【はたらくをはなそう】商品一課 立石哲也

広告の会社で働いた後、
第二新卒で中川政七商店に入社しました。

東京本店の販売スタッフなど、色々な経験を経て、
ふきんやバッグといった商品の生産スケジュールや品質の管理をメインに、
すこしだけ企画をしています。

「誰かのために働く。」

2011年だったと思います。
就活生だった私は、
缶コーヒーのポスターの
トミー・リー・ジョーンズの横に書かれたこのコピーを見て、
「そういう風に働く大人になりたいなあ」
と感じました。

それから社会に出て、
想像もしていなかったことが日々おこる中…
心の中にのこったこの言葉が、
ときどき力をくれています。

「誰か」は
いつもお世話になっている加工先さんでもあり、
会社のみんなでもあり、
家族でもあり、
ものづくりの先にいるお客様でもあります。

中川政七商店の「日本の工芸を元気にする!」というビジョンが、
この言葉と似ている考え方だと気付いたのは、
入社してしばらくたってからでした。

あの時、志望動機には書けませんでしたが、
この会社に魅力を感じた理由のひとつだったかもしれません。

今の仕事は、ものづくりの現場と、距離がとても近いです。
担当している商品が売れると、
「あの加工先さんと良いものがつくれたな、またお仕事をお願いできるな」
と、うれしくなります。

