【わたしの好きなもの】強撚綿スムース生地の服

ストレッチがきいてて透けないのに綿素材・・・
まさに万能カットソー!

身軽にカットソーを1枚で着たいけど、Tシャツだとカジュアルすぎるし、化繊が入っているものは苦手。 そんな思いを解決してくれる、私の一番のお気に入りが「強撚綿スムース生地」シリーズ。
もう4年目になる人気のシリーズですが、私自身も定番着として4年目もお世話になります。 今年は嬉しいことに春から着回し出来る七分丈のプルオーバーが出来、春夏秋と3シーズンお世話になっているシリーズです!



綿を強く撚った強撚糸を高密度に編み立てたスムース生地。毛羽立ちにくく、綿素材なのにさらっとした肌触り。
ジャケットのインナーにも着れる、キレイ目のすっきりとしたシルエットですが、伸縮性があるので窮屈な感じが全くしません。もう一度いいますが、素材が綿100%なんです!

白いTシャツは、インナーの透け感を気にしたりしますが、この素材なら白でも透け感を気にせず着ています。



首周りも広すぎないので、きちんと感があります。これ1枚あればデニムにあわせても大人っぽい雰囲気になるんです。



社内でも着用率が多く、時々同じ日に何人かでお揃いになることも。
私は、色違いで何枚も持っているので、会社でも休日でもほんとにお世話になっています。
洗濯も気軽に、洗濯ネットに入れて普通に洗います。干す時に、形を整えておけば、私はほとんどシワも気になりません。少し気になっても、さっとアイロンをかければOK。
プルオーバーは、4年目ですが特に型崩れもなく今年も活躍しそうです。
今年も来年も…その先も、なくなると困るずっと作って欲しいシリーズです。

