【はたらくをはなそう】デジタル推進課 小林亮介

小林亮介
デジタル推進課

新卒で大手SIerに入社し、金融機関向けのシステム開発に従事した後、ベンチャー企業に転職して小売業向けのシステム開発を担当。その後小売企業に転職し、内製によるシステム開発に従事し、2017年11月に中川政七商店に入社。
内製化による社内システムの刷新やECサイト・ホームページのリニューアル、店舗レジの入れ替え、会員ポイント制度の導入、SaaS導入によるバックオフィス業務の改善、茶論やアナザー・ジャパンなどの新規事業のシステム支援などを行なっている。



システムエンジニアという、一見すると中川政七商店とは関係なさそうな仕事をしています。

一般的に事業会社のシステムは、SIer(エスアイヤー)と呼ばれる、システム開発を請け負う企業に依頼することが多いのですが、近年では事業会社がエンジニアを採用し、内製によるシステム開発を行うことが増えてきました。中川政七商店も内製によるシステム開発を行なっており、私が所属するデジタル推進課が担当しています。

新卒から約15年間システム開発を経験し、「企業の業務改善に貢献できるようになったな」と実感を持てるようになっていました。今後のキャリアを考えた際、エンジニアなら「技術を極めたい!」とか「大規模なシステムを開発したい!」と考えるのが一般的だと思いますが、私は「何か社会のために意味のあることをしたいな」と考えるように。

そんなタイミングで縁があって中川政七商店を知り、「日本の工芸を元気にする!」というビジョンに共感を持ったのです。

中小工芸メーカーからすると、会社のシステム開発やIT化は、「難しいし、コストも高そうだな」といった印象なのだと思います。ですが、実際は技術の進化によりコスト的にも技術的にもハードルは下がっており、また世の中に便利なサービスも増えており、中小企業こそ導入するメリットがあります。そういった側面から、エンジニアの立場でも日本の工芸に貢献できると考え、入社したいと思いました。

とは言え、入社当時は中川政七商店自身がシステムに課題を抱えており、まずは中川政七商店のシステムをレベルアップさせる必要がありました。そのため入社以来、既存のシステムの課題やシステム化できずに苦労している点を、各部署と検討してシステム開発する仕事を続けています。

各部署の方と話すときは、

・システムやIT関係の専門用語は使わない
・各部署の業務視点から考える

といったことを意識しています。

知らない分野の専門用語が出てくると相手は身構えてしまうもの。だからこそ、身近なものに置き換えながら話すことを心がけています。

また、「システムの機能はこうだから、業務はこうしましょう」のようにシステム視点から考えてしまうと、各部署が本当に困っていること、やりたいことに辿り着かなくなってしまいます。

そのため何かを検討する時は、まずはシステムのことに触れず業務のあるべき姿を一緒に考え、そのうえでシステムとして手助けできる部分を検討するようにしています。システムはあくまで手段なので、目的(業務のあるべき姿)が達成できれば、必ずしも最新技術であったり高機能であったりする必要はないのです。

そうして取り組んでいくうちに、「私の仕事はシステムを開発することではなく、そのシステムを使ってしっかり業務が成り立つようにすることだな」という意識になりました。

先日も店舗で棚卸(期末に店舗の商品の数を全て数える業務)をするシステムを開発したのですが、仕様通りにシステムが動いたことではなく、無事に全店舗の棚卸が完了できたことに喜びを感じました。

エンジニアという立場ではありますが、各部署の課題解決に当事者意識を持って臨んでいくことができ、会社の業務が良くなっていくことを実感できるところに、仕事の楽しさがあります。


<愛用している商品>

かや織バスマット Mサイズ
サイズもちょうど良く、吸水性、速乾性が良いバスマットを探していたので重宝しています

HASAMI ブロックマグビッグ
質感がいいのもあるのですが、重厚感もあり所有欲を満たしてくれます

かや織ケット 鹿
小さい赤ちゃんがいるので、柔らかい肌触りで気に入っています



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。

「大事な本を、次の誰かの大事な本へ」。本の健やかな循環を生む、VALUE BOOKSの古本買取・販売サービス

読み終えた本や、迎えたけれど読み切れなかった本。「手放すのはもったいないな」と何となく手元に残しておくものの、再び頁を開く機会が訪れるかはわからない。皆さんにもそんな本ってありませんか。

仕事で抱えた悩みに寄り添ってくれた新書、痛快な書き口に励まされたエッセイ、美味しいご飯を求めて迎えたレシピ本。いつかどこかでまた自分に必要となる気がして、繋がる時を待っている本が私自身も自宅にたくさんあります。

けれどそんな思いとは裏腹に、手狭になっていく我が家の本棚。まだまだ大切にしたい気持ちはあるものの、現実的にそうも言ってられないなか、中川政七商店としておすすめしたいのがVALUE BOOKSのサービスです。

長野県上田市を拠点としながら、インターネットを主な場として古本の買取販売を行うVALUE BOOKS。「大切な本を、その気持ちのまま次の誰かに繋げてくれる」と信頼が厚く、中川政七商店の社内にもファンが多くいます。

