甘い物好きなら、わざわざ訪れたい三重のケーキ店

辻口博啓さんといえば、スイーツ好きはもちろん、そうでなくても名前を知っている人は多いのでは。そう、洋菓子の世界大会で数々の優勝経験を持つ、日本を代表するパティシエ、ショコラティエです。

その辻口パティシエが手がける店舗のひとつ「コンフィチュールアッシュ」が、2012年、もともと店を構えていた東京・世田谷から三重県菰野町へと移転オープンしました。

世界レベルのスイーツが菰野町で味わえるとは!
さっそく足を運んできました。

三重のアクアイグニス
アクアイグニスのコンフィチュールアッシュ
「癒し」と「食」をテーマにした複合温泉リゾート施設「アクアイグニス」内にあります
三重のアクアイグニス コンフィチュールアッシュ
近代的な建築も見ごたえたっぷり!

代表作の「セラヴィ」のほか、コンフィチュールアッシュオリジナルのケーキ

三重アクアイグニスのコンフィチュールアッシュ セラヴィ

「コンフィチュールアッシュ」に足を踏み入れると、ショーケースに色とりどりのケーキがずらり。中でも辻口パティシエの代表作といえるのが、1996年のソペクサコンクール(仏大使館主催の仏菓子コンクール)で優勝を勝ち取った「セラヴィ」です。

白い円柱型の上品な佇まい。木苺の上にはしずくをイメージしたジュレが1粒、キラリと輝きます。ホワイトチョコムースのケーキにフォークを入れると、中にはピスタチオの生地に、フランボワーズとショコラのムース。1番下にはチョコレートのサクサクとした生地が食感のアクセントとなり、多彩な味わいが口の中に広がります。

「セラヴィ」とはフランス語で「人生」という意味。
まさに、辻口パティシエが人生を賭けてつくったケーキなのです。

三重のコンフィチュールアッシュのケーキ
左より時計まわりに、「セラヴィ」595円、「湯の山ロール」305円、「ガトーショコラ H ~アッシュ~」580円、「フランボワーズピスターシュ」560円 ※価格はすべて税込
コンフィチュールアッシュ

「セラヴィ」以外のケーキは、すべて菰野町の「コンフィチュールアッシュ」オリジナル。果物の生産が盛んな三重県の素材をつかったケーキも季節ごとに揃います。

コンフィチュールアッシュのケーキと温泉コーヒー

人気の「セゾンドガトー」 445円(税込)と一緒に注文したのは、「温泉コーヒー」300円(税込)。「アクアイグニス」内に源泉100%掛け流しの片岡温泉があり、その温泉水で淹れたコーヒーは、まろやかな味わいです。

辻口パティシエが菰野を選んだ理由

気になるのが、辻口パティシエがなぜ、菰野町を移転先に選んだのか?ということ。

「コンフィチュールアッシュ」パティシエの谷口伸吾さんが、その理由について話してくれました。

「縁があって訪れたこの場所で、温泉水を使った温室で育つ、甘み深いいちごを食べて温泉に浸かったとき、たぐい稀な幸せを感じ、『この場所だ!』と決めたんだそうです」と、谷口さん。

コンフィチュールアッシュの辻口シェフ
オープン当時からこの店で働いている副統括責任者の谷口さん。常時20種くらい並ぶケーキの新作開発も、辻口パティシエとともに手がけています

そう、この店の最大の特徴が、隣にいちごを栽培する「TSUJIGUCHI FARM」があり、収穫シーズンの12月初旬から5月頃は、朝摘みのいちごがケーキに使用されること。

摘みたてのいちごのおいしさは格別!また、源泉100%の片岡温泉の温泉水で土をぽかぽかと温めているため、冬の間もたくさん栄養を吸収し、甘みの強いいちごになるんです。

「TSUJIGUCHI FARM」では12月初旬から5月頃、いちご狩り体験もできます
コンフィチュールアッシュ
コンフィチュールアッシュ
「TSUJIGUCHI FARM」の管理をしているのは、アクアイグニス農園事業マネージャーの山本久史さん。有機栽培で肥料の研究にも意欲的です

「コンフィチュールアッシュ」のアッシュ(H)は、辻口パティシエの名前、博啓(ひろのぶ)の頭文字のH。同店の店名は、“博啓(ひろのぶ)のジャム”という意味です。

自慢のコンフィチュールも、お土産に買いたい逸品。季節の味わいから定番商品まで、ずらりと並びます。

コンフィチュールアッシュのジャム

辻口パティシエが手がけるほかの店舗でも「セラヴィ」は味わえますが、朝摘みいちごを使うスイーツが食べられるのは菰野町だけ。なんて贅沢すぎるロケーションなんでしょう!

