3つの人気ローカルショップ店主が明かす、お店の作り方、「好き」の伝え方

地方都市で魅力的なお店を開いている3人からお店づくりの秘訣を伺う、トークイベントレポート第2話。

「人が集まるローカルショップのつくり方」と題して開催されました
「人が集まるローカルショップのつくり方」と題して開催されました

3人それぞれの「お店をはじめたきっかけ」を伺った第1話から、話はお店づくりの核心とも言える、商品の仕入れ方や空間づくりの話へ。

印象的だったのが、3人それぞれの「好き」との向き合い方でした。

300年以上続く漆器メーカーの跡継ぎとしてUターンした、福井県鯖江市『ataW (アタウ)』関坂達弘さん
300年以上続く漆器メーカーの跡継ぎとしてUターンした、福井県鯖江市『ataW (アタウ)』関坂達弘さん
以前さんちでも取材したataW (アタウ)
縁もゆかりもない丹波篠山に移住して、お店を開いた『archipelago (アーキペラゴ) 』小菅庸喜さん
縁もゆかりもない丹波篠山に移住して、お店を開いた『archipelago (アーキペラゴ) 』小菅庸喜さん
archipelago
archipelago (アーキペラゴ)
蔦屋書店の六本松店の中にお店があるというユニークな業態で、地元福岡で、地域に根ざした独自のお店づくりをしている『吉嗣 (よしつぐ) 商店』の吉嗣直恭さん
蔦屋書店の六本松店の中にお店があるというユニークな業態で、地元福岡で、地域に根ざした独自のお店づくりをしている『吉嗣 (よしつぐ) 商店』の吉嗣直恭さん
localshop 吉嗣商店
吉嗣 (よしつぐ) 商店

司会:「ここからは、4つのテーマに分けてお話を伺っていきたいと思います」

司会を務めた中川政七商店の高倉泰
司会を務めた中川政七商店の高倉泰

「1つ目が『人が集まるお店をつくるには』。2つ目が『ローカルショップって儲かるの?』、3つ目が『地域と作る、ものづくり』、4つ目が『これからのこと』です」

イベントレポート第2話は「人が集まるお店をつくるには」「ローカルショップって儲かるの?」からレポートをお届けします!


*3人がお店を始めたきっかけを語った第1話はこちら:「自分のお店を持つという人生の選択。3つの人気ローカルショップ店主の場合」

仕入れ、どうしていますか?
ataW 関坂さんの場合:「大事なのはまず、自分が好きかどうか。売れないことを、もののせいにしないこと」

3人の中で唯一店舗運営の経験を持たずにお店を開いたのが、「嫌々ながら」Uターン、から思いがけずお店づくりが始まった、ataWの関坂さんです。

ataW関坂さん

仕入れはビジネス的な「売れる・売れない」ではなく、関坂さんならではの2つの視点で行なっているといいます。

関坂:「僕はもともとお店で働いた経験もバイヤーとしての実績も一切ありません。本当にど素人からスタートしたお店なんですね。

それで、もともと学んでいたデザインの視点で何か面白いアイデアがあったり、作り方がユニークなものを選ぶようにしてきました。

本業はメーカーなので、ものづくりのヒントや刺激になるようなものも、積極的に仕入れています」

例えばこれ、と関坂さんが紹介したのがこちら。

流木に刺したピンの頂点を線で繋ぎ、面で全体を覆うことでもう1つの外皮を制作したオブジェ「Crust of the polygon_流木01」
流木に刺したピンの頂点を線で繋ぎ、面で全体を覆うことでもう1つの外皮を制作したオブジェ「Crust of the polygon_流木01」

「ただの流木だったものが、線をつなぐことで全く違ったものとして立ち現れるという作品です。

作り手である寺山紀彦さんの作品が僕はもともと大好きで、お店を始める時に、最初に取り扱いを決めました。

きっと『こういうものが、売れるんですか?』って思われると思うんですけど、実は仕入れ始めてからずっとレギュラー商品として扱っています。

リピートで買うというものでもありませんし、万人ウケするタイプのものでもありませんが、特定の層の方に、細く長く支持されているという印象ですね」

立ち上げから今にいたるまで、仕入れの時に大事なのは「自分が好きかどうか」。結果としてよく動くもの、あまり売れないものとあるそうですが、関坂さんの考え方はとてもシンプルです。

「売れる、売れないよりも、その作家さんのものづくりや考え方に共感して仕入れたものが、結果として売り上げに繋がるのが、お店としては何より嬉しいです。

だから何かを扱うときは、あまり短いスパンで見ないようにしていますね。

短期間で見て売れないと、もののせいにしてしまいがちなんですけど、それはしたくないと思って。

まだお店を始めて3年ちょっとですが、新しくものを扱うときは、1、2年とか長いスパンで考えるようにしているんです。

その上で、良さがちゃんと伝わるように力を注げばいい。ディスプレイを変えたり、発信の仕方を工夫したり」

この話に、強く共感、と応えたのが小菅さんです。

仕入れ、どうしていますか?
archipelago 小菅さんの場合:「作り手へのお声がけは、相手と心中するような気持ち。基準は愛せるか、どうか」

「小さなお店なので、潤沢な予算があるわけでもないですし。どうせ関わるなら、長くお付き合いしたい、より関係性を深めていきたいという思いがありますね」

archipelago
店内の様子

「だからパッと見て、かっこいいな、素敵だなと思っても、お声がけするまでにはたぶん、普通のお店さんより時間がかかっていると思います。

使ってみての感覚や、ものが生まれる現場や作っている人のことを、時間をかけて知っていくんです」

お店のロゴ。archipelagoとは、多島海という意味だそう。奥さんと2人、手漕ぎボートで島々を渡るように、必ず作り手を訪ねて仕入れをするそうです。「島々で僕たちが感じた雰囲気も含めて、ボートに荷物を積んで自分たちの港に持ち帰る。そこで風呂敷を広げて小さな市場を開いているような感覚で、お店をしたいですね」
お店のロゴ。archipelagoとは、多島海という意味だそう。奥さんと2人、手漕ぎボートで島々を渡るように、必ず作り手を訪ねて仕入れをするそうです。「島々で僕たちが感じた雰囲気も含めて、ボートに荷物を積んで自分たちの港に持ち帰る。そこで風呂敷を広げて小さな市場を開いているような感覚で、お店をしたいですね」

「世間一般の尺度でいうと、売れる・売れないという考えはもちろんあると思います。でも、それは僕らと作り手との関係性を測る尺度とは、別の話かなと思って。

彼らが何ヶ月もかけて品物を作ってくれていることをわかった上で、仕入れる覚悟ができているかどうか。なぜその品物を扱うのか、お客さんにきちんと意思表明ができているか。

だから作り手にお声がけする場合は、それこそ相手と心中するような感覚ですよね (笑)

localshop

でも、そうやって僕らがお店を通して意思表明をきちんとやって行くと、受け取った人がお客さんになってくれて、そういうお客さんがまた、長い目で見るとお店を育ててくれるように思います」

「だから選ぶ基準は、まず自分が覚悟を持って愛せるか、ですね」

やはりみなさん、自分でお店を開くだけあって、ものに対する愛情は人一倍。

そんな、ものを好きになる、興味を持つ「きっかけづくり」をお店のテーマにしていると語ったのが、吉嗣商店の吉嗣さんでした。

仕入れ、どうしていますか?
吉嗣商店 吉嗣さんの場合:「興味の入り口としてのお店づくり。定石はあえて行わない」

吉嗣:「私は20年近く、ファションを仕事にしてきたのですが、ある時期から路面店が目に見えて減っていって、アパレル業界にとって厳しい時代と言われるようになりました」

