飛騨牛に朴葉味噌、だけじゃない。飛騨高山「郷土料理 京や」で味わう冬

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。

旅先で味わいたいのはやはりその土地ならではの料理です。あとは地酒と地の器などがそろえば、もうこの上なく。産地で晩酌、今夜は飛騨高山で一杯。

高山の夜は早い。

ひっそりとした通り

昼間は観光客で賑わっていた目抜き通りも、日に日に早くなる日暮れとともにひっそりとして来ます。

そんな中、どこか一杯立ち寄れるところはないかしらとそぞろ歩いていると、闇に浮かび上がる大きなシルエット。

京やの外観

暗い中でも建物の立派さがうかがえます。脇の看板には煌々と「京や」の文字。

京や、と浮かび上がる看板
明かりを目指していくと、いいお店を見つけた予感です
明かりを目指していくと、いいお店を見つけた予感です

誘われるようにのれんをくぐると「いらっしゃい」の明るい声とともに、

「席はテーブルとお座敷と、焼き物をするなら囲炉裏席がありますがどちらがいいですか?」

と尋ねられました。

中をちらりと覗くと囲炉裏席は網の上で食材を焼くスタイル。先客がいい匂いをさせているのはきっと、かの有名な飛騨牛でしょう。網の下の炭火が、とても暖かそうです。

囲炉裏席

「囲炉裏席でお願いします」と答えて席に落ち着くと、店内は高い天井、立派な梁。

わざわざ新潟から移築してきたという古民家を改築した店内は、内装もどこか懐かしさを感じさせます。

内装

早速くつろいだ気持ちになって、高山にきたらやっぱり食べたい、飛騨牛と朴葉味噌をまず注文。もちろん地酒も忘れません。

まずは定番の郷土料理で一杯

お店自慢の、A5ランクの飛騨牛を網焼きで。飛騨牛は「溶けるような口当たりもありつつ、しっかりと肉らしい食べ応えがあることが良さ」だそうです
お店自慢の、A5ランクの飛騨牛を網焼きで。飛騨牛は「溶けるような口当たりもありつつ、しっかりと肉らしい食べ応えがあることが良さ」だそうです
おすすめをお願いした地酒は、地元でも有名だという平瀬酒造の「久寿玉 (くすだま) 」
おすすめをお願いした地酒は、地元でも有名だという平瀬酒造の「久寿玉 (くすだま) 」
待ってました、朴葉味噌!
待ってました、朴葉味噌!

秋に一斉に葉を落とすというホオノキ。朴葉味噌は、その葉の上で味噌を炙り、葉の香りを味噌に移していただく飛騨伝統の郷土食です。

しいたけや刻みネギと一緒に炙ると、風味が一段と豊かになって、ご飯や晩酌のおともに最高です。

天然の器でいただく土地の恵み。炭火と地酒で体も温まって大満足、ですが今日の晩酌はこれでは終わらなかった。

店内のお品書きにふと目をやると、

店内のお品書き

漬物ステーキ‥‥こもどうふ‥‥?見慣れない料理名ばかりです。

「雪の多い飛騨は冬に野菜が採れなくなるので、どの家も漬物にしてあるんですね。でもそればっかりだと冷たいので、玉子でとじて焼いたものが漬物ステーキです」

教えてくれたのはご両親からお店を受け継いだ2代目の西村直樹さん。

そう、「京や」さんは飛騨牛や朴葉味噌だけにとどまらない、飛騨高山伝統のさまざまな郷土料理を味わえるお店なのです。

漬物ステーキ

冷めないうちに食べてね、の言葉通り出来立てを急いでほおばると、アツアツの卵とじの中にシャキシャキとした白菜の歯ごたえ。あっさりしているので、濃いめの朴葉味噌と好相性です
冷めないうちに食べてね、の言葉通り出来立てを急いでほおばると、アツアツの卵とじの中にシャキシャキとした白菜の歯ごたえ。あっさりしているので、濃いめの朴葉味噌と好相性です

ころいも

間引いた芋を「もったいないから」と保存し、皮ごと甘辛く炊いたもの。一口サイズでついついお箸が進みます
間引いた芋をもったいないからと保存し、皮ごと甘辛く炊いたもの。一口サイズでついついお箸が進みます

