奥信濃のイケてるじいちゃん・ばあちゃん×ストリートカルチャー “鶴と亀”

こんにちは。さんち編集部の井上麻那巳です。
旅をするなら、よい旅にしたい。
じゃあ、よい旅をするコツってなんだろう。その答えのひとつが、地元の人に案内してもらうこと。観光のために用意された場所ではなくて、その土地の中で愛されている場所を訪れること。そんな旅がしてみたくて、全国各地から地元愛をもって発信されているローカルマガジンたちを探すことにしました。第4回目は長野県奥信濃のイケてるじいちゃん・ばあちゃん×ストリートカルチャーを発信するフリーペーパー “鶴と亀” です。

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かっこいいですよね…!カラフルな作業着で農作業をするおばあちゃん、MA-1を着て原付を飛ばすおじいちゃん、笑顔で雪かきをするおばあちゃん…。どこかで見たことあるようなおじいちゃん・おばあちゃんの日常がストリートカルチャーの視点で切り取られたスナップは、奥信濃の自然とも相まってとってもフォトジェニック。私たちが想像する田舎のおじいちゃん・おばあちゃんとは違った一面を見せてくれます。

編集部は小林徹也さん(兄)と小林直博さん(弟)の兄弟編成。弟の直博さんは奥信濃で育って大学時代を埼玉で過ごしたのち、現在は再び奥信濃で暮らしています。写真は編集部自らが近所のおじいちゃん・おばあちゃんに声をかけて撮影していくスタイルだそうです。この表情を引き出せるのは地元っ子ならでは。

編集部の小林兄弟とおばあちゃん(左から兄、祖母、弟)。
編集部の小林兄弟とおばあちゃん(左から兄、祖母、弟)。

“鶴と亀” の始まりは、物心ついた頃からHIPHOPやストリートカルチャーに興味を持ち、東京に人一倍憧れていたと語る直博さんが埼玉から奥信濃へ帰省していた時のこと。ふいにおじいちゃん・おばあちゃんの着こなしに、原宿を歩いてる子たちを見るような感覚を覚えたそうです。近所のおじいちゃんのMA-1ジャケットに、手ぬぐいとキャップのレイヤード、柄に柄を合わせるコーディネート。「HIPHOPっぽい!かっこいい!」と、“鶴と亀” 独特の目線が生まれました。

奥信濃スタイルをサンプリングしたという「JA CAP」を商品化。かっこいいです。
奥信濃スタイルをサンプリングしたという「JA CAP」を商品化。かっこいいです。

自分が今まで退屈だと思っていた世界がこんなにかっこよかったなんて。もともと相当なおばあちゃん子だったという直博さんの目標は「自分が奥信濃で暮らし続けること」。その上で、おもしろいこと、かっこいいことを奥信濃から発信して、奥信濃はそれが出来る場所だということを表現していくことが、今一番大事なことだと語ってくれました。

次号は2017年春頃に第五号を発行予定だそう。2013年8月の創刊からTwitterなどの口コミでどんどん人気となり、最近では配布分がすぐに無くなってしまうようです。気になる方はぜひお早めに。

第壱号+第弐号+第参号+未公開写真が合本になった「鶴と亀特別号」も販売しています。
第壱号+第弐号+第参号+未公開写真が合本になった「鶴と亀特別号」も販売しています。

ここにあります。

長野県内、東京を中心に、日本各地の書店などで配布しています。
詳しくはこちらのページから。
鶴と亀 設置場所


全国各地のローカルマガジンを探しています。

旅をもっと楽しむために手に入れたい、全国各地から発信されているローカルマガジンの情報を募集しています。うちの地元にはこんな素敵なローカルマガジンがあるよ、という方、ぜひお問い合わせフォームよりお知らせくださいませ。
※掲載をお約束するものではございません。あらかじめご了承ください。

文:井上麻那巳
写真提供:鶴と亀

新潟・栃尾名物、大きな大きな油揚げ

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
今日は美味しいものの話でも。取材やものづくりで訪れる、産地のお店やメーカーさん。そこで、大概「およばれ」に預かります。お茶とお茶うけ。地元の銘菓や駄菓子、そのお家のお母さんが作ったお漬物だったりと、頂くものはいろいろですが、これがまた、とても美味しいのです。普通の旅ではなかなか見つけられない、地元の日常をさんち編集部よりお届けします。

名水の歴史、大豆の香り広がる油揚げ

新潟県の栃尾(とちお)は、織物やニット産業の盛んな土地。ここからほど近くで織物製造をされている「株式会社クロスリード」さんに伺った時のこと。代表の佐藤さんが「せっかく栃尾に来たんだから」と、移動中に車で立ち寄ってくださったのが、「栃尾の油揚げ 豆選」さん。テイクアウトがメインのようですが、お店の中に少しイートインスペースがあり、そこで待つこと数分・・・。

