中川政七商店が残したいものづくり #04郷土玩具

中川政七商店が残したいものづくり
#04 郷土玩具「鹿コロコロ」



商品三課 羽田 えりな

私は郷土玩具が好きです。
 
郷土玩具ってご存じですか?
いろんな定義がありますが、簡単に言うと日本各地で作られた「手づくりのおもちゃ」です。
発祥は、大昔から伝わっていたり、近代になってどなたかが趣味で作られたものが広がっていったりとさまざまなケースがあるのですが、よく聞くのは、位の低い武士や農民が閑散期の収入を賄うために作り、広まったという話です。

玩具の素材は、木や土と様々。
その中でも紙を何層にも固めて作る「張子」というものがありました。
江戸時代の城下町は商人文化ということもあり、不要になる紙が多かったことから、お城のあった地域には張子の玩具が多く残っているのだそうです。
玩具それぞれにそういった歴史に絡んだ背景もあり、知れば知るほど面白いものです。
 
私の家には、これまで集めてきた郷土玩具がたくさんあります。
作り手さんから直接購入したもの、玩具博物館の物販コーナーで見つけたもの、骨董市で出会ったもの、郷土玩具の愛好会でいただいたもの…と、小さなものや名もなきものまで含めると、その数ざっと100種ほど。
さすがに全部は飾りきれないので、選抜の玩具だけがリビングや玄関、お手洗いの棚といった、彼らにとっての「ステージ」へ送り出されます。
ひとり密かに飾るコンセプトを考え、ステージに上げる玩具を選出する気分は、アイドルのプロデューサーさながら。
ちなみにここ最近の私の推し玩は、長野県のそば食い猿です。



そんな郷土玩具たちへの愛に、「敬意」がはっきりと加わったのは、鹿コロコロを開発したときのこと。
開発初期、私は鹿コロコロの試作のため、張子づくりの技術を習得することから始めました。
作り方を教えてくださる職人さんを見つけ、直接お話を伺い、時には制作過程の写メを送ってアドバイスをいただきながら、数週間かけてやっとこさ1つ完成させたのですが、これがまぁ労力のわりにかわいくない。


「元々は庶民の仕事たったわけだし、材料も特別なものはいらないし、できるでしょ!」と超甘い考えだった自分を恥じました。全国の張子職人さん、本当にごめんなさい。
 
でも、実際に手を動かしたからこそわかったことがありました。
それは、張子づくりは本当に手間暇がかかるということ。
うちの張子たちも、こんなに長い道のりを経ていたとは。
これから商品として継続的に量産するには、製造工程も、生産体制も見直す必要があると心底思いました。
 
このときの実体験から、鹿コロコロの開発では「昔の良いところは生かしながら、いろんな人が作りやすくなる方法」を模索していきました。
その方法は、ベースの型を3Dプリンターで起こしたり、樹脂で型を量産したり、車輪に絵付けするための治具を作ったり…。
GoodJob!センターさんとお話しながら生まれた小さな工夫が積み重なって、現在の形になっていきました。
デジタルと手仕事を融合させて生まれた、新しい郷土玩具です。




今世の中に存在する郷土玩具の多くは、宗教的な意味合いとか、子供の無病息災を願う役割などから始まっていて、生まれた時は「郷土玩具」とは呼ばれていなかったと思います。
何十年、何百年も愛され続けた結果、「郷土玩具」になったのではないでしょうか。
そう思うと鹿コロコロも、本当の意味ではまだまだ郷土玩具ではありません。
まさに今、歴史を歩み始めたばかりです。
 
鹿コロコロは奈良の郷土玩具になったのか。
その答えが出る100年後が、私は今からとても楽しみです。

商品名:鹿コロコロ
工芸:郷土玩具
産地:奈良県香芝市
一緒にものづくりをおこなった方:Good Job! Center KASHIBA
商品企画:商品三課 羽田 えりな


<掲載商品>
鹿コロコロ(奈良)

京都の鍛金工房WESTSIDE33で「行平鍋」をメンテナンス。10年使った愛用品がプロの手で蘇る

WESTSIDE33

京都七条、三十三間堂の西隣の通りにある鍛金工房「WESTSIDE33」。

明るい店内には、オリジナルの調理器具や器、テーブルウェアが並べられています。料理好きだけでなく、プロの料理人も通う人気店です。

WESTSIDE33
WESTSIDE33

これらはすべて、手作業で形づくられたもの。銅やアルミ、真鍮などの金属の板を、金槌で叩いて形をつくる、鍛金(たんきん)という技法で作ります。

WESTSIDE33

職人さんがひとつひとつ打ち出して作るため、槌目(つちめ)と呼ばれる模様がそれぞれ異なります。規則性がありながらも大きさや形がランダムな槌目には、職人さんの手作業を見てとることができ、大切に使いたいなと思わせてくれます。

WESTSIDE33

私がお店を訪ねるのは、実は3度目。最初に小さな行平鍋を、次に料理を取り分けるスプーンを購入。どちらもすこぶる使い勝手がよく、毎日の料理に欠かせません。

 

