【わたしの好きなもの】Fabrico NEKO

猫アレルギーな私に幸せをくれたネコクッション


私は大の「生きもの」好き。
それは、共にはたらく中川政七商店の皆には周知の事実。
哺乳類・爬虫類・昆虫…  本当に、生きているものすべて愛しいのですが
特に好きなのが「もふもふ」のもの。
ふんわりとした毛並みに、やわらかな抱き心地…
そう、特に猫なんか飼えたら最高なのですがー…

悲しいかな、何と私は猫アレルギー。

直接抱っこしようものなら、目が充血し、くしゃみが出て、のども痛くなります。
それでもやはり大好きで、猫がいるお家に行く際には、事前に薬を飲んで 覚悟をして(笑)臨みます。


そんな悲しい運命を背負った私が巡り合ったのが、fabricoのNEKOクッションでした。



初見。形は、確かに可愛い。いわゆるデフォルメした猫ではなく
そこに本当に佇んでいるかのような自然なシルエットが好感的。



「でも、要するに猫型のクッションでしょう…?」とあまり期待せず触れてみると、その手触りに驚きました。
世界に誇るパイルファブリックの産地、和歌山県 高野口で作られたフェイクファー生地は
なめらかに吸い付くような触感で、大げさではなく本物の猫を撫でているよう。
裏面もしっとりとしたモケット生地で、思わずずっと触れていたくなる気持ちよさ。
「心地いい」という質感への尋常ならざるこだわりと、産地の確かな技術力を感じます。



私は家と会社にも置いてるのですが、休憩中、膝の上に乗せて撫でていると何とも幸せ。
打ち合わせなどで席を外して戻ってきたときに、
ちょこんと椅子にいるのを見ると、思わず顔がほころぶような存在感。
使っている時だけでなく 使っていない時も、それがあるという風景がまた愛らしいのです。



「いつかは猫が飼いたいけれど、今は当分これでいいかも…」
なんて思いながら、今日もひと撫で、一日を過ごしています。


<掲載商品>
「ふわふわの猫型クッション」
「本物のような猫型クッション」

編集担当 宮原

【わたしの好きなもの】NEKO door stopper

思わず撫でたくなるドアストッパー


これを家に置いてると、みんな「かわいい!」と言っては撫でていきます。

もこもこの毛並みと、ちょこんとした佇まいが思わず手を伸ばしたくなるんですよね。





これ、ぬいぐるみの様に見えるんですが、実はドアストッパーなんです。

猫がお座りしてるような、ちょっとかまってほしそうにこっちを見ているような、なんともいえない可愛さがあります。





そして手触りのいい毛並みは、世界唯一の「特殊有毛パイル織物」の産地、和歌山高野口で作られたもの。

実は、国会議事堂や新幹線の椅子張りから、世界的なブランドのドレスやコートにいたるまで、国内外で高野口のパイルファブリックが活躍しているんです。

本当に、本物(我が家の猫)と、変わりない毛並みで、ずっと撫でていたい心地よさがたまりません。





落ち着きのない本物は、ずっと撫でさせてくれないので、ドアストッパーと言いながらも傍に置いて、愛でたり撫でたりしています。(時々、本物が嫉妬してにらんできます。。)





猫好きの友人には、猫がいててもいなくても、誕生日プレゼントに贈り物にしたら、誰しもが確実に喜んでくれる猫アイテムです。

帰宅時に思わず「ただいま」と声をかけてしまうそうですよ。







編集担当 宮浦

<掲載商品>
「お留守番をしているような猫型ドアストッパー」Fabrico NEKO door stopper

【心地好い暮らし】第2話 土鍋でご飯を炊く

「ご飯、土鍋で炊かへん?」夫に突然そう提案されてから、もうすぐ1年になる。
うちは夫が元料理人ということもあり、家庭内での役割分担として「食」は彼の領域で、食にまつわる日々の諸々は、概ね彼の意思によって決定されている。もちろん共働きなので、0:10ということはなく「どちらかというと」ではあるが、得意な方がやった方がなにかと良いよねということで自然とそうなった。なので、うちのシェフが今後我が家のご飯は土鍋で炊きます。というなら「まぁいいかな」というのが最初の感想だった。

