「熊野筆」の選び方をプロに習う。最初の1本にはチークブラシがおすすめ

化粧筆といえば熊野筆。1本は持ってみたい憧れの化粧道具のひとつです。

熊野は地名ですが、どこにあるかはみなさんご存知ですか?

正解は広島県。

人口24000人ほどのこの町には、約100社の熊野筆メーカーがあります。なぜそんなにたくさん?どうやって選んだらいいの?今回は熊野筆の秘密と魅力に迫ります。

熊野筆のルーツをさぐる旅。山あいの村が全国一の産地に

熊野筆 広島

熊野筆は広島県・熊野町で作られる筆の総称です。名乗るためには以下の条件をクリアしなければなりません。

①穂首を熊野で製造すること。
②使用する原毛は、獣毛、化繊毛、植物繊維、羽毛、胎毛等。
③製造は熊野町内。但し、外注先は周辺地域も可。
①~③の条件を満たす、書筆、日本画筆、洋画筆、化粧筆、刷毛。

<熊野筆セレクトショップ公式サイトより引用>

中でも100年以上継承された技術や原材料により熊野町内で製作した書筆、日本画筆は、国の「伝統的工芸品」に指定されています。

今では全国で生産されている書道用の毛筆、画筆、化粧筆いずれも、その8割以上が熊野町産。しかし、もともと筆づくりに適した土地だったかというと、どうやらそうでもないようです。

熊野町は四方を山に囲まれた盆地の小さな村。平地が少なく農業だけでは生活が厳しかったために、農閑期を利用して、古くから奈良方面へ出稼ぎに行っていたそうです。

奈良は古くから墨や筆づくりが盛んな地域。村の人は出稼ぎ先で得たお金で墨、筆を仕入れ、帰りながらそれを売り歩くことで生計を立てていたのだとか。

江戸末期には、本格的に他の地域で筆づくりを学んでくる人も現れ、村の産業に発展しました。

ただ、筆づくりの原材料がもともと豊富だったわけでも、土地の条件が筆づくりに適していたわけでもありません。

次第に他の産地が近代的な工業へ生業を移し替えていく中でも、山あいの熊野町には新しい産業が入らず、筆づくりが受け継がれました。そうして一途に継承されてきた技術が、今の日本一の筆産地を生み出したと言えそうです。

初めての熊野筆を選ぶ。化粧道具のプロのおすすめは?

今も24000人の住民のうちおよそ1割の2500人が筆作りに携わり、地域内には約100社もの熊野筆メーカーが軒を連ねます。とはいえ、そんなにたくさん種類があったら、選ぶのに迷ってしまいそう。では、熊野筆はどう選んだら良いのでしょう?

実は、熊野町が運営する熊野筆のセレクトショップ「筆の里工房」が全国に4店舗あります。うち3店舗は広島県内、1店舗は東京銀座です。

数十あるメーカーさんから、銀座店では7社の熊野筆が置かれています。今では通販でも買える熊野筆ですが、せっかくならはじめの1本は、化粧道具のプロから説明を受けておすすめを選びたいところ。

早速伺ってみると、フェイスブラシ、リップブラシ、チーク用、アイブロウ用と様々な化粧筆がずらり。熊野筆ではじめの1本を買うなら、まず何を買ったらよいのでしょう?

店員さん:
「筆の質の良さを体感しやすいチークブラシがおすすめです。柔らかくチークを入れたい人は、繊細なリスの毛を使ったブラシがいいですよ」

試しにと手の甲に筆を滑らせてもらうと、もうずっと触れていたくなるような柔らかな肌ざわりです。

 

はっきりと色をのせたい人や固形のチークを使う人は、より固い毛質の、山羊の毛のブラシがおすすめだそう。同じチークブラシでも用途によって使う毛の種類が違うのですね!

