山中漆器の「加飾挽き」が凄い! 1mmのズレも許されない職人技に見惚れる

山中温泉の温泉街から加賀温泉駅方面に下がった場所にある、上原漆器団地。多くの木地屋、塗師屋、蒔絵屋などの工房が並ぶこの地に、『我戸幹男商店』の本社があります。

直営店は2017年11月、ゆげ街道にオープンしましたが、こちらは事務所兼ショールーム。

我戸幹男商店
我戸幹男商店

『我戸幹男商店』はグッドデザイン賞やドイツ連邦デザイン賞銀賞などを受賞している漆器のプロデュース会社です。もともとはお盆や茶托を扱っていたという我戸幹男商店、なぜ数々の賞を獲得するまでに至ったのか。

社長の我戸正幸さんに、お話を伺いました。

“木地の山中”を背負う者として。

『我戸幹男商店』は、1908年(明治41年)に我戸木工所として創業。現在は漆器の企画から販売までを行うプロデュース業ですが、はじまりは木地屋でした。

木地屋とは、漆器の分業の一つ。漆器は木地屋・下地屋・塗師屋・蒔絵屋などといった職人による分業によって構成され、とりわけ山中漆器は木地屋が多い産地です。

荒挽きの状態で入ってきた木地を、さらに挽く(削る)のが木地師。

正幸さんは1975年に山中で生まれ、「子供の頃から、漆器の仕事以外に選択肢はなかった」と話します。20歳で上京し、8年ほど漆器問屋に勤め、都内のデパートに商品を卸す仕事などに従事。2004年、山中に帰省し、家業を継ぎました。

我戸幹男商店

ところがその頃はバブル崩壊後の不景気真っ只中。中国や東南アジアからの安価な製品に押され、自社の売上も最盛期の半分ほどに落ち込みます。新たな展望も見出せず「毎日、会社へ行って何もしない日々が続いた」と振り返ります。

「山中漆器を現代の価値観にも合うようにリブランドさせるには何をしたらいいか」を突き詰めて考え、行き着いたのは「山中漆器の強みを生かし、ユーザーを感動させる商品づくり」でした。

山中にしかできないことがある。

山中漆器の特徴的な技法に「縦木取り」「加飾挽き」「うすびき」があります。

縦木取りとは木を輪切りにして木材を取ることで、横木取りに比べると木地が丈夫で硬く、歪みが出にくいとされています。(詳しくはコチラの記事を参照)

またこの硬質な木地を生かして、カンナや小刀で並行筋や渦螺旋筋の繊細な模様を装飾するのが「加飾挽き」。職人によって道具も技法も違うので、腕の見せどころでもあります。

近年の加飾挽きの名工、築城良太郎の作品。渦状の「稲穂筋」が施されている

そして拭き漆は、美しい木目を生かすため、漆を塗っては拭き取る作業を繰り返して仕上げる技法です。

平田秋平氏の遊環香合。つややかな拭き漆が見事。

こうした他の産地にはない特性を生かし、かつ、先代とは違うやり方で、次の世代にも受け継がれる伝統工芸を──。

10年先も美しいもの、売れるものを。

そう模索し、正幸さんの掲げたテーマは「不易流行の漆器づくり」。一時的に売れるものは伝統工芸ではない。10年先も価値が変わらない、シンプルで美しいものを作る。それが我戸幹男商店の方向性である。正幸さんは舵を切り始めました。

2007年、正幸さんはある展示会に周囲が驚くような漆器を出品します。それが「うすびき」シリーズ。硬質で変形が少ない山中漆器の特徴を生かし、まるで紙のように極限まで薄く挽いたカップやボウルです。

さらに、その一部に本来はプラスチック素材などの塗装に用いられる「ウレタン塗装」を施すことで、落ち着いた色合いと耐久性を併せ持つ作品に仕上げました。

「この作品を出そうとした時は、社内でも『こんな薄い皿、絶対に割れる。クレームになるのが目に見えている』と反対されました」

しかし、他の地域にはない山中の独自技術をアピールした商品は予想外に売れ、我戸幹男商店の名を一気に業界へ印象付けました。そこから、国内外の有名デザイナーが「商品デザインをしたい」と名乗りを上げてきたそうです。

