誕生日や記念日、進学や就職のお祝いと、日常生活で贈り物をする機会は意外と多いもの。
そんな時、贈り物にちょっとした気持ちを添えられる素敵なものを見つけました。
「紙刺繍」です。
「紙刺繍」はその名のとおり、紙に刺繍をする手芸。
最近では、本屋さんにも紙刺繍の本が並ぶほど、手芸女子の間では注目されています。
そこで『5つのステッチでできる annasの刺繍工房』(日本文芸社)や『作って贈る SNOOPYの紙刺繍』(KADOKAWA)など、紙刺繍の本をたくさん出されている人気刺繍作家annasの川畑杏奈さんにお話をお聞きしながら、紙刺繍の体験取材をさせてもらいました。
手芸初心者にもやさしい紙刺繍
東京・西荻窪にある川畑さんのご自宅兼アトリエへ。
川畑さんは、かれこれ10年以上刺繍作家として活動しているんだそう。
現在は、刺繍の本を出したり、ワークショップを開いたりしながら、作品づくりを続けているといいます。
川畑さんと紙刺繍との出会いは、遡ること幼稚園時代。幼稚園で画用紙に毛糸で刺繍をした時でした。
その後、短大を卒業して母園で幼稚園の先生となり、紙刺繍と再会したといいます。
「子どもの時の記憶はほとんどないんですけど、刺繍作家になってネットを見ていたら海外の方でやっている人が多かったので、それを見て懐かしいなと思って。もうちょっと凝った感じにすると大人がやっても楽しいかもと、紙ものでいろいろ展開させたらいいなと思ったんです」
ヨーロッパでは50年ほど前にメッセージカードなどに刺繍して贈るのが流行ったんだとか。これが紙刺繍のルーツとも言われています。
川畑さんの幼稚園での紙刺繍は先の丸い毛糸針を使ってなみ縫いを知る程度のもので、描いた絵の輪郭を縫っていくようなシンプルなものだったそう。
とはいえ、幼稚園生でもできるのなら不器用な私でもできるかもしれないと勇気付けられました。
紙刺繍と布刺繍の違いって?
紙刺繍は図案に合わせて紙に穴を開け、糸を通して作っていく刺繍です。
材料の違いはもちろん、先に通し穴を開けておくところが布刺繍とは違うようですが、他にも大きな違いはあるのでしょうか。
「サテンステッチという面を埋める刺繍は布はできるんですけど、紙だと抜け落ちちゃうのでできないんですよね。だから、線と点の2つだけで基本的には作っていくんです。その2つで図案を考えていかなくてはいけないので、図案を作るのはけっこう難しいです。でもそういう制約がある分、面白い」と川畑さん。
図案から作るのはどうやら絵の上手さやデザインセンスにも左右されそうです。
いざ、チクチク体験へ!
初心者に図案づくりからはハードルが高いので、今回は川畑さんの著書『5つのステッチでできる annasの刺繍工房』の図案をベースに、不器用でも挫折せずにできる初心者向けの図案を作成していただきました。
さまざまなシーンで活躍してくれそうな「FOR YOU」のメッセージに、お花のフレームが春らしい図案です。
必要な道具と材料はこれだけ!すぐにでも始められます
紙刺繍に必要な道具は、刺繍針(縫い針でも可)、鉛筆、トレーサー/鉄筆(ボールペンでも可)、目打ち(画鋲でも可)、カッティングマット、はさみ。
材料は、色画用紙と25番刺繍糸。図案に合わせて画用紙の色と刺繍糸の色を考えます。
今回、画用紙は淡い黄色、刺繍糸は白、ピンク、ラベンダー、黄色の4色をチョイス。
あまり色数は増やさずに、3~4色程度でまとめておくのが収まりがいいんだそう。
「色画用紙の他にも市販のポストカードや封筒、ノートの表紙に刺繍するのもかわいいですよ。紙は画用紙程度の厚みがあるものがおすすめです」(川畑さん)
基本のステップはわずか3つ!
①図案を紙にトレースする
図案をコピーした紙の裏を鉛筆で黒く塗りつぶしていきます。
鉛筆はHBやBなど柔らかい芯のものがおすすめとのこと。
塗りつぶし終えたら表に返し、刺繍をする紙に図案を重ねて、上からトレーサーでなぞります。
この時、マスキングテープで紙をとめておくとズレずに作業しやすいです。
トレーサーがない場合はインクの出なくなったボールペンでも代用できます。
②紙に穴を開ける
そのままマスキングテープははがさずに、カッティングマットの上で図案にある点に沿って目打ちで穴を開けていきます。
カッティングマットは不要な雑誌、目打ちは画鋲や針でも代用可能です。
③紙に刺していく
刺繍には色々なステッチがありますが、今回は基本となるバック・ステッチ、いわゆる返し縫いをメインに、点を表現するフレンチノット、中央の黄色いお花の花びら部分に使うレゼーデージー・ステッチを習いました。
各ステッチの詳しいやり方については、川畑さんのYouTubeチャンネルの動画をチェックしてみてください。
【annas川畑杏奈YouTubeチャンネル】フレンチノットステッチ、レゼーデージーステッチの刺繍の仕方
「針を進めていく際は、あちこちいかずに近くをちょっとずつ埋めていくと裏側がぐちゃぐちゃにならないですよ」という川畑さんの言葉を胸に、ひと針ひと針ルートを考えながら針を進めていきます。
慣れてくると既に穴が開いていて刺す場所が決まっているので、無心で針を進めていけるようになりました。
淡々と針を進めていくごとに、少しずつ絵が浮かび上がってくるのはとても気持ちよく、達成感があります。
ふだん手芸や針仕事を一切やらない私でも、1時間ほどで無事に完成!
画用紙部分を図案のフレームに沿って切り取って、メッセージタグとして使おうと思います。
「布刺繍は刺す人によって雰囲気や刺す場所が変わってくるので仕上がりにも個性が出てくるのですが、紙刺繍は初めての人でも見本の図案とほぼ同じにできます。紙刺繍をきっかけに刺繍の楽しさを知ってもらえたらうれしいです」と川畑さん。
贈り物のプラスαにピッタリの紙刺繍。カードやメッセージタグのほか、ポチ袋やご祝儀袋にといろんな紙ものに取り入れられます。
ひと針ひと針に気持ちを込めて、ぜひ皆さんも一度やってみてください。
<取材協力>
annas 川畑杏奈
http://twutea.web.fc2.com/
※こちらは、2019年1月31日の記事を再編集して公開しました。