とはいえ、米は食事のベース、炊飯器廃止というのは少しやり過ぎじゃないの?私上手に炊けないかもだよ?と共存の提案はしてみたものの、大丈夫、基本俺が炊くし。ということで、あっさり土鍋一本となった。

そうして、うちに3合炊きの小さな土鍋が導入されたのが1年前。今では私も噴きこぼれでコンロを汚すこともなく、かなり上手に炊けるようになった。つきっきりで見てないといけないんじゃないかという心配も、何度かやってみたら気をつけないといけないタイミングは沸騰がピークになる1回だということが分かってきて、セットさえしておけばタイマーと湯気が「今ですよ」と教えてくれる。

やっぱり炊飯器と違いますか?という質問に正直に答えると、炊飯器も十分美味しい。でも、水加減がばっちりで良い感じのお焦げができたホカホカ土鍋ご飯の美しさ美味しさは、純粋にテンションが上がる。炊き立ての喜びというか、つやつやと輝くご飯に視覚的にも盛り上がる感じ。単純だけどそれは結構大切な要素であることは間違いないと思う。

夫にはかなわないが、私もきれいなお焦げがつくれるようになった頃、次はあれだなという気がしてきた。時々割烹などでお目にかかる、土鍋で作る鯛めしや季節の炊き込みご飯。湯気を立てる土鍋をそのまま食卓の中央にどんと持ち込み、おもむろに蓋を開け、彩りよく並んだ具材をほっこりゆっくりかき混ぜて、さぁどうぞ。この勢いでそういうのをささっとつくれるようになっておきたい。絶対に美味しいし!

と思っていたところに、北海道の母親から鮭が半身ほども届いた。それはそれは見事な切り身で、あらゆる方法で美味しく頂いたが、それでも少し残ってしまった。あぁこれは、今こそやってみるべきではないのか、鮭ときのこの土鍋ご飯を!ということで、ちょうど撮影で我が家を使うという日に満を持してチャレンジしてみた。洗って浸水させたお米をざっと土鍋に投入し、お出汁を入れたら醤油・酒・塩と砂糖、上にきのこと鮭を並べるだけ。鮭は臭みがでると残念なので軽く焼いて、それだけが下ごしらえと言えば下ごしらえ。

結果。初挑戦でも非常に美味しくできました。撮影準備でお腹も減って、疲れてきた頃というのもあったと思うけれど、期待していた歓声も上がり、あっという間になくなってしまった。
炊飯時間は約30分。仕込みをいれても1時間もかからない。

道具を使いこなすというとハードル高いなと感じるけれど、やってみると意外とできたり、褒められて嬉しかったり。これくらいならできるかなと始めた些細なことが、知らなかった愉しみを教えてくれる。

土鍋ご飯、興味あるけど難しそう。私もそう思っていましたが、案ずるより産むがやすし。少し世界が広がります。美味しいものが満載の秋、機会があればぜひ。


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※文中で使用している道具は、「萬古焼の万能土鍋 白 大」になります。

書き手 :千石あや




この連載は、暮らしの中のさまざまな家仕事に向き合いながら「心地好い暮らし」について考えていくエッセイです。
次回もお楽しみに。

木目込みの雛人形で祝う初節句。制作現場を訪ねて

女の子の健やかな成長を願って飾る雛人形。幾重にも衣裳を着飾った「衣裳着 (いしょうぎ) 人形」と人気を二分する「木目込み人形」の存在をご存知でしょうか?

木目込み人形とは?

木目込み人形とは、人形の土台に彫りこまれた溝(木目)に布を「木目込み」、人形のかたちに沿って衣裳を貼り重ねていく人形のこと。一方の衣裳着人形は、縫ってある着物をワラや木の芯に着付けてつくります。

「他にも木目込みは顔立ちは手書き、飾りは燭台、花は紅梅白梅、段飾りで一緒に飾るのは雅楽の人形。一方衣裳着はガラスの目に飾りはぼんぼり、花は桜や橘、段飾りには五人囃子というのが定番です。木目込みは上品な印象で、衣裳着は華やか、というのが従来のイメージでしょうか」

