鋳造の技巧が生み出す、銀白色の輝き「錫のミャクミャク」【大阪・関西万博 特別企画】

日本全国、そして世界各国から多くの人々が集う、2025年大阪・関西万博。

日本のものづくりの魅力を楽しく感じてもらいたいという思いを込めて、2025大阪・関西万博公式ライセンス商品として、工芸の技で豪華に表現したミャクミャクのオブジェ5種を制作しました。

今回はその中から、「錫のミャクミャク」に焦点を当て、その魅力を支えるものづくりの現場をご紹介します。

高岡銅器の老舗メーカー・能作が手がける、錫の工芸

手にとるとずしりと重く、やわらかな凹凸の肌が放つのは清潔でやさしい輝き。金属であるのにどことなく温かみを感じる「錫」は、その表情の他、錆びない・朽ちない・使えば使うほど味わいが出ると、古来から使われてきた素材のひとつです。

金・銀に次ぐ高価な金属でありながら、今では暮らしの道具にも用いられている錫。この素材を使って今回、富山県の能作(のうさく)に「大阪・関西万博」の公式キャラクターであるミャクミャクをつくっていただきました。

富山県高岡市に本拠地を置き今年で創業から109年を迎える能作は、高岡銅器の製造を手がける鋳物メーカー。高岡銅器とは富山県高岡市でつくられる金工品の総称で、江戸時代に加賀藩が土地に産業をうむため、鋳物師を大阪から呼び寄せたのがはじまりといわれています。

株式会社能作 5代目 能作千春さん

能作での鋳物づくりは、まず「原型」と呼ばれるおおもとの型を原型師が仕上げ、そこから金属を流し込むための鋳型をつくるところから始まります。

鋳型は生型(なまがた)と呼ばれる、砂に水や粘土を混ぜたものを押し固めてつくる型が一般的ですが、近年では技術研究によりシリコーンを用いる独自の鋳造法もあるそう。表現に合わせながら、使用する型が選ばれます。

砂でつくられる鋳型の例(写真提供:能作)

鋳造に用いられる金属は真鍮や錫、青銅など。

なかでも錫は、他の金属と比べて融点が低く、厚さによっては人の手でも曲げられるほどやわらかな素材といわれます。

その分、加工は粘土を削るような感覚で、目詰まりを起こしてしまうため、代表の能作千春さんいわく「一般的な硬い金属の研磨加工とは天と地ほど違う」そう。

「錫ってやわらかい他にも、いろんな素材特性があるんですよ。抗菌作用がある金属なので、花器にすると花が長持ちするといわれていたり、入れ歯ポットをつくると水が衛生的に保たれるような効果があったり。最近は医療部品の製造も行っています。ただ、これを合金にすると抗菌活性値も変わってきてしまいます。

あとは熱伝導率が高い素材なのも特徴のひとつ。夏場に冷蔵庫で1~2分冷やした錫のカップを使えば、冷たいビールをおいしく飲んでいただけると思います。

他にも、銀と違って黒ずみや錆びも出にくくて、経年劣化しづらいのも特徴ですね。それは今回のミャクミャクのように、置きものや愛でるものにとっては嬉しいポイントですよね」(能作さん)

溶かす前の状態の錫

錫で作る、工芸のミャクミャク

話を聞くにつれ、ますます気になる錫のミャクミャク。商品開発チームの吉田和広さんに、今回のものづくりについても教えてもらいました。

「一番難しかったのは原型をつくるところ。中川政七商店さんからデザイン案を頂いた後、肘の部分のしずくが落ちるような表現をどうやって可能にするのかや、専門的になるのですが、固まった鋳物を引き上げるために型をどううまく外せる仕様にするのかなど、関係者と頭を悩ませました。」(吉田さん)

元となる素材を溶かすところからはじまる、錫のミャクミャクのものづくり。溶解温度が1000度ほどの真鍮は炉を使って溶かされますが、一方で、錫には小さな鍋を用います。

これは錫の溶解温度が231.9度と真鍮に比べて非常に低い分、1、2度の温度変化によってすぐに固まるため。溶かした後、手早く型に流し込むために、小回りのきく鍋を使って溶かすのです。

錫を溶かす様子(撮影:浅見杳太郎)