「そうですね、筆を選ぶポイントは今言った毛質の他に毛量・穂先の形・軸(手に持つ部分)のデザインがあります。筆の作り方もメーカーさんによって微妙に違うんですよ」

なるほど。まずはどんなお化粧をしたいかを考えて、最後はデザインも含めて、自分の好みで選ぶ。筆選びに迷った時は今回のように相談したら良いのですね。

せっかくなので熊野筆をもうひとつ、より手軽に普段のお化粧にも取り入れやすそうなものを見つけました。リップブラシ。

熊野筆 リップブラシ

これはほとんどのメーカーさんがイタチの毛を使うのだとか。持ち運びもしやすいですし、いつでも良い化粧道具を携帯していると思うと、気持ちも豊かになりそうです。

手作業にこだわる熊野筆。機械化できないそのワケとは

毛筆の選毛工程
毛筆の選毛工程

お店に伺って実感したのが、今更ながら多くの筆が動物の毛でできているということ。そして用途に応じてベストな毛質のもので作られているということでした。

例えばイタチの毛はコシが強く毛先がよくまとまるため、リップブラシのように細い線をくっきり出すのに向いています。対して、山羊の毛は材料の含みが良く耐久性もあるので、はっきり色をのせたいお化粧や固形の素材にも相性が良いそうです。

熊野筆を作る工程のほとんどは今も手作業。その理由は、生き物の毛の質を見分け、同じ質のものを集め、揃えて、油分や汚れを取り、束ねてひとつの筆先(穂先)にまとめ上げるという一連の工程が、機械ではできないため。

自分の髪に置き換えてみると分かりやすいですね。1人の人間でも、箇所や年齢によって生え方のクセや色も様々に異なります。それを異なる材料から選り抜いて1本の筆の穂先としてまとめ上げるまでを想像すると‥‥その手間隙たるや。

実は町では以前、毛筆で「動物の毛の油分を抜き取る工程」の機械化を研究したのですが、結果として「機械化は難しい」との結論に至ったそうです。

はじめて選んだ熊野筆。ずっと触っていたくなる触りごこちに気の遠くなるような工程を重ねて、大事に使おう、と思い致すのでした。

<取材協力>
筆の里工房
http://fude.or.jp/jp/


文:尾島可奈子
*こちらは、2017年1月5日の記事を再編集して公開しました

連載「キレイになるための七つ道具」

美しくありたい。クレオパトラや楊貴妃のエピソードが今に伝わるほど、いつの世も女性の関心を集めてやまない美容。

様々な道具のつまった化粧台は子供の頃の憧れでもありました。そんな女性の美を支えてきた化粧道具を七つ厳選。「キレイになるための七つ道具」としてその歴史や使い方などを紹介していきます。

夏に気持ちいいリネン素材は、実は編むのが難しい。履く人想いの靴下工場に聞く

暑い夏の日に、室内でも屋外でも、心地よく過ごせるアイテムと出会いました。

身体に熱が伝わりにくく、さらっとした肌触りが気持ちいい、リネン素材を使った靴下やアームカバーです。

夏におすすめ!リネン素材のアイテム

天然素材のリネンは、丈夫で吸水性に優れています。

通気性が高く、肌触りがよい。

アームカバーは、日よけとしても好まれています。

リネン素材のアームカバー
リネン素材のアームカバー

ですが、実はやわらかいコットンなどと違い、リネンは繊維が不規則で硬い亜麻の茎が原料の糸で、糸切れしやすく、細かく編み上げるのは難しい素材。

そんなリネン素材の靴下やアームカバーを得意とするのが、日本の風土や季節に合わせたアイテムを提案する株式会社ニット・ウィンです。

ニット・ウィンのオリジナルブランド「NISHIGUCHI KUTUSHITA」のリネンの靴下
ニット・ウィンのオリジナルブランド「NISHIGUCHI KUTUSHITA」のリネンの靴下

