【旬のひと皿】なすの梅煮

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



8月も終わりに近づくと、季節のなかで一番好きな秋が近づいてきてワクワクします。ただ、奈良は盆地でまだまだ暑い。気持ちを秋にしてしまうと「切り替えが早かった‥‥」と悔やみながら秋風を待ちわびることになるので、片足はまだ夏、片足は秋ぐらいの気持ちで日々過ごしています。近くの園庭から聞こえる運動会の練習の声を聞いたり、夏の暑さに疲れたもみじに水やりしたりしながら、少しづつ日の暮れるのが早くなることを感じる日々です。

小さな飲食店を営むなかで、毎日さまざまな方にお越しいただいて、お話しをする機会があります。お仕事の話や最近あったこと、故郷のことや、趣味のこと。初めての日本に目をキラキラさせて来てくださる方も。自分の人生だけではとても体験できないお話を伺えるので、頭のなかで自分も同じ体験をした気分になり、色んな人生を楽しませてもらっています。年齢も、好みや状況も違う幅広い方々に、「美味しい」と思っていただける料理とはなんだろう?と考えています。

先日、とても忙しくお仕事をされながらも、季節を逃すことなく暮らしも料理も大切にされている素敵な方と、お話しする機会がありました。そのなかで教えていただいたことの一つが、お婆さまがよく作っていらっしゃった、なすの煮物について。出汁を使わず、水に煮干しを入れるだけでいい、いつでも気軽に作れる嬉しいレシピです。お婆さまとのやりとりや情景を思い浮かべただけで、気持ちが温かくなり、分量を細かく伺ったわけではないのですが、すぐに私も自分なりに作ってみました。同じ味の再現は当然できていないものの、派手な食材を使わずとも、こんなに慈味深く優しい一品ができるのだと感激しました。

料理のレシピは、今ではすぐに検索できてとても便利です。一方、便利ではないけれど、記憶をたどって作る、思い出のレシピも増えたら嬉しい。そして食べた人も、懐かしい過去の記憶や、温かい食卓の風景を思い出せる。そんな料理が作れたら、いろんな方に「美味しい」と思ってもらえるのかな。

時代を超えてたくさんの人が美味しいと思える料理を、身近にある食材で、いつか作れるようになりたいなと思います。

さて今回作るひと皿は、そんなエピソードから生まれた、なすの煮物です。合わせたのは梅干し。昆布やごぼうを煮るときにも、梅干しを入れると柔らかくなる、隠れた煮物の名わき役です。私自身も「〇〇の梅煮」が好きで、よく作ります。暑さの残る時期のレシピということもあり、さっぱり食べられるよう、なすの煮物にも梅干しを入れて炊きました。

食べるときは梅干しもほぐして、なすと一緒に食べるといいです。作り置きもできるので、冷蔵庫にこのなすがあれば安心。心強く、温かい気持ちになれるのです。

<なすの梅煮>

材料(2人分):

なす…3本
梅干し…2個
生姜…1かけ
煮干し…数匹
砂糖…大さじ1
みりん…大さじ1
醤油…大さじ1~2(お好みで)
水…200~250ml程度

つくり方:

なすを洗い、ヘタを取って半分に切る。皮へななめに切り込みを入れ、しばらく水につけてあくを抜く。生姜は皮をむき薄くスライスしておく。鍋になすを入れ、全体が浸る程度の水を入れたら火をつける。梅干しと生姜、煮干し、砂糖、みりんを入れて好みの甘さになるよう調整し、醤油を回しかけて煮る。

途中おたまで煮汁をなすにかけて味を染み込ませる。なすが重なる部分は火が通りにくいので、場所を動かしながらコトコト煮詰めていく。煮汁がなくなりそうになったら火を止めて、冷めたら梅干しと一緒に盛り付ける。