愛用の行平鍋をメンテナンスへ

今日は10年以上使っている行平鍋のメンテナンスへ。柄の部分がぐらぐらしてきたので直してもらおうと、「WESTSIDE33」を訪ねました。

WESTSIDE33
10年以上使っている行平鍋。まだまだ使えるものの、柄がガタガタしてきた

持参した鍋を渡すと、まずは「柄の根元が黒ずんでいる」と指摘が。

「黒くなるのは、水の中に入ってる塩素やらいろんな薬品に反応してるから。柄まで洗えばこうならへん」

そう言うと、店の奥にある作業場へ。

WESTSIDE33

柄がついているネジを外し、柄を鍋に打ち込むと再びネジを閉め、あっという間にメンテナンス終了。

WESTSIDE33

 

ゴシゴシ洗うことが長持ちの秘訣

「洗いも教えてやろか?」と言って、今度は台所へ。

ナイロンたわしに洗剤を付け、ゴシゴシと洗っていきます。

こんなに擦っていいのだろうかと思うくらいゴシゴシ、ゴシゴシ。

WESTSIDE33

「表面に何にも加工してないから、なんぼ洗うたかて大丈夫」

なるほど。確かに、剥がれて困るようなものは塗られていません。

でも、なんとなく、洗いすぎるときれいな槌目がなくなってしまうのではないかと思っていました。

「そんな簡単に取れるもんじゃない。プロの料理人でも、槌目がなくなるまで使うには何十年もかかる」

洗うときのコツはあるのでしょうか。

「自分の洗いやすいように工夫して洗ったらいい。洗うものは、タワシでもナイロンでも」

おすすめは石鹸付きのスチールウール。洗うと光沢が出るそうです。

「これは長いことちゃんと洗ろうてないから力がいるけど、普通はこんな力いらへんよ。毎日丁寧に洗ってれば、そんなに汚れもつかへんし」

WESTSIDE33

…いかにいい加減に洗っているか。お恥ずかしい限りです。

洗うこと3、4分。

「きれいになったやろ?」

WESTSIDE33

わ!すごい!さっきまで霞がかかっていたお鍋がピカピカに。

WESTSIDE33の調理器具は、いいものだからこそ長く使いたいとメンテナンスの依頼も多いそうです。

「空焚きして柄が燃えちゃったとか、やっぱり柄を直すことが多いかな。これもまだまだ10年以上使える。普通の家庭なら一生使えると思う」

そして、きちんと洗う。肝に銘じました。

WESTSIDE33

見違えるほどキレイになった愛用の行平鍋。

槌目もキラキラと輝いています。

良いものは、正しく使ってきちんと手入れをすれば長く使えるのだと、メンテナンスを通して改めて感じました。

 

これからも付き合える一生ものの鍋。愛情と技術を込めて作ってくださった職人さんのことも思い浮かべながら、大切に大切に使っていきたいと思います。

 

<取材協力>
WESTSIDE33
京都市東山区大和大路通七条下ル七軒町578
075−561−5294
※取っ手の修理期間・料金などは、直接お問い合わせください

文 : 坂田未希子
写真 : 太田未来子

*こちらは2018年11月13日の記事を再編集して公開しました。

【デザイナーが話したくなる】麻わたウールのセーター

冬の麻もの、糸からつくりました




麻と言えば夏、という印象が浸透していますが、実は、冬にも嬉しい効果があるのをご存知でしょうか。麻の商いから始まり300年、長く向き合ってきた中川政七商店だからこそ分かる魅力を引き出した、冬の麻ものを企画しました。

デザイナーの二井谷さんに話を聞いてみると、
「一口に麻と言っても実は20種類以上もあるんです。今回使用したのはリネンなのですが、繊維の中に空気が含まれていて、寒い季節には、天然のサーモスタットの役目を果たすような機能をもっています。」

オールシーズンに適した麻の特性を感じてもらいたい、という想いから、冬の麻ものづくりがスタート。
麻を活かした糸作りをご一緒してもらうなら!と相談に向かった先は・・・


独自の糸作りで世界に知られる佐藤繊維さんと開発




戦前からニット産業が盛んな山形県寒河江市で1932年創業の佐藤繊維さん。
天然繊維それぞれの機能を組み合わせて、これまでにない新しい糸作りをされています。
安い海外製品に押され軒並み廃業になってゆく国内企業の中で、こだわりの独自の糸作りで唯一無二の立ち位置を確立し、世界中の名だたるブランドが佐藤繊維さんの糸に惚れ込んでいます。



麻をいれた冬らしいニットをつくるのであれば、空気をふくむ紡績を施したふっくらとやわらかなウールをベースに、麻のわたを混ぜるのがいいのではないか、と編み地のサンプルをいくつか見せてくれました。
触ってみると、麻特有のシャリシャリとした涼しげな手触りではなく、冬のニットらしく温かみのある手触りです。



