かっぱ橋の老舗製菓道具店「馬嶋屋菓子道具店」で聞く、初心者も失敗しないシフォンケーキの作り方
バレンタインが近づくとトライしたくなる、お菓子づくり。
先日、お菓子作りの道具について教わった、かっぱ橋道具街の馬嶋屋菓子道具店さんによると、30〜40代の女性に人気なのは、シフォンケーキなのだそう。卵、砂糖、小麦粉など身近な材料とシンプルな工程で、気軽に挑戦できることが好まれているようです。
昨年、私もシフォンケーキに挑戦したのですが、見事に失敗。レシピ通りに作ったのに膨らまなかったのです。
そこで専門家に尋ねると、失敗の理由は道具選びと使い方にありました。そのときに教わったことは「失敗しないお菓子作り!おいしく作る秘密は道具選びにあり」の記事にまとめています。
シフォンケーキ作りを成功に導くアルミ型
さて、かっぱ橋道具街の老舗製菓道具店「馬嶋屋菓子道具店」でのアドバイスを元に、今年はアルミ製のシフォンケーキ型を手に入れました。
しっかりと熱を通し、型の側面に生地が張り付くことでふっくらと膨らむシフォンケーキ。熱通りが良く、生地が張り付いても水洗いできる素材であるアルミは、その条件にピタリと当てはまります。
メレンゲだけじゃない!成功の秘訣
道具を手に入れたところで、シフォンケーキ作りに再挑戦!
シフォンケーキ成功のポイントというと「メレンゲ作り」が注目されますが、実はそれだけではないのだそう。プロは道具の使い方にも気を払っているのだとか。
馬嶋屋菓子道具店さんで教わった、レシピと道具の扱い方を実践してみました。
材料 (20cm型 1台分)
※カッコ内は17cm型の分量です。
卵黄:110g ※Mサイズ卵約6個分 (60g)
上白糖:60g (30g)
サラダ油:60cc (30cc)
牛乳:100cc (50cc)
薄力粉:160g (80g)
ベーキングパウダー:3g (1.5g)
卵白:220g ※Mサイズ卵約6個分 (120g)
上白糖:80g(40g)
(馬嶋屋菓子道具店「基本のシフォンケーキ」レシピより)
まずは、計量と下準備です。オーブンは180度に予熱しておきます。
容器は大きめを
材料を混ぜて泡立てていくうちに、生地はボリュームを増します。卵黄と卵白は、大きめのボウルに入れておくと作りやすくなります。
シフォンケーキの型には、「何も塗らない」
シフォンケーキ型には、何も塗らないのが鉄則。
多くの焼き菓子は、型に油分を塗って型離れを良くしますが、シフォンケーキはすべりを良くすると生地の膨らみを妨げたり、焼き上がり後に逆さまにして冷やす際に落下してしまう恐れがあります。うっかり塗ってしまわないように注意です!
粉類、砂糖はふるっておく
上白糖は溶けやすいので初心者にも扱いやすいそう。ただし、湿度に弱く、固まっていることがあるため、ザルなどでふるっておきます。
同様に粉類もふるっておくことで、ダマにならずなめらかな生地ができあがります。
卵黄の泡立ても、しっかりと
準備ができたら、まずは卵黄に材料を混ぜていきます。
シフォンケーキづくりにおいて、実は卵黄の泡立ても重要。白っぽくなるまでしっかりと泡立てます。
卵黄の色の変化と材料を入れるタイミングに注意すると、なめらかな生地に仕上がります。
「薄力粉を加えた後は、グルテンが出すぎることを心配される方もいるかと思いますが、グルグルと混ぜ続けなければ大丈夫」とのこと。粉が生地に溶け込めば完了なので、粘りが出過ぎないうちに全体を混ぜ終えます。
道具の切り替え、砂糖を入れるタイミングが鍵
続いては、いよいよメレンゲ作り。
卵白を泡立てる際、まずは泡立て器で軽くコシを切るようにほぐすことから始めます。この状態にすることで、上白糖が均等に混ざるようになります。
最初からハンドミキサーを使いたいところですが、ぐっと我慢。上白糖を混ぜる前に泡立ってしまうと、ボソボソのメレンゲができてしまうのだそう。
メレンゲは、上白糖を入れるタイミングで仕上がりが変わります。3回に分けることがポイント。上白糖が卵白と馴染んで泡立ってきたら順次加えていきます。
仕上がりの理想は、ピンっと角が立つメレンゲではなく「角は立つけれど、しなやかな弾力のあるメレンゲ」。
最初から上白糖を全部入れてしまうと安定はするものの泡立ちが悪くなるそう。泡立てが不足すると、焼き上がった時に底面が凹んでしまう原因にもなります。