次に打ち出したのは、デザイナーとのコラボ商品で、加飾挽きの「千筋」と呼ばれる細い溝を表面に施した茶筒「KARMI(かるみ)」シリーズ。山中にも逗留した松尾芭蕉の俳句理念「軽み」を形にした、削ぎ落とされたシルエットの商品です。

この「KARMI」は山中漆器の技術力を世界に知らせることとなり、その後2010年にグッドデザイン・ものづくりデザイン賞、2012年には国際的に権威のあるドイツ連邦デザイン賞銀賞などに輝きました。

以降も、一汁三菜のための椀や皿が一つの中に収まる「TSUMUGI(つむぎ)」や、か弱げな様、儚げな様という意味を持つオブジェのような椀のシリーズ「AEKA(あえか)」など、デザイナーと協働した20以上のシリーズを発表。

「KISEN」シリーズの茶筒は、「共木付薬籠構造」という独特な構造になっている
蓋と入れ物が重なる部分を後から作り付け、木目のズレを極力なくした。

性能のいい国産車じゃない。デザインの優れた外国車を作りたかった。

中でも我戸幹男商店のポテンシャルの高さを世に知らしめる商品は「TOHKA(とうか)」でしょう。今にも折れそうなほど細くはかないフォルムの脚に、天面が薄くカーブを描くワイングラス。漆器の可能性を証明した一品です。

我戸幹男商店

「ただ、これはワインを飲んでもらうために作ったんじゃないんです」と正幸さん。

「これで飲むから美味しくなるとか、香りが増すとか、そういった性能は求めなくて良いんじゃないかと。むしろこれをお寿司屋さんで使って日本酒を飲んだりすると、飲み物に“美しさ”という価値が加わり、より食空間が上質なものに感じられる。

今の日本は何にでも合理性や利便性を求めすぎると思うんです。ある意味そこは伝統工芸に求めてはいけない部分なんです。工芸はアートピースという側面もある。クルマでいえば、外車のような存在です。デザインは優れているけど、ちょっと使い勝手が悪かったりもする。僕は、性能のいい国産車ではなく、人の感性をくすぐるような外国車を作りたいんです」

ただデザインが美しいだけではありません。我戸幹男商店の商品は木地師の揺るぎない技術によって成り立っています。先ほどから出てきている「加飾挽き」は、山中でもできる木地師がかなり減ってきているとか。

正幸さんは、その木地師の存在をとても大切にし、彼らの仕事が前に出る商品づくりを行っています。

「加飾挽きの技を、実際に見てみますか?」と正幸さん。古くから信頼している木地屋の工房に案内してくれました。

加飾挽きの職人技を間近に!

やって来たのは『久津見木工』。製材屋から来た木材を器の形に挽く(削る)ほか、山中では数少なくなった加飾挽きができる貴重な工房です。

久津見さんは職人歴約30年。工房の歴史は父である先代から続き、70年ほど。

一見、気難しそうな久津見洋一さんですが、お名前を聞くと「反町隆史です」と冗談を言って笑わせてくれました。「僕も最初怖かったんですよ。でも全然そんなことないでしょう」と正幸さん。

作業場にこんもりと積もった粉は、木屑。窓や機材の輪郭が分からなくなるほどの木屑に覆われています。

作業は電動ろくろで行います。木地が前後に回転する構造です。

昔はろくろに紐をかけて回す「手引きろくろ」で、たいていは妻が回し、夫が削る、という夫婦一組の作業でした。その後は足踏み式になりましたが、昔と比べると今は負担がだいぶ軽減されたんですね。