「麻が夏のものだと思われているのは、手触りがシャリっとしていて接触冷感の効果があるからだと思います。今回は、そんな麻の印象を一転させて、見た目も機能も手触りも冬にふさわしいものを作りたかったので、麻のわたを混ぜるという佐藤繊維さん独自の技術があってこそ実現できた物になりました。」

強度を出す為につよく撚った糸の状態で織ったり編んだりすると、どうしても清涼感のある手触りが前面に出てしまう麻。特殊な糸作りの技術で、麻に撚りをかけずにわたの状態で糸にすることで、やわらかく温かみのあるニットが完成しました。



佐藤繊維さん独自の糸作りにかかせないのが、古い機械に改良を加えたオリジナルの機械。大手紡績工場が標準的な糸を効率よく生産するために交換した、本来廃棄されるような機械です。古い機械は、効率はよくないけれど、機械自体がゆっくり動き繊細な原料でも引くことができる為、丁寧に糸を作るのに理想的な構造になっているそうです。

古いとはいえ、世の中に流通している機械ですが、麻をわたの状態でまぜた糸作りは効率が悪く大量生産に適していない為、佐藤繊維さん独自の技術になっているのだそうです。この温かみのある糸は、効率第一ではなく、素材を活かすために試行錯誤を重ねた作りたいものをなんとしても作るための“物づくりの現場”から生み出されたからこその風合いです。


見た目も機能も手触りも、冬にふさわしい麻のもの




糸作りからこだわって完成したニット。
「ニットの風合いが面白いものにできたので、それを活かしたくて、形はあえてシンプルで定番なものにしました。」
という言葉のとおり、どんな服にもあわせやすいベーシックな形に仕上がりました。



一見シンプルに見えて、こだわりの糸ならではの豊かな表情。ざっくりと編み、絶妙な縮絨(しゅくじゅう)加工* を施していることで、ウールのふくらみがより一層引き立ちます。
佐藤繊維さんがアレンジした古い機械でつくられたからこそ、画一化された工業的なものではなく、1つ1つ風合いが違う温かみのあるニットに仕上がりました。

※縮絨加工:毛織物の仕上げ工程の一つ。ニットの風合いを決める重要な仕上げ法。適度な縮みが入り、ふっくらと仕上がる為、セーター・カーディガンなど定番のニットに最適な風合いになります。



素材の特性を活かしたいという佐藤繊維さんと中川政七商店の想いが形になって出来上がったニット。社内で感想を聞いてみると、ボリュームがあるのに軽くて楽、という感想が口々にあがりました。冬は重ね着で肩が凝りがちなので、暖かくて軽いのは嬉しいポイントです。
素材によって糸の染まり具合が違って立体的、という声も。麻の特性を活かすために、ウールなど複数の素材を撚り合わせてつくった糸ならではの表情です。


今年はニットベストが新登場





季節の変わり目に、重ね着の主役として活躍します。シンプルながら素材感が印象的な大人の着こなしをお楽しみください。

日本の生薬を食やコスメに。新たな奈良土産「大和生薬」とは?

これからの季節、体のあたためにも活躍する生姜(しょうが)など、人がその成分を暮らしに活かしてきたのが「生薬 (しょうやく) 」。いわば天然の薬です。

白く美しい花を咲かせる大和当帰 (読み方) の花。生薬に長らく使われて来た一種です
白く美しい花を咲かせる大和当帰 (やまととうき) の花。生薬に長らく使われて来た一種です

生薬のルーツでありメッカなのが、奈良です。

日本で初めての生薬採取は、奈良が舞台。飛鳥時代の女帝、推古天皇が薬狩りをしたと『日本書紀』に記されています。

さらにシルクロードの終着点でもあり、大陸から古代医療が伝わったことで、寺院では治療薬の施しが行われ、薬草が栽培されるようになりました。

江戸時代には質の高い「大和生薬」を栽培する薬草園がいくつもあり、奈良は生薬栽培の中心地であり続けました。

まさに「ルーツでありメッカ」の地。そんな奈良で今、数百年の時を経て再び生薬を活かしたさまざまなアイテムが開発され、注目を集めています。

「くすりの町」が町ぐるみで手がける大和生薬の商品とは?

奈良県高市郡高取町(たかとりちょう)は、推古天皇が薬狩りをした地。そして全国に奈良生まれの「大和生薬」を広めてきた「くすりの町」として知られます。

高取町の様子
高取町の様子
「夢創舘」の奥にある「くすり資料館」
「夢創舘」の奥にある「くすり資料館」
「くすり資料館」では昔のレトロなパッケージを展示する
「くすり資料館」では昔のレトロなパッケージを展示する