編集担当 鳥海


<掲載商品>
強撚綿スムースのノースリーブ

煎茶のプロがすすめる淹れ方・急須・茶葉選び。「美味しい日本茶のコツは3杯淹れること」

カネ十農園 表参道 松本貴志さんに教わる煎茶道入門

日本人にとって身近な飲み物である「日本茶」。

特に近年ではペットボトル入りの緑茶飲料が普及し、いつでもどこでも手軽に日本茶を楽しめるようになりました。

その一方で、急須を使って茶葉からお茶を淹れる機会が減ってきているようにも感じます。

急須で淹れる日本茶

農林水産省が平成28年に発表した統計によれば、1世帯当たりのリーフ茶(茶葉で淹れる緑茶)の消費量はこの20年ずっと減少傾向にあるようです。

筆者もそうですが、いざ自宅で淹れてみようと思っても、必要な道具や茶葉の選び方など分からないことが多く、ハードルの高さを感じている人が多いのかもしれません。

そんなハードルを下げ、もっと気軽に日本茶を楽しむ方法について、専門家に聞きました。

静岡の茶農園が運営。日本茶専ティーサロンの“ティーバーテンダー”に聞く

カネ十農園 表参道
カネ十農園 表参道

表参道に昨年オープンした、日本茶の体験型ティーサロン「カネ十農園 表参道」。

同店を運営するのが、日本を代表するお茶の産地 静岡で、100年以上にわたって茶農園を営んできた「カネ十農園」(静岡県牧之原市)。

「茶葉はもっとおいしくなれるはず」という想いで、地元牧之原だけでなく国内外の製茶技術を学び、茶葉の可能性を追求し続けている農園です。

静岡のカネ十農園が表参道店をオープン

今回話を聞いたのは、「カネ十農園 表参道」で、“ティーバーテンダー”として日本茶を提供している松本貴志さん。

茶葉の選び方、淹れ方のコツなど、色々と伺いました。

カネ十農園 表参道
店内には、テーブルに畳をあしらった10席ほどのカウンター席が用意されています。左手前が松本さん。奥にいるのは同店スタッフの加藤大地さん

オープンキッチンのカウンターで接客する松本さんは、もともと都内でバーテンダーとして18年間も勤めていたという異色の経歴の持ち主。

業務の幅を広げるため、ソムリエの資格を取得しようと畑の勉強を始めて土の奥深さに気づき、その後、縁のあったカネ十農園から誘われてお茶の世界にやってきました。

カネ十農園 表参道の松本貴志さん
カネ十農園の松本貴志さん

「弊社の本業は農家。土づくりから始め、木を育て、製茶業を続けています」

とのことで、松本さんも普段は表参道の店舗で業務を行い、一番茶の収穫のときには静岡に戻るのだそうです。

静岡のカネ十農園が表参道店をオープン
カネ十ファーム 静岡 牧之原の茶畑

美味しい日本茶の淹れ方とは

さて本題ですが、日本茶を美味しく淹れるには何が必要なのでしょう。

「道具に関して言うと、目が細かい急須が最適です。目が粗いと茶葉が通り抜けて湯呑みに出てしまいます。

ここでは玉川堂(ぎょくせんどう)さんの急須を使用していますが、淹れやすくて個人的にオススメです」

カネ十農園 表参道で使用している玉川堂の急須
カネ十農園 表参道で使用している玉川堂の急須
カネ十農園 表参道で使用している玉川堂の急須
網目部分が細かいものがオススメだとか

やはり、何は無くともまずは急須。

と言っても難しく考える必要はなく、茶葉をせき止める部分の目が細かいものを選んでおけばよいそう。

お店で浸かっている急須
こちらもお店で使っている急須

「静岡茶の深蒸し茶は細かいし、鹿児島の普通煎茶は形が少し大きめ、京都の番茶は葉が広いなど、産地やお茶の種類によって茶葉のサイズや形も変わってきます。

ひとまずは目の細かい急須を選んでおけばどんな茶葉にも対応できると思います」

静岡のカネ十農園が表参道店をオープン
牧之原 カネ十農園で収穫された茶葉

ちなみに、紅茶用のティーポットの様に茶こしの網が本体と分かれているものは、十分に茶葉が開ききらないためあまりオススメできないとのことでした。

温度・蒸らし時間・水で味が変わる

「1-2人分なら茶葉4グラムに対して100-150ミリリットルのお湯。40秒ほど蒸らしてから出し切ってください。3-4人分なら、茶葉は5g、お湯は200-250ミリリットルが理想です」

と、茶葉の分量についても教えてもらいましたが、これはあくまで目安。

煎茶なのか、ほうじ茶なのか、茶葉の種類によっても分量や蒸らし時間は異なってきます。

茶葉の形やサイズは、産地や加工方法によって様々
茶葉の形やサイズは、産地や加工方法によって様々

「ほうじ茶や棒茶は沸騰したお湯を使っても大丈夫ですが、煎茶は80~85度くらいがベスト。でないと、渋みが出すぎてしまいます。

水は、軟水で淹れた方が味も色もきちんと出て美味しいとされています。日本では、普通に水道水を使っておけば問題ないでしょう。

カルキ臭が気になる場合は、沸騰させてから温度を下げる方法もあります」

分量のほか、温度・蒸らし時間・水で美味しさが変わってくるということで、その辺りを調整できる道具が揃っていると良さそうです。

目安はあるけれど、自由に淹れて楽しむべし

ストップウォッチ機能がついたスケールがあると便利
ストップウォッチ機能がついたスケールがあると便利

「分量については、計りを用意してグラム数を見るのが正確ですが、ティースプーンひとすくいが何グラム、というのを感覚で覚えておくこともできます。

あとは、温度設定ができるケトルがあると非常に楽ですね。

もしくは、沸騰したお湯を一度湯冷まし用の器に移すとそれだけで80〜90度に温度が下がります。そのあたりの感覚を掴んでおけば、いちいち温度を計らなくても調整が可能です。