例えばお椀を作る工程。輪切りの木から木を切り出します。

左は、荒挽きといって製材屋がある程度削った木材。右は久津見さんが挽いて器の形にしたもの。

左の状態から、水分が5%以下になるまで1~2ヵ月乾燥させ、その後1週間ほど大気中の湿気を吸わせ8%~10%ぐらいまで戻します。

その後仕上げ挽きを行い、器のフォルムに。

ここまでの形になるのに3~4か月かかるのですね。

お待ちかねの、加飾挽きの実演を見せてくれました。

加飾挽きは、カンナや小刀を使って行われます。こちらは全て久津見さんの自作。多くの職人は自分で鍛錬して道具を作るのだそうです。

電動ろくろに木材をセットし、2本の突起が付いた小刀を定間隔にずらしながら当てることでできた模様は「千筋」。加飾挽きの基本的な筋です。

シンプルに見えますが、実はこの筋の入れ具合が商品の仕上がりに大きな影響を与えるのです。

全ての筋が同じ深さにならないといけません。1本だけ深く入ってしまうとそこだけ漆が濃くなり、お客さんから「塗漆にムラがある」と苦情が来ることも。

「稲穂筋」と呼ばれる、細切れの線を渦巻状に付ける手法は、独特なノミを用います。振動によってバウンドさせるよう、刃先がしなやかに動くつくりになっています。

「稲穂筋」の上に、さらに渦巻状の「うず筋」を重ねました。

加飾挽きの筋の種類は40~50ほどもあると言われています。

いい筋は、生きている。

「いい筋は、走っています」と久津見さん。走っているとは、ほとばしるように鮮やかに、まるで生きているような躍動感をもつ筋。

高速回転する木地に刃を当てるという、文字にすると単純な技ですが、0.1mm単位で刃先を微妙にずらし、木目を意識して指の力の入れ方を変え、回転を逆にしたり戻したりと、熟練の勘や集中力がないとできない技術。

久津見さんは足指の微妙なアクセルワークでペダルを踏めるよう、常に裸足。また指から木の振動がじかに伝わるよう、グローブは指部分を切ったものをはめています。

まさに木と対話するように、一つ一つ、商品をつくり上げていきます。

「加飾挽きは、お椀の横に付けて滑り止めにしたり、菓子鉢の中心にはめ込んだ木の継ぎ目を隠すために付けたりされてきました。ただのアラ隠しだと言う人もいる。ですが、一つの技術として自信を持って継承したい。だから僕は自社の商品に加飾挽きを取り入れているんです」と正幸さん。

久津見木工では「KARMI」シリーズなどを一手に引き受けています。

「我戸さんところは面倒なもんばっかり、ウチに持って来よるんですよ」
「いや、久津見さんは単純なお椀とか作らしとったらもったいない」

そんな二人のやりとりを見ていると、作り手に対する尊敬と信頼があってこそ良い商品が生まれるということを実感させられます。

ゆげ街道沿いにある直営店『GATO MIKIO/1』

『我戸幹男商店』の商品はインターネットでも購入できますが、お店で実際に触れて、質感を確かめてみてください。一つひとつ手作業でつくられたやわらかな手触りは、しっくりと肌になじむはずです。

山中温泉にある直営店『GATO MIKIO/1』について紹介している記事は、こちらをどうぞ!

<取材協力>
GATO MIKIO/1
石川県加賀市山中温泉こおろぎ町ニ-3-7
0761-75-7244
http://www.gatomikio.jp/1/

文:猫田しげる
写真:長谷川賢人

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石川県加賀市・山中温泉。ゆげ街道のこおろぎ橋から少し上がったあたりに、木のファサードがシックな印象を与える『GATO MIKIO/1』があります。

我戸幹男商店

中に入ると、大きな窓から望む鶴仙渓の景色が迎えます。

テーブルに整然と並ぶのは、ナチュラルな風合いの木皿やカップ、お椀など。こちらは、1908年(明治41年)創業の『我戸幹男商店』の直営ショップです。

我戸幹男商店

民家をリノベーションし、2017年11月にオープン。板張りの床に、鶴仙渓を眼下に望む大きな窓を設え、まるでお店自体が作品であるかのような洗練された空間です。

我戸幹男商店

店内には400種ほどのアイテムがディスプレイされています。

そのどれもが、紙のように薄い縁だったり、錦糸のように繊細な模様の「加飾(かしょく)挽き」が施されていたり、顔が映るほど塗り重ねられた「拭漆(ふきうるし)」の仕上げがなされていたりと、山中漆器にしかできない技法を盛り込んでいます。

優美で繊細なフォルムの「AEKA(あえか)」シリーズのお椀。

丈夫で美しく。それが、山中の木地。

漆器の生産工程には木地、塗り、蒔絵の工程があり、石川県内の有名な3つの産地でそれぞれ「木地の山中」「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」と称されています。

