夏の手ぬぐい活用術を、専門店に聞く

夏をイメージした新作手ぬぐいもたくさん。梅酒やビールなどの大人っぽいデザインも人気です。

ハンカチよりも大きくてタオルより場所をとらない手ぬぐいは、汗をたっぷりかく夏のおともにぴったり。工夫次第でいろんな楽しみ方ができるのも遊び心をくすぐりますね。長く使うほど手になじみ、独特の風合いがでるのも手ぬぐいと過ごす喜びのひとつです。

そこで今回は、「手ぬぐい専門店にじゆら」さんに“夏”を入り口にした手ぬぐいの楽しみ方についてお話を伺いました。夏以外の季節にも役に立つ息の長い利用術も。ぜひ手ぬぐいデビューの参考にしてみてください。

大阪の堺に染め工場を持つ株式会社ナカニが運営するにじゆらさん。「注染」と呼ばれる染めの技法で、親しみのある手ぬぐいを作り続けています。今回は東京のお店にお邪魔しました

「注染」は、長いさらしを糊付けしながら何重にも折り重ね、上から染料を注ぎ込んで一気に染め上げる伝統的な技法。店内にはさらしを折り重ねる作業で使用する糊台や、裁断前の長いままの手ぬぐいが置かれ、月に1回体験型のワークショップも行われています。

色とりどりに染め上げられた手ぬぐい生地
工程で使う道具がディスプレイされています

夏から始める、手ぬぐい活用術
<基礎編> 浴衣に合わせる

浴衣と手ぬぐいの色や柄の合わせ方はとても簡単。ポイントは浴衣と同系色にしないことと、なるべく色の濃さを揃えることなのだとか。

「例えば青い浴衣なら白やレモン色、黒や茶色の浴衣なら紫の手ぬぐいなんて良いですね。浴衣を引き立てるためにも、あまり派手すぎない色合いがおすすめです。『古典柄』と呼ばれる昔からお馴染みの柄は浴衣全体のまとまりをよくしてくれますよ」と語るのは、にじゆらの東京店「染めこうば にじゆら」で店長を務める池上 槙吉(いけがみ・しんきち)さん。

「手ぬぐいに何となく難しそうなイメージがある人にも、『いろんな使い方があるんですよ』とやわらかく考えてもらえるようにご提案しています」と池上店長

基本的なルールを抑えれば、組み合わせは自由自在。自分の浴衣に合いそうな手ぬぐいをひとつ手に入れるところから、手ぬぐいのある生活を初めてみるのもいいかもしれません。

<応用編>
その一、涼しげな「ペットボトルホルダー」

「手をぬぐうものだから『手ぬぐい』なんですが、魅力はそれだけじゃないんですよ」と池上店長。

「ペットボトルを手ぬぐいで包んでペットボトルホルダーのように使えば、鞄が水滴でびしょびしょにならずにすみます。タオルで巻いて輪ゴムで留めるよりもずっと見栄えがいいですよ」と語ります。

飲み口の少し下側で手ぬぐいをマントのように結び、そのまま全体を包んで……。
余った部分はねじって紐状に。飲み口の近くでまとめると取手になります。
あっという間にお洒落なペットボトルホルダーが完成! 鞄に入れるもよし、取っ手を鞄の紐に通して携帯することもできる優れものです。

縁日で買った何の変哲もないペットボトルも、忍ばせておいた手ぬぐいを使えば浴衣になじむ和小物に早変わり。鞄の中に入れても水滴がつかないのはもちろん、取っ手付きなので持ち運びも簡単です。

その二、2回縫うだけ、あっという間の「あずま袋」

また、浴衣で出かけるときにおすすめなのが「あずま袋」なのだとか。手ぬぐいを2回まっすぐ縫うだけで完成するシンプルな袋で、浴衣に似合うバッグとして重宝します。

まずは90センチの手ぬぐいを三つ折りにし、片側を開いて上辺の2枚(青色の点線の部分)を縫い合わせます。縫い終わったら下辺はめくっておきます
その後、開いた片側をもう一度折り重ね、下辺(赤色の点線の部分)を縫ってくるっとひっくり返せば完成!

「畳んでおけば邪魔にならないので、外出先で荷物が増えたときにも役に立ちます」と池上店長。エコバッグとしても使い勝手は抜群で、ひとつ鞄に入れておくと一年を通して活躍してくれます。

漬け始めたばかりの爽やかな梅酒柄のあずま袋が完成。浴衣にも似合いそうですね。巾着に比べて収納力も抜群です。

その三、「半襟」に「スカーフ」、ファッションのアクセントに

手ぬぐいは浴衣に合わせる半襟としてもちょうど良いサイズをしています。四つ折りにしてピンで留めるだけで完成する手軽さもさることながら、選んだ色や柄によって浴衣の印象も変えられるのもポイント。

また、浴衣を着ていないときにもスカーフとして使用することで首元が涼しげになり、汗を吸い取ってくれる効果も。いつものファッションのアクセントとして取り入れてみてください。

その四、寝汗対策に「乗せるだけ枕カバー」

「使い道がいろいろあるのはわかったんだけど、折ったり縫ったりするのはなんとなく難しそう……」という人もいるかもしれません(何を隠そう私もそうです)。そこで、夏にぴったりの簡単な手ぬぐい活用法として、「枕に被せる」というとてもシンプルな使い方を教えてもらいました。

寝汗をかきやすいこの季節。菌やダニを繁殖させないためにも、枕を清潔に保つのは大切です。枕カバーを毎日洗濯するのはなかなか手間がかかりますが、枕に乗せた手ぬぐいを取り替えるのはとても簡単。アロマオイルやバスソルトのように、その日の気分で手ぬぐいをチョイスするのも、1日の終わりの新しい楽しみになりそうです。

