世界中に多くの愛好家をもつ、竹の編み針

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
—— なにもなにも ちひさきものは みなうつくし
清少納言『枕草子』の151段、「うつくしきもの」の一節です。
小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。
そう、小さいものはなんでもみんな、かわいらしいのです。
日本で丁寧につくられた、小さくてかわいいものをご紹介する連載、第6回目は奈良・生駒の「竹製品」です。

小指とどっちが長い?ちいさな編み針

思わず手にとりたくなる、小指の長さほどの竹の棒。こちらは、奈良の生駒でつくられている竹の編み針です。とにかく小さい。手のひらサイズ‥‥よりもかなり小さいです。小さいけれど、もちろん実際に編むことができます。特にかぎ針のほうは指先でつまんでちょちょいと編めてしまう感じ。棒針のほうももちろん編むのに使えますが、これを両手に持って編む姿を想像すると、さすがにちょっと編みにくそうな‥‥。こちらは、編み物用のまち針としても使われているのだそうです。

いちばん奥のものは23cmの竹の編み針。比べてみると小さなものは、もはや爪楊枝のよう!手前の3点は大小のかぎ針です
いちばん奥のものは23cmの竹の編み針。比べてみると小さなものは、もはや爪楊枝のよう!手前の3点は大小のかぎ針です

厳選した日本の竹で、きめ細かくしなやかに

奈良県生駒市の北端、高山地区は茶筅や茶道具などの竹製品の生産が盛んな産地として知られています。茶道具の生産が多いなか、大正時代から竹の編み針をつくり続けてきたのが2016年に創業100年を迎えた「近畿編針株式会社」です。
竹あみ針は、昔から世界中にたくさんの愛好家を持つロングセラー商品。竹は繊維が強くて軽くしなやかで、編針には最適な素材。特に、日本で成長する竹は硬くて弾力性があり、きめの細かさや色つやも優れているのだそう。こちらでは、厳選した日本の竹を使用して質のよい竹編み針を製造しています。とはいえ、竹は産地や品種、季節によっても性質が異なるので、品質の安定した竹の編み針をつくるには、その時の竹の状態にあわせて柔軟に対応するという高い製造技術が必要なのだそう。

編み針に求められるのは一定の太さ。天然素材とはいえ、厳格にサイズを合わせます
編み針に求められるのは一定の太さ。天然素材とはいえ、厳格にサイズを合わせます
重要なのは針先の成形には熟練職人の腕がかかせません
重要なのは針先の成形には熟練職人の腕がかかせません

白く美しい、竹のきめやしなりを生かした滑らかな編み針は、天然の植物蝋で磨かれて完成します。このていねいな手仕事は、海外のニッターからも評価が高いのだそう。日本の誇りです。

編み物をするにはちょっと季節はずれ?いえいえ、今からじっくり用意して、この冬に向けてなにか作りはじめてみるのもよいのではないでしょうか。もちろん、夏らしい綿や麻の糸でレース編みなどもおすすめです。艶やかな竹に触っているだけで、涼しい気分になりそうです。

<掲載商品>
ミニ玉つき2本針
竹まち針
竹小かぎ針
チャーム用ミニ竹あみ針
白竹玉つき2本針(23cm/8号4.5mm)
白竹かぎ針(15cm/9mm、15cm/5mm)
(以上、すべて近畿編針株式会社オンラインショップ

<取材協力>
近畿編針株式会社
http://www.amibari.jp

文:杉浦葉子
写真:近畿編針株式会社、杉浦葉子

小さくても本格派、針の老舗「目細八郎兵衛商店」とつくった裁縫箱

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
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清少納言『枕草子』の151段、「うつくしきもの」の一節です。
小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。
そう、小さいものはなんでもみんな、かわいらしいのです。
日本で丁寧につくられた、小さくてかわいいものをご紹介する連載、第5回目は「裁縫箱」です。

加賀藩主の御用達、糸が通しやすい針

加賀の国・金沢で1575年(天正三年)に創業した「目細八郎兵衛商店」。成形がむずかしいとされる絹針の「目穴・目度」を、初代の八郎兵衛が試行錯誤して工夫し、糸の通しやすい良質な針をつくりあげました。この針が評判になり、加賀藩主から「めぼそ」という針の名前を授かって、針の老舗「目細八郎兵衛商店」としてこれまで430年余りの歴史を歩んできました。

その金沢の「目細八郎兵衛商店」と、 “日本の布ぬの” をコンセプトとするブランド「遊中川」がコラボレートしてつくった「小さな裁縫箱」。鹿の柄が描かれた桐箱の中に、縫い針と綿糸(黒・白)、糸切りはさみ、フェルトの針山が入っています。桐箱は、はさみや針の錆(さび)防止の効果があるといわれており保管にも安心です。

糸切りばさみは、迷子にならないように蓋裏にマグネットでくっつけて収納できます。また、内側にはられた「遊 中川」オリジナルの生地ハギレは、どんな柄がついているかお楽しみ
糸切りばさみは、迷子にならないように蓋裏にマグネットでくっつけて収納できます。また、内側にはられた「遊 中川」オリジナルの生地ハギレは、どんな柄がついているかお楽しみ
一般的なサイズの裁ちばさみと並べてみると、手のひらサイズでこんなに小さな裁縫箱。糸切りばさみも小さい!
一般的なサイズの裁ちばさみと並べてみると、手のひらサイズでこんなに小さな裁縫箱。糸切りばさみも小さい!