木地師とは、木を切り、漆などを塗らずに木地のままの器などを作る職人を指します。山中漆器は400年前に木地師の一団が定住したことに始まり、歴史に裏打ちされた木地挽きの技術は全国から高く評価されています。

もともと『我戸幹男商店』は山中温泉に古くから伝わる職業の一つ、「木地屋」として創業しました。

社長の我戸正幸さんは4代目として生まれ、これまでになかった漆器を作り出そうと、デザイナーとコラボしたシリーズをプロデュース。漆器の概念を覆すような、軽やかでスタイリッシュな器を次々とヒットさせています。

『GATO MIKIO/1』
とても気さくな正幸さん。山中漆器について分かりやすく説明してくれました。

山中漆器の木地は、縦木取りという特徴があります。正幸さんが図で説明してくれました。

通常、お椀などの木地を作る際には、木を縦に切ります。一方で山中は、木を横に切った、つまり輪切りにした板から材料を切り出します。

この方法だと木の成長に逆らわずに切り出せるため、変型が少なく、衝撃に強いのが利点。しなやかで弾力もあり、薄く削ることができます。

では、なぜ他の産地が縦木取りをしないかというと、輪切りにするため材料を取れる数が限られ、ロスが多いからです。にもかかわらず、山中漆器は木地の質にこだわり、縦木取りを中心としてきました。

地酒を地元作家の酒器で飲むと、なぜ美味しいのか。その理由、加賀・山中温泉の『和酒BAR 縁がわ』で分かります

「この店のために山中温泉を選ぶ」というファンがいるほど、引きの強いバーが石川県加賀市・山中温泉にあります。

それが、『和酒BAR 縁がわ』。和酒=つまり日本のお酒の中でも「日本酒」に特化したバーで、昼から営業しているため観光客も訪れやすく、もちろん地元客にも愛されているお店です。

マスターの下木雄介さんは利酒師の上級資格である「酒匠」の資格保持者で、お店のこだわりは「地元のお酒を地元の作家や職人が作った酒器で提供する」こと。なぜ和酒バーはこれほどに人々を魅了するのでしょうか。

さまざまな職を経て、日本酒の道へ。

下木さんは1984年、地元の山代温泉生まれ。日本酒バーを営むぐらいですから、さぞお酒が好きだったのかと思いきや、もともとお酒は嫌いだったとか。

地元の高校卒業後は工場や清掃業など、お酒とは関係のない仕事を転々としたそう。21歳で金沢に出て酒屋でアルバイトするうちに、日本酒の奥深さに魅了されました。

以降、「地元でバーを開きたい」という夢を持つようになり、小売酒屋、酒問屋を経て、東京・品川のオーセンティックバーで1年半修業。

2013年に石川県で初めて、日本酒と焼酎唎酒師 の上級資格となる「酒匠」を28歳の若さで取得。そして2014年、『和酒BAR 縁がわ』を開業しました。

建物は築50年ほどの民家を改装
奥には隠れ家的な気持ちになれる個室もある

「つくり手に近いから、日本酒がいいんです」

「なぜ日本酒の道を選んだのですか?」という問いに、下木さんは「日本酒は、つくり手に近いから」と即答しました。

実は下木さん、とにかく探究心が旺盛で、分からないことがあると、すぐに聞きに行かないと気が済まない性格。例えば、お客さんに「どうしてこの銘柄は燗には向かないの?」などと尋ねられたら、その場でつくり手に電話をして聞きます。そうしないと自分も納得して提供できないからです。

でもそれがウイスキーだと、スコットランドまで聞きに行かなければならない。「答えがすぐに返ってくるのが日本酒。また、答えが必ずあるのも日本酒」と下木さん。

日本酒で日本一になったら、世界で一番になれる。

そして、日本酒の道を進んだ理由はもう一つあります。それが「日本酒で一番になれば、世界で一番になれる」こと。

2018年、加賀市より日本初の「sake-ist(日本酒家)」として認定された証書。

ウイスキーやビール、ワインなど他のお酒は世界がフィールドですが、日本酒はすべての学び場が日本にある。なおかつ日本酒は世界でも通用する酒文化です。

「ウイスキーなどは答えに辿り着くまでに膨大な時間がかかり、その時間をかければかけるほど評価される世界。対して日本酒は、興味を持った時にアクションを起こせば、すぐに答えが出る。自分が知識と経験値を積んだことが、すぐに結果に現れます」

酒器は、お酒の“愛のキューピッド”!?