手ぬぐいのバラエティーはとても豊富。地域限定や季節限定のものもあるので、集める楽しさもありますね

手ぬぐいを育てる、手ぬぐいと育つ

夏に役に立つ手ぬぐいの活用法、いかがでしたでしょうか。池上店長は「手ぬぐいの色が抜けることを、うちでは『育てる』って言い方をしているんです」とのこと。

「デニムでもそうだと思いますが、使えば使うほど味がでるものというのが、手ぬぐいもひとつ最たるもの。『色が抜けちゃった』ではなくて『自分がこういうふうに使ってきたんだな』と、人とは違う経年変化を味わえるのもまた良さなんです」

同じ柄を友達同士で買っても、洗い方ひとつで色合いは全然変わってくるのだとか。育てれば育てるほどに愛着は増すのも、手ぬぐいの奥深さですね。

手ぬぐいとの生活に慣れれば慣れるほど、使い方の幅も広がります。文庫本カバーのアレンジもかわいらしいですね

ぜひ、この夏をきっかけに手ぬぐいのある生活を始めてみてください。

<取材協力>
手ぬぐい専門店にじゆら 染めこうば店

東京都台東区上野5-9-18 2K540 AKI-OKA ARTISAN O-2区画

03-5826-4125

http://nijiyura.com/

文・写真:いつか床子

柚木沙弥郎デザインが生きるコーヒー専門店。民芸愛の詰まった鹿児島の可否館へ

旅の途中で訪れた、思わず愛おしくなってしまう純喫茶を紹介する「愛しの純喫茶」。今回は、コーヒー好きにも民芸好きにもおすすめしたい鹿児島のコーヒー専門店「可否館 (こーひーかん) 」です。

柚木沙弥郎さんデザインの看板がお出迎え

鹿児島のターミナル駅、鹿児島中央駅から市営バスに乗って15分ほど。護国神社前のバス停から歩いて5分ほどのところに、可否館はあります。

この看板が目印
店名が染め抜かれた暖簾をくぐると‥‥
たっぷりと光の差し込む明るい店内

窓際の席に腰掛けると、入り口の看板と同じデザインのメニューが。

日本を代表する染織家、柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)さんが手掛けたもの。マスターがぜひにと頼んでオリジナルでデザインしてもらったそうです。

タペストリーもありました

注文したのは、はちみつシナモントーストセット。

可否館のはちみつシナモントーストセット

ほろ苦いコーヒーとはちみつがじゅわっと染み込んだシナモントーストは好相性間違いなしですが、一層美味しく感じさせるのがこの器です。

伺うと、はちみつシナモントーストには、必ず熊本の小代焼のお皿を合わせるのだとか。マスターの永田幸一郎 (ながた・こういちろう) さん自ら、窯元に頼んでつくってもらったものです。

黄金色のはちみつシナモントーストに、サイズも色もぴったり合った小代焼のお皿
自家焙煎のネルドリップコーヒーが注がれたカップも、やわらかな黄色が素敵です

これが、コーヒー専門店である可否館のもうひとつの魅力。店内を見渡すと、焼きものやガラスの器が、まるで民芸店のように並んでいます。

可否館
民芸品

お店が、好きな器を飾れるキャンバスに

マスターの永田さんは若いころから絵画や民芸に興味を持ち、自身でものづくりも行なっていたそう。

はじめは家業の材木屋さんを手伝っていましたが、32年ほど前のある日、決心して喫茶店をオープンさせました。

「もともとコーヒーも好きだったので。それに空間があれば、そこに好きな器を飾れるでしょう。お店が私にとってのキャンバスになるんです」

はじめにお店を開いた鹿児島の中心街、天文館で20年。現在の地に移転されて約12年。オープン以来32年ずっと、永田さんが目利きされた民芸の品々が、店内を飾っています。

四季に合わせて並べる品も変えているそう。実際に手にとって購入もできます
四季に合わせて並べる品も変えているそう。実際に手にとって購入もできます

揃える器は地元・鹿児島や九州のものに限らず、日本全国、さらには世界各地のものまで。できるだけ窯元に出向いて、直接購入しているといいます。

「民芸品は、使いやすくないといけません。自分で実際に手にとって使い心地が良く、なおかつ美しいもの、この空間やコーヒーに合うものを選んでいます」

永田さんの「好きなもの」への愛情がつまった可否館。

あと1本、バスを見送ってもう少し休んでいこうかな。そう思わせてくれる居心地のよさでした。

熊本の民芸の名店、魚座民芸店から特別に譲ってもらったという郷土玩具「きじ車」を見せてくださった永田さん。笑顔が素敵です
熊本の民芸の名店、魚座民芸店から特別に譲ってもらったという郷土玩具「きじ車」を見せてくださった永田さん。笑顔が素敵です

可否館
鹿児島県鹿児島市永吉2-30-10
TEL:099-286-0678
http://coffee-kan.com/
営業時間:10:00〜20:00
定休日:第1・第3・第5水曜日
駐車場:あり

写真:尾島可奈子

なぜ鎌倉の鶴岡八幡宮には鳩が多いのか。シンボルになった鳩の秘密

紫陽花のシーズンを迎えた鎌倉。週末に足を運ばれる方も多いのではないでしょうか。今日は、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝のゆかりが深く、鎌倉を代表する人気の観光名所、鶴岡八幡宮のお話です。

鶴岡八幡宮は、日本で最も多いとされる八幡神社の中でも特に代表的な八幡宮です。

一体、どのように建てられ、どんな歴史を歩んできたのでしょうか。そして、なぜ鳩が神社の象徴となっているのか‥‥?本宮までの見所と共に調べてきました!

 

いざ、鶴岡八幡宮へ

鶴岡八幡宮は1063年 (康平6年) に源頼義が奥州を平定して鎌倉に帰り、源氏の氏神として出陣に際してご加護を祈願した京都の石清水(いわしみず)八幡宮を由比ヶ浜辺にお祀りしたのが始まりだそうです。

その後、源氏再興の旗上げをした源頼朝公は、1180年 (治承4年) 鎌倉に入るや直ちに御神意を伺って由比ヶ浜辺の八幡宮を現在の地にお遷しし、1191年(建久2年)には鎌倉幕府の宗社にふさわしく上下両宮の現在の姿に整え、鎌倉の町づくりの中心としました。 (鶴岡八幡宮公式由緒より)

歴史的にも地理的にも鎌倉の中心である鶴岡八幡宮。1年を通じて多くの参拝者がありますが、特にお正月には約250万人もの人が訪れるとか!ご利益は、開運、家内安全、必勝祈願 、仕事運向上など。さらに、おしどり夫婦として知られる源頼朝公と妻・政子にちなみ、縁結びの信仰も集めています。

いざ、鶴岡八幡宮の本宮へ参拝です!