今回はそんな社員の一人で、普段からVALUE BOOKSのサービスを利用している安田に、同社サービスの魅力を聞いてみました。

<ご案内>
VALUE BOOKSの17周年を記念したキャンペーンが実施中。読み終えた本をVALUE BOOKSへ送ると、買取金額に応じて中川政七商店 他、さまざまなブランドがセレクトした本とのひとときを彩る素敵なギフトがもらえます。ぜひこの機会にご利用ください。
開催期間:2024年7月6日(土)~7月31日(水)
詳細はこちら:https://www.nakagawa-masashichi.jp/staffblog/blog/b1170/




コロナ禍を経て、読書が日課に

普段は中川政七商店で、商品の販売促進企画を担当する安田。自宅の本棚にはエッセイから写真集、ビジネス書など、ジャンルを限らず多種多様な本が並びます。

「コロナ禍に入り自宅で過ごす時間が多くなり、手持ち無沙汰になったことで本を読む時間が増えました。それまでもビジネス書のような仕事に関係ある本は読んでいたのですが、小説とか哲学書、あとは旅に行けなくなったから旅行気分になれる本もよく読むようになりましたね。コロナが落ち着いてからも読書の習慣がついて、夜寝る前や週末の午前中などを読書時間にあてています」

寝室の大きな本棚の他、いくつか本を収納するコーナーを設けた安田の部屋。自宅の真ん中に置かれたソファを読書の定位置に、その時々で気になるテーマを手に取り、何冊かを併読しながら本との時間を楽しんでいるといいます。

「例えば『今日は哲学的なテーマに触れたいな』とか。

コロナ禍を機に『幸せに生きるってどういうことだろう』と思うようになって、それで哲学的な思想を再編集しているような本を手に取るようになりました。お気に入りの『マチネの終わりに』も、哲学的なメッセージを小説で伝えている本ですね」

「でも購入する本は特定のジャンルに限ってるわけではなくて。気になったらすぐ買ってしまうタイプなので、一か月に10冊以上は家に迎えます。全部すぐに読めているかと言われたら、そうではないんですけど(笑)。

最近読んだのは高山なおみさんの『自炊。何にしようか』。これはまさにVALUE BOOKSさんで買いました。高山さんの暮らしを特集しているテレビ番組を見て、すごく自然体で素敵な方だなと思って。それで、本も読んでみたいなと思い(この本を)VALUE BOOKSさんで探して買ったんです」

「今は奈良に住んでいるのですが、興味のあるテーマを置いている本屋さんが生活動線になかなかないので、本はネット通販で買うことが多いですね。新品かどうかには全然こだわりがなくて、古本屋さんもたくさん活用してます」

月に10冊以上購入するという安田家には、本棚に収まりきらない本も多数。こまめに本棚のラインアップを見直すようにしつつ、どうしても入りきらなくなった際に利用するのが、VALUE BOOKSの古本買取サービスです。

「メインの本棚はちょこちょこ内容を見直していて、半年に一度ほどのペースで大きく中身を変えています。でも本って、その本を買った時に持っていた気持ちとか、手に取ったときに居た状況と共にあるじゃないですか。だからなかなか捨てづらかったり、読まないのにずっと家にあるっていう本もあるんです」

「VALUE BOOKSさんのサービスを知るまでは、本棚から溢れた本は段ボールにまとめておいて、引っ越しのタイミングで捨てていました。ただやっぱりもったいないなと思ってて。古本屋さんに持ちこむこともありましたが、持参するのも大変だし、なかなかいい方法が見つかりませんでした。

VALUE BOOKSさんのことは、中川政七商店に入社して仕事でお付き合いを始めてから知ったんですけど、今ではすっかりファンになって、かなりの頻度で利用しています」

自宅の“積読”コーナー

「本が丁寧に扱われているところが好き」。VALUE BOOKSの古本買取・販売サービスの魅力

「利用を始めて3年ほどですが、何十冊もの買取依頼を既に5回ほどしています。買うときも、欲しい本があったらまずは『VALUE BOOKSにあるかな?』って調べますね」

数年前に利用を始めてから、今では売るのも買うのもVALUE BOOKSが多いと話す安田。同社のサービスの端々に、読み手への気遣いや本への愛を感じるのが信頼につながっていると続けます。

「VALUE BOOKSさんのサービスって、利用者のことをよく考えて設計されてるんですよ。例えば買取サービスでは結構な量を売りに出すので、自宅に集荷に来てくれて、宅配で出せることもラクで利用しやすい点の一つです。

査定していただいた後にずらりと書籍名と価格がリストになったメールが来るのですが、それを見るのも楽しくて。自分が予想した金額とあっていたり、予想よりも高く買い取っていただいたり、そうやって本の市場動向を見るのも楽しみですね(笑)。

ちなみに、古本屋というとあまり高値がつかないイメージですが、VALUE BOOKSさんは買取価格が高いことも結構あるんです。大事にしていた本に高値がつくと、利用者としてはやっぱり嬉しいですよね。