遠方からも訪れる価値のあるスイーツ店です。

<取材協力>
コンフィチュールアッシュ
三重郡菰野町菰野4800-1 アクアイグニス内
059-394-7727
https://aquaignis.jp/

 


こもガク×大日本市菰野博覧会

工芸、温泉、こもの旅。

こもガク×大日本市菰野博覧会

10月12日 (金) ~14日 (日) の3日間、「萬古焼」「湯の山温泉」「御在所岳」「里山」など豊かな魅力を持つ町三重県菰野町で「こもガク×大日本市菰野博覧会」が開催されます。

期間中「さんち〜工芸と探訪〜」のスマートフォンアプリ「さんちの手帖」は、 「こもガク×大日本市菰野博覧会」の公式アプリとして見どころや近くのイベント情報を配信します。また、各見どころで「旅印」を集めるとプレゼントがもらえる企画も実施。多彩なコンテンツで“工芸と遊び、体感できる”イベントです。ぜひお越しください!

【開催概要】
開催名:「こもガク×大日本市菰野博覧会」
開催期間:2018年10月12日 (金) ~14日 (日)
開場:三重県三重郡菰野町
主催:こもガク×大日本市菰野博覧会実行委員会

公式サイト
公式Facebookページ
公式ガイドアプリ(さんちの手帖)

 


文:広瀬良子
写真:西澤智子

レトロかわいいパッケージに一目惚れ、日の出屋製菓の「湯の花せんべい」

わたしたちが全国各地で出会った“ちょっといいもの”を読者の皆さんへプレゼントする「さんちのお土産」。

今回は、三重県菰野町で見つけた、レトロかわいい缶に入った「湯の花せんべい」をお届けします。

絶妙な配色に、菰野にちなんだモチーフがデザイン

サーモンピンクにレトロな「湯の花せんべい」のロゴ。パッケージのかわいさに、旅先で見つけたら買わずにはいられないこちらの商品は、昭和34年に御在所ロープウェイが開通されたのを機に誕生したものです。

四日市市の印刷会社がデザインしたというパッケージ。
ロゴもデザインも、誕生した当時のまま。ちょっと抜け感のある色合いが女子心をくすぐります。

湯の山温泉の炭酸せんべい「湯の花せんばい」
パッケージには御在所ロープウェイと岩場に立つニホンカモシカが描かれています。定番の丸缶のほか、容量たっぷりの角缶も

この「湯の花せんべい」を見つけたのは、菰野町で2018年に開湯1300年を迎えた湯の山温泉。そう、中身は温泉地ならでは、炭酸泉のお湯を使った“炭酸せんべい”です。

炭酸せんべいの発祥は有馬温泉。以来、全国の温泉地で炭酸泉や鉱泉を使って製造するせんべいがありますが、材料の配合や手焼き、もしくは機械を使って仕上げるなど、各所で食感や味わいはそれぞれ。

日の出製菓の炭酸せんべいは、卵入りが特徴です。食べ比べてみると、味の違いが感じられておもしろいかも!?

千種啓資(ちくさひろし)さん
取材に応じてくれたのは、創業者の孫にあたる千種啓資(ちくさひろし)さん

パッケージも味も、創業当時のまま

日の出製菓の炭酸せんべいは、戦後まもない昭和20年代、創業者の千種一夫さんがリヤカーを引きながら手売りしていたという歴史も。

パッケージが誕生当時のままであるだけでなく、せんべいも創業以来変わらぬ味わいです。

湯の花せんべいのゴールド缶
2018年には、湯の山温泉開湯を記念したゴールド缶も登場
長島温泉限定パッケージ
長島温泉限定パッケージには、長島温泉にちなんだものや、ナガシマスパーランドのアトラクションがデザインされています