アレンジ編:<なすの梅煮ときのこのソテー>

フライパンを熱し、サラダ油を入れて、食べやすい大きさに切ったきのこ(お好みのもの。今回はしいたけとエリンギを使用)を炒める。軽く焼き色がついたら塩をひとつまみ入れて、もう一度サッと炒める。しっかり焼き色がついたらフライパンの火をとめて、なすの梅煮の煮汁を大さじ1杯入れ、きのことからませる。なすの梅煮と一緒にお皿に盛り付け、刻んだねぎを上から振って完成。

【ひとこと】
残った煮汁も使いたいと、食べ応えのあるひと皿にアレンジしました。きのこのソテーは、煮汁を使えば味付けも簡単。ご家庭にあるお好きなきのこで、気軽に作ってみてください。

うつわ紹介

・基本のひと皿:BARBAR いろは 中鉢(丸文)

・アレンジのひと皿:信楽焼の魚皿(飴)

写真:奥山晴日


料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。

【暮らすように、本を読む】#02『おべんとうの時間がきらいだった』

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出合うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の飯田光平さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出合いをお届けしてもらいます。

<お知らせ>
先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、中川政七商店の「白桃番茶」が書籍と一緒にお手元に届きます。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。


「家族」のフタをあけてみれば『おべんとうの時間が嫌いだった』

昨晩の残りのカレーが詰まったお弁当。炊き込みご飯だけのお弁当。きんぴらとごぼうと煮物だけの茶色いお弁当。母親に不平を言っても、呆れて不機嫌になるだけ。お弁当なんて大嫌いだった。

本書の書き手は、ANA の機内紙「翼の王国」にて、全国各地の手作りお弁当を取材するコラム「おべんとうの時間」を担当する阿部直美さん。そんな彼女が、冒頭で語り始めた中学生時代の思い出には、ちょっと面食らってしまいます。

神経質で厳しい父と、それに不平を漏らすだけの母。阿部さんにとって中学生時代のお弁当は、ご飯やおかずの詰まった昼食ではなく、家族との不和を写した鏡のようなものでした。

そんなお弁当への意識を変えるきっかけとなったのが、写真家の夫からの提案。それは、お弁当を食べる人を写すことで、その裏側にいる、作る人まで見えるような作品を撮りたい、というものでした。

お弁当から、その家族を写し撮る。自身の思い出から、その”残酷さ”にためらう阿部さん。しかし、試行錯誤の取材と撮影を続けるうちに、どんな家族にもさまざまな背景や想いがあるのだ、と気付かされていきます。そうか、威張り散らす父にも、不満ばかりだった母にも、誰かを喜ぼせようとする温かい気持ちがあったはずだ、と。

思い出される、かつての記憶。母が父に手渡すお弁当は、野菜が一切なく、焼いたカジキマグロの味噌漬けだけがおかずだった。こんなお弁当は父がかわいそうだ、と娘ながらに感じたけれど、帰宅した父は「うまかった」と満足そうに空のお弁当を返していた。

彩りがなくても、冷凍食品をチンしたものでも、食べる人が笑顔になるのなら、それが一番。だって、人それぞれ、家族それぞれのお弁当があるのだから。

お弁当には愛がある、と言い切ってしまうのは、ちょっと怖い。それでも、一言では言い表せない想いが詰まった小さな箱を、大切に開きたくなる。そんな気持ちにさせてくれた1冊でした。

ご紹介した本

・阿部直美『おべんとうの時間がきらいだった』

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『おべんとうの時間がきらいだった』

※先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、中川政七商店の「白桃番茶」が書籍と一緒にお手元に届きます。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。


VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/


<同じ連載の記事はこちら>
【暮らすように、本を読む】#01『料理と毎日』

<お弁当に関する特集ページはこちら>
毎日のお弁当

【家しごとのてならい】第1回:季節の果実でシロップ作り

毎日の家しごと。それなりにできるようになり、だいたいは心得たつもりだけれど、意外と基本が疎かだったり、何となく自己流にしていたりするものってありませんか?