「つくり手に近い方が良い」のは酒器でも一緒。地元のお酒を、地元の九谷焼や山中漆器などの伝統工芸品で提供する理由にも、「つくり手が近いことで、より酒器の想いをききとりやすい」という意図が込められています。

「酒器とは、蔵元の想いをより素敵に伝えるためのもの」と下木さん。どういうことでしょう。

日本酒の味の感じ方は、酒器の形状によって変わると言います。

例えば、天面(飲み口)が外側に開いた盃で飲むと、含み香(口に含んだ時に広がる香り)が強調され、香り高い吟醸酒が一層フルーティーになります。

一方、天面が内側にすぼまった盃は、含み香が柔らかくなります。これで山廃純米のように旨味と酸味が主張するお酒を飲むと、最初のアタックが和らげられ、奥深い余韻となって残るのだそうです。

(※日本酒と酒器の合わせ方について、下木さんに教えていただいたポイントは、後日アップする別の記事にまとめました)

「とすると、酒器の形状によってお酒の長所が際立ち、短所が目立たなくなるのですか?」と聞くと、「そうではありません。酒器は、お酒が告白する時に、成功するシチュエーションを作ってあげるためのものです」という面白い答えが返ってきました。

つまり、お酒はそのままではちょっと主張が強かったり、クセがあったりする場合もある。そんなお酒の主張やクセを「欠点」として隠さずに、「こんな捉え方をすれば素敵だよ」と視点を変えて飲み手に伝えてあげるのが酒器の役割。なるほど!

蔵元の想いが込められたお酒を、その想いを素敵に伝えられるよう、下木さんが形状をオーダーして作家や職人に作ってもらう。何度も試作をし、そのやりとりは1年に及ぶこともあるそうです。

酒器のつくり手も「近い」ことが大切なのだと、話を聞いて納得しました。

ちなみに下木さん、酒器の職人にも、分からないことが発生したら夜中の2時でも「分からん、教えて!」とドアを叩くこともあるそうです(笑)。

僕が美味しいと思うお酒ではなく、今日美味しいお酒を。

また「お酒は自然に影響されるものです」と下木さん。お店を開いてから半年経った頃、あるお客さんが熱燗を飲んで「たしかに美味しいんやけど‥‥もっと季節を感じなさい」と言ったそうです。

「その意味がよく分からず、季節を感じようと店のすぐ側にある長谷部神社に毎日お詣りしました。そのうちに『あ、そうか』と思った。今日のこの気温、この湿度で、美味しいお酒って変わるのだと」

「今日お店にいた僕が美味しいと思うお酒と、外で今日という日を生きてきたお客さんが美味しいと思うお酒は違う。つまり、『僕が思う美味しいお酒』じゃなくて、『今日美味しいお酒』を提供するべきなのだと。僕はそこで自己と離脱できたんですよ」

そんな意味もあって、作家に酒器をつくってもらう際にも「自然」をモチーフにしたフォルムでオーダーすることもあるそう。

熱燗用に九谷焼職人にオーダーした、花の蕾をかたどった酒器もその一つです。

九谷焼職人で伝統工芸士の前田昇吾さんにオーダーした酒器

日本酒は、出身地のタイプに近いものから。

下木さんは物腰が柔らかく、決して薀蓄を押し付けたりせず、日本酒の面白さを優しい加賀ことばで話してくれます。日本酒に不案内な方でも心配は無用。

「何を飲んでいいかわからない人は、どうすればいいですか?」との問いに、こう答えてくれました。

「まずは出身地を聞きます。生まれてから3歳頃まで住んだ場所の味覚が体に合うはずです。ワインは単発酵であり自然に造ることも可能ですが、日本酒は並行複発酵であり、自然に造ることはできない。だからこそ造形美であり、人間の意思が入る。土地が人間をつくり、人間にはその土地の個性が出ます。その個性と近しいものを石川県の地酒で合わせてあげるだけです。

例えば、北海道でも北部の出身だったら、柔らかな旨味が主張し、余韻に控えめな苦みがやや長く続くものを軸に考える。南部なら、含み香にフルーディーな香りが広がり、酸味はやや控えめで全体的にシャープな印象のものを軸に考える。それを石川の地酒に当てはめておすすめします。