鋳造の難しさにも職人たちが培ってきた技が光ります。

先ほどもお伝えした通り錫は融点が低いため、型に流しこむ速度によっては途中で固まってしまい、最後までいきわたらないこともあり得るそう。また、逆に温度が高すぎると表面が焼けてしまう事態にもなるといいます。

「流し方ひとつで、湯ジワ(※金属の流れた跡)が出てしまうこともあるんです。表面の美しさや、最後まで均一に錫がいきわたるかは、やっぱり職人の技術で。温度を測りながら作業はするのですがそれだけではだめで、鋳型の状態や湿度などの環境も加味して、毎回、温度や入れ方、スピードを職人が調整しています」(吉田さん)

職人の手で一つひとつ型に流し込む、ものづくりの“ワザ”。企業秘密により写真でお見せできないのが残念ではありますが、何気ない動作のようにも感じるその工程は、積み重ねた経験が叶えるものでした。

2~3分ほどして固まった後は、型から外して研磨の段階へ。湯(※溶かした金属)の流れた道や、全体の凹凸をなだらかにし、表面の鋳肌を均一に整えていく作業です。

こうして出来上がった錫のミャクミャクがたたえるのは、きらびやかではない、やわらかな表情。使っていくほどに味わいが出るのに、錆びない・朽ちないよさもある、長く暮らしに寄り添うオブジェが完成しました。

ちなみにお手入れも簡単。そもそも経年変化が少ない素材ではありますが、ふきんや眼鏡拭きなどで表面をやさしく磨くことで、より美しい状態を保っていただけます。

「職人が思いを込めてつくる一つひとつの製品の背景には、420年近くの高岡銅器の歴史があって。今回のミャクミャクでも、その歴史だったり技術だったり、それを繋いできた職人の心だったりを感じながら、長く愛でていただけたら嬉しいなと思っています」(能作さん)

銀白色のやさしい光沢感と吸いつくような持ち心地。錫のミャクミャクがある暮らしの景色を想像すると、心が和み、不思議と気持ちが落ち着く感覚があります。

ぜひ暮らしのお守りとして、長くご愛用ください。

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文:谷尻純子
写真:阿部高之

2025大阪・関西万博公式ライセンス商品
©Expo 2025

すべてフリーハンド!熟練の技術が生んだ表情豊かな「硝子のミャクミャク」【大阪・関西万博 特別企画】

日本全国、そして世界各国から多くの人々が集う、2025年大阪・関西万博。

日本のものづくりの魅力を楽しく感じてもらいたいという思いを込めて、2025大阪・関西万博公式ライセンス商品として、工芸の技で豪華に表現したミャクミャクのオブジェ5種を制作しました。

今回はその中から、「硝子のミャクミャク」に焦点を当て、その魅力を支えるものづくりの現場をご紹介します。

硝子で作った、水のように美しい透明感をもつミャクミャク

食器や鏡、窓、照明機器、さらにはデジタル機器のディスプレイなど、身近な素材として私たちの生活を支えてくれている「硝子(ガラス)」。

見た目や用途がまさに変幻自在で、実は「個体ではなく液体」ともされる、ものづくりの中でも不思議な存在です。

今回、そんなガラスの不思議さ・魅力を引き出すものづくりを続けているガラスメーカー「菅原工芸硝子」さんとともに、日本国際博覧会(通称:大阪・関西万博)の公式キャラクターであるミャクミャクをつくりました。

硝子で作った、水のように美しい透明感をもつミャクミャクはどのように生まれたのでしょ

うか。千葉県九十九里町にある「菅原工芸硝子」さんの工房を訪ねました。

菅原工芸硝子の工房。各所でさまざまなガラス商品が作られている

すべてフリーハンドで作られた、技術の結晶

「ガラスで作ればきっと綺麗だろうなと思いました」

菅原工芸硝子の代表取締役社長 菅原裕輔さんは、どこまでの精度でキャラクターを再現できるのかという不安はありつつも、ガラスの魅力を発揮できる機会だと感じて依頼を受けたと言います。