JR鎌倉駅に到着したら東口へ。3分ほど歩くと、赤い大きな鳥居が目の前に現れます。これが、鶴岡八幡宮の二ノ鳥居です。

街中に突如現れる二ノ鳥居。狛犬も立派です
街中に突如現れる二ノ鳥居。狛犬も立派です

てっきりこの鳥居が鶴岡八幡宮へのいちばん最初の入口かと思ったのですが、二ノ鳥居‥‥というからには、一ノ鳥居があります。

一ノ鳥居は、鎌倉駅から由比ヶ浜に向かって7~8分ほど歩いたところ。鳥居は本宮まで3つあり、若宮大路と呼ばれるまっすぐな1本の参道でつながっています。

若宮大路は由比ヶ浜から本宮まで鎌倉の中心をほぼ南北に貫いており、1182年(養和2年)に源頼朝公が妻・政子の安産祈願のために造営させたと伝えられています。鶴岡八幡宮の社前の道をまっすぐにして、由比ヶ浜まで通じさせたとか。

政子への愛の力でしょうか‥‥!京の朱雀大路を模して、源頼朝公が自ら加わって築いたそうです。

 

鳥居にも歴史あり

3つの鳥居は、1180年 (治承4年) に源頼朝によって鶴岡八幡宮が現在地に遷されたときに建てられたものだそうですが、地震や火災により、何度も再建されてきました。一ノ鳥居は、由比ヶ浜のそばにあることから「浜の大鳥居」とも呼ばれ、国の重要文化財に指定されています。

現在の一ノ鳥居は、木製だったものを江戸幕府第4代将軍、徳川家綱が1668年 (寛文8年) に石製の鳥居に建て替えさせたことに始まります。もともとは、徳川2代将軍秀忠夫人の崇源院(すうげんいん・大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」でおなじみですね)の願いだったそうです。

言い伝えによると、崇源院は、3代将軍家光を懐妊した折、鶴岡八幡宮に安産祈願をを行います。無事出産できた崇源院は、自分の代わりに家光の乳母である春日局を度々参拝させるなど、鶴岡八幡宮への信仰をさらにあつくしました。

そんなある日、崇源院の夢の中に八幡大神が現れ、「備前屋犬島(岡山県)の石を使用して、木製の鳥居を石製に造り替えるように」と告げます。

崇源院はこのお告げを実行するよう、息子の家光に懇願。大工事のうえ、遠方から石を運ばなければならなかったことから、崇源院は鳥居の完成を見ずに亡くなりましたが、孫の家綱の時代にそのお告げが実現されたということです。

1923年 (大正12年) の関東大震災で3つの鳥居は倒壊してしまいますが、1937年 (昭和12年)に再建されます。一ノ鳥居だけが元の姿に復興され、二ノ鳥居と三ノ鳥居はコンクリート製の赤い鳥居として再建されたそうです。

一ノ鳥居にはやはり備前犬島産の花崗岩が使われています。家綱が創設した時代から約270年の時を経ても、崇源院の夢のお告げ通りに備前の石を使用しているあたりが鶴岡八幡宮への信仰の深さを感じられますね。

二ノ鳥居から本宮へ

dscf5754_re

二ノ鳥居の入口から、車道から1段高くなった通りが続きます。参道・若宮大路の段葛(だんかずら)と呼ばれる通りです。

段葛という名は、葛石(かずらいし・社寺の建物の壇の先端にある縁とりの石)を積み上げて造られたことから、そう呼ばれるようになったのだそうです。

現在の段葛は2016年3月に修復されました。日本の桜名所100としても知られる段葛。春にも足を運びたいですね。道路の真ん中にあるとは思えない、とても気持ちのいい参道です。

そして、この段葛は知らずに歩くともったいない、秘密があるそうなんです!三ノ鳥居 (三ノ鳥居付近の道幅は2.7メートル) から由比ヶ浜に向かって立つと、同じ幅が続いているように見えます(普通、道は遠近法によって狭まって見えるはず)。これは、将軍が八幡宮の前に立ったときに、道が狭まって見えないようにするためだと言われています。

三ノ鳥居付近からの眺め。見事にまっすぐです
三ノ鳥居付近からの眺め。見事にまっすぐです

二ノ鳥居(二ノ鳥居付近の道幅は4.5メートル)から八幡宮に向かって立つと、道がグッと狭まって見えます。人間の目の錯覚を利用して、敵が攻めてきたときに参道を実際よりも長く見せ、より遠く感じるようにするためだと言われています。

鎌倉に来たら、じっくり見比べてみてください
鎌倉に来たら、じっくり見比べてみてください

段葛の両脇は、高さが違っており、八幡宮に向かって左側(西)が少し高くなっています。敵は西から攻めてくる(朝廷を中心とした旧勢力は西である京が中心だった)からこのような設計になったとか‥‥?!源頼朝公こだわりの道なんですね。

いよいよ本宮へ

三ノ鳥居。元々は石製の鳥居でした
三ノ鳥居。元々は石製の鳥居でした

三ノ鳥居を通って、本宮を目指します。街中から一気に景観が変わります。平日にもかかわらず、なかなかの賑わいです。海外観光客や、修学旅行生の姿も多く見かけます。

こんもりとした木々の奥に本宮が見えます
こんもりとした木々の奥に本宮が見えます

緑豊かな鶴岡八幡宮ですが、4月下旬は、ぼたんが見頃でした。三ノ鳥居を入ってすぐ右の源氏池畔には神苑ぼたん庭園があります。

神苑ぼたん庭園への入口
神苑ぼたん庭園への入口
色とりどりのぼたんが満開でした
色とりどりのぼたんが満開でした
源氏池。見頃には紅白の蓮が咲くそうです
源氏池。見頃には紅白の蓮が咲くそうです

