旅先で手に入れたい、日本各地のかわいい郷土玩具

旅先を決める時、旅行ガイドやSNSで話題の場所を調べるのもいいですが、まずは自分自身の「好きなもの」と向き合いたいもの。
そこからスタートすると、自分好みの新しい出会いや、本当に求めているような体験ができるかもしれません。

日本全国にある縁起もの、“郷土玩具”を探しに旅をする、というのはいかがでしょうか。

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【栃木】嫁入り道具から生まれた縁起もの「きびがら細工」

栃木県鹿沼市の郷土玩具・きびがら細工

嫁入り道具から生まれた縁起もの、きびがら細工

年間25本ほどしか作れない貴重な箒のあまり草からできたお飾り。首をちょっとだけ傾けて、見上げてます。

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産地:益子

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【鹿児島】 台所を守る「オッのコンボ」

鹿児島の郷土玩具オッのコンボ

郷土玩具になって台所を守る、福の神の奥さま

ただのおもちゃではなく、信仰玩具として、家族を見守る。見ているだけでこちらも笑顔になってしまう、とても愛らしい郷土玩具です。

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産地:薩摩

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【石川】 金沢、誕生日や婚礼のお祝いに。「加賀八幡起上り」

金沢「加賀八幡起上り人形」とは?市民に愛される郷土玩具でめぐる旅

一見だるまさん?かと思いきや、このお人形は金沢市の希少伝統工芸品「加賀八幡起上り(かがはちまんおきあがり)」。
柔らかく愛らしいお顔と縁起の良い松竹梅を身にまとった姿がなんとも愛らしいですね。金沢のお店では絵付け体験ができるそうです。

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産地:金沢

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【香川】「金刀比羅宮」のご利益ある犬の縁起物。階段の先に「こんぴら狗(いぬ)」

縁起担ぎに785段の石段を登ってこんぴらさんへ

年間に約400万人もの人が訪れるという香川の金刀比羅宮(ことひらぐう)。編集部員が一歩一歩登った渾身のリアルレポートと、ここでしか買えない貴重なお守りをご紹介します。

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産地:丸亀・琴平

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【佐賀】年賀切手デザインの常連「のごみ人形」

のごみ人形

“カラコロ”と幸せ運ぶ、佐賀の「のごみ人形」

このぽってりとしたフォルム、カラフルな色使い。「どこかで見たことがあるような・・・」そう思われる方も多いのではないでしょうか。実は、お正月によく見かけるあるモノに登場しているのです!

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産地:肥前

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【特集】フィリップ・ワイズベッカーの郷土玩具十二支めぐり

フィリップ・ワイズベッカーの郷土玩具十二支めぐり

アップル、エルメス、資生堂、ハーマンミラー‥‥と世界の名だたる企業が指名するフランス人アーティスト、フィリップ・ワイズベッカーさん。最近は伊勢丹の包装紙デザインでも話題になりましたね。ワイズベッカーさんが、日本全国の郷土玩具のつくり手をめぐる連載シリーズです。

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【特集】郷土玩具コレクターに聞く旅の話

郷土玩具コレクターの家、郷土玩具の棚

日本全国、郷土玩具を求めて宝探しの旅へ

郷土玩具旅の先輩、矢嶋さんご夫婦を訪ねました。「郷土玩具が素敵に飾れる棚がほしい」というのが家を立てる時のリクエストだったというほどの収集家。おふたりの素敵な旅の話をうかがいました。

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産地:福岡

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気になった記事はありましたか?読み返してみると、また新しい発見があるかもしれません。

それでは、次回もお楽しみに。

すぐに売り切れる「サンドイッチかご」。創作竹芸とみながの竹かごが長持ちする理由

各地の取材で出会う暮らしの道具。作っている人や生まれる現場を知ると、自分も使ってみたくなります。

先日、取材で訪ねた鹿児島の竹細工専門店「創作竹芸とみなが」で、「サンドイッチかご」なる道具に出会いました。

ふたを開けた様子

竹林面積日本一の鹿児島県内で昔から作られてきた、ご当地かごのひとつです。

「中でも、サンドイッチかごは作るのが難しくてね。人気なんだけれど数が限られるから、すぐ売り切れちゃう」

教えてくれたのは、「創作竹芸とみなが」のご主人、富永容史 (とみなが・たかし) さん。

一体どんな風にこの愛らしいかごは生まれているのか。富永さんのご案内で、サンドイッチかごが生まれる現場を訪ねます。

ご当地かごがいっぱいの、富永さんのお店の様子はこちら:「まるで宝探し。好きなかごに出会える鹿児島の『創作竹芸とみなが』」

鹿児島で山を見たら竹林と思え?

