小さな人形に込められた技術と想い……埼玉 津田人形の衣裳着雛作り

怪我や病気から守られますように。

幸せな人生を送れますように。

雛人形は、子どものすこやかな成長を願って飾られます。

できればそれは、親から子への想いを紡ぐ媒介として、時代を超えて愛される、いつまでも飾りたくなるものであってほしい。

そんなことを考えて生まれた、「草木染めの衣裳着雛飾り」。

染織ブランド アトリエシムラで染めた草木染の裂(きれ)を用いて衣裳着(いしょうぎ)雛人形を仕立てたのは、江戸節句人形の作り手、「蓬生 津田人形」。

埼玉 川越にある津田人形の工房を訪ねて、人形の制作工程やものづくりについて伺いました。

※「草木染めの衣裳着雛飾り」先行ご予約会はこちら

一枚の裂から着物を作り上げる。衣裳着人形づくりの裏側

人形の土台に彫りこまれた溝(木目)に布を入れ込んでいき、人形のかたちに沿って衣裳を貼り重ねていく「木目込み人形」。それに対して「衣裳着人形」は、縫製した着物を、本当に人間が着るように人形の胴体に着付けて作るお雛様です。

「最初に寸法を取って裁断してね、縫製して、着せてみて、おかしな部分があれば寸法を調整する。そんな試作を何回も繰り返して、イメージ通りのお人形に仕上げていくんです」

そんな風に話してくれたのは、津田人形の二代目 津田有三さん。同じく人形師だったお父様(初代 津田蓬生)の手伝いからこの世界に入り、60年以上も人形作りに携わってきました。

津田有三さん(二代目 津田蓬生)
和紙で作る型紙。新しい人形を作る際には、一から寸法を割り出して、調整しながら作成していく。小さなお人形を作るために、非常に多くのパーツが必要

まずは着物に必要なパーツを割り出し、型紙を作成。次に「袋貼り」と呼ばれる方法で紙の四辺にのり付けをして、裂に貼り付けていきます。

「全体をのり付けすると、人形がこわばっちゃうんでね。特に今回の裂は絹の紬ですよね。それを活かすために、自然なシワが出る方がいいので、うちではこのやり方で貼っています」(有三さん)

型紙の四辺に、木の板のような道具で丁寧にのり付けをして、裂に貼っていく「袋貼り」
できるだけ裂が無駄にならないように。かつ、衣裳にした時にグラデーションや模様がきちんと見えるように、この段階で計算して貼り付けていく。長年の経験のなせる技
よどみない手つきで、すーっと裁断していく

裁断が終わると、裂に裏地をつけていき、そしてミシンで縫製して着物に仕上げていく工程へ。

数多くのパーツを、人形に着せたときの色柄の向き、体とのバランスなども考慮に入れながら縫製していきますが、その設計図は有三さんの頭の中にのみ存在します。

小さい人形の着物、襟の部分が特に難しい
いくつものパーツを縫製し、男雛の衣裳が仕上がっていきます

衣裳着雛の常識にはない、「次郎左衛門」をベースにした手描きの顔

雛人形のお顔ですが、木目込み人形であれば手書き、衣裳着人形の場合にはガラスの入れ目、というのが一般的になっています。

ただ、今回中川政七商店が実現したかったのは、写実的な印象が強いガラス目のタイプではなく、もう少し柔らかで、素朴な表情のお雛様。

そこで、衣裳着人形ではあるものの手描きのお顔での制作を検討し、中でも「次郎左衛門(じろうざえもん)」と呼ばれる、元禄時代に考案されたお雛様のお顔をベースにすることを決めました。

丸っこい輪郭に、細い筆で目や口を描き入れて作られる、柔らかな表情が印象的なお顔です。

頭(カシラ)と呼ばれる人形の頭部に関しては、衣裳づくりとは別に専門の職人さんが存在します。今回、その制作を担当してくれたのは、人形づくりの産地 岩槻にある大生人形。

「カシラのことならなんでもできるように、体制を整えています」

と、大生人形の代表で、自身も伝統工芸士として頭づくりに携わる大豆生田さんは話します。

大生人形 大豆生田 博さん(雅号:大生峰山)

大生人形は元々、手描きではなくガラスなどの入れ目の頭を得意としていた工房でした。しかし、産地である岩槻の中でも、手描きができる職人がどんどん少なくなっていき、このままではいずれ作れる人がいなくなってしまうという状況に。

そこで大豆生田さんは、専門の職人から技術を学び、自社でも手描きのカシラを手がけられる体制を整えました。

薄い墨を少しずつ、塗り重ねて顔を描き入れていく。それによってグラデーションが出て綺麗に仕上がるとのこと

「次郎左衛門をベースにしつつ、さらに表情が柔らかいお顔になっているかなと思います。

柔らかい眉毛にしようか、少しきつめにしようか、とフリーハンドで調整していくので、小さいお顔は特に難しいですね」

一つひとつ手描きで仕上げられ、まったく同じ顔は二つとありません
現在は石膏製のカシラが主流。かつては桐塑(とうそ:桐の粉と糊を練り合わせたもの)のカシラが主流だった

「頭(かしら)づくりは、その中でもさらに分業になっていて、たとえば私は人形の化粧を担当しますし、妻は結髪といって髪を結い上げる工程をやってくれています」

頭のくぼみの部分に絹でできた髪の毛を埋めていく
本当に人間の髪の毛を結っているかのよう

結髪を担当する大豆生田さんの奥様は元々美容師をされていて、その経験から、結髪の職人としての技術も高いのだとか。

「こんな人形を作りたい」と、昔ながらの髪型の要望を受けた場合には、古い写真などを見ながら試行錯誤して再現することもあるのだそうです。

大生人形ではカシラ作りの技術をつないでいくために、職人の雇用と育成を進めています。また、先達の技術や知見をきちんと受け継いでいくと共に、CGソフトや3Dプリンターなどデジタル技術への対応も進めてきました。

