常識を覆す「THE」カトラリー。“無理”から始まった工業と工芸の融合

世の中の定番を新たに生み出し、これからの「THE」をつくることをテーマに、様々な既存の商品をアップデートしてきた「THE」のメンバー、水野学、中川政七、鈴木啓太、米津雄介。これまで飯茶碗、醤油差し、洗濯洗剤、はさみなど多様な製品をリデザインしてきた「THE」が、次のテーマに定めたのがカトラリーでした。

スプーン、フォーク、ナイフといったカトラリーを一新するために声をかけたのは、知る人ぞ知る新潟のものづくりメーカー、大泉物産。

株式会社 大泉物産
株式会社 大泉物産

デンマーク王室御用達のカトラリー「KAY BOJESEN(カイ・ボイスン)」、デンマーク王室から叙勲された著名なデザイナー、オーレ・パルスビーが最後に手がけたカトラリー「ICHI」などを製造しているほか、多くのコンテストで賞に輝いているオリジナルブランド「TRIO」も手掛けています。

大泉物産
多くの名カトラリーを手がけてきた

新しいカトラリーはなにが違うのか。なにを目指したのか。「THE」の代表でプロダクトマネージャーの米津雄介さん、大泉物産の代表取締役 社長 大泉一高さん、製造部長の大泉達夫さんに話を聞きました。

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「平べったい形」への疑問。カトラリーの新しい価値を模索

——「THE」ブランドでカトラリーをつくろうと思った理由を教えてください。

米津:大昔は銀食器の時代で、持ち手が分厚かったり、立体だったりしたものが多かったんです。でも、今はほとんどのカトラリーがステンレスの板からつくられていて、平べったい。これは20世紀の工業的な発想で、素早く効率的に品質の良いものをつくる技術なんですよ。

THE株式会社 代表取締役 米津雄介さん
THE株式会社 代表取締役 米津雄介さん

一方で、プロダクトデザインとして考えた時に、本当にこの形がいいんだろうかという疑問がありました。例えば、フォークはクルクルと回して使うことがありますよね。そうすると持ち手が丸っこいとか、立体的であることも、カトラリーとしての当たり前の価値ではないかなと思ったんです。

そこで「THE」のメンバーといろいろ試行錯誤した結果、楕円形の柄にしようという結論になりました。加えて、ナイフ・フォーク・スプーンは、切る・刺す・すくうというように、道具としてぜんぜん違うものなので、それぞれの機能にどうやって特化するかを考えました。

これは「無理だ」からのスタート

大泉(一):米津さんから初めに相談を受けた時に、非常に難しいと感じました。特に持ち手の部分ですね、これは困難だと。

ただ弊社としても、これまでと同じものづくりを続けているだけでは成長がない。ご相談いただいたことに、できる限り“No”とは言いたくないですし、チャレンジしてみようと思いました。

株式会社大泉物産 代表取締役社長 大泉一高さん
株式会社大泉物産 代表取締役社長 大泉一高さん

——なぜ、大泉物産に声をかけたんですか?

米津:我々の直営店のTHE SHOPで、大泉さんがつくっているカトラリーブランド、カイ・ボイスンを販売させて頂いてるんです。これが本当にいいカトラリーなんですよね。

今回、世に出回っているカトラリーを集められるだけ集めて「THE」のメンバーで食事をして使ってみたんですが、その中でも使い心地がピカイチなんですよ。それで、「THE」のカトラリーとして新たな定番をつくるなら大泉さんと一緒にやりたいと、相談させていただきました。

多くのカトラリーが並ぶ、大泉物産のショールーム
多くのカトラリーが並ぶ、大泉物産のショールーム

大泉(達):ありがとうございます。

でも、いつも現場を見ている私も社長と同じく、楕円形の柄の設計図を見た瞬間に「これは無理だ」と思いましたね(笑)。

通常のカトラリーは、単純にいうとクッキーの型みたいな金型で素材の板から形を抜くんです。しかも、素材の厚さは通常5ミリ程度。今回のオーダーでは、7ミリある楕円形の柄にしたいということで、それは従来の方法じゃできないんですよ。

ほかの方法を考えるにしても、とにかく手作業が多くなるイメージがあったので、コスト的に厳しくなるだろうし、正直に言うと「やりたくないな」と感じていました。

大泉物産 製造部長 大泉達夫さん
大泉物産 製造部長 大泉達夫さん

「THE」がパートナーを選ぶ基準

米津:僕もプロダクトデザイナーの鈴木啓太もずっとものづくりに関わってきたので、僕らが考える技術的に可能な範囲を設定し、それに沿って設計します。

ただ、僕らが当初考えていた「熱間鍛造」(素材を高熱で加熱して柔らかい状態で加工する方法)だとコストが合わなかったんですよね。想定よりもかなり高くなってしまって、困りました。

別の方法を考えなければいけないという時に、「これまでにないカトラリーをつくりましょう」という僕らの提案を、大泉さんの会長、社長が前向きにとらえてくださり、最終的には現場の皆さんも「これができたらすごいよね」という想いを共有していただきました。