富永さんの車で職人さんの工房に向かっていると、

「あれ、竹林ね」

高速道路わきの竹林

「ほらここも」

私にとってはただの景色だった高速道路わきの山から、富永さんは次々に竹林を見分けていきます。

さすが、竹林面積日本一の県。「山を見たら竹林と思え」と言っても過言ではないくらい、小一時間の道中に見かける山々には、竹が生えています。

目が慣れてくると、生えているのが竹であるのが段々わかってきます
目が慣れてくると、生えているのが竹であるのが段々わかってきます

ドライブの合間に、富永さんが竹の基礎知識を教えてくれました。

竹の「切り旬」

「生えて1年目の竹は絶対に使わないの。若いとすぐにしなびて製品にした後にもたないから。3〜5年経った竹が切り旬。6年以上経っても古すぎてだめだね」

ちなみに、もうすぐ旬を迎えるタケノコになる竹と、竹細工に使う竹は別もの。タケノコを栽培している山は土に肥料を与えているため、竹が育っても養分が多すぎて細工に使えないそうです。

「他にも、キロクタケハチという言葉が昔からあってね。『木は6月に、竹は8月に切りなさい』という先人の知恵なんです。旧暦だから今でいうと8月は10月あたりだね」

そんな竹の豆知識をあれこれと教わっているうちに、職人さんの工房に到着。一見すると普通のお家にしか見えません。

セカンドキャリアは竹かご職人

「竹かご作りは手間も時間もかかります。それだけを生業にしてる人は今はいないね。みんな定年後に作り方を覚えて、自宅でやっている人がほとんどです」

今日伺う島田洋司さんも、定年退職後に竹細工職人となったひとり。

1日の大半を過ごすという工房内。テレビが見やすい位置に作業台がセットされています
1日の大半を過ごすという工房内。テレビが見やすい位置に作業台がセットされています

富永さんが旗揚げに携わった鹿児島市の技術学校で竹細工の技術を習得し、職人デビューして11年を数えます。

「竹はまっすぐに生えるから、その繊維をきれいな直角に曲げて作る四角いかごは作るのが難しいのね。

特に蓋のあるものは、身と蓋がピタッと合わないといけないからサンドイッチかごはなかなかきれいに作れる人がいない。島田さんはそんな難しい角ものをきちっと作れる人です」

島田さん。富永さんが信頼を置く職人さんのひとりです
島田さん。富永さんが信頼を置く職人さんのひとりです

ご自宅の離れを活用しているという工房で、その手わざを見せていただきました。

軽くて丈夫で何より可愛い。サンドイッチかごができるまで

竹材の幅を揃える道具
竹材の幅を揃える道具
厚みを整えて‥‥
厚みを整えて‥‥
専用の台にセット。ろくろのように土台が回転します
専用の台にセット。ろくろのように土台が回転します
かごのサイズに合わせて角度を付けた竹ひごを、編んでいきます
かごのサイズに合わせて角度を付けた竹ひごを、編んでいきます
おもて、うらと流れるように編まれていきます
おもて、うらと流れるように編まれていきます

道具はどれも、島田さんが自分でカスタマイズしたものばかり。回転する作業台も、島田さんオリジナルだそうです。

「設計図は特にありません。材料の厚みなど基本的なことを教わったら、あとは自分でやりながら覚えていくだけですね」

作業の手を休めず何気なく答える島田さんに一番難しい工程を伺うと、

「節の出方を考えなきゃいけないところかな。編み目の内側に竹の節が当たるとぽきっと折れてしまうから、節が大体どの辺りに来るのか、編み始める前に考えておかなきゃなりません」