吉嗣商店

「ところが一時期別の仕事をやっていた時に、専門外の色々な人に話を聞くと、どうやらファッションへの興味が減ったという訳でもなさそうだったんですね。

『魅力的なものが置いてあるお店があれば、買いに行きたい。でもなかなかそういうお店に出会いにくい』という。

一方で本屋さんって、自分だけかもしれないですけど、とりあえず何か探しに行こうかな、みたいな場所だと思うんです。ふらっと気軽に行ける。

「実際に今の吉嗣商店がある六本松蔦屋書店にも、多くのお客さんがいらっしゃいます。うちのお店のことは特に知らずに、ふらっと立ち寄られる方も多いです。

そういう何気なくアクセスできる場所で、例えば『自分の好きなファッションはこれ』が見つかるような、新たな興味の入り口を、提案できる空間になれたらいいなと思って、お店づくりをはじめました」

商品のセレクトは、一般的なアパレルショップや雑貨店の「定石」をあえて行なっていないそう。

「例えば冬時期だったらコートとかブーツとか、ずらっと面で揃えるのが定石なんですけど、うちのお店ではほぼ、それはやっていないんです。

シーズンで多少は変えますけど、基本的には着心地の良いカットソーだけとか、半袖・長袖だけとか。あくまで、切り口だけを用意します」

吉嗣商店
吉嗣商店

「そこで気に入ったブランドがあれば、今はお客さん自身が簡単に調べる方法がたくさんありますからね。

まずは小さな『好き』を提供できたらいいなという思いで品揃えをしています」

また、きっかけづくりのひとつとして「九州出身の作り手」「九州初上陸」のものも積極的に取り扱いしているといいます。

「例えば、東京のようにある程度の都市圏にあるお店では品揃えが豊富にある作家さんでも、『東京までなかなか行く機会がない』とか。逆に、地元の作家さんでも『気になるけれど、なかなかお店を訪ねて入っていく勇気がない』という人もいると思うんです。

そういった人でも気軽に手に取れる機会を提供できたらと思って、企画を組んだりしています」

福岡在住若手アーティスト「PEN PUBLIC」さんの企画展
福岡在住若手アーティスト「PEN PUBLIC」さんの企画展

実は吉嗣さん、この多くの人がやってくる環境を、作り手さんにも機会として還元しています。

商品を手がけたデザイナーさんや作家さんに声をかけて、一緒に売り場に立ってもらったり、お客さんの声を直接聞いてもらうようにしているそうです。

「私自身、お店を開いてみたら予想よりも上の世代のお客さんが多く来てくれて、それで仕入れるものを少し方向転換したりという経験がありました。

やっぱり現場に入ってみないとわからないことって多くあるので、自分でもできるだけお店に立つようにして、お客さんの状況は常に見るようにしています」

ここで対照的で面白かったのが、ataWの関坂さんのお話。ここから話題は、お客さんとの向き合い方や、空間づくりの話に移っていきます。

お客さんとの向き合い方、どうしていますか?
ataW 関坂さんの場合:「自分は店頭に立たない。『30歳分のギャップ』が、思わぬ効果も」

関坂:「実は僕自身は、店頭に立っていないんです。お店は僕の妹と母の2人に任せています。

彼女たち自身、デザインやこういうプロダクトに対する知識や理解は一切無いところからスタートしました」

ataW関坂さん

現在、妹さんは30代、お母様は60代とのこと。このギャップが、「たまに、うまく働いてくれるときがある」のだそう。

「全体としてうまくいっているかは、わからないのですが、お客さんの層が幅広いんですね。

20代くらいのすごく若い方も来てくれるし、一方で60代、70代くらいの方がきて、思いがけないものを買っていってくれることがあるんです」

例えば、と例にあげてくれたのが、奈良のbenchというブランドの「BENSAN」というサンダル。ベンサン、つまり便所サンダルです。

こうした商品の撮影も、関坂さんが妹さんにイチから教え込み、少しずつ腕を鍛えていったそうです
こうした商品の撮影も、関坂さんが妹さんにイチから教え込み、少しずつ腕を鍛えていったそうです

実は奈良県は国産便所サンダルの主要産地。そんな地元の良品を知ってもらいたいと誕生したのが、本来のベンサンのはき心地を活かしつつデザインをアップデートした、このbenchの「BENSAN」だそう。

「最初はみんな、え、便所サンダル?っていうんですけど、商品自体の知名度も上がって来たのか、最近は本当によく売れています。ご高齢の方も買っていってくれたり」

先ほど関坂さんが言っていた「考え方に共感して取り扱いをはじめたものが、結果的に売り上げに繋がるのが一番嬉しい」という、まさに好例。

関坂さんが惚れ込んで仕入れたものを、年代も違う、アートやプロダクトデザインが専門でないご家族のお二人が、フラットな視点で店頭に立って扱うことで、デザインやプロダクト好きだけに絞られない、地域の方も気軽に買い物しやすい環境が生まれているのかもしれません。

一方、来る人が自然と絞られるんです、と語るのはarchipelago小菅さん。

お客さんとの向き合い方、どうしていますか?
archipelago 小菅さんの場合:「わざわざ来てくれたお客さんの、心地よい居場所・逃げ場所をどう作るか」

小菅:「お客さんにはおこがましいんですけれど、うちのお店は本当に、わざわざ来ていただくような場所にあるんですね。決して入りやすいお店でも、ないと思います。

そうするといらっしゃる方は自然と、うちのお店に何か興味や意思を持って来てくださる方の割合が多くなる。

だからせっかく来ていただいたなら、どうやって満足して時間を過ごしていただくか、ということを、とても意識しています。

archipelago

この仕事ってお店で買われていくものと、買ってくれたお客さんの、その後の「人生」に関与する仕事だなと思っていて。消費を促す仕事だからこそ、ものとの出会いをどういう風に体験いただくのかは、責任を持ってやりたいなと思うんです。

なかなか来づらい場所に、例えば建築を勉強している学生がドキドキしながらやって来て、あまりに高価な商品ばかりで買えるものがなかったら、ちょっとしょんぼりすると思うんです。

逆に何か買い物ができたらその体験って、ちょっとお店と何かを分かち合えたような、嬉しい気持ちになるんじゃないかなと思って。

だから取り扱う品物は、選ぶ基準は共通していますが、価格帯は幅広いです。

4万、5万円する洋服もあれば、1000円くらいのお箸や300円くらいの箸置きや、お土産に買って帰れるクッキーを置いたりもしています」

archipelago

「それと、ゆったり店内を見ていただくには、お客さんの『逃げ場』も大切ですね。

お客さんが一人でいらっしゃって、お店に入ってみたら僕と妻がいて、同じ空間に2対1、という時もあるんですよ。

僕自身も経験があるんですが、そこでどんどん接客されたら、「何か買わなきゃ出られない」みたいに、もう逃げ出したいような気持ちになる方もいらっしゃるんじゃないかなと思って。

そういうお一人で来た方にも、僕らに気をつかうことなくゆったり過ごしていただける場所になればいいなと思って、お店の中に本棚を作りました。本のセレクトで、僕らのことが会話以上に伝わる部分もあると思いますし」

archipelago

「そんな風に、目的の商品がなくてもお店の中に自分の居場所がある、という環境を作っておきたいなと思っています」

この逃げ場所の話、実はお客さんの層の幅広さでは対照的な、吉嗣商店さんでも共通してありました。

お客さんとの向き合い方、どうしていますか?
吉嗣商店 吉嗣さんの場合:「気軽にやってきた人が、心地よく「ちょっと興味のあるもの」と向き合えるように」

「蔦屋書店自体、多くの人が気軽にやって来れる場所であるので、売る・買うという空気がお客さんにとって変にプレッシャーにならないような環境づくりは、一番意識していますね。