大泉(逹):社長がやると決めたら、私たちはもう腹をくくってやるしかないですからね(笑)。それからは「できない」と考えるのはやめて、どうすればできるのか、金型屋さんを呼んで相談しました。そうしたら、「吸い込み」という技術が使えそうだとわかったんですよ。

でも、実はもう何十年も前に会長が「吸い込み」でものづくりをしようとして大失敗して以来、うちではやったことがなかった技術なんですよね。金型屋さんも、部分的にしかやったことがないという話で、結局、カトラリーの柄を「吸い込み」したことがある人はいませんでした。

THEカトラリー
手に馴染むように、立体的な持ち手にチャレンジした

大泉(一):この「吸い込み」は、昔は燕でもよく使われていた技術でもあるので、もう一度、うちの方で構築してみたいなと。昔よりも金型の精度も上がっているし、チャレンジしてみようと考えました。

数々の試作を経て、満足のいく持ち手に近づいていった
数々の試作を経て、満足のいく持ち手に近づいていった

米津:以前に大失敗していたら「絶対やめろ」って言われそうですけど、そこで挑戦させてくれたのが嬉しかったですね。

どうやってパートナーさんを選ぶのかってよく聞かれるんですけど、つまるところ、チャレンジしてくれるかどうかなんですよ。そして、チャレンジしてくれるかどうかは、ものづくりが好きかどうかだと僕は思っていて。大泉さんは会長も社長もお会いした時に、すごくものづくりが好きなんだなって感じたんですよね。

大泉(一):弊社には、「洋食器を研磨したい」というモチベーションで移住してきた社員もいます。みんなものづくりが好きなんだと思います。

大泉社長

特に昔は住宅と工場が隣り合わせだったので、ものづくりが今よりも身近にありました。その中で自然と何かをつくることが好きになったように思います。

今は工場が離れたところにあるので、子どもたちがものづくりに触れられないまま大人になってしまう懸念があります。行政とも協力して体験学習などに取り組んでいるところです。

大泉物産
大泉物産
大泉物産
ものづくりが好きで大泉物産に集まってきた社員の方たち

7ミリという数字へのこだわり

——「吸い込み」はどういう技術なんでしょうか?

大泉(達):今回、素材の板は、通常のカトラリーで使用する5ミリのものを使いました。それを楕円形にするために、余白を大きくして型抜きをするんです。次に横から楕円形の金型でググッとプレスすると、7ミリの厚さになります。本当に微妙な調整が必要で、何度もトライ&エラーを繰り返しました。

「吸い込み」用につくられた金型
「吸い込み」用につくられた金型
吸い込み
縦方向からプレスして、厚みを出していく

米津:本当に苦労をおかけしましたが、7ミリという数字には、非常に大きなこだわりがあったんです。

普通のカトラリーの場合、どうしても頭の方が重くなってバランスが悪くなったり、手が疲れてしまう。今回、僕らはそれぞれのカトラリーの質量や重心がどこに来るかを綿密に計算して、最適なバランスが得られる数値として出てきたのが7ミリだったんです。

THEカトラリー
7ミリという厚みにこだわった、持ち手の部分
THEカトラリー
使う際のバランスを考え抜いて、7ミリの持ち手という結論にたどり着いた

突破口となった金型屋のアイデア

——頭の部分のこだわりを教えて下さい

米津:それぞれの機能に特化した部分では、フォークが一番面白いし、わかりやすいですかね。コンセプトは「よく刺せるフォーク」。普通のフォークの歯って、4本が平行についていますが、今回のフォークは真ん中の2本がちょっと上がっていて、端の2本は下がっています。

さらに、歯が少し湾曲するようなオーヴァル状のデザインにすることで、物理的に刺す角度を変えて、フォークを刺した時にすぐに抜けてしまうことを防ごうというアイデアです。

もうひとつの特徴は、歯と柄の間の部分を深くくぼませて、スプーン状にしたことです。立体的にくぼませることによって、「すくう」という機能も兼ねることを考えました。

THEフォーク
オーヴァル状の歯と、スプーン状のくぼみにこだわった「フォーク」

大泉(達):フォークの形状を見て、これも難題だなと思いました(笑)。我々は「つぼ型」と呼んでいるんですが、くぼんでいる部分を金型で出そうとすると、フォークの歯が中央に寄ってしまうんですよ。

これをどうしようかと金型屋さんに相談したら、ダメもとでやってみようと提案してくれたのが、先端部分を反るようにして曲げてから、「つぼ」の部分を押し込んでくぼみをつける方法。これも初めて見るやり方だったんですが、半信半疑で試してみたら、うまくいきました。

フォークの頭部分の型
フォークの頭部分の型
THEフォーク
歯を反対方向に曲げてからプレスすることで、上手くいった

米津:おもしろい!どういう理屈なんでしょうね?