そんな高取町が今、町ぐるみで大和生薬を使った商品の開発に取り組んでいます。

「始まりは大和当帰(やまととうき)の薬湯のヒットです」と語るのは、高取町観光協会会長の吉田浩司さん。

高取町観光協会会長の吉田浩司さん
高取町観光協会会長の吉田浩司さん

大和当帰は大和生薬の代表格で、古来より伝わる薬草です。

大和当帰
大和当帰

冷え性や貧血に効くとされ、古くから「血の道を良くする薬草」として重宝されたもの。

この大和当帰の葉を入浴剤にしたのが「大和当帰の湯」。

お風呂にサッと入れるだけ。独特の爽やかな香りが広がって、
古代から続く薬湯気分を手軽に味わえます。

大和当帰の湯。レトロなパッケージは町の資料館に残る商標を参考にしたもの
大和当帰の湯。レトロなパッケージは町の資料館に残る商標を参考にしたもの

歴史ロマン感じるデザインで、奈良土産としても喜ばれています。

町はヒットを受けて大和生薬を使った商品を次々とリリース。

高取町で作られている大和生薬の商品たち。大和当帰など和洋ハーブを、朝、昼、夜のシーンに合わせてブレンドした「やまと健やか茶」や、ハーブエキス配合の「喉太郎飴」など
高取町で作られている大和生薬の商品たち。大和当帰など和洋ハーブを、朝、昼、夜のシーンに合わせてブレンドした「やまと健やか茶」(写真上)や、ハーブエキス配合の「喉太郎飴」(写真左下)など

そのうちの一つ、「香塩(かおりじお)」は大和当帰の葉をふんだんに使った和のハーブソルトです。

当帰葉入り香塩
当帰葉入り香塩

オレガノや岩塩などとブレンドした豊かな香味は食欲をそそるだけでなく、毎日の食事で簡単に「薬膳」を取り入れることができます。

「肉や魚などいろんな料理のアクセントに使えます。サラダにふりかけて香りづけにしても。大和当帰を初めて知る人にも使いやすい商品です」と語るのは、「香塩」を開発し、町内で大和当帰の生産・販売を手がける「ポニーの里ファーム」の保科政秀さん。

栽培が難しく手間がかかる大和当帰を、農薬を使わず丁寧に栽培し、手摘みで収穫しています。

 

高取町にある「ポニーの里ファーム」
高取町にある「ポニーの里ファーム」
「ポニーの里ファーム」の保科政秀さん
「ポニーの里ファーム」の保科政秀さん

無農薬で高品質。希少な大和当帰の復活にかける思い

実は今、日本で使われる生薬のほとんどは安価な中国・韓国製。

「当帰」も例外ではありません。理由のひとつに収穫までの期間の長さがあります。

大和当帰は、種を蒔いて苗ができるまで1年かかります。漢方の材料となる根の収穫は2年目の冬か翌春。さらに葉に育つまでは、早い葉モノなら半年で収穫できるのに対し、2年を要します。

大和当帰の種
大和当帰の種

「僕が関わり始めた5年前は、大和当帰の存在を知る人すら少なかった」と保科さん。

歴史ある生薬ながら、作る人がいない。それが現状でした。

しかしこれまで根のみ生薬として利用されてきた大和当帰が、2012年から薬事法の緩和で、葉を食品として扱えるように。

これを受けて、伝承の薬草を特産として復活させようと奈良県が推進プロジェクトをスタート。採算性が上がったことから、日本の製薬会社も質の良い大和当帰に着目するように。

高取町はこの追い風を受け、「大和当帰をもっと多くの人に知ってほしい」と町ぐるみで栽培、開発を重ねてきました。今、その結果がさまざまな商品として実を結び、少しずつ注目を集めています。

たくましく育った2年もの、3年ものの大和当帰葉の栽培、加工を担当している保科さん。「蒔いた種が育ってきましたね」
たくましく育った2年もの、3年ものの大和当帰葉の栽培、加工を担当している保科さん。「蒔いた種が育ってきましたね」

「無農薬で“生まれも育ちもホンマもん”です」と保科さんは胸を張ります。

大和生薬をコスメにも!

「大和生薬はコスメにも優秀なパワーを発揮します」

こう語るのは、日本産の素材を活かしたヘルス&ビューティブランド「THERA(テラ)」の代表、橋本真季さんです。

株式会社ALAMBLA代表の橋本真季さん。
株式会社ALHAMBRA代表の橋本真季さん。

「THERA(テラ)」では日本人が古来より持つ文化や思想、漢方などの考え方に基づき、大和生薬などの自然由来原料を配合した、心身を内側から整える商品を展開しています。

THERAシリーズの商品。上から時計回りに、保湿クリームのマルチバーム、洗顔料の酵素のあらい粉 あお、化粧油のロールオンプレスオイル アロマイン
THERAシリーズの商品。上から時計回りに、保湿クリームのマルチバーム、洗顔料の酵素のあらい粉 あお、化粧油のロールオンプレスオイル アロマイン

