【奈良のお土産】森奈良漬店の壺入り「きざみ奈良漬」

こんにちは、さんち編集部の尾島可奈子です。
わたしたちが全国各地で出会った “ちょっといいもの” をご紹介する “さんちのお土産”。第4回目は清酒発祥の地、奈良のお土産です。

清酒発祥の地と言われる奈良で、酒粕に瓜を漬け込んだお漬物が商品として売られるようになったのは江戸末期のことだそうです。その名も「奈良漬」。奈良のお土産の定番ですね。奈良漬を買えるお店は何軒もありますが、東大寺南大門前にお店を構える森奈良漬店は1869年(明治2年)創業の奈良漬の老舗です。お店の前は東大寺への行き帰りの人と鹿せんべいを追い求める鹿で絶えず賑わいます。

悠然と鹿が通る東大寺南大門前の店構え。
悠然と鹿が通る東大寺南大門前の店構え。

森奈良漬店の奈良漬は、直接もしくは契約栽培の野菜・果物のみを使用。酒粕と天然塩だけという潔い味付けは、お酒の味がしっかりと効いて地元ファンも多いのです。中でもおすすめしたいのは酒粕を洗いおとさずにそのまま食べられる「きざみ奈良漬」。コンパクトな紙袋入りもありますが、どっしりとした丹波立杭焼(たんばたちくいやき)の壺入りは目上の方へのお土産やちょっとしたご挨拶にも喜ばれそうです。お酒好きの方なら奈良の地酒と一緒に晩酌セットで、、なんて楽しい組み合わせかもしれません。定番を押さえながらちょっと話のタネにもなる奈良のお土産に、おすすめです。

パッケージに描かれた壺の姿も愛らしい。230g入り1080円(税込)
パッケージに描かれた壺の姿も愛らしい。230g入り1080円(税込)

ここで買いました。

森奈良漬店
奈良県奈良市春日野町23
0742-26-2063
https://www.naraduke.co.jp/

文:尾島可奈子
写真:木村正史

初笑いしに寄席に行こう

こんにちは。さんち編集部の尾島可奈子です。

えェ〜皆さん、寄席でも行っていっぺん笑っときゃあ一年笑って暮らせるだろうと、縁起を担いで新年早々、こういう場にお見えになるんだろうと思うんですが、そう甘くはないんですね。だいたいこの‥‥

早速ふふふ、と客席から笑いが起こる。

正月三ヶ日もすぎた午後の寄席は、2階席までほぼ満員。おじいちゃんも和服のご婦人も買い物帰りのカップルも、めいめいお茶やお弁当を頬張りながらにこにこ噺を聞いている。こじんまりした演芸場では、お客さんの笑い声は合唱のように響いて一体になる。

あぁ、都内にこんなところがあったんだなぁ。噺のまくらであっさり噺家さんに見破られた通り、私も縁起を担いでどれ落語で初笑い、とふらふら来てみた口。

そんなわけで今日は初笑いのお福分けに、最近巷でも何かと話題の落語のお話。

と言っても笑いは取れませんからそれはぜひ演芸場に足を運んでいただくとして、さて、七草粥も済ませてそろそろ地に足をつけなくっちゃという今日この頃、落語にまつわる暮らしの道具のお話でも。

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熊さん八っつあんの登場する落語は江戸時代のイメージが強いですが、はじまりは室町時代末期までさかのぼります。戦国大名のそばに仕えて話を聞いたり世の中の様々な出来事を話して聞かせた「御伽衆(おとぎしゅう)」がその起源。

時の権力者お抱えの話のプロだったのですね。それがお金をとって人に面白い話を聞かせるスタイルになったのが江戸時代。馴染みのある寄席のはじまりです。

町人文化の栄えた江戸時代ですから、話の主役は大家さんにご隠居、若旦那。八百屋、魚屋、夜鷹そば。おなじみ熊さん八っつぁんも大工さんです。

「工芸と探訪」を掲げる「さんち」編集部としては、職人や暮らしの道具にまつわる噺などないかと見てみると、出てくる、出てくる。

ちょうどお正月が舞台の「かつぎや」は御幣かつぎ(縁起かつぎ好き)の呉服屋・五兵衛さんが主人公。

「よそう、また夢になるといけねぇ」のオチで有名な「芝浜」は大金の入った革財布をめぐるお話ですし、「紺屋高尾(こうやたかお)」は染物屋(紺屋)の職人・久蔵が花魁・高尾に一目惚れして叶わぬ恋に病に臥すところから始まります。

「普段の袴」はキセルが話のカギを握る、上野の道具屋を舞台にしたお話。「茶金」は主人公のひとり、茶屋金兵衛の通り名(茶金)がそのまま演目名ですが、その茶金の職業はたいそうな目利きという京都のお茶道具屋さんです。

数えればキリがないですが、落語にもよく登場し、江戸の頃から今も変わらず馴染み深い暮らしの道具といえばやはり風呂敷がその代表格。

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風呂場で自分の衣服を他の人と区別するために包んだことが名前の由来とされていて、銭湯の発達と共に庶民に広まりました。