どこまでこだわるかにもよりますが、無理のない範囲で、手持ちの道具を活用して淹れてもらえればよいと思います」

一度湯冷ましを経由することで温度を下げることができる
一度湯冷ましを経由することで温度を下げることができる

時間はスマートフォンで計測できるし、水は水道水でよくて、ケトルやポットも特別なものは必要ない。

ふむ。かなりハードルが下がった気がします。

「分量や時間、お湯の温度など、もちろん目安は存在します。

ただ、そこから先は個人の好み。色々試しながら自由に、気軽に淹れていただきたいですね」

3回楽しめる煎茶道

ちなみに、煎茶の場合、3回お湯を淹れるのが正しい飲み方とされているそう。

カネ十農園の煎茶

「煎茶道において、一煎めは茶葉が開いていない状態。つまり前哨戦です。

二煎めが本番。そして三煎めで味も落ち着きます」

一煎ごとにお湯を出し切るのがポイント
一煎ごとにお湯を出し切るのがポイント

1杯分の茶葉で3度も楽しめるのは何やらお得な気分。

ポイントは、一煎ごとにきちんと湯呑みにお茶を出し切ることだそう。茶葉がお湯に浸かったまま時間が経つとどんどん雑味が出てきて渋くなるだけなのだとか。

茶葉の選び方

茶葉の選び方については好みもあるため、ともかく色々と試してみるのがスタートになるとのこと。

その中で、選びやすさのポイントとして挙げられるのが「シングルオリジン」か否か。

品質にブレが少ないシングルオリジンの茶葉であれば、好みの基準を定めやすい
カネ十農園 表参道で販売している茶葉

コーヒー豆でよく聞くフレーズですが、ここでは「単一の農園で作られている茶葉」であるという意味。

「日本茶の多くは、色々なところで作られた茶葉をブレンドした状態で売られています。

そのため、同じ種類の茶葉を買ったはずなのに、その時々で味にばらつきが出やすく、自分の好みを定めにくい。

弊社は単一の農園で製造から加工まで一貫しておこなっているので、安定した品質で茶葉を提供することが可能です」

玄米茶
玄米茶

まずは、この農園のこの茶葉が好き!という風に自分の好み定めていき、そこから派生して同じ系統のお茶を色々試すことで、好みを広げていくのが近道のようです。

こだわり始めると色々と奥が深そうで、ワクワクしてきます。

クリームチーズとお茶が合う!? 日本茶文化をつなぐために必要なこと

人気商品の「カネ十 アールグレイ」
人気商品の「カネ十 アールグレイ」。英国式の製法で作られています
人気が高い「カネ十 アールグレイ」

「ちなみに、このお店で人気の茶葉は、『柚子煎茶』『カネ十アールグレイ』といった商品。若い方もよく買っていかれます。

名前から味が想像できないと思いますが、この珍しさに惹かれて購入して、気が付いたらリピーターになっているケースが多いです。

商品名やパッケージデザインも含め、日本茶の普及にはこうしたブランディングが重要だと痛感しています」

パッケージデザインにもこだわった
パッケージデザインにもこだわった

こうした気づきは、ティーサロンという形態でお茶を提供することで得られたもの。

「今後は、畑の肥料を試行錯誤して、茶葉の味にどんな違いが出るかを研究していきたいと思っています。

そして、店舗ではユニークな淹れ方、料理との合わせ方など、面白い提案をしていけたら良いですね。

最近だと、クリームチーズとお茶の相性がとても良いことに気づいて驚きました。この組み合わせで新しいドリンクメニューも開発中です」

カネ十農園の松本貴志さん
店舗を通じて色々な提案をしていきたいと意欲的に話す松本さん

冒頭で触れたように、ペットボトル飲料を除けば縮小気味の日本茶市場。

カネ十農園では、100年以上の経験を活かした茶葉作りをベースに、表参道である種実験的な提案も繰り返しながら、日本茶文化が再度普及することを目指しています。

茶葉は開封しなければ1年は持つそう。1杯当たりのコストはペットボトルよりも安く、実はお得です。

まずは難しく考えず、直感で茶葉を選ぶところから始めてみてはいかがでしょうか。

<取材協力>
カネ十農園 表参道
http://kaneju-farm.co.jp/

文・写真:近藤謙太郎
*こちらは、2019年2月1日の記事を再編集して公開しました。温かいお茶にホッとする季節、美味しい淹れ方のコツを知っておくと、休憩の時間も一層楽しめそうです。

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武将の鎧を再現し続ける「江戸甲冑師」の作業場を覗いてみた

もうすぐ5月5日の子どもの日ですね。日本では端午の節句として、男子の健やかな成長を祈るためさまざまな行事を行う風習があります。また、端午の節句はこの時期に盛りを迎える菖蒲から、菖蒲の節句とも呼ばれています。

「菖蒲(しょうぶ)」は武を重んじる「尚武(しょうぶ)」と音が同じであることから、端午の節句は武家の間で盛んに祝われるようになりました。次第に庶民にも広まり、華やかな人形や兜を飾るようになったのは、武家社会から生まれた風習だからです。