実は橋本さんは奈良生まれ。

かつては奈良から広い世の中に飛び出したくて海外へ。オーガニックコスメの仕事に携わるように。

ところが欧米のハーブ文化を学ぶにつれて、日本のハーブのストーリーを知りたくなったそう。

「すると調べれば調べるほど、始まりは奈良でした」

正倉院には約1300年前の薬物や、最古の香木も残ります。

世界へ出た橋本さんは、後にしたはずのふるさと奈良で日本人の心身に本当に合う和のハーブ、大和生薬に出会い、THERAシリーズを立ち上げたのでした。

そんなTHERAの洗顔料「酵素のあらい粉 あお」には、大和当帰葉の粉末や奈良・曽爾村の米ぬかが配合されています。ダブル洗顔は不要で、洗い上がりはしっとりつるつるになるそう。

他にも美肌効果があるとされる芍薬の成分を活かした、チークにも使える口紅「日本美人紅」なども。

芍薬の花
芍薬の花

「奈良は日本のヘルス&ビューティ発祥の地。ここから素晴らしい生薬の美をお届けしていきたいです」

古代日本のヒーロー、ヤマトタケルは「倭(奈良)は国のまほろば」、最も良いところだと称えたと、『古事記』に伝わります。その奈良は生薬のまほろばでもありました。

今、その魅力に気づいた人たちの手で、再び今の暮らしに息づこうとしています。


<企画展のお知らせ>

「大和生薬」の商品が展示販売される企画展が開催されます。

企画展「大和生薬の食とコスメ」

日時:10月9日(水)〜11月12日(火)
開催場所:「大和路 暮らしの間」 (中川政七商店 近鉄百貨店奈良店内)

https://www.d-kintetsu.co.jp/store/nara/yamatoji/shop/index02.html

大和路

<取材協力>
高取町観光協会
奈良県高市郡高取町上土佐20-2 高取町観光案内所 夢創舘
0744-52-1150

ポニーの里
奈良県高市郡高取町丹生谷883-6
0745-67-0104
http://ponynosatofarm.shop-pro.jp

株式会社ALHAMBRA
奈良県奈良市南半田中町17-2(奈良支店)
0742-23-5867

*企画展の開催場所「大和路 暮らしの間」について

中川政七商店 近鉄百貨店奈良店内にある「大和路 暮らしの間」では、奈良らしい商品を取り揃え、月替わりの企画展で注目のアイテムを紹介しています。

伝統を守り伝えながら、作り手が積み重ねる時代時代の「新しい挑戦」。

ものづくりの背景を知ると、作り手の想いや、ハッとする気づきに出会う瞬間があります。

「大和路 暮らしの間」では、長い歴史と豊かな自然が共存する奈良で、そんな伝統と挑戦の間に生まれた暮らしに寄り添う品々を、作り手の想いとともにお届けします。

この連載では、企画展に合わせて毎月ひとつ、奈良生まれの暮らしのアイテムをお届け。

次回11月は、「広陵町の靴下」の記事をお届けします。

文:園城和子、徳永祐巳子
写真:北尾篤司 写真提供:株式会社ALHAMBRA

年間1万5千食売れる加賀パフェとは。「温泉とパフェ」という旅の提案

パフェ、それは心を踊らせる食べ物。しかしそれだけではありません。最近では地域おこしのフックとしても一役買っているのをご存知でしょうか。

札幌発祥の「シメパフェ」に始まり、各地でもご当地パフェが登場しています。そんな中、ちょっとユニークなパフェを石川県加賀市で発見しました。

それは「加賀パフェ」。地元の食材だけではなく「伝統工芸」もキーワードに誕生したパフェです。

デビューは2016年3月。北陸新幹線が金沢まで開業し、山代温泉・山中温泉・片山津温泉を訪れた人に、朝昼晩のほかにプラス1食楽しんでもらう「1泊2日3湯4食作戦」が打ち出されたことがきっかけ。加賀市のおもてなし喫茶メニューとしての「地産地消5層パフェ」を考案しました。

ただのパフェじゃ、「加賀パフェ」と呼べません。

加賀パフェは現在、市内の6店で提供しており、各店で見た目や素材が違います。しかし、加賀パフェと称するためにはルールがあります。

・加賀市産の加賀九谷野菜(ブロッコリー・味平かぼちゃなど)、牛乳、お米、はちみつ、吸坂飴、献上加賀棒茶などを使用する
・パフェは5層とし、その上にトッピングをのせる
・パフェの1層目(底から数える)は「色鮮やかなゼリー」とする
・パフェの2層目は「はちみつ生クリーム」とする
・パフェの3層目は「野菜スポンジケーキ」とする
・パフェの4層目は「ポン菓子」とする
・パフェの5層目は「ブロッコリーアイス・味平かぼちゃアイス・温泉卵など」とする
・パフェのトッピングは「加賀九谷野菜など」とする
・名物菓子「吸坂飴」を使った各店こだわりのオリジナルソースをつける
・急須に入れた献上加賀棒茶をつける
・料金は980円(税込)以下とする

などなど。細かく規定されているのですね!

