【あの人の装い】フォトグラファー・髙田久美子さんが着る「布ぬのテーパードパンツ」

産地でそれぞれ育まれてきた染織技術を用い、生み出された日本の布。その個性豊かな表情を装いのなかで楽しんでいただけたらと生まれたのが、中川政七商店の「日本の布ぬの(ぬのぬの)」シリーズです。

暮らしに自分らしいリズムを持つあの人が「日本の布ぬの」を装うなら、どんなコーディネートになるんだろう。そんな思いから、気になるあの人にシリーズ新作のテーパードパンツを着ていただきました。

今回は群馬県に住まいを構え、フォトグラファーとして活動しながらSNSで暮らしやファッション、育児の発信も行う髙田久美子さんによる装いをご紹介します。

パンツスタイルが日々の服装の定番

フォトグラファーとして家族写真や企業案件の撮影を仕事とする髙田さん。東京での生活を経て夫の実家である群馬県に移り住み、いまは2歳と4歳のお子さんと、夫の4人で暮らされています。

東京時代はハイブランドの洋服も好み、群馬に移ってもしばらくは仕事のある東京で買い物をすることが多かったそうですが、最近は趣向が変わり地元のセレクトショップで購入することも増えたといいます。どんな理由から変化が起きたのでしょう?

「年を重ねるにつれて、長く愛用できたり経年変化が味わいになるようなファッションが好きになって。そういったお洋服をたくさん扱うお気に入りのセレクトショップが群馬県内にあるので、そこで買い物することが多いですね。ネットショッピングも楽しんでいます。

最近買った思い入れのあるものは、そのセレクトショップで迎えたシルバーのバングル。子どもの誕生日の記念にとちょっといいものを買って、裏側に子どもの名前を刻んだんです。子どもが成人したら受け継ぎたいなって思ってます」

当初は見知らぬ土地だった群馬も、いまは帰ってくる土地になったそう。洋服の好みの変化は、暮らし方の意識の変化とも結びついているのかもしれません。

「東京暮らしが長かったのですが、都会に疲れてしまうというか。いつもどこか気を張ってるみたいなところがあり、疲れてたんだなとこっちに来て改めて実感しました。群馬は便利さでいえば東京ほどではありませんが、だからこそ工夫する知恵もうまれます。ちょっといい醤油を買うことが毎日のご褒美になるとか、そんな小さなことがいまは幸せなんです」

育児は夫と“シフト制”。食事や、園へ子どもを送る朝の時間は一緒に過ごし、夕食後は日替わりで担当が決まっているといいます。それに加えて、火曜日は“母業”を終日オフにできるように調整しているそう。夫婦で協力しあいながら、自分の時間や仕事の時間をとられています。

「意識もお洋服も、仕事モードの時と母ちゃんモードの時、女性モードの時を分けていて。例えば仕事もオフで、友達とお茶ができる時なんかは“女性モードで”自分の時間を思いっきり楽しめるおしゃれをしたり。

その瞬間だけは『ママだからこうしちゃいけない』に縛られずに、楽しむことに決めているんです」

「とはいえ母業も仕事もあるので、365日のうち9割くらいはパンツスタイルですね。仕事でも子どもといるときも、スカートだとどうしても意識が自分に向いてしまうので、気を遣わないパンツスタイルが好きなんです。反対に今日みたいに、自分が被写体になるとか、誰かに会いに来ていただいたりする場合はスカートを履くことが多くて、意識的に使い分けているかもしれません。

あと相手への心配りみたいなこともパンツスタイルのほうができる気がしていて。スカートを履いている時は動きが制限されるから、思いっきり何かをすることが難しいんですよね。おもてなしとか、誰かに何かをしてあげたいなって気持ちを存分に発揮できるのもパンツのほうが向いていると思うんです」

「布ぬのテーパードパンツ 絣刺繡」

普段からパンツスタイルばかりと話す髙田さん。9種類ある「布ぬのテーパードパンツ」から、お好きな布を二つ選んでいただきました。

髙田さんが選んだ一つ目の布は「絣刺繡」。中川政七商店に残る大和絣の図案を、富山県の作り手によりエンブロイダリーレースの技法で表現した布です。ベースには光沢のある杢(もく)調の生地を使っており、なつかしさがありつつも繊細な模様が品よく浮かぶ一着に仕上がりました。

「パンツに脚を通した時にまず感じたのは、肌触りの良さと、軽やかさ。デザインの面ではタックがしっかり入っているので、もったりとせず、野暮ったくならないところがお気に入りです。

トップスはシンプルなものを持ってくるとバランスがいいかなと思い、白のざっくり編みニットを合わせました。春秋はシャツやブラウスを合わせることで上品なコーディネートになりそうですね」