「で、でっかい!」厚さは3センチほどもありそうな油揚げが、人数分運ばれてきました!もちろんノルマはひとり1枚。揚げたてアツアツの油揚げに、ネギと醤油というシンプルな味付けですが、これがまた美味しい。中身がほどよく詰まっていて口いっぱいに大豆の香りが広がりふっくらジューシーで。どんと出てきたときは、(さすがにこんなに食べられないぞ…)と、心の中で思っていたものの、あっという間に完食しました。

栃尾の油揚げは、間にネギとお味噌を挟んで焼いて食べるのもメジャーなのだそう。これは日本酒必須なのでは。この辺りには油揚げのお店がたくさん点在していて、十店十色にいろんな特徴があるといいます。栃尾には「保久礼の湧き水」「杜々の森の湧き水」「薬師の湧き水」など美味しい湧き水がたくさんあります。このやわらかで清らかな水が、かつてより栃尾の油揚げをつくりあげてきたのだそうです。
地元に、そこでしか食べられない美味しい名物があるって、いいなぁ。食べ比べや油揚げツアーなんていうのも楽しそうです。お土産にも油揚げをたくさんいただいて、(もちろん新潟の日本酒も手に入れて!)ほくほく抱えて奈良に帰りました。ごちそうさまでした。

豆選
新潟県長岡市栄町2-8-26
0120-05-5006

文・写真:杉浦葉子

京都「清水製陶所」がつくる、貴重な陶器の菓子型

あけましておめでとうございます。さんち編集部の杉浦葉子です。
—— なにもなにも ちひさきものは みなうつくし
清少納言『枕草子』の151段、「うつくしきもの」の一節です。
小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。
そう、小さいものはなんでもみんな、かわいらしいのです。
日本でていねいにつくられた小さくてかわいいものをご紹介する連載、第2回目は京都でつくられている「陶器の菓子型」です。

清水焼の小さな菓子型

初めて見たときは思わず、あれもこれもと買い込んでしまったかわいらしい菓子型。小さなものって、なんだかたくさん集めたくなります。
京都の世界遺産である清水寺のほど近くにある「清水製陶所」でつくられている清水焼の菓子型は、ご主人の清水永徳さんが21歳の頃お父さまから受け継ぎ、40余年つくり続けてきたもの。
菓子型というと木でできた型を思い浮かべる方も多いと思いますが、こちらは陶器製。内側にだけ釉薬がかけられていて艶があり、陶器ならではの優しい丸みのあるお干菓子ができるのが魅力です。

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お店のウインドウにひそやかに並ぶ菓子型。奥にあるのが「原型」です(原型は非売品)。このひとつの原型から石膏型を起こし、菓子型を複製していくのだそうです。「アジサイの型(奥の真ん中)は、作るの大変やったんよ」と清水さんがおっしゃるように、私も最初に一目惚れしたのはひときわ繊細なアジサイの型でした。

奥は小さな干菓子型。手にしているのはひとまわり大きな型。お店の包み紙も可愛い。
奥は小さな干菓子型。手にしているのはひとまわり大きな型。お店の包み紙も可愛い。

お店の包み紙に描かれたものと同じ、カエデの型は少し大きな型。水羊羹などに良さそうです。かつては、お盆のお供えにする大きな落雁の型や、寒天やゼリーなどの型もたくさんつくっていたそうですが、今では需要も減ってしまい、お干菓子用の小さな型でさえ、多くはつくられていないそう。こちらの「清水製陶所」でも清水さんがお1人でつくられていて、後にはつくり手が居ないとのこと。お店に並んだ菓子型も貴重なものになってきました。

「これはツツジ、これは糸巻き、これは雪輪で…」と、菓子型を指さしながら、一つひとつ薄紙でていねいに包んでくださる清水さん。きっと、それぞれの型に長年の思い入れがあるんだろうなと胸がきゅんとなりました。大変な手作業だとは思いますが、これからも菓子型をつくり続けてほしいなと思います。
清水さん、またお伺いしますね。

<取材協力>
清水製陶所
京都府京都市東山区清水3丁目336
075-561-6316

文・写真:杉浦葉子

漆を使って器をなおす、修復専門家のしごと

こんにちは、さんち編集部の井上麻那巳です。
ここ数年、作家さんや窯元さんとお会いする機会が多くなり、我が家の器はお気に入りのものばかりになりました。でも、お気に入りのものこそ普段使いしようと毎日を過ごしていると「割れ」や「欠け」が避けられません。そうしていくつかは残念な姿に…。割れたり欠けたりしてしまった大切な器を末長く使うべく、漆を主軸にした器の修復専門家、河井菜摘さんを訪ねてお話を伺いました。