ニット・ウィンの工場は、靴下生産ナンバー1を誇る奈良県の主要産地として知られる大和高田市、香芝市、広陵町から少し南西に位置する、葛城市にあります。

創業は1950年。一台の手廻し編み機からはじまり、現在は130台の機械が稼働する靴下メーカーです。

創業時から変わることのない「履く人のことを考えた靴下づくり」を、三代目となる西口功人さんが受け継いでいます。

株式会社三代目。専務取締役の西口功人さん
株式会社三代目。専務取締役の西口功人さん

“はくひとおもい”の靴下づくり

ニット・ウィンが手掛ける「NISHIGUCHI KUTSUSHITA」のコンセプトは、誰に向けたものづくりかを具体的に考え、技術を追求していく「はくひとおもいの靴下づくり」です。

伝統の技術を生かし、流行でなく、履く人の心地よさを見据えて生み出される靴下は、国内のみならず海外にもファンがいるほどです。

培ってきた技術で現代のニーズに合わせた商品づくり

パリなど海外の展示会にも積極的に出展し、自らアピールも行っている西口さん。

展示会では、「この靴下をつくったのは君か!」と喜ばれたこともあったといいます。

そんな心地よさが評判となり、次第と海外からの問い合わせも増えているそう。

中には、友人が日本に行った際、お土産でもらった靴下がNISHIGUCHI KUTSUSHITAの靴下で、その履き心地の良さに感動して直接連絡をして追加購入をしたという人も。

「うちの靴下を履いて感動した、という生の声を直接聞けるのが嬉しいし、また社員にとっても大きな活力になっています」

履く人を感動させるほどの靴下。一体どんな風にものづくりが行われているのでしょうか。

「リネン素材は編むのが難しいです。でもそれができるのは、経験を持つ職人の技があるからです」と西口さん。

工場内には、量産向きの新しい機械だけでなく、40年以上使い続けている古い機械も現役で動いています。

「古い機械を職人がいじることで、アイテムごとに編み方を変えています。細かく編むことが難しいリネンは、こうした機械の微調整ができる、職人の腕が大切なんです」

機械を扱うベテランの靴下職人
機械を扱うベテランの靴下職人

50年近く勤めるベテランの職人もいれば、30代の若手も多い。

人も機械も新旧が交ざり合い、触発し合うことで、機能性とデザインを兼ね備えた“はくひとおもい”の靴下がつくり続けられています。

人の手で仕上げの工程まで
人の手で仕上げの工程まで

<取材協力>
株式会社ニット・ウィン
0745-48-4381

奈良県葛城市木戸195−7

https://knitwin.com

<企画展のお知らせ>

ニット・ウィンが手がける「NISHIGUCHI KUTSUSHITA」のアイテムが実際に手に取れる企画展を開催。

企画展「葛城の靴下とアームカバー」

日時:6月17日(水)〜7月14日(火)
開催場所:「大和路 暮らしの間」 (中川政七商店 近鉄百貨店奈良店内)

https://www.d-kintetsu.co.jp/store/nara/yamatoji/shop/index02.html

大和路

*企画展の開催場所「大和路 暮らしの間」について

中川政七商店 近鉄百貨店奈良店内にある「大和路 暮らしの間」では、奈良らしい商品を取り揃え、月替わりの企画展で注目のアイテムを紹介しています。

伝統を守り伝えながら、作り手が積み重ねる時代時代の「新しい挑戦」。

ものづくりの背景を知ると、作り手の想いや、ハッとする気づきに出会う瞬間があります。

「大和路 暮らしの間」では、長い歴史と豊かな自然が共存する奈良で、そんな伝統と挑戦の間に生まれた暮らしに寄り添う品々を、作り手の想いとともにお届けします。

この連載では、企画展に合わせて毎月ひとつ、奈良生まれの暮らしのアイテムをお届け。

文:川口尚子、徳永祐巳子
写真:北尾篤司

わたしの一皿 夏の南蛮。沖縄の南蛮。

夏は南蛮だ。バテ気味の夏には酢の効いた南蛮漬けがたまらない。

そりゃごもっともだ、と同意してくれる方も多いんじゃないかと思うけど今日はその南蛮の話ではない。さて、みんげい おくむらの奥村です。

みんげいおくむらの奥村さんが使う食材、アスパラガス

北海道に行った写真家の友人からその日の朝に採ったというアスパラガスをもらった。すぐに焼いて味見をしたのだけど、ふだん買うものよりも柔らかで、皮が弾けそうなぐらいの水分に、おったまげた。