大泉(達):金型屋さんの経験からのアイデアで、理論的にどうだと聞かれると、なんでだろう?というのが正直なところです。

大泉物産
ものづくりの現場にはユニークな知見が埋もれている

米津:なるほど。ものづくりの現場にいくと、熟練の職人さんだけが知っている感覚的でユニークな知見がたくさん埋もれていますよね。

大泉(達):本当にそう思います。

米津:スプーンは、とにかく「よくすくえる」ことを重視しました。くぼみの真ん中から外側に向かって、素材がだんだん薄くなっています。

それと、これは元々、大泉物産さんの「ひらめん」という技術で、すごくいいなと思って使わせてもらったんですけど、スプーンの端の部分に水平な面を出しています。

この形状にすることによって、例えばカレーやスープの最後の一口がすくいやすくなると同時に、すごく口当たりが良くなるんですよ。これもまた、面倒なデザインだったと思います。

端の部分にほんのわずかだけ水平な面がある
端の部分にほんのわずかだけ水平な面がある
THEスプーン

大泉(達):フォークほどじゃありません(笑)。そして、ナイフはさらに大変でした。

米津:(笑)。

常識では考えられないデザイン

米津:一般的に、カトラリーナイフは安全性の面からあまり切れないようにしてあるじゃないですか。だから、レストランに行くと、お肉にはステーキナイフがついている。でも、自宅で使うことを想定したら、わざわざステーキナイフを用意するのも面倒ですよね。

それで、ギリギリ安全性を担保しながら、ものすごくよく切れるナイフをつくりましょうということで、刃物として「刃付け」をしてくださいとお願いしました。

もうひとつ、普通のナイフの刃は一定の厚みなんですが、立体のハンドルと同じ厚みをキープしたまま、先端の刃に向かってシュッと鋭くなっていくデザインを考えました。お肉を切るというより、断面を押し広げて、割く力を強くするイメージです。

これも、最初に僕らが図面を持っていった時、「できるはずがない」と言われました(笑)。

THEナイフ
切れ味と形状にこだわったナイフ

大泉(達):いままでの常識では考えられないデザインだったんです。ナイフづくりに携わっている人に相談したら、『この世に同じ形状のものがない』と言われて。

そこまで言われると、逆に挑戦する価値があるよね、とスタートしたんですが、鍛造屋さんに相談に行ったら、やっぱり「できません」と言われました。

大泉物産

米津:僕らがデザインしたようなナイフは確かに存在しないので、通常のナイフの形状とどちらがよく切れるのかは、正直なところ、わからなかったんです。でも、これまでにない形状でよく切れるというナイフをつくれたら素敵だよねということで大泉さんとも意見が一致して、チャレンジしてもらいました。

「できない」を「できる」にするために

大泉(達):独特の形状は、通常1回の工程を2回にすることで実現できたのですが、切れ味を出すのが本当に難しかったですね。最初はもう手で削るしかないとも思ったんですが、手で削ると安定した数値が出せないんですよ。そうすると、形状的に素晴らしくても、モノによっては切れなくなる可能性が出てくる。

それを避けるために、やはり機械で加工しようということで、あれこれ試しました。

何かいい方法はないかと、刃の磨きのプロのところに相談に行ったんです。最初は教えてもらえなかったんですが、何度か通っているうちに、刃の付け方と磨き方を指導してくれたんですよ。その通りにしてみたら、見事に切れるナイフになりました。具体的な方法はトップシークレットです。

米津:それもすごい話ですね。今回のカトラリーは企画してから完成までにだいたい1年ぐらいかかりましたが、最終的に、効率的にいいものをつくる工業製品としての技術と、刃付けや磨きといった工芸的技術のハイブリッドでつくることができたと思っています。

米津社長

大泉(達):そうですね。今回、改めて「何でも試してみるもんだな」と思いました。

見たこともやったこともない依頼が来ると、頭の中で「できない」と考えてしまうもんです。でも、いろいろな人に相談しながら何度も試すと、無理だと思っていたことも、できることがある。それを実感しました。

そうやってこれまでにない知見を得られることは大泉物産の大きなプラスになりますし、今回、チャレンジした甲斐があったなと思います。

大泉物産
大泉物産
大泉物産
社員から新しいアイデアが出てくることもある。まさに一丸となったものづくりを実践している

大泉(一):今、一人や家族で経営されているような研磨業、溶接屋さんなんかが続かなくなってきている。そこをなんとかできないかという課題があります。

ものづくりの工場が集積して切磋琢磨し、時には今回のようにノウハウも教えあうのがこの地域の強みです。

こうした状況でみなさまに評価されるものづくりを続けていけるように、これからも取り組んでいきたいと思っています。

——みなさん、今日はありがとうございました。

<取材協力>
株式会社大泉物産
https://www.ohizumibussan.jp/
THE株式会社
http://the-web.co.jp/

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文:川内イオ
写真:浅見直希、THE提供

中川政七商店のものづくり実況レポート。「さんち修学旅行」和歌山高野口のパイル生地編

2019年8月、ある日の朝8時。

南海線なんば駅に、中川政七商店のテキスタイルブランド「遊 中川」の店長たちが集合しました。

今日は「さんち修学旅行」の日。

学生の修学旅行とは、ちょっと違います。

「さんち修学旅行」はお店で扱っている日本各地のものづくりの魅力を、自分の言葉で語ってお客様にお伝えするべく、現場を実際に見て理解を深めるという、私たちスタッフの勉強の場。

現場で見た感動がきちんとお客様に伝わったら、中川政七商店が目指す「日本の工芸を元気にする!」第一歩になるはずです。

今日集まったのは北は札幌から南は博多店まで5名の店長たち。

電車で向かうは和歌山県高野口。さぁ出発です!