「ハンドミキサーは、メーカーによって強さも様々です。レシピによっては『○○分くらい泡立てる』と書かれているものもありますが、参考程度にして、仕上がりを目で確かめながらやってみてください」とアドバイスをもらいました。
さっくりと「切っては返し」を繰りかえす
メレンゲが泡立ったら、先に作っておいた「卵黄の生地」と合わせていきます。
まずはメレンゲ4分の1を加え、生地に馴染ませるつもりで泡立て器のまま混ぜ合わせます。
続いて、残りのメレンゲを2回に分けて加えていきます。
メレンゲを潰さないよう、ゴムベラで生地を「切りながら返すよう」に、さっくりと混ぜ合わせます。完全に混ざっていないと空洞ができやすいので、しっかりと均一に。
一気に流し込み、一気に焼く
生地が出来上がったら、型に流し込んでオーブンへ。
型へは、一気に流し込みます。少しずつ入れると中に空気が入り、大きな空洞の元になってしまうのだそう。
型の中で生地を整えたら、状態が良いうちにすぐオーブンへ。
家庭用オーブンは、コンパクトなサイズのため温度が下がりやすいのだそう。オーブンは必ず予熱しておき、扉を開く時間は最小限にします。途中で気になったとしても決して開けないこと。
しっかりとボリュームが出て、割れ目にも焼き色がつくまでじっくりと焼いていきます。180度のオーブンで、焼き時間は40~45分ほどが目安です。
焼き上がったら、すぐ逆さまに
焼き上がったら、オーブンから取り出してすぐに逆さに返します。上向きのままだと、しぼんで食感が悪くなるので、必ず反対向きに。
このまま完全に冷めるまで待ちます。冷ましている間、部屋中甘い香りが漂っていてなんとも幸せな気持ちになりました。
ナイフは動かさない
しっかりと冷めたら、型から外していきます。
まず周囲を軽く内側に押し、シフォンナイフやペティナイフを型に沿わせてさし込みます。さしたナイフは型に添わせて、そのまま一周させます。
剥がし終えたら、反対向きにしてお皿に乗せて切り分けます。
生地の目がきめ細かくてなめらか。ふわっふわで溶けてしまうような舌触りで、思い描いていた理想のシフォンケーキでした。
甘すぎないので、フルーツやクリームなど色々なものと合います。この日は、洋酒を効かせたクリームとイチゴと一緒にお皿の上へ。「これは大人のケーキだ!」と、甘いものが苦手な家族も喜んでくれました。
洗うときは優しく
使い終わった型には、ナイフで取りきれなかった生地が張り付いています。柔らかいスポンジに洗剤をつけ、やさしく洗います。洗い終わったらしっかりと乾かしておきましょう。アルミは傷付きや変形が起きやすいので食洗機は避けたほうが良いそう。
米粉や油分の多い材料にも挑戦!
昨年は、何度作ってもうまく膨らませることができなかったシフォンケーキ。しかし、道具を性質に合ったものに変えて、教わったコツの通りに作ったら、初回から見事に膨らませることができました。道具選び、道具使い、大切ですね。
せっかくなので、他の材料でも作ってみることに。
小麦粉を米粉を替えたり、他の素材を加えて作ったりする場合、初心者はまずは専用のレシピで作ることを勧められました。
例えば、単純に小麦粉を米粉に置き換えただけだと、素材の性質の違いから失敗してしまうのだとか。グルテンの粘りが出る小麦粉と違って、米粉の生地はサラサラ。同じ分量で作ると型から液漏れしてしまうことも。
また、抹茶やココアなどを使う場合、含まれる油分の影響で型から滑り落ちやすくなり膨らみにくくなることがあるそう。強力粉を加えたりメレンゲの立て方を工夫したり、アレンジが求められます。
たしかに専用のレシピで作るのが安心ですね。さっそく、レシピを調べて挑戦しました。
いろいろなレシピを見ながら作ってみて感じたのは、素材の性質を知ることの大切さ。作るお菓子に合わせて、型を選ぶこと、道具を正しく使うことを意識してお菓子作りを進めると初めての材料でも大きな失敗はしませんでした。
「お菓子作り成功の秘訣は道具にあり」。
これからお菓子作りをするときは、素材だけでなく道具も吟味して楽しんでいきたいなと思いました。
<取材協力>
馬嶋屋菓子道具店
東京都台東区西浅草2-5-4
03-3844-3850
http://majimaya.com/
文・写真:小俣荘子
画像提供:馬嶋屋菓子道具店※こちらは、2019年2月5日の記事を再編集して公開しました。
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