自分で日本酒を選ぶ際には、実家から一番近い酒蔵の銘柄を知っておけば、好みのタイプを探す指標になると思います」

実はこのお店、山中温泉に詳しい知人に教えてもらったのですが、その後も再訪しました。酒器やお酒の選び方について下木さんの丁寧な説明を聞くと、日本酒への興味がどんどん掻き立てられるのです。もっと日本酒を知るために、山中へ行きたい! そんな旅に誘い出してくれる一軒です。

<取材協力>
和酒BAR 縁がわ
石川県加賀市山中温泉南町ロ82
0761-71-0059
14時~24時
木曜休
https://www.facebook.com/washubarengawa/

文:猫田しげる
写真:長谷川賢人

 

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料理の所作が変わる、気の利く暮らしの道具たち

料理との付き合い方は人それぞれ。楽しみですることもあれば、家族のために頭を悩ます方もいるでしょう。

どんなシーンであれ、もっと美味しく仕上がったり、もっと料理中の所作が楽しくなったりしたら、いいことだと思うのです。

そこで今回は、おいしい料理をつくるための、暮らしの道具を集めてみました。

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蒸し野菜に最適な、電子レンジでも使える「わっぱセイロ」

 

デトックス効果もある温かい野菜料理。蒸し野菜を作るのに最適な「わっぱセイロ」があります。「足立茂久商店」のセイロは、一つひとつが手作りです。

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トーストが美味しく焼けるという不思議な金網の秘密

 

京都の「金網つじ」。エッセイストの平松洋子さんの著書、「おいしい日常」の表紙も飾りました。

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産地:京都

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使ってみました。飛騨が生んだ調理道具、有道杓子

 

飛騨高山の「奥井木工舎」がつくる杓子。この凹凸が具材との当たりを和らげ、身を崩さずにしっかりキャッチする役目を果たすそう。

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産地:飛騨高山

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伊賀焼や萬古焼の特徴から知る、わざわざ土鍋で作りたい料理

 

「鍋」料理の印象が強い土鍋。実は暑い日であっても、土鍋は大活躍することをご存知でしょうか。

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どこの家庭にも一つはあると思われるのが、ザル。どこにでもある道具だからこそ、小さな違いが使い勝手に関わります。

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産地:京都

■□■

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気になった記事はありましたか?読み返してみると、また新しい発見があるかもしれません。

それでは、次回もお楽しみに。

千葉生まれ、子どもも大好きなBocchiのピーナッツペーストがなめらかすぎて美味しい

かつては手に入らないことが価値でした。今は、手に入るものが増えたからこそ、とびきりのものに感動が生まれます。

初めて、「Bocchi」がつくるピーナッツペーストを食べたときの感覚は忘れることができません。

その出会いは、日本各地から工芸メーカーが集まる合同展示会「大日本市」でした。

原料問屋からスタート。三代目が手がける次世代ブランド

落花生の国内生産量の8割を占める、千葉県房総半島。その土地で良質な落花生を提供してきたのが、株式会社セガワです。

セガワは創業74年の原料問屋。米や落花生の取り扱いに始まり、食品加工業にも発展。「Bocchi」は、セガワを切り盛りする三代目の加瀬宏行さんが立ち上げたブランドです。

名前の由来は、収穫した落花生を乾燥させるため、畑に積み上げて稲藁をかけた「野積み」のことを指す方言から取っています。その名前からも伝わるように、「千葉の落花生」への思いも強いようです。

「ぼっち」の様子。じっくりと乾燥させる昔ながらの方法。

「生産農家が少なくなる環境や、気候変動もあって、落花生の収穫量も不安定になってきています。自分が子どもの頃から親しんできた風景を次代につなぐためにも、ブランドを立ち上げました。

僕らも自力をつけて農業を学びつつ、農薬を使わない落花生栽培を始めたんです。今後は農家を増やしていく下地をつくっていきたいですね」

セガワは材料問屋だけあり、落花生は「仕入れるもの」でした。その枠から飛び出し、休耕地を借りての栽培にも着手。栽培のノウハウを貯めると共に、良質な千葉県産落花生を用いたピーナッツ商品を開発しました。新たな挑戦をはじめたのです。