午前の部は私、遊 中川 ecute上野店の店長、田中がレポートを書かせて頂きます!
 

和歌山県高野口へ


遊 中川では、日本各地にある様々な生地の産地と一緒に、毎シーズンの新作テキスタイルを作っています。

今回はお邪魔した和歌山県高野口というエリアは、今年の新作テキスタイル、『パイルジャカード網代』シリーズなどの生地が作られている産地です。



なんば駅から電車に揺られること1時間ちょっと。和歌山に降り立つのさえも初めてな私です。

ですが、高野口という地名は以前から店頭で知っていました。

遊 中川の布製品には、その生地が生まれた産地や技術背景を伝える、テキスタイルタグが付いているのです。

そこに書かれてあった「高野口」という地名。実際は、どんな場所なのでしょうか。

降り立ったのは高野口エリアの中心、橋本駅。駅前で素敵な笑顔で私たちを出迎えて下さったのが、株式会社中矢パイルの中矢社長です。

新作の「パイルジャガード網代」のジャガード生地を製造してくださったメーカーさんです。

今日はよろしくお願いします!の気持ちをこめてみんなで一礼。ここからは車で移動します。

車に揺られていると、広々とした紀ノ川の景色が見えてきました。



紀ノ川は中川政七商店の創業の地、奈良から流れているらしいのですが、遠くから見ても本当に水がきれいです。

なんでもこの紀ノ川で泳いで育った子どもたちの中に、水泳の某有名選手もいるのだとか…!

中矢さん曰く「ものづくりには綺麗な水はかかせない」とのこと。

なるほど。そういえば昨年お邪魔した堺の注染手拭いのメーカーさんも、そう仰っていたことを思い出しました。

「ものづくりの産地にはきれいな水あり」なのかもしれません。
 

新作テキスタイルが作られるのは、世界唯一の「ある素材」の産地


霊山・高野山の麓に広がるこの一帯は、実は世界唯一の「特殊有毛パイル織物」の産地。

と書くと難しそうですが、国会議事堂や新幹線の椅子張りも、高野口のパイル織物が使用されています。一方で世界的なブランドのドレスやコートにも採用されるなど、活躍の幅が広い素材です。

最近では、高品質な「エコファー」 (フェイクファー) の産地としても国内外から注目されています。


▲今回のパイルジャガード網代シリーズにはパイル織物 (上のグレーの部分) とエコファー(もこもこの白い部分) 両方が活かされています

中矢さんとお話しながら、あっという間に1箇所目の見学場所に到着。やってきたのは木下染工場さん。

後に紹介する、中矢パイルさんで織った生地に色をつける「染め」のメーカーさんです。

今回の遊中川の新作『パイルジャカード網代』の場合は、

「織り」…後ほど見学する中矢パイルさん

「染色」

「シャーリング」 (生地のケバケバを無くし、手触りをよく工程) …こちらのメーカーさんも後ほど登場します!

中矢パイルさんに再び戻り「生地のチェック(検査)」

を経て生地が完成します。このように産地の中で工程が分業されているんですね。

この中でも「染め」を担当する木下染工場さんの詳しい工程は次の通り。

1、染める



2、余分な染料を洗い、絞る
3、脱水
4、生地を畳む



5、乾燥させる

ちなみに上のたたんでいる生地は、お掃除用のクロス生地。

私達の身近にある日用品が、こんな風に作られているのかと、皆で「あぁ!」「へぇー」の嵐でした。

木下社長さま、暑い中ご丁寧なご案内をありがとうございました!

最初に拝見した木下染工場さんでテンションはもう120%です。このまま今日はどんな1日になるのだろう?ますますワクワクしてきました!
 

パイル織りの現場へ潜入!


熱も冷めやらぬうちに再び車に乗り込み、向かった先は中矢社長の中矢パイル工場。

中矢社長が、「この新しい事務所になってからこんなに多くの方々が来て下さるのは初めてだ」と仰っていました。

大勢ですみません。お邪魔致します!

遊 中川では以前にも、中矢パイルさんと一緒にものづくりをしたことがあります。

それが2017年のテキスタイル『杉木立』です。



ここ高野山の杉木立をパイルで立体的に表現したデザインは、人気であっという間に完売頂きました。このコートは私も愛用しています。

 

こうした生地が、実際どのように織られているのか。いよいよ工場の中へ。



奥までずらりと並ぶ大きな機械に、絶えず響く大きな音。もう見ただけで圧巻です。

こちらは小巻にした糸を機械にセットしているところ。



こういう風に生地ごとに使う糸が、タテ・ヨコそれぞれに必要な糸の本数分だけ、機械にセットされていくんです。

▲先ほどのセットされた糸が、集まって織り機に繋がっています

なんでも、これが1番大変な作業だそうで、1人でやると丸2日かかるとのこと・・・!

急いでる時はスタッフさん総出でこれを機械にセットするそう。

黙々と作業されているスタッフさんにお声がけしたら、「これが1番大変なのよ~」と手を止める事なくお返事下さいました。

こうやって人の手作業があってこそ動く機械なんだ。

機械=人の手作業ではないなんて誰が思おうか。

そんな事を思いました。


複雑なパイル織物の正体

この後、実際に生地を織る工程に入るのですが、パイルジャガカートの織りは複雑で、理解力に乏しい私は一回の説明だけでは理解しきれず何度も聞く事に。

タテ糸とヨコ糸を合わせて生地が織られていくわけですが、パイル織物は織り上げた生地の真ん中に切り込みを入れて2つに切る。だから反転する模様がある…?