「コーディネートのテーマは、友人と家で過ごす時間の気負わないおしゃれ。リラックス感が出すぎないように髪はアップにしてバランスをとり、アクセサリーにシルバーの大きめピアスをつけてみました」

<着用した商品>
布ぬのテーパードパンツ 絣刺繡 グレー

「布ぬのテーパードパンツ パイルジャカード」

二つ目の布は「パイルジャカード」。もこもことした毛が織り込まれた立体的で複雑なデザインが特徴の生地で、パイル織物の産地・和歌山県高野口で仕立てられました。ランダムな大小の水玉がやわらかに浮かぶ印象的な一枚を、髙田さんはどんなふうにコーディネートするのでしょう。

「イメージしたのは、美術館へお出かけする時のコーディネート。パンツはふんわりやわらかな着心地と見た目ですが、少しハードなロングジレと合わせて、あえてクールにワントーンでまとめました。

こちらの生地はレオパード柄のようなイメージもあり、今回みたいに強めにも着こなせそうです」

「毎日の服装で大事にしているのは『身だしなみは人のために、おしゃれは自分のために』という意識。

コーディネート自体はシンプルで清潔感のあるバランスが好きですが、一つひとつのアイテムはどこか少しクセのあるデザインのものを選ぶことが多いですね」

「この生地は、もこもことした素材感がすごく気持ちよくて、つい触りたくなってしまいました(笑)。一見シンプルですがよく見ると個性があって、モノトーンのトップスが多い方にもワンポイントになるのではないかと思います。

身長153cmの私が履いても裾が長すぎず、程よいゆとりがあるので仕事や育児の場面でも動きをじゃませず着られそう。もちろん、おしゃれをする日のアイテムとしてもぴったりです」

<着用した商品>
布ぬのテーパードパンツ パイルジャカード 黒

ラクな着心地ながらも個性豊かな布の表情と、すっきりと着られるシルエットに仕上げた布ぬのテーパードパンツ。生地により冬に活躍するもの、春先まで着られるものと様々です。

ぜひ、お気に入りの一着に出会っていただけたら嬉しく思います。

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文:谷尻純子
写真:戸松愛

【身長別着用レビュー】セミフォーマル「ジャカード織の菱紋ジャケット・ワンピース」

特別な日のための服。自分に似合うものを購入して、長く着たいですよね。
そこで今回、少しでも参考になればという思いで、身長別のスタッフの着用レビューをお届けします。

本記事で取り上げるのは、ジャカード織の菱紋ジャケット・ワンピース。

日本有数の繊維の産地・尾州で培われた織物技術を用いて、ハレの日にもふさわしい縁起の良い菱文様を織り上げました。
スタイルよく着こなしていただけるすっきりしたシルエットで、地模様があるためシワが目立ちにくいのもポイント。全体的に軽くてやわらかな生地は、きちんと見えつつラクに着られます。

今回は身長156cm、160cm、164cmのスタッフがそれぞれ着用してみました。
ご参考になれば幸いです。

<合わせたアイテム>
ジャカード織のジャケット 菱紋 紺
ジャカード織のワンピース 菱紋 紺
しけ絹のコサージュ 梅
プリーツリネンの巾着バッグ アイボリー

※シューズはスタッフ私物です。3人とも、6cmヒールを着用しました。

身長156cmのスタッフが着用

「シンプルな紺色のなかに、ふっくらと浮かぶ菱文様がすてきな生地ですね。ジャケットは袖のシルエットがぽわっとしているので一色でも地味になりすぎず、華やかさも出るなと思いました。今回つけたコサージュのような、さりげないアクセサリーを合わせて着たいです

ワンピースはウエスト部分にさりげなくタックが入っているので、シルエットにメリハリができ、一枚で着ても単調にならない所も気に入りました」

「中川政七商店のセミフォーマルシリーズは基本的にフリーサイズなので、私の身長だといつもやや大きく感じていたのですが、今回はいつもより細めのシルエット。少し低めの身長の方や、細身の方でも着ていただきやすいと思います。

スカートの丈感は、私の場合はすねが隠れるくらい。長めの丈なのでバランスをとるために、やや高めのヒール靴を履いて合わせたいです」

身長160cmのスタッフが着用

「大人の女性っぽさが出る、品よく着られるお洋服だなと感じました。ワンピースの着丈が長いのに対してジャケットが短めなので、セットアップで着るとバランスが合い、スタイルよく着こなせそうです。

やや細身ですが生地がやわらかいのでまったく窮屈さはなく、忙しいハレの日の場でも動きをじゃませず着られそう。生地のつや感がお祝いのシーンなどにぴったりですね」

「自分で実際にコーディネートするときは、お洋服の上品な印象を活かしてアクセサリーや靴などは極力シンプルに抑えたいです。今回のコサージュやバッグのような少し明るめの色を入れて、明るく着られたらなと思います」