今回のお土産

今回のお土産は、32枚が入った湯の花せんべい丸缶。サクサクと軽い口当たりに、ほのかな甘さ。昔懐かしい味わいの炭酸せんべいです。

お土産の炭酸せんべい

自分用にも、友達のお土産にも。せんべいを食べた後も、小物入れなどとして愛用したい、家に置いておくだけで幸せ気分になれそうなロングセラー商品です。

ここで買いました

希望荘
三重郡菰野町湯の山
0593-92-3181
http://www.kibousoh.or.jp/

さんちのお土産をお届けします

この記事をSNSでシェアしていただいた方の中から抽選で1名さまに、さんちのお土産 湯の花せんべい丸缶をプレゼントします。応募期間は、2018年10月8日〜10月31日までです。

※当選者の発表は、編集部からシェアいただいたアカウントへのご連絡をもってかえさせていただきます。いただきました個人情報は、お土産の発送以外には使用いたしません。ご応募、当選に関するお問い合わせにはお答えできかねますので予めご了承ください。 たくさんのご応募をお待ちしております。

<取材協力>
日の出屋製菓
http://www.hinodeya-seika.net/


文:広瀬良子
写真:西澤智子

 


こもガク×大日本市菰野博覧会

工芸、温泉、こもの旅。

こもガク×大日本市菰野博覧会

10月12日 (金) ~14日 (日) の3日間、「萬古焼」「湯の山温泉」「御在所岳」「里山」など豊かな魅力を持つ町三重県菰野町で「こもガク×大日本市菰野博覧会」が開催されます。

期間中「さんち〜工芸と探訪〜」のスマートフォンアプリ「さんちの手帖」は、 「こもガク×大日本市菰野博覧会」の公式アプリとして見どころや近くのイベント情報を配信します。また、各見どころで「旅印」を集めるとプレゼントがもらえる企画も実施。多彩なコンテンツで“工芸と遊び、体感できる”イベントです。ぜひお越しください!

【開催概要】
開催名:「こもガク×大日本市菰野博覧会」
開催期間:2018年10月12日 (金) ~14日 (日)
開場:三重県三重郡菰野町
主催:こもガク×大日本市菰野博覧会実行委員会

公式サイト
公式Facebookページ
公式ガイドアプリ(さんちの手帖)

うなぎパイファクトリーで「師範」に教わる工場見学。うなぎパイにつまった職人のこだわりとは?

浜松のお土産として真っ先に思い浮かべるものは何ですか?

サクサクしたパイ生地にツヤっとかがやくお砂糖と秘伝のタレ。「夜のお菓子」というキャッチフレーズでおなじみの「うなぎパイ」は、昭和36年に発売されてから今年で56年続く大ヒット商品として人々に愛されてきた浜松銘菓です。

年間 約8,000万本も生産している「うなぎパイファクトリー」にお邪魔して、うなぎパイ職人さんたちのこだわりと美味しさの秘密を伺ってきました。

うなぎパイの製造風景

工場見学ブームを先取り うなぎパイファクトリー

浜名湖にほど近い「うなぎパイファクトリー」は、近年ブームの見学ができる工場としては先駆けとも言える2005年に竣工し、年間68万人を超える人が訪れる人気観光スポットです。

うなぎパイファクトリー
うなぎパイファクトリー
ベテランうなぎパイ職人の生地作りをパネルで紹介
ベテランうなぎパイ職人の生地作りをパネルで紹介
うなぎパイが焼きあがる窯の様子
焼きあがる窯の中を覗けます
「うなぎ登り」にちなんだ登り専用階段
「うなぎ登り」にちなんで登り専用階段の手すりにはうなぎが
うなぎパイファクトリーでは包装のラインが上から一望できる
包装ラインは上から一望できます
うなぎの寝床をイメージした展示スペース
うなぎの寝床をイメージした展示スペース

“浜松といえばうなぎ”なんだ!1961年に完成した「うなぎパイ」

うなぎパイの生みの親・春華堂の二代目・社長の山崎幸一さんは、ある日旅先で「どこから来たか?」と尋ねられたそうです。

幸一社長は「浜松です」と応えますが、相手は浜松がどこかがわからない様子。「浜名湖の近くです」と補足すると「ああ、うなぎの美味しいところですよね」と返されたそうです。

そしてこの何気ない会話から「浜名湖といえばうなぎ」という知名度の高さを実感した幸一社長は、うなぎがテーマの浜松らしいお菓子の試作に取りかかり、東京オリンピックを3年後にひかえた1961年に「うなぎパイ」を完成させたのでした。

100年以上の歴史を持つ「うなぎ養殖」発祥の地・浜松

そもそも浜名湖はなぜうなぎが有名なのでしょう?

