【四季折々の麻】10月:ふっくらとあたたかく、上品な艶感「綿麻のコール天」

「四季折々の麻」をコンセプトに、暮らしに寄り添う麻の衣を毎月展開している中川政七商店。

麻といえば、夏のイメージ?いえいえ、実は冬のコートに春のワンピースにと、通年楽しめる素材なんです。

麻好きの人にもビギナーの人にもおすすめしたい、進化を遂げる麻の魅力とは。毎月、四季折々のアイテムとともにご紹介します。

ふっくらとあたたかく、上品な艶感「綿麻のコール天」

10月は「清秋」。残暑もようやく終わり、清く澄みわたる空に爽やかな秋を感じる月となりました。木々が色を染める景色や、遠くから聞こえる虫の声。そんな時期に着ていただけたらと、豊かな空気を吸い込んで出かけたくなるような服を、綿麻のコール天で作りました。

素材に採用したのは、綿麻の糸を使って織ったコール天生地。コール天とはいわゆるコーデュロイのことで、日本の遠州地方で作られるコーデュロイを昔からこう呼びます。手間ひまをかけて職人が手がけた、畝(うね)のふっくらとした丸みと艶が特徴です。

毎年人気で、中川政七商店でも秋の定番となっているこの生地を用いて、今シーズンは「ベスト」と「ジャケット」、「イージーパンツ」「フレアスカート」をラインアップ。いずれも着まわしやすく、寒い季節まで長く着られるアイテムを揃えました。

【10月】麻の高密度織シリーズ:

綿麻のコール天 ベスト
綿麻のコール天 ジャケット
麻の高密度織 イージーパンツ
麻の高密度織 フレアスカート

今月の「麻」生地

秋から冬まで長い時期で着られる、綿麻素材の肉厚なコール天生地。

夏のイメージが強い麻ですが、実は秋冬にもたくさん着たいおすすめの素材です。吸湿発散性があるので重ね着する場合もムレにくく、何より上品な艶感で秋冬らしい落ち着きを纏っていただけます。今回は綿が主流のコール天生地に麻を取り合わせることで、綿の肌あたりの良さと、麻ならではの軽やかで上質な質感をそなえた生地に仕上げました。

国産コーデュロイ、特に遠州のコール天は、一つひとつの工程が丁寧で手が込んでいるのが特徴です。ベースとなるのは、タオルのように糸をループ状にして織り上げたパイル織生地。そこから糸をカッティングして凸凹した畝を作り、全体の糊を洗い落とす「糊抜き」後に、「毛焼き」の作業を施していらない毛羽を落とします。こうすることで、ふっくらとやわらかで、なめらかな生地に仕上がるのです。

完成した生地は艶があるためカジュアルすぎず、上品な“大人のコール天”といった印象に。

現場では腕の良い職人さんの高齢化も進んでいて、「あと何年できるか」という話もよく出ます。ですが一方で、国産のコール天に魅力を感じた若い職人さんが後を担おうとする動きも出てきているそう。いずれにせよ、貴重な生地であることに変わりはありません。

お手入れのポイント

お洗濯はできるだけ手洗いで。脱水で洗濯機を使う際や、洗濯機の手洗いモードを使って洗濯する際は、お洋服を裏返してネットに入れてください。

また着用時や着用後に洋服ブラシを軽くかけてもらうと、毛並みが整い艶も美しくなり長持ちします。毛並みは下から上の流れになっているので、ブラシも下から上にかけてくださいね。

ひと手間かかってはしまいますが、手間をかけることで良い状態で長く着られるはず。お洋服を手入れする時間も楽しんでいただければ嬉しく思います。

きちんと感もカジュアル感も出せる、上下でバランスのとれた4アイテム

セットアップにブーツや革靴を合わせてきちんと着たり、単品アイテムにスニーカー合わせでカジュアルに着たりと、いろいろな雰囲気を作れる4アイテムをラインアップ。

色展開は、生成・カーキ・墨紺の3色で、長く着たい定番の色合いを選びました。特に生成は素材そのものの色合いのため、麻の繊維も混じり杢(もく)感があり、奥行きのある雰囲気でおすすめです。

