デザイナーが話したくなる「コーヒードリッパー」


コーヒー好きの榎本さん。仕事の合間にさっと一人分の美味しいコーヒーを入れたい。そんな思いからコーヒードリッパー作りに情熱を注ぎました。コーヒーについては、まったく詳しくない私が、道具によって変化するコーヒーの楽しみ方を教えてもらいました。




私が知っているのは、陶器や樹脂のものが多いドリッパー。ワイヤーフレームなのか不思議でした。

もちろんたくさんの種類を比べて研究した榎本さん。最終的に決め手となったのは、気軽に使えるもの。そして少しの合間の時間で美味しいコーヒーを入れたいという思い。フィルターの外側に壁を極力なくすことで、比較的コーヒーが蒸されやすく、ガスが抜けやすいのだそう。




そうして決まった、ワイヤーフレーム。

「ここがいいんですよ」とおすすめポイントをいくつも教えてくれました。
1.構造的に壁がないことで豆がじっくり、ふっくらと蒸されて、ガスも逃げやすくなります。
2.抽出時にカップの中の入れた量が見えやすいのも嬉しいポイントなんです。
3.ステンレスは錆に強く、陶磁器のように割れる心配がない。
4.とにかくさっと洗える。
5.フックにも掛けておける気軽さ。

「確かに」とうなずくことばかり。あまり見かけないワイヤー方式ですが、いろいろ便利なことばかりです。

榎本さんのお気に入りは、「とにかくさっと洗える」。最初に作るきっかけとなった、仕事の合間にさっと入れたいという願望を叶えたものです。確かにさっと洗えるし、乾きも早い。気兼ねなく使える道具というのは、毎日使う道具の重要ポイントですね。



ワイヤーフレームで作られた美しい円錐形。この形にも理由があるんです。

円錐形にすることで抽出液が一点に集中し、抽出速度が台形のものと比べ速いとされています。お湯を注ぐスピードや量によってコーヒーの味わいに変化がをもたせることができるので、その日の気分に合わせて入れ方を変えれば、いろんな味を楽しんでいただけます。



このドリッパー、もちろん素人の私でも簡単に入れることができるのですが、特別に奈良のコーヒー屋さんで試していただきました!
 
まず、おいしいコーヒーを淹れるためには、挽きたての粉を適切に蒸らすことが大切。

ワイヤドリッパーでは、蒸らしの際に発生するガスが壁に阻まれることなく抜けやすく、結果上手に蒸らすことができます。30秒ほどおいて粉が十分膨らんだら抽出を始めますが、ワイヤドリッパーは湯だまりが発生しにくいため、お湯は「細く・ゆっくりめ」を意識しながら注ぐと、よりおいしいコーヒーを淹れることができますよ。
 
朝早く、開店前に伺ったTABI Coffee Roaster。店主の田引さんがいろんなコーヒー豆や入れ方を試してくださいました。試飲させてもらうと、確かに味が変わります。コーヒーにそんなに詳しくない私でも、わかりました。

旅の途中にふらっと寄りたくなる、本格的な自家焙煎珈琲のお店。奈良にお越しの際は、ぜひ立ち寄ってみてください。



通常ドリッパーはコーヒーサーバーと一緒に使うことも多いですが、榎本さんの願望「一人分の美味しいコーヒーを楽しむ」というこだわりをつらぬき、マグカップに乗せてドリップしやすい構造を追求しました。大きさの異なるマグカップに乗せれるように、カップに当たる面はフラットに、突起物がありません。そして、たっぷり飲みたい大口マグでも対応できる直径10cmです。ワイヤーなので、入れながらカップの中がしっかり見えるので、入れすぎたなんてこともありません。




デザインや機能性を支えるのは、金属加工において高度な技術と高い品質を誇る新潟県燕市の株式会社シンドー。優れたステンレス溶接技術で、繊細なワイヤーの溶接を行っていただきました。

専用の治具を作ってもらい、それを用いて職人が手仕事で1つずつ溶接していきます。溶接する際に、ステンレスが伸縮するため、微妙に調節しながら行わないと歪みが生じるそうです。美しい均整のとれた姿は、そうした職人の技から生まれています。