そのままで不都合はないものの、年齢を重ねてきたからこそ、改めて基本やコツを学んでみたい。頭の片隅にはうっすら、そんな思いがありました。

この連載では、大人になった今こそ気になる“家しごとのいろは”を、中川政七商店の編集スタッフがその道のつくり手さんたちに、習いに伺います。

とはいえ、難しいことはなかなか覚えられないし、続きません。肩ひじ張らず、構えずに、軽やかに暮らしを楽しむための、ちょっとした術を皆さんにお届けできたらと思います。

第一回目のテーマは「季節の果実でシロップ作り」。奈良・西吉野にて、果樹を専門に栽培に取り組みながら、ドライフルーツなどの加工・販売も行う、堀内果実園の堀内奈穂子さんを講師に迎え、編集チームの谷尻が習いました。


今回の講師:堀内果実園 堀内奈穂子さん

1978年、奈良県生まれ。奈良県吉野の山麓で代々くだもの農園を営んでいる夫との結婚を期に就農。夫婦で堀内果実園のリブランディングを進める。くだものの美味しさや楽しみ方を広く知ってもらいたいと、フルーツアートクリエーターの資格も取得。現在は堀内果実園全般の業務に携わっている。
URL:https://horiuchi-fruit.jp/



シロップ作りの基本

梅しごとに始まり、「自宅で好みのものを作りたい」という声を多く聞くようになった果実のシロップ。梅を使ったレシピはたくさん見かけるものの、どうせなら旬ごとに季節の果実を使ったり、好みの果実でも作ってみたりしたいものです。

そういったわけで、今回はいろいろな果実で応用できるように、すべてに共通する基礎から習いました。

まずは下準備についてご紹介します。

【果実】シロップに向くもの、向かないもの

季節によって、旬を迎える果実はさまざま。果実シロップ作りというと梅しごとが最も定番ですが、もちろん他の果実でもシロップは作れます。

堀内さん:
「果実によってシロップ作りに向く・向かないは特になく、基本的には何でもシロップに使っていただけます。ただ、すももみたいに皮がしっかりしている果実は、シロップを出やすくするために、皮に穴をあけて漬けるのがおすすめです。そんな風に、皮の張り加減などの果実が持つ特徴によって、シロップが完成するまでの時間差はありますね」

実際に使用する際は、いちごのような皮のない果実はそのまま使用します。また、すもものように繊維がやわらかい果実は、切ると繊維を壊してしまいシロップがどろっとするため、切らずに皮へ穴をあけて使いましょう。柑橘などの果肉感がしっかりしている果実は皮を剥き、切って入れても問題ありません。

【果実】そのままと冷凍、どちらを使う?

好みの果実で作るシロップは、旬を過ぎても味わいたいもの。とはいえ、旬の時期はフレッシュなものが手に入りますが、時期を過ぎると果実によっては手に入らないこともあります。その場合、冷凍したものを使ってもよいのでしょうか?

堀内さん:
「冷凍した果実を使うのも、もちろん問題ありません。冷凍すると果実の繊維がやわらかくなり、解凍されるときに果実から出る蜜で砂糖も溶けやすくなります。早くシロップを完成させたい方は、溶けやすくするために冷凍がおすすめです。味はどちらも変わらないので、お好みで使っていただいて大丈夫ですよ」

【砂糖】氷砂糖、きび砂糖などの使い分け方

続いては、砂糖の使い分け方。果実シロップのレシピでよく使われるのは氷砂糖ですが、自宅にない場合や、普段から使っている好みのお砂糖がある方もいらっしゃいますよね。

堀内さん:
「一般的には失敗しにくく、果実の色もきれいに出る氷砂糖がよく使われますが、どのお砂糖を使うかは、漬ける方の好みで選んでいただいて大丈夫です。きび砂糖を使う方もいれば、はちみつだけで漬ける方もおられます。

我が家では氷砂糖か、たまにビート糖を使ったり、はちみつと半々にすることもあります。ただ黒糖のような色の濃いお砂糖を使うと、シロップの色がトーンダウンするので、ご注意くださいね」