聞けば採ったその日なら生でかじってもよいそうな。なんともぜいたくなことですね。

せっかく旅をしてきたアスパラガス。ここならではの料理にしてあげたい。

僕が住む千葉は、九十九里のハマグリがちょうどシーズン。大きなものはシンプルに網で焼いてもおいしいし、あさり大の小さなものはパスタなんかに使いやすい。小さくても旨味がギュッと詰まっているのが九十九里のハマグリ。

みんげいおくむらの奥村さんが使う食材、ハマグリを洗うシーン

ハマグリは軽く砂抜きしたら、貝どうしをこすり合わせて洗う。つるっつるで丸々としたハマグリはとてもかわいらしい。

素材がよいので、つい素材の話に熱が入った。南蛮の話に戻ろう。

今日はうつわが南蛮なのです。南蛮のうつわと言ってもベトナムや中国のものではない。沖縄の南蛮。

南蛮焼は、焼き締めとも言われる釉薬を掛けないうつわのこと。沖縄では酒甕や日常の壷、そして食器が古くから作られてきた。

土の個性や、窯で焼かれた火の風合いがグンと伝わってくるのが南蛮のうつわのおもしろさ。

沖縄本島で南蛮を作っている古村其飯(こむらきはん)さんのうつわを今日は使う。言うまでもないが、古村さんのうつわは沖縄の地元の土からできている。

みんげいおくむらの奥村さんが作る料理

さてと、洗ったハマグリを酒蒸しにする。ハマグリを加熱して、アスパラも入れて、貝が開いたら酒をどばっと。

アスパラは自分から旨味も出すし、ハマグリの海のエキスも吸い込むのでたまらない。

今日はさらに旨味を吸わせるため玄米ならぬ玄麦を入れた。もちろんパスタでもいいんですが。ハマグリから塩気がでるので味付けは最低限の塩だけにとどめること。

みんげいおくむらの奥村さんが作る料理、沖縄の南蛮に盛り付け

出来上がったら汁も残りなくたっぷりと、南蛮の鉢に盛り付ける。

沖縄で作られたうつわだけど、パッと見で沖縄っぽい、という感じがない。それがかえって料理を選ばないからうれしい。

さらに単純に言えば、このうつわは土そのものだから大地のように全ての色を受け止める。合わない料理を考える方が難しい。

このうつわは、土だけで出来ているのに色の変化もあって、素朴なのに品がある。

素朴なのに品があるって、理想的じゃないですか。人間もいっしょ。そんな風になりたいと思うけど、ほど遠い。つくづく残念なことです。

ハマグリをあらかた食べたら、うまみたっぷりの汁を飲もう。南蛮に口をつけて。まだ少しザラっとした土の感触が口にあたる。食事はつくづく、五感で楽しむものなんだな。

土そのものなので、南蛮のうつわは使い始めがザラザラ、ゴツゴツとした風合いがある。今日のものもまだ使い始めなのでそんな感じ。

うつわを洗う際、スポンジで洗うとスポンジが負けてボロボロになってしまう。ではどうするかというと、たわし。たわしでゴシゴシ。

これがおもしろくて、そんな風に手入れしていくと、表面がどんどんツルツルになっていきうつわの風合いが変わっていくのだ。見た目ももちろんだけど、さわった感じまで育つうつわ。そんなのもおもしろいじゃないですか。

奥村 忍 おくむら しのぶ
世界中の民藝や手仕事の器やガラス、生活道具などのwebショップ
「みんげい おくむら」店主。月の2/3は産地へ出向き、作り手と向き合い、
選んだものを取り扱う。どこにでも行き、なんでも食べる。
お酒と音楽と本が大好物。