菅原工芸硝子 代表取締役 菅原 裕輔さん

「うちの職人たちも、普段からガラス製品の企画を考えている、新しい挑戦が好きな人たちなので、ミャクミャクの話をしたらその日のうちに試作を始めていましたね。

どうやって作ればいいか普通は想像がつかないと思うんですが、すぐにある程度の形にしていて、自社の職人ながら凄いなと」

あの複雑な形状のミャクミャクをどうやってガラスで作るのか。確かに素人考えでは想像もつきません。


今回の制作を担当したのは、菅原工芸硝子の中でも特に熟練の技術を持ったベテラン職人の塚本さん。ミャクミャクの制作にあたっては型は使用せず、すべてフリーハンド。高温の炉で溶かしたガラスの塊を、何度も温め直しながら伸ばし、曲げ、これまで培ったガラスづくりの経験と技術を注ぎ込んでユニークなミャクミャクの姿を形作っていきました。

ガラス職人の塚本さん
完全にフリーハンドで作られる
形づくるのに適した温度を保つために、何度も何度も温めなおす
時には必要な部分だけをバーナーで温める

「デザインを見て、大まかには作り方のイメージができたんですが、そこから精度を上げていく、作り方を自分の中に染み込ませていくのに苦労しました。

(試作を)30個くらいは作ったのかな。最初のうちは途中で溶けて落としてしまったり。長い時間ガラスを扱うには、温度の保ち方の感覚を自分のものにしないと。パーツによって溶け具合も違うので、それを覚えるために3、4ヶ月練習しましたね」(塚本さん)

ガラスの魅力が詰まった、表情豊かなミャクミャクの誕生

ガラスは約600度まで温度が下がると固まってしまうため、その前に温め直す必要があります。逆に、温めすぎると今度は作った形が溶けて崩れてしまうため、そのバランスを掴むことは至難の業。

作業は2人1組でおこなわれ、パートナーの職人さんが炉から適量のガラスを運んできて、それを塚本さんが受け取り、大小さまざまなミャクミャクの目玉としてボディに取り付けていきます。

ガラスの種を受け取る塚本さん。二人の呼吸が合わないと、たちまち形が崩れてしまう
だんだんパーツが増えていき、温度管理の難易度も上がっていく

「(ガラスの種を)つけてくれる人のタイミングひとつでガラリと変わっちゃうので、パートナーも大切。タイミングが合わないと丸の形も綺麗にならないんですよね。

それから、スムーズに形が作れるようになった後は(ミャクミャクの)表情をしっかり出すことが難しかった。

よく見てみますとね、すごく表情が豊かなキャラクターなんですよ。その豊かさをガラスでいかに表現するか。おなかやおしりの丸み、しずくの部分なんかも全て難しかったんですけど、一番は豊かな表情を出すことでした。

この頃はいい表情が出せるようになってきて、透明感というか、ガラスの良さも感じられる仕上がりになりました。ガラスの面白さが詰まっていると思います」

ガラスづくりにはさまざまな技法がある中で、どれか一つに特化するのではなく、溶けたガラスから形を作るためにあらゆる方法を試したり、開発したりしてきたという菅原さん。その積み上げが今回のミャクミャクに繋がっています。

「本当に色々なものを作っているので、効率を考えるとよろしくない。でも、数や効率では機械に勝てません。大変ですが、人の手で作る意味があるきちんとしたものをこれからも作っていきたいですし、食器以外の空間のためのガラスなど、新たな挑戦も続けていきたいと考えています」(菅原さん)

これまで多種多様なガラス製品を手掛けてきた職人の経験と技術、ガラスという素材ならではの柔らかな丸み、ぽってりとしたフォルム。さらに手仕事の“ゆらぎ”が生み出す、一つとして同じ形のない、硝子のミャクミャクが誕生しました。

ぜひ皆さまもその目で、職人技が可能にした唯一無二の存在感を確かめてみてください。

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文:白石雄太
写真:阿部高之

2025大阪・関西万博公式ライセンス商品
©Expo 2025

縁起の良い“願掛け”の文字が記された、色とりどりの「だるまのミャクミャク」【大阪・関西万博 特別企画】

日本全国、そして世界各国から多くの人々が集う、2025年大阪・関西万博。

日本のものづくりの魅力を楽しく感じてもらいたいという思いを込めて、2025大阪・関西万博公式ライセンス商品として、工芸の技で豪華に表現したミャクミャクのオブジェ5種を制作しました。

今回はその中から、「だるまのミャクミャク」に焦点を当て、その魅力を支えるものづくりの現場をご紹介します。

丸くて愛らしい縁起物「高崎だるま」のミャクミャク

丸くて愛らしい形状と、転んでも起き上がるイメージで古くから縁起物として親しまれてきた「だるま」。

だるまの一大産地である群馬県高崎市でつくられるものは特に「高崎だるま」として知られ、鶴と亀を表現した眉毛と口髭の意匠や、さまざまな願掛けを込めた文字入れなどが特徴です。