自分の身を護る大切な道具だからこそ、事故や病気から大切な子どもを守ってくれるように、健やかに育ってほしいという願いも込められているのです。

加藤さんが製作した兜たち
加藤さんが製作した兜たち

今回は、端午の節句に飾る兜(かぶと)や甲冑(かっちゅう)を製作する江戸甲冑師・加藤鞆美(ともみ)さんの作業場に伺い、お話を聞いてきました。加藤さんは平安時代から江戸時代までの兜を製作。他に製作できる職人が見当たらないほどの完成度だといいます。

兜は子どもたちがすくすくと育ってほしいという想いが込められています
兜は子どもたちがすくすくと育ってほしいという想いが込められています

全国行脚をしながら甲冑製作の研究を重ねる

加藤鞆美さんは1934年、東京都北区に生まれ、父である初代・加藤一冑のもとで、甲冑製作の修行を積みました。一冑が全国行脚して集めた甲冑の資料を裏付けるために、自ら博物館、展示会、神社、仏閣に足を運んで研究を重ねています。

「京都の博物館に甲冑展があると、2日は通いましたね。甲冑を見ながら絵を描くんです。写真は絶対禁止。草摺(くさずり:甲冑の胴の裾に垂れる部分)は何枚あるのかなどを確認するわけです。すると、警備員に注意される。甲冑師という存在を知らないから、身分を明かしてもわかってもらえなくて」と加藤さんは振り返ります。

一度見ても納得いかなかったら、もう一度見に行くことも。かつては手に取って触れられたそうですが、自治体が買い取ったり、国宝などに認定されたりする物が多く、ガラス越しでないと、実物を確認できないことが多いのだとか。

その苦労も乗り越えながら、加藤さんは江戸甲冑を作り続けています。

江戸甲冑師の加藤鞆美さん
江戸甲冑師の加藤鞆美さん

江戸甲冑と京甲冑の違いとは?

鎧(よろい)や兜は製法の違いによっていくつかの種類に分かれますが、代表的なのは「江戸甲冑」と「京甲冑」です。

江戸甲冑は、武家社会で生まれて発展したものなので、重厚かつ力強い雰囲気が特徴です。加藤さんのような江戸甲冑師は歴史を紐解きながら、使う皮一枚でも当時と同じものを用い、忠実に再現。現物をミニチュア化しているので、実際に着られるような構造になっています。

これに対を成すのが「京甲冑」。京都の貴族社会の中でを出自に持つため、飾ることを目的にしており、金属を多用した華やかな雰囲気が特徴です。西陣織や組紐、箔押しなど京都の伝統工芸が随所に散りばめられています。

雅の京に武骨の江戸。土地柄が作品にも現れているのですね。

精巧に作られている江戸甲冑の胴丸
精巧に作られている江戸甲冑の胴丸

時代によって異なる甲冑の内容

土地だけでなく、時代によって甲冑の内容も変化しました。

「鎧で一番に派手なのは、鎌倉時代の末から室町時代中期くらいのものですね。着るためではなく、奉納するために作られたからで、紐も柄も派手で艶やかなものが多いのです」

戦いの歴史は、武器の歴史でもあります。弓矢から刀、槍、そして鉄砲の時代がやってきます。武器が強くなるにつれ、身を守る鎧も強固になっていきました。しかし、徳川の時代になると戦いがなくなります。それでも、男子が生まれると兜や鎧を必ず作りました。この時期から「男の子に健やかに育ってほしい」という願いが込められるようになりました。

たとえば、徳川将軍15代にわたる兜にはほとんど変化が見られません。それでも、時代の流行があるのでしょうか。紐の色が違ったり、ときには熊の毛をあしらったものもあったそうです。

「徳川の時代は紐の色がどれも地味なんですね。どの時期も倹約をしていたからなのでしょうか。ちょっとわかりませんが」と加藤さんはニコリと笑います。

兜一つとってもさまざまな細工がなされています
兜一つとってもさまざまな細工がなされています

甲冑は武将によって性格が出る?