▲確かに機械の後ろは、生地の巻物が2本あります

ん?!どういう事だ?と、その時のメモがこちらです。



この真ん中で切られた部分がふわふわのパイルになるわけですね。

なるほど!やっと理解できた!!と思ったらもう感動の嵐です。

あの生地があーなって、こーなって…!

目の前のものづくりとお店に並ぶバッグや服。やっと、全部が繋がりました。



とても手間のかかっている生地だなと、見て触って解っているつもりだったのですが、実際の工程を見ると…終始、感動しきりでした。

見学中、機械は動いたり止まったりを繰り返していました。

生地を織っている間に、どこかで一本でも糸が切れてしまっていると、止まる仕組みになってるんだそうです。

職人さんが、どこの糸が切れているのか?をサッと見て直してまた動かして。の繰り返し作業です。

ふと足元を見ると、機械に吊るされたこんな重しがあり。



これ、何だろう?と思って中矢社長に伺うと、生地を織るときの強さを調整する重し。なんと、職人さんが気温や湿気を見て、その日その日で機械に吊るしている重しを変えているんだそうです。

ひぇ~!

「これぞ職人技だ!」とさぁっと鳥肌が立ちました。

職人さんしかわからない世界。こういうところが、凄いですね!


ものづくりのバトンを繋いで

こうして織られた生地が、さらに染めや仕上げの工程を経て、縫製、検品へとバトンを繋いで、店頭に並びます。

私も昨年、この高野口パイルのコートをワクワクして買った時のように、今年の新作も、お客様がお店でワクワクして手に取って、試着して、気に入ってご自宅に連れ帰ってくださるように。

今までより一層、作っているメーカーさんの分も、誇りをもってお客様に魅力を伝えて行こう。

そう思った今回の修学旅行でした。

中矢さん、木下さん、ありがとうございました!とても刺激的な1日でした。

よく晴れて暑かった高野口、産地としても熱かったです!

では、私のレポートはここまで。続く午後の部は、遊 中川 近鉄あべのハルカス店の上村店長にバトンタッチさせて頂きます!


午後のスタートはかわいい猫クッションとともに

ここからは私、遊 中川 近鉄あべのハルカス店 店長・上村がお送りいたします!どうぞお付き合いくださいませ。

我々が次に訪れたのは杉村繊維工業さん。

世界に誇れる高野口のものづくりを、もっと多くの人に知ってもらいたい!と他のメーカーさんと協業してFabrico (ファブリコ) というファブリックブランドを立ち上げられています。

中川政七商店の直営店にもFabricoさんの可愛らしいネコ型クッション「NEKO」シリーズが並んでいます。



本物のネコさながらのふんわりとした触り心地に、持ち帰りたくなる人も…(笑)

エコファーの産地としての高野口の歴史、その技術の高さについてなど、たくさんお話をしていただきました!
 

高野口の生地が高品質な理由


高野口は昭和初期から培ってきた加工技術により、世界有数のエコファーの産地と言われています。

生地をなめらかに手触りよくする仕上げの工程と検品技術の高さが、品質を支えているのだとか。

▲仕上げによって右の生地が左のようにふわふわに

早速お話を伺った「仕上げ」の工程を見学に、我々は堀シャーリングさんへ向かいます。

 

見慣れたあの生地も、こうして作られている


いざ、工場へ。中は…とにかくすごい熱気です!

▲右側の緑の壁は生地に熱処理を加える炉。近くにちょっといるだけで汗だくになる程の熱気です

電車やバスの座席のシートの最終仕上げも、手がけられているそうです。

織られた生地を何度も機械にかけてケバを取り、なめらかな仕上がりにしていきます。

▲こんな生地、電車内で見たことがあるのでは?

▲こちらは違う生地ですが、このような刃で表面をコンマ何ミリという世界で削ぎ、揃えていきます

こうすることで例えば座ったときにも、おしりにパイルのケバが付かないようになるんだとか!

何度か機械にかけられたものを触ってみて、これやったら大丈夫そうやなぁと思っていた生地も再び機械へ…

こうして精度を高めていくことで、私たちが何気なく座っている座面シートなどになるんですね。

技術と忍耐の賜物です。


実は織りだけじゃない。高野口パイルの「編み」の世界


さて、堀さんの工場を後にして、我々は最後の目的地へ。今までとはちょっと違う「編み」の現場を見せていただきました。

通常生地づくりは、織り、編みで得意な産地が分かれますが、高野口は、中矢さんのような織りだけでなく、編みを得意とするメーカーさんもいる珍しい産地。

伺った先では、シープボアというモコモコとした毛並みが特徴的な生地が作られていました。

政七商店の冬のネックウォーマーもこちらで作っていただいています。(秋の入荷予定です、是非お店で着け心地を実感してみてください!)