そう語るのは東京・上野にある真多呂人形の三代目、金林真多呂さん。真多呂人形は、木目込み人形発祥の地、京都の上賀茂神社から唯一「正統伝承者」として認定を受ける、由緒あるつくり手です。中川政七商店の木目込み人形も、真多呂人形さんにつくってもらっています。

中川政七商店の木目込みの雛人形。創業のルーツである麻生地で衣裳を仕立ててもらいました

「明かりをつけましょぼんぼりに/五人囃子の笛太鼓〜」という雛祭りの歌は、思えば衣裳着の雛人形の様子を歌ったものだったのかもしれません。一方の木目込み人形は、長く愛される存在でありながら、意外とその詳細を知られていません。

今回は、制作の過程を覗かせていただきながら、280年受け継がれてきた木目込み人形の魅力をたっぷり伺ってきました。

木目込み人形は京都生まれ、東京育ち

木目込み人形は江戸時代中期、京都の上賀茂神社に仕えていた、髙橋忠重が神事に用いる柳筥(やないばこ)という箱の残り木でつくったのが始まりと言われています。衣裳は神官の服装の余り布でした。

当初はサイズも小さなものでした

いわば仕事の傍らの余技として生まれた人形でしたが、次第に評判を呼び、その技術が江戸の町に伝わると、独自の発展を遂げるように。昭和に入ると雛人形として定着し、さらに「江戸木目込人形」として国指定の伝統的工芸品に指定されました。

「木目込み人形が東京で発展したのは、人形師の吉野栄吉が京都で木目込みの技術を学んで持ち帰ったのがきっかけでした。我々の初代・金林真多呂は栄吉の息子の喜代治に師事し、新たに創意工夫を加えながら木目込み人形を継承してきたと聞いています」

初代から受け継ぐ木目込み人形づくり

木目込み人形はその名の通り元々は木製でしたが、現在は桐塑(とうそ。細かい桐の木屑とノリを混ぜて粘土状にしたもの)という素材で本体を作ります。

この製法は、吉野栄吉が考案し業界に浸透していったもの。桐塑は木よりも軽く、切ったり削ったりも木と同じようにでき、何より数をたくさんつくることができます。さらにそれまで木を彫ってつくっていた原型も粘土型に変更。どちらも木目込み人形の量産を可能にした、画期的なアイデアでした。

 原型から起こした鋳型(かま)に桐塑を詰めて、人形の本体をつくります
本体の基礎が登場!ここから細かな凹凸を整えます
よく乾燥させた後に、竹ベラややすりで表面をなめらかに整えていきます

ここから工程は衣裳を着せていく「木目込み」に向かっていきます。胡粉(貝殻を焼いてつくる白色の顔料)をにかわで溶かして本体に塗っていく「胡粉塗り」は、本体の強度を保ち、後の「木目」を彫りやすくする効果があるそう。ひと工程ごとに、美しく仕上げるための工夫を感じます。

白く塗ることで、薄手の生地を着せた時も本体の色が透けず自然な印象になる
布を木目込むための溝を彫刻刀で彫っていきます

すべてが手作業。いよいよ木目込みの工程へ

ここからいよいよ木目込みへ。布地を定着させるために水に溶かした「寒梅粉(かんばいこ)」を溝に塗り、生地を一枚一枚入れ込みながらカットしていきます。

パーツのサイズに生地を切っておくのではなく、生地を木目込みながらパーツの形に合わせてカットしていく。その方が生地をむだにしないそう。
今回依頼した手績み手織りの麻は、生地に張りがある為、丸みのある本体に沿わせてよれずに木目込むのが難しかったと言います。
一枚ずつ丁寧に木目込んで、徐々に衣裳全体が見えてきました。
覗かせてもらった生地棚は圧巻の量!人形に合わせて、オリジナルの生地を仕立てることもあるそう

人形の印象を決める頭師の仕事とは?