高崎だるま。吉祥や長寿を意味する鶴と亀が眉毛と口ひげに表現されている

今回、高崎で手仕事のだるまづくりを続ける「三代目だるま屋 ましも」さんにお願いし、日本国際博覧会(通称:大阪・関西万博)の公式キャラクターであるミャクミャクのだるまをつくっていただきました。

ミャクミャクの立体感をだるまの中で表現する

「だるまには基本の形状があるので、その中にどうやってミャクミャクの豊かな表情や立体感を落とし込めるか。そこが一番苦労したポイントです」

三代目だるま屋 ましもの代表、真下輝永さんがそう話すように、だるまと言えば誰もが思い浮かべる特有の丸い形をしています。そこに複雑な立体であるミャクミャクのイメージを当てはめるために、デザインを試行錯誤したとのこと。

「三代目だるま屋 ましも」真下輝永さん

「使用しているだるまの型は、鼻の部分が平らになっているタイプのものです。

その型の上できちんと立体感が出せるように何度も検討を重ねて、ミャクミャクのだるまをつくるならこの形・デザインしかない、というところにたどり着けたと思っています」

だるまにもさまざまなサイズや型が存在する

デザインの落とし込みはできたものの、普段のだるまの絵付けとはまったく勝手が違うため、技術の高い絵付師さんにしか再現できないのだとか。

熟練の技によって高い精度で出来上がっていくミャクミャクのだるま。でもそこに手仕事ならではの少しのゆらぎもあって、一層愛着が湧いてきます。お気に入りのものを選ぶ楽しさもありそうです。

手仕事による絵付けの様子
基準となる見本を参照しながら作業を進めていく
左右非対称のデザインで、丸い部分もそれぞれ正円では無いため、さまざまな角度から眺めてバランスが崩れないように絵付けしていく
使い込まれた絵の具入れ。調合にレシピはなく、職人の感覚で色をつくる

高崎だるまの大切な要素「願掛け」を色別に

ミャクミャクだるまのもう一つの特徴は、それぞれの色ごとに異なる「願掛け」の文字が入っていること。青色には“福”、赤色には“勝”など、色のイメージと合わせた縁起の良い一字が記されており、「高崎だるま」らしい、願いの込められた商品に仕上がりました。

それぞれ異なる文字が入った「ミャクミャクだるま」。願いが込められていることが、だるまならでの特徴

「高崎だるまではこの言葉も大切な要素。勢いのある字体で、縁起の良い言葉を入れて願いを込める。やっぱり縁起物ですから、“願掛け”をしているということが重要です」

「2025大阪・関西万博  会場内オフィシャルストア  西ゲート店  KINTETSU」展示用の特大だるまに文字を描く真下さん
特大だるまには「万博」の文字が

「今回のように、だるまをベースにした新しいものを生み出す機会をいただけるとすごく勉強にもなるし、とてもありがたいと思っています。

こういったことをきっかけにだるまのことをもっと知ってもらいたいし、だるまの形状だったり、願いを込めるということだったりは海外でも通用する気がしていて、これからは海外も含めて広げていけると嬉しいですね」

真下さんは最後に、自身の願いをそんな風に話してくれました。

伝統的な「だるま」の中にふしぎな生き物「ミャクミャク」が入り込んだミャクミャクだるま。手仕事の技が光る工芸品として、願いの込められた縁起物として、皆さまのお手元で愛されるものになれば嬉しく思います。

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文:白石雄太
写真:阿部高之

2025大阪・関西万博公式ライセンス商品
©Expo 2025

スタッフに聞く、母の日の贈りもの事情

大切な人に喜んでほしいものの、何を選ぶかが悩ましい母の日の贈りもの。お店ではどんなものが人気なのか中川政七商店のスタッフに教えてもらいました。スタッフのコメントを添えてお届けします。

アームカバー

母の日の贈りものとして、とても人気のアームカバー。「毎年購入しています!」と嬉しいお声をいただくことも多いアイテムです。
日除けとしてはもちろんのこと、冷房対策としてもお使いいただけて、これからの季節にぴったり。
デザインや生地感を豊富に揃えているので、いつものファッションや生活スタイルに合わせてお選びいただけます。
なかには「毎日使うものなので洗い替え用に!」と、複数枚プレゼントされる方も。
お手頃な価格なので日頃の感謝の気持ちを込めて、お花やお菓子などと一緒に贈るのも素敵ですね。