【砂糖】分量の考え方

甘さの好みは人それぞれ。基本の分量は押さえつつ、自分好みの甘さを見つけたいところです。ただし、砂糖を少なくすることで失敗する危険もあるので注意しましょう。

堀内さん:
「砂糖と果実の割合は、1対1が基本。例えば、500gの果実を使う場合は500gのお砂糖を使うと、1対1の割合になります。甘みが気になる方は果実1に対してお砂糖を0.8とするなど、お砂糖の分量を少なくしても良いのですが、少なくするとカビやすくなるので注意が必要です」

【漬ける期間】飲みはじめと、保存期間

飲みはじめられるのは、お砂糖が溶けてから。季節や果実にもよりますが、だいたい1週間~10日ほどが目安です。ただし、1週間後ではまだ果実のエキスが出きっていないので、待てる場合は3か月ほど漬けてから飲みましょう。漬ける期間が長くなるほど、シロップの味はどんどんまろやかになるので、お好みのタイミングをぜひ見つけてください。

堀内さん:
「お砂糖がすべて溶けた時点で飲めはするのですが、漬けが浅ければ浅いほど、角が立った味になります。最初の頃はちょこちょこ味見をしてみて、ご自身がお好みの味を確認するのが良いかもしれませんね。1年、2年と漬けておくと、味はどんどんまろやかになります。

お砂糖を使っているため、シロップは基本的に数年間など長く保存が可能です。ただし長期にわたって保存すると、中の果実が黒っぽくなっていくので、気になる場合は3か月から半年ほどで取り出すようにしてください。色が気にならなければ入れておいても問題ありません。

取り出した果実はそのまま食べてもいいのですが、ジャムやスムージーにアレンジするのもおすすめですよ」

なお長期で保存する場合は、果実が砂糖にしっかり浸かっていないとカビなどの原因となります。シロップから浮いている面があればときどき瓶を回し、果実全体にシロップを回しかけるようにしましょう。

【保存場所】直射日光の当たらない、冷暗所で

せっかく作った果実シロップ。失敗せずに完成まで仕上げるためには、保存場所も重要です。直射日光のあたらない冷暗所におき、1週間ほどして砂糖が溶けてきたら、そのまま冷暗所で保存するか、冷蔵庫へ移動させてください。

堀内さん:
「最近は住宅環境が良くなり気密性が上がっているのと、特に夏は気温が年々高くなっているので、冷暗所がご家庭にない場合もあると思います。室内が高温になるのであれば、冷蔵庫保管がおすすめです」

保存の際は、マスキングテープなどに漬けた日を書いて瓶に貼っておくとわかりやすい

【トラブル発生】発酵したとき、カビたときの対処方法

果実を漬けている最中、注意していてもときどき起きてしまうのが、果実の発酵とカビ。

果実が発酵した場合は果実を取り出し、シロップだけを鍋に移し替えて70度ほどに熱し、10分ほど煮詰めます。瓶を洗い水気を拭き取ったら改めて消毒し、シロップの熱が完全に冷めた後、清潔な瓶にもう一度、果実とともに入れて漬けてください。

またカビた場合は、カビた果実は処分します。あとは発酵した場合と同じように、シロップを煮詰め、消毒した瓶にカビのない果実とともに入れて、改めて漬けてください。

<果実シロップづくりの心得:準備と保存>

・果実は好みのものでよし。それぞれの特徴により、下準備を変える
・果実は生でも冷凍でも問題なし。冷凍ものを使うとシロップが早く仕上がる
・砂糖の種類は好みで。果実と砂糖は1対1の割合が基本。減らす場合はカビに注意
・飲み始めは仕込みの1週間後ほどから。3か月ほど待つと果実感が増す
・長く漬けるほど、シロップのまろやかみが増す
・保存の際は直射日光の当たらない冷暗所や、冷蔵庫で
・発酵してしまったら果実を取り出し、シロップを煮詰めて再度果実と共に瓶へ戻す
・カビてしまったら果実を取り出してカビた果実は捨て、シロップを煮詰めて再度果実と共に瓶へ戻す

果実シロップの作り方

準備と保存について心得た後は、いよいよシロップ作りです。とは言っても、準備と保存のところさえしっかり押さえていれば、シロップ作り自体はとても簡単。材料と道具を揃え、いざ始めます。