右手に源氏池、左手に平家池を見ながらまっすぐ進むと、心身を清める手水舎 (てみずや) があります。手水でお清めするのを忘れずに。

本宮と同じく美しい朱塗りの手水舎
本宮と同じく美しい朱塗りの手水舎

源義経の側室である静御前が義経を慕い、舞を舞ったといわれる場所に建てられたという舞殿。下拝殿とも呼ばれ、神事や結婚式等を行うそうです。

厳かな雰囲気の舞殿
厳かな雰囲気の舞殿

いよいよ鶴岡八幡宮の中心である本宮のお目見えです!61段の石段を上がります。

あともう少しです
あともう少しです

遠くからでも存在感は伝わっていましたが、側で見ると圧巻の迫力です。思わず足を止めて見惚れてしまいます。朱塗りの本宮と周囲の緑とのコントラストも美しいです。

本宮は国の重要文化財に指定されています
本宮は国の重要文化財に指定されています
細部まで美しい本宮の造り
細部まで美しい本宮の造り

本宮の回廊にある宝物殿では貴重な八幡宮の神宝類 (神輿、武具、工芸品、考古資料等) が陳列されています。毎年お正月には特別展を開催しているそうです。 (拝観料:大人200円、小人100円)

本宮から見た由比ヶ浜方面。舞殿の奥に三ノ鳥居が見えます。目を凝らせば二ノ鳥居も見えるかも?
本宮から見た由比ヶ浜方面。舞殿の奥に三ノ鳥居が見えます。目を凝らせば二ノ鳥居も見えるかも?

本宮の中心に掲げられた「八幡宮」の文字。額の八の字は向かい合った鳩を具象化したものです。

当初は「八幡宮寺」でしたが、明治初年の神仏分離令で寺の字が取られたそうです
当初は「八幡宮寺」でしたが、明治初年の神仏分離令で寺の字が取られたそうです

鳩は神社に多くいるイメージがありますが、特によく見かけるような‥‥。それもそのはず?!

八幡宮は鎌倉をはじめ、大分の「宇佐神宮」や京都府の「石清水八幡宮」など日本に数カ所点在していますが、これらの八幡宮を移動させる際に、鳩が道案内をしたという歴史があるそうなんです。

その後、“八幡さまのお使い”として由比ヶ浜から今の場所に遷した際にも、鳩が道案内をしてくれたのかもしれません。

また、鎌倉幕府時代の武将は、戦での勝運を呼ぶ鳥として鳩の絵柄を家紋に使い、八幡信仰が栄えて全国に広まったとも言われているそう。「源平盛衰記」や「太平記」、「梅松論」などの軍記物には、鳩が出陣に際して勝利の鳥としても数多く記されています。

たくさんの鳩たち。道案内してくれたのかい?
たくさんの鳩たち。道案内してくれたのかい?

そんな象徴とは別の側面に、群れを成す性質から「平和の象徴」としても有名です。私たちの一般的な鳩のイメージとしてはこちらが強いような気がします。特に旧約聖書のノアの箱舟の伝説(オリーブの葉をくわえた鳩)や、西洋の結婚式でも、白い鳩が登場しますよね。

また、鳩という漢字には「安んずる(やすんずる)」という意味があるそうです。昔から東洋・西洋問わず身近な鳥として人々から親しまれていることがわかります。

全国の神社に何気なくいる鳩たちですが、実は八幡さまをはじめとする八百万 (やおよろず) の神様のお使いとして暮らしているのかもしれません。

dscf5801_re

鶴岡八幡宮の歴史とみどころ、いかがでしたでしょうか。まだまだここには書ききれない鶴岡八幡宮のみどころはたくさんあり、毎月の祭祀も見逃せません。

ぜひ、足を運んでみてください。食や観光も素晴らしい鎌倉ですが、歴史を含めた視点で訪れてみると、また違った魅力が発見できると思います。

鶴岡八幡宮
神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-31
TEL 0467-22-0315 FAX 0467-22-4667

<アクセス>
「JR鎌倉駅」東口から徒歩10分
「江ノ電鎌倉駅」から徒歩10分
「横浜横須賀道路・朝比奈I.C.」から5km

 


文・写真:山口綾子


この記事は2017年5月公開の記事を再編集してお送りいたしました。

日本一愛される金沢・箔一の「あぶらとり紙」には金箔屋の技術が詰まっている

美しくありたい。

クレオパトラや楊貴妃のエピソードが今に伝わるほど、いつの世も女性の関心を集めてやまない美容。様々な道具のつまった化粧台は子供の頃の憧れでもありました。

そんな女性の美を支えてきた道具たち。今回紹介する「あぶらとり紙」は、ポーチの中に欠かさず入れている人も多いと思います。

実はこの薄い薄い紙、金箔を作る工程から生まれていたって、ご存知でしたか?金箔国内シェア99%を誇る金沢で、良質なあぶらとり紙作りを続ける株式会社箔一さんにお話を伺いながら、そのものづくりに迫ります。

普段何気なく使っているあぶらとり紙が、また違って見えてくる、かもしれません。

10円玉の半分のサイズが畳1畳分に

re_%e9%87%91%e7%ae%94%e5%ae%8c%e6%88%90

かつては沢からよく金が採れたという金沢。そこで発展したのが金箔作りです。

歴史は400年の昔にさかのぼり、加賀藩初代藩主・前田利家の時代から、金沢は金箔の一大産地でした。金は金属の中でも最大の延性を持ちます。

つまり、最もよく延びる、ということ。たった2gの金(10円玉の半分くらいだそうです)が、畳1畳分もの金箔になるというから驚きです。厚さにして1万分の1ミリメートルほど。

一方で、よく電気を通す金属でもあるので、薄い薄い金箔は、金だけでは作れないそうです。

静電気を防ぐため、あらゆる金箔は、金に銀や銅を合わせた合金。昔は納品先の多くが寺社仏閣だったため、この配合を変えることで微妙に金箔の色味を変えて納めていたそうです。

