大掃除が楽しくなる職人の道具を、すす払いの日に使いたい

日本では1年365日、毎日がいろいろな記念日として制定されています。国民の祝日や伝統的な年中行事、はたまた、お誕生日や結婚記念日などのパーソナルな記念日まで。数多ある記念日のなかで、こちらでは「もの」につながる記念日をご紹介していきたいと思います。

さて、きょうは何の日?

12月13日は、「すす払いの日」 その歴史はいつから?

お正月を迎えるにあたり、家のすすやちりを払って掃除をする「すす払いの日」。

平安時代にはすでに行われていたといわれています。そして、12月13日に行われるようになったのは江戸時代。この頃使われていた「宣明暦」という暦では、12月13日は「鬼の日」という日で、婚礼以外は何をするにも吉という良い日でした。

そのため、この日を新年を迎える準備をはじめる日として江戸城では大掃除をしたのだそうです。

これは単なる大掃除ではなく、年神さまを迎えるための信仰的な行事でもありました。その年の厄をとり払うという大切な節目の日だったんですね。

「すす払いの日」には家族みんなで大掃除をして、それが終わると「すす払い祝い」として神さまに「すす払い団子」をおそなえしたり、「すす払い餅」「すす払い粥」といって一家でお餅やお粥を食べる習慣があったそうです。

また、すす払いの後にはお風呂「すす湯」に入り、身も心も住まいも清々しくきれいにして、年神さまを迎えていました。

この習慣は大正時代のころまで続いていましたが、13日に掃除をすると年末までにまた汚れてしまうため、次第に年末に大掃除をするようになったのだそうです。

白木屋傳兵衛の江戸箒で「すす払い」

「すす払い」は、「すす掃き」とも呼ばれていました。近ごろは良い掃除機もたくさんありますが、こんな行事の話を知ると昔ながらの箒(ほうき)を使いたくなります。

1830年(天保元年)創業の江戸箒老舗「白木屋傳兵衛(しろきやでんべえ)」の箒は、国産の「ホウキモロコシ」という植物を使い、熟練職人が素材を丁寧に選って編み上げたもの。

実用的でさっと使える箒は、やはり日本のお掃除には欠かせません。

使いやすい道具があればお掃除もなんだか楽しいもの。今年も気づけば12月。少しずつ新年の準備をはじめましょう。

<掲載商品>
(左から)
ひもはりみ・小(白木屋傳兵衛)
サッシ箒(白木屋傳兵衛)
掛け無精ほうき(白木屋傳兵衛)
江戸長柄箒・極上(白木屋傳兵衛)

<関連商品>
小掃除箒とはりみ
卓上箒とはりみ

白木屋傳兵衛中村商店
http://www.edohouki.com

文・写真:杉浦葉子

※こちらは、2016年12月13日の記事を再編集して公開しました。少しずつ準備して、気持ちの良い新年を迎えたいですね。

マンションで楽しめるお正月飾り。小ぶりがちょうどいい、現代の縁起もの

今年ももうすぐ12月。

大人になると1年経つのがあっという間で、ここ数年はいつも「もう残り1ヶ月かぁ」と12月を迎えている気がします。

お雑煮とお年玉を楽しみにしていた子どもの頃とは違い、大人の年末年始は大忙し。

年賀状を書き、1年間お世話になった家や会社を掃除して、年末のご挨拶。台所ではせっせとおせちを作り、年越し蕎麦の準備を始めます。

ああ忙しい忙しいと言いながらもワクワクしてしまう、より良い年を迎えるための年末年始の家しごと。

1年を振り返り、これからを考えるこの時節に、日本の暮らしの工芸品を取り入れてみたいと思います。

今日は、日本の春を迎える基本のお正月飾りの中から、マンション住まいでも飾りやすいものを3つご紹介します。

 

手のひらサイズの、鏡餅飾り

中川政七商店のお正月飾り 鏡餅 2019
小さな鏡餅飾り ¥4,104(税込)

手のひらに乗るほどコンパクトな、「小さな鏡餅飾り」です。

白木で作った鏡餅に、伊賀組紐の職人がひとつひとつ組んだ橙(だいだい)と、麻素材の裏白(うらじろ)を添えたシンプルなデザイン。どんなインテリアにも馴染みそうです。

中川政七商店のお正月飾り 鏡餅
よく見るサイズのお飾りと比べてみるとその小ささが分かります

 

