連休前に揃えたいトラベルギア「TO&FRO」。羽のような軽さの秘密に迫る

突然ですが、みなさんは旅行に行く時、どのように荷づくりしていますか?

着替えや洗面道具、パスポートやデジタル機器など、ぐちゃぐちゃになりがちな荷物を整理するために収納袋やポーチを使うことは多いですが、その袋自体が意外とかさばってしまうという経験がないでしょうか。

日本三大繊維産地の一つ、石川県かほく市で誕生したトラベルギア・ブランド「TO&FRO (トゥーアンドフロー) 」のオーガナイザー (収納袋) は、薄くて丈夫、かつ重さを感じないほど軽く、一度使うとファンになる人も多いのだとか。
今回はそのオーガナイザーに隠された秘密を探ってきました。

「TO&FRO」のオーガナイザーは“軽量・コンパクト”がコンセプト。一体どれほど軽いのでしょうか?

世界に誇る、軽量織物の技術

「TO&FRO」を手がけているのは、1950年の創業以来テキスタイルの開発を続けている株式会社カジレーネ。ナイロンやポリエステルなどの合成繊維を使った長繊維 (ちょうせんい) 織物を生産していますが、なかでも「軽量織物」の分野では、業界トップクラスの実績を誇ります。世界的に有名なアウトドアブランドや大手アパレルメーカーの商品にも、実はカジレーネの生地が多数使われています。

織物だけでなく、糸加工 (カジナイロン) や編物 (カジニット) 、縫製 (カジソウイング) 、繊維機械・機械部品製造 (梶製作所) を専門とする国内外7つのグループ企業があるため、一貫した生産ができることも大きな強み。「MADE IN JAPAN, MADE IN ISHIKAWA」にこだわり、さまざまなプロダクトを生み出しています。

カジレーネのグループ企業「カジナイロン」のエントランスには「TO&FRO」の製品がずらり

何でも入れられる気軽さが魅力

今回、案内してくださったのは、「TO&FRO」のブランドマネージャーである砂山徹也さん。「TO&FRO」の名づけ親でもあります。

「『TO&FRO』は昔使われていた熟語で“行ったり来たり”という意味があるそうです。この商品と一緒に気軽に旅に出てほしい。そんな想いを込めました」

「TO&FRO」のオーガナイザーはXS、S、M、Lの4サイズ。畳んだワイシャツが折り曲がらず入るMサイズの重さはたったの26グラムと、世界最軽量 (2014年、カジレーネ調べ) を誇ります。

それまで最軽量と言われていた同じサイズの他社製品 (右) から、およそ3分の2の軽さまで軽減

SにはXSがちょうど4個、MにはSが2個、LにはM2個がぴったり入り、それぞれのサイズを組み合わせることで機能的にパッキングできるのも魅力的です。

これならカバンのなかで荷物が迷子になることもなさそうです

手のひらにおさまるサイズでパッケージされたかわいいボックスはギフトにもおすすめで、海外からの旅行客にも大人気だそうです。

人気のピンクシリーズは羽田空港店限定アイテム

何でも入れられる気軽さと便利さ、そして豊富なカラーラインナップゆえに、つい何個も揃えたくなります。おすすめの使い方などあるのでしょうか?

「SサイズやXSサイズは旅行の時だけでなく、ポーチ代わりにして普段使いされている方も多いですね。僕は子どものオムツや着替えをSサイズに入れて使っていました。出産祝いでも喜ばれると思いますよ」と砂山さん。
シーンを問わず使いやすいのも、人気の秘訣なのかもしれません。

生地の秘密は糸にあり

ここからは世界最軽量の秘密に迫ります。「TO&FRO」で使われているのは、カジレーネが誇る最軽量のオリジナル生地、「humming Bird (ハチドリ) 」。

“鳥のように自由に旅に出てほしい”という思いから誕生したこの生地は、丈夫でシワになりにくく撥水性もあるので、旅行だけでなく海やプールなどの水遊びにも便利です。

生地の要となるのは、グループ会社であるカジナイロンが生み出した糸。ナイロンやポリエステルなど、合成繊維の超極細糸を独自の技術で加工を施し、これをカジレーネで織り上げることで、オーガナイザーとしては世界最軽量の生地が誕生します。

生地の裂け防止のため「リップストップ」という特殊な織り方をしています

さらに、合成繊維でできているにも関わらず、ほんの少しだけストレッチ性もあるそうです。

「生地に使われている糸は『かさ高加工』を施しています。熱を加えながら合成繊維を引き伸ばし、一旦撚り (ねじること) を加えたものを元に戻すことで、中の繊維一本一本が縮んでかさ高になるのです。パーマをかけた毛髪のようなイメージですね。」

よく見ると、糸がすこし縮れているのがわかりますか?

生地のクオリティを決める経糸 (たていと)

先ほどの縮れた超極細糸が、どのように世界最軽量の生地になっていくのでしょうか。早速、砂山さんに工場を案内していただきました。

「TO&FRO」の製造工程で一番重要なのは、織物の縦に張り渡した「経糸」の下準備。経糸は一本でも不備があれば、生地全体のクオリティに影響を与えるため、下準備にかなりの時間をかけます。

まずは、「整経」という糸を巻き取る作業からスタート。クリールという機械から約1000本の糸を引き出し、ビームと呼ばれる大きな糸巻き棒に巻きつけていきます。

ミシンのボビンを大きくしたようなものが壁一面に。ここから糸が引き出され、一箇所に巻きつけられます
この細かい線はすべてナイロンの糸
均等な張力で伸ばしながら巻きつけていきます

約1000本もの糸が一箇所に集められた後は、磨耗や断絶を防ぐため、糸にコーティング(糊付け)を施し、最終的に織物の幅に必要な1万本以上の糸が、ビームに巻きつけられていきます。

1万本の糸がビームに巻きつけられていきます。細かすぎて見えません

今度はビームに巻きつけられた糸が絡まず一本一本まっすぐ並ぶよう、糸と糸の間に綜絖 (そうこう) と呼ばれる針のような器具を差し込んでいきます。気の遠くなるような作業です。

糸を綜絖に通しながら糸の本数もカウントしていきます
1本1本きれいに張り巡らされた経糸

地道な作業を経て、ようやく織物の下準備が完了します。ここまでの作業で数週間かかることも。そして経糸が準備できたら、ここからが「織り」の工程です。織機がある場所に移動すると、バタバタとものすごい音が。工場内では262台もの織機が休むことなく動き続けています。

ノンストップで動き続ける織機。この振動エネルギーを発電に活かすことも考えているそう

先ほどきれいに揃えられた経糸の間を横糸が通っていきます。横糸を通す動力はなんと「水」。工場の付近は地下水が豊富なことから、汲み上げた地下水をウォータージェットに利用しているそうです。

天然繊維と違い、合成繊維は水の影響を受けにくいことも、ウォータージェットを使う理由の一つ
50反 (約2500メートル) の生地であれば、2週間ほどで織り上げることができます

