こんにちは。元中川政七商店バイヤーの細萱久美です。現在、フリーでメーカーさんの商品開発や店舗運営のお手伝いをさせて頂いています。
かれこれ20年以上メーカーに属していたので、モノづくり関係の知り合いは多いと思います。
特にここ10年は日本の工芸や食品との関わりの中で、実際に自らモノを生み出す作家や職人、自社のモノづくりを熟知している経営者などと接して、その専門について学ぶ機会にも恵まれています。
その道のプロから聞く話は興味深く、我が道を歩み続けて極めていくことは、なかなかマネの出来ることでは無いと感じます。
探求熱心でプライドや誇りを持ちつつも、謙虚かつ貪欲に他から学ぶ姿勢は、見習うべき点多しです。私には作ることは出来なくても、そんな方々の姿勢や、探求の様子を見聞して、伝えることは出来そう。
私の知る尊敬すべきプロが、これはすごいと認めるモノやコトって果たして何なのかを探ってみようと思います。
まずは長きに渡る友人でもあり、仕事でもお世話になっている「まっちん」こと、町野仁英(まちのきみひで)さんが認める「和菓子」は如何に、ということで京都を一日食べ歩きして「これ」と言う逸品を探すことにしました。いつもまっちんと呼んでいるので、ここでもまっちんで失礼します。
まっちんは、知る人ぞ知る和菓子職人。最近は和菓子職人と言う肩書きはやや違和感もあります。
と言うのも、商品開発などプロデュース業も増えており、岐阜市の「ツバメヤ」の名古屋店は、限定の黄金わらび餅を求めて連日行列だとか。岐阜の山本佐太郎商店とのコラボブランド、「大地のおやつ」シリーズは中川政七商店でも安定の人気です。
まっちんは日本の良い素材にこだわって、みんなが安心して食べられるお菓子を、スタンダードなおやつとして作り続けているのがすごいところ。そして間違いなく美味しいのです。
最近では、NHKの「きょうの料理」に出演。珍しくロケありでまっちんが紹介されていました。
なかなか見ないケースで、とても良く編集されていたと思います。この番組でも、簡単でしかもまっちんらしいおやつを作っていました。今の肩書きを言うなら、「日本のおやつ職人」か?
まっちんとの出会いは約9年前くらいで、まっちんが実家の伊賀で和菓子屋を営みつつ、イベントにも精力的に参加していた頃。本わらび餅や草餅、おはぎなどまっちんが作る生菓子に、たまたま訪れた小売店のイベントで出会いました。
その時買って食べた本わらび餅の衝撃は今でも忘れられず。食感やら味やらボリュームやら初めてのわらび餅でした。
それからすぐに伊賀に会いに行ったりと、ぐいぐい行く私を怪しんだか怪しんでないかは分かりませんが、和菓子を通じて仕事と食べ歩き友となった訳です。
まっちんが手がけるおやつから、食生活もマクロビとかオーガニック?とイメージしていたのが良い意味で裏切られ、純喫茶や庶民に愛されるソウルフード好きな点でも食の好みが合います。
でも、和菓子の基本である「あんこ」への探究心や突き詰める姿勢は半端なく、そこは当然ながら単に和菓子好きの私とは次元が違います。
そんなまっちんに一番響くあんこを使った和菓子は果たしてどこのどれでしょう。
事前に厳選した京都のお店五軒を訪れました。
「神馬堂」の焼き餅
まずは、上賀茂神社そばの「神馬堂」さん。
1872年創業、140余年続く焼き餅の店です。別名葵餅と言われる門前菓子です。
餅であんこを包んで焼いたシンプルなお菓子で、素材の味と焼き加減が直に伝わります。素朴な美味しさに惹かれてお客さんが朝から絶えません。一応16時までの営業ですが、手作りなので作れる数に限りもあり、早めに売り切れることも少なくないようです。
お餅の見た目や包装紙の可愛さも含め、私も大好きなお菓子ですが、まっちんも原点のようなお菓子だと語ります。
まっちん曰く、味に無駄がなくて潔い。毎日作ってるからできる味で、地に足のついた安定感がある。
代々続いているものを淡々と毎日続けられることがすごい。みずみずしさのある餅米とあんこのバランスは、また食べたくなる味だと。
シンプルなだけに誤魔化せないから実は一番難しいかも、とは職人まっちんならではの感想です。
何個でも食べられそうなお餅ですが、先が続くのでひとまず我慢。