金箔作りは和紙作り

では金箔って、一体どのように延ばすのでしょう。ここで登場するのが、あぶらとり紙の元となった「箔打ち紙」です。

金箔の元となる合金、澄(ズミ)は、一度機械でペタンコにされた後、1枚1枚が和紙に挟まれます。その上から均一に叩かれることで、一度に複数枚の金箔をムラなく、破ることもなく、薄く薄く延ばすことができるのです。

re_1418

和紙が凸凹していると箔がうまく延びないため、この和紙こそが質の良い金箔作りの決め手となるもの。紙の仕込みは職人の一番の腕の見せ所だったそうです。

その工程のスタートはなんと雁皮(ガンピ)という植物を採取し、3年枯らすところから始まります。紙を頑丈にするため灰汁につけ、4日間かけて乾燥させるなど、大変な手間暇をかけて作られてきました。

舞妓さん愛用の「ふろや紙」が全国シェア1位のあぶらとり紙になるまで

さてこの箔打ち紙、「何度も打たれる」ことで思わぬ効用をもたらします。

打たれることで繊維の目が細かくなるため、瞬間的に皮脂を取れるものとして、化粧道具に使われるようになりました。

金箔屋で繰り返し使われて用をなさなくなった使い古しの紙は「ふるや紙」と呼ばれ、江戸時代には、顔に使うとお風呂上がりのようにさっぱりすると「ふろや紙」に名を転じて、京都の舞妓さんなどに高級化粧紙としてもてはやされます。

ただ、この頃のあぶらとり紙はまだ、金箔作りの副産物。1970年代に入って箔打ち以外の金箔作りの製法が編み出されると、ふるや紙も取れる数が少なくなり、希少品になってしまいます。

そこで40年前、「箔打ちの技法はそのままに、あぶらとりを目的にした紙を」と現代のあぶらとり紙作りに乗り出したのが、箔一の創業者、浅野邦子さんでした。

元々の箔打ち紙は丈夫にするために柿渋なども配合されており、あぶらの吸着はよくても、決して肌に優しいものではありませんでした。

そこで素材から肌ざわりがよく吸油性も良い天然麻に切り替え。金箔の箔打ち工程の技法を転用したあぶらとり紙の商品化に成功します。

さらに、表面にもひと工夫。透かして見ると1枚1枚格子状になっています。わざと凹凸を作り、皮膚への接地面を増やすことで、よりあぶらを吸着しやすくしているのだそう。

透かすとうっすら格子状の表面。
透かすとうっすら格子状の表面。

「繊維が柔らかく表面積が大きいので、パルプやフィルムタイプよりも少ない使用回数であぶらを取りやすいんですよ」とは、お話を伺った営業の内村さんの言葉です。

箔一さんのあぶらとり紙は、今では箔打ちの製法で作るあぶらとり紙の全国シェア1位を誇ります。

創業当時からの「美人」シリーズ(中央 *写真は40周年記念仕様)や美容成分(左)、金箔入り(右)など種類も様々。
創業当時からの「美人」シリーズ(中央 *写真は40周年記念仕様)や美容成分入り(左)、金箔入り(右)など種類も様々。

伝統的なものづくりから図らずも生まれた、キレイになるための七つ道具。

さっと1枚、使う前に、今日はちょっと光にかざしてみて、はるばる400年の歴史に思いを馳せてみるのも良いかもしれません。

<関連記事>
キレイになるための七つ道具 その一、爪やすり


文・写真:尾島可奈子

この記事は、2016年12月8日公開の記事を、再編集して掲載しました。あぶらとり紙が活躍するこの時期、普段使うものだからこそ、こだわってみてはいかがでしょうか。

旅に行くなら、これから変わる町を見ておきたい。進行形で発展する嬉野・有田へ

これまで、日本各地の工芸を取材してきたさんち。

各所を訪れるたびに、「もっともっと多くの人たちに、まだ見ぬ地域の魅力を知ってもらいたい」と思う気持ちは強くなっていきました。

今回発足したのが、複数のメディアが手を取り合ってひとつの地域へ取材に伺う「#medeiacruise(メディアクルーズ)」のプロジェクト

mediacruise

参加メディアは、
明日の朝が楽しみになるような情報を届けるインスタマガジン「cocorone」

これからの暮らしを考えるウェブメディア「灯台もと暮らし」

女子クリエイターのためのライフスタイルマガジン「箱庭」

パーソナルメディアマーケティングサービス「drip」

そして、「さんち」の5チームです!

 

これまで各々に各地を取材してきた5メディアが行動を共にしたら、どんな化学反応が起こるのでしょう?

行き先は佐賀県。嬉野市、有田町、佐賀市を周った充実の2泊3日を、2日に渡ってレポートします。

2日目:有田町で焼きもの文化の根付く場所を訪ねる

 

有田焼の価値を活かしたセレクトショップ「bowl」へ

以前オープン前に伺った「bowl(ボウル)」さんを再訪。

有田 bowl

マネージャーである高塚裕子(たかつか ひろこ)さんは、お隣の波佐見町にあるセレクトショップ「HANAわくすい」の運営を経て、ここ「bowl」の立ち上げに携わりました。