日常の風景に静かに紛れ込む、昔からあるような道具を目指したという榎本さん。たしかに、飾り気はないのですが、素っ気ないわけでもなく、どこか懐かしい趣きさえあるデザインです。目指すは、「コーヒーの茶漉し」だそうです。なんの気負いもなく、毎日使って洗ってを繰り返す。コーヒーの道具ってちょっと格好良く使うイメージだった私ですが、この言葉はこの商品にぴったりだと思いました。
 
もちろん毎日榎本さんが仕事の合間にコーヒーを入れている姿を見かけます。とっても嬉しそうでとっても幸せそうです。


<掲載商品>
ステンレスワイヤのコーヒードリッパー
家事問屋 ワンドリップポット
茶巾生地のコーヒーフィルター 円錐形

陶芸一家の次男はうつわを作らない。京都「HOTOKI」に学ぶブランドづくり

京都洛北・岩倉の地にあるうつわの工房・カフェ・shop「HOTOKI」。陶芸家・清水大介さんが代表を務めるkiyo to-bo(株)の実店舗のひとつで、「うつわを買って、使えて、作れる」が一度に体験できる総合ショップだ。

店を運営するのは大介さんの父である清水久さんと奥さんの祥子さん、次男の洋二さんの親子3人と2名のスタッフ。久さんがうつわの体験教室もできる工房、祥子さんがカフェ、そして洋二さんがお店全体のプロデュースを担っている。

店に並ぶうつわはすべて自社の製品。商品の8割は、同じくkiyo to-bo(株)が運営する「トキノハ」の工房で作られている。

「トキノハ」は京都屈指の焼き物の里・清水焼団地にあり、大介さん夫婦を中心に、8名ほどのスタッフがデザインから作陶までアイディアを出し合って作り上げる。その他の商品は、考案を洋二さん、作陶を久さんが中心に担い、この店の工房で作られる「HOTOKI」のオリジナルだ。

今回は、作家とは違う立場で店を運営する洋二さんにHOTOKIとトキノハのうつわづくり、ブランドづくりについて話を聞いた。

HOTOKIの運営全体を担う次男の洋二さん
HOTOKIの運営全体を担う次男の洋二さん

「個性を消す」そこが自分たちの個性

「トキノハ」にも「HOTOKI」にも共通するのは、「誰か一人」の作品ではないこと。制作の指揮を執るのは清水さん親子ではあるが、トキノハにもHOTOKIにも、名の知れた清水焼の「職人」や「作家」は存在しない。

チームとしてアイディアを出し合い、それぞれのパートに分かれてひとつの作品を作り上げる。コンセプトはあくまで「日常使い」のうつわだ。

「作者名やうつわの個性が前に出てしまうと、大事にするあまり『特別な時に使おう』と食器棚にしまったままになっていることがあると思います。僕たちが作りたいのは日常使いのうつわ。個性的なデザインや装飾を省き、いかに料理が映えるか、生活に馴染むか、使い勝手がいいかを考えています」

気軽に買って帰れるよう、商品は1000~5000円台のものを中心に揃える
気軽に買って帰れるよう、商品は1000~5000円台のものを中心に揃える

あえて作家の色を出さない、「個性を消す」ことが僕たちの個性と洋二さんは語る。純粋に作品を日常の生活道具として広めようとする姿勢は、名もなき職人の手から生み出される「民藝」の考え方にも通じるものがある。

料理人の想いに寄り添う、新たなブランド

「料理」を引き立てることに重きを置いた作品は、さまざまなジャンルの食文化が根付く京都の料理人からも好評で、個別相談を受けることも増えた。

そこで2019年、大介さんが新たに立ち上げたのが、料理人のオーダーメイド専門ブランド「素-siro-」だ。

作陶工程においてまだ特徴が何もない段階を指す「素地(きじ)」という言葉に由来する通り、まったく素の状態から対話を重ね、完全受注生産のオリジナルを作成する。

カタログも見本も一切ない、対話のみから生まれるうつわ。そこには形の良い食器を作る技術だけではなく、作り手の想いを丁寧に汲み取るセンスも要求される。料理人との信頼関係がなければ成り立たない仕事だ。

「料理人の方に使っていただけることは僕らにとっても喜び。そのお店のお客さんが料理とともにうつわに触れて、また僕らのことを知ってもらうきっかけにもなればうれしいですね」と洋二さんは言う。