身長164cmのスタッフが着用

「私のような背がやや高い方でもスカートの丈感がちょうどよく、足をあまり出したくない方にもおすすめです。ワンピースの縦長ラインが全身をすっきりと見せてくれるのに、意外とゆとりがあるのでインナーにあったかシャツなども着こめそう。首回りがシンプルなので、セミフォーマル服の定番アクセサリーであるパールネックレスとも相性がいいですね」

「ジャケットを脱ぐと、よりコンパクトな印象で着られるのもお気に入り。ワンピースは袖丈が七部程度なのでジャケットを着てももたつかず、少し気温の上がる日も爽やかに装えそうだなと思いました。

最近はセミフォーマル服のデザインも幅が広がり、ご自身らしい着こなしをされる方が増えてそれもとっても素敵だと思うのですが、このシリーズはきれいめの小物を合わせて、あえてクラシカルな印象で着たいなと思いました」

コンパクトな縦長シルエットで、すっきりときれいに着られるジャカード織の菱紋シリーズ。ふっくらとした生地感や光沢感は上品な印象で装えます。今も5年後も、その先も、ぜひ長く着用いただければ幸いです。

お手入れについて

ご自宅でもお洗濯いただけますが、必ず洗濯ネットをご利用ください。
乾燥機にかけると縮みますので、乾燥機は避けてくださいますようお願いいたします。
シーズンの終わりには、クリーニングに出していただくと⻑くきれいな状態が保てます。


中川政七商店のセミフォーマルは、他のシリーズも身長別の着用レビューをご用意しています。
よろしければこちらもご覧ください。

【身長別着用レビュー】セミフォーマル「尾州ウールと麻のワンピース」
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【身長別着用レビュー】セミフォーマル「尾州ウールと麻のワンピース」

特別な日のための服。自分に似合うものを購入して、長く着たいですよね。
そこで今回、少しでも参考になればという思いで、身長別のスタッフ着用レビューをお届けします。

今回取り上げるのは、尾州ウールと麻のワンピースと同シリーズのジャケットです。

ゆとりのあるデザインのためそのままシンプルに着用するほか、タートルネックのニットなどを着こむこともできる一着。スーツ生地の世界3大産地に数えられる尾州で織られた、ウールと麻を織り交ぜた先染の生地を使用して作りました。ワッシャー加工を施した凹凸のある生地は、シワができにくく、目立ちにくいのも特徴のひとつ。清涼感のある肌触りでウール混ながら長いシーズン活躍します。

今回は身長156cm、160cm、164cmのスタッフがそれぞれ着用してみました。

ご参考になれば幸いです。

<合わせたアイテム>
尾州ウールと麻のジャケット
尾州ウールと麻のワンピース
シルク刺繍の重ねネックレス
しけ絹の花飾り 花

※シューズはスタッフ私物です。3人とも、フラットパンプスを着用しました。

身長156cmのスタッフが着用

「生地が軽くてやわらかいので、ジャケットを羽織っても肩が凝りにくそうだなと感じました。ゆとりのあるシルエットでバタバタと忙しい日もしっかり動きまわれそうですね。ワンピースはすとんとしたシルエットですが、後ろから見るとタック入りで、カジュアルななかにきちんとした雰囲気も出せる一着だと思います」

「身長が低めの方は、フラットなパンプスで着るよりもやや厚めの底のシューズや、ヒールが太めのパンプスを履くとバランスがいいのかもと思いました。自分でコーディネートをするなら、カチッとしすぎない雰囲気を活かして、アクセサリーもクラシカルすぎないものを合わせて楽しんでみたいです」

身長160cmのスタッフが着用

「同じシリーズのパンツのセットアップと比べると、よりやさしい印象ですね。身幅のあるデザインとふくらはぎまで隠れる丈感で、着ていて安心感があります。普段からカジュアルで少し気のきいた服が好みなので、これならハレの日の場でも自分らしく、気負わず着られそうです」

「シンプルなデザインなのでバッグやアクセサリー、ヘアスタイルなどでいろんなアレンジができそう。気分や場により雰囲気が変えられて、着回しが効きそうです。普段でも着られそうなデザインですが、上質な生地感なのでセレモニーの場でも浮きませんし、何かと頼りになる一着だと思います」

身長164cmのスタッフが着用

「ジャケットは程よいかっちり感で、仕事で取引先の方とお会いするときなど、きちんとした場でも重宝しそう。手持ちの服と合わせても浮かないので、普段からジャケットスタイルが多くない方にも手に取っていただきやすい一枚だと思います」

「ワンピースはワントーンでシンプルなのですが、丸みのあるコクーンシルエットで少しひねりがきいていて愛着が持てそうなデザイン。流行や年齢に影響されず長く着られますし、しわになりにくく軽やかな着心地なのもお気に入りです」