みんげい おくむら
http://www.mingei-okumura.com

文・写真:奥村 忍

*こちらは、2018年6月25日の記事を再編集して公開しました

6月の和菓子、雨に咲く紫陽花のしずく

古都奈良で絶品のお菓子を提供する「萬御菓子誂處 樫舎(かしや)」。

こちらでは、ご主人の喜多さんがつくりあげるお菓子を目の前のカウンター席でいただくことができます。季節や気候に合わせて、食べごろの素材を使ったさまざまな食感の和菓子。その和菓子にのせられた歳時記をお届けします。
今回は、おまかせ和菓子コースをひととおりご紹介したいと思います。

6月、梅雨入り。しっとりと潤いのあるこの日。
まずは、奈良の鹿をかたどった阿波和三盆糖のお干菓子に、大和茶の水出しお番茶が添えられます。きゅっと冷たいお番茶をいただくと、梅雨の湿気にぼやけていた気持ちがすっきり。カウンター越しの喜多さんがこれからつくってくださる和菓子に期待がふくらみ、背筋が自然とすっと伸びます。

お干菓子は、黒柿軽物台の上に

「緊張はいりませんよ、あぐらをかいて召し上がっていただくのが目標ですから」と、喜多さん。

和菓子屋の敷居を高くしたくはない、気楽に楽しんでもらいたい。という言葉にほっと心がほどけつつ、お干菓子も口の中でほろりとほどけます。

つづいては、この季節にぴったりの「紫陽花きんとん」を。材料は備中の白小豆と、青森陸奥のつくね芋。つくね芋は2年半以上も寝かせたものを使います。ねばりやアクがぬけ、和菓子に最適の状態になっているのだそうです。
馬毛の荒目網に美しい色層が見える生地をのせ、木しゃもじを使って落とします。喜多さんの無駄のない所作。ついつい見とれてしまいます。

馬毛の荒目網を使うと、きれいに生地がひろがり空気を含んで落ちるのだそう

きんとんの中餡をよく見ると茶色いおこげがちらり。赤い炎でつくられた証拠だそう。こんな様子が見られるのもカウンター席ならでは

岐阜・山岡産の糸寒天でつくったきらきら光る雨の滴を添えて。本堅地蝋色塗奈良漆器、薬師寺古典型写しの椿皿にのせられます

「材料は極力練らない、触らない。材料に手数を加えるほど、穢(けが)れていくという考えです。天地が育てた良い材料をいただいて、その材料に頼る。菓子職人は食感をつくるだけですよ」と、喜多さん。

わらび餅も同じく、鹿児島の本わらび粉とお砂糖だけというシンプルな材料で、材料そのものの力を落とさないように食感をつくっていきます。

うつくしく敷き詰めたきな粉の上に生地を落とします

餡を包み込むのも、できるだけ手数を少なく

仕上げに、さらさらときな粉を振りかけて

鏡面のように光る春日盆写し(銘々皿)に、わらび餅を

こちらには、ケニアのスペシャリティ珈琲が添えられます。

一般的な珈琲は紙や布のフィルターで雑味をとりますが、この珈琲はよい油分を含み、その雑味ですら美味しいもの。そのため、その美味しさをすべて通すために純金で編まれたゴールドフィルターで珈琲が淹れられます。珈琲カップは奈良の伝統工芸赤膚焼の大塩正人窯のものでした。

目の前で繰り広げられる和菓子づくりは、まさに生ライブのよう。喜多さんのお話は、菓子の材料のこと、道具のこと、うつわのことなど様々で、お話に引き込まれているうちに時間が経つのも忘れてしまいます。

芳ばしい香りがしてきました。最後はもなかをいただきます。

つやつやとした小豆は丹波大納言

目の前で餡を詰めてくれる

もなかは手渡しで。今この瞬間が、いちばん美味しくいただけるタイミング。
ほんのりあたたかく、パリパリのもなか皮にしっとり優しい餡、ほおばると思わず笑みがこぼれます。