実際に料理人と制作したうつわ
実際に料理人と制作したうつわ Photo by 中島光行

コンセプトを体現する、新たなうつわの提案

また、うつわの「日常使い」というコンセプトから、洋二さんが新たにひらめいたアイテムが壁に掛けられる小さな花器「TUKU」。

「TUKU」母の日ギフトセット

「壁にくっツク」手のひらサイズの一輪挿しで、押しピンとドライフラワーがセットになっている。

「普段うつわを買う習慣がない人にも手に取ってもらえるような、うつわを買うひとつ前の段階のものを作りたかったんです。花は日常的に飾るものですし、そこにさりげなくうつわを取り入れられたらと思って」

まさに「うつわのある風景」。壁にピンをさし、花器を取り付け、花を生けるだけ。お気に入りのうつわに季節の花を飾ることで、少しだけ生活が豊かになる。清水さん親子が大事にする、「うつわの日常使い」を体現する商品となった。

「日常の中にうつわがあることの豊かさを、このTUKUが伝えてくれたら。それに、うつわ(焼き物)って意外となんでも作れるんです」

形はぽってり丸みを帯びた「MARU」とほっそりとした「TUTU」の2種。どちらも押しピンひとつですぐに付けられる。うつわといえば皿やカップ、椀や鉢など料理のための道具を思い浮かべがちだが、「TUKU」はその概念を覆し、うつわの可能性を広げてくれた。

「TUKU」母の日ギフトセット
外部のデザイナーと共同で開発したパッケージ

パッケージもTUKU専用に制作したオリジナルで、ギフトにも喜ばれているそう。さらに、母の日前にはカーネーションがセットになって限定品を販売するなど、季節によってさまざまな商品を提案している。

母の日限定セット。カーネーションのドライフラワーがついている
母の日限定セット。カーネーションのドライフラワーがついている

また、レジの上やカフェの天井には陶器のランプが。もちろんこれもオリジナル商品。アンティークとはひと味違う、柔らかな印象を与えてくれる。

オリジナルのランプも陶器製
オリジナルのランプも陶器製

作り手ではないからこそ、できること

最初から陶芸家としての道を歩んでいた久さんと長男の大介さんに対し、次男の洋二さんは数年前まで、バリバリの営業マンとして一般企業に勤めていた。

「アパレルの企画営業をしていました。当時は売れないものはないと思ってやっていましたね。4年前にHOTOKIがオープンしたくらいから兄のトキノハの方が忙しくなって、父と母だけでHOTOKIを回していたんです。それで土日だけ手伝うようになって、いろいろテコ入れするところがあるなと‥‥」

HOTOKIを運営する清水洋二さん

洋二さんは会社を辞め、HOTOKIの運営に参加することを決意。作り手目線ではないからこそ、まったく新しい角度から店を俯瞰し、時に大胆な提案もする。

まずはファンを作るために、人を呼び込まなければならない。岩倉まで足を運んでもらうにはどうしたらよいか。そこで企画したのが「岩倉マルシェ」だった。

岩倉にもっと人を呼ぼうと2016年にHOTOKIの店先で7店舗で始めた小さなマルシェが、今では宝が池公園に約40店舗が集まるイベントになった。今年は6月2日の開催を予定している。

「僕は岩倉で生まれ育ちました。そして改めてここに帰ってくると、個性的なお店はたくさんあるのに、横のつながりが薄いことに気づいたんです。みんなで手をつないだら、もっと岩倉の個性を出して、人を呼び込める場所になるんじゃないかと考えました」

マルシェへの出展は、岩倉で商売をする人だけに限定。出展時の業態も、パン屋ならパン屋、焼き鳥なら焼き鳥と、通常営業と同じものに統一している。

「京都はたくさんのマルシェが開催されていますが、僕たちは岩倉に限定することで岩倉の個性を出し、ここにしかないマルシェを作りたいと思っています。そして普段のお店の業態に限定するのは、普段の岩倉にも足を運んでほしいからなんです」

まずは岩倉に人を呼び、岩倉のことを知ってもらう。

地道に種をまくことで、着実に自分たちのファンを増やしていく。

入り口の窓には店名の由来が。店からは比叡山も見渡せる
入り口の窓には店名の由来が。店からは比叡山も見渡せる

すべてはうつわを「ブランド化」するための種蒔き

お店に足を運んでもらえるような工夫にも余念がない。

ひとつは年に2回開催している「utsuwaku」だ。うつわの制作工程において、数個に一個多少の傷がついてしまうことは避けされられない。もちろん、日常使いのうつわとしては問題ないが、店の商品として並べることはできない。