推薦スタッフ:
中川政七商店 東京スカイツリータウン・ソラマチ店 恒松 汐里

<写真の商品>
指が通せるアームカバー  桜墨
ひんやりアームカバー 浅縹
綿麻ふんわりアームカバー 黄/薄緑

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アームカバー

香りもの

いつも頑張ってくれているお母さまやおばあさまにと、自分の時間を楽しめる香りの贈りものが人気です。
お店にはお香やアロマオイルなど色々な香りものを揃えているので、ご家族だからこそ分かるお好みの香りや、お仕事の合間や寝る前にリラックスしていただける香りなどをぜひ見つけていただけたら!
お贈りすることで、お母さまご自身で好きな香りを探しにいく、新たな趣味のきっかけにもなるかもしれません。
また自分が好きな香りを贈って一緒に楽しむのも、素敵な母の日の過ごし方だと思います。

推薦スタッフ:
中川政七商店 札幌ステラプレイス店 森 美沙

<写真の商品>
薫玉堂 試香 朱
瀬戸焼の線香皿 白志野
桜の手彫線香立て

<関連する商品カテゴリ>
香りもの

櫛、ヘアブラシ

身体をいたわるケアアイテムは「贈る相手を大事に思いやる気持ちが込められる」と、母の日の贈りものにもよく選ばれています。
なかでも櫛などのヘアケアアイテムは毎日使う身近なものだからこそ、特別感のある贈りものにするともらった方の嬉しさもひとしお。
髪のお手入れはもちろん、頭皮のケアもできるので、リラックスする時間を贈りたいときにもおすすめです。
場所や季節も問わず長く愛用していただけるところもポイントです。

推薦スタッフ:
中川政七商店 新潟ビルボードプレイス店 初見 幸夫

<写真の商品>
天然毛のヘアブラシ ブナ
つげ櫛 手織り麻袋入り

<関連する商品カテゴリ>
美容と健康の道具

このほかにも、中川政七商店では母の日におすすめの商品を多数そろえています。人気の品を詰め込んだギフトセットのご用意もございますので、ぜひご来店ください。

皆さまの母の日がよい日となりますように。

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コンセプトは「日常を豊かにする服」。STAMP AND DIARYによる、遊び心を纏ったシンプルな服づくり

普段使いをしたいけれど、ちょっとした遊び心は忘れたくない。

纏うと少し自信がわいて、心と体がふわりと浮くような服。

このたび、そんなわがままな洋服選びの気分にも寄り添ってくれる洋服ブランド「STAMP AND DIARY」と、中川政七商店がコラボレーションし、ブラウスとカットソーを作りました。

数あるブランドのなかでも、ものづくりに信頼が厚く、中川政七商店のお店でも多くのファンを持つSTAMP AND DIARY。その魅力のもとや、コラボレーションシリーズに込めた想いを取材しました。

消費されず「日常を豊かにする服」を目指す

訪れたのは東京・代官山。やわらかな白の壁に高い天井、時々聞こえてくる笑い声。服の印象にそのままリンクする清潔で軽やかな空間を拠点に、STAMP AND DIARYのものづくりは進められています。

創業11年の同社で代表を務めるのは吉川 修一さん。もともとはアパレルメーカーでの仕事が長く、同社を起こしたのは48歳の時でした。

「会社の名前は、空港の税関で押されるスタンプから。会社員時代に海外出張でヨーロッパに行くことが多くて、税関でパスポートにスタンプを押してもらっていたんです。よく考えてみるとそれが、いろんなきっかけをくれた時間の象徴だなと思って。

日本と海外、日常と非日常を行ったり来たりしたことで、知恵とか知識が得られたんじゃないかなと思うんですよ。いつもスタンプを押されるたびに、自分にどんどん蓄積されていく感覚があって」(吉川さん)