こもどうふ

飛騨のお豆腐屋さんやスーパーでは、すまきにして水分を抜いた状態のお豆腐が売られているそうです。それを家庭ごとに醤油や出汁で味付けしたものが「こもどうふ」。冠婚葬祭やお正月のおせちにも登場するそう
飛騨のお豆腐屋さんやスーパーでは、すまきにして水分を抜いた状態のお豆腐が売られているそうです。それを家庭ごとに醤油や出汁で味付けしたものが「こもどうふ」。冠婚葬祭やお正月のおせちにも登場するそう

ネギ焼き

あれこれと頼んだ中で一番心を打たれたのが、実は「ネギ焼き」。

お肉の付け合わせ程度に考えていたのですが、私が炭火でぼちぼちと焼いていると、

「ちょっと、焼き方を教えようかね」

焼き方指南

このお店の初代女将さん、西村さんのお母さんが声をかけてくれました。

「このネギは霜が降りないと採れないネギなの。分厚いから、芯と外側は別々に焼くのよ」

そう言って、程よく外側が焼けたネギから、器用に青々とした芯の部分をつるん、と網の上に押し出しました。

芯を押し出しているところ

ネギの名は飛騨ネギ。この地域で11月から2月頃までしか採れない季節限定の郷土野菜です。

コロコロ転がしながらしっかり焼き目がついたところで、生姜醤油で食べる。

いい具合に焼き目が付いてきました
いい具合に焼き目が付いてきました

「この芯の部分が、バカにならんのよ」

どうぞ、と女将さん
どうぞ、と女将さん

うまい!

外側の白い部分と全く味が違います。とろんとした甘みのあとに、薬膳のような、鼻に抜けるすっとした後味。食べるそばから体がポカポカと温まるようです。

めくるめく郷土料理の世界に夢中になっていると、耳に異国の言葉が飛び込んできます。しかもドアが開くたびに、違う言葉のよう。

店員さんも慣れた様子で相手ごとに挨拶を変えて応対します。

外国人観光客からも人気の高い飛騨高山。この地ならではの料理を味わえる「京や」さんは、国境を越えて愛されているようです。

「これからもっと賑やかになるよ、ここはどこの国だって思うくらい」

ネギを転がしながら、お母さんが冗談めかして笑いました。

飛騨高山の夜は長い。

気になる郷土料理がまだあって、なかなか席を立つ気になれません。

<取材協力>
飛騨高山郷土料理 京や
岐阜県高山氏大新町1-77
0577-34-7660
http://www.kyoya-hida.jp/

文・写真:尾島可奈子

益子「いろり茶屋」で味わうイノシシ鍋。益子焼の器に「燦爛」の燗酒を

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。

旅先で味わいたいのはやはりその土地ならではの料理です。あとは地酒と地の器などがそろえば、もうこの上なく。産地で晩酌、今夜は益子で一杯。

窯元めぐりでお邪魔した「えのきだ窯」さんにいたら、すっかり日も暮れてきました。近くで晩酌できるお店を紹介しようと思うんです、と目当てのお店の名前を告げると、

「ああ、このすぐ裏手ですよ。実はうちの親戚がやっているんです」

これはご縁!わざわざお店まで道案内してくれました。道途中にも、味のある看板が。

道途中の看板
イラストのイノシシが気になります…

急勾配の階段と坂を登りきると、立派な建物が見えてきます。看板には「いろり茶屋」の文字。

坂を登りきって、到着!
坂を登りきって、到着!

「それじゃあごゆっくり」と榎田さんに見送られて、景色の良い窓側の囲炉裏席に座ります。まず目に飛び込んできたのは、囲炉裏の上に吊られた木彫りのイノシシ。

通りから少し丘を上がっただけですが、窓いっぱいに緑が広がります。窓の上には先代が趣味で各地から集めたという大皿のコレクションが
通りから少し丘を上がっただけですが、窓いっぱいに緑が広がります。窓の上には先代が趣味で各地から集めたという大皿のコレクションが
この木彫りは‥‥
この木彫りは‥‥

そう、ここ「いろり茶屋」では年間を通して美味しいイノシシ鍋がいただけるのです。

スープの入った鍋が運ばれてきました
スープの入った鍋が運ばれてきました

普段は煮込んだ状態で出されるというお鍋を、2代目の榎田大介さんがわざわざ目の前で調理してくれました。

これで1人前です!
これで1人前です!
温まった鍋に投入!
温まった鍋に投入!