それを捨てるのではなく、アウトレット商品として一気に売り出す。これが周囲の住民や京都市内外のうつわ好きにも好評を博している。

さらにイベントではうつわの修理ワークショップや、店内の「あるモノ」を探し出した人に、箸置きや小さなオブジェが入ったガチャガチャを1回プレゼントするなど、大人も子供も楽しめる仕掛けが盛りだくさん。もちろん陶芸体験も受け付ける。

HOTOKI

また、工房では京都精華大学の学生も活躍している。店から大学が近く、洋二さんも同校の卒業生である縁もあり、実践の場を学生にも提供しているのだ。年に一度、陶芸コースに通う学生の有志展も開催する。

「学生さんは自分の器を見てもらう機会が少ない上に、作り方は教わっても売り方まではなかなか教えてもらえない。自分の作品が陶芸の世界で通用するか、食べていけるかを就職前に、仕事を通じて一度考えてもらう場を提供できれば」

工房の作業を手伝う精華大学の学生スタッフ
工房の作業を手伝う精華大学の学生スタッフ

柔軟な発想で、さまざまな想いを形にしていく洋二さん。作り手とは全く別の視点と経験が、HOTOKIという場所に新たな風を吹き込んでいる。

「作り手はどうしても制作で手がいっぱいになってしまい、売り方まで頭が回らない。僕のように作陶にかかわっていない人間も、ここには必要なんです」

サラリーマン時代の営業経験も、お店やブランドを運営する上での貴重な財産だ。

「例えばファッション業界では、ブランドイメージが何より重要になります。質の良いものだけを作っていても、ブランドイメージが薄いと人はなかなか動かない。僕たちのうつわも、商品の良さをお客さんに語るだけではなく、もっとブランド化していきたいと思っています」

根底にあるのは、「お客様のために」

ブランディングや売り方に関することなど、一見ビジネスライクな考え方だが、その真意は「お客さんを喜ばせたい」という洋二さんの想いにある。

「私たちの特徴は、うつわを自ら企画、製作、販売できるところです。質の良いうつわを届けるのが第一ですが、その先に店舗もあり、オンラインストアもあり、オーダーメイドもある。お客様のご要望に応じた様々なチャネルがあることが強みだと思います。

これからもそれぞれのチャネルを強化しつつ、生活に寄り添ったうつわ作りを通して、幸せを感じてもらえるお手伝いが出来れば嬉しいです。

そのなかで私は、作り手ではない目線で、いかに喜んでもらえるかを追求していきたいと思います」

HOTOKIの運営全体を担う次男の洋二さん

お客さんに楽しんでもらうアイデアを常に考え、アメリカのアンティークであるガチャガチャの機械を探し当てた時の喜びを、少年のように目を輝かせて語ってくれた洋二さん。彼の内側から溢れ出るうつわやお客さんへの想いが、数々のアイディアを生み出す何よりの原動力になっていると感じた。

「HOTOKI」が次は何を仕掛けてくれるのか、今後の展開も楽しみだ。

<取材協力>
HOTOKI(https://hotoki.jp/
京都府京都市左京区岩倉西五田町17-2
075-781-1353

トキノハ オンラインストア(https://shop.tokinoha.jp
siro(https://siro.kyoto

文:佐藤桂子
写真:松田毅

国産カモミールで肌も心も癒される。カミツレの里のビオホテル「八寿恵荘」へ

白い花びらに黄色い花芯、ジャーマンカモミール(和名:カミツレ)の花。長野県北安曇郡池田町。北アルプスの山々に囲まれた豊かな自然の中に「カミツレの里」があります。

5月中旬から6月上旬は、あたり一面が満開のカモミールでいっぱい、甘くやさしい香りに包まれます。

カモミールを用いたスキンケアアイテム「華密恋(かみつれん)」シリーズを扱う「カミツレ研究所」のカミツレ畑とエキス製造工場、そして自然を感じるお宿「八寿恵荘(やすえそう)」が佇む「カミツレの里」を訪ねました。