フィット感のあるベストは、きちんとした雰囲気が出せるアイテム。ずらりと並ぶボタンも端正で、やさしくもきりりとした印象をつくる一着です。

まだコートを着るまでもない秋の日に軽く羽織りたい、ノーカラーのジャケットは、カットソーやタートルネックとも相性の良いVネックラインに仕立てました。すっきりと大人っぽくも着られますし、パーカーを中に着ればカジュアルにも。シリーズのベストと合わせて、ジャケットからチラッと見せるコーディネートも魅力的です。

イージーパンツはとにかく暖かく、秋冬にたくさん履きたい楽ちんシルエットに。シンプルなトップスと合わせてパンツの存在感を引き立てたり、ざっくりしたニットに合わせてほっこりしたコーディネートにしたりと、合わせるアイテムで印象ががらりと変わります。おしりのポケットの毛並みを横に配しているのがポイントです。

後ろの裾を少し長くとったフレアスカートは、ぐるりとどこから見てもフレアの立体感がきれいになるよう調整しました。シリーズのベストとセットアップで着ると、上下でバランスのとれたコーディネートが楽しめます。タイツやブーツを合わせ、秋冬のお出かけ服としていろんな場所へ出かけていただけたらと思います。

素材自体が呼吸をしているような、気持ちの良さがある麻のお洋服。たくさん着ると風合いが育っていくので、ぜひ着まわしながら愛用いただけると嬉しいです。

「中川政七商店の麻」シリーズ:

江戸時代に麻の商いからはじまり、300余年、麻とともに歩んできた中川政七商店。私たちだからこそ伝えられる麻の魅力を届けたいと、麻の魅力を活かして作るアパレルシリーズ「中川政七商店の麻」を展開しています。本記事ではその中でも、「四季折々の麻」をコンセプトに、毎月、その時季にぴったりな素材を選んで展開している洋服をご紹介します。

ご紹介した人:

中川政七商店 デザイナー 杉浦葉子

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【わたしの好きなもの】耳元の存在感と、軽さを両立する「YURAGU」のピアス

私にとって、小さな存在でありながら、毎日絶対に欠かすことのできない存在。それがピアスです。

20歳になったことを機にピアスホールを開けて以来、少しずつピアスを蒐集し、毎日着用しています。しばらくつけていないと塞がってしまうという心配もありますが、何よりもピアスは自分の気分を高めるために、コーディネートのひとつとして、毎日選んで着用し楽しんでいます。

耳元のアクセサリーを楽しむ時、「小さいものでは物足りないし、大きいものでは耳への負担が気になる…」という悩みを感じたことがある方も多いのではないでしょうか。私自身、何度も感じたことがあります。

そんな私の暮らしに、救世主のごとく仲間入りしてくれたのが、「YURAGU」のピアスです。

「YURAGU」は手漉きの越前和紙を使ったアクセサリーブランドで、インテリアやふすまに使われる和紙を使用し、さまざまな色、質感、形のアクセサリーを作っています。どの商品も、アクセサリー自体のボリュームはしっかりありながら、和紙だからこその軽さを実現しているのです。

はじめて着用した時は、その軽さに衝撃を受けました。軽さのあまり、ふと「落とした⁉︎」と焦って耳元を確認してしまうほど。私は普段メガネをかけることが多いので、アクセサリーとしての存在感がありながら耳への負担が少ないのは、とても嬉しいポイントです。

そしてもうひとつのお気に入りポイントは、手持ちのピアスとの相性の良さです。もともと色も形も異なる3種のセットになっていて、さまざまな組み合わせを楽しめる商品なのですが、着用してみて気付いたのは、異素材のピアスともよく合うということです。

和紙の原料をぽとっと落としたところ。水が作る自然の形は、同じものは2つとない。

「YURAGU」のアクセサリーの独特な形は、和紙の原料をぽとっと落として絵付けをする伝統的な技法から着想を得て形作られています。そんな、ただの丸ではないゆらぎのある形、そして手漉きならではのゆらぎある色合いだからこそ、素材や色の違う他のピアスともよく馴染み様々に組み合わせられるのだと感じています。