自分がこれまでに利用してきた古本買取サービスと比べても、高額買取だなと感じることが多くて、そこにも、企業側の本への愛情を感じます」

買取は簡単4ステップ(画像提供:VALUE BOOKS)
買取対象の本は、段ボールに詰めて自宅から発送できる
スマホから手続き可能。発送から数日で査定金額を書いたメールが届き、金額に納得出来たらそのまま買取へ。もちろんキャンセルも可能

「あとは『ソクフリ』という、査定したらすぐに振り込んでくれるサービスが選択できるところも便利です。査定金額に納得してから買い取ってもらうこともできますが、忙しいなかではやり取りの数が少なく、スムーズに買い取りに出せることもすごく大事。なので、ソクフリを利用することも多いです」

一方でVALUE BOOKSから本を購入する理由は「丁寧さですね」とのこと。

「送られてきた本の状態がすごく良いんですよ。古本なので最初はあまり期待してなかったのですが、新品の半額くらいで買った本も、状態がきれいなばかりかすごく丁寧に梱包してあるんです。それがいいなって。

本への愛を持って届けておられるんだなって感じますし、『届いたら表紙が破れていた』なんてこともないので安心して利用できます。だから『今日や明日に届かなくても、丁寧に扱ってくれるところを選びたいな』と思うんです」

自分の大切な本を、誰かの大切な本へ

「本当は古本屋さんの見逃しかもしれないんですけど(笑)、古本ってたまに、本の中に前の方が引いた線があったり、メモ書きが残ってたりするじゃないですか。でも、実はそこが好きで。『この人はここが気になったんだな』って、誰かの気配を感じて温かい気持ちになる。そんなところにも古本の良さを感じます。

捨てるに捨てられなかった本が、丁寧に扱ってくれる古本屋さんを媒介に、また誰かに伝わっていく。そうやって本の健やかな循環が生まれるなら、安心して次の方に手渡せるなって思うんです」

“本が循環する社会”をつくることで、生活する人たちの”うれしくなる” 連鎖が広がり、社会をよりよくできれば。そんな風に考えて、本の価値をシェアすることで社会をよくする力を引き出したいと、本気で臨むVALUE BOOKS。

自分の大切にしていた本が、誰かの大切な本になる。そんな機会を、ぜひ皆さんもご利用ください。

<ご案内>
VALUE BOOKSの17周年を記念したキャンペーンが実施中。読み終えた本を送ると、買取金額に応じて中川政七商店 他、さまざまなブランドがセレクトした本とのひとときを彩る、素敵なギフトがもらえます。ぜひこの機会にご利用ください。
開催期間:2024年7月6日(土)~7月31日(水)
詳細はこちら:https://www.nakagawa-masashichi.jp/staffblog/blog/b1170/

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「本って、いいよね。」を増やしたい。本をめぐる環境を整えるため、悩み続けるバリューブックス

文:谷尻純子
写真:奥山晴日

【あの人が買ったメイドインニッポン】#42 クリエイティブユニットTENT×中川政七商店が“一緒に作るもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

引き続きゲストは、クリエイティブユニットTENTの治田将之さんと青木亮作さん。今回は、TENTと中川政七商店が「一緒に作るメイドインニッポン」についての開発秘話をお届けします。

それでは早速、聴いてみましょう。

ラヂオは7つのプラットフォームで配信しています。
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シラキ工芸 「TORCHIN」の開発秘話

今回は、中川政七商店との工芸再生支援とTENTのデザインによって生まれた「TORCHIN(トーチン)」の開発秘話を語りました。

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やわらかな光で暮らしを灯す。手漉き和紙のポータブル照明「TORCHIN」をスタッフ宅で使ってみたら

<関連商品>
シラキ工芸 TORCHIN CIRCLE
シラキ工芸 TORCHIN VERTICAL
シラキ工芸 TORCHIN OVAL
シラキ工芸 TORCHIN BELL
シラキ工芸 TORCHIN SQUARE


ゲストプロフィール

治田将之

クリエイティブユニットTENTのプロダクトデザイナー
デザイン事務所、生活雑貨メーカー勤務を経て、フリーランスとして家電機器、インテリア用品を中心にプロダクト、パッケージ、カタログまで多岐にわたるデザインを手がける。


青木 亮作

クリエイティブユニットTENTのプロダクトデザイナー
オリンパスイメージング株式会社、ソニー株式会社にて録音機器やカメラ、PCおよび周辺機器のプロダクトデザインをはじめ商品戦略や企画を行う。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回も引き続き、クリエイティブユニットTENTの治田将之さんと青木亮作さんにお話を聞いていきます。7/12(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら

やわらかな光で暮らしを灯す。手漉き和紙のポータブル照明「TORCHIN」をスタッフ宅で使ってみたら

果実シロップを漬けてみたり、わざわざキャンプに赴いたり、手入れに手間のかかる昔ながらの道具ばかりをつい手に取ったり。便利で機能的なものや日々の刺激に心を躍らせる一方で、自分を鎮める時間を持つのも、大人になって上手くなった気がします。

大きな音や強い光にあふれる私たちの毎日。

そこから少し距離をとり、私たちの心をゆるやかにほぐす、やさしい灯りをたたえた照明器具がこの夏デビューしました。

手がけたのは長い年月、ご先祖様の道しるべとなる盆提灯を作ってきた、福岡のシラキ工芸。「TORCHIN(トーチン)」と名付けられたこちらの照明は、伝統工芸・八女提灯の確かな技術を用い、手漉きの和紙を通した灯りを今の暮らしにあう形でお届けする、新しい提灯の形です。