「ふるさとに恩返しを」土づくりからはじめたカミツレ畑

ここは、創業者である北條晴久(きたじょう・はるひさ)さんの故郷。ご自身の病が漢方で完治したことから植物に興味を持ち、その中でもハーブカモミールの効能に魅せられて、カミツレエキスの抽出法を研究したという北條さん。

1984年、「ふるさとに恩返しをしたい」との思いで、美しい土壌と美味しい水が豊富なこの地に工場をつくり、土づくりからこだわってカミツレ畑を開墾。自然豊かな里をつくりあげたのだといいます。

「カミツレの里」へご案内くださったのは、松澤英(まつさわ・すぐる)さん。道中、田んぼの隣に作られたカミツレ畑に立ち寄ってくださいました。「『カミツレの里』はもう少し山のほうにあるのでまだ満開ではないんですが、ここは今ちょうど満開です!カミツレの花、かわいいでしょう?」と松澤さん。

満開のカミツレ畑
満開のカミツレ畑
薬効の高い「ジャーマンカモミール」という品種。黄色い花芯が盛り上がっているのが特徴
薬効の高い「ジャーマンカモミール」という品種。黄色い花芯が盛り上がっているのが特徴
ご案内くださった松澤さん
ご案内くださった松澤さん

少し車で走るとようやく「カミツレの里」へ到着です。自然豊かな約4万坪の広大な土地。とにかく空気がきれいで気持ちいい。周辺散策も楽しみですが、まずはカミツレのことや「華密恋」のスキンケアシリーズをどんな風につくっているのかをお聞きしました。

カミツレの里に到着!奥に見えるのはカミツレの宿「八寿恵荘」
カミツレの里に到着!奥に見えるのはカミツレの宿「八寿恵荘」

ハーブの女王、薬草カミツレ

カミツレとは、4000年以上も前から薬草として親しまれてきたジャーマンカモミールの和名。ハーブの女王と呼ばれており、植物療法が盛んなヨーロッパでは昔から薬のように使われてきたのだといいます。

肌への効用もよく知られており、肌にうるおいを与え、乾燥や湿疹、あせもなどの肌トラブルを鎮めてくれるといいます。こちらでは、国産カモミールの持つ自然の力を生かすため30年以上にわたってカミツレエキスをつくり続けてきました。

日本ではカモミールティーが身近ですが、ヨーロッパでは薬草としても有名です
日本ではカモミールティーが身近ですが、ヨーロッパでは薬草としても有名です

スキンケアシリーズ「華密恋」の原料となる国産カモミールは、農薬を一切使わず、有機JAS認定の自社農園と国内の契約農家でつくられています。畑に1株ずつ植えられたカミツレは、寒い冬は雪の下でじっくり栄養を蓄えながら春を待ちます。

暖かくなったら流れ込んでくる北アルプスの雪解け水が、カミツレをぐんと成長させるのだそう。5月末〜6月上旬に開花、晴天の続く日に根元から手作業で刈りとります。

カモミールの花びらが下を向いたら収穫の合図
カモミールの花びらが下を向いたら収穫の合図
自然乾燥させて、水分量を調整します
自然乾燥させて、水分量を調整します

一般的に、カモミールティや精油に使うのは花の部分だけですが、こちらのカミツレエキスはカモミールの全草(花・葉・茎すべて)を使い、カミツレの持つ自然なちからを余すことなく抽出します。3センチほどに刻んだら、安曇野の水とサトウキビ由来の発酵エタノールを混ぜ入れて漬け込み、熟成。カモミールの成分はとてもデリケートで熱に弱いため、非加熱でじっくりじっくりエキスを抽出。

濾過したところに、手間と時間、そして愛情をたっぷり注ぎ、濃密なエキスにするのだそうです。

刻まれたカモミール。契約農家さんからは米袋で納入されます
刻まれたカモミール。契約農家さんからは米袋で納入されます
タンクでエキスを抽出中。タンクには生産者の名前や日時が記載され、安心・安全に管理されます
タンクでエキスを抽出中。タンクには生産者の名前や日時が記載され、安心・安全に管理されます
琥珀色の濃密カミツレエキス
琥珀色の濃密カミツレエキス
濃度や純度をチェック。肌に余計なものは一切入れないという製法を長年守っています
濃度や純度をチェック。肌に余計なものは一切入れないという製法を長年守っています
入浴剤はカミツレエキス100パーセント。すべての製品にカミツレエキスを高配合した「華密恋」のスキンケアシリーズは、赤ちゃんからお年寄りまであらゆる方々におすすめ
入浴剤はカミツレエキス100パーセント。すべての製品にカミツレエキスを高配合した「華密恋」のスキンケアシリーズは、赤ちゃんからお年寄りまであらゆる方々におすすめ