甲冑は時代によっても変化しますが武将によっても違いが表れます。

「兜の頭のてっぺんには“八幡座”という穴があるのですが、織田信長の場合は織田木瓜という家紋が5つも散っていました。信長は全体的におしゃれですね」と加藤さん。

豊臣秀吉はどうなんでしょうか。

「秀吉は派手ですね。でも七騎の鎧といって影武者用にもほとんど同じものを作らせているんですよ。それなのに胸に描いた竜の向きが違うとか、片側の花だけ銀の蒔絵がしてあるとか、ほんのちょっとだけ違う」

徳川家康の場合はどうでしょう?

「派手派手しい鎧はないですね。何両もの金を持ち歩いていたので、兜は重いものにしていませんでしたね」と加藤さん。実用本位の家康らしい一面が見えます。

戦国武将にとって、兜や鎧は身を守る武具であると同時に、自分自身の表現でもありました。生と死が相まみえる戦場で、いかに運を引き寄せることができるか。兜や甲冑は武将の矜持や信仰、意志が込められているのです。

ミニチュアには嘘も必要?

兜や甲冑を作るには、金具や漆などさまざまな技術を使わなければなりません。甲冑作りとはいわば総合芸術なのです。

ミニチュアにするとなると、技術的にはもっと難しくなります。5日かかって、胴丸の紐だけを通し終えることもあるそうです。

「縮尺通りに作ろうとするとバランスが悪くなってしまうんですね。どこかで嘘をつかないと。兜や鎧ではないけれど、例えば、奈良の大仏の頭にあるブツブツ……あれは“螺髪”という丸まった髪の毛で、てっぺんと前の大きさが違う。頭頂部を大きくしないと、遠近法の関係で同じように見えなくなるわけです」と加藤さん。

嘘をつくことでバランスが保たれる。細かい工夫が凝らされています。

小さな穴に組紐を通していきます
小さな穴に組紐を通していきます

作業場には昔ながらの道具たち

作業場にもお邪魔致しました。さまざまな道具が並んでいますが、いずれも年季の入った優れものばかりです。

作業場のどこに何の道具があるか、全て把握しています
作業場のどこに何の道具があるか、全て把握しています

「今のハサミは切れないんですよ。昔は鍛冶屋が手で作ってましたが、今のものは、機械造りで焼きが変に硬いんです。硬すぎちゃって、鋲の足を切ったりすると欠けちゃうんですよね」と加藤さんは首をかしげます。

使い込まれたハサミたち
使い込まれたハサミたち

「これはね17歳の時に買ったカナヅチなんだけど、中は軟鉄で口の部分に5㎜くらい鋼が貼ってあるんですね。音がまるで違うの。今のものは全部が鋼鉄で、硬すぎちゃって、叩くとハネちゃうの」

使い込まれたカナヅチたち

昔ながらの道具がなくなっていると同時に、その道具を使う職人も少なくなっているそうです。

火起こしのような道具で穴を開けます。両方向からの回転が加わり、力加減が調節できます
火起こしのような道具で穴を開けます。両方向からの回転が加わり、力加減が調節できます

背中を見ながら仕事を覚える

加藤さんは父の背中を見ながら仕事を覚えました。

「父親が使っていた、少しキレづらくなったヤスリとかが回ってくるんですよ。『それで同じように作れ』と言われるんです。それで父親がいなくなったときに、どんな道具を使っているのかなと見てみると、はるかにキレるんですよ。それから負けるもんかと。父親が作らなかったものを作るようになりました」

負けず嫌いで勉強家な職人は、道具から細部までこだわり抜き、今では彼にしか作れない江戸甲冑を仕上げています。今なお研究を続けているその姿に頭が下がりました。

笑顔でお話をしてくださった加藤さん
笑顔でお話をしてくださった加藤さん

<取材協力>
加藤鞆美
東京都文京区向丘2-26-9
03-3823-4354

文:梶原誠司
写真:mitsugu uehara

【わたしの好きなもの】 中川政七商店の楽ちんトップス

家だけど部屋着はNG!

思うように外に出られず、お家でテレワークをしている方も増えてきました。職場ではデスクがあり、パソコンがあり、近くには先輩や上司もいて、やっぱり家とは環境が違って「お仕事」スイッチが入ります。ふだん「くつろぎの場」だった家でお仕事をするとき、みなさんはどんな服装をしていますか?