昔も今も、心静まるやすらぎを与えてくれる和紙の灯り。現代の暮らしに取り入れたらどうなるんだろうと、スタッフ2名が自宅で早速使ってみました。

白を基調とした、洋風インテリアの森田家で灯す

奈良市から少し離れた、のどかな景色が広がる場所に暮らす森田。家族の他、共に暮らす猫や犬、鳥も加わり、日中はにぎやかな時間を過ごします。

白を基調とした空間には、シンプルながらぬくもりのある木製家具や、キャッチーな色合いに目を引かれる子どもの遊び道具、また庭から摘んできた草花などを配置。吹き抜けにして高めにとった天井や、たくさんの窓から入る光が気持ちよく、明るく朗らかで清々しい雰囲気の空間です。

明るい昼間はインテリアとして

「夫婦でインテリアの趣味が合うので、この家を作る時も大きな衝突なく進められました。妻がリードしてくれながら全体の雰囲気を決めて、夫婦で選んだ家具をベースに、子どもが描いた絵やお互いの好きな雑貨などもところどころに飾っています。キッチンカウンターの漆喰やリビングドアのペンキを塗るなど、DIYも取り入れながら理想の家に近づけていきました」

「TORCHINはリビングで夕方頃、ちょっと暗くなってきたら灯しています。和紙の照明器具を使用するのは初めてだったので、迎える前は『結構暗いのかな?』と思ってたんですけど、しっかり明るくなるので驚きました。他にもポータブル照明は持っているのですが、それと比べると光がやさしいところがいいですね。和紙ならではのやわらかい明かりが落ち着きます。

それと、すっきりした佇まいなので、洋風のインテリアにも馴染んで使いやすいです。TORCHINの持ち手が木であるところも、暮らしの雰囲気に合いやすいなと感じました」

「子どもは『きのこ!』って言って喜んでて(笑)。シンプルなつくりでスイッチも押しやすいので、気にいったみたいです」

夜は暗闇のなかのやわらかい灯りに

「夜は寝室に移動させて、寝る前の時間にも点けています。片手でひょいっと運べるので、家中どこでも気軽に持ち運べますね。娘に絵本を読み聞かせる時間にベッドサイドへ置いていたのですが、やさしい灯りで安心するので、絵本を読みながら少しずつ眠りにつけていました。睡眠の質を上げるために、寝る前に部屋を薄暗くする間接照明として重宝しています」

「あとは、やんわりと明かりをつけておけば夜間の常夜灯としても使えるなと。夜中に目が覚めて水を飲みにいく時に、部屋をやさしく照らすのにもちょうどいいです。部屋のメイン照明をつけると刺激が強いし、スマートフォンの灯りも明るすぎるので、これまでは意外といい具合の明るさってなかったなと」

「子どもに少しでもいい未来を残したいから、エシカルな生活とまではいかないんですけど、普段から環境のことを考えて少しだけ取り組んだりしていて。野菜くずなどの生ごみはコンポストに入れたり、道具もなるべくプラスチックフリーで長く使えるものを愛用したりしています。TORCHINは充電しながら長く使えて、シンプルでどんな空間にも合いやすいので、ずっと付き合っていけそうなところも素敵だなと思いました」

町家をリノベーションした、木造住宅に暮らす高倉家で灯す

奈良市内の観光地から少し外れた、歴史ある木造住宅の町並みが今も広がる地域に、妻と2人の子どもと暮らす高倉。実はTORCHINの新規開発を進めるにあたり、プロジェクトを取り仕切った責任者でもあります。

古い町家をリノベーションして開放的にとった居間に設えるのは、古今東西から集めた和洋折衷の古道具や古家具。中央に置かれた大きなダイニングテーブルには料理好きの夫婦らしく、創作和食やアジアン料理など、家族や友人に向けた様々な料理が並びます。

リラックスタイムのそばに

「まずは夜、居間や寝室で本を読む時にTORCHINを使ってみました。仕事の本というより趣味の本を読むような、リラックスして読書をしたいときはTORCHINの灯りがちょうどいいんです。そのまま寝たいときは、寝室にも持ち込んだり。

ベッドにも備え付けの照明は付いているんですけど、点けると全体が明るくなっちゃって。例えば妻は寝ているけど僕は読書をしたい時なんかは、妻側も明るくなってしまうんですよね。そういうときに自分の側にだけTORCHINを置けば自分一人だけの範囲を照らせるし、明るさも調整できるので便利だなと。改めてTORCHINの魅力を実感しました(笑)」

「私は寝る前のストレッチに使っていて。疲れがとれてよく眠れるのでストレッチを毎日しているんですけど、いつもは部屋のメイン照明を消して間接照明を点けてたんですね。でもTORCHINが来てからはその間接照明さえも消して、TORCHINの小さな灯りだけを点けています。そうすると、いつもよりもさらに深くリラックスできて、スーッと寝られるような気がするんです。和紙のやわらかさがあるのかな。