「昔の技法と、最新のテクノロジーと。色々なことをやれるようにしておいて、その上で使い分けていきたいと思っています」

自ら3DプリンターやCGソフトの操作を習得したという大豆生田さん。「カシラのことはすべてできるように」その真摯な姿勢に、津田人形さんたち人形屋さんからも信頼が寄せられています

模様の位置、腕の角度、佇まい。あらゆることに注意を払う着付けの工程

舞台は再び津田人形の工房へ戻り、いよいよ人形に衣裳を着せる工程へと進みます。今回、着付けを担当するのは、縫製して衣裳を作った有三さんのご子息で、三代目 蓬生である津田周一さんです。

津田周一さん(三代目 津田蓬生)

「お人形はご覧の通りもの凄く小さいので、たとえば着物のグラデーションなんかも長さにすればほんの僅かに入っているだけだったりします。

それがきちんと綺麗に見えるように、先ほど父がやったように縫製をして、着せる時もそれを意識して丁寧に着せていきます」

人に着せるように着付けるとはいっても、サイズが小さい分、少しのズレで印象がガラッと変わってしまいます。

「ここが気になるなぁ、ちょっとここを調整してみよう」

そう言いながら何度も微調整を繰り返し、少しずつ少しずつ着物を重ねていきます。

桐の木でできた胴体に、糊や釘を用いて着物を留めながら着せていく。藁の束で胴体を作る場合もあるが、雛人形の場合、着物の枚数が多く、しっかり留める必要があるので桐の木の方がやりやすいとのこと
縫製の時と同じく、襟の部分を美しく仕上げることは非常に難しく技量を要する。少しのズレも許されない

「今回のお雛様はしっかり重ねが入っています。小さなお人形にこれだけ別々の生地を重ねて着せているので、伝統的な衣裳の着せ方に基づきつつ、中に入れる綿の量を調整して分厚くなり過ぎないように仕上げたり、色々と工夫しています」(周一さん)

腕の向きなど、何度も微調整して姿勢を決めていく
頭(かしら)は接着せず、中に詰めてあるい草に差し込んで固定する
有三さん曰く、「着せてはじめて人形の衣裳が分かる」とのこと

着物の模様の見せ方だけではなく、ぴったり着せるのか、少しゆとりを持たせるのか。そんな事も考えながら着付けていきます。

常に新しいものを作り続ける、津田人形のDNA

今回のように新しい人形を作る際、完成形のイメージやサイズを聞いてから、実際の人間の体を基準に計算して、寸法を割り出していくのが津田人形のやり方。

「うちの場合、人間の身体ありきで計算して、寸法を割り出していきます。なので、人間が取れるポーズのお人形は、大体どんなものでも作れるんです」

と、周一さんは話します。

効率や速さを求める場合、決まった型紙で同様の人形を作り続ける方が理にかなっています。

そうではなく、いわばフリーハンド的に、寸法の割り出しからおこなう津田人形のスタイルは、有三さんのお父様、初代 津田蓬生から受け継がれているものなのだとか。

「うちの父は関西の人形屋の息子なんです。早くに両親を亡くしてしまったので東京に出てきて、そこで蓬玉(ほうぎょく)さんという方に弟子入りして、筋が良かったので蓬生(ほうせい)という屋号をいただいて独立します。

東京が焼け野原になってしまったので、疎開先を経て埼玉に工房を構えました。

師匠の蓬玉さんもとても器用な方で、創作人形的なものも含めてありとあらゆるものを作っていて、父もその流れを受け継いだんですよね」(有三さん)

「それに加えて、祖父は自分でもっと勉強しなければと思ったらしく、当時上野界隈にいた彫刻家や画家の人たちのもとにも通っていたらしいんです。

それが他の人形師とは違う、ユニークな基礎を作り上げたのかなと。おかげで私たちも今、なんでも作るスタイルでやれているのかなと思います。

祖父も父も、本当に色々なものに興味を持つんですよね。たとえば黒澤映画なんかを観て、『あの奇抜な見た目の武者を作ってみようか』なんてことがよくありました」(周一さん)

そんな津田さん達だからこそ、「こんなものできませんか?」と様々な人形の依頼が日々舞い込んできます。

60年を超えるキャリアを持つ有三さん。まだまだ人形作りへの情熱は衰えていません。

「ある頭(かしら)を見て、この顔にはどんな人形が合うかな、なんて考えて。浮世絵風の顔ならそのようにしてみようかって、息子に相談したりして。時代に合わないよって言われることもあるけど、やっぱり作りたいものを作る。その喜びが無いと。

そして作った人形を皆さんに見ていただいて。そういうのが楽しいですよね。

職人って、決まったものを作ることが多いと思うんだけど、私の場合は違うものを作ってみたいというのがあって。今回も、次郎左衛門の顔で作りたいって聞いて、変わってるなぁと思ったけど(笑)、嬉しかったですね」(有三さん)

そんな有三さんの気概を、周一さんもしっかりと受け継いでいます。

「僕も、なるべく色々なものをやって、技術や経験を蓄積していくのがいいかなと思っています。

この業界も、不況というのもありますが、変化しているタイミングですし、昔と違ってどこにお客さんがいるのか分からない。今回のお話をいただいたように、新しいものを作るチャンスがあるなら、どんどんチャレンジしていきたいと思います」

好奇心にあふれ、新たな挑戦を厭わない二人。その話を聞いているだけで、こちらも前向きな気持ちになることができました。

代々受け継がれてきた人形作りの技術と知恵、そして新しいことに挑戦する姿勢を糧に、津田人形のものづくりはこれからも続きます。

文:白石雄太
写真:奥山晴日

<関連する特集>

【イベントレポート】「石」の魅力を語りつくす。石工職人と石オタクによるクロストーク……「ものづくりから覗き見るディープな世界展」

中川政七商店が全国各地で出会い、心を動かされたものづくりブランドを紹介するECモール「さんち商店街」。その初めてのポップアップイベント「ものづくりから覗き見るディープな世界展」が、先日都内にて開催されました。