幅広い身長の方に対応できる丈感の、尾州ウールと麻のワンピース。フォーマルな場から仕事やちょっとしたお出かけまで、ぜひ様々なシーンでご着用ください。

お手入れについて

ご自宅でも手洗いでお手入れしていただけますが、乾燥機にかけると縮みますので、乾燥機は避けてくださいますようお願いいたします。
シーズンの終わりには、クリーニングに出していただくと⻑くきれいな状態が保てます。

しわが⽬⽴ちにくい凸凹した⼿触りの仕上がりになっていますが、もしシワが気になる場合はあて布をしてアイロンがけをしてください。


中川政七商店のセミフォーマルは、他のシリーズも身長別の着用レビューをご用意しています。
よろしければこちらもご覧ください。

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【季節をしつらう暮らし】節分

花やテキスタイル、年中行事にちなんだお飾り。

暮らしのなかに季節を感じる景色があるだけで、毎日にリズムが生まれ、目にしたときに少し幸せな気持ちになる気がします。

そんな景色の参考になればと、スタッフやお客さまのもとにお邪魔して、中川政七商店の季節のお飾りをインテリアに取り入れていただきました。今回は「節分」をテーマに、スタッフ・白石の自宅を訪れます。

花や郷土玩具で、四季の移ろいを子どもと楽しむ

白石:

中古のマンションをフルリノベーションした我が家。どんなテイストの家具や雑貨も合うように、壁は白一色、天井はコンクリートむき出しといったふうに、ニュートラルな印象に仕上げてもらいました。

妻は北欧テイストが好みで、ダイニングテーブルは北欧のヴィンテージ品。内装関係の仕事をしている妻の会社で作っていただいた家具もあります。テレビボードの収納部分には扉がついていたりと、基本的にはごちゃつかずすっきり見せられるような家具を選んでいますね。

撮影:白石

一方で、僕個人は日本の焼き物や郷土玩具の収集癖があり、花器やうつわに取り入れたり、各地で集めた人形を玄関に飾ったりしています。

旅行に行く前にリサーチして、好みに合うものを迎えるのが旅のひとつの楽しみです。

撮影:白石

しつらいは季節感も意識していて、床に敷くラグを夏はござっぽいものにしたり、冬は毛足の長いものに変えたりと、時季により心地好く感じる風合いのものを選んでますね。

旬の花を飾るのも好きな家しごとの一つ。

今は仕事でご一緒したことを機に出会ったオンライン花屋のLIFFTさんで、季節の花のサブスクリプションサービスをお願いしています。毎月新鮮な花が届くので、2週間ほどは飾れて。そのあとは庭の花や、近くの花屋で購入した花などを生けています。

花瓶はどちらも小鹿田焼のもの。背の低いものは小鹿田焼のピッチャーを花器として使用中

子どもがいるので端午や桃の節句だったりクリスマスだったり、子どもに関連する年中行事も積極的にしつらいに取り入れます。兜飾りやお雛様は悩んだ末に、一刀彫のものにしました。

他にも、玄関に飾っている郷土玩具も干支にまつわるものを目立つ場所に出して、ちょっとしたリズムを楽しんでいます。

鬼の張子面飾り 赤鬼・青鬼

今回飾った節分のお飾りは「僕の家にはちょっとかわいすぎるかな?」と思っていたのですが、もともとある郷土玩具のテイストが幅広いのもあって、違和感なくなじんで飾れました。

あと、子どもがすごく興味を示してくれて。行事の話を自然とするきっかけにもなりました。「紙でできているから大事に触ってね」と、ものを扱う心得も覚えてくれたように思います。

豆まき置き飾り 

しつらったお飾り

豆まき置き飾り 
鬼の張子面飾り 赤鬼・青鬼

今回の取材先:

中川政七商店 編集担当 白石雄太

ものづくりの様子を届ける読みものや、産地の作り手が集う展示会のWEBサイト運営などを担当。自宅には旅先で求めた多数の郷土玩具や縁起物をコレクションしている。

文:谷尻純子
写真:中村ナリコ

【四季折々の麻】1月:軽やかであたたかく、マットな質感「ヘンプ麻と綿」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

軽やかであたたかく、マットな質感「ヘンプ麻と綿」

1月は「初春」。心新たに年を迎える月に、清々しく着たい麻の服をご用意しました。

気持ちとしては春を迎えたい時期ですが、朝晩は空気がくっきりと冷え、まだまだ冬のさなか。生地感は春を意識しながらも、冬の寒さからあたたかく守り、次の季節まで着られる衣服をご提案できたらと思い仕立てたシリーズです。

麻生地といえば艶のあるシャリ感のあるものを想像される方が多いと思うのですが、今回はヘンプと綿を組み合わせることでマット感のある生地に。ひんやりせず、冬らしい質感が特徴です。