器だけではなく、古美術品や茶道具もなおす「修復専門家」。

鳥取の工房で古美術品や器の修復のお仕事をしています。修復の依頼は鳥取、京都、東京の3つの拠点で受け付けているのですが、知らない方から連絡をいただくことも増えました。ひとつだけお持ちになる場合もあれば、10点近くの器を一気にお持ちになる方もいます。

通常の修復の依頼の他に、漆と金継ぎの教室も鳥取、京都、東京の3つの拠点で開いています。普段使いの器だと、どうしても買った金額よりも修理代が高くなってしまうことが少なくないですし、日用品はそれぞれが自分でなおせる方が良いと思っています。私ひとりが手を動かしてなおせる範囲はどうしても限られています。それが、例えば教室で8人が集まって、それぞれが3つの器をなおしたとしたら、全部で24個の器を救えることになる。この先割れたり欠けたりしても強い気持ちを持てるのもとても良いですよね。自分の手の中で変化するものは愛着がわくものですから。

教室の生徒さんたちの器。河井さん自作の室(むろ)にて保管しています。

教室では自分の器をなおすために金継ぎからスタートした人に、どんどん漆の魅力に興味を持ってもらえることも多くって。それがとてもうれしいですしおもしろいです。やっぱりはじめて漆にふれるには金継ぎがいちばんわかりやすく、親しみやすい。漆を勉強したいという方にもまずは金継ぎをおすすめしています。

修理をすることで気がついた漆の表情と、社会と関わっているよろこび

もともと京都の芸大で漆工を学んでいて、作品づくりをしていました。でも、大きな作品をつくるためにたくさんのゴミを出して、売れなければまた梱包をして持ち帰って…なんだか社会に関わっている感触がもてないと自分の活動に疑問を感じたこともありました。

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卒業後、茶道具の卸会社にて古美術品の修復スタッフに入ったことがきっかけで、はじめて修復のお仕事に触れました。その中で、作品づくりでは知り得なかった漆のたくさんの表情を見つけることができたんです。漆自体は形をなさないけれど、時には接着剤になり、時には欠けを埋めたり、時には古色をつけたり異素材を模すこともできて。変幻自在の漆の魅力に改めて気が付きました。それから、修復を専門にやっていきたいなって思うようになって。

作品をつくっているおもしろみと引き換えに副産物としてゴミを生んでいるんじゃないかと悩んだこともあった作家活動から一転して、修復のお仕事は買いなおさずに今あるもので満足感を生み出せるし、絶対的によろこんでもらえる。それは相手にとっても自分にとっても幸せなことだと思っています。

漆のための道具は自作することも多いそう。中には拾ってきたというカラスの羽根も(!)

「金継ぎ」「共直し」「漆修理」、3つの技法で器の修復をしています。

「金継ぎ」は、割れたり欠けたりしているところを漆でくっつけたり埋めたりして、その継いだ部分に金を蒔(ま)いて修復する技法です。金のほかに銀や漆で仕上げることもあります。器のデザインによっては銀もしぶくてかっこいいですよ。教室の生徒さんもほとんどがこの金継ぎを学びに来られています。

欠けたところを埋めたマグカップ。
欠けたところを金継ぎで修復したマグカップ。

割れたり欠けたりしているところを周辺のオリジナルを真似て再現する技法を「共直し」と言います。基本的には金継ぎ同様に漆を使うことが多いのですが、ものによっては漆以外の素材も使用します。左官屋さんが使うような色土や顔料として売られている土や胡粉など、画材になるようなものはなんでもストックして合ったものを試してみながら使うようにしています。

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修復後はどこが欠けていたのかわからないほど。
修復後はどこが欠けていたのかわからないほど。

「漆修理」は、剥がれていたり、割れてしまった漆をその状態を見て塗り直したりしていく作業です。でも、それも方法は色々あって、きれいに新品のように仕上げるのが良いのか、それともオリジナルの古い雰囲気を壊さない方が良いのか依頼主の方と相談しながら決めていきます。

やけど跡で変色してしまったお盆。
やけど跡で変色してしまったお盆。
塗り直し後。ところどころ欠けていたところも修繕しピカピカに。
塗り直し後。ところどころ欠けていたところも修繕しピカピカに。