「うなぎのかば焼」の支出金額は全国第1位の浜松市ですが (H25~27年平均) 、養殖うなぎの生産量となると静岡県は1,490トンで4位。1位の鹿児島県の6,838トンから大きく引き離されています (H26年調べ) 。

それでも「浜名湖といえばうなぎ」と言われる所以は、養殖の歴史にありました。

今から100年以上前の明治33年、浜名湖の自然と温暖な気候に着目した服部倉治郎によって、浜名湖のうなぎ養殖が始まりました。その後村松啓次郎によって改良され、昭和46年に確立した養殖方法によって生産量を大幅に増やすことに成功し、この養殖方法が全国各地に広がりました。これによって「浜名湖といえばうなぎ」と全国に知られるようになったのですね。

美味しさの秘密 総勢54名のうなぎパイ職人たち

ここからさらに、一般公開されていない、うなぎパイ製造の全工程を見学させていただき、美味しさの秘密について詳しく伺ってきました。

「世界中でこのうなぎパイを作れるのは僕たちたった54人だけなんですよ。そのことに職人ひとりひとりが誇りを持ってほしいんです」

とおっしゃるのは、今回工場を案内してくださる野末三知夫さん。総勢54名のうなぎパイ職人を束ねる「師範」として、後進の指導にあたっておられます。

うなぎパイ職人、「師範」の野末さん
師範の野末さん。厳しい衛生管理は職人の誇り。長靴の裏がピカピカの靴置き場も見せていただきました

春華堂では2014年からうなぎパイ職人たちに下から「錬士」「範士」「宗家」「師範」と4段階に分けた「師範制度」を導入しました。その評価基準は技術や知識だけでなく、人間性も重要になっています。

うなぎパイが誕生して56年。商品開発した当時の職人から3世代目にあたる現在の職人たちに、「心・技・体」の精神と「つくり手の想い」を伝え、うなぎパイ職人として目指すべき在り方を継承していく必要がある、というお話に納得したのは実際の工程を間近で見てからでした。

うなぎパイには何が入っているのか。熟練の職人が生地を作る

最初の工程は生地玉と呼ばれるうなぎパイの生地を仕込む作業です。

うなぎパイの生地には、厳選された小麦粉、バター、うなぎ粉と水を使用しています。もともと医学を志していたという2代目・幸一社長によって、美味しさだけでなく栄養面も研究を進められたうなぎパイは、6本でうなぎのかば焼き100グラム相当のビタミンAが含まれているそうです。

これらの材料をミキサーで練って成形する生地玉は3名の職人によって繁忙期には1日1,000玉も作られています。

ローラーで伸ばしやすいように四角く成形されたうなぎパイの生地玉
ローラーで伸ばしやすいように四角く成形された生地玉

生地玉を大型ローラーでのばしてたたみ、めん棒で均一にならしてさらにローラーで伸ばし、数百回折りたたんだ生地を寝かせます。

生地を寝かした時間が作業台にかかれている
生地を寝かした時間が作業台にかかれている

寝かした生地は仕上げ室へ移動され、熟練の職人によって砂糖をふりながら生地を伸ばす作業を繰り返します。

9,000層になるまで折りたたむ作業はパイのサクサク感を出す重要な工程です。この時使う砂糖はうなぎパイのために作られた特別なもので、焼き上がりのタイミングに合わせて絶妙な溶け具合になるように工夫されています。

12台のパイローラーが並ぶ仕上げ室
12台のパイローラーが並ぶ仕上げ室で作業ができるのは熟練職人さんだけ
最近仕上げ室に入った新人を指導する師範
最近仕上げ室に入った新人を指導する師範

「僕はこの工程が一番好きです。仕上げた生地は15分後には隣のオーブンで焼き上がります。つまり、いま自分が作った生地の結果を15分後には確認できるということなんです。それが2、3日経ってから結果が出るのでは感覚がボヤけてしまう。今の生地の何が良かったのか、悪かったのか、すぐ自分で確認できるからやっていて楽しいし、上達も早くなるんですよ」