機械の全景はこんな様子。人の背丈ほどあります。

▲右側の機械、黄緑色の生地が編まれています

中心部分を覗いてみると、糸が円を描くように高速で編まれていました。



筒状に編まれた生地はどんどん下に降りていきます。

出来たての生地はボリュームがあり、想像以上の迫力でした…!

はじめて見る機械や技術に興味津々の我々、見学時間が押してしまい、最後は少しかけ足になってしまいましたが、作り手さんの熱い思いやこだわりを生で聞くことができた、またとない貴重な機会でした。

まだまだ見たいこと・聞きたいこともたくさん。

自然も人も素敵な高野口、また訪れたいです!今回お世話になった皆さん、本当にありがとうございました。

そして記事を読んでくださった皆さん。お店で『パイルジャカード網代』のアイテムを見かけたら、ぜひ私たちに尋ねてみてくださいね。まだまだ熱く語れます!

【わたしの贈りもの】新築・転居のお祝いに選んだ暮らしの道具


新築・転居ラッシュというほどでもないけれど、ここ数年で立て続けに友人たちが新たな住まいに移りました。「ぜひ遊びにきて!」と誘われ、手ぶらで行くことはもちろんありませんが、大切な友人が立派に新居を構えたとなると、お菓子や消耗品などの“消えもの”だけでなく何か形として残るものを贈りたいところ。
 
そこで今回は私が実際に新築・転居のお祝いに贈った3つの品をご紹介します。「高価すぎず、新たな暮らしの中で確実に役立つ、感じのいいもの」という自分なりのものさしで選び、後から振り返っても贈ってよかったな、と感じているものばかりです。




すごく喜ばれたのが「出しっぱなしにしておけるコロコロ」こと、カーペットクリーナー。今や一家にひとつは必ずある粘着クリーナーですが、インテリアにこだわる人ほどその見た目に納得いっていないはず。木と真鍮、レザーという素材の組み合わせがシックなカーペットクリーナーは、家具のような佇まいで玄関にも堂々と置けるのが魅力です。けれど6,500円(税抜)という価格は、自分で買うとなるとちょっと悩みますよね? ということは、贈ってもらえたら嬉しいということ。 “ほしいけど、ちょっと贅沢”という品はプレゼントに最適なんだな、と実感した贈りものでした。




結婚と同時に転居が決まった後輩に贈った、かもしか道具店のすりバチ。実はこれは後輩からのリクエストでした。すり鉢にあるはずの溝がないのが特徴で、実際自分も使ってみてこれは便利!と感動したアイテムです。内側が素焼きの状態で、ざらっとした土の質感を利用してゴマなどをすれるようになっています。ちゃんとすれるのはもちろん、すったゴマが溝に入り込まないので、無駄なくゴマが使える・洗うのが圧倒的に楽・食器としても使えるといいことづくめ。すぐに使えるようにすりこぎもセットにして、お祝い感のある「南都最上麻ふきん」を1枚添えました。




すごくシンプルで、贈りものとしては地味なのかもしれませんが、後々贈ってもらってよかった、と思ってくれることを願って選んだのが美濃焼の箸置き。新居に移った後は身内や友人を家に招いて食事をする機会も多く、きちっと人数分揃った箸置きがあると重宝します。箸置きのセットというと5個で1組のことが多いのですが、家族+来客となるとちょっと心許ない。7個入りという数も決め手になりました。小さな品なので見た目のボリュームを考え「THE 醤油差し」、ふきんと組み合わせて贈りました。


大人になればなるほど人それぞれ暮らしぶりが違うことを実感し、贈りものには無難なものを選ぶことが多くなりました。けれど、新たな暮らしを応援する意味も込めて贈るお祝いの品ならば、こんな暮らしの道具もきっと悪くないはず。時間をかけて友人の暮らしになじみ、便利に使い続けてくれたらいいなと思って選んだ、私なりの贈りものです。

 


<掲載商品>
かもしか道具店 すりバチ
THE 醤油差し CLEAR 桐箱入り 80ml
かもしか道具店 すりコギ
南都最上麻ふきん
「インテリアのような」カーペットクリーナー
花ふきん

世にも不思議な郷土玩具「おばけの金太」はなぜ生まれたのか

熊本の郷土玩具「おばけの金太」

「“おどけ”て作ったものが、いつの間にか“おばけ”になってしまったとです」

熊本で代々つづく人形師の10代目 厚賀新八郎さんは、自身がつくる人形「おばけの金太」について、そう笑いながら話します。

おばけの金太
厚賀新八郎さん。自宅兼工房にて

木の板に真っ赤な顔の生首がのっているように見えるビジュアルと、印象的な名前も相まって、全国にある郷土玩具の中でもひときわユニークな存在感を放っている「おばけの金太」。

この不思議な人形は、一体どのようにして生まれたのでしょうか。

おばけの金太
大・中・小の3種類がつくられています

魔除け・金太郎・五穀豊穣 さまざまな願いの詰まった人形

人形師として、節句の人形や、興行用の生人形(いきにんぎょう)などを手がけていた厚賀家。はじめて金太がつくられたのは江戸時代、考案したのは厚賀さんのご先祖である5代目の彦七さんでした。