こんなのなおらないよねって思われていても、大体どんなものでもなおります。

無理難題な修復はおもしろいですね。昔のものは天然の素材で作られているものがほとんどなので、素材に無理をさせてないんです。だから、結構ボロボロになっても、どういう形であれなおります。どんなに傷がたくさんあっても、そこを丁寧に埋めたり磨いたり塗り直したりすることで蘇るんですよね。

なおすことはおもしろい。割れたり欠けたりしているものが、そこをくっつけてあげるだけで、バァッと息をふきかえすようで。本当に単純なおもしろさとよろこびを感じます。


河井さんのお話を伺い、はじめて実際の修復の作業を見せていただきました。器の「割れ」や「欠け」はある種、自然の業で、誰かにコントロールされてできたものではありません。人の手によってデザインされ、つくられた人工物である器に偶然による意匠が華やかに施される金継ぎ。そんな金継ぎのビジュアルにも、それほどにひとつの器を大事にすることにもずっと憧れていました。

ひとつの器を自分で選んで自分で使って自分で壊してしまって、その時のショックがあるから価値がある部分もあるんだと、修復の新たな一面にも触れることができました。


河井菜摘(かわいなつみ)

鳥取、京都、東京の3拠点で生活をし「共直し」と漆を主軸とした修復専門家として活動。陶磁器、漆器、竹製品、木製品など日常使いの器から古美術品まで600点以上の修復を行う。修理の仕事の他に各スタジオでは漆と金継ぎの教室を開講し、漆作家としても活動している。
kawainatsumi.com

文:井上麻那巳
修理写真提供:河井菜摘

自分の分まで欲しくなる、かわいいお年玉袋・ぽち袋

こんにちは。さんち編集部の井上麻那巳です。
子どもにとってのお正月の大イベント、お年玉。小さなポチ袋を手に、今年はお年玉で何を買おうかとワクワク悩んでいる姿は微笑ましいものです。ところでぽち袋の「ぽち」とはもともと関西弁で「心づけ、祝儀」の意味。大人同士でもちょっとしたお礼やお心づけに使えるので、素敵なものを手元に置いておくと意外と便利です。そんなお年玉袋・ぽち袋、近頃では色々なデザインのものが出回っていますが、ついつい自分の分まで欲しくなってしまう、ちょっと上質なものを集めました。

KIOKUGAMI 和菓紙三昧(わがしざんまい)の和菓子型から生まれたぽち袋

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芸術家・永田哲也さんによるアートプロジェクト、KIOKUGAMI 和菓紙三昧(わがしざんまい)から生まれたポチ袋です。思わず触りたくなる大胆なエンボスは和菓子の木型によるもの。古くから祝いの気持ちを託し、鶴や亀、松竹梅など、縁起のいい動物や植物をモチーフにつくられてきた和菓子ですが、それらの型が持つ「記憶」を紙を媒体にして写し取ることから「記憶の紙」と呼んでいるそうです。この大胆なエンボスを実現するのは「西の内紙(にしのうちがみ)」と呼ばれる手漉きの和紙。独特の光沢と強くしなやかな風合いは茨城県から生まれています。

TESUKI paper worksの手染め、手漉き和紙の状袋(じょうぶくろ)

左から、墨+雲母(うんも)、群青(ぐんじょう)、柿渋(かきしぶ)、黄土(おうど)+雲母、胡粉(ごふん)+雲母。
左から、墨+雲母(うんも)、群青(ぐんじょう)、柿渋(かきしぶ)、黄土(おうど)+雲母、胡粉(ごふん)+雲母。
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ひとつひとつ表面の質感が違います。
ひとつひとつ表面の質感が違います。

鹿児島で活動するTESUKI paper worksによる手染め、手漉き和紙の状袋(じょうぶくろ)です。状袋とは古い言葉で封筒のこと。あえて状袋と名付けられたこの封筒は、名前の通り昔ながらの製法を大切につくられています。原料の煮熟(しゃじゅく)から紙漉き、染めまでひとつひとつが手作業。こんにゃく引き、藍泥染、柿渋染など全て天然素材から染められ、しっとり落ち着いた色合いとアンティークのような質感は、これぞ大人のポチ袋にぴったりです。

真工芸(しんこうげい)の十二支ぽち袋

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飛騨高山に工房を持つ真工芸(しんこうげい)からぽち袋をご紹介します。木版手染のぬいぐるみが人気の真工藝ですが、なんとも言えない愛らしいぬいぐるみの表情がそのままぽち袋にデザインされています。厚めのふっくらした和紙に鮮やかな色使いがかわいらしい雰囲気です。