ついつい楽な部屋着を選んでしまいたいところですが、お仕事中はリモート会議や打ち合わせなど、パソコンのカメラ越しに相手に自分の服装が見えてしまいます。家に居ながらちょっと窮屈なシャツやブラウスを着ているのも居心地が悪い。でも、部屋着だとだらしなく見えて生活感たっぷり。
そんなときにさっと着られて、だらしなくならない、でも着ていて楽ちんなトップスがあると便利です。

肌で着るコットンカシミヤのニットTシャツ

「さっと着られて、だらしなくならない」ポイントは、バサッとかぶって着られるプルオーバーを選ぶこと。ネックラインはあまり広くない、少し詰まったデザインのものを選ぶとだらしなく見えません。「着ていて楽ちん」のポイントは、身幅がゆったりしたもの、薄手のニットやカットソーなど伸縮性のあるものを選ぶと着心地もよく、アイロンなどのお手入れもいらないので、気軽にローテーションで使うことができます。

STAMP AND DIARY 前身頃刺繍ビッグTシャツ ヴォイクッカ

でも油断してはいけないのが、宅配や郵便物の受け取りを知らせる不意のインターホン。トップスは出かけても恥ずかしくないものだけど、ボトムスが部屋着、スウェットなんてことも…
急な訪問にも慌てず対応できるボトムスも欠かせません。そんなときにおすすめなのが「もんぺパンツ」です。

シアサッカー生地のもんぺパンツ

ウエストと裾はゴム仕様、腰回りはゆったりとしたデザインで立ち座りが楽なのがうれしいポイント。長時間履いていても窮屈感なく過ごせます。新作の「シアサッカー」「タイプライター」生地を使ったもんぺパンツは、シワが目立たず、きれいめのパンツのような上品な見た目で、急な訪問への対応も問題なし!

もんぺパンツの前ポケットは、印鑑や車の鍵、スマホやハンカチなど。使いたいときにさっと取り出すのにちょうどいい位置と大きさなんです。私は台所仕事をしているときの合間にスマホを見るのですが、そのときにポケットに入れたり、洗濯バサミをいくつかポケットに入れて洗濯物を干すときに使ったりしています。

お家での時間はゆっくりできてくつろげる服装が一番。そこにちょっぴり気の利いた日常着があると、スイッチが切り替えられて生活にリズムができる気がします。
1日の中にもメリハリをつける、私なりのちいさな工夫をご紹介しました。

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もんぺパンツ

白い桜餅が嵐山名物になるまで。桜餅専門店 鶴屋寿の菓子づくり

一年を通して多くの観光客で賑わう、京都 嵐山。

古くから桜の名所としても知られるこの場所で、「桜餅」を看板商品に掲げ、長年にわたって地元の人々や観光客に愛されてきた和菓子店があります。

嵐山最初の桜餅専門店「鶴屋寿」

JR嵯峨嵐山駅から徒歩数分。観光地の喧騒からは少し離れた静かな通りに店を構える「鶴屋寿(つるやことぶき)」。

鶴屋寿
鶴屋寿

鶴屋寿 店内
店内の様子

京都の老舗菓匠「鶴屋吉信」から暖簾分けをされ、嵐山で最初の桜餅専門店として1948年に創業しました。

同店の代表銘菓「嵐山 さ久ら餅」は、桜が咲き誇る春にはもちろん、それ以外の季節にも一年中買い求める人が絶えない、嵐山の名物と言える商品です。

「嵐山 さ久ら餅」
「嵐山 さ久ら餅」

嵐山を、京都を代表する桜餅はどのようにして生まれたのか。「鶴屋寿」二代目店主 野村 紳哉さんにお話を聞きました。

料亭文化から生まれた異色の桜餅

一般的に桜餅は、朝つくってその日のうちに売り切ってしまう“朝生(あさなま)”と呼ばれる和菓子で、簡易的な包装しかされないことが多いのだとか。それを、お茶席で出されるような“上生菓子”としてつくっているのが、こちらの桜餅の特徴のひとつ。