こうしてようやく完成‥‥ではありません。ここからは、人の目で生地に不具合がないか確認をしていきます。側から見ていると何の問題もない美しい生地に見えるのですが、プロの職人たちは一瞬で生地の具合を見極め、気になる箇所を見つけると印をつけていきます。

1枚ずつ生地を広げ、隅々まで目を凝らしてチェックしていきます

ついに出来上がった「TO&FRO」の生地。ここから協力工場の元へ運ばれて染色を施し、縫製を経て完成です。

出来上がったばかりの生地

織るまでにこんなにも時間と手間がかかるとは‥‥。オーガナイザーの生地が出来上がるまでを見せていただき、織物の魅力にすっかり引き込まれた私。

見学後に早速オーガナイザーを購入し、後日海遊びに持っていったのですが、夕立に遭ってもオーガナイザーの中身はまったく濡れていませんでいた。あらためてこの生地のクオリティの高さに驚きです。

「TO&FRO」にはオーガナイザーのほかにも、水を弾き、湿気を逃すオリジナル生地を使ったレインコートやバッグ、肌ざわり抜群のピローなど、旅に重宝しそうなアイテムが揃っています。みなさんも、旅のおともにいかがですか?

<取材協力>
株式会社カジレーネ
石川県かほく市高松ノ75−2
株式会社カジナイロン
石川県金沢市梅田町ハ48
http://toandfro.jp

<掲載商品>
ORGANIZER M (TO&FRO)

文・写真:石原藍

この記事は、2017年8月8日公開の記事を、再編集して掲載しました。連休の準備はお早めに!

鹿児島でうわさの小学4年生。郷土玩具に魅了された、はなちゃんの自由研究

小さい頃、夢中になっていたものはありますか?

私は小学生の頃、化石が大好きで考古学者を目指していたことがありました。今は文章を書く仕事をしていますが、純粋に好きなものを追い求めるこどもの姿を見るといいなぁと思います。

「さんち」では全国各地のさまざまな工芸の産地を訪ね歩いていますが、今回、郷土玩具が大好きな10歳の女の子がいる、という噂を耳にしました。

“郷土玩具”とは、昔から日本各地で作られてきた”郷土”の文化に根ざした”玩具”。だるま、木彫りの熊、こけし等も郷土玩具のひとつ。その土地の風土・文化に密接が反映されています。

小学生で郷土玩具好きなんて、めずらしいなぁと思いつつも、なぜ好きなのか?その理由を聞いてみたくなり、鹿児島まで会いに行ってきました。

きっかけは、おばあちゃんの家にあった「雉子車」

「こんにちは〜」と待ち合わせの場所にあらわれたのは、小学四年生の中岳花乃(なかだけ・はなの)ちゃん。
みんなからは「はなちゃん」と呼ばれています。

白いニット帽が似合うはなちゃん。小学校4年生の10歳です

はなちゃんがはじめて出会った郷土玩具は、古くから熊本県に伝わる「雉子車(きじぐるま)」。おばあちゃんの家にあった雉子車や手毬で遊んでいるうちに、全国各地にこのような郷土玩具があることを知ります。

雉子車を前に 「かわいいですよね〜」と嬉しそうなはなちゃん

さらに、はなちゃんが郷土玩具愛に目覚めるきっかけとなったのが、カプセルトイの「日本全国まめ郷土玩具蒐集(しゅうしゅう)」。
ミニチュアになった全国各地の郷土玩具が出てくるカプセルトイ自販機で、より多くの人に郷土玩具の魅力を知ってもらいたいという願いを込めて、中川政七商店が企画したものです。

造形物において世界屈指の水準を誇る「海洋堂」がフィギュアを手がけています

もともと小さな消しゴムやミニチュアのものを集めるのが好きだったはなちゃん。何気なく見つけたカプセルトイでしたが、いろんな郷土玩具と出会ううちに、その玩具に隠された背景が気になりはじめます。

ちなみに最初にでたのは、北海道の郷土玩具「木彫りの熊」でした
「鳩笛を吹いたら鳩が寄ってくるかな〜と思ったけど、来なかったなぁ」と、おちゃめなはなちゃん。ちなみに「鳩笛」は青森県の郷土玩具

「一つひとつの郷土玩具にはどんな意味があるんだろうと知りたくなって、学校の図書館で本を借りて読みました。そうしたら、郷土玩具には縁起物として、健康や安全の“祈り”が込められているものが多いということがわかりました」

「これは“おばけの金太”という郷土玩具で……」「この郷土玩具はこの本に載ってて……」と詳しく教えてくれるはなちゃん。「話し出したら止まらない」とお母さんもおっしゃっていました

全国さまざまな郷土玩具に詳しいはなちゃんですが、なかでも一番好きな郷土玩具は静岡県の「祝い鯛」だそう。
「二つの鯛がこう重なっているのが、“めでたい”感じがしてとても好き!めでたいのにかわいいから郷土玩具っていいなぁ」と嬉しそうに話してくれます。

静岡の郷土玩具「祝い鯛」。ミニチュア版も並べてみました

郷土玩具愛溢れる図鑑

調べるだけでは飽き足りないはなちゃんは、夏休みの自由研究も「全国の郷土玩具」を題材にすることに。研究をまとめた冊子は、なんと県の社会科作品コンクールで優良賞を受賞しました。

はなちゃんが手がけた「郷土玩具図鑑」

早速、はなちゃんがつくった図鑑を見せてもらいました。

まずは、全国各地にある郷土玩具の分布図から。北海道、東北、関東、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄と各地方に分けて、47都道府県の郷土玩具を紹介しています。

次のページからは郷土玩具を一つずつ取り上げ、その背景にあるいわれや各地の方言なども一つずつ詳しく調べてありました。

絵も細かいところまできちんと描かれていて、とても美しいです。何色も使いながら細部まで表現するのは時間がかかりそう。実際のところ、夏休みはひたすら机に向かい絵を描く毎日でしたが、小さい頃から絵を描くことが大好きだったはなちゃんにとっては「楽しくてまったく苦にならなかった」そうです。

学校の色鉛筆だと色が足りないから、と大きな色鉛筆セットも購入。使いすぎてすっかり短くなってしまった色もありますね

夏休み中には地元で鹿児島の伝統工芸「薩摩糸びな」をつくる体験があると聞き、一人でワークショップにも参加したこともありました。講師の先生にマンツーマンで指導してもらいながら、「薩摩糸びな」に使う素材や歴史についてもインタビューし、図鑑にまとめています。その行動力たるや、驚きです!

文章も写真もレイアウトもすべてはなちゃんが手がけました。編集者顔負けですね
大学や博物館でリサーチした時の様子もしっかり記録しました

そんなはなちゃんの将来の夢は?

こんなにも郷土玩具愛を表現してくれた小学生が今までにいたでしょうか。イキイキとした表情で郷土玩具について語るはなちゃんの姿に、元気をもらえそうです。

最後に、はなちゃんの将来の夢を聞いたところ「美大で絵の勉強した後、雑貨の企画プロデュースをしたい!」と答えてくれました。なんと、すでに新商品のアイデアも書き溜めているとのこと。将来が楽しみな逸材です。

10年後も郷土玩具への想いを持ち続けてくれるといいなぁ。
はなちゃんが手がけた商品が誕生する日を、今から楽しみにしています!