鏡餅は年神様へのお供え物として、その年の豊作や、健康と幸福を祈るお飾り。神様が宿るとも言われています。

大小2つ重ねることで陰 (月) ・陽 (日) となり、福徳を重ねるという意味合いもあるのだそう。

お餅の上に乗せる「橙(だいだい)」には「代々栄えますように」という願い、下に敷く緑色の葉っぱ「裏白(うらじろ)」は「後ろ暗いことがないように」という意味が込められています。

そのほかにも「喜ぶ」と掛けた昆布 (こぶ) や、「財産が伸びるように」と熨斗 (のし)を添えるなどして飾ります。

鶴と亀のしめ縄飾り

中川政七商店のお正月飾り 注連縄
「つるかめ注連縄飾り(しめなわかざり)」 ¥3,780(税込)

長寿を意味し、婚礼や結納などおめでたい儀式のモチーフにも用いられる縁起物の代名詞、鶴と亀。

これらにあやかった吉に転ずるおまじない、「つる、かめ、つる、かめ」にちなんだ、しめ縄飾り。おめでたい言葉で悪いことを追い払ってしまう、どこか愛らしいお飾りです。

中川政七商店のお正月飾り 注連縄つるかめ
鶴:縁起のよい「梅」の形をした水引が、日の出に見立てられている/
亀:富士山をイメージした、末広がりの白い水引が合わせられている

対にして並べたり、縦横の向きを変えたり、自由な組み合わせで楽しめそうです。

注連飾り(しめかざり)も、年神様をお迎えするための準備のひとつ。

しめ縄には、神の領域と現世を隔てる結界となり、神様をまつるのにふさわしい神聖な場所であることを示す意味があります。

そもそも注連飾りとは、そのしめ縄に「稲穂」「裏白」「ゆずり葉」「だいだい」「御幣」などの縁起物を付けて作ったお飾りのこと。地域によっても形に違いがあり、現在では様々な注連飾りが作られています。

気軽に楽しめる、ミニタペストリー

中川政七商店のお正月飾り 鏡餅

小さめサイズのタペストリー。お正月らしいおめでたいモチーフが絵付けされています。

中川政七商店のお正月飾り タペストリー鶴
ミニタペストリー 鶴 ¥4,860(税込)
中川政七商店のお正月飾り タペストリー鏡餅
ミニタペストリー鏡餅 ¥4,860(税込)

ベースは上品な麻生地。一枚ずつ手作業で絵付けをした後に、金の糸で刺繍が施されているそうです。絵やポスターの代わりに飾ると、一気にハレの日気分が味わえそうです。

本格的な仕様ながら、玄関やちょっとしたスペースに飾れそうなサイズ感が嬉しいですね。

 

中川政七商店のお正月飾り2019年

まだ少し余裕があるかな、なんて思ってるとあっと言う間に時間が過ぎてしまう師走に入ります。少しずつ道具を揃えていき、毎年、より良い年を迎えていきたいものですね。

 

<掲載商品>
中川政七商店
小さな鏡餅飾り
つるかめ注連縄飾り
ミニタペストリー

この記事は2016年12月の記事を再編集してお届けしました。みなさんお正月の準備はお早めにどうぞ。

全長200mの家具ストリートが出現。日本一の家具のまちで「クラフトマンズ デイ」が初開催

大きな買い物である家具。
なかなか取り替えるものでもないですし、本当に納得できるものを選びたいなと思います。

この週末、そんな家具を「買わずに」楽しみながら味わえるイベントが開催。まち全体が「家具のギャラリー」のようになる、「クラフトマンズ デイ」です。

イベントの先頭に立つのは、いつもは工場で汗を流しているクラフトマン=職人たち。職人の技を間近で見学できるオープンファクトリーや、自ら体験できるワークショップも開催されます。