砂糖を均一に振る量も誤差は0.7%の範囲内。一人前になるまで10年はかかるというのも納得です。

いよいよオーブンへ。細く並んでいたパイ生地は、あっという間に横に膨らんで、鉄板の上にぎっしり並びます。

オーブンに並べられたうなぎパイの生地
いよいよオーブンへ

そして仕上げの秘伝のタレを刷毛でサッとひと塗り。ガーリックが決め手のタレは社内でもごく一部の職人だけに伝わるトップシークレットです。

刷毛で秘伝のタレを塗っていきます
刷毛で秘伝のタレを塗っていきます

1日20万本、年間8,000万本も生産する巨大な工場の中で、実際はうなぎパイ職人さんたちのめん棒の持ち手部分が痩せるほど、人の手で作り上げられていたことを知り、梱包のラインへと流れていくうなぎパイたちを我が子のように見送ってから見学を終了しました。

検品されていくうなぎパイたち
検品されていくうなぎパイたち

「夜のお菓子」に隠された、初代社長が掲げた「三惚れ主義」

「夜のお菓子」というキャッチフレーズは、高度成長期の日本で共働きの家庭が増え、平日家族がなかなか揃わなくなった時代を背景に、家族団らんの夜のひとときをうなぎパイを囲んで楽しんでほしいという2代目・幸一社長の願いから生まれたものでした。そこには初代・芳蔵社長の言葉が隠されていました。

「一つ、土地に惚れること。二つ、商売に惚れること。三つ、家内に惚れること。」

地元に根ざし、家庭や職人を大切にし、真面目に商売する。56年愛されてきた浜松の味は、お菓子と人を作るうなぎパイ職人たちの愛情で大切に受け継がれていました。

「50年先も100年先もうなぎパイを残したい」
「50年先も100年先もうなぎパイを残したい」

毎日暑い夜が続く今日この頃、一家団らんで夏バテ予防にうなぎパイを召し上がってみませんか?

<取材協力>
うなぎパイファクトリー
静岡県浜松市西区大久保町748-51
053-482-1765
http://www.unagipai-factory.jp/

文・写真:神尾知里
こちらは、2017年7月26日の記事を再編集して公開いたしました

重森三玲がつくった、枯山水とモダンな庭。ふたつの景色が楽しめる「ちそう菰野」

旅先で出会う、日本庭園。

美しく剪定された木や、手入れの行き届いた砂紋。

なんの前知識がなくても心が洗われるような風景に目を奪われますが、見方を知ると、さらに魅力が一段と深まります。庭には、持ち主の想いや、その土地の文化が詰まっているものです。

今回は、三重県内に唯一存在する、世界的に有名な作庭家・重森三玲(しげもりみれい)が手がけた庭を訪ねます。

三重にあるちそう菰野
庭は、ギャラリー&レストラン「ちそう菰野」から望めます。門を入り、建物までのエントランスも風情たっぷり

菰野町を訪れた重森三玲氏

重森氏が手がける庭があるのは、三重県菰野町。

なぜこの場所に庭をつくることになったのか? 重森氏に作庭を依頼した横山秀吉(よこやま ひできち)さんの孫にあたる、横山陽二さんに話を伺いました。

「祖父はこの家を後世に残したいという想いから、庭をつくりたいと思ったそうです。書物で重森さんのことを知り、“一見さん”でお願いに参りました。

当時すでに著名だった重森さんは最初驚いたそうですが、菰野町に足を運んでくさだり、電車の車窓から眺めた田園風景や、この場所から近い廣幡神社が借景にできるロケーションを気に入り、庭づくりを承諾してくださいました」

慌ただしい日常から、舟石で「心の旅」に

重森氏がつくった庭は、建物を挟むように「表庭」と「裏庭」とがあります。

表庭は、重森氏が得意とする、見事な枯山水。ちなみに枯山水とは、水を使うことなく、石や砂で水のある風景を表現する日本庭園の形式です。

三重にあるちそう菰野の重森三玲が作った庭
作庭当時は私邸でしたが、2017年にギャラリー・レストラン「ちそう菰野」として開かれることとなり、レストランスペースから表庭・裏庭ともに一般に開かれた場所となりました