 

< 取材場所 >
可否館
鹿児島県鹿児島市永吉2-30-10
TEL:099-286-0678
http://coffee-kan.com/
営業時間:10:00〜20:00
定休日:第1・第3・第5水曜日
駐車場:あり

文:石原藍
写真:平井孝子、西木戸弓佳

「飛騨の匠」の技術で木の新しい可能性を引き出す、飛騨産業の家具づくり

こんにちは。ライターの石原藍です。

豊富な森林に囲まれた山の国、飛騨。
ここでは約1300年前から「飛騨の匠」と呼ばれる木工技術を持つ名工たちが、造都や寺院建設に貢献してきました。奈良の平城京や薬師寺、東大寺、世界遺産の唐招提寺など、名だたる建築物も彼らが手がけたと言われています。

時代を超え、その伝統技術を受け継いだ家具をつくっているのが、飛騨産業株式会社です。今回は創業からの歴史とともに、進化し続ける独自の技術や流行に左右されず愛され続けているデザインについて紐解いていきます。

その座り心地に多くの著名人も魅了された飛騨産業の家具

幅広い世代から愛され、憧れの家具メーカーとしても人気の高い飛騨産業の家具。数々のシリーズでグッドデザイン賞やロングライフデザイン賞を受賞するなど、高いデザイン性も人気の理由の一つです。

飛騨産業の家具といえば?と聞かれて「穂高」と答える方は、なかなかの家具通かもしれません。1969年に発売された「穂高」シリーズは、日本人の体型や暮らしに寄り添った家具として、リビングチェアだけでも60万脚を販売するほど爆発的な人気となりました。

ロングセラーとなった「穂高」シリーズ

かつての『暮しの手帖』編集長・花森安治が紙面で称賛したことでその品質の高さはさらに広まり、飛騨産業の家具は皇室御用達に。2016年の伊勢志摩サミットでは各国の首脳が使う円卓や椅子にも採用されるなど、名実ともに日本を代表する家具メーカーとして圧倒的な存在感を確立しています。

皇室に納入された家具。木は宮崎県高千穂のクリの木、座面は絹を使った京都の西陣織、塗装は国産の漆を施すなど日本の技術がつまっている

用と美を兼ね備えた「曲木」の技術

飛騨産業の家具の大きな特徴は「曲木」という技術。木材を高熱の蒸気で蒸して曲げ、独特の形状を生み出すことが可能です。

これまで木でしなやかな曲線を表現するには、大きな木材から削り出すか、部材同士を切ってつなぎ合わせるしか方法はありませんでした。しかし、それでは強度の高さは望めません。木を曲げることで丈夫で無駄がなくなり、さらに高いデザイン性も実現したのです。

曲げることで切削屑も出ず環境にやさしい

硬くて割れやすいといわれているナラの木であっても、46mmほどの厚さまでなら曲げてしまうそう。曲木を取り入れたメーカーは数多くあれど、これほどの技術は世界でも飛騨産業だけだと言われています。

木は生き物。当然折れたり割れたりすることもあるが、飛騨産業の曲木の技術では9割以上の歩留まり率を誇る

曲木を伝えた二人の旅人

では、なぜ飛騨の職人たちは曲木の技術に出会ったのでしょうか?その話は18世紀後半から19世紀前半の産業革命時代にさかのぼります。

ある時、西洋に伝わる曲木技術を学んだという二人の旅人が大坂から飛騨地方にやってきます。彼らが持つ曲木の技術に心を動かされた飛騨の若者たちは、「自分たちの『飛騨の匠』の技術が活かせるのではないか」と西洋家具メーカーの創業を決意。

これまで下駄の歯や木炭などにしか使われていなかった飛騨の豊富なブナの木を活用したいという想いもあったことから、1920年(大正9年)、現在の飛騨産業の前身である中央木工株式会社を設立します。

椅子を見たことがなかった職人たち

しかし、その頃の日本は畳の文化。ちゃぶ台や囲炉裏で生活していた職人たちは、椅子というものを見たことも使ったこともありませんでした。

「誰もつくったことがない、つまり先駆者がいないなかで職人たちが頼りにしたのは木に対する長年の経験と知識だけでした。曲木の技術は教えてもらったけど、その技術を生かして椅子にするにはかなりの試行錯誤があったと思います」
と語るのは営業企画室の森野敦(もりの あつし)さん。

「飛騨の職人たちは今でいうベンチャー気質があったのでしょうね」と、森野さん

しかも当時はまだ鉄道も通っていない時代。できあがった椅子が傷つかないよう塗装の方法もかなり苦労したそうです。2年の歳月を費やし完成したのは、飛騨の伝統技術である「春慶塗」が施された椅子。藁で包み荷馬車に乗せ、各地に出荷されました。

機械までもつくってしまう飛騨の技術

その後、飛騨産業はしばらくの間、世界で初めて曲木の椅子をつくったと言われるドイツ人・ミヒャエル・トーネット氏のスタイルを模倣した家具をつくり続けます。

やがてオリジナルの家具も手がけるようになりますが、その頃たまたま来日していたアメリカの家具バイヤーが飛騨産業の技術の高さに目をつけ、大量の椅子を受注することに。飛騨産業がこれまでつくったことのない形状のものでしたが、職人たちは、家具はもちろん、なんと家具をつくるための新しいろくろの機械まで開発してしまいます。

創業初期のカタログ(写真提供:飛騨産業)
家具の形状によってつかう道具や機械は異なる

実はこの時に開発した機械の一部は、スポーツメーカーの「ミズノ」のバット工場に送られ、今でもあのイチロー選手のバットを削っているそうです。「飛騨の匠」の技術は何でもつくりだしてしまうんですね。

家具にいちはやくデザインを取り入れる

1960年代には総生産の9割近くを海外に輸出していた飛騨産業は、オイルショックを機に国内販売へシフト。さらに当時の国内家具メーカーのなかでも他社に先駆けてデザインの分野に力を入れていきました。

1957年に創設されたグッドデザイン賞では飛騨産業の歴代の家具が受賞。国内外の有名デザイナーが手がけたデザインを飛騨産業がかたちにしたシリーズも次々と誕生し、国内外からの注目が高まっていきます。

イタリアのデザイン界の巨匠、エンツォ・マーリがデザインした「HIDA」シリーズ
トラフ設計事務所による「cobrina」シリーズ
松村勝男が手がけた「松村チェア」

傷がついてもずっと使い続けたい

飛騨産業の驚くべき点は、“10年”にわたり家具の品質を保証するというもの。この保証期間の長さも、丈夫で壊れにくいという品質の高さの表れなのかもしれません。

2代、3代にわたって大事につかうユーザーも多く、飛騨産業本社にある修理工房には全国各地から毎日多くの家具が届きます。

木のあたたかみが感じられる修理工房

なかには「傷はそのままにしておいてほしい」「子供が貼ったシールを剥がさず直してほしい」といった注文もあるそう。さまざまな要望にこたえながら完全なかたちに修理するには、相当な技術が必要です。