ラインアップは「中綿ベスト」と「ギャザースカート」の2種類。特にベストは、コートの下にインナーダウンのようにしても着られる、気温の変化に対応しやすいアイテムです。厚手で重い衣服の多くなるこの時期、着心地も見た目も軽やかなアイテムを楽しんでいただけたらと思います。

【1月】ヘンプ麻と綿シリーズ:

ヘンプ麻と綿 中綿ベスト
ヘンプ麻と綿 ギャザースカート

今月の「麻」生地

今回用いたのは、麻の一つであるヘンプと、綿を紡績した糸を経緯(たてよこ)に使い、密度を詰めて織り上げたヘンプコットン生地。

ヘンプの繊維はリネンなどに比べより多孔構造のため、繊維に空気の層ができることで冬にあたたかく着られます。また保温性だけでなく調湿性や調温性もあり、生地が呼吸をしながら快適さを保っているような素材です。

マットな質感と上品なネップ感(※麻繊維の太さのゆらぎによる、ぽこぽことした生地感)のある、ヘンプならではの表情を持つ生地に仕上がりました。

しめ縄にも使われる硬い繊維で、もともとはがっしりとした生地が作られることが多かったヘンプですが、最近では紡績技術の進歩でより細く糸を紡げるようになってきました。

ただ、ヘンプは繊維の長さが短いため、織り上げるなかで切れやすいという難しさがあり、特にやわらかな服地を織るのはかなりの工夫や技術が必要。今回の生地も丁寧にゆっくりと織り上げられた貴重な織物です。

ご協力をいただいたのは兵庫県の播州織の産元さん。「難易度の高い織物にチャレンジしてやろう!」という、気概のある作り手さんたちに携わっていただきました。

少し細かいお話になるのですが、例えば経(たて)糸を織る際に、糸をピンと張れるよう糸に糊をつける「糊付け」の工程も、こだわったひとつです。

通常の織物では糸巻きに糸を巻いたままの状態で糊にドボンとつけるのですが、より丁寧にむらなく均等に糊付けをするため、一本ずつ糊のなかをくぐらせていく「一本糊」という糊付けをされています。

さらには糸が切れないよう、織りの際は糸に含ませる油分を微妙に調整し、機械といえど目を離さずにゆっくりとしたスピードで織り上げてくださいました。

糸づくりから糊付け、織りまで、それぞれの職人さんが工夫を凝らして協力しあい、作られた生地です。

お手入れのポイント

ご家庭でお洗濯が可能ですが、ベストは手洗いで優しく押し洗いしていただければと思います。スカートはネットに入れて、洗濯機でお洗濯していただけます。

形を整えて干す際は、ベストはやさしくシワを伸ばして。スカートはシワを伸ばして干すか、お好みで少し縦に絞り、引っ張ってシワをつけることで、麻ならではのシワ感を楽しんでいただくのもおすすめです。

長く着られる2アイテム

春先まで活躍するベストと、オールシーズンの着用が可能なスカートの2アイテムをご用意しました。色展開は中綿ベストが「グレー」と「チャコール」の2色。スカートは「オフ白」「グレー」「チャコール」の3色展開で、いずれも長く着られる定番色とマットな質感がポイントです。

中綿ベストは、キルティングのようにステッチを表に出さず、中に板状の綿を入れたもの。スポーティな印象ではなく、ふんわりナチュラルに着られる綿入りのベストになっています。

前にはクルミスナップが一つ付いており、軽く羽織る感じで着られます。タートルネックニットの上や、シャツブラウスに重ね着してお楽しみください。もこもことした生地感ではないため、例えばお花見の時期ような、春先の肌寒い日も着ていただけたらと思い仕立てました。

ギャザースカートはたっぷり生地を使ったロング丈。冬の重めのニットやコートと合わせても、春の到来を感じられるような軽さに仕上げています。

裏地が付いているので透けの心配もなく、ふんわりとしたシルエットのため、寒い日は下にタイツやスパッツを着こむこともできます。年中着ていただける、着回しの定番となるアイテムです。

なお、今回のシリーズではスカートのみ「オフ白」を展開。生地を白色にするための晒す工程ではあえて白度を控えめにし、ややクリームがかった色にしています。あたたかみのある白は冬の麻衣服にぴったりで、晒しきっていないためよく見ると麻の繊維感があるのもお楽しみいただきたい点のひとつです。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちの良さがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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【わたしの産地旅】織物のものづくりが息づく町、桐生へ

中川政七商店の福利厚生制度に2024年度より加わった「産地視察支援金制度」。こちらはスタッフ一人ひとりが日本各地の産地を深く知り、工芸の奥深さを体感できる機会を持つことが、ひいてはビジョンの「日本の工芸を元気にする!」につながると考えはじまったものです。