波佐見で作られている波佐見焼が日用品として古くから使われてきた一方で、有田焼は絢爛豪華な贅沢品として愛されてきたもの。

「波佐見でお店をした時はカジュアルをアップさせたのですけれど、有田はドレスなので、ドレスダウンさせるイメージでお店づくりをしようと思いました」と、高塚さん。

産地の特徴をお店作りに活かし、有田だからこそできる、贅沢品を日常使いに落とし込んだようなセレクトショップを目指しているそうです。

有田 bowl

有田焼の贅沢さを引き立てつつも、お店にやってくる人々がハードルを感じないように商品をセレクトするのは、バイヤーとしての高塚さんの敏腕さがあってこそ。

穏やかな空気感の店内には、有田焼はもちろんのこと、高塚さんが各所から買い付けたアイテムが並んでいました。

「in blue 暁」で、お酒好きがつくる酒器にうっとり

お次は陶芸家の百田暁生(ももた あきお)さんの工房兼ギャラリーショップ「in blue 暁(インブルー あかつき)」へ。

in blue 暁

大きく窓をとったモダンな佇まいのギャラリースペースは、百田さんがこだわり抜いて作った空間です。

in blue 暁

窓の外の景色に、青白磁の美しい造形美が映えます。

in blue 暁

お酒好きの百田さんがつくる酒器のお話に、思わず顔がほころぶ(おなじく)酒好きのさんちチーム。

こちらの酒器については、個別の記事でより詳しくご紹介しますね。

歴史ある建物を活かしたニューオープンの和カフェ「kasane」

お腹もすいてきたところで、ランチにお邪魔したのは、鈴木達男さん、愛子さんのご夫婦が2018年4月9日にオープンしたばかりの和カフェ「kasane(かさね)」。

有田の和カフェ kasane(かさね)

江戸時代末期に建てられた歴史ある建物を改装したお店は、ゆったりと落ち着ける雰囲気です。

有田の和カフェ kasane(かさね)

佐賀県内でラジオ番組のレポーターを務めていた奥様の愛子さんが、東京で出会った達男さんとともに佐賀に戻って開業したこちらのお店。

有田の和カフェ kasane(かさね)

焼きものの歴史と、美味しい食材がすぐそばで手に入る風土に惹かれ、有田という場所を選んだのだそうです。

有田の和カフェ kasane(かさね)

もともと東京で料理人をしていた達男さんが腕を振るう料理には、佐賀の食材がふんだんに使われています。

「地元の方々や、有田焼を目当てに足を運んでくる人がほっと一息つける飲食店として、もっと地域に馴染んでいきたいです」と愛子さん。

今後有田のまちでどんな風に活動されていくのかが楽しみです。

お土産用に、「古伊万里酒造」の有田焼ワンカップを調達!

お腹がいっぱいになったところで、次に向かったのは、こちらも以前取材させていただいた古伊万里酒造さん。

#mediacruiseで行っているクラウドファウンディングをサポートしてくださった方へのリターン用に、お土産を調達しに行ってきました!

古伊万里酒造 NOMANNNE

こちらは、有田焼のカップに、古伊万里酒造で作っている佐賀の地酒が入った「NOMANNNE(ノマンネ)」。

大人気につき品薄状態が続いているので、この機会にぜひ手に入れていただきたいです。

古伊万里酒造 NOMANNNE

現代のくらしに馴染む有田焼「hibi」

2日目も終盤に近づいてきたところで、次は有田焼の専門商社であるヤマト陶磁器さんへ。

ヤマト陶磁器 hibi

有田焼を現代の価値観で再編集し、より日常で愛されるモノをつくるために誕生したブランド「hibi(ヒビ)」のディレクションを手がける山口武之(やまぐち たけし)さんにお話を伺いました。

ヤマト陶磁器 hibi

アートディレクターの藤榮央さんと一緒に、窯元さんへの提案やデザイン、ブランディング、販売まで、通貫して責任をもたれている山口さん。
新しい有田焼に出逢わせてくれる「hibi」のプロダクトを前に、ついついお土産選びに夢中になってしまいました…!

ヤマト陶磁器 hibiのなみだ壺
ヤマト陶磁器 hibiのブローチ

「hibi」の魅力については、別の記事でもご紹介します。
そんなこんなで、有田にどっぷりと浸かった2日目は終了。
夜は、和多屋別荘さんから歩いてすぐの場所にある「居酒屋ゆたか」さんへ。嬉野名物の温泉湯豆腐と地酒をいただきました。

SNS埋め込み

3日目:進化する嬉野の魅力を肌で実感

最終日は、嬉野市のこれからを担うスポットをご案内していただきました。

新幹線の線路建設現場に潜入!嬉野観光の未来に思いを馳せる

最初に向かったのは、2022年に開通予定の、新幹線駅舎の建設地です。

新幹線 嬉野温泉駅
新幹線 嬉野温泉駅

ゆくゆくは線路が敷かれて駅のホームになる予定の場所を、今回特別に案内していただきました!
「嬉野は街が魅力的なので、駅周辺に主要施設を密集させるのではなく、あえて街に繰り出したくなるような景観を目指して周辺施設の準備を進めています」
と、建設・新幹線課の松尾憲造さん。

新幹線 嬉野温泉駅

辺りを見渡すと、山肌の茶畑が目に入り、いずれは車窓からこの景色が見えるのかな…なんてうっとり想像してしまいました。
市をあげての嬉野観光への想いを伺ったあとは、改めて、街の中心部である温泉街に入っていきます。

古い旅館をリノベーション。地域の人と観光客が交わる場所へ

嬉野 カフェ 宿 レンマ

次に向かったのは、古田さんの会社の新拠点となる、リノベーション中のスペースへ。

嬉野 カフェ 宿 レンマ

ここは、古田さんのご実家からすぐそばにある、廃業してしまった古い旅館。
職人さんの手によって手入れをされている最中でした。

嬉野 カフェ 宿 レンマ

「昔の人はすごかねぇ。ものを作るときの芸の細かさを見せつけられるよ。ほら、こことか見てみて?」

嬉野 カフェ 宿 レンマ

そう言って見せてもらった井戸の石組みには、しっかりと固定するために組子状にする細工が施されていました。

嬉野 カフェ 宿 レンマ
他にも、昔から大事にされてきた、仕立ての良い建具があちこちに
嬉野 カフェ 宿 レンマ
嬉野 カフェ 宿 レンマ
嬉野 カフェ 宿 レンマ
嬉野 カフェ 宿 レンマ

「ここを起点に、観光客や地域の面白い人たちが交わって嬉野を楽しんでいけるような仕掛け作りをしようと思っています。リノベーションの過程も周りの人たちに積極的に関わってもらいながら、ゆくゆくはコミュニティスペースや体験型ツアーの拠点としても活用する予定です」と話す古田さん。

すでに構想が頭のなかにある様子で、この場所が形になっていった先に、嬉野に起こるであろう素敵な変化が見えた気がしました。

眺めのよい「天茶台」でランチタイム

そうこうしているうちに、あっという間にお昼の時間。

次に、茶畑の中から嬉野を見渡すことができる「天茶台(てんちゃだい)」に連れて行ってもらいました!