品質保証期間の10年が過ぎたあとも修理は有償で受付けている

現在、飛騨産業に200人ほどいる職人の中で、国が定める技能士資格を持っているのは累計192名。まさに職人一人ひとりの技術が飛騨産業の品質を支えているのです。

社内には技能検定有資格者がずらりと張り出されている
飛騨産業が運営する「職人学舎」では未来の飛騨の匠を育成

木の可能性を見つめ続ける

一方で、職人の技術に甘んじることなく会社としても常に新しい取り組みを進めています。

例えば、今まで使われなかった木の“ふし(節)”をデザインに取り込んだ「森のことば」シリーズは、本来であれば捨てられていた木の新しい価値を見出し、これまでの家具の常識を崩す画期的な商品として大きな話題となりました。

木の“ふし”がいい味を出している「森のことば」シリーズ

また、やわらかいため家具には不向きとされていたスギを使ったシリーズも次々に発表。独自の方法でスギを圧縮し、家具に耐えうる強度を実現しました。

日本の森林の大半を占めているスギが普及することで、手つかずとなっている森に手が入り、林業の活性化につながることが期待されています。

スギの圧縮材を使った「KISARAGI」シリーズは2014年グッドデザイン金賞を受賞

いつの時代も「木」と向き合い、脈々と受け継がれた技術を掛け合わせることで業界にイノベーションを起こしている飛騨産業。3年後に創業100年を控える現在も挑戦を続ける姿勢は変わることなく、常に日本の家具の未来を見据えています。

<取材協力>
飛騨産業株式会社
岐阜県高山市漆垣内町3180
0577-32-1001

文:石原藍
写真:今井駿介

当選者がついに決定!「漆琳堂×TOKYOBIKE 漆塗りエディション」贈呈式

こんにちは。ライターの石原藍です。

2017年10月12日(木)〜15日(日)、福井県鯖江市河和田 (かわだ) で工芸産地のイベント「RENEW×大日本市鯖江博覧会」を行いました。

「RENEW」は、普段は見ることのできない工房が特別に開放され、ものづくりの現場を見学・体験できる、体感型マーケット。3回目となる今年は中川政七商店が主催する、地元工芸の再評価と産地へ人を呼び込むための工芸の祭典「大日本市博覧会」とのコラボが実現し、約4万2000人もの方々に足を運んでいただきました。

注目の的だった漆塗りの自転車 

今回、「RENEW×大日本市鯖江博覧会」の公式アプリとして採用されたのが、中川政七商店が運営するウェブメディア「さんち~工芸と探訪~」のスマートフォン用アプリ「さんちの手帖」

位置情報をONにして、会場内の見どころを回ると「旅印(たびいん)」と呼ばれるオリジナルの画像を取得することができます。集めた「旅印」の数に応じてもらえる会場限定のプレゼント企画が大変好評でしたが、なかでも大きな注目を集めた景品は、「漆琳堂×TOKYOBIKE 漆塗りエディション」でした。

創業1793年から続く越前漆器の老舗・漆琳堂(しつりんどう)とスタイリッシュな自転車で人気のtokyobike(以下トーキョーバイク)が手がけたこの漆塗りの自転車は、職人の繊細な技で丁寧に塗られた逸品。今回の景品としてプレゼントされるということで、イベント開催前から大きな話題を呼んでいました。

漆塗り自転車の抽選権を得ることができるのは、会場内の見どころ83箇所のうち、80箇所分の旅印を集めた人だけ。なんと6名の方が80箇所分の旅印を集め、抽選権を獲得されました。

会場内の見どころに近づくとアプリからお知らせが届き、旅印を取得することができます

厳正なる抽選の結果、当選したのは福井県鯖江市在住の横井陽子さん。イベントにはご家族で参加し、ご主人も「さんちの手帖」アプリをダウンロードして一緒に回られたそうです。

11月某日、気持ちの良い秋晴れのなか横井さん一家にお越しいただき、漆琳堂にて贈呈式が行われました。

中央が横井さん一家。奥様のワンピースは自転車のボディ、ご主人のシャツはサドルと、それぞれ自転車のカラーに合わせてくださったそう
漆琳堂8代目であり、塗師(ぬし)の伝統工芸士でもある内田徹さんから、横井さんに漆塗りの自転車が手渡されます

実は1年以上前から自転車がほしかったという横井さんご夫妻。2人でいろいろなメーカーの自転車をくまなくチェックしていたそうです。写真からも嬉しそうな表情が伝わってきますね。

「RENEW×大日本市鯖江博覧会」を振り返る

では、ここからは横井さんに「RENEW×大日本市鯖江博覧会」に参加した感想をうかがっていきましょう。

──「RENEW×大日本市鯖江博覧会」のイベントをどこで知られたのでしょうか?

「近くでおもしろそうなイベントがあるよ」と友人に教えてもらいました。普段から鯖江で開催されるイベントには足を運んでいたので、今回もぜひ参加しようと思って。武生 (たけふ) の龍泉刃物さんから始まり、83箇所すべてを回りました。

インタビューに答える横井さん

──アプリを使ったきっかけは?

トーキョーバイクさんのレンタル自転車に試乗して、主人が「この自転車はいい!ほしい!」と気に入ったのがきっかけでした。これまで本当にたくさんの自転車をチェックしていたのですが、イメージに合うものがなかなか見つからなくて。「さんちの手帖」アプリはイベントに参加してすぐダウンロードしましたが、トーキョーバイクの自転車が当たることを知り、イベント途中から本格的に活用し始めました。

特に自転車の色が気に入ったという横井さん。漆琳堂オリジナルカラー、モスグリーンの漆が施されています

──自転車を獲得するには80箇所もの見どころを回る必要がありましたが、いかがでしたか?

「自転車がほしい!」という熱量は誰よりもあったとは思いますが….80箇所は多いですよね (笑)。でも、今まで行ったことのないお店や普段見ることのできない工房を回りながら、スタンプラリーのように「旅印集め」も楽しむことができました。

うちは子どもがいるので、大人も子どもも一緒に楽しむことができるのはよかったです。ただ回るだけだったら、80箇所はまず無理だったと思います。

あとは、見どころに関連した記事が読めるのもよかったです。もちろん漆琳堂さんの記事も読みましたよ!地元にいても伝統工芸にふれる機会は意外に少ないので、アプリを通して知るきっかけにもなりました。

見どころに立ち寄るだけでは聞けない話が記事になっているので、20~30代の方も伝統工芸に興味を持ってもらいやすいと思います。

──ズバリ、「RENEW×大日本市鯖江博覧会」の率直な感想をお願いします!

普段近くに住んでいるのに、河和田に一日中いたのは初めてだったんです。小さいお店や大きいお店、地元ならではの雰囲気を感じることができたのはとても良かったです。ちょっと離れた場所でも自転車で行くことに楽しさを感じて、全ての見どころを回ることができました。

「さんちの手帖」アプリを使ったイベントは、ほかの地域でもやっていると聞きました (「RENEW×大日本市鯖江博覧会」の1週間前には「燕三条 工場の祭典」が開催されていました) 。これからもこういうイベントがあれば、ぜひ参加したいですね!