庭には、舟のような形の「舟石」があり、そのまわりは海に見立てた幾重にも広がる砂紋を見ることができます。これは、舟石で「心の旅」にでることをイメージしたもの。

医師をしていた秀吉さんは、庭を眺めて心整える場所になるように‥‥と、重森氏に依頼。上空からこの庭を見ると、苔山で「心」という文字が描かれているそうです。

奥には、仏に見立てた立派な緑石も目を引きます。雨が降ると艶やかに輝き、また苔もひらいて、しっとりと風情ある趣に。

吉田宗匠が手がけた茶室

隣には、陽二さんの母の実家から移築したという、吉田宗匠が手がけた茶室「尽日庵(じんじつあん)」も。

この「尽日庵」という名前、『終日、春を探しに出かけたが春は見つからない。家に帰ると庭先に祠んだ梅のつぼみがあり、春の訪れを告げる花はこんな身近にあったのか』という漢詩から命名されたとか。

茶室へと導く前庭には、尽日庵になくてはならない梅畑もつくられています。

三重にあるちそう菰野 重森三玲が作った庭

表庭とは異なる趣の裏庭

「ちそう菰野」を挟んで反対側にあるのが裏庭。こちらは伝統的な格式の表庭とはうって変わり、モダンな色彩とデザインです。

白い白川砂と赤い天狗砂、青小判石敷。これは、重森氏が菰野町を訪れた際に電車の車窓から見た日差しを受けてキラキラと光る田園風景が描かれています。

三重にあるちそう菰野の重森三玲が作った裏庭

こちらの庭は、1968年6月にできあがって以来、家主やその知人以外は目にすることのできないものでしたが、2017年にレストラン・ギャラリー・庭からなる空間「ちそう菰野」として一般開放。

重森氏が手がけた、古典的な庭とモダンな庭に囲まれて食事ができるとは、なんて贅沢なひとときなのでしょう。

素敵な空間の「ちそう菰野」とともに、その空気感を存分に味わいに出かけてみてください。

<取材協力>
横山陽二さん(名古屋外国語大学准教授)

ちそう菰野
三重県三重郡菰野町大字菰野2657
059-390-1951
http://chisoukomono.com

< 関連記事 >
美しい日本庭園で「三重県の縮図」を味わう。ちそう菰野は五感を開放できるレストラン

三重にあるちそう菰野のレストラン。田代夫妻
「ちそう菰野」をつくった現代アーティストのご夫妻にお話を伺いました。田代裕基さんは彫刻家、理恵さんは料理家です


こもガク×大日本市菰野博覧会

工芸、温泉、こもの旅。

こもガク×大日本市菰野博覧会

10月12日 (金) ~14日 (日) の3日間、「萬古焼」「湯の山温泉」「御在所岳」「里山」など豊かな魅力を持つ町三重県菰野町で「こもガク×大日本市菰野博覧会」が開催されます。

期間中「さんち〜工芸と探訪〜」のスマートフォンアプリ「さんちの手帖」は、 「こもガク×大日本市菰野博覧会」の公式アプリとして見どころや近くのイベント情報を配信します。また、各見どころで「旅印」を集めるとプレゼントがもらえる企画も実施。多彩なコンテンツで“工芸と遊び、体感できる”イベントです。ぜひお越しください!

【開催概要】
開催名:「こもガク×大日本市菰野博覧会」
開催期間:2018年10月12日 (金) ~14日 (日)
開場:三重県三重郡菰野町
主催:こもガク×大日本市菰野博覧会実行委員会

公式サイト
公式Facebookページ
公式ガイドアプリ(さんちの手帖)


文:広瀬良子
写真:西澤智子

【はたらくをはなそう】中川政七商店店長 川島理紗

川島理紗
(中川政七商店 ルミネ新宿店 店長)

2013年 遊中川 玉川高島屋S・C南館店にスタッフ入社
2014年 遊中川 横浜タカシマヤ
2015年 遊中川 玉川高島屋S・C南館店
2016年 同店の店長となる
2018年 中川政七商店 ルミネ新宿店 店長

もともと奈良が好きだった私が出会ったのがこの会社でした。
奈良の本店に立ち寄った際、「なんて素敵なお店なんだ!」と
感動したのを今でも覚えています。
外観、雰囲気、商品、スタッフ…全てのものに感動していた矢先、
募集を見てチャレンジしてみようと思い応募しました。
今では自分が店長になり、お客様にあの時の自分の感動を伝えることができているかなと
毎日試行錯誤しています。