当初は本業の人形制作のかたわらで「余技(よぎ)」として作られたそう。以来、厚賀家のオリジナルとして今まで繋がれてきています。

首の後ろから出ているひもを引っ張ると、目がぐるりと回転し、真っ赤な舌が出てくるからくりで、初見では怖いと感じる人もいるかもしれませんが、慣れるとだんだんとひょうきんに見えてくる不思議な魅力のある人形です。

おばけの金太
おばけの金太
ベロを出すと比較的ひょうきんに見える
おばけの金太

「みんなを驚かせようと思ってつくったものですが、見た人が、『わー、びっくりした、おばけだ!』と言っていつの間にか『おばけの金太』が通り名になりました」とのことで、元々おばけや妖怪がモチーフになっているわけではありません。

モデルは戦国時代に加藤清正に仕えた足軽の金太だと言われていますが、そこに込められた想いや由来には色々な説が存在します。

厚賀さんは若い頃、実演販売で全国の百貨店などを回る折に大学教授や民俗学者たちからよく声を掛けられたそうです。

「チベット学を教えている教授さんが来て、『チベットでは王族の遺体に朱を塗る風習がある。朱は魔除けの色として使われていて、挨拶の時に舌を出す風習もある』と教えてくれました。

それが日本にも流れてきて、鳥居なんかが朱色だったり、子どもの着物に赤色を使ったり。郷土玩具にも赤いものが多かですよね」

チベットの魔除けとの共通点を指摘する人も。

「牧野玩太郎という郷土玩具研究の第一人者だった方からは開口一番『これは金太郎玩具だよ!めでたいんだよ!』と言われました。

当時は『いや、金太郎じゃなくて金太ばってん‥‥』と思ったとですが、昔は初節句に赤い金太郎を贈る風習もあったし、なるほど、金太郎からきている可能性もあるのかなと思ったり」

日本でもおなじみ、金太郎との関連性まで。

「さらに、能や歌舞伎で舞われる『三番叟(さんばそう)』という演目には、『舌出し三番叟』という種類があって、烏帽子を被って舌を出す様子が金太に非常に似とります。

三番叟は、畑を耕してお米を収穫して、という生きていく上で大切な食べることにまつわる舞で、金太にもそんな想いが込められとるのかもしれません」

おばけの金太

5代目 彦七さんがどんな想いを込めたのか、今となっては想像するしかありませんが、少なくとも子どものための縁起の良いものであることは間違い無いようです。厚賀さんも、子どもに喜んでもらえるようにと、想いを込めて日々制作を続けています。

時代に合わせたものづくりで260年続く人形師

張り子の手法でつくられる金太。特に難しいのが、顔の下地を塗る胡粉(ごふん)の扱いと、ベロを出すからくりの要であるバネの部分です。

烏帽子の中に隠されているバネは竹製で、均一の薄さにけずって、適度にしならせるのは至難の技。バネが固すぎても動かせないし、薄すぎたり不均等だと割れてしまう。

「薄く、“すーっと”削らんといかんのですが、その“すーっと”が、なかなか、大変。刃物を自分で研ぐところから、何年も修行をせなだめです」とのこと。

竹のバネ
竹のバネ
バネのからくり

260年続く厚賀家の人形作り。生人形にはじまり、祭りで使用する纏(まとい)や張り子でできた獅子頭(ししがしら)、歌舞伎の大道具など、時代にあわせてさまざまな形でその技術をふるってきました。

「材料やつくり方は変わらんけど、その時代に求められるものをつくらないかんですよね。こちらから生み出していかんと。

金太は、5代目以降、どの代もほとんどつくってなかったとですが、昭和40年頃からの民芸品ブームで、新婚旅行先に九州が選ばれることも多く、そこでまた需要が増えたとです。

私の時代には、歌舞伎やお祭りの仕事が来んようになってしまって、今は主に金太をつくり続けています」

おばけの金太
過去にはくまモンとのコラボなども

時代の流れの中で、熊本にかつて存在した人形師たちはほとんどいなくなってしまいました。大阪などから人形を仕入れて販売だけに専念する方が楽だと、人形づくりをやめるお店が多かったのだそう。

「6代目のときに、うちの家でもかなり行き詰まって、人形づくりを続けるかどうかという家族会議が開かれました。販売に専念すれば、一時的に儲かるかもしれん。ただ、その波がすぎるときっとなんもかんも無くなってしまう。だから、うちは職人でいくぞ!と決めて、結果、今はうちしか残っとらんですね」

おばけの金太
竹と糸のからくりで、干支ものにも挑戦した
竹と糸のからくりで、干支ものにも挑戦した

自分の一生はここに捧げる。先祖がつないだ一本のパイプ

民芸品ブームの後、需要が落ち込んだこともあり、実は先代は金太づくりをやめようと考えていました。

その考えを聞いた厚賀さんは、家業を継いで自分が金太をつくることを決意。

一旦は別の会社に就職してそちらで頑張ろうとしていた矢先のことだったそうで、当時のことを「その時は正直言って、苦渋の決断だった」と振り返ります。

おばけの金太

「21の時です。会社を辞めてまでこれをやろうと、なんでそぎゃん思ったのか。やっぱり、先祖の想いがあったけんかなと思います」

明治10年に起きた西南の役。当時、激戦地となった熊本城周辺の町は焼け野原になりました。そんな状況の中で、厚賀家の先祖はなぜか金太の顔の型をひとつだけ持って逃げていたそう。その型が残っていたおかげで、オリジナルのおばけの金太を復元することができ、今も当時の形のまま作り続けることができています。