──ありがとうございました。早くこの自転車を乗りこなして、買い物や職場にも乗って行きたいという横井さん。漆塗りの自転車で、これからのお出かけが一層楽しくなりそうですね。この度はご当選おめでとうございました!

これからたくさん乗ってくださいね!

<取材協力>
漆琳堂
福井県鯖江市西袋町701

0778-65-0630

<福井県内でのトーキョーバイク取り扱い店舗>

店舗前の自転車

サンテラボ 高柳店
〒910-0837 福井県福井市高柳1-406
TEL:0776-63-5782
営業時間:平日11:00-19:00 土日祝日10:00-19:00
定休日:無休


文:石原藍
写真:山口綾子、石原藍、RENEW

ものづくりの現場を満喫!「RENEW×大日本市鯖江博覧会」2017徹底ガイド

こんにちは。ライターの石原藍です。

2017年10月12日(木)~15日(日)の4日間にわたる工芸産地のイベント「RENEW×大日本市鯖江博覧会」が現在開催中です!

「RENEW」は、普段は見ることのできない工房が特別に開放され、ものづくりの現場を見学・体験できる、体感型マーケット。

3回目となる今年は、中川政七商店の工芸の祭典「大日本市博覧会」とのコラボが実現し、「RENEW×大日本市鯖江博覧会」が開催されることになりました。

今回は実際にものづくりの現場をめぐった初日の様子をいち早くお届けします!これから参加するという方も参考にしていただけるはず。どうぞご覧ください!

河和田に着いたらまずは「うるしの里会館」へ

「RENEW」のメイン会場となるのが、JR鯖江駅から車で約20分の場所にある河和田(かわだ)地区の「うるしの里会館」。まずはこちらで、マップを手に入れましょう。

各エリアのスケジュールが一目瞭然です

工房めぐりには「RENEW×大日本市鯖江博覧会」公式アプリ「さんちの手帖」をお忘れなく。

参加企業や工房85箇所の情報や地図機能も搭載。さらにスマートフォンの位置情報をONにしておくと、すべての箇所で「旅印 (たびいん) 」を取得することができます。

期間中に旅印をたくさん集めて「さんちの手帖ブース」に行くと、プレゼントがもらえます!
ブースはうるしの里会館の入口。アプリの使い方がわからない時もスタッフが丁寧に教えてくれますよ

*「さんちの手帖」の使い方はこちら

メイン会場となる河和田エリアは工房が集まっているので徒歩でも回れますが、レンタサイクルを利用するのも便利です。

こちらはさんちの手帖ブースの隣で受付していますので、短時間でたくさんの箇所を回りたい方はぜひ!アップダウンも少ないので走りやすいですよ。

2時間500円で利用できます

越前漆器のものづくりにふれる

最初にやってきたのは、「漆琳堂」。約1500年も続く越前漆器発祥の地、河和田のなかでも、漆琳堂は1793年の創業以来、代々「漆塗り」を手がけています。

到着すると、スマートフォンからピローンと音が。旅印を獲得できる通知が届いていました。通知画面からボタンを押すと、はじめての旅印を獲得です。ポン!という音が気持ちよくてやみつきになりそう……。

通知を逃してもアプリの「訪問した見どころ」メニューから旅印が取得できますよ

なかではちょうど、「拭き漆体験」が行われていました。

漆琳堂の塗師(ぬし)の嶋田希望(しまだ・のぞみ)さんに、漆器の歴史や技法の話を混じえながら手順を教えてもらいます
木地(漆器の下地)となるカップには欅(けやき)が使われています

木地に漆を刷り込むことで深い色合いを出す「拭き漆」。かぶれないよう、手袋でしっかりガードし、内側から漆を刷り込んでいきます

使う漆は朱・黒・生漆(きうるし)の3色から選べます

塗り残しがないよう全体に刷り込んだ後は、余分な漆を拭き取ります。こうした作業を繰り返すことで、深みが出た美しい漆器が完成します。

一度塗っただけで、すでにつやつや
完成するとこんな美しいカップに!拭き漆をしたカップは残りの工程を職人さんが仕上げ、後日発送されます

期間中のワークショップはすでに満席なのですが、工房見学は参加可能です。普段は入ることができない漆器づくりの現場を見ることができる、めったにない貴重な機会です!

漆器に埃がつかないよう、塗り部屋は毎朝の掃除が欠かせないそう
湿気によって乾く漆。そのため天気や気候にも気を遣います
パッと見るだけでは何に使うかわからない道具ですが、教えてもらうことで理解が深まります
繊細な職人の技に参加者のみなさんも釘づけです

普段何気なく使っている漆器も、完成するまでの工程を知ると一層愛着が持てるかもしれません。

工房では直営店も併設されており、「aisomo cosomo」や「お椀や うちだ」など自社ブランドの漆器を購入することもできます。

お得なアウトレットコーナーはこの時だけの開催。お見逃しなく!
漆器でつくられたオリジナルアクセサリーも大人気です

めがねのものづくりにふれる

鯖江はめがねフレームの国内製造シェア96%を誇る「めがねのまち」としても有名です。次は、デザイン性の高いめがねで人気の「opt duo」にやってきました。

赤いのぼりが参加企業・工房の目印です

こちらではopt duo製品の展示を見ることができます。なかには出来立てほやほやの新作も!スタッフの方にめがねのデザインや選び方について話を聞くこともできます。

クラシックとモードが融合した独特のデザインが人気
耳にかける部分がくるんと丸まっています。昔のめがねを彷彿とさせるデザイン
こちらはなんと老眼鏡。耳でかけるのではなくこめかみで止める独特の形状です。オシャレ!

14、15日にはめがね型の模造紙にオリジナルデザインを施すことができる、「めがねデザインワークショップ」(参加費用200円)を開催予定です。業界で活躍するデザイナーにめがねづくりのポイントを教えてもらえるチャンスです。

お子さんにもぴったりのワークショップですよ

産地発!クリエイティブカンパニーの軌跡にふれる

今度は河和田を拠点に活躍するデザインカンパニー「TSUGI」にやってきました。

TSUGIのメンバーは全員が移住者。デザインを通して持続可能な産地を目指しています

TSUGIではこれまで手掛けたデザインを展示しています。見たことがあるロゴやDMも実はTSUGIがデザインしたものかもしれません。

TSUGIがこれまで手掛けたロゴ

つくる、支える、売るまでを手がけるTSUGIでは、オリジナルプロダクトも製作、販売しています。

例えば、アクセサリーブランド「SUR」はめがねフレームの端材から生まれたもの。アセテートという環境に優しく発色性の高い素材でつくられたピアスやネックレスは人気が高く、新作は常に品薄なんですよ。

「RENEW」期間中は販売も行っています(通常TSUGIのオフィスでは販売は行っていません)
被ると注目されること間違いなしの「鯖CAP」
「ほかにもいろんなプロダクトをご用意していますよー!」とTSUGIの寺田千夏さん

ちょっと休憩するなら河和田のニュースポットで

少し小腹が減ったので、TSUGIから徒歩1分の場所にある「PARK」にも立ち寄ってみました。こちらは2017年9月にリニューアルオープンしたばかり。カフェスペース「公園食堂」では、ふわっふわのカレーパンに河和田の伝統食材・山うにを使ったスープがついたセット(500円)を販売しています。

移住者を中心につくりあげたシェアスペースは、工房、オフィス、住居、カフェなど、幅広い用途に利用できます
カレーパンは注文を受けてから揚げるのでサクサク!なかはもっちりしていて絶品でした
15日はカフェスペースで味噌づくりワークショップが行われる予定です(4000円・飲物軽食つき)

少し足を伸ばして広域へ。越前のものづくりも見所がいっぱい!