表面をよく見ると、節がおもて側に、揃って現れています
表面をよく見ると、節がおもて側に、揃って現れています

節をうまく避けて編むための秘密兵器も、島田さんは手作りしています。

島田さんオリジナルの定規。タテヨコの編み目が色で示されています。竹の節がここに当たらなければOK
島田さんオリジナルの定規。タテヨコの編み目が色で示されています。竹の節がここに当たらなければOK

何気なく編んでいるようで、こんな工夫がされていたとは。

かごの上部に、先ほどの定規と同じものがセットされています
かごの上部に、先ほどの定規と同じものがセットされています

「節がなければ随分楽だろうと思いますが、その分できたものに特徴がなくなってしまいますからね」

作業を見ていた富永さんが、帰りの車の中で語ります。

「竹細工は材料の段取りが8割。特にサンドイッチかごは竹の皮部分しか使わないの。身は全部捨てちゃうのね。

油抜き (ゆぬき。竹の余分な油を火や熱湯で抜く作業) をして、材料の幅や厚みを揃えたり、節の出具合を計算したり。

もうひとつ、私から職人さんにお願いしているのは、材料を切ったままの角ばった状態で使わず、必ず面取りをすること。それだけで手触り良く、表情が柔らかくなるからね」

鹿児島の竹細工を専門に商う立場として、富永さんは職人さんへのアドバイザー的役割も担っています。

「作業の様子を見ていると、うちの竹かごが長持ちする理由もよくわかる。長持ちすぎて売れないのが困りものなんだけどね。あ、あそこも竹山」

可愛らしいサンドイッチかごを生み出していたのは、オーバー60世代コンビのたっぷりの愛情と細やかな創意工夫。

手に乗せるととても軽いのですが、ちょっとやそっとのことではへこたれない丈夫さを感じます。鹿児島から持ち帰って、早速使ってみようと思います。

<取材協力>
創作竹芸とみなが
鹿児島県鹿児島市鷹師1-6-16
099-257-6652

文・写真:尾島可奈子
※こちらは、2018年3月6日の記事を再編集して公開しました。

ホワイトデーのお返しは老舗菓子店のマシュマロから始まった

もうすぐ3月14日、ホワイトデーです。男性が女性に、バレンタインデーにチョコレートをもらったお返しをするという日ですね。

この文化はいつどこからはじまったのか、みなさんはご存知でしょうか?実は、日本からはじまったものだったのです!

九州・博多生まれの「ホワイトデー」

昭和52年のある日のこと。明治38年に博多で創業した「石村萬盛堂」では、この日も自社のメイン商品となる博多銘菓「鶴乃子」をつくっていました。「鶴乃子」とはマシュマロ生地で黄身あんをくるんだお菓子です。

当時の「鶴乃子」パッケージ。
当時の「鶴乃子」パッケージ。
現在の「鶴乃子」。卵型の箱は今も健在です。
現在の「鶴乃子」。卵型の箱は今も健在です。
卵型のすべすべしたマシュマロの中に、黄身あんが包まれているやさしいお菓子です。
卵型のすべすべしたマシュマロの中に、黄身あんが包まれているやさしいお菓子です。

社長を務める石村善悟さんが、お菓子づくりのヒントを探し、ある少女雑誌をめくっていたところ「男性からバレンタインデーのお返しがないのは不公平!」という投稿を見つけます。これを見た石村さんは「男性から女性へマシュマロをお返しする日を、自社商品『鶴乃子』をきっかけにして作れないかな?」と考えました。

そして出来上がったのが「鶴乃子」をつくる機械を使い、マシュマロの中にチョコレートを包んだ「チョコマシュマロ」。

そのコンセプトはまさに、

「バレンタインデーに君からもらったチョコレートを、僕のやさしさ(マシュマロ)で包んでお返しするよ」

というものでした!