この企画は、日本各地のものづくりや歴史、風土に魅せられた学生たちが経営するセレクトショップ「アナザー・ジャパン」とのコラボレーションによって実現したもの。

つくり手を招いたワークショップや、特別ゲストによるトークセッション、学生セトラー(※)がセレクトした商品の販売など、さまざまなイベントが行われました。

※アナザージャパンの店舗を経営する学生たちのこと

「石」の魅力を語りつくすトークセッション

その中で開催されたトークセッションのひとつが、「異業種コラボな夜咄会 第一夜:石は語る〜生活に溶け込む歴史〜」。

ゲストは、さんち商店街でも取り扱っている石器ブランド「INASE(イナセ)」を立ち上げた石材店の4代目 稲垣遼太さん。そして、地質技術者として道路やダムなどのインフラ整備における石や水の調査業務を行い、“石オタク”としても知られている長谷川怜思さん。

有限会社稲垣石材店(INASE)稲垣遼太さん
石オタク 長谷川 怜思さん(八千代エンジニヤリング株式会社)

それぞれ異なる「石」の仕事をしているお二人をお招きし、ロマン溢れる「石」の魅力を語り合っていただきました。

「かっこいいですよね。ずっと見ていられます」

自己紹介の中で稲垣さんが見せてくれたのは、石の仕入れのために訪れる採石場の様子。自然物である石には二つとして同じものはなく、一つひとつの形や大きさ、色味を見極めているうちに、気づけば半日ほど採石場にいることもあるのだそう。

京都 鞍馬石の採石場

「地球のすごさを感じます。こういった部分を見せていく活動も、これからどんどんやっていきたいんです」

岩の壁がそびえ立つ迫力のある風景に、会場のお客さんたちも「確かに」と頷きながら耳を傾けます。

愛知県岡崎市で約100年前に創業した稲垣石材店の4代目である稲垣さん。墓石や灯篭といった商品を中心に取り扱う中で、「石が持っている価値や面白さ、そしてそれを加工する職人の技術を多くの人に伝えていきたい」と考えるようになり、石器ブランド「INASE」を立ち上げました。

「石でこんなこともできるんだって自分も常に学びながら、熟練の職人との二人三脚でINASEのものづくりに挑戦しています」

ふたつとして同じもののない自然の石の魅力を活かした商品を作るには、高い技術を持つ石工職人の存在が欠かせません
会場に展示されていたINASEの商品

石は本当に面白い

「採石場がかっこいいという話に皆さん頷かれていたので、今日はかなり突っ込んだ石の話もできそうですね」

と、嬉しそうに話し始めたのは、地質技術者で“石オタク”の長谷川さん。

小学生の頃から石に惹かれ、気になる石を見つけては拾って持ち帰っていたという長谷川さん。石好きが高じて、石や地層の地図「地質図」を作成したり、その情報をもとにしたインフラ整備を行う際のリスク調査等を本業としています。

長谷川さんが石の調査を行う際の”三種の神器”。「これがあれば世界中どこでも地質図が作れます」とのこと

「石って、色々な呼び名があると思うんですが、大きく分けると“岩石”と“鉱物”の二種類になるんです。その違いは、例えるなら岩石がおにぎり、そしてお米の一粒一粒が鉱物、というイメージ。

今ここにある石を見てもらうと、中に黒い粒や白い粒が見えると思いますが、こういった鉱物が集まって岩石になっている。なので、同じものは本当に存在しなくて、それぞれが世界で唯一のものです」

と、宣言通りの深い話を、分かりやすく伝えてくれる長谷川さん。

続けて、お気に入りの石Best3の発表や、石の年齢に関するクイズの出題など、会場の人たちの興味を惹きつけていきます。

「石って本当に面白いんですよね。石が元々持っている色つやだけで無限の表現方法があるというか。

その特性と、現代の加工技術を組み合わせて、暮らしに使えるものに落とし込んでいく。やりがいのある素材で、とにかく楽しんでやっています」

と稲垣さんが話すと、

「見た目の話でいくと、太陽光で見ている状態だけじゃなくて、たとえば紫外線をあてると反応する石もあるんですよね。

これとか、ブラックライトをあてると色が変わる部分が見えると思います」

というように長谷川さんも答えるなど、徐々に二人の石への想いもクロスしていきました。

そんな二人に会場からもさまざまな質問が。

“加工の難しかった石や商品はどんなものですか?”

「鞍馬石のお香立てなんかは、非常に難しくて、石を加工する様々な技術を詰め込んで作っています。しかも、その商品に見合った石をひたすら探すところからやるので、なかなか大大変です」(稲垣さん)

”石によって硬さが違うのはどうしてですか?”

「ひとつは材料の違いです。硬い鉱物の代表はダイヤモンド。硬い鉱物が集まると硬い岩石になるし、柔らかい鉱物だと軟らかい岩石になります。

それと石のでき方によって鉱物の配列が変わるので、それによっても硬さや割れやすさが変化します」(長谷川さん)

質問に応じて「これは私から答えますね」というように、それぞれの専門分野を理解しあった二人の様子が印象的な質疑応答でした。

石の価値を伝えていくために

最後に会場から、“稲垣さんに加工してもらうとすれば、長谷川さんはどんな石を選びますか?”というマニアックな質問が。

「難しい…材料の珍しさでいくと、例えば蛇紋岩(じゃもんがん)とか。緑色でかっこいいし、面白いかもしれないですね。

あ、日本全国の石を使った商品というのは、どうですか?」(長谷川さん)

「それは確かに。沖縄の琉球石灰岩とか、北海道の札幌軟石とか、日本全国、北から南まで本当に色々な石があるので。

恐らく職人泣かせではありますけど、やってみたいですね」(稲垣さん)

と、聞いているだけで心躍るアイデアも飛び出したところで、惜しまれながらイベントは閉会。普段、身近なようであまり知らなかった石の面白さや魅力に気づき、石の可能性にとても期待が高まるトークセッションでした。