ショールームを飛び出して、近い距離で家具の魅力をたっぷり堪能できる3日間です。

日本でいち早く、家具に“デザイン”を取り入れた大川家具

会場となるのは福岡県大川市。意外と知られていませんが、実は430年以上の歴史を持つ、日本一の家具の産地です。

福岡県大川市のクラフトマンズデイ
九州随一の大河・筑後川の河口近くに位置する大川

人口およそ3.5万人。車で走れば約20分で端から端まで行けるほどの小さなまちですが、工場の数はなんと300社以上にも及びます。

大川の家具の特徴は、なんといってもそのデザイン性の高さ。技術はもちろんのこと、芸術性に富んだ、見た目にも美しい家具が揃います。

福岡県大川市のクラフトマンズデイ
特許を持つオリジナル技術で加工した「丸庄」のソファ
福岡県大川市のクラフトマンズデイ
福岡県大川市のクラフトマンズデイ
福岡県大川市のクラフトマンズデイ

実はここ大川は、日本でいち早く家具を“道具”から脱却させた産地。

“使うための道具”だった家具に、“デザイン”の要素を取り入れた製品を長年提案してきました。それまでの家具の概念を、「インテリア」に昇華させた産地といっても過言ではありません。

そんな歴史ある大川で開催される「クラフトマンズ デイ」。どんな体験ができるか、のぞいてみましょう。

日本一長い家具展示

目玉企画の一つが、まち全体を舞台にアートのように家具を飾る企画、「ファニチャーストリート」。日本一長い家具展示場が出現します。

その長さは総長200m。江戸時代の風情を残す大川が家具の大見本市となり、民芸家具から組子細工、北欧スタイルから和モダンまで、様々なタイプの大川家具が古い町並みに集結。見て歩くだけで楽しめそうです。

福岡県大川市のクラフトマンズデイ
ファニチャーストリートの会場となる大川の町並み

さらに、この祭典のために特別に作られたソファやテーブルがお披露目。イタリアの家具産地・ポルデノーネ市のデザイナーが大川をイメージしてデザイン・設計。それをもとに、大川の職人が技術力を結集させて作り上げた作品が20点ほど並びます。

福岡県大川市のクラフトマンズデイ
組子技術で製作した組み立て式茶室「MUJYOAN – 無常庵」の新作も披露

職人の技と想いを体感できる、オープンファクトリー

「どんなに難しいオーダーにも応える」が、大川家具職人の合言葉。その技術の高さを目の当たりにできるのがこのオープンファクトリーです。

いつもは閉ざされている工場が開放され、100人もの職人がお出迎え。480年の歴史と技術を誇る家具・建具職人たちの手仕事を間近に見ることができます。

福岡県大川市のクラフトマンズデイ

また、半数の工場でワークショップも開催。組子コースターや、ヒノキのバスチェア、木のスピーカー、テーブルコンテナ等の体験コンテンツが目白押し。1日中いても時間が足りないかもしれませんね。

国内外で評価される大川家具の背景

多彩な家具を生み出す技術をもつ大川だからこそ開催できるこのイベント。その背景には、各分野のプロたちの連携がありました。

福岡県大川市のクラフトマンズデイ

480年の歴史を受け継ぐ大川には、伝統的に引き継がれてきた組子や彫刻などの伝統工芸だけでなく、ガラス加工、金具製造など、それぞれの技術で細分化された専門の職人が働いています。

機能性・アート性の高い家具を作るためには高度な技術が要求されるため、昔から分業でものづくりをしていたそうです。

また、丸太からの製材、組み立て、塗装、販売、運送に至るまで、地域内で完結できるのも、大川ならでは。各分野の技術を極めたプロが連携をしながらも、分担して作業をするため、常に高いクオリティーでのものづくりができるといいます。

福岡県大川市のクラフトマンズデイ
大川組子のランプシェードは、光と木の芸術品のよう

職人の技と芸術性を体感する

「『家具を買ってもらうこと』がこのイベントの目的ではありません」。そう、大川市役所の担当者は話します。

「大川家具をアートのように楽しんで見てもらい、その技と芸術性を体感してほしい。また、職人と直接話すことによって、彼らの家具にかける想いを感じてほしいなと思っています。

このイベントは、職人やデザイナーが長年あたためていた企画です。これだけ大規模に工場が開放されることは歴史上これまでありませんでした。ぜひ、大川のクラフトマンたちの手仕事を間近で見てみてください」