デザイナーが話したくなる「もんぺパンツ」


長年愛されているベストセラー商品

発売以来、長年にわたって愛されている中川政七商店のベストセラー商品「もんぺパンツ」。社内でも愛用者が多い商品なのですが、その特徴のひとつが履きやすさ。あらためてこの履きやすさの理由を、担当したデザイナーの河田さんに教えてもらいました。
秘密は、実は裏地にあるのだとか・・・。




「この白い布、何かわかりますか?」
これは「和晒(わざらし)」と呼ばれる生地で、ふきんや手拭い、赤ちゃんのおむつや肌着など、40年ほど前まではどこの家庭でも一般的に使われていたものです。




大阪・堺の伝統産業としても知られるこの「和晒」を、昔ながらの製法でつくり続けているのが、同地域で1931年に創業した角野晒染株式会社です。
実は、こちらでつくられた「和晒」との出会いが、もんぺパンツをつくるきっかけになりました。

「木綿生地と聞くと、白い布を想像する方も多いと思いますが、天然繊維である綿は、織りあがった段階では茶褐色の状態なんです。また、油分や糊なども付着しており、それらの不純物や色素を取り除くのが晒加工になります」

現在、一般的に使用されている綿製品のほとんどは、「洋晒加工」という方法で仕上げられているんだとか。これは、自動精錬機という設備を用いて、生地に熱や圧力をかけながら、40分前後の短時間で仕上げる方法です。
一方「和晒加工」は、大きな釜に生地を入れて、緩やかな水流でゆっくりと時間をかけて焚きこみ、およそ3日間かけて晒をおこないます。生地にきついストレスをかけないことで、柔らかな吸水性のよい仕上がりになるのが特徴です。





また、もんぺパンツで使っている和晒は、着物をつくる時と同じ約36cm幅に織られています。
もともと、もんぺは着物を加工してつくられていて、この小幅の布を直線裁ちして型をとっていました。布を余らせることなく衣服にする日本人の知恵が詰まったものです。
そんな和晒の良さを知ってもらいたい、そして「もんぺ」を現代の日常着として着てほしい。河田さんはそう考えて「もんぺパンツ」の開発をスタートしました。




綿の風合いが残っている柔らかな和晒。その和晒のガーゼ生地を裏地として使ったことが、もんぺパンツの履き心地の秘密なんです!
赤ちゃんの肌着にも使われていた布なので、肌触りの良さはもちろん、汗の吸収と湿気を外へ逃がすことも得意で、足にまとわりつかずさらっとした状態が続きます。




すっかり和晒に魅せられてしまいましたが、現代の生活に馴染むデザインとして表地が大切なのは、言うまでもありません。
中川政七商店のもんぺの元祖である「綿麻もんぺパンツ」は、ちょっと落ち感があって、やわらかい風合い。家着用だけではなく、サルエルの様なおしゃれボトムスとして外でも履けるようにつくられています。
驚いたのは、形状自体は昔からのもんぺのままということです。きっと今風にデザインを変えているのだとばかり思っていたのですが、大阪の生地メーカーさんと一緒に、ハリ感、やわらかさ、強度も考えて、生地を選んでは試作して、出来上がりました。




綿麻もんぺパンツの表地を変更して登場したのが「しましまもんぺパンツ」と「千鳥格子もんぺパンツ」です。
「しましま」は新潟産の見附織を使用しています。
「千鳥格子」は、兵庫県播州で織られた生地で、ところどころに見られるネップと呼ばれる節がナチュラルな風合いを醸し出しています。
プリントではなく、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の織りで柄を表現しているため奥深さと立体感が生まれます。裏地の和晒とあわせて、きちんと見えて涼しく過ごすことができます。




そういえば、よくご質問をいただくのですが、もんぺといえばポケットは前なんです!
つい、ポケットを後ろにして履いてしまいがちですが、昔からもんぺは前ポケットなので、そのままデザインにいかしました。
大きめサイズなので、携帯電話やハンカチなど、ぽいぽいっと入れることが出来て、慣れるとけっこう便利です。