日程はバレンタインデーのちょうど1ヶ月後に設定。満を持して昭和53年の3月、「マシュマロデー」という名称でスタートしたのです。

しかし、数年間はなかなか定着せず、売上の厳しい期間が続いたそうで‥‥。そんなとき、ある百貨店から新しい提案が舞い込みます。

「バレンタインデーのお返しがマシュマロというだけでなく、もっと幅広い文化にできないか?」「マシュマロの白を想起させる、『ホワイトデー』という名称はどうか?」と。

このアイデアを取り込んだことが功を奏し、その後、マシュマロだけでなくいろいろなお菓子やものを贈るという現在の「ホワイトデー」文化が日本にどんどん定着していったのだそう。「ホワイトデー」の誕生についてはもちろん諸説ありますが、日本の老舗のお菓子屋さんが仕掛けたものだったのですね。

創業111年を迎えた「石村萬盛堂」のあらたな挑戦

創業した明治頃の「石村萬盛堂」本店。写真左側、「鶴乃子」ののぼりが。
創業した明治頃の「石村萬盛堂」本店。写真左側、「鶴乃子」ののぼりが。

「石村萬盛堂」は、現在も「鶴乃子」のほか、あらたなマシュマロ製品や和洋菓子の開発を続け、独創性と伝統性を大切にしながら商品開発を行っています。

2017年には、創業111年を迎えるのを記念し「石村萬盛堂」と奈良の「中川政七商店」コラボレーションパッケージの「チョコレイトマシュマロ」が生まれました。

「チョコレイトマシュマロ」5個入り400円(税別)
「チョコレイトマシュマロ」5個入り400円(税別)
「ストロベリィマシュマロ」5個入り400円(税別)
「ストロベリィマシュマロ」5個入り400円(税別)
中にはたっぷりチョコレート。ふわふわとろーりの食感です。
中にはたっぷりチョコレート。ふわふわとろーりの食感です。

博多銘菓として長年愛されてきた「鶴乃子」から生まれたマシュマロ。鶴は夫婦仲が良く、一生を連れ添うことから 「夫婦鶴」といわれ、仲よしの象徴ともされる縁起の良い鳥。これはホワイトデーの贈りものにぴったりです。

また、パッケージの上下には、博多の工芸品である久留米絣をイメージした模様が配されており、ご当地感も忘れません。

今年は元祖ホワイトデーのマシュマロで、お返しの準備をしてみてはいかがでしょうか。「もらったチョコレートを僕のやさしさマシュマロで包んで」お返ししてくださいね。もちろん、マシュマロだけでなく他の贈りものを添えていただいても女性陣は大歓迎であります。

<取材協力>
石村萬盛堂
福岡県福岡市博多区須崎町2-1
092-291-1592
http://www.ishimura.co.jp

文:杉浦葉子
※こちらは、2017年3月6日の記事を再編集して公開しました。

中川政七商店「ごはん粒のつきにくい弁当箱」をお弁当好きが使ってみた

お弁当をつくるのは好きですか?
自分のため、家族のため、毎日早起きしてお弁当をつくっている方も多いかもしれません。

私は何を隠そう、大のお弁当好き。

普段、取材に出かけたり、部屋にこもって原稿を書いたりしていますが、会社のようにお昼休みの時間が決まっていないので、つい適当に済ませてしまいがち。

そんな時、朝にお弁当をパパッとつくっておけば、気持ち良さそうな場所でお弁当ランチを楽しめて、気分転換にもなります。

ある日のお弁当。曲げわっぱの弁当箱がお気に入りです

最近のお弁当箱は種類が豊富。
見るとついつい欲しくなってしまい、いつの間にか数が増えていきました。

我が家にあるお弁当箱の一部

お弁当箱の素材は、何がいいのか

いろんな素材のお弁当箱を使っていると、長所や短所が見えてきます。

例えば、プラスチック製は手軽だけど少し安っぽい感じがしてしまうし、わっぱや竹製はごはんが美味しそうに見えるけど、汁こぼれが心配。アルミ製は丈夫だけどごはん粒がくっつきやすいしレンジにかけられない……などなど。

これらの短所を解決する、新しいお弁当箱に出会いました!

山中漆器の産地、石川県加賀市にあるお弁当箱メーカー「たつみや」さんと中川政七商店がつくった「ごはん粒のつきにくい弁当箱」です。

ごはん粒のつきにくい弁当箱/ 2,800円(税抜)。朱・薄墨・紺の3色あります

名前の通り、“ごはん粒がつきにくい”のは、樹脂の素材に熟練の塗師が塗りと特殊加工を施しているから。洗う時も汚れが落ちやすく、傷がつきにくいので耐久性も高いなど、いろんな素材のいいところだけを集めたお弁当箱なのです。