準備物:

・保存瓶(密閉性のあるもの)
・ふきん
・アルコールスプレー
・竹串(すもも用)
・果実(今回はすもも、柿、ブルーベリー)

透明なガラス瓶の中で果実と砂糖が溶けていく様子を眺めるのも、果実シロップの楽しみの一つです。瓶は好みのデザインのものを選んで問題ありませんが、口径が広めだと果実が入れやすいのでおすすめです。必ず密閉できるものを選びましょう。

今回は中川政七商店「吹きガラスの保存瓶」を使用しました

また瓶は使用前に消毒が必要。アルコール消毒の場合はアルコールスプレーを、煮沸消毒の場合は瓶が入る大きな鍋と、瓶を扱うトングを用意します。瓶を拭くための、清潔なふきんも準備いただくと便利です。

※今回はアルコール消毒で行いました

1. 瓶を消毒する

アルコール消毒の場合は、瓶の内側にアルコールを吹きかけ清潔なふきんで軽く拭き取ります。煮沸消毒の場合はたっぷりのお湯を沸騰させた鍋に瓶を入れ、瓶の内側にしっかりお湯が回るよう、トングなどで瓶をやさしく回転させましょう。5分ほど煮て完了したら、瓶に残った水分を拭き取ります。

堀内さん:
「瓶は自然乾燥でも大丈夫ですが、水分が残っていると果実がカビるので、しっかり水分をとって使用してくださいね」

2. 果実と砂糖を計量する

作りたいシロップの量や、瓶の容量に合わせて果実と砂糖を計量します。今回は約1Lが入る瓶に対し、果実と砂糖を350g程度ずつ(計600g程度)用意しました。

3. 果実の下準備

果実をサッと洗い、水分を丁寧に拭き取ります。水分がついているとカビの原因になるので注意しましょう。

梅やブルーベリーの場合は皮を剥かずにそのまま使いますが、すもものように、皮に厚みのある果実には穴をあけてください。竹串を手に持って皮に刺し、ぷすぷすと全面をランダムに突いていきましょう。もし冷凍のものを使いたい場合は、半解凍して穴をあけるか、穴をあけてから冷凍しておきます。

パイナップルや柑橘類、柿などの果肉がしっかりしている果実は表皮を剥き、瓶へ入れやすいようにカットします。なお今回、柿はカットして冷凍したものを使いました。

梅やすもものようにヘタがついている果実は、ヘタ部分を竹串などで取っておきましょう。

堀内さん:
「果実を皮ごと使う場合は、できるだけ農薬や防カビ剤不使用のものを選んでくださいね」

すももは皮に竹串を刺し、穴をあけます

4. 清潔な瓶に、砂糖と果実を適量ずつ交互に入れる

下準備が完了したら、果実と砂糖が交互になるよう、瓶に詰めていきます。

まずは底にうっすらと砂糖が敷かれるよう、砂糖から先に入れましょう。このとき、あと2層ほど砂糖を重ねられるよう、量を残しておきます。

次に果実を入れ、砂糖、果実と重ねていき、最後に砂糖を載せて蓋をしたら完成です。

なお、冷凍果実を使用する場合は、解凍せずに冷凍状態のまま入れるのがおすすめ。解凍される際に果実から蜜が溶け出し、砂糖が溶けやすくなるため、シロップ作りが早まります。

5. 冷暗所に置き、一日に一度ほど瓶を回して果実に砂糖をなじませる

保管の際にじわじわと氷砂糖が溶け始めたら、果実に液糖がコーティングされるように瓶を回します。目安は一日に一度程度です。

堀内さん:
「見た目もかわいい果実シロップ。毎日世話をしながら、シロップの様子を眺めて楽しんでいただけたらと思います」

<果実シロップづくりの心得:作り方>

・瓶は消毒し、水分を拭き取っておく
・果実は特徴に応じて下準備を変える。果肉がやわらかいものは切らずに使う。皮が硬い場合は竹串などで穴をあける
・皮ごと使う場合は薬剤不使用のものを
・砂糖と果実は、交互に瓶に詰める。底に砂糖を敷き、上面も砂糖で蓋をする
・保存の際は一日に一度、瓶を回して液糖を果実にゆきわたらせる