お店のコンセプト自体が「興味の入り口」なので、やっぱり大事なのは、ちょっと興味を持ってくれた人がどれだけ心地よく、自分のペースでそのものと向き合ってもらえる時間を作るか。

そのために、例えば在庫をさっと取り出しやすいようなディスプレイにしたり、商品が気になったお客さんが、スタッフに声がけをしなくても買いものをしやすい売り場になるように心がけています」

吉嗣商店

皆さんのお話を聞いていると、お店や売る人こそが、その「もの」のプレゼンターなのだなと改めて思います。

どんな人に、何をどうやって届けるか。

それを考えるには、「届ける環境」もとても重要な要素のようです。

自身は店頭に立たず、世代ギャップのあるコンビにお店を任せる中で、幅広い層のお客さんにもお店が受け入れられてきた関坂さん。

わざわざ行かないと行けない場所にお店を開いて、その空間を最上のものにと育ててきた小菅さん。

蔦屋書店の中という多くの人が集う環境で、「どんな提案ができるか?」を考えた吉嗣さん。

そしてやっぱりみなさん、商売の中心にあるのは、取り扱うものへの愛情です。

関坂:「一点ものもよく扱うので、むしろ、なくなっちゃうと寂しかったりするんです(笑)」

吉嗣:「僕も以前ヴィンテージものを扱う仕事をしていたので、それはもう、日々その葛藤との戦いですよね。売りたくないけど売る、みたいな。そんな気持ちで仕入れをしていました」

小菅:「本当にずっとものを扱っていると、誰かが買ってくださった時は、いいところに嫁いでくれたというような気持ちになりますね」

ものを売る、届けるという役割としての「ローカルショップ」のお話はここまで。次回、最終回は、販売という枠を超えてそれぞれの地域の中で始まっている、これからのローカルショップの可能性をテーマに、お届けします!

<お店紹介> *アイウエオ順

archipelago
兵庫県篠山市古市193-1
079-595-1071
http://archipelago.me/

ataW
福井県越前市赤坂町 3-22-1
0778-43-0009
https://ata-w.jp/

六本松 蔦屋書店 吉嗣商店
福岡県福岡市中央区六本松 4-2-1 六本松421 2F
092-731-7760
https://store.tsite.jp/ropponmatsu/floor/shop/tsutaya-stationery/


文:尾島可奈子
会場写真:中里楓

大阪に「テーブルで行う茶道」教室が登場。注目の大丸心斎橋店で出会う「茶論 (さろん) 」の魅力とは

空間も楽しみの一つ、茶論 大丸心斎橋店の魅力とは?

平日夜、駅直結の百貨店に立ち寄って、お買い物と一緒にさっとお茶のお稽古。

そんな「仕事帰り」が叶うお店が大阪心斎橋にオープンしました。

先日リニューアルオープンが話題となった大丸心斎橋店の8Fにある、そのお店の名前は「茶論 (さろん) 」。

茶論 日本橋店

「テーブルで気軽にお茶のお稽古ができる」お店として奈良東京日本橋店についで3店舗目として大阪にオープンしました。

今回はグループ会社である中川政七商店と、初の一体型店舗。

中川政七商店の奥が茶論の稽古スペース。白い大きなのれんが目印です
中川政七商店の奥が茶論の稽古スペース。白い大きなのれんが目印です

のれんをくぐって奥へ行くほど、ここがビルの中だということを忘れてしまうような、まさにお茶室のような凛とした空気が漂います。

茶論 大丸心斎橋店
茶論 大丸心斎橋店
茶論 大丸心斎橋店

空間設計はインテリアデザインを基軸に建築、会場構成、プロダクトデザインなど空間のデザインを手がける「ABOUT」佛願 (ぶつがん) 忠洋氏によるもの。しつらえを監修するのは茶論のブランドディレクターで茶人の木村宗慎氏です。

茶論のコンセプトは「茶を以て美を論ず」。

稽古はテーブルで受講できる気軽さながら、道具やしつらえなどについては、お茶を通じて美意識を養えるよう、毎月趣向を凝らした取り合わせで生徒さんをお迎えしているそう。

今回のオープン時にも問合せが多くあったという、その空間やしつらえの見どころとともに、茶論 大丸心斎橋店の魅力をご紹介します!

「ようこそ、いらっしゃいませ!」
「ようこそ、いらっしゃいませ!」

見世 (みせ) で現代的なお茶道具に触れながら、空間にも注目

まず中川政七商店と並んで通路に面しているのが、お茶道具を扱う「見世 (みせ)」のスペース。

茶論 大丸心斎橋店

実際に稽古で講師が着用する「茶論シャツ」や自宅でお点前を楽しめる茶箱など、現代的にアップデートされたお茶道具が並びます。

茶論 大丸心斎橋店
懐紙や袱紗がしまえる、着物の合わせのような胸ポケットつきの「茶論シャツ」
茶論 大丸心斎橋店
一つずつ自分好みの道具を揃えて完成する茶箱
一つずつ自分好みの道具を揃えて完成する茶箱
茶論大丸心斎橋店
お抹茶を入れる、色とりどりの棗 (なつめ)
お抹茶を入れる、色とりどりの棗 (なつめ)

この見世 (みせ) の壁の向こうがお茶の稽古を行う教室になっているのですが、ここではその壁にも注目。

茶論 大丸心斎橋店

この石の壁は、大丸の外壁に使用されているものと同じ、竜山石という石で出来ているそうです。

竜山石は兵庫県の高砂市で採石される石で、緑色から時間が経つと酸化し黄色味ががって、経年変化を楽しめるとのこと。お店を出たら、ぜひ外壁と比べてみてくださいね。

頭上から始まるお茶空間

いよいよ稽古スペースへ。白いのれんをくぐって入りますが、その時にぜひ、天井の方を見上げてみてください。

大きなのれんをくぐる、その前に‥‥
大きなのれんをくぐる、その前に‥‥
茶論 大丸心斎橋店

のれんの上に見える格子は、ちょうどお茶室の格子窓のような趣です。本当に竹で編んでいるように見えますが、実は錆びた鉄を使っているそう。

茶論 大丸心斎橋店

「土壁を作る時に下地で使う竹編みをモチーフとしています。大丸の建物自体はヴォーリズ建築の『西洋のレリーフ (浮き彫り) 』であるのに対して、 茶論は『和の竹編みの装飾』という対比で構成しています」

とは設計を手がけたABOUT代表の佛願さんの言葉。まさにここが、茶道文化の入り口、という趣向なんですね。

心斎橋店ならではの「遊び」

のれんをくぐって正面は、呈茶 (ていちゃ) を提供するスペース。実際に目の前でお点前を受けながら、薄茶をいただけます。(不定期/税込1,650円)

窓の向こうには、リニューアルによって高層階だけに新たに作られた、八角形モチーフの外壁が
窓の向こうには、リニューアルによって高層階だけに新たに作られた、八角形モチーフの外壁が

そしていよいよ茶論の真髄、こちらが実際に稽古が行われるスペース。

茶論 大丸心斎橋店
仕事終わりにも参加できる最終19:30〜の稽古の頃には、こんな雰囲気に
仕事終わりにも参加できる最終19:30〜の稽古の頃には、こんな雰囲気に
外壁の洋と室内の和のコントラストが際立ちます
外壁の洋と室内の和のコントラストが際立ちます