誰かのために働くこの会社で、
誰かのためになるものづくりを、
もっともっと、していきたいと思います。

「白黒つけない」サクラ色の碁石が誕生、その裏側にある囲碁の未来に関わる話

史上最年少、わずか10歳のプロ棋士誕生。

彗星の如くあらわれた天才少女のニュースに、日本囲碁界は年初から大いに沸きました。

2019年4月1日付でのプロ入りが決まっているのは、大阪市の小学生 仲邑菫(なかむら・すみれ)さん。

昨今の将棋ブームの火付け役となった藤井聡太さん(現・七段)のように、囲碁界を盛り上げる存在として今後の活躍が期待されています。

囲碁人気が沸騰するかもしれません
囲碁人気が沸騰するかもしれません

そうした明るいニュースがある一方で、棋士の対局に欠かせない道具、「碁石」の製造現場は今、多くの課題を抱えています。

「ハマグリ碁石」最後の産地。宮崎県日向市

高級碁石は、白石と黒石で原料が異なることをご存知でしょうか。

黒石は三重県の那智黒石。そして白い碁石の最高峰として名高いのが「ハマグリ碁石」。

黒木碁石店で、碁石の理想の形として定められている「マスターストーン」
「ハマグリ碁石」

(※ハマグリ碁石について詳細はこちら

名前の通りハマグリの貝殻を原料としており、その美しさや質感の素晴らしさで世界中の囲碁ファンに愛されている碁石です。

かつて、地元の浜で良質のハマグリが大量に採れたことから「ハマグリ碁石」の一大産地となったのが宮崎県日向市。

日向市のお倉ヶ浜
日向市のお倉ヶ浜

やがて黒石も含めて碁石の製造は日向に集約され、現在では日本で唯一、碁石の製造技術が受け継がれている地域となっています。

日向の碁石職人についてはこちら

今も碁石を作り続ける唯一の産地です
今も碁石を作り続ける唯一の産地です

今回は碁石製造の現場や業界の未来について、日向市で100年以上に渡って碁石を作り続けている黒木碁石店の5代目、黒木宏二さんにお話を伺いました。

未来に見切りをつけてしまった業界

「日向に昔は10社以上あった碁石会社ですが、今は弊社を含めて3社しか残っていません」

黒木碁石店 5代目の黒木宏二さん
黒木碁石店 5代目の黒木宏二さん

そう黒木さんが言うように、この数十年で多くの碁石会社が廃業していきました。

当面の営業は問題ないように思えても、子どもや親族に会社を継がせず、自分の代で廃業を決める同業者たち。

「未来に対して見切りをつけている」

別業界でのサラリーマンを経て家業に戻ってきた黒木さんは当初、碁石業界についてこう感じたそうです。

なぜそんな風になってしまったのか。

日向の碁石から、黒木碁石店の碁石へ

黒木さんはその要因のひとつとして、碁石の価値の低下を挙げました。

「以前は、どの会社が作った碁石もすべて“日向のハマグリ碁石”と一括りにされていました。

すると、業界として碁石の選別基準が統一されていないため、同じハマグリ碁石であっても製造元によって品質にバラつきが出てしまいます。

作っている側としても、努力していいものを作っても自分たちの評価に直結しないので張り合いがない。ともすれば、低品質のものを納める会社もあったかもしれません」

黒木さん

購入する側は同じ「日向のハマグリ碁石」と認識して買い求めているのに、実は品質にバラつきがあるとなれば不信感が生まれます。

また、組合を作って共通の販売価格を定めていても、勝手に値下げして販売する会社があらわれてしまう。

結果、値段の下げ合いが起こり、碁石の価値も下がる一方。そんな負の循環が発生してしまったのだとか。

そこで黒木碁石店では、黒木さんのお兄さんである4代目の時、「黒木碁石店のハマグリ碁石」をブランド化すべく舵を切りました。

黒木碁石店の名前をしっかりと記載する

まず、それまで紙の箱だったパッケージを桐箱に変更し、黒木碁石店の名前もしっかりと印字。碁石の規格などもシール貼りではなくひとつひとつ箱に刻印して高級感を出しました。

紙の箱から桐箱に変更
紙の箱から桐箱に変更

さらに「ナンバリング碁石」と呼ぶ、ブラックライトを照射すると独自の管理番号が浮かび上がる仕組みも導入。

ナンバリング=黒木碁石店の正規品の証として、品質管理と保証体制を強化しました。

ナンバリング碁石
ナンバリング碁石

黒木碁石店のハマグリ碁石であれば一定の基準でいつでも安心して選んでもらえるように、仕組みを整えていったわけです。

考えてみれば、碁石は1セット数万円〜数十万円もする高級品。こうした取り組みは当然にも思えますが、これまで業界では誰もおこなっていませんでした。

「今は海外のお客様が多いので、いかに外国人の方々に価値を見出してもらえるかを考えました。

数十万円もするのに紙の箱では嫌だとか、そういった声に応えていったかたちです。

ナンバリングにしても、ひとつひとつに手間を掛けているというメッセージでもあります」

価値を理解してもらい、安売りせずとも購入してもらえるように。そうして体制を整えた上で、適正な価格への値上げも実施したそうです。

向かって左が日向産のハマグリ。右はメキシコ産
向かって左が日向産のハマグリ。右はメキシコ産

現在、ハマグリの原料はメキシコから輸入しています。

海外からの仕入れとなるとどうしても数千万円単位の金額が動くため、リスクも大きくなります。

仕入れたハマグリの価値を高めるためには手間暇をかけた丁寧なものづくりが必要で、そうしないと碁石作りは成り立たないのだと黒木さんは言います。

新たな価値を生んだカラー碁石「さくらご」

碁石は厚みによって価値が変わるほか、傷の有無や縞目模様の状態によってグレードが分けられます。

かと言って、細かくグレード分けして品質の低いものまで商品化すると、結果的にブランド全体が下の価値に引っ張られてしまう。

「そこでブルーラベルという規格を立ち上げました。厳選品の碁石を1級品として、そこまでではない言わば1.5級品だけど、黒木碁石店の碁石として世に出せるもの。

ブランド価値は守りつつ、その中で差分はきちんと伝えた上でご理解いただき、買いやすい価格でご提供する。そういう位置付けの規格です」

ブルーラベルの碁石
ブルーラベルの碁石

このブルーラベルの基準に達しなかった碁石たちは、着色しておはじきとして販売されたり、一部がストラップなどに再加工されたり、それ以外はストックとして倉庫に眠ったままになっていました。