「岡崎の(石加工の)技術力って、全国でもトップクラスだと思っています。ただ、たとえどんなに美しい石灯篭が作れても、今の住環境では必要とされない。

そのギャップを埋めるために、どんな加工をして、どうやって価値を伝えていくのか。もっと学んで、チャレンジしていきたいと考えています」

今後の取り組みについて稲垣さんはこんな風に話してくれました。

これからのINASEや稲垣さん、長谷川さんの取り組みからも目が離せません。ぜひ注目してください。


さんち商店街「INASE」のページはこちら

文:白石雄太

親子の想いをつなぐ「草木染めの衣裳着雛飾り」ができるまで……アトリエシムラ 志村昌司×中川政七商店 羽田えりな 対談

怪我や病気から守られますように。

幸せな人生を送れますように。

雛人形は、子どものすこやかな成長を願って飾られます。

できればそれは、親から子への想いを紡ぐ媒介として、時代を超えて愛される、いつまでも飾りたくなるものであってほしい。

そんなことを考えて、アトリエシムラとコラボレーションした「草木染めの衣裳着雛飾り」は生まれました。

染織家・志村ふくみさんのお孫さんである志村昌司さんが代表を務める染織ブランド アトリエシムラ。その工房には、植物の色彩世界に魅了され、ふくみさんの芸術精神を継承したつくり手たちが集います。

日々自然と向き合い、植物の生命をいただいて糸を染め、一点ものの商品を作り出していく。

このアトリエシムラのものづくりに、雛人形の担当デザイナー羽田が深く共感し、コラボレーションを熱望。そこから、衣裳着雛飾りのプロジェクトはスタートしました。

今回の記事では、アトリエシムラ 志村昌司さんと羽田の対談の様子をお届けします。

雛飾りに込められた想いやアトリエシムラが大切にしている考え方、しつらい文化を残す意義、豊かな暮らしについて。多岐に渡るテーマで盛り上がった対談の様子をぜひお楽しみください。

※「草木染めの衣裳着雛飾り」先行ご予約会はこちら

植物の生命(いのち)の色をいただく草木染めの雛飾り

中川政七商店 羽田(以下、羽田):

今回のお雛様を作るにあたって世の中の衣裳着雛をリサーチしてみたところ、豪華絢爛というか、きらびやかな着物で和風のイメージが強いものが主流になっていました。

もちろんそれはそれで素敵なんですが、マンション住まいで和室がないご家庭がとても増えている中で、洋室に飾った時にそこだけ異空間のように見えてしまわないかが気になっていて。

どうしようかと考えて、やはり衣裳のきらびやかさを少し抑えたいなと思い、色々調べる内に草木染めに行きついて、そしてアトリエシムラさんのことを知りました。

ふくみさんの本を拝読し、「植物の生命をいただいて染めている」というお話にとても共感して。そして昌司さん含めアトリエシムラの皆さんに、その芸術精神が脈々と受け継がれていることに感銘を受けて。

親子代々、想いをつないでいく雛飾りというコンセプトにもぴったりだと感じて、お声がけさせていただいたんです。

中川政七商店 プロダクトデザイナー/デザイナー 羽田えりな

アトリエシムラ 志村昌司さん(以下、志村):

植物の生命の色、恵みをいただいているということは、現代の人たちに響くかもしれませんね。

僕たちもやっぱり「生命と工芸」というのがひとつの大きなテーマであると思っています。たとえば糸はお蚕さんの絹糸を使っていますが、養蚕農家の方が必ず供養するんですよね。亡くなったお蚕さんを。

自然から一方的に糸を取るのではなくて、それに対して供養をする。自然に敬意を表して、生命を大事に考えるということが、昔からおこなわれていたんです。


植物も同じで「生命の色をいただく」という感覚がいつもどこかにあるようなものづくりであること。それがすごく大事なんだと思います。

アトリエシムラ 志村昌司さん

羽田:

私たちも、植物の生命をいただいて、草木で染めているということを一番に伝えたくて、今回の商品名を「草木染めの衣裳着雛飾り」に決めました。

志村:

本物の草木染めの生地で作った衣裳のお雛様というのは、まず世の中に無かったでしょうからね。本当に珍しい、特別なものになっていると思います。

よく見ていただくと一本一本の糸で色が違っていたりして、そんなところも楽しんでもらえるとありがたいです。

織色(おりいろ)といって、糸と糸の交差で色が決まっているので、より複雑な、奥行きのある色味になっています。本物の装束や十二単と同じですよね。

無地は究極の生地

志村:

襟元の生地は何枚くらい重ねているんでしたっけ?

羽田:

女雛の方は七枚重ねています。

志村:

本当に十二単に近いですね。

無地の重ねというところが良くて。平安時代の装束がそこで自然を再現していたのと同じで、桃の節句にぴったりの春らしい表現になっている。

襟元で季節が表されていて、日本の美意識が出ているなと思います。

羽田:

生地の色についてやり取りしていた時に「イメージを教えてください」と言われたことがとても印象に残っているんです。

普通は、色の指示って出来るだけ明確に、たとえば見本帳などから「これでお願いします」と選びます。今回はそうではなくて、イメージを尋ねられて。

最初は「どういうことだろう?」と思いながら「これは春の光の暖かさとか、桜が段々と色づいていく様子。こちらは春の夕暮れ時の霞がかった感じでしょうか」と、どうにか言語化してお伝えしてみたところ「なるほど、よく分かりました」と仰られたことがすごく新鮮でした。

それでよく分かるということは、皆さん、普段から自然をよく観察されているのだなというか。具体的な色の指定ではなく、イメージとして全体を捉えてそこを目指していくのが、すごくアトリエシムラさんらしいなと思いました。

志村:

そもそも、植物の種類、採取場所、染める時期、水、染め手、織り手、あらゆるものが変化するので、基本的に同じ色は二度と出来ません。だから明確な指示も出来ないんですが、逆にそれが良さでもある。

当然、科学的なものとくらべるとゆらぎは入りやすくて均質にはならない。だけど、自然ってそもそも、どんなものでも均質じゃないですよね。より自然に近いというのはゆらぎが入った状態で、その入り方が、一人ひとりの織り手や染め手によって違うということなのかなと。

最終的に、植物の色というのは人間の差配を超えたところで決まってくるので、コントロールできない部分が出てきます。だからこそ「いただいている」ということに繋がってくるんでしょうね。

羽田:

均一化されたものが多い中で、逆にそういったゆらぎに価値を感じて下さる方もいらっしゃると思っています。

最初、着物の色柄をどうしようかと考えた時に、無地がいいなって直観的に思ったんですが、それも、糸の風合いによって自然にできる色むらがすごく素敵だなと感じたからなんです。

志村:

素材感みたいなものが紬糸にはありますよね。経糸に使っている生糸だけだと、非常にプレーンな生地になりますが、紬糸を入れることによって凹凸が出てきて、この風合いがすごくいい。

ただ、無地って実は制作が一番難しくて、ごまかしが効かないんです。色むらが魅力といっても、縞模様までいってしまうと無地ではなくなってしまうし、ゆらぎが入り過ぎるとそれは、単にうまく織れていないということになります。

民藝運動の主導者である柳宗悦によれば、無地には無限という意味があり、無限の柄が含まれているのだそうです。ある意味では究極の生地。祖母のエッセイにも、無地の着物っていうのは究極の着物だっていう話が出てきます。

なにも柄が無い、それはすべての柄が含まれているということだし、”色なき色”というのも、そこにすべての色が含まれているということ。

織り手の技量が顕著に出るので、無地を織る時はみんな緊張しています。

目鼻の描き方や形にもこだわった、愛らしいお顔

志村:

我々の仕事ではない部分ですが、お仕立ても大変だったんじゃないかなと思います。これは袖のところだけではなくて、実際にすべて着せているんですか?

羽田:

男雛はすべて着せています。女雛は打掛と唐衣(上から2枚)は衣裳の形になったものを着せています。こんなに小さなお人形に、これだけ別々の生地を重ねて着せるというのは大変なことだそうで、伝統的な衣裳の着せ方に基づきつつ、中に入れる綿の量を調整して分厚くなり過ぎないように仕上げたり、色々と工夫していただきました。

着付けをした後、体のバランスを整える振り付けという仕事もあるんですが、それもすごく難しい作業だと伺っています。

志村:

凄い技術ですよね。着物の大きさも少しずつ変えないといけないでしょうし。実際の着物も、お仕立てできる人が本当に少なくなっていて。人形もきっとそうだと思いますが、特殊技能なんだなと。

羽田:

今回、人形のお顔は次郎左衛門雛というものをベースに仕上げています。丸っこい輪郭に、細い筆で描いた引目鉤鼻がすごく愛らしいお顔になりました。絵巻物に描かれているような柔らかいイメージのお顔です。

世にある衣裳着雛のお顔は、ガラスの入れ目で輪郭もシュッとしていてリアルな御顔立ちのものが大半で、綺麗だけどちょっと怖いかも、という感覚もあって。

そんな時に、次郎左衛門雛というタイプもあることを津田人形さんに教えていただいて「これがいいです!可愛い!」となって、お願いしました。

志村:

さまざまな技術が用いられていて、手仕事の結晶ですね。妥協が無いし、羽田さんの想いがあってこそ実現したんだなと感じます。

羽田:

皆さんにご無理ばかり言ってしまって……

でも、すごく良いものができたと思っています。

お着物を見慣れていないお子さんも多いと思うので、最初はよく分からないかもしれないですが、毎年見ているうちに「あれ、うちのお雛様って、ちょっと他と違う」ということに気付いてもらえるんじゃないかなと。価値が伝わって欲しいです。

しつらい文化を次世代に繋げるために

志村:

次の世代に手仕事や自然の価値をどう伝えるのかって、すごく大事な問題で。

たとえば、スマートフォンやインターネットみたいなものはすごく便利だし、当然僕も使っています。一方でそれらが無かった時代も知っているので、なんというかアナログな方へ戻る“よすが”が多少はある気がするんですよね。

でもこれからの子ども達は、生まれたときからデジタルなものが身の回りにあるのが当たり前で、その状態しか知らないので、戻りようがない。

そんな時代に、自然や手仕事のものに接する機会を設けることにはとても意味があると思います。

僕たちも子ども向けに染めや織りのワークショップをやったりするんですが、参加してくれた子たちはすごく感動してくれて、記憶に残ったと言ってくれる。やっぱり、子どもの頃に感動したことって覚えているんだなと思うんです。

今回の商品も、子ども心に何か感じてもらえて、記憶に残るものになっているんじゃないかなと思いますね。まずは生活の中に、手仕事のものとか、草木のものを取り入れていただいて、心のふるさとというのかな。それを子どもに伝えていきたいですね。

羽田:

毎年飾るっていうトリガーがあることが大きいのかなって。

「人は急にしつらえない」という持論があるんですが、大人になってから、いざ急にしつらうって結構難しいと感じています。自分の友人たちの話を聞いたりしても「しつらいってなに?」みたいなところから分からなかったりとか。

季節に合わせてしつらう感覚って、小さな頃から時間をかけて培っていくものなんじゃないかなと。もちろん、幼い頃に一度で価値を理解したり、意味を全て知ったりというのは難しいので、気長に繰り返していくことで土壌になっていくものだと思います。

毎年目にするうちに「このお雛様ってどういう風に作られたんだろう」とか「毎年飾る意味ってなんなんだろう」という興味を持ってくれて、手仕事に共感する気持ちを持ってもらえたら嬉しいですよね。

志村: 

しつらうって、時間がかかるじゃないですか。その余裕が家庭にないとできないというか。

普段の営みを止めて、別の時間の流れにしないと、ただただめんどくさいってなりがちで。生活の豊かさって、時間の使い方に関わってくるから、効率的に生活を回していこうって発想だと、豊かになりにくいのかなって、すごく感じます。

羽田:

正直な話、しつらいが無くても生活には困らないんですよね。じゃあなぜ残したいのかと言われると、コスパやタイパみたいな価値観が、子どもたちの優先順位の上位になってしまう危機感があって。

季節を感じて、しつらいに時間を割く。コスパとは対極の行動だと思いますけど、その時間を知らないで育ってしまうと、工芸や手仕事、自然の尊さにも気付かないまま大人になってしまいそうで。それがしつらいを残していきたい理由のひとつなのかなと最近思うようになりました。

志村:

哲学者の國分功一郎さんが書かれた『暇と退屈の倫理学』というベストセラーがあって、資本主義が発展した時に、できた時間とお金を何に振り向けるかを考えるべきだというのが問題設定になっています。

江戸時代の頃よりも、今の方がよっぽどお金も時間もありますが、でもそれを資本主義の消費サイクルの中に投じていくと、本当の意味で豊かになれていないんじゃないか、そこを考えようと。

そこでの一つの解として、手仕事とか、生活と芸術の結びついた活動に、余った時間とお金を投じるべきだと書かれています。

自分の生活をどう豊かにしていくのかと考えたときに、手仕事とか、自然とつながることで得られる豊かさがあるということ。そこに気付いてもらえないと、手仕事でもの凄い時間と手間をかけたものの価値が伝わらない。

残念ながら今の時代は、人の労働、気持ち、そういったものの価値が、必ずしも正確に認識されていないのかなと感じます。

羽田:

本当に難しいですよね。どうやって伝えていけばよいのだろうって、ずっと考えています。

志村:

やっぱり、「言葉」と「もの」と、両方ですよね。どちらかしかない場合が多いので、両方がセットになって、伝えていくということ。

あとは、全体を変えるってすごく難しいので、まずは共感してくれる人たちのグループができてくることが大事なのかなと思います。

ブルネロ クチネリってご存じですか?職人さんを育てる学校もあって、卒業生が手仕事でお洋服を作っていたりする、イタリアのブランドなんですが。

羽田:

アトリエシムラさんみたいですね!

志村:

そうなんです。僕も似ているなと思ったりしていて。

そこが「人間主義的資本主義」という哲学を掲げていて、資本主義なんだけど、きちんと人の手でものづくりができていて、その価値がわかる消費者もちゃんといる。すべて手仕事で、丁寧にお洋服を作った場合、値段もそれなりになって、普通は買う人がついてこなくて成立しない。でも、このブランドはそれが成立していて、世界中に店舗もあるんですよね。

どういうことなんだ?と思って(笑)。哲学や価値観、そういうものを買う人がいる。日本ももっとその辺が育つといいのかなと思います。

100年後の草木染め

志村:

ポスト資本主義というか、効率追求のあとの社会がどうなるのか。

このまま効率を重視して、それがみんなの理想であるなら、もう手仕事なんかすべて止めたほうがいいでしょう。でも、それが一番いいとは思えない人もたくさん出てきていて、その分岐点が来ているのかもしれません。

何より、つくり手がすごく楽しいんですよ、手仕事は。

そのつくり手の喜びがあって、それが使い手の方にも伝わってきて、すると生活に潤いが出て優しい気持ちになれる。

そういう体験をすると、中々捨てられない。今回の雛飾りも、引越しの度に絶対捨てずに持って行く、そういうものになると思います。

自分のパートナーになってくれるものとの出会いというか。単に安くて機能的なものは、新しい機能のものが出るたびに買い替えることになる。それとは別に、一生この子とやっていく!みたいなものがあるって、大事なことですよね。

羽田:

草木染めの生地も、織りたてというか、できたところが生まれたての赤ん坊のようで、そこからだんだんと育っていく。初節句に買ってもらうとしたら、お子さんの成長とともに、生地も変化していく。すごく相性がいいと思いました。

幼い頃に買ってもらったもので、大人になっても持ち続けるものって、ほかにあまり無いと思います。

志村:

50年後でも子どもが持ってくれていると思うと、親も心を込めて選びたくなりますよね。

そう言えば、「草木染め」という言葉自体は、実は比較的新しい名称なんだそうです。

山崎斌(やまざきあきら)さんという大正から昭和にかけて活躍された草木染めの研究家の方がいらっしゃって、その方が命名したと言われています。

それまでも藍染とか、個々の名称はあったんですが、全体を指す言葉はなくて。化学染料が出てきてはじめて、それまでやっていた植物による染めが「草木染め」として概念化されました。

羽田:

それまでは植物で染めることが当たり前すぎて、言葉にする必要が無かったんですね。

志村:

その山崎さんが刊行した草木染めの図鑑(「日本固有草木染色譜」:初版1933年)に島崎藤村が序文を寄せていて、そこに「これはウィリアム・モリスの仕事に近い」という言葉が出てくるんです。

モリスが提唱したアーツアンドクラフツ運動では、生活と芸術と労働が一致していることが大切だとされていて、特に労働、働くことの喜びが重要視されています。

職人さんがいかに楽しく労働しているか、そして働く喜びが表現されたものが芸術であると。

そんなモリスの考え方と草木染めの営みに共通点があるということに、100年前の時点で藤村が言及しているのは興味深いですよね。生活と芸術と労働が一致したものが草木染めなんだというか。

そこから約100年経ち、雛人形という形をとりながら、平安の頃の衣裳を草木染めで再現できたというのもあるし、今年はふくみさんが100歳で記念の年でもあって。

祖母が染織の仕事を始めた頃、草木染めはどちらかといえば廃れつつあったそうです。そこから考えると、草木染めが続いていて、地位が向上していることは感慨深いことだなと思います。

羽田:

永く愛されるお雛様ができたなと思っています。ゆくゆくは草木染めで違うお色の着物にも挑戦してみたいです。お客様も選べるとさらに嬉しいと思うので。

志村:

どんな人の元に届くのか、楽しみですね。おしつらえしたものの写真とか、見せていただきたいですね。

文:白石雄太
写真:奥山晴日

<関連する特集>

【わたしの好きなもの】わたしを支えてくれる毎朝のうつわ「明山窯 TEIBAN WARE」

幼いころから、朝ごはんの大切さを教わって育ちました。

自分で食事の支度をするようになり、日々感じるのは
朝食のひとときの尊さです。

朝があまり得意ではないのですが、忙しくてもできる限り朝食を準備し、
ほんの少しの時間でも、ふーっとひと呼吸する時間を作るようにしています。

毎朝使える、ちょうどよいサイズ感のお皿

そんなわたしがご紹介するのは、約400年続く信楽焼の窯元「明山窯」が作る、毎朝使いたい定番のお皿「TEIBAN WARE」です。

別々の形状を選び、色味は揃えました

「毎朝使いたい」
「このうつわがあるから、朝ごはんを食べたい」

そんな理想を思い描いて選んだこの2枚。

決め手となったのは、一人分のおかずやおむすびを載せるのにちょうどよいサイズ感であること。

元々オーバルや長方形が好きで、そうした食器はいくつか持っているのですが、魚皿や深皿など、限られた用途だけに使っていました。

一方、今回の長すぎない23センチ幅は、さりげなく我が家の食卓に溶け込んでくれます!