「全国探しても、桜餅に化粧箱を用意してるのはうちだけやと思います」

「鶴屋寿」2代目店主 野村 紳哉さん
「鶴屋寿」二代目店主 野村 紳哉さん

専用の化粧箱と掛け紙を見せ、笑いながらそう話す野村さん。

このこだわりには、当時の「吉兆嵯峨支店」(現:京都?兆 嵐山本店)など、名だたる高級料亭の存在が大きく関係しています。

「嵐山 さ久ら餅」
専用の化粧箱に入れられた「嵐山 さ久ら餅」

自慢の掛け紙は、和紙に木版手刷りで印刷された特別なもの
自慢の掛け紙は、和紙に木版手刷りで印刷された特別なもの。原画を手がけたのは、嵐山にゆかりのある絵師「山本紅雲(こううん)」。鮎を描かせたら天下一品と称されたそう

現社長の先代が、吉兆グループの創業者 湯木貞一氏と懇意にしていたこともあって、吉兆などの料亭から注文を受けるようになった鶴屋寿。

「料亭からお客様がお帰りになるときに、手土産としてお渡ししていたんです。やはり吉兆様などのお客様が相手ですから、変なものはつくれないので、とにかく一所懸命に頑張っていました」

料亭の手土産としての格を損ねないように、専用の化粧箱が用意された桜餅。当然、品質の部分でも様々な工夫が凝らされていきます。

二種類の道明寺が生む究極の舌触り

鶴屋寿の桜餅に使われているのは、道明寺(どうみょうじ)と呼ばれる素材。もち米を一度蒸してから乾燥させて、細かく砕いてつくられます。

道明寺
道明寺

「よく、長命寺(ちょうめいじ)とどうちゃうの?と言われます。長命寺はブランド名で、道明寺は材料名。昔大阪に道明寺というお寺があって、そこで一番最初につくられたいわゆる保存食です。30分ほど舐めていると、柔らかくなって膨らんできます」

豊臣秀吉の時代、戦時には竹筒に入れて持ち歩き、空腹時に水を入れてふやかして食していたとも言われる道明寺。

関西風の桜餅によく使われますが、通常は一種類だけ。鶴屋寿では細かいものと粗いもの、二種類の道明寺を組み合わせて使用。それによって独特の舌触りを生み出し、その食感と餡との絶妙な取り合わせを実現しています。

2種類の道明寺を組み合わせ、絶妙の舌触りを実現している
二種類の道明寺を組み合わせて使用している

道明寺に使用しているもち米は、特定の産地にこだわらず、日本全国からその時々で良いものを選んでいるとのこと。

「国産のものを使うことは徹底していますが、産地はその時々によって変わります。どこのお米を使っても、どんな気候であっても同じ品質が出せるように調整しています。

難しいのは、乾燥した道明寺を戻す際の水の配合で、同じ品質に調整できるようになるには、10年は修行が必要です」

一種類でも難しい水の調整。当然、二種類の道明寺を使うことでより難しくなりますが、そこにこだわってこそ鶴屋寿の桜餅であると、先代の頃からの製法を守り続けています。

一年中楽しめるように。白い桜餅がうまれた理由

化粧箱もさることながら、その見た目でまずほかと違うのが、桜餅といいながら“白い”こと。実は、白い桜餅にするようにアドバイスしたのは、先述した吉兆の湯木氏。

白い桜餅
白い桜餅は、お茶席で懐紙に取った時にも非常に映えるのだとか

その理由はとてもシンプルで、「白くすれば一年中楽しめるのでは」ということだったそう。

「湯木氏のアドバイスを受けて、道明寺本来の色をそのままいかした色合いになりました。やっぱり一年中違和感なく提供できますし、着色料を使ってないので安心してもらえる部分もあります」