原料のハマグリがいつでも潤沢に手に入る状況ではない中で、この規格外品の取り扱いも長年課題になっていたそうです。

低いグレードで販売するとハマグリ碁石の価値を毀損しかねないし、全ておはじきにしてお土産価格で販売するのではビジネスとして厳しいものがある。

そこで生まれた商品が、碁石を桜色と若草色に着色したカラー碁石「さくらご」です。

さくらご
さくらご

「今ある資源を利用していかに新しい価値観を提供できるのか。海外のお客様に対してどう訴求できるのか。という発想ではじまった商品です」

中国に出張に行く際、空港で目にする免税店。ある時そこに南部鉄器の茶瓶が置かれているのを見た黒木さんは、

「中国は茶の文化があるから、茶瓶も売れるのだろうか。だとすれば、囲碁の文化があるんだから、碁石も売れるかもしれない」と思いつきました。

ただし、大きな碁盤を含めた本格的なセットや、数万円もする碁石を空港で買うとは考えづらい。

さくらご
さくらご

免税店で気軽に並べられる大きさのセットで、和的な要素を集めたコンセプチュアルな商品で、と考えていった末に行き着いたのが「さくらご」でした。

規格から外れた碁石を日本らしい色に着色し、入れ物は茶筒型に。そこに初心者指導に使える9路盤の布をセットにして販売。

すると海外からの反響は勿論、国内では囲碁のプロ棋士や指導者、さらに囲碁にまったく興味がなかった人たちにも興味を持たれ、ヒット商品になりました。

子どものプレゼントに買ってみようと検討する人も多かったそうです。

規格外品とはいえ原料は同じハマグリを使っており、仕上げも丁寧におこなわれているため、打ち心地は本格的。

最後は人の目で厳しい品質チェックを行う
碁石は人の目で厳しい品質チェックを行い、選別する

ハマグリ碁石の価値を下げずに、囲碁の間口を広げる商品になりました。

分業制が崩れてしまう前に

自社製品のブランド化や、さくらごの発売など、着実に成果を上げているように見える黒木碁石店の取り組み。

しかし、まだまだ課題は山積みです。

「碁石作りは、原料の採取から加工、販売まで分業で成り立ってきた世界ですが、そのサプライチェーンが崩れつつあります。たとえば、那智黒石は原料自体はまだありますが、それを採掘して円柱状にくり抜いてくれる職人さんが減っています」

焼き物の世界でも、型屋さんの廃業によって器が焼けなくなり、窯元も廃業してしまうといったことが起きています。究極的には、自社ですべての工程を賄う必要が出てくるわけですが、簡単なことではありません。

「サプライチェーンを維持するには、商品が売れないときでも一定の発注を確保して買い支えることが必要になってきます。それには、碁石だけをやっていたのでは難しいでしょう」

「はまぐり碁石の里」
囲碁に関する『学び』と『食』の発信基地として営業している「はまぐり碁石の里」

黒木碁石店の母体であるミツイシ株式会社では、碁石以外の事業もおこなっています。

「違う事業部で収益基盤を作って、碁石産業をきちんと残していく余剰を作れないだろうか。常に複合的な中で存続の道を探っています」

100年先の人たちへ。資源と技術の継承

ハマグリ碁石の産業を次世代へ繋ぐために、原料の確保と職人の育成は急務。

原料については現状メキシコからの輸入に頼っていますが、この先も安定して入ってくるとは限らない状況です。現に、メキシコ政府から制限がかかり、数年にわたって輸入が止まってしまったこともあるのだとか。