「不思議とですよね。なぜわざわざそれを持ち出したのか。でもその型からいまの金太を復元したときに、先祖の想いを少し汲めたような気がしたですね」

生き死にのかかったさなかに持ち出された金太の型。その裏には先祖のなにか特別な想いがあったのだろうと、厚賀さんは考えています。

おばけの金太

「自分の人生は、先祖がつなげてきたパイプのひとつ。9代つないだパイプのあとに、自分が入ることで、その分だけパイプが伸びる。それが伸びていく限り、この文化はずっと残っていくわけです。

それが一番大事なことだろうと思って、自分の一生はここに捧げよう!と決めてこの道に入りました。

毎日毎日、作る苦しみと産みの喜びを繰り返しながら、10代目としてそれをまっとうしていくだけです」

厚賀さんが、先祖の想いを汲み取り、つないできた一本のパイプ。次に受け取るのは、厚賀さんの息子で、11代目を継ぐ予定の新太郎さん。「おばけの金太」づくりの修行を開始して約6年になります。

「(息子は)子どものころから、ものをつくるのが好きだったですね。私が元気なうちに技術を伝えて、自分のものにしてもらいたい。その先は、金太だけじゃなくても、時代にあわせてものづくりをしてもらえたら」

数年後には、11代目 新太郎さんのつくった「おばけの金太」もお店に並びはじめることでしょう。

76歳になった厚賀さん自身も、まだまだものづくりへの意欲を失っていません。

「大笑いはしなくても、子どもたちにちょっとでも微笑んでもらいたい。少しでも喜び、楽しい気持ちになってもらえたら、本当に嬉しい」

金太のひもを引きながら、しみじみと語る姿が印象的でした。

おばけの金太

取材後、もうすぐ4歳になる筆者の息子に「おばけの金太」をみせて、「あっかんべー!」とやってみたところ、大笑い。どうやらうちの子どもの目には、とてもひょうきんな金太が映っているようです。

<取材協力>
厚賀人形店

文・写真:白石雄太

【わたしの好きなもの】ぬげにくいくつした

 

私の相棒  ぬげにくいくつした

左は22.5cm、右は22cm。
足のサイズが左右で異なり、しかも小さいことが悩みの種でした。

靴も靴下もなかなかフィットするものが無い中で、どん欲に自分に合う靴下を探していたら、機能の違いや豊富なデザインに魅了されるようになり、気付けば靴下コレクターになっていました。

これまで集まった靴下の数は100足以上になります。

そんな私がとにかくリピートしているのが「ぬげにくいくつした」。



機能性に特化したファクトリーブランド「2&9」の中でも、特にお気に入りの靴下です。

綿のタイプは足裏のパイルで足が痛くなることがなく、かかとをすっぽり包んでくれるので立ち仕事をしていても、足にしっかりついてきます。



そしてなにより細かなサイズ展開が嬉しいポイント。小さなサイズってなかなか無いんですよね。

「靴下もオーダーメイドができたらいいのに」。

その願望を叶える勢いで、私の足にフィットする「ぬげにくいくつした」。高い技術を持った奈良の靴下会社だからこそ、つくることができる靴下です。



奈良は生まれ故郷なので、毎日誇りを持って歩いています(笑)。

日本市 羽田空港第2ターミナル店  村田 



<掲載商品>
ぬげにくいくつした

【わたしの好きなもの】花ふきん

 

奈良の特産品の蚊帳生地を美しく機能的に再生した、中川政七商店の人気商品「花ふきん」。

花ふきんという名前、なんだか可愛いなと思いませんか?

「白百合」「さくら」「菜の花」「すみれ」などなど。ふきんを広げると、その花をイメージさせる色がお家を彩ってくれます。



私が花ふきんを使って思うことは、これは各家庭に一枚は絶対必要だなということです。

色が素敵なのはもちろんのこと、実際に使ってみるとその用途の多様性に驚きました。

たとえば、食器拭きや蒸し物に使う方は比較的多いのかなと思います。私も食器拭きに使っています。



それ以外にもアイロンのあて布に使ったり、刺繍を施してちょっとお洒落な敷物にしたり、汗をかく時に首に巻いてスカーフ代わりにしたり。

この間友人の出産祝いにお家にお邪魔したところ、産まれたばかりの赤ちゃんのよだれ拭きとして活躍していました。

そして最後にはお掃除用品にも変身。細かいところの汚れも取れるので重宝します。



蚊帳生地を2枚重ねで仕立てることで吸収性も良く、目が粗いので乾きも早い。そんな特徴を考えると、まだ他の使い方があるのではないかと模索してしまいます。



「ふきんなんかどれも一緒でしょ‥‥」と思っていた数年前の自分が信じられません。

今では、「このふきんを使ったら他のふきんは使えないです!」というお客様の声に静かに大きく頷いてしまう日々です。


中川政七商店 ルミネ新宿店
川島 理紗



<掲載商品>
よく吸ってすぐ乾く 花ふきん