福岡県大川市のクラフトマンズデイ
地元の人から「おふろうさん」の名で親しまれる風浪宮ではオープニングイベントが開催(※プレス向け)

ショールームに行くのは少しハードルが高いけれど、「クラフトマンズ デイ」なら職人さんと話したり体験をしながら楽しんで家具を知れるはず。

また、家具は毎日の生活を長く共にするものだから、せっかくなら信頼できる人から直接買いたいもの。作った人の顔が分かる家具はより一層、愛着が持てそうですね。

クラフトマンズデイ

開催日時:
2018年11月2日(金)※関係者のみ
2018年11月3日(土・祝)10:00~20:00
2018年11月4日(日)10:00~20:00

開催場所:大川産業会館ほか市内(福岡県大川市酒見221-3)
(市内27会場の周遊バスが4コース巡回。乗車料1000円)

料金:入場無料・予約不要 ※ワークショップは有料
HP:https://www.craftsmansday.com/ 

文:猫田しげる

七五三に贈りたい、京都生まれの千歳飴

日本人は古来より、普段の生活である日常を「ケ」、祭や伝統的な年中行事を行う非日常を「ハレ」と呼んで、日常と非日常を意識してきました。

晴れ晴れ、晴れ姿、晴れの舞台、のように「ハレ」は、清々しくておめでたい節目のこと。こちらでは、そんな「ハレの日」を祝い彩る日本の工芸品や食べものなどをご紹介していきたいと思います。

七五三の起源は平安時代

七五三は、3歳、5歳、7歳になる子どもたちの成長の節目に健やかな成長を願って氏神さまにお参りする日。旧暦の11月は収穫を終えて実りを感謝する月で、満月にあたる15日は吉日であることから、11月15日に氏神さまへの感謝を兼ねて参拝するようになりました。

七五三の起源は、はるか平安時代までさかのぼります。

3歳児が剃っていた髪を伸ばし始める「髪置(かみおき)」、5歳児が初めて袴を着ける「袴着(ちゃっこ)」、7歳児が着物の付け紐をとって初めて帯を結ぶ「帯解(おびとき)」。これらの儀式が、江戸時代に「七五三」としてまとまって行われるようになったのがはじまり。

「7つ前は神のうち」という言葉のように、幼児の生存率が低かったその昔は、7歳を無事に迎えるまでは未だ人の子ではなく、神さまの子だと考えられていたのだそう。

つまり、七五三とは子どもから大人への仲間入りをする「7歳のお祝い」にあたるのですね。

七五三と千歳飴の関係は?

さて、その七五三と千歳飴の関係はというと、元和の時代、大坂の平野甚右衛門が江戸へ出て、浅草・浅草寺の境内で売りはじめたという説がひとつ。

もうひとつは、元禄・宝永の頃に飴売りの七兵衛が紅白に染めた「千年飴」「寿命飴」という名の棒状の飴を売り出して人気商品になったのがはじまりという説があります。

どちらが正しいかは定かではありませんが、ふたりとも、とっても商売上手だったようです。

当時、飴は江戸庶民の代表的なお菓子であり、神社のお供えものにされる神聖なものでもありました。

千歳飴の細長い形は、長寿を願う気持ちから。子どもたちの健康と幸せを思う親たちは七五三のお祝いとして、鶴亀や松竹梅などのおめでたい絵柄が描かれた袋に入った、この飴を持たせるようになったのだといいます。

岩井製菓の平たい千歳飴

京都府宇治市の「株式会社 岩井製菓(以下、岩井製菓)」は、昭和39年創業の京飴やさん。こちらでは毎年8月から千歳飴づくりをスタートし、全国各地の寺社や和菓子店などに、なんと数十万本もの千歳飴を納めています。

京都 岩井製菓の千歳飴
左から、抹茶、グレープ、レモン、苺ミルク、ミルク。

千歳飴といえば円柱状のものを想像しますが、こちらの千歳飴は少し平たいもの。

らせん状のラインが美しいアクセントになっており、可愛らしい色合いにも目を惹かれます。

昔ながらの地釜で少しづつ時間をかけて丹念に煮詰め、熟練した技でていねいに形作られた飴。本来の香ばしい甘さを引き立てるためにできる限り天然着色料を使用し、見た目だけでなく、食べ易さや美味しさにもかなりのこだわりよう。