手土産にする側としても、季節感が出すぎないのでいつでも利用しやすく、通年で求められる商品になりました。

たっぷりの、2枚の葉っぱで包まれているのも特徴的。葉っぱは伊豆で採れたものを使用
2枚の葉で包まれているのも特徴的。葉は伊豆で採れたものを使用

おすすめの食べ方とは

桜餅を食べる際に気になるのが、桜の葉を取るべきなのか、そのまま食べるべきなのか。

野村さん曰く「作っている側とすれば、なるべくお取りくださいと、申し上げてます」とのこと。

一緒に食べなくても、すでに桜の葉の香りはしっかり染み込んでいるんだそう。

「葉そのものはちょっと苦味があるので、お取りいただいて、道明寺の風味、食感を楽しんでほしいなと思います」

「もちろん、お好きな方は自由に食べてください」と話す野村さん
「もちろん、お好きな方は自由にお召し上がり下さい」と話す野村さん

もちろん、葉自体も食べられるようにはなっているので、「好きな方は一緒に召し上がっていただいて問題はありません」とのことでした。

地元の人に愛されてこそ

桜餅を看板商品に!という先代の想いからスタートした鶴屋寿。

料亭での手土産のニーズが縮小したあとも、そこで定めた水準を下げることなく、菓子づくりを続けてきました。

化粧箱とは別に用意されているサービス箱も雰囲気があって素敵なデザイン
化粧箱とは別に用意されているサービス箱も雰囲気があって素敵なデザイン

鶴屋寿

「やっぱり、心からおいしいと思えるものをつくる。そして地元の方たちに認めていただかないと駄目だと思います。

観光客の方ももちろんですが、地元の方も多くご来店いただいています。地元の、京都・嵐山の名物として自信を持ってお手土産にしていただける商品であり続けたいと、日々精進いたしております」

「鶴屋寿」2代目店主 野村 紳哉さん

同じ地域に住む人たちの声を聞き、その人たちが誇りに思えるような商品をつくる。

季節を問わない白い桜餅は、これからも嵐山の名物として人々とともにあり続けるのだと思います。

3代目と2代目
3代目となる予定の娘さんと

<取材協力>
御菓子司 鶴屋寿
http://www.sakuramochi.jp/index.html

文:白石雄太
写真:直江泰治

【わたしの好きなもの】二重軍手の鍋つかみ

この商品は、大発明だと思います。


これまで、片手にミトンの鍋つかみ、もう片手にふきんを手にして、熱いものをひっくり返したこと数知れず。
忘れられない思い出といえば、夜中に思い立ってシフォンケーキを作ったときのこと。
シフォンケーキは焼き縮みを防ぐため焼き上がり直後に型ごと逆さまに返して空き瓶などの上に置いて冷ますのですが、その際火傷を恐れるあまり手元が狂い、あらぬところに丸ごとケーキを落としてしまったのでした。
衝撃でケーキはボロボロ。覆水盆に返らずならぬ、シフォンケーキ型に戻らず。。。やり場のない悔しさと共に、ひとり一夜を過ごしました。

「この軍手さえあれば、もうあんな失敗するまい。絶対この軍手でシフォンケーキを成功させる!!!」

二重軍手の開発担当者は私の向かいの席。企画の進捗をチラチラ覗き見しながら、数ヶ月前から勝手にそんな熱い思いを胸に秘めていました。
そんなことなのでいよいよケーキを作るとなるとあまりにも楽しみで、決行の2日ほど前から家で軍手をはめては家族に自慢し、魅力を語り、型を持ち上げ、イメトレしていました。

いざ作り始めると、思いがけず出だし早々大活躍。
最初のステップは卵黄と砂糖を湯煎にかけながら混ぜる工程なのですが、この軍手、熱くなるボウルをおさえるのにもちょうどよいのです。
レシピ本の手順には「軍手をはめて…」と書いてありましたが、普段からキッチンに置いてあるこの鍋つかみが軍手がわりになるなんて、なんだか得した気分です。




恐れていたオーブンから取り出す場面でも、両手が守られているのと指先が自由に動くことで、型をしっかり抱えて持ち上げられました。
無事、ケーキは空き瓶の上に着地。型の熱が手にほとんど伝わらないので、これまでよりも落ち着いて運ぶことができました。
おかげで今回のシフォンケーキは私史上最高傑作。




道具ひとつでこんなにも料理が楽しくなるとは、新発見でした。
これまで調理道具に特にこだわりのなかった私ですが、これからはおいしく作ることに加え、自分にとって使いやすい道具を見つけるという楽しみも料理と一緒に味わっていけそうです。
この二重軍手の鍋つかみは、記念すべき、私の相棒 第一号となりました。もっとおいしいシフォンケーキが焼けるよう、相棒とともにたくさん練習していきます。
 



<掲載商品>
二重軍手の鍋つかみ

編集担当 羽田