「スナ」「ペールブルー」「コーヒー」のセット

私が使っているのはピアスの3種類セットで、たくさん種類がある中から「スナ」「ペールブルー」「コーヒー」のセットを選びました。決め手は、「スナ」と「コーヒー」の唯一無二の素材感です。

「YURAGU」のピアスに使われているのは全て手漉きの越前和紙ですが、これらはなんと、砂やコーヒーの粉を一緒に混ぜ込んで漉かれているんです。手漉きで1枚ずつ作るからこそ生み出すことができるこの風合いに一目惚れしてしまいました。さらに、もう一つの「ペールブルー」も、原料の段階で染色する伝統の技法で作られているので、淡い水色でありながら美しく発色しているのが魅力的です。よく見ると紙の繊維が残っているところからも、ただの単色ピアスではない手仕事の繊細さが伝わります。

コーヒーを着用したところ

ピアスという小さなものの中に、和紙の魅力がギュギュッと詰め込まれていて、自然と愛着が湧いてきます。

毎日の装いに、素材をたのしむエッセンスをプラスしてくれた「YURAGU」のピアス。これから長く愛用して、和紙ならではの風合いの変化も楽しんでいきたいと思います。

<掲載商品>
YURAGU ピアス 3ピース

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編集担当・楠本

【わたしの好きなもの】つい手に取ってしまう「明山窯 日と月」シリーズ

ついつい手に取ってしまうお気に入りの食器はありますか?
我が家の食卓にはつい最近、ほっと落ち着く信楽焼の器が加わりました。とても使いやすく、お気に入りの食器のひとつになったのでここで紹介させてください。

たぬきの置物でも有名な信楽焼。日本六窯の一つであり古くから続く焼き物産地です。ザラザラとした土のあたたかみを感じられる陶器ならではの質感が特徴的で、手に取るとほっとする心地がします。

そんな信楽の地に江戸時代から約400年続く、老舗窯元である明山窯さん。信楽焼ならではの風合いを活かし、さまざまなものづくりをされています。
今回ご紹介する「日と月シリーズ」も明山窯さんの商品のひとつです。

上:深皿 小サイズ/左下:平皿 小サイズ/右下:深皿 豆サイズ

私が使っているのは、深皿 豆深皿 小平皿 小の3種類。
どれも、一人分を取り分けるのにちょうど使いやすいサイズ感で、さまざまな食事を大らかに受け止めてくれます。

深皿 豆サイズ

深皿の豆サイズはほうれん草のお浸しやサラダなど、ちょっとしたお総菜を入れるのにぴったり。取り皿としても使いやすく、重ねてしまえるので複数枚持っておきたくなります。
しっかり深さもあるので、煮物など汁気の多いおかずも安心してよそえるのが嬉しいポイントです。

深皿 小サイズ
深皿 小サイズ

深皿の小サイズは、両手で持つとちょうど良いくらいのサイズ感。こちらもしっかりと深さがあるので、汁気の多い煮物やスープをたっぷりと盛り付けられます。
私は、深皿の小サイズをメインのお皿にし、豆サイズで食べたい量を取り分けて使っています。

平皿 小サイズ

平皿の小サイズは、片手で楽に持てる大きさです。深さがないので料理の取り分けや、1人分のおかずを盛り付けるのにちょうどよいサイズです。お菓子をのせてティータイムにも使えます。

使いやすいサイズ感もさることながら、デザインや色味もお気に入りのポイントです。

うつわの内側にはガラス質の光沢感のある釉薬が、外側には土味を感じられるざらっとした釉薬がかかっています。信楽焼特有の、土のあたたかみを感じられる質感と表面の艶やかな釉薬のバランスがとても素敵です。

内側の釉薬はつるっとしているので、油汚れも落ちやすくにおい残りも気にならないのが嬉しいポイント。手に持つ部分がザラっとした手触りになっているので、滑ることなく取り回しも安心して行えます。