また、この100年の間に絶滅状態になってしまった地元 日向産のハマグリについては、復活の道は厳しいとのこと。

かつて、ハマグリが浜一面に打ちあがっていた「お倉ヶ浜」
かつて、ハマグリが浜一面に打ちあがっていた「お倉ヶ浜」

「人が十数年立ち入らずにハマグリを育てられる環境を用意できれば、いつかはまた増やせるかもしれませんが、我々が生きている間には難しいだろうと思っています。

ただし、100年先の人たちへ資源を繋ぐことを考えると、何かその道筋は立てておきたい。その方法は常に考えています」

現在、黒木碁石店で碁石作りをしている職人さんは4名。

もっとも若い方で53歳。しかし、現状ではまだ若い作り手の募集はかけていないそうです。

「積極的に人を採用するにはまだ体制が不十分であると思っています」

と、黒木さん。もっとも、業界に未来を感じていないわけではありません。

「心の面と、待遇の面。この両面が揃ってはじめて、ぜひうちで働きませんかと言えるんだろうなと思います。

その確信が持てるまで、まだあと少しもがいてみないと、というのが正直な気持ちです。今の職人さんたちがいるうちに、時代にあった答えを見つけられれば」

下鶴さん
碁石職人 下鶴美文(しもづる よしふみ)さん
碁石職人の和田さん
碁石職人の和田さん

心に関しては、外部からの目に見える評価が職人のやりがいにつながると考え、伝統工芸士への認定を県や市に働きかけました。

「やはりお金に変えがたい一生の称号ですし、励みになるんだと思います。

この会社で働けば楽しい、夢がある、自信を持ってそう言える体制を整えてから、積極的な採用活動をするつもりです。

そのために、正しい姿勢でものづくりを続けて、黒木碁石店としてのブランド力を引き続き高めていきます」

ミツイシ株式会社の経営理念
会社の経営理念

原料の枯渇や職人の後継者問題、業界全体の活性化など、たくさんの課題があり、いずれも向き合うのに時間がかかる上、自分たちだけでは解決できない問題も含まれています。

それでも悲観的にはならず、とにかくやってみて、前向きにもがいてみる。それが一番の近道であると、黒木さんは確信しているようでした。

黒木さん

日向のハマグリが採れなくなった40年前、なんの情報もない中で、黒木碁石店の3代目は海外に原料を見出し、ハマグリ碁石の産業をつなぎました。

「そんな先人の苦労を思えば、やってやれないことはないんだろうなと思っています」

<取材協力>
黒木碁石店(ミツイシ株式会社)
http://www.kurokigoishi.co.jp/

文:白石雄太
写真:高比良有城

コンマ数ミリが価値を分ける。日本にわずか数人、石の声を聞く職人たち

ハマグリの貝殻から作られる美しい碁石。

宮崎県日向市は、世界中の囲碁ファンから愛される白い碁石の最高峰「ハマグリ碁石」を作り続けている唯一の地域です。

ハマグリ碁石
碁石の最高峰「ハマグリ碁石」

世界でここにしか残っていない技術を守り、最高品質の碁石を追求し続ける。

そんな碁石職人の現場を訪ねました。

最低でも5年。碁石の「山」を作るのが難しい

「碁石の綺麗な“山の形”を作るのが本当に難しい。自分でできるようになるまで、最低でも5年はかかります」

そう話すのは、日向市で100年に渡ってハマグリ碁石を製造してきた老舗 黒木碁石店の下鶴美文(しもづる よしふみ)さん。

宮崎県の伝統工芸士にも認定されている碁石職人です。

黒木碁石店の碁石職人 下鶴美文(しもづる よしふみ)さん
黒木碁石店の碁石職人 下鶴美文(しもづる よしふみ)さん

20以上の細かい工程を経て作られるハマグリ碁石ですが、大きな製造の流れは以下のようになります。

「くり抜き」:原料となる貝から碁石に使用する部分をくり抜く

「厚み選別」:原料の厚みを測定して選別する

「面摺り(めんずり)」:厚みを揃えた原料を砥石で削って碁石の形に整えていく

「サラシ」:天日干しをして汚れや黄ばみを取る

「樽磨き」:砥石で削った後も残る細かい凹凸を研磨する

「選別」:磨き上がった碁石を人の目で選別する

この中でも特に難しく、高い技量を要するのが、原料を削って碁石独特の美しい曲面を作っていく「面摺り(めんずり)」。

下鶴さんの言う、「山の形を作る」工程です。

碁石を削る専用の機械
碁石を削る専用の機械。茶色い円盤型の砥石で削っていく

ハマグリ碁石作りでは、専用の機械にセットされた円盤型の砥石を使い、片面ずつ貝を削っていきます。ただし、砥石が真っ平らな状態では碁石独特の丸みを作ることができません。

そこで、作りたい碁石の形に合わせて砥石自体をあらかじめ加工しておきます。実はこの作業が碁石作りにおいてもっとも難しいのだとか。

下鶴さんは、ドレッサーと呼ばれる道具を3種類使い分けて砥石を加工していました。

下鶴さんが、砥石を削るために使う3種類のドレッサー
下鶴さんが、砥石を削るために使う3種類のドレッサー

1本目のドレッサーで大まかに形を作り、2本目で整える。そして3本目にもっとも硬いダイヤモンドドレッサーを使って砥石の表面を滑らかにしていく。

そうして仕上げた砥石で削ることで、碁石の表面もつるつると滑らかな手触りとなり、美しく仕上がるそうです。

ドレッサーを回転する砥石に当てて、形を作っていく
ドレッサーを回転する砥石に当てて、形を作っていく

石の声を聞く

碁石は、コンマ数ミリの厚みごとに細かく「号数」が分かれていて、それぞれ理想の山の形が異なります。

黒木碁石店で、碁石の理想の形として定められている「マスターストーン」
黒木碁石店で、碁石の理想の形として定められている「マスターストーン」

そのため、碁石の号数に合わせて砥石も加工する必要が出てきます。

いざ碁石を削る際も、号数によって削る時間や当てる位置などが微妙に異なるそう。さらに、砥石は使ううちにだんだんと切れ味が鈍くなってくるため、1日に数回、砥石の研ぎ直しも必要です。