STAMPS 代表取締役 吉川修一さん

会社員時代、海外のなかでもヨーロッパを頻繁に訪れていた吉川さん。通ううちに少しずつ、日本と欧州が持つ消費への意識の向け方に興味が及んでいったと話します。

当時の日本は、今よりももっと“モノ”の消費が優先された時代。ファッション業界でも時間の流れは速く、「作っては売る」という過熱した消費ムードがあったそうです。

対してヨーロッパで感じたのは「いかに時間を豊かに生きるか」。

物を持たない人、親子3代にわたって長く着られる服‥‥。そんな現地の人々の物との付き合い方を知るうちに、吉川さんは日本の消費ムードに疑問を抱くようになりました。

「それで、自分がヨーロッパで感じた空気をもうちょっと洋服で表現したいなって、起業のイメージが出てきたんですね。同じようなスタンスをもつ企業へ転職する選択肢もなくはなかったんですけど、自分の思いを100%伝えるブランドにするのは難しいじゃないですか。

あと、個人的にも親の介護とか子どもの進学とか、いろんなタイミングが重なって。親の介護のなかでは、当たり前ですけど『人って死ぬんだな』とずしりと受け止めたりしました。人生は一回しかない、今が最後のチャンスかもしれないって」(吉川さん)

そうして株式会社STAMPSが誕生し、まもなくして「STAMP AND DIARY」が立ち上がります。コンセプトは「日常を豊かにする服」。会社名と繋いだ「ダイアリー」には、「日常」という意味を込めました。

STAMP AND DIARY独特の、繊細でやわらかな模様が浮かぶテキスタイル

目指すのは、時間の流れをちょっと変えるアパレル。去年も、今年も、10年後も、纏う人の日常を長く豊かにしてくれる“消費されない”服づくりです。

「僕が魅力的に感じるヨーロッパのご婦人方の方々って、着飾ってる“素敵”じゃなくて、自分らしい日常を楽しんでいる空気が“素敵”なんです。その人たちを見ると、素材がよくて、リラックスできるシルエットの服を着ていらっしゃることが多いんですね。それこそが、“デイリー”なんじゃないかなって思ったんですよ。

日常でも気負わず着られるし、例えば外出や食事の場合は華やかなアクセサリーを加えるだけで印象も変えられる。それって、素材がよくないと成り立たないんですよね。だからうちでは素材にこだわるし、日常で着心地がいいことも大事にしたいと思っています」(吉川さん)

ところで取材を進めていて感じたのは、職場の雰囲気のよさ。明るい空気が流れる理由を尋ねてみると、「会社に来ても楽しい、家に帰っても楽しい。それが一番最高だと思うんです。そういう会社になりたいですね。ミーティング中でも別のフロアから笑い声が聞こえたりすると、僕自身、すごく自分が豊かになるというか」と回答が。

服をつくるときに大切するスタンスが、会社の運営でも同じように大切にされている。簡単なようでいて難しいその体現と、のびやかな会社の空気に、ますますファンになってしまいそうです。

倉庫に眠る、アーカイブ生地を使った服

中川政七商店ではこれまで直営店やオンラインショップでSTAMP AND DIARYの服を販売させてもらってきました。

今回はその一歩先へ進んで、洋服づくりをご一緒することに。用いたのは中川政七商店の倉庫に眠るアーカイブの布たちです。

日本の染織技術で織り上げたそれらの布を、STAMP AND DIARYが誇る独特のデザインに落とし込み、春の終わりから長い夏まで存分に楽しめるブラウスとカットソーに仕立てていただきました。

「自分たちでもブランドの10周年のときに、過去のアーカイブ生地を使ったアイテムをつくったんですよ。それがお客様にすごく人気で。

その時使った生地は、僕がブランドを立ち上げる時になけなしのお金で初めて作った尾州の布で、いろんなことを教えてもらいながら織り上げていただいた思い出深いものでした。たくさんつくったから残ったんですけど、それって『余った古い布』ではなくて『宝』なんですよね。

つくり手さんが真摯につくったものは、余ったから安くするという考え方ではなくて、きちんとお客様に評価してもらえるようなデザインにして、価格も見合うものでご提案したいなと思ってずっと残していたんです」(吉川さん)

その考え方は中川政七商店とも共鳴し「新しく生み出すだけでなく、残っているものにも目を向けたものづくりを」と企画したのが、今回の「めぐり布ブラウス・カットソー」です。