ラベンダーのピローミストと併せて使うと、仕事が忙しくて高ぶっていた日も、頭も身体も、ゆったりほぐれるような感覚になりました」(妻・顕子さん)

「あとは夜、部屋の灯りを消してTORCHINだけを点けながらお酒を飲んだりもしていて、その時間がすごく贅沢だなぁって。本を読むときは明るさを一番強いものにして、晩酌の時は少し灯りを小さく、ストレッチの時は一番暗いものにするといった風に、調整がきくのも使いやすいなと思いました」(妻・顕子さん)

誰かとの楽しいひとときにも

「夫婦ともに料理が好きなので、時々友人を招いて夜に簡単な食事会をすることもあるんです。そういう時、飲食店のように少し暗めの灯りだとよりリラックスして会話も弾むなと思い、その場でもTORCHINを使ってみました。メインの照明を落としてTORCHINで明るさを追加してみたら、食卓や料理に華やぎが出て。

子どもがいて頻繁に友人たちと外食をできるわけではないので、こうやって家で、外食の時のような楽しい時間を過ごしたい時にも頼りになりそうです」

家族の形態が変わっても、家の好みが変わっても、どこにでも持ち運べて、どんな場にも合う。和紙の持つやわらかな雰囲気と、クセの少ないフラットなデザインだからこそ、気軽に取り入れられて、長く付き合って行けそうです。

穏やかな光が皆さんの暮らしをやさしく照らし、末永い相棒としてご利用いただけますように。

<関連する商品>
シラキ工芸 TORCHIN CIRCLE
シラキ工芸 TORCHIN VERTICAL
シラキ工芸 TORCHIN OVAL
シラキ工芸 TORCHIN BELL
シラキ工芸 TORCHIN SQUARE

文:谷尻純子
写真:奥山晴日

「美濃に還元できる商売を」。和紙糸で可能性を拡げる、美濃和紙・ 松久永助紙店

私たちの暮らしを支えてきた、日本各地の様々なものづくり。

それらがさらに百年先も続いていくために、何を活かし、何を変化させていくべきなのか。ものづくりの軸にある「素材や技術」に改めて着目し、その可能性を探るため、中川政七商店がスタートさせた試みが「すすむ つなぐ ものづくり展」です。

今回のテーマは「和紙」のものづくり。

古くから、文字を書き記すための道具にとどまらず、茶道の懐紙、障子や襖紙、提灯、紙幣、祭事の道具など、暮らしのあらゆる場面に使用されてきた和紙。

今や時代はうつろい、洋紙の登場やライフスタイルの変化を受けて、暮らしの中で和紙を見かける機会は少なくなってしまいました。

そんな中でも、和紙が持つ素材の魅力、職人の技術には、今の日本の暮らしを豊かにする可能性がある。そう信じて和紙と向き合い、各産地で挑戦を続ける作り手たちがいます。

和紙のイメージをぐっと広げるもの。和紙本来の魅力を再認識できるもの。

今まさに新たな挑戦が”すすむ”ものづくりの現場を取材し、百年先へ和紙を”つなぐ”ためのヒントを伺いました。


美濃和紙の産地、「うだつの上がる町並み」へ

訪れたのは岐阜県美濃市にある「うだつの上がる町並み」。伝統的建造物群保存地区に選定されたその地には、晴れた日には深緑をたたえた山々を、また雨の日には山の稜線が霧に霞んだ何とも幻想的な景色を背景に、趣ある町家が建ち並びます。

長良川の近くに位置するこの地域は古くから和紙業で栄えた場所。日本三大和紙とされる「美濃和紙」に関連する企業が今も多く商います。

こちらが“うだつ”。火事の類焼を防ぐため、屋根の両端につくられた防火壁を指す

「美濃で和紙の産業が栄えた大きな要因の一つに、長良川や板取川といった清流に恵まれた場所であることが挙げられます。私たちがお店を持つこの地域は長良川がすぐそばにあり、主に問屋街として発展してきました。もう少し川の上流には和紙職人が集まるわらび地区という場所もあります。

昔は上流にいる職人さんが漉いた和紙を船に乗せて川を下り、ここからすぐの灯台がある港に降ろして、馬車で問屋街に運んでいました。そうして問屋が選別したり加工したりして商品化して、それをまた船に乗せて岐阜市や名古屋市、大阪、東京など全国に流通を回していったんです。うまく商流にのせやすい仕組みがあったんですね。

岐阜市の方では和傘や提灯のような和紙を用いる産業が盛んだったので、売り先もたくさんありました。それが産地として強かった理由かなと思います。そのなかで問屋の商人も育っていき、今でも和紙の大きな産地として何とか残っているんじゃないかなと」

お話を聞いたのは、この場所で和紙問屋として商う松久永助紙店の松久恭子さん。明治9年に創業し、現在は5代目となる恭子さんを中心に、昔ながらの和紙の他、和紙雑貨や和紙糸、紙布、また和紙糸を使った生活雑貨などを扱っておられます。今回、中川政七商店とともに同社の和紙糸を使った洋服や服飾雑貨づくりにもお力添えをいただきました。