日本のものづくりへの興味から、日頃からプライベートでも産地へ足を運ぶスタッフが多い当社。この制度を利用しながら産地を訪れたスタッフの声をお届けします。



旅の終わりの夕暮れ時、わたしは桐生駅のベンチで地元の高校生が奏でるピアノの音を聴きながら、帰りの電車を待っていました。手には桐生発祥、シロフジのアイスまんじゅう。カチカチに凍ったまんじゅうをゆっくり溶かしながら、この旅で出会った風景や人々を思い返し、じんわりと余韻に浸ります。

昔懐かしいパッケージに惹かれて。優しいミルクとしっかり餡子が最高です。

今回の旅に出るにあたり、会社の福利厚生のひとつである「産地視察支援金」に背中を押してもらいました。

中川政七商店のビジョンは「日本の工芸を元気にする!」こと。その実現の一歩として、店舗や本社で働くスタッフが実際に産地を訪れ、工芸が生まれる背景や職人さんたちの想いに触れるための支援制度が設けられています。

旅するなかで感じたこと、学んだことをもとに、お客さまや一緒に働く仲間にその魅力を伝えていく。それが日本の工芸を広め、元気にする力になるとの考えから誕生した制度です。

春に入社してはじめての産地訪問の旅。わたしが行き先に桐生を選んだ理由は、以前所属していた店舗でおこなった、同地のアクセサリーブランド「Triple O(トリプル・オゥ)」の企画展の経験です。

形も長さもさまざまな色とりどりのアクセサリーに胸が躍り、販売する商品に加えて制作風景や過程にも心惹かれました。「水に溶ける布に刺繍するってどういうこと?」「この立体的で繊細な刺繍がミシンでつくられているってほんとう?」と好奇心が湧き上がり、いつか必ず桐生の地を訪れるんだと心に決めたのです。

企画展で目にした、Triple Oのいろとりどりのアクセサリーたち。

いざ、出発の日。前日までの冷え込みが嘘のように、秋らしい爽やかな青空とあたたかな日差しに恵まれました。初めての土地を訪れる少しの緊張も、この絶好の天気が背中を押してくれるように感じます。

桐生駅に到着。構内には、自転車を押しながら歩く高校生がたくさん。

まずは、桐生のまちを探索。駅から20分ほど歩いて、重要伝統的建造物群保存地区に向かいます。通学中の学生とすれ違いながら、古き良き街並みで朝さんぽ。桐生天満宮にも立ち寄り、今回の旅が実りある素敵な思い出になるよう、お祈りしてきました。

江戸時代後期から昭和初期までのさまざまな建造物が残るエリア。なんだかわくわくする路地が。
桐生天満宮にて、よりよい旅になるようお祈り。

駅に戻り、今回の旅のお供となる自転車をレンタルします(なんと無料‥‥!)。観光センターの方の、「どこから来たの?」「行き先はもう決めた?」という優しいサポートを受けつつ、出発の準備は万端!期待に胸を膨らませながら、自転車のペダルを踏み込みました。

最初に訪れたのは、ジャカード織を手がける須裁(すさい)株式会社。ガシャンガシャンと規則的に動く織機の音に包まれながら、複雑な織物がつくられていく瞬間を見学させていただきました。

絶え間なく動く織機の音が響く工房。
音の正体は、紋紙と呼ばれる穴の空いた紙。織機の動きに合わせて送られ、模様ができる。

緊張していたわたしをとても朗らかな雰囲気で迎えてくださった、デザイナーの坂入さんと社長の須永さん。些細な疑問にも気さくに答えてくださいます。

お話を伺うなかで感じたのは、織物づくりに対する強い想いと誇り。“定番”はなく、常に新しいものと向き合い、付加価値の高い織物を生み出していること。それは簡単なことではないけれど、そこにこそものづくりの面白さがある。その言葉が、織り機の音に重なるように胸に残っています。

隣接するショップでは、まるで桃のような繊細な色使いの布でつくられたバッグにひとめ惚れ。聞くと、ピーチという名前の生地だそう(やっぱり!)。ちょっとそこまで、にぴったりなサイズ感もたまらなく、旅の記念に購入して工房をあとにしました。

ショップの窓に飾られたジャガード織の布。金魚がモチーフだそうで、こちらもとっても素敵!