嬉野 天茶台
「眺めがよくてきもちいい〜!」

美味しい嬉野茶を、同じく嬉野で作られる肥前吉田焼の窯元「224porcelain」さんの「ORIGAMI」という湯呑みで提供していただきます。

嬉野 天茶台
こちらは、ドイツのレッド・ドット・デザイン賞も受賞しているそう

恵まれた天候のなか、嬉野を全身で感じられる贅沢な時間を堪能し、大満足の一行。

嬉野 天茶台
お茶の葉に黒いシートをかけて、甘みを引き出す工夫についても説明していただきました

絶景の茶畑で、ツーリズムの新たな施策を垣間見る

そして、私たちを乗せた車は、さらに標高の高い茶畑を目指して走り出します。

なんでも、嬉野の茶畑の中でも特に絶景だというポイントに向かっているんだとか…

嬉野 絶景茶房
じゃん!

これまで見たこともないような一面の茶畑に、思わず大きく深呼吸してしまいました。

嬉野 絶景茶房
嬉野 絶景茶房

ここは、佐賀大学との共同研究で、茶畑を観光資源として活かす「絶景茶房」の建設予定地です。
研究を担当している佐賀大学大学院の河原幸有美さんが、プロジェクトについて説明してくれました。

絶景茶房の説明

「この場所は嬉野では珍しく、山の頂上に平面で栽培をしている茶畑です。研究のために嬉野にあるほぼすべての茶畑に足を運んで、最も景色の美しい茶畑としてここを選びました。現状だと、観光客は茶畑に足を踏み入れることはできないので、ここに『絶景茶房』を建設してツーリズムに活用することで、嬉野の魅力をより感じてもらいたいなと思っています」

空気が澄んでいるときには、茶畑の向こうに大村湾を一望することもできるそう。
「絶景茶房」として嬉野のお茶と景色に親しむ施設を作ることで、産地としての新しい価値提案が叶うはずです。

嬉野 絶景茶房

思わず見とれてしまう程の景色に、「絶景茶房」の建設がどんどん楽しみになった私たちだったのでした。

たったひとりの尾崎人形職人、高柳さんに会いに行く

さてさて、#mediacruiseも終盤に差し掛かったところで、さんちチームは箱庭さんとともに嬉野を出発。

尾崎人形で人気の高柳 政廣(たかやなぎ まさひろ)さんの工房を尋ねます。

佐賀 尾崎人形

ぽてっとしたフォルムに、なんとも可愛らしい表情の尾崎人形たち。
作り手である高柳さんの雰囲気をそのまま写し込んだような愛らしさに、ついつい顔がほころんでしまいました。

佐賀 尾崎人形 高柳さん
尾崎人形の制作者 高柳政廣さん

尾崎人形は、鎌倉時代の蒙古襲来によって日本にやってきたモンゴル人たちから伝わった、佐賀県尾崎地区に伝わる郷土玩具。

佐賀 尾崎人形
尾崎人形は、型でつくられます

しかし、現在この尾崎人形を作っているのは、高柳さんたったひとり。
もともとは別の仕事をされていましたが、60歳で定年したことを機に、当時この地域で途絶えてしまっていた尾崎人形作りを復刻させたのです。

佐賀 尾崎人形 高柳さん
知り合いのイラストレータさんによるオリジナル長太郎人形(高柳さん版)

日本だけでなく海外でも大人気なので、せっせとものづくりをする傍ら、最近はオランダにまで行ってワークショップを行ってきたそうです。
箱庭 ✕ さんちでも尾崎人形の絵付けワークショップを行う予定です!詳細は後日の記事でお知らせしますのでお楽しみに。

佐賀 尾崎人形

 

#mediacruiseはまだはじまったばかり!

mediacruise

2泊3日の5メディア合同取材ツアー。
他の4メディアも併せたリアルタイムのワクワク感は、TwitterやInstagramの「#mediacruise」でぜひお楽しみください。

普段の地方取材とはちょっと違った取材が新鮮で、大所帯での移動はまさに「大人の修学旅行」状態!

めいいっぱい佐賀を楽しんできた取材クルーの私たちが、ここからは記事やイベントを通してみなさんに情報をお届けします。

#mediacruiseはまだまだはじまったばかり。

一緒に楽しんでいけるよう、さまざまなコンテンツを用意していくので、楽しみにしていてもらえたら嬉しいです!

 

同時取材した5メディアで、佐賀旅の記事を公開中です

それぞれのメディアが切り取った佐賀。どうぞ合わせてご覧ください。

・cocorone:cocorone TRIP 佐賀特集始まります

・灯台もと暮らし:「佐賀県嬉野・有田で見つけた新しいメディアと取材の在り方。「#mediacruise」に行ってきました!【ファインダーと私】」

・箱庭:「地域とメディアを繋ぐ新しい取材のかたち「#medeiacruise」。
箱庭が選ぶ佐賀の「おみやげBOX」つくりました!」

・drip:「知っているけど、知らない世界。”mediacruise 佐賀 嬉野編」

文:山越栞
写真:藤本幸一郎

街全体で工芸ファンをお出迎えする1ヶ月。松本市「工芸の五月」が開幕

風薫る5月。長野県、松本の街は工芸に染まります。

こんにちは。編集室いとぐちの塚田結子です。

「工芸の五月」公式ガイドブックや、クラフトフェマまつもと機関誌『掌(たなごころ)』の企画制作をしています。今回は、「工芸の五月」の魅力を3回にわたってご案内していきます。

松本・工芸の五月・クラフトフェア
松本・工芸の五月・クラフトフェア
松本・工芸の五月・クラフトフェア

「工芸の五月」は、毎年5月に行われる約1ヶ月のイベント。松本市を中心に、街中の美術館、博物館、ギャラリーなどで工芸にまつわるさまざまな企画を開催します。そして5月の最終週末には“あがたの森公園”で、人気イベントの「クラフトフェアまつもと」も。