加賀パフェは毎年バージョンが変わり、上記の規定を踏まえつつ各店が自由に味や見た目をリニューアルします。3月12日より2019年度にバージョンが一新されたばかり。さて、今年の加賀パフェはというと……。

ますますパワーアップした2019年バージョン。

1:加賀片山津温泉総湯 まちカフェ

屋形船を模したさつまいもクラッカーにご当地キャラ「かもやん」が乗り、3つの野菜ゼリーで虹を表現。柴山潟の美景を写し取ったパフェはボリューム&遊び心たっぷり。

住所:石川県加賀市片山津温泉乙65-2
営業時間:10:00~17:00(L.O.16:30)※ランチ11:30~14:00
定休日:木曜

2:加賀フルーツランド

自社果樹園で収穫した旬のフルーツを、生、ドライ、クッキー、クリームなど形を変えて盛り込みました。濃厚なチョコ感を味わえる吸坂飴ソースをディップにしても。

住所:石川県加賀市豊町イ-59-1
営業時間:9:00~17:00(L.O.16:30)
定休日:火曜(12~2月)、年末年始

3:カフェ・ランチ 加佐ノ岬

ほうれん草ロールケーキで新緑、ビーツ白玉や紫芋餡で季節の花を表現。さらにゼリーとプチトマトで日本海の夕景をイメージ。レモン味の吸坂飴ソースで味変を!

住所:石川県加賀市橋立町ふ23
営業時間:3~10月10:30~17:00
11~2月10:30~16:30 ※ランチ混雑時はパフェ注文不可の場合あり
ランチ11:30〜14:30

定休日:金曜

4:くいもんや ふるさと 加賀店

加賀大聖寺藩にちなんだ紅梅最中をはじめ、加賀梅酒のゼリーや赤紫蘇ゼリー、梅ロールケーキなどとことん梅と赤紫蘇づくし。赤紫蘇入りの吸坂飴ソースでさらに甘酸っぱく。

住所:石川県加賀市小菅波町1-55
営業時間:11:00~23:00(金・土曜 ~24:00)※ランチ 11:00~15:00
※混雑時には提供に時間がかかることがあります
定休日:火曜

5:ギャラリー&ビストロ べんがらや

生野菜や漬物に加え、口の中でパチシュワッと弾ける「炭酸氷」がアクセント。白ネギを練り込んだクッキーや炭れんこん、季節ごとの団子やあしらいなど工夫が盛りだくさんです。

住所:石川県加賀市山代温泉温泉通り59
営業時間:10:00~17:30、ランチ11:00~15:00
※ランチ混雑時はお受けできない場合もあります。
定休日:水曜

6:はづちを茶店

加賀棒茶ゼリー、ブラックペッパー味のおからクッキー、麩せんべいなど、甘さ控えめの組み合わせで男性にも好評。縁結びの祈りを込めた手作りの結び求肥と水引で食後も幸せに。

住所:石川県加賀市山代温泉18-59-1
営業時間:9:30~18:00(L.O.17:30)
11~2月は~17:00(L.O.16:30)
定休日:水曜

器も、お盆も、手織りコースターも、このパフェのために。

何よりも特徴的なのは、加賀パフェに使う食器などを地元工芸品で作り、全店で同じものを使用すること。このパフェに合わせて地元作家が新たに作り下ろしています。

半月型のお盆は山中漆器。加賀温泉駅の近くにある山中温泉では、安土桃山時代から続く山中漆器が伝統産業として根付いています。

パフェには、山中漆器連合協同組合の作家がパフェに合わせてオリジナルサイズで作ったお盆を使用。総黒漆塗を用い、華やかなパフェを引き立てる風合いに仕上げています。

また加賀は九谷焼の発祥地。パフェグラス皿とソースカップは加賀九谷陶磁器協同組合の作家が作ったもので、5色のカラーは「九谷五彩(緑・黄・紫・紺青・赤)」に基づいています。

献上加賀棒茶の急須に敷かれた手織コースターは、加賀市の「手織・草木染工房いとあそび」の作品。加賀市内にある町屋の格子をイメージした縞模様で、繰り返し洗っても弱らない耐久性の強い麻糸で織り上げました。

加賀には食だけでなく工芸、ものづくりの文化が息づいているのですね。

加賀パフェプロジェクトを主導する「加賀ご当地グルメ推進協議会」の鴨出会長にお話を伺いました。

「加賀パフェを通して、加賀の魅力を伝えたい」

加賀パフェより1年前の2015年にまず「加賀カニごはん」がスタートし、こちらの盛況を受けてパフェバージョンも考案されたそう。プロデュースは「空飛ぶご当地グルメプロデューサー」として有名なヒロ中田氏です。

鴨出会長は「加賀には温泉以外にも素晴らしいものがたくさんあります。加賀九谷野菜、加賀棒茶、伝統工芸、個性的なお店。朝昼晩のご飯プラス『パフェ』で、もっと加賀の深い魅力に触れて欲しいですね」と話します。

「加賀パフェを通して、加賀の魅力を伝えたい」と話す鴨出会長

鴨出会長は加賀温泉駅前で『くいもんや ふるさと』というお店を経営しています。

『くいもんや ふるさと』は地元客にも観光客にも親しまれる居酒屋

 