「日本の伝統文化をいつまでも大切にしたい」と願う、岩井製菓の千歳飴です。

岩井製菓の千歳飴
細長い棒状にした飴を転がしながら、均等ならせん状にラインを入れる職人技!©株式会社岩井製菓

11月15日の七五三の日。晴れ着に身を包んだ小さな人たちが、千歳飴の長い袋を少しひきずりながらも嬉しそうに歩いている姿に出会えるといいな、と思います。

<取材協力>
株式会社 岩井製菓
京都府宇治市莵道丸山203-3
TEL:0774-21-4023
http://www.iwaiseika.com

文・写真:杉浦葉子

こちらは、2017年11月15日の記事を再編集して公開いたしました

甘い物好きなら、わざわざ訪れたい三重のケーキ店

辻口博啓さんといえば、スイーツ好きはもちろん、そうでなくても名前を知っている人は多いのでは。そう、洋菓子の世界大会で数々の優勝経験を持つ、日本を代表するパティシエ、ショコラティエです。

その辻口パティシエが手がける店舗のひとつ「コンフィチュールアッシュ」が、2012年、もともと店を構えていた東京・世田谷から三重県菰野町へと移転オープンしました。

世界レベルのスイーツが菰野町で味わえるとは!
さっそく足を運んできました。

三重のアクアイグニス
アクアイグニスのコンフィチュールアッシュ
「癒し」と「食」をテーマにした複合温泉リゾート施設「アクアイグニス」内にあります
三重のアクアイグニス コンフィチュールアッシュ
近代的な建築も見ごたえたっぷり!

代表作の「セラヴィ」のほか、コンフィチュールアッシュオリジナルのケーキ

三重アクアイグニスのコンフィチュールアッシュ セラヴィ

「コンフィチュールアッシュ」に足を踏み入れると、ショーケースに色とりどりのケーキがずらり。中でも辻口パティシエの代表作といえるのが、1996年のソペクサコンクール(仏大使館主催の仏菓子コンクール)で優勝を勝ち取った「セラヴィ」です。

白い円柱型の上品な佇まい。木苺の上にはしずくをイメージしたジュレが1粒、キラリと輝きます。ホワイトチョコムースのケーキにフォークを入れると、中にはピスタチオの生地に、フランボワーズとショコラのムース。1番下にはチョコレートのサクサクとした生地が食感のアクセントとなり、多彩な味わいが口の中に広がります。

「セラヴィ」とはフランス語で「人生」という意味。
まさに、辻口パティシエが人生を賭けてつくったケーキなのです。

三重のコンフィチュールアッシュのケーキ
左より時計まわりに、「セラヴィ」595円、「湯の山ロール」305円、「ガトーショコラ H ~アッシュ~」580円、「フランボワーズピスターシュ」560円 ※価格はすべて税込
コンフィチュールアッシュ

「セラヴィ」以外のケーキは、すべて菰野町の「コンフィチュールアッシュ」オリジナル。果物の生産が盛んな三重県の素材をつかったケーキも季節ごとに揃います。

コンフィチュールアッシュのケーキと温泉コーヒー

人気の「セゾンドガトー」 445円(税込)と一緒に注文したのは、「温泉コーヒー」300円(税込)。「アクアイグニス」内に源泉100%掛け流しの片岡温泉があり、その温泉水で淹れたコーヒーは、まろやかな味わいです。

辻口パティシエが菰野を選んだ理由

気になるのが、辻口パティシエがなぜ、菰野町を移転先に選んだのか?ということ。

「コンフィチュールアッシュ」パティシエの谷口伸吾さんが、その理由について話してくれました。

「縁があって訪れたこの場所で、温泉水を使った温室で育つ、甘み深いいちごを食べて温泉に浸かったとき、たぐい稀な幸せを感じ、『この場所だ!』と決めたんだそうです」と、谷口さん。

コンフィチュールアッシュの辻口シェフ
オープン当時からこの店で働いている副統括責任者の谷口さん。常時20種くらい並ぶケーキの新作開発も、辻口パティシエとともに手がけています

