洗うほど柄が現れる。デニムの一大産地が生んだ「糸を使わない刺繍テキスタイル」とは

一見、薄手のしなやかなデニム生地。でも、光の当たり具合や、軽やかな生地の動きで浮き出てくる丸い柄。

雨降りの日。できた水たまりにぽつりぽつりと雨が映る様をイメージし、「水鏡(みずかがみ)」と名づけました。

▲ 色は水色と紺色の2色

中川政七商店のテキスタイルブランド「遊 中川」の春夏の新作としてデビューした「水鏡」シリーズには、日本でここしかできない、という技術「ワラカット」が活かされています。

実はこれ、生地に施した特殊な刺繍なんです。

生地の経糸(たていと)のみを特殊なメスで1本ずつ柄の形にカットするという技法で、 言ってみれば「糸を使わない刺繍」。


10オンス未満の薄手のインディゴ生地にワラカットを施すことで、生地は一層柔らかさを帯び、その後から洗いをかけることで、生地と模様部分に絶妙な色合いが生まれ、表情をつくりだします。

ワラカットを施すのは美希刺繍工芸さん。刺繍加工に特化した、広島県福山市のメーカーです。


糸のほつれが模様になって浮かび上がる


刺繍というと、ネームを入れたり、絵柄を生地に縫いこむイメージがあります。

美希刺繍工芸でもロゴ、ネーム、柄などの直接刺繍やワッペンを手掛けていますが、それだけではありません。

「こんなことが刺繍でできるの?」と刺繍の概念を覆す斬新な発想で、新たなテキスタイルを創造。刺繍の可能性と領域を広げてきました。ワラカットは、そんな数ある中の一つ。


「刺繍をしながら生地に穴あきをつくるには?と考え出した手法が、ワラカットです」と語るのは、同社代表取締役社長の苗代次郎さん。





「生地は経糸 (たていと)と緯糸 (よこいと) からできているので、先に生地に丸く縁取りしてから内側の糸を切れば、生地に水玉のように穴をあけられます。

でも、糸を縫い付けていく刺繍の機械では、穴をあけることはできません。

うまく糸を切るには、刺繍機の針をメスにすればいい、と考えました。

もちろん『メスのような針』は市販されていないので、既存の刺繍針を加工して砥石やグラインダーで研ぎ、自らメス状に手づくりしました」



▲ 苗氏さんが独自に開発した経糸をカットするメス。はじめは中々思うように生地がカットできず、何度も形状を変え試作して、やっと現在のメスの形状・切れ味になったそうです



このように、針をメスに変える発想から、経糸だけを切って柄を表現する「ワラカット」を開発。

生地の経糸だけをメスで切ると、一見、何の変哲もない生地に見えますが、洗い加工することによって切った経糸のほつれが広がり、ほつれた部分が模様となって浮かび上がります。






洗うと花が咲くように、カットした経糸の一つ一つのほつれ目から繊細な表情が生まれ、独特の風合いの生地に仕上がる、というわけです。


▲ 原反に刺繍する機械






ワラカットに使うメスは、1、2回使うごとに研磨。メスをつくるだけでなく、研磨するのも同社独自の技術です。



▲ 原反に刺繍する機械



▲ まさに先ほどのメス状の針で生地に「糸のない刺繍」が施されているところ。「新しいものづくりができるのは、メカを知っているから。新しい刺繍を開発するときも、必要な機械を考えるところから始めるんです」と苗代さん




▲ジャパンテキスタイルコンテスト、ものづくり日本大賞など、数々の受賞歴を誇る


この技術を駆使して生まれたのが、無地のようでニュアンスのあるテキスタイル「水鏡」です。



▲ こちらはブラウス。うっすらと水玉模様が浮かび上がる





▲ ワンピース



▲ こちらはスカート

 

独学でミシンのメカニズムを習得し、独創的な刺繍を展開


「ワラカットは1995年ごろ開発し、かれこれ25年になりますが、特許は取得していません。

メスからつくりあげてきた技術とノウハウは、盗作も真似もできないという自負があるので、特許を取るまでもないのです」と苗代さんは自信を見せます。

美希刺繍工芸を起こす前には、作業服メーカーに勤務していた苗代さん。入社して、いきなり縫製用ミシンの修繕を担当することに。

全くの未経験から、独学で修繕技術を習得していくうち、縫製用も刺繍用もミシンの基本動作は同じと気づいたそうです。

ペン字の有段者で字を書くことが得意だった苗代さんは、すっかり詳しくなったミシンの構造(メカニズム)ノウハウを生かし、刺繍機を使ったネーム刺繍を専門に手掛ける事業で独立します。