今回は、こちらで提供している加賀パフェを実際に作っていただきました(取材当日に提供していた2018年バージョンのものです)。

パフェはスタッフが一つ一つ作るため、提供はランチタイムを除きます
クリームを挟んだドーナツも一から組み立てます
カボチャ・ブロッコリー・温泉玉子のアイスをのせます
かぼちゃホイップクリームを巻き巻き
かぼちゃクリームを巻いた抹茶ロールケーキは事前に手作り
完成! 見事なバランスで組み立てられています

加賀特産の味平かぼちゃで作ったプリンはかぼちゃそのものの甘みが際立ち、クリーミーで濃厚。ポン菓子で作ったフレークのサクサク感が小気味よく、加賀産のゴマを使ったブラウニーのしっとり感もたまりません。かぼちゃチョコレートをコーティングしたクッキーもポリポリと美味。まさに味平かぼちゃを堪能できるパフェです。

加賀パフェは2019年で4期目を迎えますが、2018年は1年間で1万5千食以上を販売。当初の狙い通り、金沢から足を延ばして来るお客さんや、近隣から加賀パフェ巡りを楽しみに来る人も増えているのだとか。

また、加賀パフェ効果は観光客だけでなく地元にも及んでいます。居酒屋やビストロといった加賀パフェ提供店に普段は訪れなかった客層が増えたり、男性でも食後のデザートとしてオーダーする人が増えたり。

地元の人も、自分の知らなかった味や工芸、お店に出会い、「加賀にこんなものがあったなんて」と再発見しているのだそう。

お店同士の結束や意識にも影響があった

「加賀パフェがきっかけでお店にも変化がありました」と鴨出会長の奥様、円さんは話します。

「加賀パフェを通じて集まり、協力することで、それまでつながりのなかったお店同士が結びつき、情報交換をするようになりました。またお店のメニューも『地産地消』を意識するようになり、地元の食材の魅力をもっと発信していこうという気運が高まりました」

パフェが地元の意識を変え、訪れた人に新たな気づきをもたらす。朝昼晩の食事だけでなく、“ベツバラ”なパフェにこそご当地の知られざる魅力が詰め込まれているのかもしれません。

現在は2019年バージョンを提供中。ホームページで詳しく紹介しています!

2019年の新バージョンをぜひ食べに行ってみてくださいね!

<取材協力>
くいもんや ふるさと 加賀店
住所:石川県加賀市小菅波町1-55
営業時間:11:00~23:00(金・土曜 ~24:00)※ランチ 11:00~15:00
※混雑時には提供に時間がかかることがあります
定休日:火曜

文:猫田しげる
写真:長谷川賢人

*こちらは2019年5月20日の記事を再編集して公開しました。ご当地パフェ巡りも、旅の計画にぜひ入れてみてはいかがでしょうか。

日本酒と相性のいい酒器の選び方。和酒バーのマスター・下木さんに教わった「器のタイプ」の奥深さ

石川県加賀市の山中温泉・ゆげ街道から細い道に入った場所、長谷部神社のすぐ前にある『和酒BAR 縁がわ』。

日本酒専門のバーで、マスターの下木雄介さんは利酒師の上級資格である「酒匠」の資格保持者です。

石川県の日本酒にこだわって仕入れ、その味を最も美味しく感じさせる酒器で飲ませてくれます。

柔らかな加賀ことばで熱心に説明してくれる下木さん

本当に酒器で味が変わるの?とお思いの方、下木さんのお話を聞くと目からウロコが落ちるはず。実際に自宅でも実践できる酒器の選び方をお聞きしました。

お酒と酒器にも「相性」がある。

下木さんは山代温泉の出身。さまざまな職業を経てお酒の道へ進み、2014年にこのバーを開くのですが、そのユニークな経緯については以前の記事で

ここで扱うのは加賀、能登など地元で造られた日本酒が中心。種類はその日によって変わり、常時30銘柄をその時最高の飲み頃を見計らってメニューに載せています。

また県外ではあまり口にすることのできない、鶴野酒造の「谷泉 特純無濾過生原あらばしり」や農口酒造の「農口 山廃純米 無濾過生原酒」など、蔵元が近いからこそ仕入れられるフレッシュで珍しい銘柄も登場します。

こだわりはお酒だけではありません。「これ綺麗でしょう、お酒入れたらまた表情変わるんですよ」と愛おしそうに見せてくれたのは、漆黒の盃に金色の蛇が走る、シックで重厚感のある酒器。

漆器は、山中温泉在住の木地師の作品

こちらは漆器の盃にヒビが入ったため、蒔絵師に「蒔絵継ぎ」していただいたものだそう。

下木さんが大事にしているのは、酒器の「美しさ」だけでなく、日本酒との相性。口径の大きさやカーブの角度で香味が変わるといいます。

お店の酒器は作家や職人にオーダーするものも多く、その理由は「既製品では理想の形と、ちょうど良い容量のものがないからです」

そもそも、日本酒は古来から「楽しく飲んで酔う」ことを良しとされた文化で、酒器に関しても深い研究がされていないと言います。したがって、片口や盃の容量なども厳格な規定がないのだそうです。