加工した砥石に当てて、碁石を削っていく
加工した砥石に当てて、碁石を削っていく

「職人の世界では、先輩の仕事を“見て盗め”と言ったりもしますが、碁石作りは無理でしょうね。

誰かがそばについてやり方を教えなければ、できるようにならないと思います」

確かに。どうすれば習熟できるのかすら、素人には想像できない世界です。

両面を削り終わった後には「端引き(はびき)」という、碁石の“耳”の部分のわずかな角を滑らかにする工程も。

下鶴さんが形を整えた碁石を受け取り、「端引き(はびき)」作業をおこなっていた職人さん
下鶴さんが形を整えた碁石を受け取り、「端引き(はびき)」作業をおこなっていた黒木碁石店の和田さん

専用の砥石に溝を掘り、その溝に碁石を当てて削る作業で、こちらもやはり、砥石の加工そのものが非常に難しいとのこと。

全ての碁石を厳密にチェックし、こうした状態のものは規格外品となる
全ての碁石を厳密にチェックし、こうした状態のものは規格外品となる

碁石を削る砥石も、その砥石を削る道具も、石。

碁石を通じて心が通じ合うことから、「囲碁」の別名を「手談」と言いますが、碁石作りもまた、石との対話であるといいます。

「慣れれば自分の感覚で作れるようになりますよ」

下鶴さん

下鶴さんは笑いながらそう言いますが、慣れるまでに最低でも5年。

碁石職人になりたいとやってきても、途中で辞めてしまう人が大半という険しい道のりです。

失われつつある「手摺り」の技術

なぜ、そこまで精度にこだわって碁石作りをするのでしょうか。

碁石は厚みがあるほど価値が高くなり、わずかコンマ数ミリの違いで価格にして数十万、場合によっては数百万円の差が出てしまうことも。

必然的に、その原料から作ることのできる最大の厚みで碁石を仕上げることが重要になってきます。

特に、もっとも希少で価値の高い“日向産”のハマグリを使う場合は、コンマ1ミリよりももっと細かい単位で、ぎりぎりまで厚みを調整する必要がありました。

日向産のハマグリは、ひとつの貝から一箇所しかくり抜けない
日向産のハマグリは、ひとつの貝から一箇所しかくり抜けない

そんな時に使われていた、ハマグリ碁石職人 伝統の技が「手摺り」です。

手摺りの道具
手摺りの道具

碁石のサイズに応じた溝を掘った砥石と、貝を固定する「貝棒」という独特な道具。この二つを使って手動で碁石を削る方法で、非常に高い熟練の技と経験を要しました。

貝棒に原料をセットして砥石に当てていく
貝棒に原料をセットして砥石に当てていく

実はこの「手摺り」、工場見学などがあった際に、こんな風にやっていましたと披露することはあっても、実際の碁石作りの中で使われることはもうほとんどありません。

なぜなら、日向産のハマグリ自体が採れなくなってしまったから。

現在、流通しているハマグリ碁石は、メキシコ産のハマグリを輸入して加工したものが大半を占めています。

向かって左が日向産のハマグリ。右はメキシコ産
向かって左が日向産のハマグリ。右はメキシコ産

手摺りによって究極まで精度を高めても、メキシコ産のハマグリではどうしても採算が合いません。そうして、「手摺り」の技術も失われつつあります。

機械摺りでも伝統工芸士

黒木碁石店 5代目の黒木宏二さんは、今の機械摺りの技術も手摺り同様に素晴らしいものだと話します。

黒木碁石店 5代目の黒木宏二さん
黒木碁石店 5代目の黒木宏二さん

「かつては手摺りの技巧において、ハマグリ碁石職人が伝統工芸士と認められていました。

しかし、機械を使うようになったからといって、職人さんの価値が下がるわけではありません。その技術や経験は、依然としてハマグリ碁石作りに必要不可欠なものです。

そうしたことを、県や市に伝え続けたことで、昨年、下鶴さんなど数名の職人さんも、伝統工芸士と認めていただけました」

それが仕事として成り立たなくなっている以上、手摺りの技術を継承していくのは難しい状況です。