私自身、綿麻もんぺパンツを履き続けて5年目になります。家に帰ったらすぐもんぺに着替える生活です。履きごこちがよくて楽チンだし、そのまま出かけられるしと、もんぺって本当に重宝します。
そんなもんぺパンツについて語る度、河田さんが何度も口にした「ほんとにすごいんですよ」という言葉には、先人たちの知恵への敬意が込められていました。

 


<掲載商品>
綿麻もんぺパンツ

デザイナーが話したくなる「蚊帳生地で作った服」


ふんわりやわらかい蚊帳生地で作った女性らしい服のシリーズです。
この商品を企画したデザイナーにここだけの話を聞いてみました。



蚊帳生地はその風合いに特徴があり、目が詰まりすぎていないから、風通し良くふんわりとした仕上がりになります。そして、この生地の特徴こそが縫製を難しくしてしまうそうです。



服を作るのだから、生地を縫い合わせることは、当然の作業です。それが蚊帳生地の場合、普通に通常の縫い合わせの方法では、滑脱してしまう(いわゆるほどけてしまう)可能性が大きいのです。

そこで、まず生地を2枚縫い合わせて、その1枚1枚をそれぞれを2回折り返して縫います。通常は簡単に仕上げているものならロックミシン、カッターシャツなどでも2回縫うことで仕上げていることが多いのですが、この服はロックミシンはどこにも使っていないどころか、3回の手間をかけて縫い合わせます。
(ややこしいですよね・・・メモをとっていても、わからなくなりそうで、何回も繰り返し説明してもらいました。。)




もうひとつ、蚊帳生地の難しいところが、きれいにカーブを作ること。
目が詰まっていないので、カーブを作って折り返すと生地がまとまらず繊維がばらばらしてしまう。
それでもデザインにこだわって女性らしいカーブと、動きが加わる部分なので、強度をもたせることを考えて縫製することに。

本体と同じ共生地をテープのようにカットしたものを用意し、さらにカーブに合わせた芯と一緒に本体と3枚合わせて縫製します。扱いにくい生地を丁寧に塗っていかないときれいなカーブにならないので、とても大変な作業だそうです。




生地をよく見ると、経糸(たていと)には白、緯糸(よこいと)に色の糸を使っています。これは、1色で生地を作るより、やわらかい印象になるようにと2色使いにしたそうです。

そもそもこのふんわりした状態で縫製されているのかと思っていたら、蚊帳生地は生地になった時点では、ノリが付いていて、商品の1.3倍ほどの大きな状態で縫製しているのだとか。生地がぼわんっとハリがある状態なので、折り返す以外に、ギャザーを入れる細かい作業も考えただけで気が遠くなります。
縫製後にようやく洗い加工といって、きれいにノリを落としてふんわりさせたものが、この状態なんです。




生地以外にも、注目していただきたいのは、奈良で作っている貝ボタン。海がない県なのに、と思われるかもしれませんが、全国トップシェアを誇っている、奈良の産業です。
つるんとしたやさしい光沢と手触りで、少し高さのある小さめのボタンをこのシリーズにも使っています。




「蚊帳生地で作ったら涼しそ~」と思っていた、このシリーズ。聞けば聞くほど、大変な手間をかけできあがっているのだと勉強になりました。
奈良で作った材料で服を作れることはとても嬉しいことと話していたデザイナー。そして、難しい縫製をしてくださっている方々。丁寧に洗って、大切に着ていこうという思いがふくらんだ時間でした。

 

母の日に贈るなら和紙造花を。耐久性あり、水に強く好きな香りも付けられる。

今年のゴールデンウィークは10連休です。長期休暇を楽しみにしていらっしゃる方は少なくないと思います。ゴールデンウィークを超えると、5月12日の母の日が近づいてきます。母の日のプレゼントはどんなものにしようか。毎年、悩まれる方も多いのではないでしょうか。

私、早くも買ってしまいました。

郵送で送ってもらいました。逆さま厳禁!
郵送で送ってもらいました。逆さま厳禁!