「イノシシ肉は煮込むとやわらかく、他のお肉にない独特の味わいが出るんですよ」

赤身の鮮やかなお肉は、益子町の北に位置する八溝 (やみぞ) 山系でとれたイノシシ肉。一帯では「八溝ししまる」のブランド名で知られます。

合わせる具材はしいたけ、ニラ、白菜、水菜、長ネギ。全て地元でとれたものです。そこにお豆腐とエノキ。

スープをたっぷりと具材に染み込ませて
スープをたっぷりと具材に染み込ませて
もうそろそろ完成です!
もうそろそろ完成です!

グツグツといい具合に煮えてきました。生姜とにんにく、すりごまを合わせた味噌仕立てのスープの香りが、湯気とともに体を包みます。

よそう器はもちろん益子焼。器はご親戚であるえのきだ窯のものが、やはり一番多いそうです。

完成!もちろんお酒も一緒に
完成!もちろんお酒も一緒に

益子焼らしい厚みのある器は手に熱くなく、あつあつのお鍋の具もスープも夢中で口に運べます。お野菜の出汁とお肉の旨味がスープと絡まって、うまい!体がポカポカとしてきます。

あちこちに益子焼の器が
あちこちに益子焼の器が
この器は、お店まで見送ってくれた榎田智さんの作品だそう
この器は、お店まで見送ってくれた榎田智さんの作品だそう

合わせるお酒は地元益子町の外池 (とのいけ) 酒造が作る「燦爛 (さんらん) 」。燗酒がおすすめだそうで、これからの季節、鍋のお供にぴったりです。

きりりとした水色のパッケージの「燦爛」。冬は是非熱燗で
きりりとした水色のパッケージの「燦爛」。冬は是非熱燗で

お鍋は1人前から頼めるのも嬉しいところ。聞けば2人で1人前分を頼んで、最後にお餅やうどんを人数分スープに入れて締める方も多いとか。

今度は人を連れてわいわい鍋をつつくのもいいな、と独り占めするにはもったいない益子の夜でした。

こちらでいただけます

いろり茶屋
栃木県芳賀郡益子町益子3270
0285-72-4230


文・写真:尾島可奈子

宍道湖七珍、最高のシジミ汁で〆る松江の夜

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。

旅先で味わいたいのはやはりその土地ならではの料理です。あとは地酒と地の器などがそろえば、もうこの上なく。産地で晩酌、今夜は松江で一杯。

なんでも松江には”スモウアシコシ”と呼ばれる宍道湖の珍味があると聞いて、昭和39年創業の「やまいち」さんののれんをくぐります。

宍道湖に注ぐ川沿い、新大橋のたもとにたつ「やまいち」さん。看板に宍道湖に沈む夕日が注ぎます

まだ夜と言うには早い、午後4時半。カウンターに腰を落ち着けると、目の前にはたっぷりと盛られた大皿料理、味のある手書きのお品書き。

この景色だけで幸せな気分になりますが、さらに目を引いたのがカウンター奥で湯気を立てるおでん。

おでん

松江の居酒屋さんでは冬に限らず、一年中おでんが並ぶのだそうです。

まずは地酒「豊の秋」を頼みつつ、お目当ての「スモウアシコシ」と、おでんも何品か食べたいな。ご主人におすすめを尋ねます。

―今日は、赤貝とモロゲエビだね。モロゲエビは今が出始めで、揚げると甘みが出ておいしいよ!