しかし、もっとも大切なことは、ハマグリ碁石という産業が存続し、世界で愛され続けること。そのために今の状態で何ができるかが重要だと、黒木さんたちは考えています。

人の手が入るからこそ残り続ける価値

「サラシ」工程。黒木碁石店では原料の段階で一度、削った後の状態をみて再度行う
「サラシ」工程。黒木碁石店では原料の段階で一度、削った後の状態をみて再度行う
樽磨き用の樽
樽磨き用の樽
最後は人の目で厳しい品質チェックを行う
最後は人の目で厳しい品質チェックを行う

いくつかの工程で機械が導入されてはいるものの、原料の選定から途中の加工、最終的なグレードの選別まで、全ての段階に人の手が入って作られる黒木碁石店のハマグリ碁石。

「機械で自動にできるものじゃないから、ここまで続いているんだろうと思います」と下鶴さん。

小さい碁石ひとつひとつに技術とノウハウを詰め込んで手作りするからこそ、価値が認められ、ハマグリ碁石は日向の地に残り続けています。

「黒木碁石店の碁石は全世界で通用します。それが誇らしい。

何より、自分が作った碁石が売れるとやっぱり嬉しいですね。大事に使ってもらえればありがたいと思います」

下鶴さん

自分が作っているものが、最高品質であると世界にも認められている。その誇りを胸に、日本にわずか数人のハマグリ碁石職人たちは、今日も碁石を作り続けています。

ハマグリ碁石の文化・産業がこの先100年続くために。老舗碁石店の挑戦についてはこちらの記事をどうぞ。
「白黒つけない」サクラ色の碁石が誕生、その裏側にある囲碁の未来に関わる話

<取材協力>
黒木碁石店(ミツイシ株式会社)
http://www.kurokigoishi.co.jp/

文:白石雄太
写真:高比良有城

【わたしの好きなもの】麻之実油のリップクリーム/スキンバーム

 

乾いたくちびるに、理想のリップクリーム 

社会人になってから、くちびるの乾燥が気になるようになりました。
 
これまでは、あまり乾燥や肌荒れに悩まされることのなかった私ですが、今年で25歳。「お肌の曲がり角」と言われる年齢に。
 
くちびるがカサカサひりひりしていると、常にプチストレスなんですよね。お客様とお話しするときも頭の片隅で気になっていたり、大きく口を開けて笑ったときに口の端が切れるのを感じたり。  
 
疲れがたまっているのかなと、早く寝るよう心がけ、サプリメントを飲んでみても効果はイマイチ。もしかしたらリップクリームや口紅が原因かも?と思い始めてから、私のリップクリーム探しの日々が始まりました。
 
今までは何も考えずに薬局で一番安いものを買ったり、時には100円ショップのものを使ったりしていたので、なにが良くてなにが悪いのか、てんで分かりません。
 
いろいろ試してみてもなかなかしっくりくるものは見つからず、「もうだめだ・・・、わたしのくちびるは一生カサカサのままなのか・・・?」と思い始めた頃、『麻之実油のリップクリーム』に出会いました。
 
最初は「リップクリームに1,800円・・・」となかなか勇気が出なかったのですが、「最後の手段!」と使ってみたら、これがとってもいい買い物でした。
 


まず、しっかり保湿してくれるのにべたつかない。くちびるがぺたぺたしてるとついなめてしまうのですが(たぶん乾燥の大きな原因はこのクセのせい・・・)、このリップクリームなら大丈夫。つけた瞬間から馴染んで、しっとりふっくらしたくちびるにしてくれるのです。

すっとひと塗りすれば一枚の膜をはったように潤って、上から口紅をつけてもそのまま。夜つければ朝までしっとり。皮がむけることもなくなりました。
 
さらに伸びがいいので意外と長持ち。人生で初めて、リップクリームを最後まで使い切りました。安いものをしょっちゅう失くしていた昔よりずっと経済的かも(これはわたしの性格の問題もありますが。笑)。
 