「自宅でシロップを漬ける」と聞くと、何だかとても丁寧な家しごとのように思えますが、ポイントさえ押さえていれば、実はとても簡単。漬けている最中からその涼やかな景色が心地よく、好みの味を自分で調整できるのも、家で作るからこそです。

基本のシロップが作れるようになったら、ハーブを入れてみたり、スパイスを入れてみたり、少し珍しい果実でも挑戦してみたりと、いろいろ楽しめそう。旬を迎えるよろこびが、また、一つ増えました。

堀内果実園さん、ありがとうございました。


<関連商品>
中川政七商店では堀内果実園さんの商品を多数取り扱っております。ぜひご自宅用や、ご贈答用にご利用ください。また、堀内果実園さんのオンラインショップでは、果実の加工品の他、季節の果実やシロップキットなども販売されています。

堀内果実園 フリーズドライミックス
堀内果実園 シロップ
堀内果実園 柿の葉茶



文:谷尻純子
写真:関口高史

【はたらくをはなそう】茶論 店長 西優太廊

西 優太廊
茶論 奈良町店

2015年 遊中川 奈良町本店 配属
2017年 遊中川 奈良近鉄店 店長
2018年 茶論 奈良町店 店長



高校生の頃、通っていた商業施設に「遊中川」がありました。当時は店名を知らなかったのですが、店舗の入口にかかっていた麻の暖簾がとても印象的で、お店の前を通るたびにその暖簾を眺めていた記憶があります。

入社のきっかけは大学在学中に日本のものづくりに興味を持ち、中川政七商店を知ったこと。

あとから、高校時代に見かけていたあの麻の暖簾のお店も「中川政七商店」のお店だったと知り、この会社で働いてみたいと思い、店舗スタッフとして入社しました。

日本の工芸をベースにした生活雑貨の企画・製造小売とともに、茶道具関連の事業も展開する中川政七商店。私自身も入社して間もなく、社内で行われた茶道研修に参加したことがきっかけで、「茶道」を学び始めました。

現在は中川政七商店の茶道ブランドである「茶論」奈良町店の店長として、喫茶・稽古・見世を運営しながら、季節の茶会やイベントの企画、企業への茶道研修、出張稽古などを行っています。

仕事をする上で大切にしていることは「向き合うこと」です。

忙しくなり、つい、いろんなものを蔑ろにしてしまうとき、あえて一つ一つと向き合っていこうと意識します。

目の前の相手のために様々な準備を重ね、一つ一つの所作を丁寧にして一服のお茶を点てるように、仕事も一つ一つの積み重ねを大切にしていきたいと思います。

この仕事をしていて本当によかったと心から思う瞬間は、茶論を通じて「お客様に茶道の魅力が伝わった」と感じたとき。

最近は一緒に働くスタッフが同じようにお茶の魅力を語り、活躍する姿を見ると嬉しい気持ちになります。

これからもお茶での一服の価値を、多くの人に届けていきたいと思います。



<愛用している商品>

「油汚れも落ちやすい」ごはん粒のつきにくい弁当箱 大

サイズ感がちょうどよく、食べ終わった後もごはん粒がつきにくいので洗いやすい。見た目や質感も手作業ならではの風合いが感じられて嬉しい。そんな愛用品です。

筆ペン

日頃お世話になっている方へ宛てた手紙、年賀状、冠婚葬祭、少しあらたまって文字を書く際にはいつも使っています。

ビールのための純銅カップ

使えば使うほど銅の味わいも愉しめるカップ。サイズ感もお気に入りです。

【はたらくをはなそう】物流課 梅本洋平

梅本洋平
物流課


2014年 直営店の販売スタッフとして入社
2015年 通販課配属
2017年 物流課兼任



入社したきっかけは、初めて訪れた表参道ヒルズにあったお店で、手しごとを感じる商品の佇まいや、お店のスタッフがとても丁寧に商品を扱っている様子を見て、他の雑貨店とは違う空気感に感動したことです。