メッセージ付きです。
メッセージ付きです

これ、皆さんわかりますかね。ブーケなんですけど、中身は和紙で作られた造花なんです。

窓のそばに置いてみました。造花に感じられないような、きめ細やかな仕事ぶり。さて中身を開けてみましょうか。
窓のそばに置いてみました。造花に感じられないような、きめ細やかな仕事ぶり。さて中身を開けてみましょうか

ラベンダーの香りを発しています。
ラベンダーの香りを発しています

開封すると、ラベンダーの香りがふわっと鼻の中を通っていきます。造花なのに香りがする。これはどういうことなのでしょうか。

耐久性に強く、水に強い! だから香りを付けられる

注文したのは福井県にある「AI-LI (あいりぃ)」というフラワーショップです。ここでは和紙造花を制作しています。

店主・五十嵐純子さんの旦那さんの実家が、越前和紙づくりをしていて、和紙を分けてもらう機会も多いとのこと。五十嵐さんとお電話でお話をしたところ、「日本家屋が減って、和紙が使われる襖や障子も少なくなりました。和紙造花を自然におうちで飾ってもらえるといいなあと思っています」とおっしゃっていました。

一般的に、和紙は繊維の長い楮や三椏の「木の皮」を原料に、とろみのある植物性の粘液と混ぜ合わせて紙を漉きます。そのため和紙は一つ一つの繊維が長く、耐久性に優れます。

また、木の皮は幹を守るために表面の湿度を保つため、水にも強い特性を持っています。だから、香りをつけることができるのです。また、虫の侵入や菌の繁殖も防いでくれます。「AI-LI」の和紙造花は、好きな香りのリクエストも受け付けています。

和紙造花は水に強い性質を持っています。
和紙造花は水に強い性質を持っています

越前和紙の種類の多さは造花作りに適している

越前和紙は1500年もの長い歴史を誇り、品質、種類、量ともに日本一の和紙産地として生産が続けられています。産地としても大きいので、数多くの紙を漉いています。硬いものから柔らかいもの。厚みのあるものから薄いもの。紙質の種類が多いので、和紙造花を作る際にも、繊細で幅広い表現が可能になるのです。

和紙はカールをつけるにしても、素材がしなやかなので、形がそのまま残ってくれるそうです。普通の紙を使うと、形をつけても戻ってしまいます。

今回、購入したものは茎をワイヤーにしていましたが、全て和紙を使った造花も作ることができるそうですよ。

巧緻に作られています。
巧緻に作られています

和紙造花はきれいなままで保つことができる

造花は生花と違って、枯れる心配がありません。お手入れや水替えなどの手間も一切かかりません。常に新鮮なうつくしさを保ってくれるのって、ありがたいですね。

また、和紙造花はホコリを呼ばないそうです。表面を細かく見てみると、和紙には細かい毛羽が立っているので、ホコリが密着しないのです。ホコリは集まりますが、乗っかっているだけで、容易に取り除けるわけです。

ほかにも、病院では院内感染などもあるので最近は生花の持ち込みが厳しいそうです。生花に関してはアレルギーを持っている方もいらっしゃるかもしれません。造花であれば、そういった心配がありません。

手に持ってみました。大きさは横18㎝×奥行15㎝×高さ22㎝。
手に持ってみました。大きさは横18㎝×奥行15㎝×高さ22㎝

お母さん、喜んでくれるかな

「AI-LI」では月に50~60個くらいの和紙造花を20人ほどでつくっています。注文のピークは母の日前の3月から4月頃。大量発注があるときは分担しながらつくります。「1人が徹底して作れば1日くらいで出来上がる」そうです。

花びらは1枚ずつカットし、貼り合わせるという細やかな仕事ぶり。2014年のNHK紅白歌合戦では水森かおりさんの衣装にも使われたことがあるといいます。

生花と見間違えるほど、精緻に作られた和紙造花。香りを感じながらにこやかな笑顔を浮かべるお母さんの姿を想像してみましょう。今年は母の日に香りをつけた和紙造花を贈ってみませんか。

ケースに入れなおしてみました。さあ、お母さんに贈ってみよう。
ケースに入れなおしてみました。さあ、お母さんに贈ってみよう

<取材協力>
和紙の花フラワーギフトショップ「AI-LI (あいりぃ)」新田塚店
福井県福井市二の宮5-18-25 バロー新田塚店内
0776-87-0878

文・写真 : 梶原誠司