鯛もなかは、黒柿(縞柿)の木でつくられた御料台(正倉院御物写し)にのせて

ふわっと、また別の芳ばしさが立ち込めてきました。焙じ茶です。焙じたてを1煎、2煎。味の違いを楽しんで。

左から1煎、2煎

喜多さん曰く、いい材料さえ分けていただけたら、菓子職人は自分の仕事にこだわりを持たないことだとおっしゃいます。つまり、材料に余計な手を加えないということ。

「農家の方々は、春に植えて秋に収穫します。つまり、1年に1度しか作品づくりができない。

おおよそ20歳から70歳まで働くとしたら、一生のうちに50回しか作品がつくれないんですね。

1回の作品づくりの重みが僕ら菓子職人とは違う。大地が育んだ授かりもの、賜りものには力が溢れているから、その力をできるだけそのままの状態でお菓子にしたいんです。

農業は、はじめの25年は両親に教わり、あとの25年は子どもたちに教えていくといいます。

これは弥生時代からずっと続けてきた日本の伝統。自然に寄り添ってつくるからこそ、採れたものは自然の命を預かっている。よく、材料を生かすといいますが、本当は材料に生かされているということです」。

樫舎さんの和菓子を味わうことは、自然を味わい、伝統にふれること。
つぎは、どんなお菓子に出会えるでしょうか。

この日のおしながき

・大和茶 水出しお番茶
・阿波和三盆糖 干菓子
・紫陽花きんとん
・御抹茶
・蕨餅
・ケニア産 珈琲
・鯛もなか
・焙じ茶 二煎

<取材協力>
萬御菓子誂處 樫舎
奈良市中院町22-3
0742-22-8899
http://www.kasiya.jp/index.html

◇カウンター席コース
上生菓子2種
半生菓子
干菓子
飲みもの4種
2,000円(税別)・要予約

※変更の可能性があるため事前に問い合わせください。

文・写真:杉浦葉子

*こちらは、2017年6月25日の記事を再編集して公開しました

わたしの好きなもの「ナデルと作った夏用のオーガニックコットンガーゼマスク」


マスクは使い捨て派だった私。

「布マスクは毎日洗わなくちゃいけなくて、お手入れが面倒。使い捨てマスクの方が、手間もなく衛生的じゃない?」
と思っていました。

しかし、このコロナ禍で一日中マスクを着けている生活が続くと、使い捨てマスクは想像以上に肌の負担になっていると気づきました。
マスクと肌が触れる部分が、化学繊維によるかぶれや乾燥でいつのまにかカサカサ、ボロボロの状態になっていたのです。

そんなおり、オーガニックコットンブランド「NADELL」と「中川政七商店」とのコラボによる布マスクが発売されました。


正直なところ、「布マスクに2,860円はちょっと高いなぁ」と思いつつも、すでに肌の状態には限界を感じていたので、“肌当たりの優しさにとことんこだわった”という品質を信じて購入してみました。
 
結果は想像以上に快適!
 
頬の痒みはすぐにおさまり、乾燥によるカサカサも治りました。
 
また、顔の形に添ったデザインのおかげで適度なフィット感が出せて、心なしか小顔に見える‥‥という予想外の効果も。
 
小顔効果はなしにしても、フィット感があるため使い捨てマスクと比べると呼吸もしやすく、耳の後ろも痛くならないので長時間使っていても快適そのものです。
 
これは「使い捨てマスクじゃあ得られない効果だよなぁ‥‥」と実感。
 


気になっていたお手入れも、実際にやってみると「あれ?この程度の手間なの?」と思いました。
 
夜、帰宅した際、手洗いとうがいのついでに洗面所でマスクを洗います。中性洗剤を少量付けて揉み込んだら、ぬるま湯で洗い流すだけ。水気を絞り、パンパンと叩いてそのまま干しておくと、シワにもならず翌朝にはきれいに乾いています。
 