松久永助紙店・松久恭子さん
同社のオリジナルプロダクトなどを販売する店舗も運営

「水の工芸」とも呼べるほど、きれいな水が欠かせない和紙づくり。長良川の役割は運河にとどまらず、紙漉きに欠かせない原材料としても重宝されました。美濃の地域は山々から流れた水や川の伏流水など、水に恵まれたことも和紙産業が広がった理由と言えます。

「基本的には井戸水を使って漉くんですけど、同じ地域の和紙でも山側の水を使う職人と、川の伏流水を使う職人がいます。井戸の水源が異なるんです。それぞれの作る和紙は紙質がちょっと違うなんて話も、聞いたことがあります」

先にお伝えした通り、国内でも有数の和紙の産地である美濃。その歴史は古く、正倉院に保管される日本最古の戸籍謄本にも美濃和紙が使われていたほどです。また高い品質も誇り、中でも「本美濃紙」と呼ばれる和紙を漉く技術は、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。

しかし他の工芸に漏れずこの地域でも事業者数は減少の一途で、生産者戸数は最盛期の4,768戸(※)から、今やその数は100分の1以下となっています。そうやって産地のものづくりが徐々に減りゆくなかで、松久永助紙店は紙糸を一つの柱としながら新しいものづくりに挑戦をしてきました。

※参考)中川政七商店「美濃和紙とは」

薄くて丈夫。美濃ならではの和紙の良さを活かし、和紙糸に

大きくは本美濃紙、美濃手すき和紙、美濃機械すき和紙の3種類に分けられる美濃和紙。

特筆すべきその魅力は、薄くてムラがないため、やわらかく繊細な風合いを持つとともに、一方で強靭な耐久性も兼ね備えているところにあります。私たちの身の回りでは、表具(障子、襖、屏風、掛け軸など紙や布を張って仕立てられるもの)のような伝統的なプロダクトから、照明器具やインテリア、小物などの日用品まで様々なものに使われてきました。

「美濃和紙の特長を可能にしているのは“技術”。手漉きであれば職人の技術ですし、機械漉きの場合は原料の配合や機械の調整の技術ですね。当社で扱う和紙糸ももちろん、この強みを活かしたものになっています。

和紙糸はそこから編んだり織ったりを重ねるので、薄くて丈夫で切れにくく、なおかつ細いものができないと、いろいろな製品に展開できないんです。うち以外にも様々な地域で紙糸を作る企業さんはあるんですけど、懇意にしている加工会社さんからは『美濃の紙糸が一番切れにくくて扱いやすい』と言っていただけることが多いですね。それは長年の技術が大きいのかなと思っています」

和紙問屋として創業した松久永助紙店も、長らく和紙の障子紙や壁紙などを中心に扱ってきましたが、転機は30数年ほど前。恭子さんのお父様が代表を務める製紙会社・大福製紙が紙糸を開発したことにありました。もともと機械漉きで西陣織に使われる金糸や銀糸、またマスキングテープなどの薄くて丈夫な和紙を手がけてきた大福製紙は、その流れで紙糸の開発にも乗り出したそうです。

松久永助紙店の旧帳場に今も残る、デッドストックの和紙
こちらが和紙糸

そして10年ほど前に松久永助紙店を恭子さんが任されるようになった後、大福製紙の技術を活かしながら、紙糸の卸や紙糸を使った商品の開発に注力をし始めました。

「なぜ紙糸だったのかというと『やらざるを得なかった』というのも正直な背景ではあるんです。当時から和紙自体の問屋としての仕事は本当に右肩下がりで、需要も減ってきていて。もう少し人の目にとまるようなものづくりをしたいと考えたときに、紙糸ってまだすごく珍しいなって。

紙糸自体は昔からつくられていますし、洋服の素材として使われてもいたんですけど、とはいえ多くの方は知らないですよね。それは恐らく今よりも技術がなくてつくれるものの幅が狭かったことや、ものづくり自体の難しさから手がける企業が少なかったことなどが理由にあると思います。

他に、和紙糸に注力した理由は商品展開の点もありますね。どうしても和紙だと商品の幅に限界があったのですけれど、紙糸だとつくれるものの幅が広くなるので、購買層の範囲も広がるなという想いがありました」

松久永助紙店で扱う和紙糸を製造する大福製紙では、機械で和紙を抄(す)いている
細く切った和紙(左)。この後、撚り上げて和紙糸(右)にしていく
和紙糸の完成

紙糸の卸に加え、恭子さんが力を入れたのはオリジナル商品の開発。それまではタオルや靴下程度のラインアップでしたが、手探りでポーチやスタイ、アームカバー、アクセサリーなどに展開を重ねていきました。

「和紙糸って実はすごく機能的で。人にも環境にもやさしいですし、吸放湿性に吸水力、軽さ、消臭性、抗菌性も持っています。通気性もいいし、抗ピリング性もあるので洋服の風合いが保てるのもいいところ。紙なので水に弱いイメージがあるかもしれませんが、ちゃんとご家庭でお洗濯もしていただけるんですよ」