モロゲエビ!これこそがお目当ての「スモウアシコシ」のひとつらしいのです。

松江には淡水と海水の混ざる宍道湖が育んだスズキ、モロゲエビ、ウナギ、アマサギ、シラウオ、コイ、シジミがあり、これらは宍道湖七珍と呼ばれます。あまり多いので、地元の方は相撲発祥の地とされる松江らしく「スモウアシコシ」と覚えるそう。

まずは大皿にたっぷりと盛られていた赤貝で一杯
宍道湖七珍のひとつモロゲエビは、地元出西窯の器によそわれて出てきました

唐揚げでいただいたモロゲエビは、はじめカリっと、奥歯でじゅわっと、噛むほどにうまみが口の中に広がります。宍道湖の恵みに感謝せずにはいられません。

お酒と旬の一品で程よく体も温まってきたところで、先ほどからグツグツと幸せな音を立てているおでんを頼みます。

大きな具には女将さんがハサミを入れてくれる

お任せで選んでくれたのは里芋、春菊、厚焼き玉子、それに丸ごと一杯のイカ。春菊はさっと出汁にくぐらせれば十分。厚焼き玉子はやまいちさんオリジナルの具材だそうです。

イカは大皿に並んでいたものを出汁で茹でてから出してくれます。

おでんの具材

しっかり出汁がしみた里芋と玉子焼き、シャキッとした歯ごたえの春菊、プリップリのイカ。美味の前では言葉はいらず。お酒もお箸もよく進みます。

さてお腹もふくらんで、最後はもちろん宍道湖七珍、シジミで〆を。ふっくらしたシジミが溢れるほどに入ったお味噌汁で堪能します。

漁獲量日本一、宍道湖のシジミがたっぷり

合わせ味噌にシジミの出汁が効いて、沁みる美味しさとはまさにこのこと。宍道湖の恵みにまたしても感謝して、ごちそうさまです。

美味しいものたちとのご縁を授けてくれた出雲大社にお礼参りに行くべきか、そんなことを思いながら、お店を出るとちょうど日が沈む頃合い。お店から川沿いを歩くと、遠くに宍道湖へ沈む夕日がみえました。

「ばんじまして」と、出雲の夕方のあいさつを使ってみたくなる

こちらでいただけます

やまいち
島根県松江市東本町4-1
0852-23-0223


文:田中佑実
写真:尾島可奈子

伝統食材「山うに」のたこ焼きは、福井の地酒と一緒に楽しみたい

こんにちは、ライターの石原藍です。
旅先で味わいたいのは、やはりその土地ならではの料理。さらに地元のお酒がプラスされると、気分が盛り上がるのはきっと私だけではないはずです。

太陽が傾き始めた夕方4時。晩酌と呼ぶには少し早い時間帯ですが、とあるお店に到着しました。
やってきたのは、JR鯖江駅から徒歩1分ほどのところにある「ほやっ停」。久保田酒店という酒屋さんの敷地内、「ほ」のマークが目印の小さな屋台です。

店名にもなっている「ほやって」は福井弁で“そうなんですよ”という意味。語尾を伸ばすと、福井の人っぽく話せます

屋台と聞くとなぜか気分が高揚します。普通の店舗とは違う、小さな空間で繰り広げられる濃い出会いを期待してしまうからでしょうか。

なかに入ると白木のカウンターに並んだ6脚の椅子。目の前では女性の店長さんがせっせと仕込みの準備を進めています。

「うちのメニューは全部山うにを使っているんですよ」
と、メニューを見ている私に声をかける店長さん。

もしも県外から来た人で「山うに」を知っていたら、かなり通かもしれません。
山うにとは福井県鯖江市のなかでも河和田(かわだ)地区に伝わる薬味。「柚子」「鷹の爪」「赤なんば(完熟ししとう)」「塩」を丁寧にすり、1時間以上かけて練り上げたものです。

三方を山で囲まれた地域で作られていることや、見た目が福井名産の「塩雲丹(うに)」に似ていたことから「山うに」と言われるようになったそうです。

地元のおばあちゃんが丁寧に擦った山うに。機械ではなく、人の手で擦ることでなめらかになるそう(画像提供:越前隊)

地元では鍋に入れたりうどんに入れたりと、さまざまな料理のお供として親しまれている山うに。ほやっ停ではなんと、「山うにのたこ焼」が名物料理として大人気なのです。

山うにを混ぜた生地にたっぷりのネギと鰹節。一口食べると山うにのほのかな柚子の香りが漂います。さっぱりと食べられるのでおつまみにもぴったり。見た目ほど辛くはありません。