夫婦それぞれ、自分の使いたい形をチョイスする代わりに色味は淡青磁で揃えました。

個性豊かな我が家のうつわと合わせても、あえてメリハリをつけない配色を叶えてくれること、それでいて味わい深い色味がお気に入りです。

寝坊した日の朝食でも、優しいグリーンがほんの少しの彩りを与えてくれるので、すっかり頼もしい存在となりました(笑)。

陶器を頻繁に使う際、心配になるのがしっかり乾いているかな?という点。

「TEIBAN WARE」は幅広い用途に使いやすいように、少し角度のある縁がデザインされているのですが、食器を乾かすスペースが少ない我が家のキッチンで、通気性を保つ際にも役立ってくれています。

無数にある焼き物の産地。

それぞれの風土がうつわに息づき、沢山の魅力をみせてくれますが、我が家には不思議と信楽焼のものが集まってきました。

じっくり悩んで買うもよし、ひとめ惚れしてもよしです。

さまざまなきっかけと出会いがあると思います。

みなさんの食卓、そして暮らしのひとときを支えられるような素敵なうつわとの出会いがありますように。

<掲載商品>
【WEB限定】明山窯 TEIBAN WARE オーバル皿
【WEB限定】明山窯 TEIBAN WARE 長皿

<関連特集>

編集担当:中山

【わたしの好きなもの】赤ちゃんも大人も心地よい「BLANKED ガーゼ敷パッド」

4か月の子どもが寝返りやずり這いをするようになり、リビングに何を敷こうかな、と考え始めました。

プレイマットやジョイントマットなど色々と探してみましたが、機能性は良くてもデザインが雰囲気に合わなかったり、予算的に厳しかったり、中々これといったものが見つかりません…

マットレスをリビングの真ん中に敷くというのも、少し抵抗がありました。

木綿産地のこだわりが詰まったガーゼケット

そんな時、キャンプ用マットの上に敷くものを探していて偶然出会ったのが、BLANKEDの「ガーゼ敷パッド」でした。

BLANKEDは三河木綿の産地、愛知県蒲郡市にある機屋(はたや)さんが作るガーゼケットブランド。そのこだわりが詰まった「ガーゼ敷パッド」は、綿100%でふんわり軽くて柔らかく、薄すぎない4重構造のガーゼでできています。本体部分だけでなく縁のテープの部分やブランドロゴまで、すべて綿100%なので、どこでも舐めたり嚙んだりしてしまう赤ちゃんにも安心。部屋に置いてみたくなるかわいい色合いやデザインもポイントです。

まず気に入ったのが、ずっと触っていたくなるようなふんわりさらさらの触り心地。リビングの真ん中に敷いていて、赤ちゃんと一緒にこの敷パッドの上にいる時間も長いのですが、大人もくせになってついつい触ってしまう気持ち良さです。赤ちゃんだけでなく、自分用にも欲しくなり始めています。

高い吸水力でいつもさらさら

使い始めて一番驚いたのは吸水力です。

赤ちゃんは寝ているときに、滝のように大量の汗をかきます。いつも起きたときには頭がびしょ濡れ。その度に「シーツが湿っている!洗わないと」という気持ちになっていました。(とはいっても、普段そんなに頻繁には洗えない…。)

このガーゼ敷パッドにしてからは、寝汗をかいた後も、気づいたときにはすぐに乾いているのが嬉しいポイント。暑い夏でもさらさら気持ちよく過ごせたのか、子どももぐっすり眠れている気がします。

4重構造の薄さが絶妙だそうで、洗濯しても早く乾くので、手入れもとってもしやすいです。できるだけ1日中敷いていたいので、早く乾くのはとても助かります。

また、ガーゼは夏にぴったりだと思っていましたが、「空気を取り込みやすく、保温性にも優れている」と聞いて、これからの寒くなる季節にも使うのが楽しみです。

洗うほどに肌になじんでいくようなガーゼケット。子どもが成長してベッドで寝れるようになったら、シングルベッドの敷パッドとしても、ずっと使い続けてほしいなと思っています。

赤ちゃん用にも、自分用にも。ちょっといいシーツや敷パッドをお探しの方は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか?

<掲載商品>
【WEB限定】BLANKED ガーゼ敷パッド

<関連特集>
さんち商店街「BLANKED」

編集担当:横山

【デザイナーに聞きました】人と人をつなげる、お茶の時間を彩る道具

お茶を愉しむ。

そこに必要なものはなんなのだろう。そもそも、お茶を愉しむってどんな状態なのだろう。

そんなところから改めて考えた末に誕生した、お茶の時間を彩る道具たち。

個性豊かな9種の湯呑に、自然素材の持ち手が目を引く土瓶。それぞれどんな思考や苦労、工夫を経て生まれたのか、担当デザイナーに話を聞きました。

商品開発の話し合い。その場をつないだのも“お茶”

「世の中にお茶の道具はたくさんあるわけで、そこに新しいアイテムを出す意味はなんなのか。私たちは何を伝えたいのか。どんな景色を作りたいのか。

そういった本質的な部分について、プロジェクトのメンバー間で話し合いを重ねてきました」

今回、湯呑を担当した奈部さんは、そう振り返ります。

湯呑を担当した奈部さん

工芸でお茶を愉しむ。そのこと以外は本当になにも決まっていない状態から、皆で考えを巡らせ続けた日々。

その話し合いの場をつないでくれたのも、お茶でした。

「打ち合わせで集まる度に必ずお茶を淹れて、皆で注ぎ合っていました。

たっぷりと淹れた番茶をウォーマーで温めながら、少なくなった人にはまた注いで。

時には自分たちで茶葉を煎ってみたり。

そんな風に過ごすうちに、作りたいのはまさにこの『お茶が人と人とをつないでくれている状態かもしれない』という所に行きついたんです」

時に2時間、3時間を超える長丁場の打ち合わせでも、お茶がその場にあることで、いつもよりおおらかな気持ちで、安心して過ごせている。その感覚に気付き、メンバーとも共感し合えたと言います。