人形づくりは分業制。職人さんも工程ごとに分かれています。特に髪の毛を付けたり顔立ちを描く頭部は、「頭師(かしらし)」と呼ばれる専門の職人さんが一手に引き受けます。

真多呂さんが信頼を置く頭師が、埼玉県岩槻市の人形工房中村さん。岩槻市は江戸から続く人形の町として知られています。頭づくりの様子も、岩槻の工房にお邪魔して間近で見学することができました。

こちらは面相書きがしやすいように顔の表面をやする工程。人形も、メイクは下地づくりが大切です

顔を描く面相書きの職人さんの傍には、頭部がたくさん差し込まれた藁の束。昔ながらの道具がある一方で、目の前にはタブレットが。この画面で人形ごとの顔立ちを細かく確認して描き分けているそうです。人形づくりの道具も日々アップデートされていることがうかがえます。

「表情は、一筆書きでさっと描かれているように見えますが、実際は細かく何度も重ねて描いていきます。目は中心から外側へ描くのでなく、どちらの目も左から右へと一方方向に描いていくのが基本なんですよ」

こうした雛人形の顔立ち、昔は切れ長の目がスタンダードでしたが、今では表情も多様化し、かわいらしい印象のものも多いそう。中川政七商店の雛人形も、真多呂さんと相談しながら、大人も子どもも親しみやすい表情を模索していきました。

顔が出来上がったら、髪つけの工程へ。人形の髪は「菅(すが)糸」という撚りをかけていない糸を使用しています。

おでこ、脇、後ろとパーツに分けてセット完了!流れるような手つきであっという間に髪型ができてきました
生え際に墨をぬり、髪と馴染ませます

どこから見てもかわいいように。仕上げの工程へ

こうして完成した頭部が真多呂さんに届くと、いよいよ仕上げの工程です。頭部や手を本体につけたら、持ち物や被り物も仕立てていきます。

こちらは五月人形の組み立ての様子。紐飾りなどの細かいパーツも、職人さんが全て手で結んでいきます。

「頭部も本体も一つずつ個体差があります。五月人形なら兜の被り具合も人形ごとにちょっとずつ変わるんですよ」

どこから見てもかわいいようにつくっている、と職人の高野さん。

仕上げで印象的だったのは髪をセットする工程。櫛でとかし、水で濡らしてドライヤーで乾かしてクセを直して…と、まるで美容師さんが髪をセットしているようでした。

こうして、少しずつ命を吹き込まれていった人形がついに完成しました。

次の100年も、愛される雛人形を目指して

工程を見せていただいて感じたのは、つくり方もお雛様の表情も、時代に合わせて変化や工夫を重ね続けてきているということ。

「100年変わらないものを、といいますが、必要とされなければなくなってしまいます。時代に合わせてあり方を変えて、欲しいと思ってもらえるものを今後もつくり続けていきたいです」と金林さん。

子どもの健やかな成長を願う親の気持ちはいつの時代も変わりません。ただ、家族のあり方や暮らし方は時代ごとに変わります。表情を描くひと筆、衣裳を木目込むひと手間に、いつの時代も親心に応えてきた木目込み人形の「変化の歴史」を感じました。

<取材協力>
真多呂人形

文:尾島可奈子

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そろそろ冬支度。冬のおうち時間を心地好く過ごす、温活のすすめ

あっという間に10月ですね。
まだまだ昼間は暖かくて過ごしやすい日が続きますが、夜になると足元が冷えるようになってきました。

昨年は湯たんぽを手に入れて、ネットフリックスのおともに、就寝のおともにと、暖房に頼らないポカポカとした夜の時間を過ごすことができました。
さらに心地好い冬の我が家を目指して、今年も新たに温活アイテムを手に入れようかと思案中です。

そこで今日は、温活にまつわる暮らしの道具をご紹介します。

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冬の部屋着に。まるでお布団のように、軽くて暖かいちゃんちゃんこベスト

冬の部屋着におすすめの、体を優しく包み込んでくれる一着です。ふわーっと軽くて暖かい着心地のよさは、「まるでお布団」とも言われるほど。
つくり手の光延織物さんに取材に伺った際、
「布団にかけて寝ると、夜にお手洗いに行くときや、朝起きたときもさっと羽織れて冷えを感じませんよ」と聞き、軽いから布団の上に置いておけるというのがとてもいいな、と感じました。
昔から使い続けられている道具には暮らしの知恵が詰まっているものですね。

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冬の朝が億劫にならない、発熱素材で足元ぽかぽかのスリッパ