火事の多かった江戸の町では布団の下に大風呂敷を敷いて眠り、火事を知らせる半鐘が鳴ると布団をくるんで家を飛び出した、という話まであります。行商はみな売り物を大風呂敷に包んで売り歩き、家庭では小さな風呂敷を買い物袋として活用したそうです。

落語の世界での風呂敷は、泥棒の商売道具として登場することもしばしば。そう聞いて思い浮かぶのは、やはり唐草模様の風呂敷でしょうか。

少々不名誉な知られ方をしている唐草模様ですが、実は四方八方に切れ目なく伸びる唐草は長寿や子孫繁栄の象徴。元々はお祝い事にも用いられる、縁起の良い柄です。

これぞ風呂敷、な唐草模様。
これぞ風呂敷、な唐草模様。

日本でも古くから文様は存在していましたが、ちょうど江戸に入って綿の布に人や花、生き物の模様を細かく染めた更紗(さらさ)が舶来し流行ったことから、庶民の使う風呂敷にも好んで唐草模様が描かれるようになりました。

ちなみにその名も「風呂敷」という噺がひとつあるのですが、こちらでは風呂敷の便利さが見直されている昨今でもちょっと思いつかないような風呂敷の使い方をしているので、寄席で運良く出会った方は、ぜひその愉快な使い方をお楽しみください。

ーと、あんまりここで噺の勉強ばかりしても、普段の寄席で事前にわかるのは出演者の名前だけ。何が聞けるかは当日のお楽しみです。

噺家さんはだいたい2・3の候補を腹に入れておいて、他の出演者と演目がかぶらないようにしながら、その場の客席の様子なんかを見て「今日はこれだ」と決めるそうです。

風呂敷包んで持って行ったら、もしかしたら話してくれるかも、しれませんね。

関連商品
中川政七商店
色あわせ風呂敷 日の出

<参考>
瀧口雅仁 (2016)『古典・新作 落語事典』丸善出版
公益社団法人落語芸術協会ホームページ
(東京・横浜の演芸場一覧も載っているので寄席に行く時に便利です)

文:尾島可奈子

祈りの色、松の緑

あけましておめでとうございます。さんち編集部の尾島可奈子です。
「さんち 〜工芸と探訪〜」は本年も1日1日、日本中の工芸産地の魅力を、全国をかけ廻ってお届けします。
愛着のある道具と暮らす毎日と、発見に満ちた産地旅へのおともに。2017年も「さんち」をどうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年ひとつめの記事は、新しい年が美しく色どられた毎日になるよう願いを込めて。

きっぱりとした晒の白や漆塗りの深い赤のように、日用の道具の中には、その素材、製法だからこそ表せる美しい色があります。その色はどうやって生み出されるのか?なぜその色なのか?色から見えてくる物語を読み解きます。2017年はじめの色は、「松の緑」です。

祈りの色、松の緑

緑は英語でgreen。もともとgrowなど「育つ」という意味の言葉が語源です。すくすく育つ草の色、というわけですね。日本語でも、元は新芽を指す言葉だったものが、そのまま色名になったそうです。お正月を代表する「緑」といえば、やはり松。今日は古くから日本人の暮らしの中に活かされてきた「松」をめぐる色の冒険に出かけましょう。

松は木材としてはもちろん、樹皮、樹脂、葉や種まで使うところの多い樹木として洋の東西を問わず、古代から人の生活に活かされてきました。古代ローマでは建築物の屋根板に松の樹皮が使われていたと言いますし、日本では縄文時代の遺跡から、加工された松の棒が複数見つかっています。冬でも枯れずに緑を保ち、寿命も長いことから古来中国では特別な木として尊ばれ、日本では神霊が宿る聖なる木と信じられてきました。その風習が今に伝わるのが、お正月の門松です。

門松は、新年を迎えた家に幸いをもたらす歳神様(としがみさま)をお迎えする依代(よりしろ)。松を門前に立てる例が多いことからこの名前がついたそうです。実際には土地によって材料や形状、置き場所も様々ですが、拝み松、飾り松という呼び名もあるように、やはり主役は松。由来は平安時代、貴族がお正月はじめの子(ね)の日に若菜を摘み小松を引き抜いて遊ぶ「子日(ねのひ)の遊び」という年中行事があり、これが後にお正月に松を飾る「門松」に発展したと言われています。松にとっては少しかわいそうに思いますが、貴族たちはこの日に小松を引き抜いたりそれを調理して食べることで、松のような長寿を願ったのでした。

暮らしの中で便利に使うだけでなく、その命の長さや常緑であることを知り、縁起を担いで飾る「松の緑」。どんなことでも何かをはじめることは勇気が要りますが、新しい年を飾る門松には、「松の緑」の力を少し借りて、これからの毎日を元気よくはじめて行こうとする、はるか昔からの暮らしの願いが詰まっているように感じます。新しい年が、明るい色に満ちた、すこやかな一年になりますように。

文・写真:尾島可奈子