皆さんは暮らしを飾るインテリアを、どんなふうに選んでいますか?
いわゆる賃貸のマンションに住んでいると、間取りや壁紙などの躯体はそんなに代わり映えがしません。かく言う我が家も賃貸マンション住まいです。
暮らしを飾る物を上手に取り入れることで、もっと自分らしい心地好い空間をつくっていきたい。個人的にもそう思っていた折に発売したのが、インテリアコレクション「くらしの工藝布」。使い手次第でさまざまな取り入れ方が膨らむ表情豊かな布たちは、暮らしを飾るのにぴったりのアイテムです。
この人の家で使ってるところを見てみたい!と思った方にお声がけして、実際に使ってみていただきました。
今回訪ねたのは、店舗の内装設計やディレクションを行い、古今東西の古道具や作家作品の買い付けもするユニット「CIRCUS(サーカス)」の鈴木善雄さん、引田舞さん。東京・新木場にあるショップ、カフェ、スタジオなどが集まった複合施設「CASICA」のディレクションだけでなく、渋谷PARCO内のショップ「Archives」を運営したり、子ども服ブランド「tapis」を手がけるなど、幅広く活動されています。
家族4人で暮らす家の玄関を開けると、大きなダイニングテーブルと、キッチンの壁面にずらりと並ぶ棚の数々が目に入ります。キッチンの壁面に設置された古家具は、家をリノベーションした際に、自分達でパズルのように組み合わせていったそうです。
そんな古今東西のものが入り混じる空間で、「くらしの工藝布」を取り入れていただきました。取り入れていただいたのは、こちらのラインナップです。
・手刺しのタペストリー(曲尺)M
・滝織の多様布 本藍染 濃藍
壁を飾るハードルを下げてくれる「手刺しのタペストリー」
「壁面って何もないと寂しいけど、絵を飾るのは少しハードルがあるじゃないですか。
単純に高額ですし、僕は飽きっぽいので、この値段をかけて飽きちゃったらどうしようっていうためらいもあります。でも布であれば、ぐるぐるローテーションさせやすいですよね。
それこそ手刺しのタペストリーは主張が強いわけでもないし、壁面を飾るハードルを下げてくれると思います」(鈴木さん)
「具象のモチーフではなく模様になっているのも、家の中になじみやすいですよね。
それに、このタペストリーは、壁に掛ける際の仕様もきちんと考えて作られているので、その点でも取り入れやすいと思います」(引田さん)
布だからこそ、さまざまに使える「滝織の多様布」
「滝織の多様布は、ソファの横にくるくるっと丸めて置いておくだけで、ちょっと雰囲気を変えてくれます。見せたくないものの上にぱさっと掛けて、隠すのにもいいですよね。
他にも、防寒のためではなくて、なにか体に掛けたい時ってありません?生地がやわらかくて適度に重みがあるので、そういう時にもいいと思います」(鈴木さん)
「これからの時期は子ども達がお布団を掛けてくれないので、子どもが寝る時にもよさそうです。爆睡してても掛けた瞬間蹴っちゃうのですが、お腹にはなにか掛けておきたくて。お布団より通気性もいいし、子どもに掛けるのにちょうどいいサイズだと思います」(引田さん)
「テレビを見ない時に掛けておくのもいいですね。テレビって埃がすごく目立ちやすいじゃないですか。そういえば実家でもテレビには布を掛けていて、試しにかけてみたら我が家のテレビにはぴったりでした」(引田さん)
経年変化して味わいが出るものを、大切に長く使う
「自宅に取り入れるものも、CASICAで扱うものも、幅の違いはありますが、基本的な考え方は一緒です。すぐだめになってしまったり、経年変化が愉しめないようなものはなるべく置きたくないなと思っています。やっぱり古いものを扱っているので、経年変化して味わいがどんどん出てくるようなものを取り入れたいですね」(鈴木さん)
「基本的に手仕事のものが好きなんですよね。買う時の値段は少し高くなるかもしれないけど、長い年月使えばいいと思っていて。手仕事のものの方が、なんかやっぱり飽きないんです。
10年後20年後に、趣味は変わっているかもしれないけど、ベースの軸は変わらないと思うんですよね。何年経っても手仕事は好きだろうなと思います。
くらしの工藝布も、そういった工芸品ならではの魅力をもっていますよね」(鈴木さん)
未来のアンティークを育てるために、今のものづくりを大切に
「それに、古いものを扱うからこそ、現行のものづくりを大切にしないといけないとも思っています。
CASICAを始めた頃に、『古いものだけでいいのに、なんで新しいものを扱うんですか』って聞かれたことがあるんですけど…
僕らがいいなと思う古いものって、作られた当時は新しい工芸品だったわけじゃないですか。時間が経ってアンティークになっていったものなので、今度は僕らが新しいものを守らなければ、未来のアンティークは生まれないですよね。
過去のものが好きだからこそ、未来のアンティークを育てないといけない。そのためには、現行のすばらしい産業を維持しないといけないし、そこに対して敬意をもたないといけないとも思っています」(鈴木さん)
「くらしの工藝布でテーマにされていた裂織や刺し子の技術も、放っておいたら失われてしまうかもしれない。ちゃんと作る人がいて、産業を守っていくのは大事なことだと思うので、こういう取り組みは必要なことだなと思います。
もしかしたら、100年後に誰かが競り落としてるかもしれないですよね。『オールド中川』って呼ばれて売られているかもしれない。なんかそういうことを想像するのも面白いなと思います」(鈴木さん)
<掲載商品>
・手刺しのタペストリー(曲尺)M
・滝織の多様布 本藍染 濃藍
鈴木善雄さん、引田舞さん
アートディレクションやブランディング、古家具の卸、商品セレクト、ギャラリー企画などを行うユニット「CIRCUS」を主宰。
東京・新木場の「CASICA」や子供服「tapis」のディレクションに加え、「TAKIBI BAKERY」や渋谷PARCO 4Fにある「Archives」も手がけている。
そんなお二人のまなざしで選ばれたものが気になった方は、ぜひ下記の店舗に足を運んでみてください。
CASICA
東京・新木場で展開する、ショップやカフェ、ギャラリーなどがある複合施設。ショップでは、時代や価格、国や民族にとらわれず、ものの魅力を再考し再構築している。
今年4月には食料品庫「CASICA PANTRY」も新設された。
Archives
渋谷PARCOの4階で展開するショップ。博物館のバックヤードをコンセプトとし、膨大なストックの一部と思考回路を覗くようなアーカイヴが積み上げられている。
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くらしの景色をつくる布
文:上田恵理子
写真:田ノ岡宏明