どんな稽古が行われるの?はこちらの記事で体験取材してきました!:「テーブルで行うお茶の稽古って?『茶論 (さろん) 』東京日本橋店で『新しい茶道』を体験」

しつらえは毎月のはじめに、季節に合わせて変えていくそう。

茶論 大丸心斎橋店

開店直後のこの時期は、しつらえの一つひとつに無事のオープンを「祝う」メッセージが込められているそう。幸いにも監修された木村宗慎先生の解説を伺うことができました。

・軸 岸竹堂「五節句」

茶論 大丸心斎橋店

「岸竹堂は幕末から明治にかけて活躍した近江生まれ、岸派の日本画家です。

岸派の4代目で明治期の京都画壇で、3巨頭の一人に数えられた画家で、11歳の時に狩野派に入門しますがその指導法に疑問を持ち岸派の岸連山に師事しました。

西洋絵画の陰影法や遠近法を取り入れた鋭い写生技術を持ち動物画、風景画、特に虎と桜を得意とした画家です。

この『五節句』の軸は、下方から『人日の節句』にちなんだ春の七草、『上巳の節句』にちなんだ桃とひな人形、『端午の節句』にちなんだ菖蒲の葉、『七夕の節句』に因んだ梶の葉と蹴鞠、『重陽の節句』にちなんだ菊が描かれています」

・麻熨斗 (あさのし)

茶論 大丸心斎橋店

「祝儀の心映えを示すものとして、様々な形で用いられるのが熨斗です。その熨斗を床に飾り、祝いの席であることを示すしつらえは今でも広く行われています。

鮑を用いた熨斗鮑が一般的ですが、同じく神事に不可欠な真っ新の麻苧 (あさお) を熨斗に見立てることも古き習わしの一つです。

茶論では、麻苧を昇龍に見立てて、水引と白い奉書で纏め、二月堂のお水取りの松明を添えて、あらたまを言祝ぐしつらえに仕立てました」

もう一つ注目は、床柱です。こちらは佛願さんに解説いただきましょう。

茶論 大丸心斎橋店

「京都の北山で江戸後期の建物の解体の時に出てきた名栗柱を使用しています。

名栗は専用の釿(ちょうな)と呼ばれる刃物で柱を叩いて模様をつけるのですが、六角形の模様も今回のヴォーリスの八角形の意匠にシンクロさせています」

茶論 大丸心斎橋店

「また割れには鉛を流し込み、蝶の契(ちぎり)を入れ割れ防止と蝶々が飛んでいるような浮遊感を演出しています」

大丸という歴史ある建物のエッセンスを取り入れつつ、季節ごとに表情を変える空間。

時期限定の「お祝い」のしつらえは10/10までだそうです。体験稽古も随時受け付けているとのことなので、ぜひ空間の美しさも味わいながら、お茶の世界を体験しに出かけてみては。

<取材協力>

茶論 大丸心斎橋店
大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-7-1 大丸心斎橋店 本館8階
06-4256-1100
https://salon-tea.jp/

文・写真:尾島可奈子

隆太窯のうつわが愛される理由。クラシックが流れる作陶場を見学

唐津へ行くならまずここへ、と必ず名の挙がる場所があります。

隆太窯 (りゅうたがま) 。

焼き物の里、唐津を代表する窯のひとつです。開いたのは唐津焼の名門、中里太郎右衛門十二代の五男として唐津に生まれた中里隆 (なかざと・たかし) さん。現在は息子の太亀 (たき) さんとともに器づくりを続けています。

不思議だったのは、聞いた人誰もが器を「買ったほうがいい」ではなく「まず、行ったほうがいい」という薦め方をすること。

なにか、器だけでない魅力がありそうです。早速行ってみました。

JR唐津駅から車でおよそ15分。日本海に向かって町が開けている唐津ですが、そんな海の気配は微塵も感じられない山中をどんどんのぼっていったところに、隆太窯の看板が見えてきます。

立派な石の門標と登り窯が入口で迎えてくれる
立派な石の門標と登り窯が入口で迎えてくれる

道なりに進むと、急に景色が開けました。

山の斜面を下りたところに、材木置き場や工房と思われる建物が点々と建っています。木々の間から瓦屋根がのぞき、窯元にきたというより、まるで小さな集落にやってきたような気分です。

隆太窯
登り窯用の薪置き場の手前を小川が流れる
登り窯用の薪置き場の手前を小川が流れる

道を下ってまずギャラリーへ。思わず歓声をあげました。

ギャラリー

照明を抑えめにした室内に、立派なステンドグラスを通して光が差し込んできます。空間をぐるりと囲むように、器が静かに並んでいます。

こちらは太亀さんの器

後で聞いたところによると、はじめからギャラリーにはステンドグラスを入れるつもりで、逆光を生かせるように隆さんが建物のつくりを考えたそう。

1974年にこの見借 (みるかし) という地に窯を開くまで、そして今も、国内にとどまらず海外でも作陶をされている隆さん。その経験もあってか、どこか空間に日本離れした雰囲気があります。

ステンドグラス

来たお客さんも心地よさそうに、静かにゆっくり器選びを楽しんでいます。

日本でないような雰囲気は、ギャラリーだけではありません。

おとなりの工房に入ると、高い天井に、壁いっぱいにとった窓。隆さんが好きだというバロック音楽が流れる中で、太亀さんと隆さんが親子揃って作陶中でした。お二人の姿がなければ、どこかのコテージのような趣さえあります。

例年ならこの時期、隆さんはアメリカで作陶されているそう。お二人が揃うことは滅多にないとのこと。これはラッキーです!
例年ならこの時期、隆さんはアメリカで作陶されているそう。お二人が揃うことは滅多にないとのこと。これはラッキーです!
中里隆さん
中里隆さん
中里太亀さん
中里太亀さん

「若い頃の工房は、だいたい暗かったんですね。明るくしたいなと思って、こういう工房にしました。

場所は、何日間と窯を焚いて煙を出しても、ご近所の迷惑にならないようなところで選びました。見学OKにしている理由ですか?まぁ、見られても減るもんじゃないからね」

答えてくれたのは隆さん。ろくろ台に座る向きも、周りの人と会話がしやすいように、あえて内側を向いているそう。

ろくろ台は人の体の大きさに合わせて高さを設定されています。ここがお二人の定位置です。
ろくろ台は人の体の大きさに合わせて高さを設定されています。ここがお二人の定位置です。

開放的な空間に、土をこねる音、ろくろをまわす音、そして時折、ふたりの会話が響きます。

顔を見合わせる二人

今日の土の具合、お互いのインタビューへの補足。手は休まず動かし続けながら、会話は自然体。ゆったりと時間が流れます。

土は、山から取ってきたものを、ブレンドせずに単味で使う。土に合わせて作りかたを変えていくそう
土は、山から取ってきたものを、ブレンドせずに単味で使う。土に合わせて作りかたを変えていくそう

太亀さんに今作られているものを伺いました。その日、作っていたのは小鉢。

「例えば、ほうれん草のおひたしを盛り付けたり。この後、白化粧して白い器にしようと思っているんです」

太亀さんの頭の中には、白い器にパッと映える緑がはっきり描かれているようでした。

「いつも、食べること、飲むことしか考えていないですね (笑) だから作る時も、どういうものを盛ったらいいかな、と考えます。食べている時に、こういう器があったらいいねとアイディアが出ることもありますね」

実は隆さん、太亀さんとも料理好き、お酒好きで有名。

だんだん、旅の前に誰もが「行った方がいい」と薦めてくれた理由がわかってきました。あのギャラリーを見て、この工房の空気を知って、お二人の人柄に触れて、自分も隆太窯の器を暮らしの中で使ってみたい、との思いが湧いてきます。