そう、この店の最大の特徴が、隣にいちごを栽培する「TSUJIGUCHI FARM」があり、収穫シーズンの12月初旬から5月頃は、朝摘みのいちごがケーキに使用されること。

摘みたてのいちごのおいしさは格別!また、源泉100%の片岡温泉の温泉水で土をぽかぽかと温めているため、冬の間もたくさん栄養を吸収し、甘みの強いいちごになるんです。

「TSUJIGUCHI FARM」では12月初旬から5月頃、いちご狩り体験もできます
コンフィチュールアッシュ
コンフィチュールアッシュ
「TSUJIGUCHI FARM」の管理をしているのは、アクアイグニス農園事業マネージャーの山本久史さん。有機栽培で肥料の研究にも意欲的です

「コンフィチュールアッシュ」のアッシュ(H)は、辻口パティシエの名前、博啓(ひろのぶ)の頭文字のH。同店の店名は、“博啓(ひろのぶ)のジャム”という意味です。

自慢のコンフィチュールも、お土産に買いたい逸品。季節の味わいから定番商品まで、ずらりと並びます。

コンフィチュールアッシュのジャム

辻口パティシエが手がけるほかの店舗でも「セラヴィ」は味わえますが、朝摘みいちごを使うスイーツが食べられるのは菰野町だけ。なんて贅沢すぎるロケーションなんでしょう!

遠方からも訪れる価値のあるスイーツ店です。

<取材協力>
コンフィチュールアッシュ
三重郡菰野町菰野4800-1 アクアイグニス内
059-394-7727
https://aquaignis.jp/

 


こもガク×大日本市菰野博覧会

工芸、温泉、こもの旅。

こもガク×大日本市菰野博覧会

10月12日 (金) ~14日 (日) の3日間、「萬古焼」「湯の山温泉」「御在所岳」「里山」など豊かな魅力を持つ町三重県菰野町で「こもガク×大日本市菰野博覧会」が開催されます。

期間中「さんち〜工芸と探訪〜」のスマートフォンアプリ「さんちの手帖」は、 「こもガク×大日本市菰野博覧会」の公式アプリとして見どころや近くのイベント情報を配信します。また、各見どころで「旅印」を集めるとプレゼントがもらえる企画も実施。多彩なコンテンツで“工芸と遊び、体感できる”イベントです。ぜひお越しください!

【開催概要】
開催名:「こもガク×大日本市菰野博覧会」
開催期間:2018年10月12日 (金) ~14日 (日)
開場:三重県三重郡菰野町
主催:こもガク×大日本市菰野博覧会実行委員会

公式サイト
公式Facebookページ
公式ガイドアプリ(さんちの手帖)

 


文:広瀬良子
写真:西澤智子

重森三玲がつくった、枯山水とモダンな庭。ふたつの景色が楽しめる「ちそう菰野」

旅先で出会う、日本庭園。

美しく剪定された木や、手入れの行き届いた砂紋。

なんの前知識がなくても心が洗われるような風景に目を奪われますが、見方を知ると、さらに魅力が一段と深まります。庭には、持ち主の想いや、その土地の文化が詰まっているものです。

今回は、三重県内に唯一存在する、世界的に有名な作庭家・重森三玲(しげもりみれい)が手がけた庭を訪ねます。

三重にあるちそう菰野
庭は、ギャラリー&レストラン「ちそう菰野」から望めます。門を入り、建物までのエントランスも風情たっぷり

菰野町を訪れた重森三玲氏

重森氏が手がける庭があるのは、三重県菰野町。

なぜこの場所に庭をつくることになったのか? 重森氏に作庭を依頼した横山秀吉(よこやま ひできち)さんの孫にあたる、横山陽二さんに話を伺いました。

「祖父はこの家を後世に残したいという想いから、庭をつくりたいと思ったそうです。書物で重森さんのことを知り、“一見さん”でお願いに参りました。

当時すでに著名だった重森さんは最初驚いたそうですが、菰野町に足を運んでくさだり、電車の車窓から眺めた田園風景や、この場所から近い廣幡神社が借景にできるロケーションを気に入り、庭づくりを承諾してくださいました」