東京で事業をしていましたが、父親が亡くなったため、福山に帰郷。以来、ネーム刺繍からカジュアルウェアへの刺繍に切り替え、事業を展開。次々と従来にないユニークな刺繍を生み出してきました。

 

唯一無二の刺繍技術が育まれたのは、デニムの産地福山


実は今回の「水鏡」テキスタイルは、生地の織りからワラカット加工、縫製、洗いやブリーチ、仕上げに至るまで、全ての工程が美希刺繍さんのある福山で完結しています。

「日本でここしかできない」という独自の刺繍表現を美希さんが生み出せる背景には、この福山の土地柄も深く関係しているのです。

日本最大のデニム生地産地である広島県福山市。

染色、織布、加工、縫製など、それぞれの工程が完全に分業化され、それらが集積して産地を形成しているため、個々の企業は専門技術を絶え間なく高め合っています。

今回のワラカットのようなユニークな刺繍加工は、そのままデニム生地に仕立てた時の付加価値、競争力になるのです。



▲ 美希刺繍さんの特殊な刺繍は他にも。こちらは「モザイク刺繍」。360度回転するメスを装着した刺繍機を開発し、素材を様々な形にカットしながら、モザイク風に生地に縫いつけていきます

 



▲ こちらは木材への刺繍サンプル。木や革など、美希さんの刺繍技術は繊維以外の素材にも広がっています


ワラカット加工による「水鏡」テキスタイルが実現したのも、今回の生地を手がけた福山市のデニム生地メーカー、篠原テキスタイルさんが美希刺繍さんと普段から交流があり、その技術をよく知っていたから。



▲ 美希刺繍さんの工場にて。苗代さんの説明に耳を傾けるのは、今回のデニム生地の織りを手がけた、篠原テキスタイルの篠原さん親子

 


こうして、水たまりと雨をモチーフにした大きな柄をワラカットで入れることで、無地のようでニュアンスのあるテキスタイルが生まれました。

涼やかなデザインの裏に、作り手の熱い想いと産地のパートナーシップあり。ぜひ手にとって、その刺繍の不思議な魅力を感じてみてください。

 

<取材協力>
株式会社美希刺繍工芸
http://www.miki-emb.co.jp/

篠原テキスタイル株式会社
https://www.shinotex.jp/


文:神垣あゆみ
写真:福角智江

【わたしの好きなもの】「パイルガーゼ縞バスタオル」

タオルって何を基準に選べばいいんだろう‥‥?

引越しや新生活に合わせて新調することも多いタオル。私も引越しを機に、なにか同じシリーズで揃えたいな、とは思いつつ‥‥どうしても決めかねてしまい、結局、気になったものを少しずつ試しながら使っていました。

タオル選びのポイントというとやっぱり「吸水性」や「肌ざわり」が気になるところ。ふんわり優しい肌ざわ触りが好きな人、ごしごし拭きたい人、好みの触感や使い方もいろいろありますよね。調べ始めるとそれぞれ特徴があって悩んでしまいます。

私の場合、洗濯物を部屋干しすることも多いので、とくに大きいバスタオルは「乾きやすさ」も重要でした。

使ってみてこれは!と思ったのがこの「パイルガーゼバスタオル/縞バスタオル」。パイル&ガーゼ構造で、吸水性とやわらかさのバランスの取れた高品質のインド産コットンを100%使用し、やわらかな肌触りになるようパイルは甘撚りに仕上げています。

厳しい基準をクリアした今治タオルの認証付きで丈夫さもお墨付き。パイルの吸水性とガーゼの肌ざわりを両立した、まさにいいとこどりのタオルでした。

なんといってもこのタオル、片面パイル片面ガーゼであることがポイントです。

一般的な両面パイルのタオルに比べて薄手なので、まずはその乾きの早さに驚きます。早く乾いてくれるので、嫌なにおいがこもることなく、タオルを清潔に保てます。また賛否あるとは思いますが、使用後干してまた使われる方にもおすすめです。

薄手であることにはまだまだメリットが。かさばりがちなタオル収納がとてもすっきりしました。ご家族の多いおうちには嬉しいですよね。汗拭きタオルや旅行、銭湯などの際にも大活躍。赤ちゃん用に持ち運ぶ方にもおすすめです。