「RENEW×大日本市鯖江博覧会」では「福井クラフトツーリズム」と題して、鯖江・河和田エリアだけではなく、お隣の越前市の産地を回ることもできます。

河和田から車で約15分。やってきたのは越前和紙の産地、今立地区にある「石川製紙株式会社」です。

創業は江戸時代にさかのぼるという石川製紙。
カレンダーや便箋、インクジェット用、商品パッケージ、お酒のラベルなどさまざまな用途に使われる和紙を手掛けています。色や厚さ、風合いなど約1000種類の和紙に対応しているのだとか。

12代目社長の石川浩さんに案内していただきました
いざ、工場内へ!ドキドキします

越前和紙は手漉き、機械漉きに分けられますが、石川製紙ではすべて機械で和紙を漉いています。

楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)、パルプなどを和紙の種類に合わせて原料を仕込みます。人が入れそうなほど大きな水槽です!
石川製紙所が一日に漉く和紙はなんと1t!規模の大きさに驚きます
原料を仕込んでから和紙が漉き上がるまで約半日かかります

漉き上がった和紙はスタッフによる丁寧な検品作業を経て、問屋や印刷会社に納められます。機械のダイナミックさと、人の手による細やかさ、両方があるからこそ高い品質が保たれるんですね。

石川製紙をあとにしたあとは、付近を散策。和紙の産地も徒歩圏内でさまざまな工房をめぐることができます。もう一軒、近くの「滝製紙所」にもお邪魔しました。

こちらも歴史は古く1875年から続いています

機械漉きと手漉きを行う滝製紙所。手漉き和紙では各種襖紙や創作和紙を、機械漉きでは鳥の子和紙をはじめ、模様紙、美術小間紙をつくっています。RENEWでは14、15日に紙漉きのワークショップを開催(2000円〜 発送料込み)。厚さや大きさ、模様など、自分だけのオリジナル和紙を漉くことができます。

ワークショップは和紙の材料を攪拌するところからチャレンジ。混ぜ具合によって、和紙の手触りや風合いが変わっていきます
滝製紙所で乾燥させてから後日発送します
7代目の滝英晃(たき・ひであき)さん。笑顔が素敵です

越前市エリアではほかにも越前和紙の里や越前打刃物、越前箪笥の工房なども見学することができます。河和田エリアとは違うまち並にも注目しながら散策してみてはいかがでしょうか。

関連記事
紙の神様に会いに行く。越前和紙の里でまち歩き
世界で愛される越前発のものづくり〜各国のシェフたちが絶賛した越前打刃物のステーキナイフ〜

集めた「旅印」をさんちの手帖ブースで見せよう!

さまざまな工房をめぐり旅印の数が集まったら、再びさんちの手帖ブースに戻りましょう。

集めた「旅印」の数に応じた会場限定のプレゼントをもらうことができます (※各日数量限定)

今回もらったのは、5軒分の旅印でもらえる「中川政七商店 特製 蚊帳のふきん」。RENEW仕様の非売品です。

ふきんの写真

80軒分の旅印を集めると抽選で、tokyobike × 漆琳堂がコラボした漆塗りの自転車が当たるそう!これはほしい!

期間中は漆琳堂に展示されています。実物もうっとりするほど素敵でした

福井県内のプロダクトや中川政七商店期間限定ストアも!

「うるしの里会館」ではトークショーの開催や福井県内のデザインプロダクトを集めた特設店舗、中川政七商店限定ストアでのショッピングを楽しむことができます。

工芸品だけではなく、福井の多彩なものづくりが並ぶ福井デザインストア
なんと中川政七商店は福井県初出店!初日から買い物を楽しむ人で賑わっていました
食品や衣類、郷土玩具などさまざまな商品がずらりと勢揃い

自分用に、誰かのお土産に選んでいると、つい財布の紐がゆるんでしまいそう。工房めぐりの締めくくりにぴったりです。

工房めぐりのポイントをおさらい

いかがでしたか?最後に、これから「RENEW」に参加する方に向けて、工房めぐりのポイントをご紹介したいと思います。

◇動き出しは早めがおすすめ
初日から大盛況の「RENEW」。平日にもかかわらず、駐車場が混み合っていました。週末はさらに混雑が予想されるため、可能であれば早い時間からの来場がおすすめです。14、15日は鯖江駅からシャトルバスも運行していますので、電車でお越しの際はぜひ利用してみてください。

◇事前に回る工房をチェック
ノープランの旅もいいですが、せっかく参加するならたくさんの工房を見てもらいたいと思います。事前に「さんち」の「RENEW×大日本市鯖江博覧会」特集ページからお目当ての工房のスケジュールをチェックするとスムーズに回ることができますよ。

◇職人さんに声をかけ、質問してみる
RENEWは普段は入ることのできない工房や工場の見学や、接する機会のない職人とふれあえる貴重な機会です。好奇心をフルに高めて、ぜひ積極的に職人さんに声をかけてみてください。工房めぐりがさらに楽しくなるはずですよ。

鯖江、越前エリアのものづくりにふれ、買い物も楽しむことができる「RENEW×大日本市鯖江博覧会」は15日(日)まで!ぜひ足を運んでみてくださいね。

RENEW×大日本市鯖江博覧会

公式サイト:http://renew-fukui.com
RENEW×大日本市鯖江博覧会 公式アプリ「さんちの手帖」の使い方はこちら:https://sunchi.jp/sunchilist/renew-fukui/38070

<取材協力>
漆琳堂
鯖江市西袋町701
0778-65-0630

ホームページ


「RENEWx大日本市鯖江博覧会」漆琳堂ページ

opt duo Inc.
鯖江市北中町539
0778-65-2374
http://www.optduo.co.jp/
「RENEWx大日本市鯖江博覧会」opt duo Inc.ページ

TSUGI
鯖江市河和田町19-8
0778-65-0048

TOP


「RENEWx大日本市鯖江博覧会」TSUGIページ

PARK
鯖江市河和田町19−1−7
050-1007-6664
http://parksabae.com
「RENEWx大日本市鯖江博覧会」PARKページ

石川製紙株式会社
越前市大滝町11-13
0778-43-0330
http://www.echizenwashi.net
「RENEWx大日本市鯖江博覧会」石川製紙株式会社ページ

滝製紙所
越前市大滝町27-30
0778-43-0332

Homepage


「RENEWx大日本市鯖江博覧会」滝製紙所ページ

うるしの里会館(公式アプリ 景品交換所、福井デザインストア、中川政七商店期間限定ショップ)
鯖江市西袋町40-1-2
0778-65-2727
http://www.echizen.or.jp/
「RENEWx大日本市鯖江博覧会」うるしの里会館ページ


文・写真:石原藍

来たれ、ものづくりのまちへ。1泊2日で楽しむ鯖江の旅

こんにちは。さんち編集部です。

9月の「さんち〜工芸と探訪〜」は福井県の鯖江特集。鯖江のあちこちへお邪魔しながら、たくさんの魅力を発見中です。今日は、いよいよ10月12日から鯖江で開かれる「RENEW×大日本市鯖江博覧会」に向け、さんち編集部おすすめの、1泊2日で鯖江を楽しむプランをご紹介します。お祭りより一足先に、見どころを巡ってみましょう!