その前から中川政七商店の本を読んでいて、会社のことに関心はあったのですが、このお店での体験を通して自分も働いてみたいと思いました。

現在は通販のお客様からの受注と出荷を行うチーム、直営店の物流に関わる支援を行うチーム、障がいをもつスタッフのマネジメント、物流の業務改善を担当しています。

仕事をする上で大切にしている姿勢は”協働”です。

私が考える協働は、

・それぞれの強みを活かし、弱みを補い合える
・一人で問題解決するよりも、高いレベルでの問題解決ができる

の2つ。

そのために、実践しているのは、『話しにくい環境をなくすこと』です。

私には”話しやすい環境を作る”は仰々しく、
少し構えてしまうので、”なくすこと”を意識しています。

多様性のあるメンバーの力を最大限発揮できるよう、一人ひとりの意見を積極的に聞くように心がけていると、自分の発想には無いアイディアが生まれることも。
前向きなディスカッションは、仕事をする上でもっとも楽しい時間です。

協働は社内だけにとどまらず、取引会社の方、障がい者就労支援機関の方など、皆さんとの協働なくしては成り立たないものです。

まだまだ、力不足な部分もありますが、より良い環境作り、良い仕事が出来るよう、今後も取り組んでいきたいです。

店舗のように相手の顔が見えるわけではないですが、
スタッフの心配りや、どこか手の温もりが感じていただけるような物流、購買体験をお届けできるように努めます。


<愛用している商品>

ソフトパックティッシュのカバー

ソフトパック専用のティッシュケースで気に入るデザインのものを見つけることが出来ず、箱ティッシュを使い続けていましたが、これに出合ってからはシンプルなデザインと質感が気に入り愛用しています。

乾きやすいハンガー

厚手のパーカーなどを干す時に重宝しています。使わない時は、折りたためるため嵩張らず保管のストレスもありません。


「彩り豊かな」花ふきん 3枚セット(箱入り)

友人への贈り物やちょっとしたお返しの際によく利用しています。
贈る人に合わせて柄入りのふきん、季節のふきんを選ぶのも◎

【あの人の贈りかた】台所道具に、料理へのエールを込めて(スタッフ谷尻)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は編集チームの谷尻がお届けします。

料理がグンと楽しくなる「食洗機で洗えるひのきのまな板」

食べるのが大好きな私ですが、作るのはそこまで得意なわけでもなく、気分がのらない日もたくさん(いや、毎日‥‥?)。とはいえ疲れて料理をしたくない日も生活は続くので、少しでも作る気持ちを楽しくしたいと思い、一人暮らしを始めてから10年以上、台所周りの道具や、料理を格上げしてくれそうな調味料の収集を、もはや趣味のように続けています。

料理をするなかで、自分の食卓事情をグッと豊かにしてくれたのは、木のまな板と土鍋の存在。すいすいストレスなく食材が切れて、ふわふわもっちりのごはんが炊ければ、それだけで料理はこんなに心嬉しく、食事も美味しくなるのかと、それぞれ気付いた日には本当に感動しました。

台所道具って意外と、料理を始めた頃に何となく買ったもののまま、ということが多かったりしませんか?「とりあえず使えるから」と思って使用を続けてきたけれど、よい道具を迎えるとやっぱりウキウキするし、料理がラクになる。「家しごとのストレスが減り、少しでも楽しい時間になれば」。そう考えて、台所道具を人にあげることがままあります。

とはいえ土鍋は嵩張りますし、何よりデザインも大切な“好き”の一つなので、人に贈るには少し勇気が必要。一方、まな板はそれほどハードルが高くないのでは‥‥と思ってから、時々、友人を中心に暮らしに合いそうなものを贈っています。