蓋にはしっかりとしたパッキンがついているので、汁こぼれの心配もほとんどありません

製造の秘密を追って現地にお邪魔した記事はこちら:老舗弁当箱メーカーが極めた「スルッと洗いやすい」一段弁当箱。秘密は漆器産地の技術にあり

使って良さを実感

このお弁当箱を、実際に使ってみました。

じゃーん、出来上がりです。

適度に深さがあるので、ごはんも意外とたくさん入ります。少々大きな具を入れても蓋がしまらないことはありません。ちなみにお弁当箱のサイズは、女性だと十分食べ応えがある大きさですが、男性の場合は少食な人向きかもしれません。

驚いたのは蓋のパッキン。
お弁当を詰め、蓋の部分を持ち上げてもご覧の通り、しっかり密着されています。

お弁当のバンドが見つからない!という時も安心

さらにこのお弁当箱、漆器のような風合いにも関わらず、レンジにかけられるんです。温めた後も、名前の通りごはん粒はまったくお弁当箱にくっついていませんでした。傷もつきにくいので、毎日気軽に使えそうですね。

面倒な後片付けも楽チン

お弁当にまつわるもう一つのお悩みが、「後片付けの面倒さ」。ごはんの跡がこびりついてなかなか取れなかったり、油がすっきり落ちなかったり……。お弁当箱の形状によっては角が洗いにくいこともあります。

このお弁当箱は食洗機にかけられますが、手洗いでもストレスなくスルッと汚れが落ちました。

角は丸みがあるので、四隅も洗いやすいです

その秘密は塗りを施した内側の塗料。粒子を極小にすることで、汚れがつきにくいそう。おっくうな洗い物もぐっと楽になるはずですよ。

スルッと汚れが落ち、ツルツルに

春の足音が近づき、これからお弁当を食べるのが楽しみになる季節。どんな食材とも調和するお弁当箱は、屋内屋外問わずさまざまなシーンで活躍してくれそうです。毎日気軽に使えるお弁当箱で、楽しいランチタイムを過ごしてみませんか。

お弁当

<掲載商品>

中川政七商店のお弁当箱

ごはん粒のつきにくい弁当箱 朱/薄墨/紺(中川政七商店)

文・写真:石原藍

合わせて読みたい

〈 春に使いたい食卓の道具 〉

お花見にあると嬉しい「かご」や「ぬの」集めました

花見の弁当箱・籠

もう少し暖かくなれば、お花見の季節。今日は、お花見にあると「おっ」と一目置かれるようなアイテムを紹介します。

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使いやすさ最高峰。ふだんも使えるおせちのお重を見つけました

お重・おしゃれ

漆器の産地である福井県鯖江市の「松屋漆器店」さん。
100年以上の歴史を持つ、越前漆器の老舗メーカーがつくる「お重」が、ふだん使いもできる良い工芸でした。

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皇太子も愛用したバスケット

お重・おしゃれ

現皇太子がこどもの頃に愛用され「なるちゃんバスケット」と呼ばれ、多くの幼稚園で採用されていました。
素材やデザインは異なりますが、「大正バスケット」と呼ばれ当時大流行した、蓋付きカゴも数多く豊岡で作られていたそうです。

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吉報!夏もお持ち帰りできる「本場の明太子」。九州土産の新定番を見つけました

常温で運べる明太子?

九州からの帰り道、空港でいつも迷う。

本場の明太子をお土産に買いたい。買いたい‥‥!だけど、明太子は要冷蔵。長旅では運べず、いつも諦めてしまっていた。

そんな私に一筋の光が。

手土産として買って帰れる、本場の明太子。その上、あつい夏でも常温で持ち運べる嬉しい逸品と出会ったのだ。

明太子の旨味を閉じ込めた「めんたいアヒージョ」

めんたいアヒージョ
合同展示会「大日本市」で見つけた、めんたいアヒージョ

それが、「めんたいアヒージョ」。今年の2月に発売したばかりの商品だ。

アヒージョといえば牡蠣やきのこメインのものが多い中、こちらの主役は明太子。

まずはそのまま味わい、次にアツアツのバゲットに乗せて楽しむ。明太子の旨味が溶け込んだオリーブオイルは、パスタソースやサラダのドレッシングとしても使える。明太子のおいしさを余すところなく、最後の一滴まで味わえるのが嬉しい。