そして、ガーゼは使うほどにやわらかくなるのも特徴。タオルは長く使うとどうしてもへたったり、ごわごわしたりが気になりますが、ガーゼなら風合いが長持ちします。赤ちゃん用品にも多く使われるガーゼ素材は、肌へのストレスが少なく、肌にあてるとすっと水分を吸収してくれますよ。

私はバスタオルでこのシリーズを使っていますが、頭はパイル面でしっかり、顔や体はガーゼ面で優しく、と使い分けています。背中をごしごしと拭いても気持ちがいいんです。

肌ざわりもよく、毎日気兼ねなくタフに使えるタオルをお探しの方は、一度ぜひお試しを。
バスタオル・フェイスタオル・ウォッシュタオルの3サイズ展開で、無地・縞の2柄、色も各3色から選べるので、色トーンや柄を合わせて揃えられるシリーズです。


大名古屋ビルディング店 芦田


<掲載商品>
パイルガーゼバスタオル


【わたしの好きなもの】シーサー ミニミニ

「だって、目が合っちゃったんだもん」


皆さん、お洋服やバッグなど、なにかに一目惚れした経験があると思います。その対象が“顔”のあるものとなると、正に目と目が合う瞬間があるのです。それはもう、赤い糸で繋がっているとしか言いようがない感覚を覚えます。

郷土玩具が好きな人ならきっと理解してくれるであろうこの気持ち。


一点一点職人さんの手によって丹精込めて作られた作品は表情や風合いがそれぞれに異なっており、人間の個性そのもののように感じます。

今回紹介する「育陶園シーサー」も、私と赤い糸で結ばれた相手の一人(二人?)です。

シーサーは沖縄に古くから伝わる守り神で、もとを辿ると紀元前エジプトのスフィンクスにルーツがあると言われています。シルクロードを経て中国から沖縄に伝わり、日本に残存する最古のシーサーと言われる「富盛(ともり)の石彫大獅子」が作られたのは300年以上も前の1689年。

それ以来、家の守り神として沖縄の人々に愛され続けてきました。シーサーの置き方に特に決まりはないそうですが、口を開けた右側の雄は悪霊を追い払い、口を閉じた左側の雌は幸せを呼び寄せて逃がさないとされ、二体で置くのが一般的とされています。

育陶園は那覇に300年続く壺屋焼の窯元。育陶園シーサーは、現代の名工に指定されている髙江洲育男氏の遺した型をベースに半手捻りで製作されています。

このシーサーミニミニはサイズこそかわいらしいですが、威厳がありながらもどこかコミカルで柔和な表情、立体感のある巻き毛、逞しい筋肉の質感など、大型のシーサーにも引けを取らない風格を備えています。




私がシーサーミニミニに出会ったのは昨年末、中川政七商店で働き始める前のことでした。通販サイトを眺めることを日々の癒しとしていたとき偶然目にとまり、実物を見たくてオープン間もない渋谷旗艦店に出掛けました。

すると、「仝(おどう)」と呼ばれる中央スペースに居ました、居ました、シーサーたち。

見た瞬間、これはもう「買い!」、即決でした。

手に取ってまず驚いたのがずっしりとした重量感です。守り神ですもの、あまりふわふわしていては不安になるというものですが、育陶園シーサーは手に伝わる重みから十分な安心感を与えてくれました。

さて、迷ったのが色です。一色仕立ての「辰砂」は飽きが来なくて良さそうだし、「緑釉」の緑は心が落ち着きそうだし、「青釉」の青は発色が素晴らしく綺麗だし、どうしよう、迷う、決められない・・・。

店員さんに助けを求めると、シーサーには特に色の決まりはないけれど、青は誠実さの象徴とされていることを教えて頂き、すんなり青釉に決定しました。あとは青の中から目が合う子を選ぶだけです。ほんのわずかな牙の傾き具合や眉間の距離、色の濃淡によって受ける印象が全く違うのが手作りの良さであり、面白さですね。

一つ一つ違うからこそ愛着のある「私のもの」になっていくのだと思います。大満足で帰宅すると、主人と息子が発熱で寝込んでおりました・・・シーサーの力よ、いずこに。

私はシーサーをはじめとする数々の飾り物たちに日々癒され、励まされながら生活しています。毎日見ても飽きることがありません。それはきっと眺める自分の気持ちが日々変わるからで、違う気持ちで眺めると違う返事を返してくれるのだと思います。