美濃と美濃和紙に還元できる商売でありたい

和紙とともに和紙糸を柱にするようになって10年と少し。少しずつお客さんの反応にも変化がありました。

「興味を持ってくださるお客様の幅は増えたと思います。『これ紙なの?』って、やっぱり目を引くんですよね。和紙から紙糸の商品まで面で展開することで、和紙であると理解もできるし驚いてもいただけるのかなと。最近はオンラインショップやSNSなどからお声がけを頂戴し、海外のショップに置いていただける機会も増えてきました。

一度使ってくださったお客様が良さを体感してリピートしてくださったり、口コミを聞いて購入いただけたりといったことも増えてきたんです」

そうしてオリジナル商品を手に取るお客さんが増えてはきたものの、「松久永助紙店として目指すのは決して、自分たちの名前が前に立つことではない」と恭子さん。

「『これが和紙なの?』と興味を持っていただく先に、美濃和紙や美濃に興味を持ってもらえるきっかけづくりをやっていきたいと思っているんです。うちは初代からずっと美濃で美濃和紙を扱ってきて、『美濃和紙に助けられて、でもこちらも助けて』というような商売の仕方をしてきました。そんな歴史もあるので、事業を続けるうえで美濃や美濃和紙に還元していけるような商売ができないと、そもそも商売をやる意味がないんじゃないかと感じているんですよね。

だから他の企業さんとコラボレーションして商品開発をするときも、なるべく美濃和紙を前に出してほしいと伝えます。普通に生活していると和紙に触れる機会はあっても、その産地を考える機会ってなかなかありませんよね。だから、うちが美濃和紙を前に出すことで、産地にちょっと触れたり考えたりしてもらえるきっかけになればいいなって。

美濃和紙や紙糸がいろいろな使い方をされれば、自然とたくさんの方の目に触れる機会も増えます。うちはその一助を担いたい。長くやってきたなかで和紙のこともわかりますし、糸のこともわかります。ものづくりを繋げるのが強みと考えたら、それってまさに問屋業ですよね。『松久永助紙店に聞けば、面白い和紙のプロダクトができる』という立ち位置になれたらいいかなって。そのためにも、目を引く自社商品を作っていきたいなと思っています」

今回、中川政七商店と和紙糸を用いて開発した生地

古い町家が並ぶ産地の景色のなかで、変化と進化を続けながらも伝統に還元していく松久永助紙店。その和紙糸から生まれるプロダクトは、繊細で洗練された印象のなかに、どこか懐かしさのあるあたたかい風合いと、やわらかな手ざわりが魅力です。

今と昔を身に纏う。機能的でありながら心も満たすその製品に、和紙の未来を背負う美濃の矜持を感じました。

文:谷尻純子
写真:田ノ岡宏明

※松久恭子さんインタビュー写真は企業提供

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進化の核に、技術が残る。和紙のあかりを現代に届ける提灯メーカー・シラキ工芸

私たちの暮らしを支えてきた、日本各地の様々なものづくり。

それらがさらに百年先も続いていくために、何を活かし、何を変化させていくべきなのか。その可能性を探るため、ものづくりの軸にある「素材や技術」に改めて着目し、中川政七商店がスタートさせた試みが「すすむ つなぐ ものづくり展」です。

今回のテーマは「和紙」のものづくり。

古くから、文字を書き記すための道具にとどまらず、茶道の懐紙、障子や襖紙、提灯、紙幣、祭事の道具など、暮らしのあらゆる場面に使用されてきた和紙。

今や時代はうつろい、洋紙の登場やライフスタイルの変化を受けて、暮らしの中で和紙を見かける機会は少なくなってしまいました。

そんな中でも、和紙が持つ素材の魅力、職人の技術には、今の日本の暮らしを豊かにする可能性がある。そう信じて和紙と向き合い、各産地で挑戦を続ける作り手たちがいます。

和紙のイメージをぐっと広げるもの。和紙本来の魅力を再認識できるもの。 今まさに新たな挑戦が”すすむ”ものづくりの現場を取材し、百年先へ和紙を”つなぐ”ためのヒントを伺いました。

八女和紙を用いた「火袋」作りのスペシャリスト

八女茶の産地として知られる福岡県八女市は、実は数多くの工芸品を擁する九州最大の工芸集積産地でもあります。

そのひとつで、ご先祖様を導く盆提灯として長年継承されてきたのが「八女提灯」。

材料となる手漉き和紙の産地や竹林が八女地域にあったことから、提灯作りが始まったとされています。

八女手漉き和紙
手漉き和紙の水源、矢部川

シラキ工芸は、八女提灯の心臓部で、灯りを囲むように袋状になった「火袋(ひぶくろ)」と呼ばれる部位の専業メーカーとして1980年に創業しました。

創業以来、八女の和紙を用いて火袋を作り続けてきた同社が今、これまで培った技術を活かしながら、現代の暮らしに溶け込んだ商品の提案を始めています。

八女提灯の火袋
シラキ工芸

全国に出荷された八女の盆提灯

「やっぱり提灯の一番大事なところだから。あとは、単純にとっかかりやすかったんだと思いますよ」

シラキ工芸 代表取締役の入江朋臣さん

当時の主流は提灯の全てを製造販売するいわば総合提灯メーカーだった中、あえて火袋専業として創業した理由について、シラキ工芸 代表取締役の入江朋臣さんはそんな風に話します。