続いて訪れた「笠盛パーク」では、株式会社笠盛が手がける刺繍のアクセサリーブランド「Triple O(トリプル・オゥ)」のアクセサリーがどのように生まれたのかを知りました。

迎えてくださったのは、広報担当の野村さん。まず会社の歴史を学び、刺繍の老舗である同社がどのように発展し、変化してきたのかを伺います。その後はいよいよ、ずっと楽しみにしていた工房の見学へ。目の前には、稼働中の4台のミシンがリズムを刻む、どこか心落ち着く作業スペースが広がります。

繊細なアクセサリーが少しずつ形づくられていく様子に目を奪われました。土台の布は水に溶ける素材の不織布でできており、その日の天気や湿度、作るアクセサリーの種類などに合わせ、ひとつのミシンにつきひとりの職人さんが貼り具合などを調整しているそうです(同じ糸でも、染める色によって丈夫さや縫いやすさが異なるのだとか)。

ミシンが並ぶ工房へ。ひとつのミシンに10の頭がついている。
中川政七商店のお店でも取り扱う、シルクリネンのネックレスができていくところ。至る所に職人さんのメモが。
土台の布をお湯で溶かす体験もさせていただきました。わたあめのように一瞬で溶ける姿にびっくり!

職人さんが重ねてきた経験と感覚を頼りに、一つひとつ丁寧に生まれていくアクセサリー。そこに込められた技術や想いがきらきら光っているように感じます。もっと多くの人にこの小さな輝きを知ってほしい、届けたい。そんな想いがふつふつと沸いてきました。

次に訪れたのは、織物参考館 紫(ゆかり)。「西の西陣、東の桐生」と呼ばれる織都・桐生は、奈良時代から絹織物の産地として知られていました。ここでは、桐生の織物がたどってきた、1300年もの長い歴史に触れられます。展示された古い織機や糸車を見学。3種類の織機を使った体験もさせていただき、積み重ねられた人々の工夫や知恵が織物づくりの今に繋がっているのだと感じました。

織機や糸車など、たくさんの織物に関する資料が並ぶ。
織物体験。紐を引くとシャトルが動く仕組みに、便利‥‥!と感動。

そしていよいよ、楽しみにしていた藍染体験!

はじめての染色に胸が高鳴ります。どのように結ぶとどんな模様になるかを教えていただきながら、デザインを決定。染料に布を浸して、真っ白な布が青緑に変化してく様子を見ながらじっくり揉み込みます。

藍の発酵した匂いを感じながら、うまくできますようにと祈りを込めて揉み込みます。

そろそろ‥‥と水ですすぐと、空気に触れて酸化することで綺麗な藍色に。出来上がるまでどんな仕上がりになるかわからない、予測できない楽しさにわくわくが止まりません。藍染の発酵した香りや、手先がほんのり藍色に染まる感覚。五感を使って全身でものづくりを感じることができ、大満足でした。

染め上がったネルシャツとハンカチたち。とってもいい感じ!

途中、サポートスタッフの方がかけてくださった「お気に入りだけど黄ばんでしまったシャツも、藍に染めるとまた同じだけ永く着られるね」という言葉が忘れられません。手仕事ならではの表情を持つハンカチとネルシャツは、いつまでも心に残り続ける、旅の思い出そのものです。

桐生のまちを歩いていると、ぽつぽつと現れるのこぎり屋根の建物に目を惹かれます。訪れる先々の工房の方に聞くと、その独特の形状には、地元の織物産業を支えるための知恵がぎゅっと詰まっていました。

北側に設けられた窓からやわらかな自然光を取り入れることで、一日を通して作業場の明るさを一定に保つことができます。その光が織りなす空間は、職人さんたちの手元を照らし、繊細な作業を支えてきたそうです。

知恵が詰まったジグザグの屋根。織都・桐生ならではの風景です。
ジグザグ屋根を中から見るとこんな感じ。採光部は北を向いているので、やわらかな光が差し込みます。

さらには、この屋根の形状がガシャンガシャンと響く機械の音を拡散させ、騒音を抑える役割も果たしているそう。長く織物を生み出してきた背景にぎゅっと詰まった、人々の知恵と工夫。古くから続くこのまちの風景は、時代を超えて今もなお、工芸と暮らしを静かに見守り続けています。

旅に出ると、食べたいものが渋滞してしまうのがわたしの悩み(1週間分食べ貯めることができたらと、何度思ったことか‥‥)。今回もその例に漏れず、胃袋が許す限りたくさんの魅力的な食を堪能しました。

お昼に向かったのは、地元名物ひもかわうどんの名店・藤屋本店。お店の方のおすすめ、鴨せいろとカレーせいろをいただきました。運ばれてきた瞬間から、平たく幅のある麺に期待が高まります。つけ汁とよく絡み、もちもち食感だけど重さのないひもかわうどん。あっという間にツルッと完食してしまいました。

カレーせいろ。写真を見返すだけでお腹が鳴ってしまいそう。

工房をめぐる合間には、焼きまんじゅうを食べてひと休み。注文後に焼いてくださるまんじゅうから漂う甘辛い味噌ダレの香りの、なんとたまらないことか。秋の心地よい風を浴びながら、外を眺めてぼんやり待ちます。近くの公園で熱々を頬張るのは、これ以上ない至福の時間でした。

できたてアツアツの焼きまんじゅう。甘辛いタレがたまりません‥‥!