今回はこんなプランを考えてみました

1日目:ものづくりと移住のまちで漆器に親しむ

・ヨーロッパ軒:福井名物ソースカツ丼の元祖
・うるしの里会館:漆器のことを学ぶならまずここで
・漆琳堂:生まれ変わった老舗漆器工房でワークショップも楽しめる
・ataW:独時のセンスが光るセレクトショップ
・くめちゃん:移住者たちも足繁く通う河和田の社交場
・福井ゲストハウス SAMMIE’S:旅人とまちをつなぐ場所

2日目:めがねのまちと紙の神様がいる里をめぐる

・迦毘羅:84歳のマスターが腕を振るう絶品カレー
・めがねミュージアム:めがねショップで自分のぴったりのめがね探し
・味見屋:110年以上続く、なつかしくて美味しい老舗食堂
・大瀧神社:日本でも珍しい紙の神様を祀る神社
・和紙の里:越前和紙のすべてを知ることができる

では、早速行ってみましょう!


1日目:ものづくりと移住のまちで漆器に親しむ

1泊2日の鯖江旅は、JR北陸線・福井駅からスタート。1日目は越前漆器の産地、10月のイベントのメイン会場でもある鯖江市河和田 (かわだ) 地区をめぐます。河和田ではここ数年で、ものづくりを志す移住者も増えているそうですよ。

【昼】福井名物ソースカツ丼の元祖
ヨーロッパ軒

JR北陸線の福井駅に到着したら、まずは鯖江方面に向かう前に腹ごしらえ。旅先ではやっぱりその土地の名物を食べたい!というわけで向かったのは、福井駅から車で約5分の場所にある「ヨーロッパ軒」です。ここでは福井県の有名なB級グルメ、ソースカツ丼をいただくことができます。

地元の人にとっては「ソースカツ丼といえばヨーロッパ軒!」というほどおなじみの味。薄くカットした上質なモモ肉とロース肉に、100年以上前にドイツで料理の修行を重ねた初代が発案したという秘伝のタレとの相性は抜群です!おなかもいっぱいになったところで、鯖江市・河和田地区に向かいましょう!

総本店は福井駅からもアクセス良好
愛らしい牛のキャラクター。創業当時は日本で豚肉を食べる習慣があまりなく、牛肉のカツから始まりました

ヨーロッパ軒の情報はこちら

【午後】漆器のことを学ぶならまずここで
うるしの里会館

車を走らせ、到着したのは「うるしの里会館」。約1500年の歴史を持つ越前漆器の里、河和田地区の中心部にあります。館内では越前漆器の歴史や製造工程などが学べる回廊型展示スペースや、約1300点の越前漆器を展示販売するミュージアムショップ、漆をふんだんに使用した茶室「漆黒庵」、地元職人による蒔絵のパネルをはめ込んだ格天井の和室など、見所がたくさん!職人さんが実際に作業をしている様子を見学することもできます。

今回は車で向かいましたが、「RENEW×大日本市鯖江博覧会」の期間中である2017年10月14日(土)、15日(日)は、JR鯖江駅とうるしの里会館をつなぐ無料シャトルバスが運行します。JR鯖江駅は福井駅から在来線で15分ほどの距離なので、電車と組み合わせて使えば効率的に見どころを回ることができそうです。移動は電車派、の方はぜひ利用されてみては。

ミュージアムショップには様々な用途で用いられる1300点の漆器が並ぶ
ミュージアムショップには様々な用途で用いられる1300点の漆器が並ぶ
茶室「漆黒庵」。実際に利用することもできる (要問合せ)
茶室「漆黒庵」。実際に利用することもできる (要問合せ)

うるしの里会館の情報はこちら

【午後】生まれ変わった老舗漆器工房でワークショップも楽しめる
漆琳堂 (しつりんどう)

「うるしの里会館」から徒歩3分ほどの場所にあるのが、1793年の老舗、漆琳堂 (しつりんどう) の直営店。もともと顧客向けの展示場だった店舗を2016年7月、「ショップ」、「ショールーム」、「ワークショップ」、「工房見学」の機能を持つ空間にリニューアルしました。

なかではポップな色合いの漆を用いたオリジナルブランド「aisomo cosomo (アイソモ コソモ) 」、「お椀や うちだ」をはじめとした商品の販売や約1000種以上の漆器の展示のほか、「お椀の拭き漆」体験や「金継ぎ教室」も楽しめます。「RENEW×大日本市鯖江博覧会」期間中もワークショップが開催されますのでお楽しみに。

ポップなカラーが特徴のオリジナルブランド「aisomo cosomo」と「お椀や うちだ」のお椀
ポップなカラーが特徴のオリジナルブランド「aisomo cosomo」と「お椀や うちだ」のお椀
漆琳堂の女性職人が作る漆を使ったアクセサリー。今後、広く販売を予定
漆琳堂の女性職人が作る漆を使ったアクセサリー。今後、広く販売を予定

漆琳堂の情報はこちら

【午後】独時のセンスが光るセレクトショップ
ataW (アタウ)

旅の楽しみの一つが買い物、という方も多いのではないでしょうか。河和田地区の玄関口に位置するataWでは、福井でつくられたものはもちろん、国内外の作家による食器や洋服、日用品、家具、アクセサリー、デザインプロダクトなど、幅広い商品を扱っています。

見た目の美しさや機能だけでなく、作家のものづくりの考え方や手法、ストーリーなどを重視してセレクトしている商品は、普段使いできるものから、これはどんな使い方をするのだろうと想像力をかき立てるものも。一つひとつ商品を手にとってじっくり眺めたくなる、そんなお店です。

関坂漆器独自のプロダクトも。イギリスのデザイナーIndustrial Facility (インダストリアル・ファシリティ) と協働で作られた「STORE (ストア) 」は、業務用漆器の技術を活かした多目的容器

ataWの情報はこちら
>>>>関連記事 :デザインとアートの間を行き来する「ataW」

【夜】移住者たちも足繁く通う河和田の社交場
やきとり&ホルモン ファミリー居酒屋 くめちゃん

夜は地元の人たちが集う居酒屋「くめちゃん」へ。ここは地元の社交場のような場所で、河和田に移住した人たちもよく通うそうです。焼き鳥やホルモンをつつきながら座敷席で打ち上げや宴会で盛り上がるもよし、1人でカウンターに座って隣の人と語らうもよし。気さくな大将や地域の人々と言葉を交わしていると、初めて訪れても昔馴染みのような居心地の良さを感じられるはず。楽しい河和田の夜を過ごすのにぴったりのお店です。