慌ただしい日常から、舟石で「心の旅」に

重森氏がつくった庭は、建物を挟むように「表庭」と「裏庭」とがあります。

表庭は、重森氏が得意とする、見事な枯山水。ちなみに枯山水とは、水を使うことなく、石や砂で水のある風景を表現する日本庭園の形式です。

三重にあるちそう菰野の重森三玲が作った庭
作庭当時は私邸でしたが、2017年にギャラリー・レストラン「ちそう菰野」として開かれることとなり、レストランスペースから表庭・裏庭ともに一般に開かれた場所となりました

庭には、舟のような形の「舟石」があり、そのまわりは海に見立てた幾重にも広がる砂紋を見ることができます。これは、舟石で「心の旅」にでることをイメージしたもの。

医師をしていた秀吉さんは、庭を眺めて心整える場所になるように‥‥と、重森氏に依頼。上空からこの庭を見ると、苔山で「心」という文字が描かれているそうです。

奥には、仏に見立てた立派な緑石も目を引きます。雨が降ると艶やかに輝き、また苔もひらいて、しっとりと風情ある趣に。

吉田宗匠が手がけた茶室

隣には、陽二さんの母の実家から移築したという、吉田宗匠が手がけた茶室「尽日庵(じんじつあん)」も。

この「尽日庵」という名前、『終日、春を探しに出かけたが春は見つからない。家に帰ると庭先に祠んだ梅のつぼみがあり、春の訪れを告げる花はこんな身近にあったのか』という漢詩から命名されたとか。

茶室へと導く前庭には、尽日庵になくてはならない梅畑もつくられています。

三重にあるちそう菰野 重森三玲が作った庭

表庭とは異なる趣の裏庭

「ちそう菰野」を挟んで反対側にあるのが裏庭。こちらは伝統的な格式の表庭とはうって変わり、モダンな色彩とデザインです。

白い白川砂と赤い天狗砂、青小判石敷。これは、重森氏が菰野町を訪れた際に電車の車窓から見た日差しを受けてキラキラと光る田園風景が描かれています。

三重にあるちそう菰野の重森三玲が作った裏庭

こちらの庭は、1968年6月にできあがって以来、家主やその知人以外は目にすることのできないものでしたが、2017年にレストラン・ギャラリー・庭からなる空間「ちそう菰野」として一般開放。

重森氏が手がけた、古典的な庭とモダンな庭に囲まれて食事ができるとは、なんて贅沢なひとときなのでしょう。

素敵な空間の「ちそう菰野」とともに、その空気感を存分に味わいに出かけてみてください。

<取材協力>
横山陽二さん(名古屋外国語大学准教授)

ちそう菰野
三重県三重郡菰野町大字菰野2657
059-390-1951
http://chisoukomono.com

< 関連記事 >
美しい日本庭園で「三重県の縮図」を味わう。ちそう菰野は五感を開放できるレストラン

三重にあるちそう菰野のレストラン。田代夫妻
「ちそう菰野」をつくった現代アーティストのご夫妻にお話を伺いました。田代裕基さんは彫刻家、理恵さんは料理家です


こもガク×大日本市菰野博覧会

工芸、温泉、こもの旅。

こもガク×大日本市菰野博覧会

10月12日 (金) ~14日 (日) の3日間、「萬古焼」「湯の山温泉」「御在所岳」「里山」など豊かな魅力を持つ町三重県菰野町で「こもガク×大日本市菰野博覧会」が開催されます。

期間中「さんち〜工芸と探訪〜」のスマートフォンアプリ「さんちの手帖」は、 「こもガク×大日本市菰野博覧会」の公式アプリとして見どころや近くのイベント情報を配信します。また、各見どころで「旅印」を集めるとプレゼントがもらえる企画も実施。多彩なコンテンツで“工芸と遊び、体感できる”イベントです。ぜひお越しください!

【開催概要】
開催名:「こもガク×大日本市菰野博覧会」
開催期間:2018年10月12日 (金) ~14日 (日)
開場:三重県三重郡菰野町
主催:こもガク×大日本市菰野博覧会実行委員会

公式サイト
公式Facebookページ
公式ガイドアプリ(さんちの手帖)


文:広瀬良子
写真:西澤智子