これからどんな相棒たちに出会えるのか、運命の相手と目が合う瞬間が楽しみです。



日本市羽田空港第2ターミナル店 玉野

【わたしの好きなもの】立ち仕事の疲れを軽くしてくれる靴下

「普通の靴下とどう違うんだろう?」そう思ったのが最初の印象でした。

 
接客販売職にとってもはや職業病ともいうべき足の疲れ。わたしもその例に漏れず、長年、慢性的な足の疲れに悩んでいました。
 
お風呂でマッサージをしたりシップを貼ったりして対処しても、なかなか改善しない。
ひどいときは靴下のゴム部分の周囲が浮腫みで真っ赤になることも‥‥。
もうこれは「仕方がないのかな~」と半ば諦めていました。

 
そんな時に「しめつけないくつした」と出会います。
 
ちょうど、中川政七商店に入社してすぐのころ。ようやく色々な商品のことを少し覚えてきた私はこの商品をみて、冒頭のような疑問を抱いたのです。
 
説明には、“履き口がしめつけずやわらかい” とあります。
 
なるほど。試しに履いてみると、確かにゴムで留めている感じはほとんどない。
それでいて、踵がずれてこないから歩きやすい。


「何だこれすごい不思議!」が第二の感想でした。




特に驚いたのは一日の終わり。帰宅して靴下を脱いだ時。
 
それまで当たり前に付いていたゴム跡がほとんどついていなかったのです。
仕事後なのに浮腫みも無く、なんとなく足が軽いような‥‥???
 
それからというもの、連続勤務の日もこのシリーズの靴下を履いて毎日試してみました。
 
結論は「疲れ方が段違いに軽い」!!!
 
浮腫みで足が真っ赤になることもなくなりました。
 
この靴下は足のトラブルでお困りの方にこそお勧めしたいです。
敏感肌で痒くなる、浮腫みやすい、やわらかい肌触りやフィット感を求める方などなど。
可愛くて合わせやすい柄がたくさんあるので、足元のオシャレを楽しみたい方にもぴったり。






私のお気に入りはcubeシリーズです!




福岡パルコ店 米田

5月2日、緑茶の日。夏も近づく八十八夜におすすめのお茶

5月2日は、「緑茶の日」です

夏も 近づく 八十八夜~

「茶摘み」の歌にあるように、立春から数えて88日目のきょうは八十八夜。春から夏になる節目の日です。ちょうどこの頃、茶摘みが最盛期であることから1990年に日本茶業中央会が「緑茶の日」と制定しました。

お茶の葉にとって霜は大敵。この八十八夜までは遅霜が発生することがあるので、茶葉を守るために藁(わら)をかぶせて霜を防ぎ、八十八夜になると安心して新茶の摘み取りをはじめるのだそうです。

もちろん、お茶の産地によって温暖差があるので実際の時期はそれぞれかもしれませんが、八十八夜の日に摘んだ茶葉は不老長寿の縁起ものとして、昔からとても貴重なものとされています。

縁起をかつぐという意味合いだけでなくこの時期のお茶は極上品!お茶の新芽には、ひと冬の間じっくり蓄えられた成分がたっぷり詰まっています。やわらかく甘い茶葉は、うまみがあり若々しい香りも楽しめるのだそうです。

奈良最古の製茶問屋「北田源七商店」の緑茶

新茶ももちろん味わいたいですが、お茶は普段から気軽に楽しみたいもの。奈良最古の製茶問屋「北田源七商店」は、老舗の経験を生かした美味しいお茶を提供しています。

緑茶は通常、単一の茶葉だけではなく、産地や品種、季節などによって異なる茶葉の特長を見極めてブレンドするという「合組(ごうぐみ)」という技術によってつくられます。

核となる「芯」、風味を加える「添」、香りをひきたたせる「香」、色を決める「水色」において、バランスよく「合組」することで、より奥ゆきのあるお茶に仕上がるのだそうです。

「北田源七商店」が「合組」によってブレンドした毎年いちばんのお茶。味と香りはもちろんのこと、色の美しさも一見の価値あり
ていねいにつくられた本格的なお茶を手軽に楽しめるティーパック包装のお茶
合組茶2種に「北田源七商店」オリジナルの茶小紋柄の布がついたギフトセットも
白い花が愛らしい茶小紋柄の布は、湯のみや茶器を拭ったりするのに便利
白い花が愛らしい茶小紋柄の布は、湯のみや茶器を拭ったりするのに便利