太亀さんの作陶を見守る隆さん

そんな隆太窯の器をこよなく愛し、ぴったりの料理と組み合わせる名手が、地元唐津にいらっしゃいます。

今度は唐津の町なかで活きる隆太窯の器を訪ねてみましょう。

<取材協力>
隆太窯
佐賀県唐津市見借4333-1
0955-74-3503
http://www.ryutagama.com/

文:尾島可奈子
写真:菅井俊之

自分のお店を持つという人生の選択。3つの人気ローカルショップ店主の場合

三者三様の店づくりから、人気店のヒントをつかむ

旅の目的地になるような、わざわざ行きたいお店が今、地方都市に増えています。

9月某日、その人気店を集めたトークイベントが行われ、開催の数日前には「立ち見も満員」で受付をストップするほどの人気ぶりに。

localshop

生活雑貨メーカーの中川政七商店が主催する合同展示会「大日本市」で行われたそのイベントのタイトルは‥‥

司会:「この時間のテーマは『人が集まるLocal Shopのつくりかた』としています」

司会を務めた中川政七商店の高倉泰
司会を務めた中川政七商店の高倉泰

司会:「それでは、スピーカーの皆さんに拍手をお願いします。

登壇いただいている3人は、皆さん地方都市で魅力的なショップを展開する方々なんですが、それぞれ、立場は異なっています。

『ataW (アタウ)』関坂さんは、福井県の鯖江出身で、300年以上続く漆器メーカーの跡継ぎとしてUターンしました。

『archipelago (アーキペラゴ) 』小菅さんは、縁もゆかりもない丹波篠山に移住して、お店を開かれています。

『吉嗣 (よしつぐ) 商店』の吉嗣さんは、チェーン展開をする蔦屋書店の六本松店の中にお店があるというユニークな業態で、地元福岡で、地域に根ざした独自のお店づくりをされています。

今日はこの三者三様の店づくりから、人気店のヒントをつかんでいきたいと思います」

福井県鯖江の「ataW (アタウ) 」、兵庫県丹波篠山の「archipelago (アーキペラゴ) 」、福岡県六本松の「吉嗣商店」。

どのお店も、セレクトの審美眼や空間の心地よさ、ここにしかない体験ができる場所として人気を呼び、まさに「人が集まるLocal Shop」となっています。

以前さんちでも取材したataW (アタウ)
archipelago
archipelago (アーキペラゴ)
localshop 吉嗣商店
吉嗣 (よしつぐ) 商店

都市部にはない暮らし方、働き方。自分のお店を持つという人生の選択肢。

3店はそれぞれ、どのようなきっかけで始まり、人気店に至ったのでしょうか。

司会:「それでは、早速はじめていきましょう」

Local Shopの魅力がたっぷり詰まったお話、第1話は「きっかけ編」をお届けします!

お店を始めたきっかけは、こんなところから

まずは自己紹介を兼ねて、お店を持つことになった経緯のお話からスタート。

3人への事前アンケートを元に、それぞれのエピソードにはこんなキャッチコピーが付いていました。

「嫌々ながら」「植生があった」「お客さんが上司」。

司会:「まず、『嫌々ながら』の方から聞いてみたいんですが」

「はい、僕です(笑) 」

と手を挙げたのはataWの関坂さん。

ataW関坂さん

「実は、おふたりとは違って純粋に、お店をやりたくてスタートしたというのでは、正直ないんですが‥‥」

とちょっと話にくそうです。

ataW関坂さんの場合:「嫌々ながら」Uターン

関坂:「改めまして、福井県の鯖江市というところからきました、関坂達弘と申します。

本業は、鯖江で1701年から続いている家業の漆器業をやっています。本業とは別にやっているのが、ataWというお店です。

もともと僕自身はデザインの勉強をしてきて、仕事もデザイン事務所で、主にグラフィックデザイナーとして広告とか雑誌のデザインをしていました。

でもずっと、親からは『帰ってこい、帰ってこい』と言われていて。最初は『嫌々ながら』2014年に会社を継ぐために戻ってきたんです。

実はお店自体は元々、別の名前で、親が運営していました。でも、僕が好きな感じじゃなかったし、お店の売り上げもそんなに良くなかった。

だったら、しばらく鯖江を離れていた自分の視点で、何か地域の中で面白いお店が作れないかと思って、任せてもらったのが始まりです。

その場所をataWという名前でリニューアルしてオープンさせたのが、2015年ですね」

鯖江市河和田地区の玄関口に位置するataW
鯖江市河和田地区の玄関口に位置するataW

はじめは「嫌々ながら」家業を継ぎ、それと同時に未経験からお店を持つことになった関坂さん。

ちょうどその頃、店舗運営の経験をしっかり積んだ上で、自身のお店を立ち上げようとしていたのが、archipelagoの小菅さんです。

archipelago小菅さんの場合:「植生が合った」場所へ移住

「植生が合った」のが開店のきっかけ、と答えたのは、archipelagoの小菅さん。

小菅:「初めまして。丹波篠山で、アーキペラゴというお店をやっております。小菅庸喜 (こすげのぶゆき)と申します」

archipelagoの小菅さん
archipelagoの小菅さん

「もともと丹波篠山自体には、縁もゆかりもなく、出身は埼玉です。武蔵野と呼ばれるような緑の多いエリアで高校まで過ごしました。

その後、京都の美術大学に行って、2007年に卒業と同時にセレクトショップを展開するアパレル会社に入社しました」

主にはブランドのあるべき姿や発信の仕方を考える、ブランディングプランナーという立場で店舗運営に携わり、ちょうど関坂さんのataWがオープンした2015年に独立。自分でお店を開くことに。

archipelago

自分のお店をと考えた時、小菅さんの頭にあったのは「商売をする場所」というよりも、「自分が妻や子どもと、どういう場所にベースを置いていくのか」という思いだったそうです。

小菅:「幼少期、今でいう自然教育寄りの幼稚園に行っていまして。自然に対して感じる美しさみたいなものは、原体験として持っていたんですね。

そういう視点で、長野の松本や安曇野のあたりとか、山梨のあたり、瀬戸内も穏やかで良いねって、妻といろいろな土地を探しました。

前職の本社が大阪にあったので、関西圏ならどこかと考えた時に、大阪から1時間ほどの距離にある丹波篠山という場所が目にとまったんです。

訪れてみると、もともと城下町だった町ならではの文化度の高さがあって、そういう土台の上に、我々より10歳くらい上の世代の先輩たちが、新しいお店を始めたりしていました。

昔からのものと新しいものがうまく混じりあって、少しずつ町が動き出しそうな気配を感じたので、思い切って移り住んで、店を始めた、という経緯です」

Uターン、移住。

暮らす場所を変えてお店を開いたataWの関坂さんやarchipelagoの小菅さんとは対照的に、「吉嗣商店」吉嗣さんは、もともと馴染みのある土地でお店を開いています。