「めんたいアヒージョ (プレーン) 」
「めんたいアヒージョ (プレーン) 」。明太子の旨みと数種類のスパイスによる香りが魅力。マイルドな味わい
「めんたいアヒージョ (レッドペッパー) 」。唐辛子とガーリックでシンプルに味付け。素材の旨味とピリッとした辛みが一度に味わえる
「めんたいアヒージョ (レッドペッパー) 」。唐辛子とガーリックでシンプルに味付け。素材の旨味とピリッとした辛みが一度に味わえる

「ごはんのおとも」として親しんできた明太子には、和食のイメージがあった。でもたしかに、今では明太パスタや明太フランスなど、洋食の素材としても幅広く親しまれている。それを踏まえ、幅広い世代が気軽に楽しめる明太子の新しい食べ方を模索する中で生まれたのが、この「めんたいアヒージョ」だという。

めんたいパスタ

専門店だからこその技術が、明太子のアヒージョを実現した

作っているのは、佐賀県鳥栖市の明太子専門メーカー「蔵出しめんたい本舗」。

明太子を専門に、独自の製法を長年研究してきたからこそ「めんたいアヒージョ」は生まれた。オイル漬けにしても、明太子そのものの旨みと粒感をしっかりと感じることができるのは、使用している明太子の加工法に秘密がある。

「明太子は熱を加えることで余計な水分が落ち、風味や旨味が凝縮されるという特徴がある」のだそう。その明太子を、スペイン産のピュアオリーブオイルに漬け込むことで、粒感とスパイスの香りを贅沢に閉じ込めた商品が完成した。

明太子

「オリーブオイルは老化防止や美肌効果が高く、健康や美容に効果のある食材と言われることから、女性に人気のある食材です。お土産としてだけでなく、女性へのギフトにもおすすめですよ。

ワインと合わせて楽しんでいただいたり、常温で持ち歩けるので、およばれの時の手土産としても活用いただけます」

試食の際、そんな案内をしていただいた。旅土産の枠を超えて、日常的に活躍する食材になりそうだ。

旅に出たら、その土地の美味しいものをお土産にしたい

せっかく持ち帰るなら、その土地ならではの本当においしいものがいい。要冷蔵の壁を打ち壊してくれた、新しい九州土産。

旅の思い出を、食卓でどうぞ。

<取材協力>

蔵出しめんたい本舗

佐賀県鳥栖市藤木町若桜4-9

0120-877-333

http://www.kuradashi-mentai.com/

文:小俣荘子

日本のタイル発祥の地「瀬戸」は壁を見ながら歩くのが面白い

日本で最初にタイルが生まれた町・瀬戸

名古屋の中心街・栄から直通電車で30分。終点の尾張瀬戸駅に到着します。

陶磁器のうつわ全般を指して「瀬戸物」という言葉があるほど、日本を代表する焼きもの産地、瀬戸。日本で最初のタイルが生まれた土地でもあるそうです。

後ほど登場する、ある場所の古いタイル
後ほど登場する、ある場所の古いタイル

そんな焼きものの町・瀬戸は、実は壁を見ながら町を歩くのが面白い。

窯垣の小径

美しいタイルに美味しい喫茶、そしてうつわとの出会いも楽しめる「壁めぐり」ルートを見つけたのでご紹介します。

タイルをたどって町歩き

駅のそばを流れる川沿いは、うつわを売るお店が立ち並びます。

瀬戸焼の歴史がわかる「瀬戸蔵ミュージアム」に差し掛かったあたりでちょっと南へ、住宅街に入っていくと‥‥

瀬戸本業窯
瀬戸本業窯
瀬戸本業窯

あちこちに、タイルや焼きものの町らしい風景が。

屋根についているものや
屋根についているものや
タイルではないけれど、焼きものをあしらったユニークな門柱も
タイルではないけれど、焼きものをあしらったユニークな門柱も
足元にもタイル
足元にもタイル
時々こんな焼きものの層?のようなものも
時々こんな焼きものの層?のようなものも

ゆるやかに南下しながらさらに東へ歩いていくと、今日の目玉のひとつの「入口」に到着しました。

斜面に、何かがずらりと
斜面に、何かがずらりと
脇の階段を登って、横から見るとこんな感じ
脇の階段を登って、横から見るとこんな感じ
階段を登りきると、こんな道が
階段を登りきると、こんな道が

全国で瀬戸にしかない風景、「窯垣の小径」を散策

ここは「あるもの」で作られた垣根の道が続く「窯垣の小径」。

窯垣の小径

ずっと続く垣根は、実はうつわを焼く際に窯で使用する「窯道具」が積み重なって出来ています。全国でも瀬戸でしか見られない景色だそう。

窯垣の小径
窯垣の小径
窯垣の小径

デザインとしてではなく、どうやら必要があって生まれた垣根のようなのですが、一体、なぜ?