冬の朝がずいぶん楽になった、とスタッフからおすすめされた発熱綿の室内履き。
朝、足を入れた瞬間もほとんど冷たさを感じず、ベッドから出て、ほんの数分の間にもう足元がぽかぽかとしているのだそう。
冬の朝、布団から出る億劫さはまだまだ解決策が見つかっていないので、今年はこれもいいな、と検討中です。

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冬の毛布の気持ち良さを湯たんぽに。無理なく楽しく続ける「ながら温活」

こちらは昨年手に入れた湯たんぽ。布団の中なら一晩中ポカポカですし、室内でも2~3時間はあたたかさが持続します。
ネットフリックスのお供に、就寝のおともにと、昨年の冬は大活躍してくれました。今年も使うのが楽しみです。

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毛布の一大産地でつくる、ふっくらとした起毛が心地好いひざ掛け

フワッとした毛布に身をくるむ瞬間を思い浮かべると、なんとも幸せな気分になりますよね。布団の中だけでなく、ソファで過ごす時間にも、ちょうどいいサイズの毛布があればいいのに…。
そんな希望を叶えてくれる、毛布の一大産地でつくったハーフケットがあります。毛布やさんがつくっているからこそ、ふっくら嵩を出す起毛が実現。ボリュームがあってふんわりやわらかな冬のソファのおともに嬉しいアイテムです。

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心地好い冬のおうち時間を過ごせるよう、冬支度をして備えようと思います。

冬の部屋着に。まるでお布団のように、軽くて暖かいちゃんちゃんこベスト

おうち時間が増えたいま、毎日を 心地好く過ごせる服を選びたいもの。これからの寒い日を快適に過ごすために着たいのが、ぽかぽかと暖かいはんてんです。
はんてんは、日本で古くから愛用されてきた防寒具。子どものときに着ていた方も多いのではないでしょうか。(ちなみに袖のあるものがはんてん、袖のないものがちゃんちゃんこと呼ばれています。)

この冬、そんな日本の冬の定番着から着想を得た「ちゃんちゃんこベスト」をつくりました。はんてんよりもコンパクトだけど、しっかりと暖かく、どんな服装でも羽織れて、ふんわり軽くて動きやすい。ちょっとした外出も、そのまま行けるものを目指しました。

少し肌寒いけど歩いている内に暖かくなるしコートを着るほどでもない。近所へのちょっとしたお買い物などにもさっと羽織って出かけられるデザインに。

はんてんの産地、福岡県筑後市へ。職人さんに聞いてみました。

現在、国内のはんてん製造シェア1位を誇るのが、福岡県筑後市 。筑後市では、綿入れはんてんと呼ばれ、昭和40年頃から製造が盛んになり、現在は全国シェア90%を超えるまでに成長しました。

今回はそんな筑後市 で、はんてん製造を手がける「光延織物」にちゃんちゃんこベストづくりを依頼。筑後地方を中心に伝わる久留米織の技術を受け継ぎながら、糸選びから生地織り、デザイン、縫製まで一貫生産体制にこだわってものづくりをされています。

「はんてんは、江戸時代の頃から庶民の間で寒い時期の農作業や家事、漁に出る時に重宝され、もともとは各地でつくられていました。それがどうして暖かい地域で発展したの?とよく言われますが、綿入れはんてんは、ものすごく寒いところでは着ない。ほどほどの寒さがよかったんじゃないでしょうか」と、代表の光延俊郎さんは言います。

筑後地域は、久留米絣や久留米織 の産地で織物業が発展する下地が整っていたため、はんてんが大量生産でき、価格が抑えられたことも関係しているそうです。

「他にも生産が盛んな地域はありましたが、筑後が生き残れたのは、暖かくて着心地がよかったからじゃないかと思います 」

そうして長年発展してきた中で見つけた、綿入れの黄金比があると言います。

まるでお布団、とも言われる心地好さの理由

「日本の冬と言えば、みかんとこたつと綿入れはんてん。暖かくて、着心地がいい。ふわーっと軽くて肩が凝らないから、リラックスできます」

はんてんは、表地と裏地の間に綿(わた)を入れてとじたもの。光延織物では、綿70%にポリエステル30% と、はんてんに適した比率の綿を入れています。綿屋さん と、暖かさや重さも踏まえて編み出した黄金比率とのこと。綿100%のほうが良さそうなイメージでしたが、ポリエステルを入れることで、綿の形状を保つことができ、暖かさをキープする事ができます。