なぜ、松本で工芸か

松本は、江戸の頃から城下町に集められた職人たちによるものづくりが行われ、昭和に入ると、そうした素地と戦後復興とが相まって、柳宗悦らが提唱した民芸運動がよく根づきました。

暮らしに手仕事が溶け込み、自然の恵みが豊かな松本には、いつしか作り手が集まります。そして彼らによって1985年にはじめられたのが「クラフトフェアまつもと」です。

5万人の工芸ファンが全国から集まる

たった45人の出展ではじまった初回から開催30回を超え、280人の出展者と5万人の来場者を数えるまでになりました。全国から集まる工芸ファンを松本の街全体でお迎えしようと、2007年にはじまったのが「工芸の五月」です。

松本・工芸の五月・クラフトフェア
松本・工芸の五月・クラフトフェア
松本・工芸の五月・クラフトフェア
(C)モモセヒロコ
松本・工芸の五月・クラフトフェア

5月最終週末の2日間から5月まるごとの1カ月間へ。あがたの森公園から街なかへ。「クラフトフェアまつもと」から「工芸の五月」へと会期も会場も広がって、工芸にふれあえる機会がぐっと増えました。

中心市街の、50の会場と70の企画

今年は約50の会場で、約70の企画展やワークショップが行われます。ほとんどの会場が中心市街に近接し、歩いて回ることができます。

松本・工芸の五月・クラフトフェア
松本・工芸の五月・ほろ酔工芸
(C)モモセヒロコ

JR松本駅からあがたの森公園までが1.5㎞、徒歩にして20分ほど。市街は駅と公園の間に広がります。ちなみにJR新宿駅から松本駅までは、中央線を走る特急あずさで3時間弱です。

「工芸の五月」が地元にも定着したここ数年は、独自の企画が商店街ごとに行われ、道には露店が並び、夜ともなれば屋台に火が灯り、どこを歩いても街はにぎやかです。そしてあちこちに湧水が湧き、せせらぎが水音を立て、街歩きに興を添えます。

松本・工芸の五月・ほろ酔い工芸

28人が手作りした椅子が並ぶ、「はぐくむ工芸 子ども椅子展2018」

さて、ゴールデンウィークとともにはじまる「工芸の五月」。5月初旬の企画をいくつかご紹介します。

あがたの森公園では、連休に合わせて「はぐくむ工芸 子ども椅子展2018」が行われます。長野県内の木工作家28人が手作りした椅子が60脚ほど芝生の広場に並びます。

松本・工芸の五月・はぐくむ工芸 子ども椅子展2018
松本・工芸の五月・はぐくむ工芸 子ども椅子展2018
松本・工芸の五月・はぐくむ工芸 子ども椅子展2018

形も風合いも、手触りもさまざまな椅子は、ひとつとして同じものはありません。お気に入りを見つけたら、購入することができます。なかには後日配送となるものもありますので、スタッフまでご確認を。

椅子の展示に合わせて「光るどろだんご」作りやけん玉遊び、音楽隊の演奏や絵本の読み聞かせが行われます。広々とした公園ですから、小さなお子さん連れでも気兼ねなく楽しめます。

ゴールデンウィークに参加したい企画が目白押し

また、連休に合わせてオープンする「信毎メディアガーデン」は、長野県が誇る新聞社の新社屋ですが、誰でも気軽に立ち寄れる複合施設でもあり、新たな会場に加わります。

ここを起点とする人気ツアー「水のタイムトラベル」では、松本在住の建築家が水や工芸、歴史などに着目した街歩きにご案内します。

3階キッチンでは「井戸端プリント」による「zine(ジン)」と呼ばれる小冊子作りのワークショップが行われます。

また、普段は閉ざされた“池上邸”の木戸が開き、蔵が一般公開される貴重な特別企画もあります。ここを会場に行われる「池上喫水社」は、松本在住のガラス作家、田中恭子さんが制作した装置を使い、L PACKという男性2人組が松本の湧水を8時間かけてコーヒーに変換するというインスタレーションです。

薄暗い蔵のなか、天井から吊られたガラス器から、細く長いガラス管を水が伝い、やがて木の床に置かれたガラス器にコーヒーが滴る。
水とガラスとコーヒーが織りなす空間で、光と香りと微かな音を感じたら、蔵の持ち主、池上さんが丹精する庭先でコーヒーを味わいましょう。

工芸の五月松本・工芸の五月・池上喫水社
松本・工芸の五月・池上喫水社
松本・工芸の五月・池上喫水社
松本・工芸の五月・池上喫水社

ほかにも松本市美術館では「草間彌生」展が、松本市内の各ギャラリーでは企画展が行われます。また、市街から少し離れますが、松本民芸館もおすすめです。館が一押しする名品が松本民芸家具で統一された館内に並びます。

 

くわしくは「工芸の五月」公式サイトまで。また、企画を網羅した公式ガイドブック“工芸の五月2018オフィシャルガイドブック”もあります。よかったら手にとってみてくださいね。

まだまだある「工芸の五月」の見どころ、続きは第2回をお楽しみに!

【工芸の五月】
期間:2018年4月29日(日)〜5月31日(木)
会場:松本市ほか、安曇野市、長野市の美術館、ギャラリーなど
オフィシャルサイト:http://matsumoto-crafts-month.com

【はぐくむ工芸 子ども椅子展2018】
期間:2018年5月1日(火)〜6日(日)10:00〜17:00(1日は13:00〜、荒天中止)
会場:あがたの森公園 平和広場(長野県松本市県3-2102-4)
オフィシャルサイト:http://matsumoto-crafts-month.com/guide/exhibition/4112.html

 

編集室いとぐち 塚田結子
「編集室いとぐち」所属。長野市・善光寺門前にて長野県の暮らしや工芸まわりの編集・執筆を行う。

文 : 塚田結子
写真:松本クラフト推進協会