木のまな板のよいところは包丁をしっかりと受け止めてくれるところ。プラスチックのまな板と違い刃が滑らないので、みじん切りや千切りもストレスなく捗ります。

けれど、少し気になるのはその重さ。まな板に厚みがあれば安定して切れるのですが、その分重さも出てしまい、片手でひょいっと持ち上げられず、作業がスムーズにいかないこともあるので要注意です。サイズとともに重さは大切な確認ポイントだと思います。

私のお気に入りは当社の「食洗器で洗えるひのきのまな板」。会社のキッチンスペースに置いてあったものを使った際に、その良さに気付き、これは!と嬉しくなりました。

一般的な木のまな板に比べると薄いのですが、包丁をおろしたときに刃がストンととまる感覚があり、何より軽い!おまけに食洗機に対応とは、推しポイントしかありません‥‥。

夫が一人暮らし時代にマルシェで迎えたという我が家の木のまな板は、もう10年選手。そろそろ買い替え時なので、こちらを自分にも贈りたいなと企んでいます。

<贈りもの>

中川政七商店「食洗機で洗えるひのきのまな板 小」
※大サイズもあります

ちょっと添えるのに便利で重宝「植物由来のにごり湯の素」

「仰々しくない程度に、気のきいたものを渡したい」
「プレゼントの予算まであと少しだけ余裕がある」

そんなときによくお世話になっているのが、「植物由来のにごり湯の素」です。ユズ・スダチ・ショウガと3つの香りがあり、それぞれ、その植物と米ぬかのみで作られた、香料・着色料不使用の浴用パックです。

家に残る物だと趣味があるし、食べ物も好き嫌いがあるし‥‥と悩むなか、入浴剤なら貰っても困らないし、いつもの暮らしにちょっとだけ幸せな時間が生まれる。何より、植物の香りでリラックスしてほしいという想いも込められるので、とても重宝しています。

自分自身もそうなのですが、忙しいとついついお風呂に入る時間を疎かにしてしまう方は多いもの。でもやっぱり、熱いお湯に浸かって一日の疲れをとってほしいなと思うわけです。

こちらの品は米ぬかのとろみが肌にやわらかくあたり、香りもくどくなく、さっぱり爽やかなので、しっかり長風呂を楽しんでいただけると思います。

いきいきと植物が描かれたパッケージもとっても可憐で、「あの人にプレゼントしよう」と手に取るとき、ついつい「自分の分も‥‥」と買ってしまう大好きな商品です。

<贈りもの>

中川政七商店「植物由来のにごり湯の素」

【番外編】季節の景色を贈る「季節の花束」

中川政七商店の品以外からも、一つ。

私はお花が大好きで、まちのお店に通うことはもちろん、サブスクリプションのサービスを利用したり、旅先のお花屋さんをめぐったりしながら、普段の暮らしのなかによく迎えています。

気軽に旬や色を取り入れて自宅の印象を変えられるところや、暮らしのなかに自然のものがある景色が好きなのだと思います。

なくても困らないけれど、あるのとないのとでは、明らかに心持ちが違う。もらったら、気分が明るくなる。自分では意外と買わない。ちょっと派手な色も、冒険して贈れる。相手の負担にならないような、予算の調整も意外としやすい。

「花を贈る」と聞くと、たいそうなことに感じる人も多いようですが、私はこんな風に考えながら、気軽に贈っています。

近くのお花屋さんでお願いすることもあれば、全国に“推し”のお店もあり、贈りたい相手のイメージに合わせて毎回お店は変えています。

ご紹介している写真は、東京に暮らしていた時代に足しげく通っていたmalta(マルタ)さんの花束。庭から摘んできたようなグリーンの使い方と、一癖ある花の合わせ方が絶妙に好みで、はじまりの機会をお祝いしたいとき、力強い草花の姿を応援に変えて届けたいと、よくお願いしています。

その人のイメージや贈りたい気持ちを言葉にしながら、花束をオーダーする時間も、またとても楽しいものです。

<贈りもの>

malta「季節の花束」
https://maison-malta.com/


贈りかたを紹介した人

中川政七商店 編集担当 谷尻純子