忙しい毎日の中で、お茶を淹れてひと息つく時間ってわりと大切です。茶のみ仲間、なんて言葉もありますが気の置けない誰かと一緒に、ほんの少し気持ちをゆるめることでなんだかほっとしますよね。「緑茶の日」のきょうは、そんな時間を楽しめるといいなと思います。

<掲載商品>
大和冠茶/大和露地/源作焙(北田源七商店)
※ 現在は取り扱いを終了しています

<関連商品>
中川政七商店 ECサイトお茶

<取材協力>
北田源七商店
奈良県天理市蔵之庄町415-1
0743-65-1064
http://kitada-genshichi.jp

文:杉浦葉子

*こちらは、2017年5月2日の記事を再編集して公開いたしました

1日1釜の「五勝手屋本舗」羊かん。くるりと糸で切っていただく北海道銘菓

北の銘菓をコンパクトに

旅先で見つけた美味しそうなお菓子。お土産にしたいけど、あの子は1人暮らしだから大きな箱のものは困るかな。もちろん自分でも少し食べてみたい‥‥と、そんなとき。

本格的なお菓子の味はそのままで、小さなサイズのものがあるといいのにな、と私はよく思います。しかも、パッケージも素敵だとなお嬉しい。そんな想いを知ってか知らずか、嬉しいサイズのお菓子を見つけました。

「五勝手屋本舗」の「ミニ丸缶羊かん」

北海道桧山郡江差町にある「五勝手屋本舗」。そのルーツは慶長年間(1596〜1615年)から。あるとき南部藩からヒノキの伐り出しに来た「五花手組(ごかってぐみ)」が、蝦夷地で豆を栽培してみたところ、はじめてうまく実らせることができました。

この豆をつかった紋をかたどった菓子をつくり、藩公に献上したところ大変喜ばれたそうで、これを記念して屋号を「五花手屋」のちに「五勝手屋」としたのだそうです。

「五勝手屋本舗」が本格的に羊かんを販売しはじめたのは明治3年(1870年)。北海道でとれた豆と、北前船で運ばれた寒天砂糖を使用してつくられました。当時の製法は今も変わらず和菓子職人に受け継がれています。

そんな「五勝手屋本舗」の「ミニ丸缶羊かん」は、小さな筒に入った羊かん。筒の底から羊かんを少しずつ押し上げて出し、筒についた糸をくるりと回して切っていただくことができます。

糸を羊かんに引っ掛けるようにするだけで簡単に切れるんです。
糸を羊かんに引っ掛けるようにするだけで簡単に切れるんです
「丸缶羊かん」は昭和14〜15年ごろ、手をよござずに羊かんを食べられる工夫として考案されたもの。甘さ控えめでペロリと食べてしまいます。
「丸缶羊かん」は昭和14〜15年ごろ、手をよござずに羊かんを食べられる工夫として考案されたもの。甘さ控えめでペロリと食べてしまいます
左から、「流し羊かん(2本)」、「ミニ丸缶羊かん」、「丸缶羊かん」。どんと大きな羊かんも嬉しいですが、ちょこっとあげたい、ちょこっと食べたいときに嬉しいのはミニサイズです。
左から、「流し羊かん(2本)」、「ミニ丸缶羊かん」、「丸缶羊かん」。どんと大きな羊かんも嬉しいですが、ちょこっとあげたい、ちょこっと食べたいときに嬉しいのはミニサイズです
レトロな包装紙の模様(左)は、明治時代に品評会で授与された賞状を模したもの。歴史あるパッケージは、ハッと目を引きます。
レトロな包装紙の模様(左)は、明治時代に品評会で授与された賞状を模したもの。歴史あるパッケージは、ハッと目を引きます

「五勝手屋羊かん」の特徴は「1日1釜」、早朝から煮上がった豆と寒天、砂糖を合わせて1日がかりで練りあげるのだそうです。

手間を惜しまずに丹精を込めて、毎日、毎日、同じように続けてきた製法こそが、変わらぬ安心感を感じさせてくれるのだろうな、と思います。

<取材協力>
株式会社 五勝手屋本舗
北海道桧山郡江差町字本町38番地
0139-52-0022
http://www.gokatteya.co.jp

※こちらより購入できます
http://www.gokatteya.co.jp/fax/index.html

文・写真:杉浦葉子

*こちらは、2017年3月16日の記事を再編集して公開いたしました