知見を生かした「本物の味」を届けたい

その代表的な逸品が「Bocchi ピーナッツペースト」。

原材料は、千葉県産ピーナッツ、北海道産てんさい糖、千葉県旭市産の伝統製法塩だけ。てんさい糖入りの「シュガー」と「クランチ」、ピーナッツのみで作った「プレーン」のラインナップです。

一口食べると、なめらかな舌触りに、濃いピーナッツの味わいが広がる中、ペーストとは思えないほどスッ‥‥と切れ味が良い。口の中で「もたもた」と絡まる感触もありません。

その秘密は素材選び、そして焙煎の工夫にあります。素材選びや焙煎にまで、原料問屋だからこそわかる知識を生かします。

「まず種まきでは、薄皮の表面に傷をつけないように、熟練の職人による手剥きです。

収穫後に豆を乾燥させる際にも、通常の温風乾燥だと豆が固くなるので、時間はかかっても野積みという手間をかけることで、豆のより良い状態をキープできます。

ピーナッツペーストは、油分の多い大粒の落花生を選ぶだけでなく、すりつぶす際にも工夫しています。落花生は『焙煎』と『すりつぶし』で二度の熱がかかり、それが酸化の原因にもなります。いかに酸化させないか、そこにも知見を生かしています」

加瀬さんの言葉には、曇りがありません。商品に対する自信がうかがえます。

料理やお菓子のコクを増す、落花生パウダーも開発。サラダのトッピングにも。

「他のピーナッツペーストは苦手でも、Bocchiだけは進んで食べるというお子さんもいるそうです。クラフトベーカリーや食品メーカーのシェフからも、嬉しい声をいただいています。

やはり、自分たちにとっても満足できないものは続けていけません。これからも本物の味を届けていきたいです」

香ばしさ、やさしい甘さ、そしてとろける食感。一度味わうと、常識がひっくり返る。そう断言できるのが、Bocchiのピーナッツペーストでした。ぜひ、ご賞味あれ。

<取材協力>
Bocchi PEANUT PASTE
Bocchiの商品は、自社オンラインストアのほか、食料品店、クラフトベーカリーなどで購入できます。

文・写真:長谷川賢人

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二階から見下ろすロビー
二階から見下ろすロビー

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陽光の差し込むティーラウンジ
陽光の差し込むティーラウンジ

「奈良公園の方から池を渡って向かうアプローチも素敵です。建築やロビーの展示を見るだけでも楽しいですよ」

ゆったりとお酒を楽しめるザ・バー
ゆったりとお酒を楽しめるザ・バー

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宿泊:チェックイン 15:00 / チェックアウト 11:00
ティーラウンジ:8:30~18:00
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お茶との新しい楽しみ方に出会う、茶論

新ブランド「茶論」が奈良・元林院に1号店をオープン

中川政七商店グループの道艸舎(みちくさや)がオープンした新ブランド『茶論(さろん)』。

「日本の茶道文化の入り口」を広げるべく、ブランドディレクターに茶人で芳心会主宰の木村宗慎氏を迎えています。

店舗は、お茶を通して“おもてなし”の力量を上げる「稽古」、お茶を通して心に閑を持つ「喫茶」、オリジナル茶道具を販売する「見世」で構成されています。

新ブランド「茶論」が奈良・元林院に1号店をオープン 喫茶 和カフェ
喫茶 一例

「奈良町の伝統的な建物を贅沢に使った空間。素敵なお家にお邪魔したような気持ちになります。お庭は必見!」

新ブランド「茶論」が奈良・元林院に1号店をオープン 喫茶 和カフェ
喫茶 一例

「夏はかき氷、冬はぜんざいも美味しいです。器も“いいもの”を揃えているので、要チェック。写真も映えます」

茶論 奈良町店

住所:奈良県奈良市元林院町 31-1 (遊 中川 奈良町本店奥)
営業時間:10:00〜18:30
定休日:毎月第2火曜(祝日の場合は翌日)
オフィシャルサイト:https://salon-tea.jp/