自分の名前に入っている「巳」はついついひいきしてしまう。
自分の名前に入っている「巳」はついついひいきしてしまう。

高橋工房の北斎漫画ぽち袋

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創業安政年間の高橋工房によるぽち袋です。図案はご存知、葛飾北斎の「北斎漫画」。葛飾北斎といえば「冨嶽三十六景」が代表作として広く知られていますが、この「北斎漫画」も江戸の当時から現在にいたるまで多くのファンを生み、いわば絵の百科事典として親しまれています。男性でも使いやすい渋いぽち袋です。

竹尾と中川政七商店の万葉集入れ子ぽち袋

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紙の専門商社竹尾と中川政七商店によるコラボ商品。竹尾取り扱いの紙の中から発色の美しいNTラシャを使い、奈良時代に詠まれた万葉集の歌から連想された色がぽち袋に仕立てられています。シンプルなのでグラデーションが美しく映え、使うのももったいないほど。老舗の二社が時を入れ子のようにコツコツとかさね、これからもかさね続けていくというイメージで入れ子のデザインとなっています。ひとつひとつにメッセージカードが付いているので、一筆添えてお渡しできるのもうれしい。

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<掲載商品>

和菓紙三昧
お飾りぽち袋

TESUKI paper works
状袋(じょうぶくろ)

飛騨高山 真工芸
十二支ぽち袋

高橋工房北斎漫画ぽち袋

中川政七商店竹尾 入れ子 ぽち

文・写真:井上麻那巳

100年後の工芸のために。絶滅危惧の素材と道具 「NEXT100年」

こんにちは。さんち編集部の井上麻那巳です。
日本の手しごとが見直されつつある昨今、2016年10月22日より2017年1月29日まで “21世紀鷹峯フォーラムin東京「工芸を体感する100日間」” が開催されています。2015年に京都でスタートしたこの試みは、今年2016年は東京で、2017年は金沢での開催を予定しています。

今回はその中で、12月13日に行われたイベント “絶滅危惧の素材と道具「NEXT100年」” へ行ってきました。

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「100年後の工芸のために」を合言葉に企画、運営されている “21世紀鷹峯フォーラム”。国内外の現代の生活の中に工芸が行き渡るために、よき使い手とよき鑑賞者を生みだし、よいものをつくり続けるための支援を中心に展開されています。 “絶滅危惧の素材と道具「NEXT100年」” では、まさに今途絶えようとしている日本各地の工芸に使われる素材と道具がそれぞれの当事者によるライトニングトーク形式で紹介されました。

漆器づくりに欠かせない道具、漆刷毛。
漆器づくりに欠かせない道具、漆刷毛。
復活を目指して動き出しているという織機の部品、竹筬(たけおさ)。
復活を目指して動き出しているという織機の部品、竹筬(たけおさ)。

「絶滅危惧」というタイトルだけあり、紹介された素材・道具は漆、綿、刺繍針から日本画の絵の具で使用する膠(にかわ)、友禅や絞り染の下絵に使用するあおばな紙、織物の機(はた)の一部品、筬(おさ)まで、工芸関係者でも目にしたことがないような裏方の素材・道具たちが多く、ひとつひとつの取り組みが興味深いものでした。

江戸時代から300年の歴史を持つ伯州綿。
江戸時代から300年の歴史を持つ伯州綿。
伯州綿の種も配布していました。
伯州綿の種も配布していました。
美しい天然顔料。
美しい天然顔料。

当たり前のことではありますが、ものを作るには道具が必要です。私たちが普段使っているものたち。机の上のマグカップも、座っている椅子も、今着ている洋服も、それを作るための道具があってはじめて生み出されています。ひとつひとつは小さな工程や小さな道具でも、たとえそれがひとつでも欠けてしまうと、同じものは作れなくなり、その産業は続けられなくなってしまう。日本の工芸産地はひとりも欠くことのできないリレーのように成り立っています。

桶仕込み保存会のセイラ・マリ・カミングスさん。
桶仕込み保存会のセーラ・マリ・カミングスさん。

お世辞にも華やかとは言えない業界だけれど、間違いなく現在の日本の工芸を支える作り手たちの生の声。縁の下の力持ちのその声は、今にも尽きてしまいそうな産業でも希望を持って未来を拓いていく気概に満ちていました。「日本の工芸を元気にする!」、「あなたと全国の工芸産地をつなぐ」だなんて、時に “負け戦” とも言われる活動をしている私たちも改めて勇気をもらいました。

一方で、まだまだこういった催しに参加しているのは工芸関係者が多いのが現状です。ものがいくら良くてもその良さが伝わらなくてはないものと同じ。100年後の工芸のために私たちができることを改めて考えさせられた1日でした。

21世紀 鷹峯フォーラム

文・写真:井上麻那巳