山うにのたこ焼き、8個入り(500円・税込)おすすめはしょうゆ味
後づけ用の山うにもトッピングされています。お好みでどうぞ

たこ焼きにビールもいいですが、ここはやはり日本酒を合わせたいところ。
ほやっ停には福井県内の地酒が4〜5種類並びますが、今回は地元・鯖江の加藤吉平酒店が手がける「梵(ぼん)」を選びました。なかでも「梵GOLD」は数々の日本酒コンクールでも高い評価を受けている大吟醸で、飲みやすく、すっきりとしたあと味が和風のたこ焼きにぴったり合うのです。

梵GOLD(1杯400円・税込)

お酒が進み、もう一品頼みたくなった場合は「親鳥の煮込み」(500円・税込)を。
福井は昔から親鳥(卵を産まなくなった鶏)を食べることが多く、若鳥よりもしっかりした歯ごたえや、噛めば噛むほど旨みが出てくる味わいが人気の食材です。鰹と昆布の出汁で煮込んだ親鳥にたっぷりのネギ、そして山ウニを合わせて食べると、親鳥の美味しさが一層引き立ちます。ますますお酒が進んでしまいそう。

河和田は越前漆器の産地としても有名な場所。一品料理には、さりげなく越前漆器の技術を活かした器を使っています

あぁ、日が沈む前からいただくお酒は、なんと格別なのでしょう!
そうこうしているうちに、店内には次々とお客さんがやってきました。小腹が空いた方や一杯飲みたくなった方、鯖江に出張でやって来た方など、それぞれがお店の人との会話を楽しんでいます。時には知らないお客さん同志が意気投合することもあるのだとか。これこそ屋台の醍醐味ですよね。

ちなみにほやっ停はお店が開くまでの時間、バスの待合処になるという別の顔もあります。昼間は学生やお年寄りの方が利用するなど、夜とは違った雰囲気。バスが来るまでの間や買い物帰りにちょっとひと休みしたい時にも、多くの人に利用されています。

日中は待合処。15時からはたこ焼き屋、そして18時からは立ち呑み屋に早変わり。15時から飲んでる方も多いそう

その時居合わせた人たちによって日々新しい出会いが生まれているほやっ停。
地元の食材を活かした料理と地酒、そして人とのふれあいを楽しめるお店として、旅の思い出に加えてみませんか。

こちらでいただけます

ほやっ停
福井県鯖江市旭町1-1-4(久保田酒店敷地内)
定休日 日曜(待合処として自由に利用可能)
070-2251-1991

文・写真:石原藍

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RENEW×大日本市鯖江博覧会

9月のさんちは福井県「鯖江・越前」を特集します。
インタビュー記事や見どころ情報を盛りだくさんでお届けします!

また、来たる10月12日 (木) ~15日 (日) には鯖江市で
「RENEW×大日本市鯖江博覧会」が開催されます。

多彩なコンテンツで“工芸と遊び、体感できる”イベント。
ぜひお見逃しなく!

【開催概要】

開催名:「RENEW×大日本市鯖江博覧会」
開催期間:10月12日 (木) ~15日 (日)
開場:福井県鯖江市河和田地区・その他
主催:RENEW×大日本市鯖江博覧会実行委員会

オフィシャルレセプション:10月12日 (木) 19:00~@鯖江市河和田地区内 PARK

公式サイト : http://renew-fukui.com/
公式FBページ : https://www.facebook.com/renew.kawada
公式ガイドアプリ(さんちの手帖):https://sunchi.jp/app

江戸時代から受け継がれる濃厚な豆腐田楽

こんにちは。さんち編集部の西木戸弓佳です。
旅の楽しみのひとつ、おいしい食事。旅先ではやはり、その土地でしか食べられない地のものを楽しみたいものです。
食べるのも飲むのも大好きなさんち編集部。旅前におこなう企画会議では、胃がいくつあっても足りないんじゃないかというほどの取材候補が並びます。その中でも特に皆さんにおすすめしたい、厳選した産地の良店を紹介する「産地で晩酌」。今回は、和田竜さん原作、嵐の大野智さん主演の映画、「忍びの国」の舞台として話題となっている三重県・伊賀編です。