「次の日に使えるの?本当に乾くの?」と半信半疑でしたが、さすがオーガニックコットン、スッキリ乾きました。
 
案外、こうやって洗う時間もいとおしくなってくるから不思議ですね。
 
気になっていたマスクの内側につくファンデーション汚れも、ぬるま湯と中性洗剤だけで簡単に取れます。
 
そんなこんなで布マスク生活に慣れてきて、「もう1枚買い足そうかなぁ」と思っていたところに、今度は「夏用マスク発売」という嬉しいお知らせが。
 
もちろん気になります。
 
“真夏に気持ちよく身に着けられるマスク”とのこと。今使っている布マスクと何が違うんだろう。
 
そんな折、企画担当から使い比べてみてほしい、と、ひとあし早く商品をお試しする機会をいただきました。
 
着けくらべてみてフムフムとなったのは、その軽さと呼吸のしやすさでした。
 
通常の「NADELL×中川政七商店」の布マスクも、とても軽い。でも「夏用マスク」はガーゼ素材になったことでさらに軽く、蒸れが軽減されるせいか呼吸もしやすいです。




あて布が別でついていて、汗や汚れが気になったらサッと交換できるのも嬉しいポイント。また、洗ったあとはなんと1時間程度で乾いてしまいます。

これまでの生活なら、そこまで気にすることもなかった「マスクの暑さ」。でも、一日中マスクを着けるようになるとさすがにそうも言っていられません。

この「夏用マスク」はその「暑さ」も「衛生面」も、両方とも解決してくれるマスクです。
こうなってみるともう「使い捨て」には戻れません。

エコの意識‥‥というより純粋に「こっちのほうがいいから」という理由で私はこのマスクを使いつづけることになりそうです。


編集担当 北村

【わたしの好きなもの】雪音晒の寝具


睡眠への飽くなき欲求


眠ることが大好きな私。
 
お部屋の中でいちばん好きなエリアはどこか?と問われれば、即「ベッドの上!」と答えます。(笑)
なので、いかに睡眠の時間を良きものにするか?は永遠のテーマでもあるんです。
 
そんな私のことを知ってか知らずか、新商品「雪音晒の寝具カバーシリーズ」を試す機会をいただきました。実はこの商品、以前にお披露目会で説明を聞き、実物を見た時からずっと気になっていたもの。
 

普段の自分はあまり選ばない「白」の寝具。ですが、やはり“晒”といえば白ですよねぇ。なんだか気が引き締まる思いで使用開始。

使ってみた第一印象は、「柔らかいなぁ」でした。
 
晒というとなんだかキリッパリッとした印象が強いのですが、ガーゼ生地を使っている今回の商品は、見た目にも優しい風合いで肌に触れると柔らかく、軽い!!


不純物を99%除去し、究極の晒手法とも呼ばれる「雪音晒」を使用しているため、キュッキュというなんとも不思議な感触があります。この、まるでパウダースノーを踏みしめたような感触が、「雪音晒」という名前の由来なんだそう。
 
「ガーゼ生地で柔らかいのにキュッキュ??」
 
口ではうまく表現できないのですが、でもキュッキュとさせたくなる、やっぱりなんだか不思議な感触。気づくと足でキュッキュさせようとしている自分がいます。(笑)
 
使用を始めたのがちょうど季節の変わり目で、就寝中に沢山汗をかくこともあったのですが、吸水速乾に優れる晒なので、サラサラが続きます。これは嬉しい。
 


さらに、寝具のような大物はお洗濯が大変なイメージですが、ガーゼ生地ということもあり、軽くて洗った後の乾きも早い!!
時間もかからずとっても楽ちん。大物を干さなければ‥‥というネガティブ感も無くなります。
 
洗いを重ねても、「なんだか生地が薄くなったなぁ‥‥」とか、「ほつれてきちゃったなぁ‥‥」とか「色が‥‥風合いが‥‥」といったことがないので心置きなくじゃーぶじゃぶ洗えます。軽いので、物干し竿へもなんのその。
 
使い勝手の良さにヘビロテ真っ最中です。


綺麗になった寝具にまた身を委ね不思議な触感に癒される。気づけばふんわりと包まれながら熟睡をしている。目覚めると晒が朝陽に映えてなんだかとてもいい。さぁ、これから1日が始まるぞ。そんな雰囲気がとっても好きです。
 

 
中川政七商店GINZASIX店 佐藤


<掲載商品>
雪音晒の枕カバー
雪音晒のボックスシーツ シングル
雪音晒の掛けふとんカバー シングル