工房見学や体験を終えた昼下がり、まちをうろうろしているときに見つけたのは「食と器ming」という名のお店。足つきの器に注がれたあたたかいミルクチャイや、生姜とさつまいものお団子が浮かぶ甘いスープ、湯圓(タンイェン)で心も身体もほっと一息。ショップスペースで手仕事を感じられる器や暮らしの道具に見惚れながら、ゆったり旅を振り返りました。

旅も終盤。赤城山や吾妻山などの山々に囲まれ、渡良瀬川や桐生川などの清流が流れる、自然豊かなまち、桐生。そんなまち全体を見下ろせると聞き、水道山公園へ向かいました。思った以上に険しく急な階段は、一歩進むたびに息があがり、背中に汗が滲みます。

軽い山登りのような道中、呼吸を整えるために立ち止まりふと見上げると、木々の間から差し込む光が揺れていました。ラストスパート!と気合を入れ、息切れしながら登り切り、辿り着いたその先に見えたのは夕暮れに染まる桐生のまち。ベンチに腰掛けると冷たい風が心地よく、いつまでもぼんやり眺めていたくなる景色でした。

水道山公園から、桐生のまちを一望。

公園内では幅広い年代の人が思い思いに過ごしており、とても落ち着くゆったりとした時間が流れています。日が暮れてしまう前にと少し早歩きで下る薄暗い帰り道、すれ違う方々が「こんにちは」と挨拶をしてくれました。その穏やかなやりとりが、静かに暮れていく風景と相まって、心にじんわり染み渡ります。わたしにとっての非日常と、桐生の地で暮らす人々の日常が交差するような、なんとも特別な時間を、じっと味わいました。

訪れる先々で出会ったたくさんの魅力を持ち帰るため、お土産選びにも熱が入ります。渋谷店の皆さんへは「からっ風カリン」を。紙袋を見た地元の方々に「ああそれいいね、美味しいよ」とお墨付きをいただいた地元の銘菓です(スタッフからも「人生で食べた中で一番美味しいかりんとう饅頭だった!」と大好評!)。

からっ風カリン。お店の方がリボンを結んでくださいました。

桐生の名産「花ぱん」は、友人に。桐生天満宮の梅紋をモチーフにした花の形の、素朴な甘さのおやつです。その歴史はなんと100年以上続いているのだとか!駅や土産店でいろいろな種類を見かけましたが、今回は小松屋で購入しました(ここでもお店の方が気さくに桐生のおすすめを教えてくださいました)。どちらも可愛らしい包装紙に包まれていて、紙もの好きのわたしはときめきが止まりません。

「小松屋」の文字が入った包装紙が素敵。

桐生で出会う人々は、誰もが笑顔であたたかく迎えてくれました。その土地の空気とともに、心まで包み込まれるような感覚。訪れた工房やお店で触れたすべてのものから、その地に根差し生きる人々の手のぬくもりと、土地が紡いできた暮らしの息づかいを感じることができました。

「百聞は一見にしかず」とはまさにこのこと。実際に見て、聞いて、嗅いで、触れて、味わって、五感を通して得たこの経験はわたしのなかの工芸への意識を大きく変えました。

その土地の暮らしや食べ物に触れ、実際にその地で暮らす人や、工芸を生み出す人と言葉を交わすこと。日々お店で取り扱っている工芸品には、背景にある想いや歴史がぎゅっと詰まっているんだと改めて強く認識し、奥行きが生まれて世界が広がるのを感じました。

「いろいろな場所に足を運んで、全国各地の暮らしや文化をもっと知りたい!」

桐生を旅してやりたかったことを思い出し、自分が生まれて育った国には、まだまだ知らないけれど、こんなにも面白くて魅力的なことがたくさんあるんだ!と嬉しくなりました。

まだまだ行ってみたい産地は尽きることがありませんし、これから働いていくなかでもどんどん増えていくだろう、と楽しい予感がしています。

旅を経て得た感動や気づきを、お客さまや一緒に働く仲間に伝えていくことで、日本の工芸を元気にするお手伝いが少しでもできたらなんて素敵なことだろう。旅から広がる新たな目標を胸に、帰りの電車に乗り込みました。


【産地視察支援金制度のご紹介】

中川政七商店ではスタッフが業務時間外に産地視察へ行く場合に、旅費交通費の一部を支給しています。日本各地の工芸品を毎日見ていると”もっと産地を知りたい”想いが湧いてくるという声が多く、2024年度よりこの制度を導入しました。日本各地の産地を深く知り、工芸の奥深さを体感できる貴重な機会を支援する制度です。

文:中川政七商店 渋谷店 山本結衣