歴史を感じるどっしりとした佇まい

晩酌を楽しむのは、松尾芭蕉が生まれた町・伊賀上野。芭蕉翁生家や記念館の近くにある、豆腐田楽の専門店「田楽座わかや」さんです。「影待や菊の香のする豆腐串」と、芭蕉の句にも登場する豆腐田楽は、伊賀地方の郷土料理です。

大きな吹き抜けのある店内。広い2階席もある

店内に入ると、お味噌が焼ける香ばしい匂い。それだけでお腹が減ってきます。
豆腐田楽の専門店、田楽座わかやさんの創業は1829年(文政12年)。200年近く続く、老舗の人気店です。四方を山に囲まれた、伊賀地方。昔は、海のものが手に入りにくかったため、豆腐が貴重なタンパク源として重宝されていたそうです。

店内にある炭火の焼き場

11代目の店主が炭火の焼き場で1本ずつ丹精に焼きあげる豆腐田楽は、有機栽培の大豆で作った手作り豆腐に、3年仕込みのオリジナルのお味噌が塗られたこだわりの一品。代々続く秘伝のお味噌は、中部に多い「大豆仕込み」と関西に多い「米仕込み」を併せ持った全国でも珍しい大豆・米のどちらにも麹をつける製法。中部と関西の食文化が交わる、三重らしさを感じます。

地元で穫れた大豆「フクユタカ」と天然にがりで作られた手作り豆腐
味噌が焼ける香ばしい香りが店内を漂う
藁の刷毛を使って味噌が塗られる
江戸時代から受け継がれているという、漆塗りの田楽入れ

お味噌の焼けた香ばしい香りをまとって運ばれてきた、熱々の豆腐田楽。ツヤツヤした表面が美しいです。
しっかりした味付けの豆腐田楽、ご飯との相性が抜群に良くご飯に乗っけて食べるのも人気とのこと‥‥ですが、伺ったのは晩酌の時間。同じお米なら相性はいいだろうという、ちょっと無理のある論を言い訳に、地元のお酒を頂きます。合わせたのは、地元・伊賀市の大田酒造さんで作られた「半蔵」。すっきりとした味が、濃厚な豆腐田楽にぴったりでした。

「半蔵」は伊勢志摩サミットで出されたことで有名なお酒

多いかなと思った16本の田楽も、ペロッと完食。栄養満点の豆腐に、体が喜んでいる気がします。
秘伝のお味噌は、春先には山椒、冬には柚子が入るのだそう。季節を変えてまた楽しみたい、伊賀の郷土料理・豆腐田楽。おいしい香りに包まれながら、お店を後にしました。

こちらでいただけます

田楽座わかや
三重県伊賀市上野西大手町3591
0595-21-4068

文 : 西木戸弓佳
写真 : 菅井俊之

由比ヶ浜の風を感じる古民家で、打ち立ての蕎麦をいただく 鎌倉 松原庵

こんにちは。さんち編集部の山口綾子です。

旅に出かけたら、何をいちばん優先しますか?やっぱり「食」と答える方が多いのではないでしょうか。

でも、ガイドブックに大きく載っているお店だけでは物足りない。地元の人たちおすすめのお店で、その土地の空気を味わいたい。そしてそこに、地元のお酒と美味しい肴があれば最高ですよね。

今日は由比ヶ浜駅から程近い「鎌倉 松原庵」さんを訪ねました。

鎌倉駅から江ノ島電鉄に乗り換え、のんびり揺られながらもあっという間に由比ヶ浜駅に到着です。由比ヶ浜駅から徒歩2~3分、こんなに閑静な住宅街の中にお店がある‥‥?と少し心配になりますが、すぐに「鎌倉 松原庵」の看板が見えてきます。

大きなのれんをくぐって敷地内へ。古民家の落ち着いた雰囲気の中にあたたかみのある照明が効いています。景色も含めて素晴らしい晩酌の時間になりそうです。

正面入口の小道
正面入口の小道

店内は全部で70席あり、テーブルと座敷、テラスがあります。今回は座敷に通していただきましたが、夏~初秋のテラス席も格別だとか。冬場も利用は可能で、ストーブとブランケットが用意されています。