しかもきっかけは不思議な「縁」から。

六本松 蔦屋書店「吉嗣商店」吉嗣さんの場合:「お客さんが上司」になって新店オープン

吉嗣:「初めまして。「吉嗣 (よしつぐ) 商店」を運営しています、吉嗣直恭と申します。よろしくお願いします」

「吉嗣 (よしつぐ) 商店」の吉嗣さん
「吉嗣 (よしつぐ) 商店」の吉嗣さん

「私は、もともと福岡の太宰府出身で、18歳くらいのときに上京しましてインポートセレクトショップに務めていました。

そのあと福岡に戻ってヴィンテージショップでマネージャー、バイヤーとして働いて、10年ほど、ウェア・家具等、アメリカ全土を回って買い付けをしていたんですね。

その途中、29歳の時に自分でお店を立ち上げました。

お店は10年ほど営業したあと締めて、全く違う仕事に携わったりしていたのですが、ちょうど3年くらい前にご縁があって今の九州TSUTAYAに入社して、「六本松 蔦屋書店」の中に、生活雑貨やアパレルを中心にしたお店を開いています。

localshop 吉嗣商店

この「3年くらい前の縁」こそが、先ほどのキーワードにつながるよう。きっかけは10年続けられていたご自身のお店での出会いだったそうです。

吉嗣:「私が以前、福岡市内で自分の店をやっていた時に、よく通ってくれていた方がいまして。その方が、ツタヤの方だったんです。

本当に洋服が好きで、いつもこだわりを持って着てくれていて。何かで、ちょっとお茶する機会があったときに『実は、今度ツタヤで新しい形のお店を出すから、そのときに、何かヒントをくれないか』という相談を受けたんですね。

最初はアドバイザー的な役割という話だったんですが、ちょうど自分も、何か新しいことをしてみたいなという思いがあって。

いろいろ話し合った結果、そのまま、入社して、今のお店を持つことになりました。今はそのお客さんが、直属の上司なんです」

吉嗣さん

そうして六本松 蔦屋書店の中に吉嗣商店がオープンしたのは2017年。

3店ともここ数年でスタートしたお店ですが、きっかけも動機も、本当に三者三様です。

きっかけがあって始めたとしても、そこからお店を自分の力で「続けていく」ことは、簡単なことではないはず。

話はここからお店づくりにぐっと踏み込んで、人気店を支える重要なテーマに入っていきます。

司会:「ここからは『人が集まるお店をつくるには』、続いて『ローカルショップって儲かるの?』というテーマで話を伺っていきたいと思います」

序盤はここまで。次回、まず「人が集まるお店をつくるには」のお話から始まります!

<お店紹介> *アイウエオ順

archipelago
兵庫県篠山市古市193-1
079-595-1071
http://archipelago.me/

ataW
福井県越前市赤坂町 3-22-1
0778-43-0009
https://ata-w.jp/

六本松 蔦屋書店 吉嗣商店
福岡県福岡市中央区六本松 4-2-1 六本松421 2F
092-731-7760
https://store.tsite.jp/ropponmatsu/floor/shop/tsutaya-stationery/


文:尾島可奈子
会場写真:中里楓

何はともあれ、牧野植物園へ行こう。“植物愛”が深まる高知の名所へ

高知の旅は牧野植物園へ

こんにちは。BACH (バッハ) の幅允孝 (はば・よしたか) です。

さまざまな土地を旅し、そこでの発見や紐づく本を紹介する不定期連載、「気ままな旅に、本」。今回は高知の旅へ。


幅允孝 (はば・よしたか)
www.bach-inc.com
ブックディレクター。未知なる本を手にする機会をつくるため、本屋と異業種を結びつける売場やライブラリーの制作をしている。最近の仕事として「ワコールスタディホール京都」「ISETAN The Japan Store Kuala Lumpur」書籍フロアなど。著書に『本なんて読まなくたっていいのだけれど、』(晶文社)『幅書店の88冊』(マガジンハウス)、『つかう本』(ポプラ社)。

植物の愛人、牧野富太郎

人は観光というと、アミューズメントパークや動物園などに惹かれるようです。

比べて、植物園と聞けば「なんか地味?」と思ったあなたこそ行くべき場所があります。それは、高知県立牧野植物園。

高知県立牧野植物園

高知の偉人といえば坂本龍馬や岩崎彌太郎、いやいや、アンパンマンのやなせたかしだって高知だぞという方もいるでしょう。

けれど、僕の個人的な高知の素敵な偉人ランキングでは、これまでもこれからもずっと牧野富太郎が不動の1位です。

彼の本を通して伝わって来る、人として、植物研究者としての魅力をぜひ誰かに伝えたいのです。

比較的裕福な造り酒屋の息子に生まれたものの小学校の授業に飽きて2年で自主退学。野山で草木に囲まれながら独力で植物学に取り組み、日本の植物分類学の基礎を築いた高知人、それが牧野富太郎です。

彼はのちに東京帝国大学植物学研究室に出入りするようになり、講師を務めながら論文を提出して植物学博士になりますが、「学位など無くて、学位のある人と同じ仕事をしながら、これと対抗して相撲をとるところにこそ愉快はある」 (『牧野富太郎自叙伝』より) と、のたまうところが既にユニークですよね。既成概念にとらわれない高知人気質とも言えます。

人が生涯追い求める社会的地位やお金になど目もくれず、学歴も勲章も金銭も持たず丸腰で悠々と94歳まで生きたのが彼でした。

そんな生き方がなぜ可能だったのか?という問いの答えは簡単で、彼には植物があったからです。

74歳のとき書いたエッセイには「私は植物の愛人としてこの世に生まれてきたように感じます。あるいは草木の精かも知れんと自分で自分を疑います。ハヽヽヽ。」 (『植物と心中する男』より) と記しています。

「飯より女より好きなものは植物」と断言し、寝ても覚めても夢中になれるものが傍らにあること。結局、仕事は朝起きる理由づくりだと僕は思っているのですが、彼の場合、生涯を通して植物を学び遊んだという生き方がとても素敵だと思うのです。

そんな牧野富太郎の植物の見方を感じるために、牧野植物園に行きましょう。

いざ、牧野植物園へ

1958年に高知市の五台山に開園したこの場所は、約6haの園内に3000種類もの野生植物が四季を飾っています。常設展だけでなく企画展も充実し、フラワーショウや音楽イベントなども催されている国内でも有数の植物園です。

設立当初から植物園に従事されている鴻上さんに園内を案内いただいた
設立当初から植物園に従事されている鴻上さんに園内を案内いただいた

今回も含め何度も僕は牧野植物園を訪れたことがあるのですが、その魅力は園内に漂うきもちよい空気感と、ゆったり流れる時間の心地よさが他のアミューズメント施設とは明らかに違うことです。

高知市内を臨む広々とした園内
高知市内を臨む広々とした園内

大きい昆虫に受粉をしてもらいたいチューリップやバラは花が大きく、小さな昆虫に花粉を運んでもらいたい桜や梅は花が小さい。

ツツジの花が横を向いているのは虫が入りやすくするためで、上側の花弁の中央に胡麻をまいたような印があるのは、蜜の位置をしらせるため。

僕が知っている何気ない植物の美しさや性質 (牧野風にいうなら生き様でしょうか) は、ぜんぶ彼の書物から教えてもらったことです。

初版の植物図鑑に書き込まれた膨大な赤字
初版の植物図鑑に書き込まれた膨大な赤字

しかも、彼の文章は本当にわかりやすい。

例えば、松や杉など風で花粉を飛ばす植物のことを「きれいな色や匂いで花の存在を広告する必要がないのです」(『なぜ花は匂うか』より)と語り、松や杉の花が人目に触れないわけを伝えてくれます。

生粋の植物狂で先鋭の研究者なのに、誰にでもわかる姿勢を決してなくさないのが、牧野の本当に偉大なところだと僕は思います。

そして、そんな彼の視線に誘われるよう、すべての植物に様々な面白さや意味を感じることができるので、この植物園ではあっという間に時間が過ぎてしまうのです。

小学校を辞めたあとに野山にいた牧野も、きっと同じ時間体験をしていたのかもしれません。

正門からエントランスまでの道は高知の植物生態が再現されている。ぜひ先を急がずゆったり歩きたい
正門からエントランスまでの道は高知の植物生態が再現されている。ぜひ先を急がずゆったり歩きたい
温室でやっていたラン展にて。これはチョコレートに似た香りを放つ品種
温室でやっていたラン展にて。これはチョコレートに似た香りを放つ品種

