【旬のひと皿】かぼちゃの茶巾しぼり

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で季節の料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



旬のひと皿 かぼちゃの茶巾しぼり

「なんと今年の時間のすぎるスピードのはやいこと!」と毎年思っています。

そして「もっとはやくなるよー!」と聞いていた通り、年々そのスピードが加速しているのを実感するようになりました。

時間の体感スピードに負けないように、仕事と並行してやりたいこともやっていきたいと、夏の初めの頃は、朝散歩に目覚めていました。

早朝の、すれ違う人もわずか数人という時間。朝5時頃はまだなんとか涼しくて、少し勾配のある道をのぼって猿沢池の辺りにつくと空気が澄んできます。ようやく清々しい散歩のスタートだなと、今日はどこへ行こうかなと気の向くままに歩きます。春日大社参道を歩いたり、日によっては東大寺、もうすこしのぼって二月堂まで行ったり。浮見堂へ行った時には旅に来たような錯覚まで起こしてしまうほど、早朝の奈良のすばらしさを体感しました。(もう人が成人するほどの期間をここですごしているのに!)

みんなで集まって寝ているのか、まだ鹿も寝ぼけまなこで座っていて。小鹿だけがピョンピョンはしゃいでいる様子を見たり。大きな木の間から降り注ぐ朝日の光のあたる鹿は神々しく見え、毎日写真をとりたくなる場面ばかりでした。

ただいつもと違う時間帯に歩いているだけ。それなのに別のどこかに来たのではとも思える程のワクワク感と、目に飛び込んでくる景色の違うこと。何度も通った所にある大きな木も、人の気配のない時間に一人で見上げると「こんなに大きかったんだ!」と感動します。

“朝散歩に目覚めていました”と、過去形になっているのは、あまりに楽しくてついつい歩きすぎてしまい、夜まで働く体力の調整ができなかったから。

涼しくなってきた今日この頃、また静かな空気をまとった場所まで散歩にでかけたいと思っています。

秋生まれということもあり、秋が大好きです。好きな色も茶色です。幼いころの好きな食べ物はかぼちゃの煮物!どんぶりを抱えて食べたいくらいでした。甘いイメージのかぼちゃをほどよい塩気で、シンプルに素材の甘味を引き出して味噌をいれて、ころんと茶巾しぼりにしました。全部表情が違うのでそれもまた楽しいです。黒ゴマおにぎりは、白ご飯で作っていますが、もしもちもちに炊いた玄米があればそちらでも試してみてください。お醤油は多めの方がメリハリがついておいしいです。

<かぼちゃの茶巾しぼり>

材料

<かぼちゃの茶巾しぼり>
・かぼちゃ…250g
・味噌…小さじ1
・砂糖…小さじ2(お好みで増やしても)
・レーズン…適量

<黒胡麻おにぎり>
・黒胡麻…大さじ2
・醤油…小さじ1
・塩…ひとつまみ
・ごはん…小さなお茶碗に軽く一杯

作りかた

かぼちゃの皮を剥き、ひと口サイズにカットする。

蓋付きの鍋を用意して、弱火で少し温めてから油をひき、かぼちゃを入れて塩少々(分量外)をする。大さじ1程度の水を入れて蓋をして、弱火で少し蒸し焼きにしていく。

途中で火を止めて10分ほど置いてまた火にかけると焦げにくく、ほっくりとかぼちゃに火を通すことができる

かぼちゃに火が通ったら味噌と砂糖を入れる。(甘い味が好みの場合は、砂糖の量を増やして調整する)

串がスッと入ればOK
味噌と砂糖を加えたら、すりこぎなどを使ってしっかりと潰して混ぜていく

混ぜ終わったら鍋から出して冷ましておく。

続いて黒胡麻おにぎり。

すり鉢に入れて胡麻をする。

すり終わったら、小さな器またはボールに胡麻を移して、お醤油を回しいれる。

すり鉢にご飯を入れてお餅をつくように潰し、小さく丸めて黒胡麻をまぶす。

濡らした布巾、もしくはガーゼなどで、かぼちゃを茶巾搾りにする。

茶巾しぼりと黒胡麻おにぎりを盛り付けて完成!