不思議に思いつつも奥へ奥へと進むと、こんな資料がありました。

窯垣の小径資料館
窯垣の小径資料館
展示室にはタイルがずらり!
展示室にはタイルがずらり!
青が鮮やかです
青が鮮やかです
デザインも様々
デザインも様々
古い瀬戸のうつわも
古い瀬戸のうつわも
タイル敷きのお風呂も!
タイル敷きのお風呂も!

かつてはこの通りが、一帯の窯元さんから出来上がったうつわを運ぶメインストリート。

窯垣の小径

現在でも道沿いには窯元さんの家が並んでいるそうで、家々の壁も目を楽しませます。

窯垣の小径
窯垣の小径
こんな意匠を凝らした壁も
こんな意匠を凝らした壁も

景色を楽しむうちに、そろそろ小径も終着点。

この近くにもう一つ、ぜひ訪ねておきたいところがあります。

それが瀬戸の古くからの焼きものの系譜を継ぎ、タイルの歴史も知る「瀬戸本業窯」さん。

瀬戸本業窯

土日祝日に開く資料館ではなんと、日本で初めて作られたタイルと、タイル製便器の復刻版を見ることができます!

日本で初めて作られたタイルはこんな姿

瀬戸本業窯さんの資料館。土日祝のみ開館する
瀬戸本業窯さんの資料館。土日祝のみ開館する
これが日本の初期のタイル!
これが日本の初期のタイル!
そしてこれが日本のタイルを使った初期の便器
そしてこれが日本のタイルを使った初期の便器

「でもこういうタイル、初めて見たんじゃないでしょうか。知らないのが当然で、これはもともと明治の頃に、輸出品として作られたんです」

そう説明してくれたのは水野雄介さん。瀬戸本業窯8代目の後継者です。

水野雄介さん
水野雄介さん

「この間タイに行ったらお寺で同じタイルを見つけてびっくりしました。東南アジアは貿易の中継地でしたから、その流れで使われていたのでしょうね」

このタイルは「本業タイル」と呼ばれ、かつてはこの地域一帯で「本業焼」を焼く複数の窯元で一緒に作っていたそうです。

そもそも、本業焼とは?

瀬戸は陶器・磁器両方が生産されてきた土地。

江戸後期から始まった磁器づくりに対し、平安の頃から始まっていたという古くからの陶器づくりは「本業焼」と呼ばれてきました。

本業タイルは、その本業焼の技術を駆使して生み出されたもの。

しかし現在、昔からの本業焼の系譜を受け継いでいるのは瀬戸で瀬戸本業窯さん1軒のみ。そのまま焼きものの名前を窯元名として受け継いでいます。

ギャラリーでは、伝統ある瀬戸本業焼を実際に手に取って見ることが出来る
ギャラリーでは、伝統ある瀬戸本業焼を実際に手に取って見ることが出来る
瀬戸本業窯

瀬戸のものづくりの原点とも言える本業焼。

産地全体の生産量は磁器やセラミックが圧倒的な中、実際に本業焼のうつわを使うシーンに触れて欲しいと、水野さんが工房のそばで始めたのが「窯横カフェ」です。

窯横カフェ

たっぷり歩いて、これは一息つくのにぴったり。早速お邪魔することにしました。

窯のすぐ横、「窯横カフェ」

食器棚には本業焼のうつわがずらり
食器棚には本業焼のうつわがずらり
こんな湯のみサイズや
こんな湯のみサイズや
たっぷり料理を盛り付けられそうな大皿も
たっぷり料理を盛り付けられそうな大皿も
こんなかわいらしい箸置きもありました
こんなかわいらしい箸置きもありました
「東海地方の一番いいものを最初に素手で触っていただきたい」と、おしぼりは美濃和紙で作られたもの
「東海地方の一番いいものを最初に素手で触っていただきたい」と、おしぼりは美濃和紙で作られたもの