また、牧野植物園で見逃してはならないのが、彼が描いた「牧野式」植物図です。

牧野富太郎記念館展示館で何枚も鑑賞できる彼の作品は、植物分類の研究用に描かれたものです。が、芸術の域に達していると僕は思います。

園内にも「牧野式」植物図の解説板が立つ
園内にも「牧野式」植物図の解説板が立つ

鉛筆と筆で陰影をつけ、丁寧に描かれた植物たち。花弁の先端の柔らかさまで再現するような筆さばきによるニュアンスは、写真では表現できないものです。

また、植物画というのは、1つの画面の中に植物の全体とパーツをかき分け、成長過程などの差異も記さないといけないのですが、牧野はその辺りのエディトリアルデザインのセンスが抜群です。

花の生涯を絶妙な筆さばきでかき分ける
花の生涯を絶妙な筆さばきでかき分ける
左隅に小さく牧野のサインが記されていた
左隅に小さく牧野のサインが記されていた

植物研究誌の表紙レタリングも自ら手掛け、特製の名刺をつくるなど、研究内容の伝達までしっかりと吟味した現代型クリエイターの感覚を持ち合わせていたと思います。

疑いなく牧野は実地調査の鬼 (生涯40万枚の植物標本を作り、蒐集しました) でしたが、その差し出し方にも考えを巡らせていたのですね。

ちなみに牧野が植物採集に出るときはいつも三つ揃えのスーツを着て、特製の胴乱 (植物採集用のカバン) を持ち歩く洒落者だったようです。

牧野特製の胴乱。展示室内でレプリカを見られる
牧野特製の胴乱。展示室内でレプリカを見られる

また、今回の訪問では特別に牧野文庫の閉架図書 (通常非公開) をみせてもらい、牧野が実際に持っていた書物を何冊か拝見しました。

そのコレクションの中でも、1603年に中国で発行された季時珍の『本草綱目 (ほんぞうこうもく) 』(世界記録遺産にも登録されています)という自然界に存在するあらゆる漢方の素材を記した薬学本や、杉田玄白の翻訳した『解体新書』を見て、手描きの視覚表現を用いながら専門的な内容をわかりやすく伝える「牧野式」植物図の原点を垣間みたような気持ちになりました。

本草綱目
『本草綱目』
解体新書
『解体新書』

自由闊達な精神を持ちながら、自身の研究の届け方にも気を配る牧野富太郎。「1枚の葉も無駄にくっついてはいないのです」とわかりやすく植物を教える彼の名を冠した植物園は、いつも眺め通り過ぎてしまう草花の奥行きを伝えてくれる場所でした。

《まずはこの1冊》

『牧野富太郎 なぜ花は匂うか』(平凡社)

書影:『花はなぜ匂うのか』

『牧野富太郎 蔵書の世界』(高知県立牧野植物園)

書影_蔵書の世界

<取材協力>
高知県立牧野植物園
高知県高知市五台山4200-6
088-882-2601
http://www.makino.or.jp/index.html


文 : 幅允孝
写真 : 菅井俊之

*こちらは、2018年6月1日公開の記事を再編集して掲載しました。身近な植物でも知らないことがたくさん。散策しながら発見を楽しみたいですね。

テーブルで行うお茶の稽古って?「茶論 (さろん) 」東京日本橋店で「新しい茶道」を体験

「抹茶は好き。作法にどぎまぎせずに、サッと飲んだり点てたりできたらかっこいい。

でも‥‥」

正座は苦手。覚えることが多くて、師弟関係も大変そう。

そんな何かと敷居の高いイメージのあった茶道を、テーブルで気軽に学べるお店が東京日本橋にあります。

新しいお茶の入り口・茶論(さろん)

その名も「茶論 (さろん) 日本橋店」。

2018年4月に奈良にオープンした奈良町店に続いて、同年9月に東京へ初進出した、お茶の稽古・喫茶・茶道具のお店です。 (日本橋店では現在、稽古とお茶道具の販売のみ)

2019年9月20日には大阪・心斎橋に中川政七商店との一体型店舗もオープンしたばかり。各地に続々と「テーブルで行う新しい茶道」が広まりつつあります。

茶論(サロン)道具写真

運営するのは、お茶道具にも用いられる「奈良晒」の商いで奈良に創業した中川政七商店グループ。

「テーブルで行う茶道」、一体どんなものなのか。さんち編集部で体験稽古に行ってきました!

駅直結、茶論 日本橋店で体験稽古

やってきたのは東京メトロ「日本橋」駅直結の⽇本橋髙島屋S.C.新館。エスカレーターでお店のある4階に向かうと、立派な石造りのお店が見えてきました。

入り口に到着

編集部を代表して「初級コース」の体験稽古に参加するのはデスクの清原。

実は元茶道部なのですが、社会人になってからはお茶を点てる機会もなかなか無かったと言います。

清原「もうすっかり離れてしまっているので、久々にお抹茶が飲めるの、嬉しいです」

一度はお茶を経験したことがあるけれど、という人、意外と多いかもしれませんね。早速店内に入ってみましょう!

店内へ

ネット予約で通う茶道教室

店内は日本的な趣のあるカフェといった雰囲気。

茶論 喫茶スペース
茶論 喫茶スペース(2019年6月より喫茶のサービスを終了しています)
稽古で提供される「本日の主菓子」が美しく並んでいます
稽古で提供される「本日の主菓子」が美しく並んでいます
カウンターの中では、お客さんのためにお茶を点てているところでした。手慣れた姿がかっこいい
カウンターの中では、お客さんのためにお茶を点てているところでした。手慣れた姿がかっこいい
お点前の様子
カウンターの奥に抹茶碗が並んでいるのも新鮮です
カウンターの奥に抹茶碗が並んでいるのも新鮮です

「いらっしゃいませ」

受付中

レストランのように、カウンターで受付します。

実は体験稽古の申し込みはネット予約。本番のコースでも固定のお稽古日はなく、稽古が始まる2時間前まで予約可能なのだそう。今までの「茶道教室」のイメージとのギャップに驚きました。

アートギャラリーのような「見世」

「お席にご案内するまで、よかったら店内をご覧になってお待ちください」

スタッフさんが指し示したのは、お茶を楽しむ道具や器が並ぶ「見世 (みせ) 」のゾーン。

お稽古や喫茶のついでにお買い物ができる「見世 (みせ)」
お稽古や喫茶のついでにお買い物ができる「見世 (みせ)」
茶論オリジナル商品や作家さんの一点ものも。好きに手にとって見ることができます
茶論オリジナル商品や作家さんの一点ものも。好きに手にとって見ることができます
ずらりと並んだお茶缶がかわいい
ずらりと並んだお茶缶がかわいい
佇まいの美しい茶筅もさりげなく置かれて、アートギャラリーのよう
佇まいの美しい茶筅もさりげなく置かれて、アートギャラリーのよう

ぶらぶらと眺めているうちに、

「お待たせしました。こちらへどうぞ」

お店の奥、「稽古場」へ案内されました。

壁には掛け軸やお花も
壁には掛け軸やお花も

障子も畳もありません。本当に、テーブルの席で、いよいよ稽古が始まります!

