川政七商店で働き始めてからというもの、友人がよく来寧してくれます。結構な確率で私が贈るのは、奈良本店限定の鹿刺繍入りのmotta。鹿の思い出と一緒に使ってね、また来てね!という想いを込めて贈ります。

<贈りもの>
motta

スリッパ迷子の母に贈った「夏の麻スリッパ」

「スリッパって、どうしたってヘタってしまうのよね」。母との会話で、スリッパの話題がよく上がります。

私の場合は、履き続けている甲の部分がどんどんブカブカになって、かかと部分の生地が擦り切れ、中の綿が出てきてしまいます。もったいなくて履き続けるのですが、恥ずかしいので来客がある時に急いで買い替える。何とかならないものか‥‥と思っていました。

そんな時に手に入れたのが、中川政七商店の「夏の麻スリッパ」。

中敷きがジュート麻になっているので、素足で履くとざらざらした感触がとても気持ちいいのです。また、夏の蒸れやすい時期に湿気がこもらないのも、おすすめしたいポイント。早速、同じくスリッパ迷子の母にプレゼントしました。暑がりの母はとても気に入ったようです。

そして今のところ、ヘタり具合も気にならない。毎日の家事の相棒だから、この調子で丈夫に長持ちしてほしい!と思っています。

<贈りもの>

夏の麻スリッパ

ふるさとの話に花が咲く「大丸屋製菓 栗最中」

中川政七商店で働く同僚は、奈良県以外の出身者も多く、故郷の話でよく盛り上がります。お土産で地元の珍しいお菓子をいただくこともしばしば。群馬県出身の私としては、地元の美味しいものを皆さんに知ってほしいと、帰省するたびにいろいろ探しています。

いつもお土産リストに入っているのは、大丸屋製菓さんの「栗最中」。群馬県沼田市に本店を構え、創業130年を超える老舗の和菓子屋さんです。栗最中は小倉餡と白餡の2種があるのですが、私は白餡派。優しい甘さの白餡に大きな栗が丸ごと入っていて、1つで大満足のお菓子です。

故郷のお菓子を誰かに贈るとき、古い友人を紹介するようでなんとなく照れくさく感じてしまうのは私だけでしょうか‥‥?もしかすると、ふるさとへの想いがお菓子を通して伝わってしまう気がするからかもしれません。

<贈りもの>
・大丸屋製菓「栗最中」
 ホームページ:https://www.daimaruya.jp/
 Instagram:https://www.instagram.com/daimaruya_wagashi/

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 販促企画ディレクター 安田裕子