スキンバームは全身に使える優れもの


そしてあとから発売された『麻之実油のスキンバーム』も、きっといいに違いないと確信を持って購入。こちらはくちびるはもちろん、爪や手、髪など全身に使える優れもの。
 
バームを指に取り、くちびるにサッと塗ったあと、爪の保湿まで済ませています。爽やかな植物の香りに癒されます。

薄くてかさばらないので、いつでもポーチに入れていて、旅先でもこれひとつあればなんとかなると思わせてくれる心強い存在です。

 

麻之実油シリーズは、ほとんどが天然由来成分で出来ていて、合成保存料なども不使用。安心して使えるのも嬉しいポイント。  
 
もうこれらなしの生活は考えられません。 

中川政七商店 仙台エスパル店 白石
 

子どもが「豆皿」で好き嫌いを克服した話

3歳になった息子がかわいい。

子どもの成長は本当に早いと実感する今日この頃。最近では随分と自己主張が激しくなってきた。

なにかを表現したい気持ちの強さと、まだまだ乏しい語彙力とのアンバランスさにもがいているようで、とにかく体全体でアピールをする。

思い通りにならないことがあると膝から崩れ落ち、うつむきながら「残念になっちゃった」というのがお決まり。ちゃっかりクッションのあるところに移動してから崩れ落ちるのが愛らしい。

子どもの好き嫌いにどう対応するか

そんな息子だが、自己主張とともに段々と食べ物の好き嫌いも増えてきた。

好きなものばかり食べていては栄養も偏ってしまうし、せっかく作ったものを食べてくれないと、親としてもストレスが溜まる。

さて、どうしたものか。

バナナジュースが大好物な息子
バナナジュースが大好物

よくよく観察していると、ある日は喜んで食べていたものでも、別の日にはまったく食べない、ということがある。気分の問題かと思ったが、どうやら食べ物の組み合わせによって変わっているよう。

これは、好き嫌いというより、“好き”の中にかなり濃淡があるんだと気づく。

好きなものが2つ並んだ時に、より好きな方でお腹を満たしたいので、そちらばかり食べてしまう。好きか嫌いかの2択でしか表現できないから、こっちは(相対的に)嫌い、ということを言っている。

つまり、単体で考えたとき、純粋に嫌いなものはそんなに多くないのではないか。

なるほど。それなら、うまくすれば色々と食べてくれそうな気がする。

豆皿に小分け作戦で、バランスよく食べさせる

ということで、我が家で実践しているのが、豆皿に小分け作戦。

おかずを小分けにして豆皿に盛り付ける
おかずを小分けにして豆皿に盛り付ける

文字通り、家にある豆皿を使って色々な食べ物を小分けにして出す。品数も増えるし、見た目にも華やかになって息子もなにやら嬉しそう。

なにやら豪華な雰囲気に
なにやら豪華な雰囲気に

とは言ってもそれだけで問題は解決せず、当然、一番好きなものを真っ先に食べて「おかわり」を要求してくる。

奥に好きなもの、手前にやや苦手なものを配置
奥に好きなもの、手前にやや苦手なものを配置

迷わず大好物のトマトから!
迷わず大好物のトマトから!

まずは粘り強く、「他のものも食べてからね」と言って促してあげるのがポイントだ。

「やだ、おかわり」
「他も食べてから」
「えー、おかわり」
「大丈夫。食べられるよ」

何度か押し問答をしていると、次第に「これくらいならいけるかも?」といった感じで残りの品にも手をつけ始める。

一品食べるたびにお皿が綺麗になっていくので達成感があるのだろうか、少し誇らしげな表情になることも。

しばし、ナポリタンに集中
主食のナポリタンもしっかり食べる

調子が出てきたところで「お皿を持って食べてみたら?」と言ってみると、親の見よう見まねでしっかり手に持って食べてくれた。

子どもの手にぴったりで持ちやすいらしい
子どもの手にぴったりで持ちやすいらしい

豆皿を手に持って食べる

陶磁器の豆皿は、子どもの手におさまるサイズで適度に重さもあって持ちやすい。はじめてうつわを持って食べる練習にも最適だと思う。

それにしても、本人は事もなげにやっているが、こちらはその成長の早さに驚かされていちいち感動してしまう。大きくなったもんだ‥‥。

豆皿を使うその他のメリット

小分けにするメリットは他にもある。

料理同士が混ざらないので、「このお皿はサラダ」「こっちはトマト」という風にそれぞれの料理をはっきり認識して食べるようになった。おかげで、何が好きで嫌いなのか、こちらも判断しやすくなった。