趣のある店内。縦型の2枚の絵は信州を中心に活躍する田嶋 健さんによる作品
趣のある店内。縦型の2枚の絵は信州を中心に活躍する田嶋 健さんによる作品
夜のテラス席の様子
夜のテラス席の様子

鎌倉 松原庵さんは、2007年3月に開業されました。きっかけは“築70年の古民家があるのでそこを蕎麦屋にしませんか”というお話があったからだそうです。

松の木をはじめとした自然を含めた環境と建物の調和が取れていたため、なるべくその状態を活かした店づくりを心がけていらっしゃいます。店内に入ると、あたたかな品格もありながら、まるで誰かのお家にお邪魔しているかのような居心地です。

いよいよ、晩酌です

「旬菜三点盛り」と人気の「すだち鬼おろしそば」、神奈川のおすすめの日本酒を注文します。

お通しは、きゅうりに醤油豆をのせたもの。甘じょっぱい味が晩酌にぴったりです。ちなみにこの醤油豆は系列店の「酢重正之商店(すじゅうまさゆきしょうてん)」で販売されています。

どんなお酒とも相性が良さそうな醤油豆です
どんなお酒とも相性が良さそうな醤油豆です
左からアスパラガスと筍の天婦羅、うどのきんぴら、ほうれん草と春菊のおひたし
左からアスパラガスと筍の天婦羅、うどのきんぴら、ほうれん草と春菊のおひたし

「旬菜三点盛り」は、季節によって内容が変わることもあるそうです。今回は春の味覚が満載でした。

塩でいただくアツアツの天婦羅と、ピリっと甘辛いきんぴら、出汁のきいた優しい味のおひたしと3種がバランス良く楽しめます。天婦羅には、鎌倉ならではの海鮮あられ揚げもおすすめです。

キリリと冷えた日本酒とお蕎麦の相性は最高です
キリリと冷えた日本酒とお蕎麦の相性は最高です

日本酒は「天青 風露 特別本醸造」。とても飲みやすく、後味がサッと辛口の美味しい日本酒でした。

つゆがキラキラと輝いていました‥‥
つゆがキラキラと輝いていました‥‥

「すだち鬼おろしそば」は、すだちのさっぱりとした苦味と蕎麦のつゆ、大根おろしが絡み合って、人気が高いのも大きく頷けます。

お、美味しい!蕎麦は細めの二・八の田舎蕎麦で、喉越しがよく風味が豊かなことがひとつの特徴の蕎麦です。その日に食べる分だけ、店内で手打ちをするそうです。

鎌倉 松原庵さんのお料理へのこだわりが、“蕎麦前”という江戸時代からの粋な蕎麦の食べ方にあります。この食べ方をお客様に味わっていただくために一品料理の品揃えにも注力されているとか。

「ご友人やご家族と、会話を楽しみながらお酒に合う一品料理をつまみ、最後に蕎麦で〆る、という時間を鎌倉 松原庵の空間とともにお楽しみいただけると幸いです」とのこと。

お料理の器も、日本全国から選りすぐりの作家による作品で、調度品としてよりも、実際に盛り付けたときに美しくなるものを選んでいるそうです
お料理の器も、日本全国から選りすぐりの作家による作品で、調度品としてよりも、実際に盛り付けたときに美しくなるものを選んでいるそうです

料理、空間、サービスといったすべてが、お客様の邪魔にならないよう、昔からこの場所を知っていたかのような雰囲気づくりを心がけていらっしゃるということを聞いて、最初に感じた居心地の良さに結びつきました。

人気のお店ではありますが、今の時期からあじさいが咲く頃までは比較的落ち着いているようです。併設のカフェも同じく居心地が良く、あっという間に時間が経ってしまいますよ。平日の夜に行かれることをおすすめします!

こちらでいただけます

鎌倉 松原庵
神奈川県鎌倉市由比ガ浜 4-10-3
TEL 0467-61-3838

<アクセス>
「江ノ電由比ヶ浜駅」から徒歩3分
<営業時間>
11:00 ~ 22:00(21:00 LO)
<定休日>
なし


文:山口綾子
写真:鎌倉 松原庵 / 山口綾子