テーブルに、大きなテレビ画面。何から何まで「茶道」っぽくないですが‥‥!?
テーブルに、大きなテレビ画面。何から何まで「茶道」っぽくないですが‥‥!?

師弟関係や流派を持たずに学ぶ茶道

西さん「今日の稽古を担当させていただく西です。よろしくお願いします」

奈良の1号店でも講師を経験された西さん。懐紙が懐に入るようになっている茶論オリジナルのシャツがよくお似合いです
奈良の1号店でも講師を経験された西さん。懐紙が懐に入るようになっている茶論オリジナルのシャツがよくお似合いです

茶論ではいわゆる「先生」との師弟関係はなく、「講師」は部活で言うところのコーチといった関係性だそう。

「◯◯流」といった流派も茶論にはなく、各派に通じる茶道の基本を教えてくれるというのがユニークです。

白湯にシソを浮かべた「香煎 (こうせん) 」で喉を潤していると‥‥

香煎を飲んでいるところ
小さな箱から何かを取り出していきます
小さな箱から何かを取り出していきます
ピンと張った帛紗をさばいて‥‥
ピンと張った帛紗をさばいて‥‥
お湯を注ぐのは電気ポットです
お湯を注ぐのは電気ポットです
あっという間にきれいなお抹茶が!
あっという間にきれいなお抹茶が!

流れるような手つきでお茶を点ててくれました。所作がとてもきれいです。

西さん「どうぞ」

早速一服目をいただきます
早速一服目をいただきます
いただく際の作法も教えてもらいました
いただく際の作法も教えてもらいました
時計回りに「2時から5時へ2度」回して‥‥
時計回りに「2時から5時へ2度」回して‥‥

清原「美味しい。抹茶味のものって最近多いですけど、本物の抹茶をいただけるって、嬉しいですね」

座学はスライドで

雰囲気もほぐれたところで、ここからは初級コースを少し先取りして、茶道の歴史を学ぶ座学の時間。

座学

前方の大きな画面スライドを使って講義が進んでいきます。

西さん

本当に何から何まで現代的です!

座学
「茶道のイメージを聞かせてください」

Q&A形式で西さんとも会話をしながら進み、教室は終始なごやかムード。

談笑中
へぇ、という豆知識も
へぇ、という豆知識も

清原「知っていると、ちょっと鼻が高くなりますね。人に教えたくなります」

茶道の基礎知識を身につけて、最後はいよいよ自分でお茶を点てます!

お茶の前にいただくお茶菓子は、奈良の名店「樫舎 (かしや) 」さんによるもの。季節によって変わるそうなので、「毎回どんなお菓子が出るか、楽しみになりそう」 (清原)
お茶の前にいただくお茶菓子は、奈良の名店「樫舎 (かしや) 」さんによるもの。季節によって変わるそうなので、「毎回どんなお菓子が出るか、楽しみになりそう」 (清原)

自分で点てたお茶は美味しい。

稽古のしめくくリは自分でお茶を点ててみる体験です。

いよいよ自分で点ててみます!
いよいよ自分で点ててみます!
茶筅を持つポイントを教えてもらいました
茶筅を持つポイントを教えてもらいました
こう持って‥‥と西さんの手つきを真似て実践
こう持って‥‥と西さんの手つきを真似て実践
お点前中
ふくふくと泡立ってきました
ふくふくと泡立ってきました
すっと茶筅を抜いて‥‥
すっと茶筅を抜いて‥‥
完成!
完成!
お茶を飲んでいるところ

お味はいかがでしょう。

清原「自分で点てると格別に美味しく感じます (笑)

それと、自分でやってみると西さんのお点前の所作が改めて、きれいだったなぁと。もっと自分もきれいにできるようになりたいって思いますね」

西さん「ありがとうございます。そういう、おもてなしを志す『心』と、先ほどの座学で学んだような『知』、お点前などの『型』、この3つをバランスよく学ぶことを、茶論では大事にしているんです」

講師の西さん

カリキュラムは裏千家・芳心会を主催する木村宗慎氏監修のもの。

気軽に学べるシステムで、茶道の基本をしっかり学べる、というのが嬉しく思いました。

体験を終えて‥‥

あっという間の90分の体験稽古でした。

清原「お店の雰囲気も稽古の内容も、固すぎず・カジュアル過ぎずなのが私にはほどよく感じました」

不思議と「喫茶」や「見世」も、体験を終えた後ではまた違って見えてきます。

菓子切りとお菓子器。季節やお菓子に合わせて組合せを変えて楽しむそう
菓子切りとお菓子器。季節やお菓子に合わせて組合せを変えて楽しむそう
先ほど稽古で使った茶筅。稽古は手ぶらで参加できますが、体験していくとマイ茶筅が欲しくなりそうです
先ほど稽古で使った茶筅。稽古は手ぶらで参加できますが、体験していくとマイ茶筅が欲しくなりそうです
懐紙入れにも色々なデザインが
懐紙入れにも色々なデザインが
手持ちの道具を持ち運ぶ数寄屋袋 (すきやぶくろ) を、日常使いする方も結構いらっしゃるんですよ、とスタッフさんが教えてくれました
手持ちの道具を持ち運ぶ数寄屋袋 (すきやぶくろ) を、日常使いする方も結構いらっしゃるんですよ、とスタッフさんが教えてくれました

稽古は最終19:15スタートの回まであるので、仕事帰り、デパートに寄ったついでに通えるというのも嬉しいところ。

他にも月謝でなくチケット制なこと、お店を変えても稽古の続きができるなど気軽に学べる仕組みに、「茶道をもっと身近に楽しんでほしい」という心意気を感じました。

茶道に興味はあるけれどちょっと敷居が高いなぁ、と感じている人には、ピッタリかもしれません。一度体験してみては?

<取材協力>
茶論 日本橋店
東京都中央区⽇本橋2-5-1 ⽇本橋店髙島屋S.C.新館4F
https://salon-tea.jp/
営業時間:「稽古」14:30~16:00、17:30~19:00、19:15~20:45/「見世」12:00~20:00 *売り場によって営業時間が異なります
定休⽇:施設の店休⽇に準ずる

 

~2019年9月20日、大阪に「茶論心斎橋店」がオープン!~

今秋グランドオープンする「大丸心斎橋店 本館」に、茶論の3店舗目となる「茶論心斎橋店」がデビュー。 グループ会社の中川政七商店の店舗を併設した、初の一体型店舗です。

■オープン日:2019年9月20日(金)
■住所:大阪市中央区心斎橋筋1-7-1 大丸心斎橋店 本館8F
■営業時間:「稽古」10:00~21:00/「見世」10:00~20:30

海外からのお客さんもお茶に親しめるよう、当日参加可能な、気軽にお茶を点てられるワークショップ(英語対応あり)なども開催予定とのこと。テーブルスタイルの茶道と約1,500点の暮らしの道具が一度に楽しめる空間に、一度足を運んでみては。

中川政七商店 大丸心斎橋店・茶論 心斎橋店

【住所】大阪府大阪市中央区心斎橋筋1-7-1 大丸心斎橋店 本館8F
【営業時間】中川政七商店 10:00~20:30
茶論 10:00~21:00(稽古)、10:00~20:30(見世)
【オープン日】2019年9月20日(金)
【定休日】館に準ずる
【HP】
中川政七商店:https://www.nakagawa-masashichi.jp/shop/default.aspx
茶論:https://salon-tea.jp/

文・写真:尾島可奈子
画像提供:道艸舎

*こちらは、2018年9月26日公開の記事を再編集して掲載しました。今はお菓子などで気軽に抹茶を味わえますが、自分で点てて飲む抹茶は格別です!