小学生の時は手芸クラブだった私ですが、よく出回っている携帯用のソーイングセットはなんだか頼りなくて、あまり持ち歩いたことはありません。もちろん、出先で急にボタンが取れるなんてこともなかなかないのですが、こんな裁縫箱なら持ち歩いて、ちょっとカバンから出して自慢してみたくもなります。なにより、小さくたってやっぱり道具は良いものを使いたいものですよね。気軽にお家で使うお裁縫セットとしてもおすすめの「小さな裁縫箱」でした。

<掲載商品>
小さな裁縫箱(遊中川)

<関連商品>
裁縫箱(中川政七商店)
TO&FRO SEWING SET アソート(TO&FRO)

<取材協力>
目細八郎兵衛商店
石川県金沢市安江町11番35号
076-231-6371
http://www.meboso.co.jp

文・写真:杉浦葉子

京都「清水製陶所」がつくる、貴重な陶器の菓子型

あけましておめでとうございます。さんち編集部の杉浦葉子です。
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小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。
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日本でていねいにつくられた小さくてかわいいものをご紹介する連載、第2回目は京都でつくられている「陶器の菓子型」です。

清水焼の小さな菓子型

初めて見たときは思わず、あれもこれもと買い込んでしまったかわいらしい菓子型。小さなものって、なんだかたくさん集めたくなります。
京都の世界遺産である清水寺のほど近くにある「清水製陶所」でつくられている清水焼の菓子型は、ご主人の清水永徳さんが21歳の頃お父さまから受け継ぎ、40余年つくり続けてきたもの。
菓子型というと木でできた型を思い浮かべる方も多いと思いますが、こちらは陶器製。内側にだけ釉薬がかけられていて艶があり、陶器ならではの優しい丸みのあるお干菓子ができるのが魅力です。

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お店のウインドウにひそやかに並ぶ菓子型。奥にあるのが「原型」です(原型は非売品)。このひとつの原型から石膏型を起こし、菓子型を複製していくのだそうです。「アジサイの型(奥の真ん中)は、作るの大変やったんよ」と清水さんがおっしゃるように、私も最初に一目惚れしたのはひときわ繊細なアジサイの型でした。

奥は小さな干菓子型。手にしているのはひとまわり大きな型。お店の包み紙も可愛い。
奥は小さな干菓子型。手にしているのはひとまわり大きな型。お店の包み紙も可愛い。

お店の包み紙に描かれたものと同じ、カエデの型は少し大きな型。水羊羹などに良さそうです。かつては、お盆のお供えにする大きな落雁の型や、寒天やゼリーなどの型もたくさんつくっていたそうですが、今では需要も減ってしまい、お干菓子用の小さな型でさえ、多くはつくられていないそう。こちらの「清水製陶所」でも清水さんがお1人でつくられていて、後にはつくり手が居ないとのこと。お店に並んだ菓子型も貴重なものになってきました。

「これはツツジ、これは糸巻き、これは雪輪で…」と、菓子型を指さしながら、一つひとつ薄紙でていねいに包んでくださる清水さん。きっと、それぞれの型に長年の思い入れがあるんだろうなと胸がきゅんとなりました。大変な手作業だとは思いますが、これからも菓子型をつくり続けてほしいなと思います。
清水さん、またお伺いしますね。

<取材協力>
清水製陶所
京都府京都市東山区清水3丁目336
075-561-6316

文・写真:杉浦葉子

滋賀「大與」の伝統工芸品、色とりどりの和ろうそく

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
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小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。
そう、小さいものはなんでもみんな、かわいらしいのです。
この連載では丁寧につくられた小さくてかわいいものをご紹介していきます。

色とりどりの、和ろうそく

このろうそくは、滋賀県高島郡(現高島市)で大西與一郎氏が大正3年に創業以来100余年ものあいだ和ろうそくをつくり続けてきた「大與(だいよ)」のブランドであるhitohitoのもの。こちらの和ろうそくのこだわりは100%純植物性のロウを原料としていること。伝統的工芸品にも指定されており、2010年にはあの大本山永平寺の御用達としても命じられたといいます。

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真ん中は「色ろうそく」、両端は「櫨ろうそく」。

両端の大きなろうそくは国産の櫨(はぜ)の実から搾取したロウを用いてつくられた「櫨ろうそく」。手掛けとよばれる製造技法でつくられています。手掛けとは、芯の周りに素手ですくったロウを塗り重ねては乾かすことを繰り返したもの。こうやってつくられた和ろうそくの断面を見ると、芯の周りを囲むようにいくつもの層ができているのがわかるのだそうです。職人さんが一本一本ロウを塗り重ねた証。自然な色あいやその質感、その佇まいもまた美しいですね。

そして真ん中にずらりと並んだ色とりどりで小さな「色ろうそく」は、ぬかロウでつくられたもの。お米のぬかから蝋を抽出したぬかロウは、硬くて燃焼時間が長いのが特徴。こんな小さな「色ろうそく」も、職人さんが丁寧につくった正真正銘の和ろうそく。本格派です。ススが少なくてお部屋を汚しにくい和ろうそくは、冬の贈りものやクリスマスの彩りにもおすすめ。小さくて手軽な和ろうそく、暮らしにとり入れてみませんか?

<取材協力>
和ろうそく 大與
http://warousokudaiyo.com

文・写真:杉浦葉子