色展開は、どれも落ち着いた使いやすい色味で、自宅にある食器達ともしっくりと馴染んでくれました。明山窯さんのロゴから着想を得た日と月の和柄模様も、お料理を引き立てながらさりげなく彩ってくれます。控えめな凹凸のある模様は、釉薬のゆらぎを感じられてじっくり眺めてしまうほどお気に入りです。

実用的な使いやすさと、ついつい手に取って眺めてしまう信楽焼のあたたかみを感じる佇まい。
また違う色、サイズのうつわを食卓の一員に迎え入れようかともくろみ中です。

<掲載商品>
明山窯 日と月 深皿  豆
明山窯 日と月 深皿  小
明山窯 日と月 平皿 小

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編集担当・恒松

【わたしの好きなもの】和洋問わず盛り付けやすい「明山窯 古信楽プレート」

ごはんができた。さぁ盛り付けよう。
さてこのとき、みなさんはどのようにお皿を選んでいますか?

「その料理を一番引き立てるお皿を」
「とにかく洗いものが少なくなるように」

人それぞれ、答えがあると思います。忙しい日とそうでない日で、答えは変わってくるかもしれません。

しかしいかがでしょう。
そんななかにも、「このお皿、よく選ぶかも?」というものが、きっとひとつは思い出されるのではないでしょうか。

どんなときでも、なぜか手に取ってしまうお皿。私にとって、そんな不思議な魅力をもつお皿のひとつが明山窯さんの「古信楽プレート 角」です。

なぜ手に取ってしまうのか。
今回、この記事を書くにあたって改めて考えてみたところ、その理由は「形」と「色」にあると気づきました。

まずは「形」。お皿としては珍しいシンプルな平たい形状ですが、とにかく幅広く使えるんです。メインディッシュとして炒めものを盛り付けたり、ワンプレートとしてパンとサラダを盛り付けたり。

食後のスイーツも、古信楽プレートに置いてみると、ぴったりと落ち着きます。

こんなふうに「ごはんでもスイーツでも、いかなるものでも受け止める度量の深さ」が、私の心を無意識のうちに射止めているのだと思います。

そしてもうひとつの理由である「色」。こちらの品は、表面に白い釉薬をかけた「白釉」と、素地に緑の釉薬がまだらに入った「緑釉」の2色がラインアップされています。

「白釉」はシンプルな色合いで、食卓のほかのうつわともなじみます。と言ってもツルツルの白色ではなく、よく見ると“石ハゼ(※)”がところどころに。やきものの豊かな表情を楽しめるのも、このお皿の愛すべきところです。

※石ハゼ・・・土の中に含まれる長石が焼成時に爆(は)ぜることによって、表面に露出した状態のこと。(明山窯「古信楽プレートの品質について」より)

一方「緑釉」は、素地と釉薬のコントラストが目を惹きます。一見、少し派手で和食には合わないかも‥‥?と思ってしまいますが、色味の落ち着きがちな和食でこそ、このお皿は特別に輝きます。

形は同じでも、まったく景色が違う「白釉」と「緑釉」。

「これを盛り付けたらどうなるだろう?」とイメージしながら、お気に入りの色を選ぶのが毎回楽しみになります。普段の何気ない食事に、少しだけワクワクをプラスしてくれるのも、古信楽プレートを選びたくなる理由のひとつです。

「なにを食べるかではない。“どこで”食べるかだ。」

これは、私の大好きな三谷幸喜さん脚本のドラマ、『王様のレストラン』に登場するセリフです。古信楽プレートに盛り付けてごはんを食べるとき、私はこのセリフを思い出しながら、次のように言い換えてみるのです。

「なにを食べるかではない。“なにで”食べるかだ。」

みなさんも「なぜか手に取ってしまう使い勝手のよいお皿」のコレクションに、古信楽プレートを加えてみませんか?

<掲載商品>
【WEB限定】明山窯 古信楽プレート 角 L
【WEB限定】明山窯 古信楽プレート 角 M

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編集担当・稲田