そんな私が仕事をする上で大切にしていることは
「相手の気持ちを考える」
「否定しないこと」です。
お客様の立場だったらどう考えるだろう。
スタッフの立場だったらどう感じるんだろう。
どんな想いでこの商品を作ったのだろう。
そんな風に相手の立場に立って想像します。

店長として、スタッフとたくさん会話をしながら
相手が本当に考えてることを引き出し、
一緒に解決に導いていくことが多いです。
相手の考えが自分と異なっても、その視点が面白くもあり勉強になるので、
人の意見や考えを受け入れることも大切にしています。

また、自らチャレンジするのは苦手な方ですが、
いつもチャレンジする環境を与えていただくことが多いので
できるだけ否定せずにまずは受け入れてみようと思っています。
これまでも受け入れてみることで、新たな発見や出会いがありました。

働くことはたくさんの人と関わりを持つこと。
そのたくさんの人を大切にしたいと考えています。
直営店のスタッフとして、お客様の笑顔や一緒に働くスタッフの楽しんでいる姿が
私にとって一番仕事にやりがいを感じる瞬間です。

受験生必見。“絶対落ちない”合格祈願の山が三重にある

涼しい風に、秋の深まりを感じるこの頃。今年もあっという間に夏が終わってしまいました。受験を控えた学生たちにとっては、そろそろ受験勉強も追い込みのシーズンなのではないでしょうか。

そこで受験生に朗報です。三重県には、“絶対に落ちない”合格祈願スポットがあるのだとか。

三重県・菰野町から滋賀県・東近江市へと連なる、標高1,212メートルの御在所岳 (ございしょだけ) 。登山やロープウェイでの自然散策が人気の山ですが、実は受験生にも人気が出ているようなのです。その真相を確かめに、いざ噂の山へ。

登山した人だけが遭遇できる “絶対落ちない”スポット

御在所岳はロープウェイで山頂まで行ける山ですが、合格祈願スポットがあるという場所は中登山道という登山ルートの途中。

岩場が続くルートのため、しっかりとした準備が必要です。登山が趣味の私。嬉々として、フル装備で挑みます。

御在所岳

道中には、数々の巨岩が。その迫力に圧倒されながら歩みを進めます。雨の日は滑りやすいので、天気の良い日を見計らって行くのがおすすめです。

御在所岳

中腹あたりまで登ったところで遭遇したのは、縦に積み上がったように連なる不思議な岩。

御在所岳の地蔵岩
提供:菰野町観光協会

見れば見るほど、なんとも絶妙なバランスを保っています。

御在所岳の地蔵岩
提供:菰野町観光協会

2つの岩の間に挟まるように、四角形の岩が斜めに乗ったその姿。「地蔵岩」と呼ばれるこの岩は、“絶対に落ちない”ことで知られています。

そう、こちらが噂の合格祈願スポット。

御在所岳には奇岩・珍岩として名前のついた岩がいくつもありますが、その中でも地蔵岩は特に有名です。受験シーズンになると、験を担ぎたい受験が親子で訪れることも多いのだとか。

岩場をよじ登り、くぐり抜け、汗を流さねば辿り着けない道のりは、合格へ向かって挑む受験の道そのもののよう。困難を乗り越えやっと出会うことのできた“絶対に落ちない”岩は、ありがたさもひとしおです。

縁起のいい光景をしばし眺めながら休憩したら、もちろん山頂へ。

御在所岳ロープウエイ

中登山道を登りきると、ロープウェイの山上公園駅に出ます。歩いて御在所岳頂上へ向かうこともできますが、観光リフトに乗ればラクラク移動。

山頂付近の景色

帰りは、体力があればまた下山もがんばりたいところですが‥‥上りだけで精一杯だった私はロープウェイを利用。登山慣れしていて体力に自信のある方以外は、行きは中登山道・帰りはロープウェイ、と考えておくのが良いですね。

あっぱれな景色を楽しみに、登山も受験も頂を目指しましょう!
あっぱれな景色を楽しみに、登山も受験も頂を目指しましょう!