入江さんのご両親が、それまで勤めていた提灯メーカーから独立する形で立ち上げたシラキ工芸。いずれは提灯全てを手がけたい想いはありつつも、思いがけず火袋の需要が大きく、そのまま専業メーカーとしてやっていくことになったのだとか。

「30〜40年前は、あちこちに提灯を作る職人さんがいた時代です。その頃は全ての工程が地元の八女で完結していて、全国に八女の盆提灯がどんどん出荷されていた。

うちの母親も提灯作りができたので、その技術を周りに伝えて、職人を増やしていました」

円筒型の盆提灯の火袋づくり

業界の通例に反した、自社生産体制の構築

ところがその後、当時の職人たちの高齢化が進む一方で、女性も外に出て働くようになり、内職の担い手がどんどん少なくなっていきます。

盆提灯の需要はまだまだ根強かった中で、先に作り手の不足が業界を直撃。制作工程の大部分は、海外に移ってしまいます。

「自分が30歳の時に、このままだと日本から職人がいなくなることに気付いて、社員として雇用し始めました」

すでに代替わりして、シラキ工芸の二代目になっていた入江さん。 それまで八女提灯の業界では、職人は基本的に外注の内職頼り。その通例に反して、自社生産体制を整える決意をします。

「自社生産にすれば小回りも良くなって、お客様対応もスピーディーになるし、オリジナル商品も作れるだろうと思って、可能性も感じていました。

それと、やっぱり技術を残さないといけないと思ったんですよね。

職人を一人育てるのに3年かかると言われていて、そのリスクを取るような業界ではなかった。

そこを思い切ってやってみようという感じで。火袋を作る人、絵付けをする人。それぞれ育てていこうと。

まず足りなくなっていったのは絵付けの職人で、それを育てるのがとにかく大変で時間もかかりました」

結果、問合せに対して正確に素早く応えられるようになり、顧客も増えていきました。職人の育成も軌道に乗り、今は7名の社員を雇用し、ものづくりに取り組んでいます。

シラキ工芸で働く若い職人たち

若い職人と模索する、新しい提灯のかたち

根強かった盆提灯の需要も、住環境の変化等の影響があり、ここ数年でいよいよ陰りを見せるようになってきました。

「家に大きな仏壇があって、そこに盆提灯を置いて、皆でお盆に集合する。そんな風景がだんだん見られなくなってきました。

置く場所が無いので、まず仏壇が小さくなっていき、それに合わせて、うちでも4.5年前から小さいサイズの盆提灯を作っています」

そうした状況の変化から、盆提灯以外の商品開発を模索し、これまで育ててきた若い職人たちと共に、新しい提灯のかたちを提案し始めました。

その一つが、「はこぶ、ともす、ほっとする」をコンセプトにしたポータブルライト「TORCHIN(トーチン)」です。

「一条螺旋式」と呼ばれる、らせん状の骨組み技術や、そこに張り込む八女手漉き和紙など、提灯の火袋作りの核はそのままに、現代の暮らしに馴染む新しい提灯が生まれました。

「技術の継承を続けていて、火袋の作り方は何十年前とまったく一緒です。

商品の形や見た目は変化していて、今回は特にタッチセンサーまで採用していながら、火袋の張り方はアナログのまま。

その真ん中の技術の部分は残して、チャレンジを続けていきたいと思っています」

そう話す入江さん。新しい商品を開発する中で、八女の手漉き和紙の魅力にも改めて気づいたといいます。

八女手漉き和紙の工房
この工房では、国産楮100%で和紙を漉いている

「癒される灯りというか、絹の提灯とは違った灯りになって、凄く良いなと感じます。

提灯を作る立場からしても、薄くて、強くて扱いやすい。他産地の和紙と比べたわけではないけど、とてもこだわって作ってくれているし、凄い素材ですよね」

「ほかの産地に負けたくない。素紙の良さで勝負したい」と話す手漉き和紙職人
原料の練りの調整が、和紙の品質を大きく左右する

TORCHINには今後、白い和紙だけでなく、さまざまな色に後染めしたカラフルなバージョンも登場予定。提灯とともに、八女の和紙の魅力も改めて世の中に伝わって欲しいと思います。

非常に繊細な、和紙の後染め工程

「この会社でチャレンジを続けられるのも、職人の雇用を始めて、それが上手く流れるようになったからこそだと思います。

新しい商品をつくると、色んな人と出会えて、それがとても面白いし、その分、負担も大きい(笑)

あとは、竹をなんとかして復活させたいという想いがあります。

元々、和紙があり、竹林があって、提灯が盛んになりました。今、和紙はなんとか続いていますが、竹はほぼ全て中国産です。

竹林も荒れてしまっていい竹自体がないし、竹ひごを薄く、細く加工できるところもない。 中々ハードルが高いですが、いつか地元の竹林の復活にも取り組めるといいなと考えています」

培ってきた技術を軸に、現代に提灯のあかりを届けるシラキ工芸の挑戦は続きます。

<取材協力>
シラキ工芸

文:白石雄太
写真:藤本幸一郎

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