大人と同じ焼き物のうつわを使っていることも、本人にとっては嬉しいことなのかもしれない。

苦手なほうれん草にも果敢に挑戦する息子を見た妻いわく「自分のうつわだと認識して責任感のようなものが芽生えているのかも」とのこと。

ほうれん草は本当に苦手
ほうれん草は本当に苦手

実際にどう感じているかは本人にしか分からないが、いつもより頑張って色々と食べてくれることは確か。

それでも、どうしても食べられないものは出てくる。そんな時は無理をせず、また次回、色々な組み合わせを試しながら、ちょっとずつ苦手意識を減らしていければよいかなと夫婦で話している。

幼児食以外に、我が家では離乳食を入れるうつわとしても豆皿を重宝していた。縁起のよい柄のものが多いので、たとえば自宅でのお食い初めに使っても雰囲気が出ると思う。

陶磁器は傷や汚れがつきにくいので、丁寧に使えば子どもが生まれた時から何年も活躍してくれる。もちろん、プラスチックなどと比較して、落とした時に割れやすいリスクはあるけれど、そこも踏まえて、ものを丁寧に扱うことを教えてあげるよい機会になるはず。

有田焼の老舗窯元と中川政七商店が作った染付の豆皿
今回使用した、有田焼 染付の豆皿(鶴/鹿/松/梅/竹)。各1,300円(税抜)。購入はこちら

うつわの形やデザインが好奇心を刺激する

「なんで形が違うの?」「これはなんの絵?」

今回、形・絵柄が異なる5つの豆皿を使ってみたところ、食べ終わってからも色々と気になる様子だった。

なにか描いてあるね
なにか描いてあるね

食べたら絵柄が見えました

もう少し大きくなれば、素材や産地、作っている人たちのことにまで興味をもってくれるかもしれない。

その先に、窯元や産地の個性、職人の手仕事など語ってあげられる“背景”があることで、学びにもつながるし、大人も楽しめる。

様々な形や色、デザインがあり、気軽に購入できる豆皿は、子どものうつわ始めとしてもうってつけ。

日常で使う道具をきっかけに、様々なことに自然と興味を持ってくれれば嬉しい。かわいい息子と豆皿の組み合わせを眺めながら、そんなことを考えている。

どうしても食べられなかったきゅうり。次は頑張ろう
どうしても食べられなかったきゅうり。次は頑張ろう

<掲載商品>
有田焼 染付の豆皿

文・写真:白石雄太

【はたらくをはなそう】日本市店長 村田あゆみ

村田あゆみ
(日本市 羽田空港第2ターミナル店 店長)

2014年 入社 新卒7期生
日本市 羽田空港第2ターミナル店 配属
2015年 日本市 東京スカイツリータウン・ソラマチ店 店長
2018年 日本市 羽田空港第2ターミナル店 店長

幼い頃から、絵を描いたり、工作をしたりすることが好きで、
毎日ひたすら何かをつくっていた私には、
想像もつかなかった「店長」というお仕事。

一見繋がりがないように思えますが、
どちらも「表現する」ことに変わりはありません。

天気も違えば、お客さまも違う、
1日として同じ日がない店内をよくよく観察し、
お店のあるべき姿を考え抜く。
そこで思い付いたアイデアを、売場全体の演出や言葉に落とし込み
表現していくことにやりがいを感じています。

お店は1人ではつくることができないので、
一緒に働くスタッフのアイデアもとても重要。
どんな空間にしたい?
どんな言葉を使って商品の魅力を伝えようか?
毎日まるで、展覧会を開いているかのような気持ちです。

お客さまがお褒めの言葉をくださったり、
スタッフが笑顔で働いている姿が見られたりすることが何より嬉しく、
「どうしたら人を楽しませることができるか」という思いを大切に、
お店づくりをしています。

突然アイデアが湧くと、眠れなくなるときもありますが笑、
それくらいお店のことを考えるのが楽しいのだと思います。

考え抜くことを楽しんで、思い通りの世界を表現し、
いつか生まれ育った奈良で、最高のお店をつくることを夢見ています。