かぼちゃの上にレーズンを載せてもよい

うつわ紹介

・信楽焼の魚皿


写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/

【工芸の解剖学】鳥こけし

暮らしの中の工芸を紹介する「工芸の解剖学」。

今回は、インテリアとして飾る工芸のオブジェ「鳥こけし」を解剖します。

東北のこけしを再解釈して生まれた飾りもの

東北ならではの飾りもの「こけし」を再解釈し、創作した鳥型のこけしです。日本のしつらい(飾りもの)文化を残していくために、なにができるのか。そう考えて通年で家に飾れるオブジェとしての工芸を模索しました。

吉祥の象徴として、日本で古くから親しまれてきた3種の鳥をモチーフとしています。

デザインをお願いしたのは、東北・山形を拠点とする𠮷勝製作所の𠮷田勝信さん。フィールドワークやリサーチを得意とする𠮷田さんとともに東北のこけし文化を深堀りし、縁起物とは、こけしとは、という本質を探りながら再解釈を施しました。制作にはこけしの伝統技法や素材を用いています。

左からツル・サギ・フクロウ。首と胴体が分かれており、クルクルと動く仕様。鳥の首の動きを面白く感じられる作りです

こけしの素材、伝統技法が生み出す「こけしのようなもの」

こけしの作り手である工人(こうじん)や木地師の手によって、一体ずつろくろ挽きで削り、筆で絵付けを施して仕上げられています。

素材にはイタヤカエデ、ミズキ、ケヤキといった、伝統こけしでよく使用される天然の木材を選定。それぞれの木肌の特徴や使用できる径の大きさなどを活かして、ツル・サギ・フクロウの3種の鳥に見立てました。絵付けには東北こけし伝統の色絵具を採用し、各鳥のイメージが想起されるデザインを描いています。

伝統の素材や技法、彩色を踏襲し、こけし工人や木地氏の手を経て作られることで、鳥をモチーフとした新しい飾りものでありながら、こけしの匂いをまとった「こけしのようなもの」が生まれました。

𠮷勝製作所のアトリエ。デザイン調整を繰り返した鳥こけしが並ぶ
試作からの変化。職人の手を経て、予想を超えた仕上がりになる

日本らしくもあり、西洋の香りもする新しいオブジェ

木肌をしっかり見せることや、面を塗りつぶしてボーダーを作るといった伝統こけしの意匠にインスパイアされたデザインは、日本らしくもあり、どこか西洋のオブジェのような佇まいも備えています。工人の手癖を活かし、それぞれの鳥で絵付けの筆致がガラッと異なることも面白いポイントです。

作り手のコメント:津軽こけしプロジェクト「こけし工房 tsuN’agaru」

「青森県の黒石市でこけしの専門店を運営しながら、東北各地の工人の方たちをつなぐ活動をしています。店内には、全国12系統の伝統こけし工人の作品を常時1000体以上置いており、こけしに関するイベントも定期的に開催。産地を超えて、工人の方たちや作家の方、販売店をつなぎ、新たな商品開発や技術継承のサポート、こけしファンとの交流の場を作っていければと思っています」

デザイナーから:𠮷勝製作所 𠮷田勝信

「素材の特性、工人さんの解釈や手癖、普段作っている製品に最適化された製造工程を通ることで、産地のフィルターがかかり、デザインに工芸の匂いがついて返ってくる。その『製造工程が持つ個性』がとても面白く、工人さんと一緒にもっと多くの製品を作ってみたいと思いました」

※こちらの内容は、ことつて 2024年冬号に掲載されたものを編集し再掲しています。

<紹介した商品>
・鳥こけし ツル
・鳥こけし サギ
・鳥こけし フクロウ

文:白石雄太