打ち合わせの場には、中川政七商店の番茶を作ってくれている健一自然農園の伊川健一さんも参加。直接お茶の作り手の想いを聞けたこと、また実際の茶畑の風景や香りを体感したことも、今回の商品作りの大きなヒントになったのだそう。

健一自然農園の伊川健一さん

「健一さんの茶畑で実際にお茶作りを体験して、会話を交わして、お茶について一緒に考えました。

茶畑の風景、茶葉の香り、お茶作りの工程。そんな、お茶が私たちの暮らしに届く手前のさまざまな段階を体感して。作り手の想いに触れて。

お茶は『自然と人』、そして『人と人』が関わり合うことで生まれていることを知り、より一層、お茶を介して人と人が安らげる時間を作りたいという気持ちが強くなったんです」(奈部さん)

自然素材の持ち手が目を引く「萬古焼の直火土瓶」

お茶を愉しむといった時に、道具をスタイリッシュに洗練させていく方向性もあれば、お茶を美味しく味わうことに特化する方向性もあります。

今回はそのどちらでもなく、お茶を皆で飲みながら過ごす安らかな時間、それを助けてくれる道具を作ろう、ということが決まりました。

萬古焼の直火土瓶(藤蔓青織部)

「実際に心地よく過ごせた経験から、お茶の時間をできるだけ長く愉しみたいという想いがあって、土瓶はたっぷり大容量のものをデザインしました。

おおよそ1リットルほど入りますが、薄く成形していることもあって、見た目はさほど大きく感じません。

直火で使える耐熱仕様と、工芸的なゆらぎや表情を出す部分を両立させるため、試行錯誤を繰り返しました」

と、「萬古焼の直火土瓶」を担当したデザイナーの大久保さんは話します。

土瓶を担当した大久保さん

「耐熱性を持たせるためにペタライトという鉱石を原料に混ぜている関係で、そのままだと表情が少しマットで均一なものになってしまいます。ペタライトと釉薬の割合などを何度も調整して、光沢感や貫入の具合などが出るように仕上げました」

この土瓶で特に目を引くのが、自然素材を用いた持ち手の部分。白釉のものは籐(とう)、青織部は藤蔓(ふじつる)という植物でそれぞれ持ち手が作られています。

持ちやすさ、注ぎやすさ、本体とのバランスなどを考えて、持ち手の形状は決まっている

「今、こうした自然素材の持ち手を作れる方が国内にはほとんどいらっしゃらなくて、危機的な状態です。

籐(とう)の持ち手に関しては、技術が途絶えることを危惧して自ら学ばれて習得した出雲の作家さんがいらっしゃって、その方にご相談しました。

藤蔓についても、編める方がどんどん少なくなっています。今回は湯呑をお願いしている窯元の代表の方が『編めるよ』ということで、奇跡的にお願いすることができました。本当に偶然というか、湯呑など幅広く商品開発をしていたからこそ出会えたのかなと。

作り手の不足で諦めそうにもなりましたが、持ち手にこだわったおかげで、工芸の豊かさがうまく表現できたのかなと思っています」

白い釉薬の土瓶には、籐(とう)の持ち手がつけられた
同時に発売される「南部鉄器の土瓶ウォーマー」を使えば、あたためたお茶を適温で長く楽しめる。どの角度からもキャンドルの火が眺められる設計

9つの窯で焼かれた個性豊かな湯呑

奈部さんがデザインした湯呑は、9種類すべて質感も形状もサイズも異なる個性豊かなラインアップとなっています。

「おおらかな気持ちでお茶を愉しむ時間。その空気感を実現するために何が必要かと考えて、こうなりました。

通常、家でお茶を飲むセットみたいなものって、人数分の湯呑がお揃いになっていると思うんですが、それだと少しかしこまってしまうというか。

それよりも、形も色もばらばらな中から、それぞれ好きなものを選んでいただきたい。色んな素材感の、手で作られたものがたくさんある。そんな食卓も楽しいですよね」(奈部さん)

何度もサイズや形状を調整しつつ、9種類の湯呑をデザインしていった

今回、9つの湯呑はすべて別々の窯元で焼かれています。それぞれの個性が際立つ様々な技法を用いて作られました。

「それぞれの窯元さんに、大まかなサイズと形状をお伝えして、なるべくイメージが被らないように9種類の詳細を詰めていきました。

中でも『ころ湯呑』という少し小ぶりなものを多く揃えています。それは、お茶をてのひらで包み込むように味わってもらいたかったのと、一杯目二杯目と繰り返し注ぎながら味わう時間も楽しんでもらいたいからです。逆に、『ふくら湯呑』という大きめサイズのものはたっぷり入ります。

敢えてでこぼこした形状にしてみたり、釉薬の掛け方を工夫して変わった質感にしてみたり、遊び心のあるラインアップになっているので、お気に入りのものを選んでいただければ嬉しいです」

小ぶりなサイズの「ころ湯呑(瀬戸焼)」。手で包み込むように持った時、敢えてでこぼこした形状が面白い

お茶を注ぎ合う行為は信頼の証

実際に長い時間を過ごす中でたどり着いた、お茶がつないでくれる時間の愉しみ。そのおおらかで楽しい時間を味わうために、今回の商品たちは生まれました。

「飲み物を注ぎ合うって、心から安心していないとできないことなのかなと思っています。

なので、信頼を作る場所にお茶はぴったり。

家族や友人と集まった時、土瓶と湯呑でお茶会を開くと、きっと楽しいし、癖になる。ぜひ多くの方に試してみてもらいたいです」(奈部さん)

<関連する特集>

文:白石雄太