「はんてんは、静電気が起きにくいので、乾燥するとバチッと来る方にもおすすめです。布団にかけて寝ると、夜にお手洗いに行くときや、朝起きたときも冷えを感じません」と娘の浩子さん。はんてんを愛用されていて、いつも本当に暖かいとしみじみ感じられているそうです。

浩子さんに、製造工程を案内していただきながら、お話を伺いました。

一つひとつ手作業でしかつくれないもの。

ちゃんちゃんこベストは、職人の手によって一つひとつ丁寧に仕立てられています。生地のすみずみまで綿を入れたり、綿が出たりずれたりしないように生地をとじていく作業は、熟練の技術と細かい気配りが必要で機械ではつくることはできません。さらに、従来のはんてんと違うことも多く、新しい挑戦だったそうです。

まずは裁断した生地を縫い合わせていきます。

表地の背中の部分は、綿どめのためにわざと半分に切ったものをつなぎ合わせています。表地は、あったかもんぺパンツと同じ暖かみのある起毛生地。触り心地は抜群ですが、柔らかく伸びるので、扱いが難しかったと言います。

2人一組で綿を入れていきます。まず、裏地を表にした生地の上一面に綿を広げます。

生地に合わせて綿をちぎったら、綿を包むようにして生地を表に返します。

声を掛け合わなくても阿吽の呼吸で、あっという間に完了。

巧みな手さばきで、綿を入れていく様子を撮影してきました。
日本の定番着を手掛ける伝統の職人技を、ぜひご覧ください。


「はんてんよりも薄くコンパクトにしたいというご依頼でしたので、綿を裂くなど、できるだけ平たく薄くなるように工夫しました。ただ薄くし過ぎると、端の綿が足りなくなってしまうので慎重さが求められます。外からは見えませんが、衿や裾のすみずみまでしっかりと綿を入れています」

また、薄くコンパクトに仕上げながらも、腰のあたりに綿を二重に入れているので暖かさを感じていただけます。

綿が全体に均一に入っているように調整するのは、とじ職人の役目。
綿の入り具合を見ながら全体が均一に、ふっくらと仕上がるように調節しながら、一針一針丁寧にとじていきます。

「これまで何十年もはんてんに厚みがでるようにつくってきたので、何気なくいつも通りに綿を足してしまうことも。慣れない作業は、難しかったです」

とじの工程で驚いたのが、縫い目が表に出ないように縫いしろ(左手に持っている部分)に縫いつけていること。内側にあって見えないのにどうやって縫うの?と聞くと、「手の感覚で縫ってるよ」と職人さん。まさに熟練の職人技です。

衿には綿を平らになるように入れて、縫い目が見えないようにくけ縫いします。
2つ前の写真と縫い方が違うのが分かるでしょうか。
手縫いというだけでも驚きなのに、同じ場所を2回縫っているのです。
1回目は綿をとじるために。2回目は衿をつくるために。初回のサンプルでは、衿がないタイプをつくってもらいましたが、衿はとじ糸を隠す役割もあるため残すことに。

綿とじが終わったら、縫い目が粗くなっていないかなどすみずみまでチェックして、ようやく完成です。わずかなほつれも見逃さない厳しい検品基準は、初めての職人さんには驚かれることも。一つひとつの工程を丁寧に、最後まで気を抜かず行うことで、体を優しく包み込んでくれる一着ができあがります。

昔はどの家庭でもつくられていた寒い季節の必需品。見ただけでは気づかない、熟練の技と時間がかかっています。俊郎さんは、他の上着を着るたびに、改めてはんてんの暖かさを実感されるそう。昔から変わらない暖かさと着心地の良さ。この冬、手放せない存在になりそうです。

<取材協力>
光延織物
福岡県筑後市大字高江612
https://www.mitunobu.com/

<掲載商品>
ちゃんちゃんこベスト

文:眞茅江里