しかしお店で提供するからには、然るべき原価率になるよう、どの酒器でも一定量を守って注がなければなりません。

大量生産の既製品であれば容量も一定ですが、下木さんの思う形状とは違う。一方、作家ものは形状が優れているが、どのくらい入るかが分からず、一定でもない。

となると「この容量で、この形状で」とオーダーメイドするのが、下木さんの想いを「具現化」する最良の方法なのだそうです。

では、日本酒の香味は酒器の形状によってどう変わるのでしょう。早速、その関係性についてお聞きしてみました。

大切なのは「底」と「天面」

酒器にはガラス、漆器、陶器、錫などさまざまな素材がありますが、「大事なのは素材よりも形状だと考えています」と下木さん。酒器において大切な要素は「天面」と「底」なのだとか。

天面とは飲み口の2〜10mmの部分で、唇に当たる部分。底はその名の通り、内側の底部分です。

「天面の形状で人間が日本酒をどう感じるかが変わり、底の形状で日本酒自体の味が変わります」

日本酒の「香り」おいて大事な要素は、口に含んで広がる「含み香」(口内香とも言います)。

天面が外に向いていたら含み香が広がり、内側にすぼまっていたら含み香が柔らかくなるのだそうです。

また、底の形状は、大きく分けると「鋭角」「小さな曲線」「大きな曲線」「下ぶくれ」に分けられます。

下木さんが大切に持っている日本酒の官能評価のテキスト。細かな容量や寸法で酒器の形状と味の変化が解説されている

鋭角は日本酒の香りを高め、小さな曲線は味をすっきりさせます。大きな曲線は熟成感を際立たせ、下ぶくれは旨味を強調するのだそう。

左から、「小さい曲線」「鋭角」「下ぶくれ」「大きい曲線」

それぞれの酒器の形状に合った日本酒のタイプを聞きました。

<天面>
・外に向いているもの‥‥含み香が広がりやすい
石川県の吟醸酒の中で、シャープで香りの高いもの。「手取川」の純米吟醸など

・内に向いているもの‥‥含み香が柔らかくなる
旨味、酸味のあるもの。「菊姫」の山廃純米など

<底>
・小さな曲線‥‥味をすっきりさせる
淡麗辛口タイプ

・鋭角‥‥日本酒の含み香を高める
フルーティータイプ

・下ぶくれ‥‥旨味を強調させる
旨口タイプ

・大きな曲線‥‥熟成感を際立たせる
熟成タイプ

自然に合わせ、自然に倣うことも大事。

下木さんが作家や職人に酒器をオーダーで作ってもらう際には、容量や形状の他にも、「自然の造形をイメージすること」を大事にしています。

例えば、九谷焼職人の前田昇吾さんに作ってもらったという花の蕾をモチーフにした熱燗用の酒器。1年前からこの酒器をオーダーし、何度も試作を重ねて、ようやく完成しました。

なぜ熱燗で蕾なのかというと、「花が開こうとする時に帯びる熱、生命のエネルギーが熱燗のぬくもりに通じるから」と下木さん。

自然を倣うこと。それもお酒を美味しくする重要な要素です。これは前編で触れていますが、下木さんはあるお客様からの一言で「季節感」の大切さに気づき、以来お酒にも酒器にも、自然との融和性を心がけているそうです。

実際にこの器で菊姫の「特撰純米」を温めの燗でいただきました。

この日本酒はじっくり熟成させた濃醇旨口タイプ。酒器は下ぶくれで天面が外に向いている形状なので、これを飲むのにぴったりです。

味わってみると、天面が唇に触れ、お酒が口に入った瞬間に香りが鼻に抜け、一気に広がりました。

舌で転がすと、お酒のなんとまろやかなこと!

思わず、「お酒ってお米の糖分でできているんですね」という言葉が出てしまったほど、濃厚な甘みです。

下木さんのトークを聞いていると、どんどんお酒の世界に引き込まれていきます。

燗酒も、数度単位で変えてつける

皆さんも、自宅でお酒と酒器の相性を試してみるのもいいですが、『和酒BAR 縁がわ』に足を運んで、そのトークを聞きながら飲み比べてみてください。

唇に触れる飲み口や底のカーブの形状でこんなにも香りが広がり、あるいは爽味がキリッと際立ち、燗酒が舌にすっと馴染み‥‥と次々に新しい味覚を発見できます。

「お酒はどの器で飲んでも味が一緒」と思っていた方は、その価値観が覆されるはずです!

<取材協力>
和酒BAR 縁がわ
石川県加賀市山中温泉南町ロ82
0761-71-0059
14時~24時
木曜休
https://www.facebook.com/washubarengawa/

文:猫田しげる
写真:長谷川賢人

*こちらは2019年2月28日の記事を再編集して公開しました。自宅のうつわで飲み比べをしてみるのも楽しそうですね。

 

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