美しい菓子作りに見惚れる、萬御菓子誂處 樫舎

萬御菓子誂處 樫舎

世界遺産の元興寺にもほど近く、奈良町らしい風情を感じながら、絶品の和菓子を味わえる「萬御菓子誂處 樫舎(かしや)」。

入り口のガラス窓には季節・気候により一番食べ頃の素材を使った上生菓子が美しく並び、お店に入る前から一期一会の出会いが楽しめます。

「私たちは食感を作るだけ」という和菓子は、格式のあるお茶席や公の席からの注文が絶えません。

季節の上生菓子と入り口の窓越しに対面
季節の上生菓子と入り口の窓越しに対面

「いわゆる季節の生菓子だけでなく、デザート(夏はかき氷、冬はぜんざいとか)も名物!ここを目掛けて奈良にくる人も多い、わざわざ行きたい和菓子屋さんです」

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「おすすめは、1階のカウンターでいただくコース。ご主人の喜多さんが目の前で和菓子を作ってくれます。その過程が本当に美しくて、ずっと見ていたい‥‥。

お菓子づくりに使う道具が、これまたすごい。材料や茶器についての説明も勉強になります。2階に上がっての喫茶も、隠れ家のようで落ち着きます」

ご主人の喜多さん。要予約のカウンター席では喜多さんが目の前で作る和菓子を堪能できる
ご主人の喜多さん。要予約のカウンター席では喜多さんが目の前で作る和菓子を堪能できる

萬御菓子誂處 樫舎

住所:奈良県奈良市中院町22-3
営業時間:9:00-18:00
定休日:なし
オフィシャルサイト:http://www.kasiya.jp/

ご進物にもご自宅にも愛される、森奈良漬店

創業1869年(明治2年)、東大寺南大門前に位置する森奈良漬店。

酒粕に瓜を漬け込んだ「奈良漬」が商品として売られるようになったのは江戸末期。森奈良漬店は、それから程なく開業した老舗です。

素材には直接もしくは契約栽培の野菜や果物のみを使用し、酒粕と天然塩だけで味付けした奈良漬は、お酒の味がしっかりと効き、地元ファンも多し。

中身の壺はこんな感じ。どっしりとした丹波立杭焼だ
中身の壺はこんな感じ。どっしりとした丹波立杭焼

「東大寺の門前にひときわ目を引く大きな屋号。おせんべいを求めて観光客と戯れる鹿が右往左往するところにどーんとあります。

いつもたくさんのお客様でにぎわっていて活気がありますね。でも、奈良らしいまったりとした感じもあって、心地よいお店です」

酒粕を洗いおとさずにそのまま食べられる「きざみ奈良漬」(瓜・胡瓜入 り)。左が230g入り540円(税込)、右が135g入り380円(税込)。気軽な手土産にちょうど良い
酒粕を洗いおとさずにそのまま食べられる「きざみ奈良漬」(瓜・胡瓜入
り)。左が230g入り540円(税込)、右が135g入り380円(税込)。気軽な手土産にちょうど良い

「奈良漬がお好きな方には、ぜったいおすすめ。深い味わいの中にも、後味はすっきりとキレがあります。

進物だけでなく、自宅用に購入するならきざみ奈良漬がいいですね。酒粕と一緒にいただくのも、マイルドな味わいでとても美味。瓜、きゅうりのほか、ショウガなどもあります。個人的にはスイカ推し。やさしいコリコリ食感は、なかなか他の素材にはないと思います。おかいさん(粥)にぴったりですよ」

壺入り「きざみ奈良漬」。パッケージに描かれた壺の姿が愛らしい
壺入り「きざみ奈良漬」。パッケージに描かれた壺の姿が愛らしい

森奈良漬店

住所:奈良県奈良市春日野町23
営業時間:9:00-18:00
定休日:なし
オフィシャルサイト:https://www.naraduke.co.jp/

クラシカルなホテルから、新オープンのスポット、さらには県外にもファンが多い鉄板の和菓子店、そして地元民も愛する漬物屋。

奈良へ旅するなら、お目当ての場所に加えて、ぜひ今回紹介した場所も散策コースに加えてみてはいかがでしょう。それでは、よい旅を!

<取材協力>
日本市 奈良三条店
奈良県奈良市角振新屋町1-1
ファインフラッツ奈良町三条 1F
https://www.yu-nakagawa.co.jp/p/213

写真:木村正史(奈良ホテル、萬御菓子誂處 樫舎、森奈良漬店)