カモシカ愛から生まれた、“落ちない”絵馬

御在所岳の合格祈願は、これで終わりではありません。もうひとつ、地蔵岩以外にも縁起の良いものがあるのです。

それは、御在所ロープウエイのお土産ショップや、菰野町のお土産や銘品を取り扱うウェブショップ「カモシカ商店」で購入することができる“落ちない”絵馬。

カモシカ絵馬

その正体を確かめるため、訪れたのは「カモシカ商店」を運営するNPO法人三重県自然環境保全センター。

「1960年から2007年まで、御在所岳の頂上に『カモシカセンター』があったんです。そこでニホンカモシカを飼育し、訪れた皆さんが見れるようになっていました。当時つくったのが、この絵馬なんです」

教えてくれたのは三重県自然環境保全センターのスタッフ、北岡沙彩さん。

“落ちない絵馬”こと「カモシカ合格祈願の絵馬」のモチーフになっているカモシカ。
どうやら、カモシカに“落ちない”理由が隠されている!?

その秘密について話してくれたのは、同センター理事長にして「カモシカ合格祈願の絵馬」生みの親、森豊さんです。

三重県自然環境保全センター理事長の森豊さん
三重県自然環境保全センター理事長の森豊さん

「“絶壁に立っても落ちない”のが、カモシカの習性なんです。なぜなら鋭い蹄を持ち、足裏が吸盤のようになっているから。敵から身を守るため、他の動物が寄り付かない岩場を縄張りにしていたんですね」と森さん。

なるほど、それが“落ちない”といわれる所以だったのですね。

現在も御在所岳には、ニホンカモシカが生息。仲間と群れることなく、孤高の存在として生息しているニホンカモシカは、なんと氷河期時代から進化していないのだとか‥‥!

氷河期時代から進化していないのは、世界的にもニホンカモシカとオオサンショウウオとシーラカンスだけ。氷河期時代をも乗り越えるその踏ん張り、受験生でなくてもぜひあやかりたいものです。

絵馬についているお札には、御在所岳に生息するニホンカモシカの足跡と、手書きの「合格祈願」の文字。こちらもご利益がありそうです。

合格のお札

さらに絵馬のカモシカをよく見ると、首をかしげているような仕草。

絵馬の細部にも注目です
絵馬の細部にも注目です

“山の哲学者”ともいわれるカモシカは、このように首をかしげる習性があるんだそう。

カモシカについて話す森さんからは、終始カモシカ愛を感じます。そんな愛と“落ちないパワー”あふれる絵馬は、自分用のほか、お子さんやお孫さんにプレゼントするため購入する人も多いんだとか。

“落ちない岩”、“落ちない絵馬”。

確かに三重県には、御在所岳という”絶対に落ちない”合格祈願スポットがありました。

縁起のよい山登りを終えた後は、御在所岳ふもとの湯の山温泉で癒やしのひとときを。温泉のパワーが受験勉強にひと役かってくれそうです。

赤穂浪士討ち入りの際に大石内蔵助が立ち寄ったエピソードも残されている、由緒ある湯の山温泉
赤穂浪士討ち入りの際に大石内蔵助が立ち寄ったエピソードも残されている、由緒ある湯の山温泉。御在所岳のふもとにあります

<取材協力> *アイウエオ順
カモシカ商店
https://www.komono-omiyage.com/

菰野町観光協会
三重郡菰野町大字菰野2256-10
059-394-0050

三重県自然環境保全センター
三重郡菰野町田口新田2449-2
059-325-6386


こもガク×大日本市菰野博覧会

工芸、温泉、こもの旅。

こもガク×大日本市菰野博覧会

10月12日 (金) ~14日 (日) の3日間、「萬古焼」「湯の山温泉」「御在所岳」「里山」など豊かな魅力を持つ町三重県菰野町で「こもガク×大日本市菰野博覧会」が開催されます。

期間中「さんち〜工芸と探訪〜」のスマートフォンアプリ「さんちの手帖」は、 「こもガク×大日本市菰野博覧会」の公式アプリとして見どころや近くのイベント情報を配信します。また、各見どころで「旅印」を集めるとプレゼントがもらえる企画も実施。多彩なコンテンツで“工芸と遊び、体感できる”イベントです。ぜひお越しください!

【開催概要】
開催名:「こもガク×大日本市菰野博覧会」
開催期間:2018年10月12日 (金) ~14日 (日)
開場:三重県三重郡菰野町
主催:こもガク×大日本市菰野博覧会実行委員会

公式サイト
公式Facebookページ
公式ガイドアプリ(さんちの手帖)


文:齊藤美幸
写真:西澤智子