おすすめをと頼んで運ばれてきたのが、みつ豆と三河「わ紅茶」のセット。

「わ紅茶」やみつ豆のベースに使われている緑茶は、どちらも徳川家康を生んだ愛知県岡崎市の無農薬のお茶を使っているそう
「わ紅茶」やみつ豆のベースに使われている緑茶は、どちらも徳川家康を生んだ愛知県岡崎市の無農薬のお茶を使っているそう
瀬戸本業窯 窯横カフェ

「みつ豆は、瀬戸の風景を見立ててあるんですよ」

瀬戸本業窯 窯横カフェ

そう、実は先ほど歩いてきた窯垣の小径が、いく層にも素材を重ねたみつ豆で再現されているのです。これはよい旅の思い出。

さっき歩いてきた小径の窯垣
さっき歩いてきた小径の窯垣

ところでカフェの名前は「窯横カフェ」。由来はズバリ、そばにある立派な登り窯です。

窯横カフェと登り窯
瀬戸市の指定文化財になっている登り窯。かつて瀬戸本業窯を焼く窯元で共同で使われていた一部を移築したもので、昭和まで現役で動いていました
瀬戸市の指定文化財になっている登り窯。かつて瀬戸本業窯を焼く窯元で共同で使われていた一部を移築したもので、昭和まで現役で動いていました

ここに、先ほどの「窯垣の小径」が生まれた理由が見つかりました。

瀬戸にしかない「壁」が生まれた理由

「登り窯の一つひとつの穴は、人が入れるくらいの高さがあります。

広い空間に焼きものをいっぱい入れるために使うのが、こういう円柱や、板。これが窯道具です。組み立ててその上に焼きものを載せていくんです」

瀬戸本業窯
円柱を置いたところだけ焼けずに白くなっている
円柱を置いたところだけ焼けずに白くなっている

「茶碗や皿は一回焼けば焼き上がりますが、窯道具は何回も再利用します。

次第に歪んできたり割れちゃったりで使えなくなるけれども、そのままでは大きくてかさばるので、さてこれはどうしようと、昔の人が注目したのが石垣でした」

窯垣の小径

「登り窯というのは斜面を利用して作りますから、何より土砂崩れがこわい。それを防ぐための石垣として、石の代わりにこうした窯道具の廃材を利用したんです。

もともと瀬戸のあちこちにそうした石垣があったんですよ」

小径のまわりにはこんな活用方法も
小径のまわりにはこんな活用方法も
窯垣の小径
ちなみに、小径で見たこの大きな筒状のものは、商品が焼成中に傷つかないよう、中に壺などを入れて一緒に焼くための道具だそう
ちなみに、小径で見たこの大きな筒状のものは、商品が焼成中に傷つかないよう、中に壺などを入れて一緒に焼くための道具だそう
こんな風な使い方も
こんな風な使い方も

しかし、現代の建築基準では新たに作ることができず、時代の流れとともに窯垣は姿を消していきました。

そこで7代目である水野さんのお父さんが地域に働きかけ、残すべき景観として条例で保護されるように。

現在では瀬戸に600箇所ほどの窯垣が残されているそうです。先ほど歩いてきた小径は、その最大規模のものでした。

「この登り窯は、薪を入れる口が3つ、ひとつの空間は背の高さ。これは全国的にも大きいサイズで、まず見かけません」

薪を入れる口部分
薪を入れる口部分

「それだけたくさん焼く必要があるくらい、瀬戸に焼きものの需要があったということなんですね。

瀬戸がタイル発祥の地になったのも、焼きものにとって大事な『あること』を日本で最初にやった土地だからなんです。

そのお話は登り窯の中に入るとわかります。さぁどうぞ」

この登り窯、まだまだ物語がありそう。次回は瀬戸本業窯さんの、実際のものづくりのお話に迫ります。

瀬戸本業窯

<取材協力>
瀬戸本業窯
愛知県瀬戸市東町1-6
http://www.seto-hongyo.jp/

文・写真:尾島可奈子

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