開店早々から賑わうカウンター
開店早々から賑わうカウンター

やきとり&ホルモン ファミリー居酒屋 くめちゃんの情報はこちら

【宿】旅人とまちをつなぐ場所
福井ゲストハウス SAMMIE’S

エントランスの看板

たっぷり河和田エリアをめぐった1日目。再びJR福井駅方面へ向かいます。本日のお宿は2015年8月にオープンした「福井ゲストハウス SAMMIE’S」です。DIYでモダンに改装された空間は、初めて訪れてもどこか懐かしさが漂う雰囲気。オーナーの咲子さんに今日あった出来事を話したり、福井のおすすめ情報を聞いたりしながら、翌日の行き先を決める人も多いそうです。オーナーの人柄とまるでおばあちゃんの家に来たかのような居心地の良さに、次回もまた泊まりたくなること必至です。

宿泊者が集うリビング
宿泊者が集うリビング
福井の観光情報が豊富に揃う
福井の観光情報が豊富に揃う

福井ゲストハウスSAMMIE’Sの情報はこちら


2日目:めがねのまちと紙の神様がいる里をめぐる

【朝】84歳のマスターが腕を振るう絶品カレー
迦毘羅(かびら)

福井で朝を迎えたのならぜひ訪れてほしいのが、創業56年の歴史を持つ老舗喫茶「迦毘羅」。福井の歓楽街「片町」の入り口、大通りを1本入った路地にあり、現在84歳のマスターが半世紀以上にわたって自慢のカレーライスとコーヒーを振る舞っています。お店は朝9時から営業しているので、朝食にもぴったり。マスターがつくる「スペシャルカレー」の味に魅了され、福井県民はもとより、県外からも多くのリピーターが訪れるのだそうです。

訪問時には必ず食べたい「スペシャルカレー」 (1100円・税込) 。

【午前】めがねショップで自分のぴったりのめがね探し
めがねミュージアム

メガネオブジェ

カレーで元気をつけたら、鯖江市街地へ。鯖江ではまちのあちらこちらにめがねを見ることができます。なかでも「めがねミュージアム」はめがねショップ、体験工房、めがね博物館からなるめがね尽くしの施設。これは訪れないわけにはいきません。

ミュージアム内のめがねショップでは、福井県内のメーカー約40社が製造する3,000本以上の最新・人気フレームを展示販売。眼鏡士によるめがね選びや、視力検査、めがねのクリーニング・フィッティング・調整など、快適にめがねをかけるためのサポートが受けられます。これを機に自分にぴったりのめがねを探してみてはいかがでしょうか。

めがねミュージアムの入り口

めがねミュージアムの情報はこちら

>>>>>関連記事 :「めがね尽くしの街!鯖江にいると何から何までめがねに見える」

【お昼】110年以上続く、なつかしくて美味しい老舗食堂
味見屋

2日目のお昼は、鯖江市民に「地元のおすすめのお店」を聞くと必ず名前が挙がる「味見屋」に行ってみましょう。明治30年代から110年以上続く老舗の店内では、中華そば、オムライス、しょうゆカツ丼など定番メニューが約80種類!どれを注文しようか迷ってしまうかもしれません。なかでも毎朝手打ちされるという自家製の麺を使った中華そばにはファンも多く、お昼の時間帯には行列ができるほどの人気ぶりです。

しょうゆカツ丼(730円)も人気メニューの一つ

【午後】紙の神様が祀られる神社へ
岡太(おかもと)神社・大瀧神社

ここからは越前エリアに足を伸ばします。やってきたのは越前和紙の産地、今立地区にある岡太神社・大瀧神社。ここには越前和紙発祥のきっかけとなったお姫様、川上御前が「紙の神様」として祀られているのです。国の重要文化財にも指定されている社殿の荘厳な佇まいは、見るものを圧倒するほど素晴らしく、細かな彫刻もぜひ目を凝らして眺めたいところです。

境内入り口には大きな杉の木がそびえ立っています
緻密な彫刻は永平寺の勅使門を作り上げた宮大工、大久保勘左衛門によるもの

岡太神社・大瀧神社の情報はこちら

【午後】越前和紙のすべてを知ることができる
越前和紙の里

1泊2日の旅もいよいよ終盤です。最後に訪れたのは岡太神社・大瀧神社から車で5分ほどの場所にある「越前和紙の里」。ここでは、「和紙の里通り」を中心に、昔ながらの和紙づくりを見学できる「卯立(うだつ)の工芸館」や越前和紙の歴史を学ぶことができる「紙の文化博物館」、紙漉き体験ができる「パピルス館」など越前和紙の魅力を体感できる施設が点在しています。

3つの施設をじっくり回るためにも、ぜひ時間に余裕を持って訪れたいところ。歴史ある越前和紙に詳しくなって、旅の最後を締めくくるのはいかがでしょうか。

伝統工芸士が紙を漉く様子を見学することもできます。
パピルス館内の和紙ショップではさまざまな和紙の商品を購入することができます

和紙の里の情報はこちら
>>>>>関連記事 :「紙の神様に会いに行く。越前和紙の里でまち歩き」

旅の最後にもう一箇所立ち寄りたい方には「猫寺」で有名な御誕生寺(ごたんじょうじ)もおすすめです

越前漆器、めがね、和紙をはじめさまざまなものづくりの産地が集積している鯖江・越前エリア。今年10月に行われる「RENEW×大日本市鯖江博覧会」は、普段は公開されていない工場もその門戸をあけ、実際のものづくりの現場を見学・体験できる、まさに特別なイベントです。 (10月12日 (木) ~15日 (日) 開催) 。

ものづくりの今に触れる、驚きと発見に満ちた産地旅へ。ぜひこの機会に鯖江を訪れてみてはいかがでしょうか。

さんち 鯖江ページはこちら

撮影:石原藍、いつか床子、上田順子、小俣荘子、川内イオ
写真提供:ataW

RENEW×大日本市鯖江博覧会

RENEW×大日本市鯖江博覧会

10月12日 (木) ~15日 (日) に福井県鯖江市で「RENEW×大日本市鯖江博覧会」が開催されます。

期間中「さんち〜工芸と探訪〜」のスマートフォンアプリ「さんちの手帖」は、
「RENEW×大日本市鯖江博覧会」の公式アプリとして見どころや近くのイベント情報を配信します。

また、すべての見どころで「旅印」を集めると「漆琳堂」×「tokyobike」の自転車がもらえる企画も実施します。

多彩なコンテンツで“工芸と遊び、体感できる”イベントです。ぜひお越しください!

【開催概要】

開催名「RENEW×大日本市鯖江博覧会」
開催期間:10月12日 (木) ~15日 (日)
開場:福井県鯖江市河和田地区・その他
主催:RENEW×大日本市鯖江博覧会実行委員会

オフィシャルレセプション:10月12日 (木) 19:00~@鯖江市河和田地区内 PARK

 

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