皆さんより少し先に服を手に取り、感じたのは、“緊張しないときめき”。

一枚ではインパクトのある柄も、ポケットや袖に用いることで程よく着やすくなり、個性豊かな染織を纏うことも気後れせず、存分に楽しめそうな仕上がりとなっています。

「中川政七商店さんの生地を最初に見て触れた時、生地からとてもエネルギーを感じました。きっと多くの方たちが携わって生まれた貴重な生地だからこそ、惹きつけられたのだと思います。

こうした生地を使った、日常着としてのアイテムが出来上がりました。着ると少し豊かな気持ちになってくれたら、この上なくうれしいです」(吉川さん)

つくる人への尊敬を忘れず、手に取る人の心を豊かにする遊び心もあわせもつ。中川政七商店としても大事にしたい矜持が、STAMP AND DIARYの手がける服には詰まっています。

創業から貫く「洋服で豊かを目指す」というSTAMPSの思い。今回のコラボレーションシリーズが皆さまの日常を豊かにして、長くご愛用いただける服になれば嬉しく思います。

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めぐり布 身頃刺繍ブラウス
めぐり布 袖刺繍ブラウス
めぐり布 ドローストリング付きカットソー
めぐり布 ポケット付きカットソー

文:谷尻純子
写真:戸松愛

【旬のひと皿】春野菜とそばがきの豚汁

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



私の営む店の前には子ども園があり、子ども達の様子を毎日見て過ごしています。そこへ通うお子さんのお母さんがお店に来てくださったことをきっかけに、5歳の男の子と友達になりました。このエッセイをはじめた頃にも登場した“5歳の友達”です。

店の前をおうちの方と通る時は、外から「ななさーーーん」と大きな声で元気に声をかけてくれます。園のみんなとお散歩へ行く時にも大きな声で外から呼んでくれるので、店の奥の方にいてもすぐに分かり、飛んで出ます。

まわりのお友達もつられて、十数人の園児たちが一斉に大きな声で呼んでくれる日もあり、かわいい元気な声に嬉しい気持ちでいっぱいになっています。子どもちゃんたちありがとう!

6歳になった友達は卒園し、この春ピカピカの1年生になります。毎日会うことがなくなってしまうので、何か一緒に思い出を作りたいなと思いました。「料理に興味なんてあるかな?」と思いましたが、お母さんを通じて聞いてもらうと「やりたい!」と言ってくれ、今回の「旬のひと皿」を一緒に作ることに。お誘いした私自身もわくわくし、撮影の日を楽しみにしていました。

今回のレシピはその友達が「豚汁と蕎麦が好き!」ということで、季節の野菜を入れた豚汁にそばがきを浮かべてみることにしました。そばがきは冷めると固くなりますが、温かい汁物に入れれば、ほわほわ柔らかい時間が長く楽しめます。

「包丁は大丈夫かな?」「怪我をさせては大変だな」と、私が提案したものの不安に思い、一緒に料理をする際の段取りを考えていたのですが、とても上手に野菜やお揚げさん、お肉を切ってくれて、一緒に作る時間や楽しさ、温かさが「おいしい」を作っていくのだなと感じました。

途中、その場にいるみんなで味見をし、おいしいねを共有できて嬉しかったです。

お野菜も季節ごとに変えれば旬を楽しめ、何より一日一杯のお味噌汁を飲むことは身体にもとってもよいと思います。楽しい時間を一緒に過ごさせてもらい、思い出のひと皿ができました。

一緒にお料理をしてくれてありがとう。また一緒にごはんを作ろうね。小学校入学おめでとう!これから先、楽しいことや嬉しいことがいっぱいいっぱいありますように!

<春野菜とそばがきの豚汁>

材料(2人分)

・豚バラ薄切り肉…適量
・春キャベツ…1枚
・新玉ねぎ…1/4個
・菜の花…2本
・ごぼう…10cm程度
・油揚げ…1/2枚
・味噌…適量
・出汁…360ml

◆そばがき

・そば粉…大さじ2 ※ない場合は米粉や小麦粉でもOK
・水…適量(今回はそば粉の3倍程度の量を使用)

作りかた

豚肉と春キャベツ、新玉ねぎ、菜の花はそれぞれ食べやすい大きさに切る。ごぼうをささがきにして水にさらす。

油揚げは熱湯をかけて油抜きし、食べやすい大きさに切る。

「ふわふわして切りにくいね」と、6歳のお友達。

鍋に少量の油(分量外)を入れ、ごぼうを炒め蒸しして香りを出す。ごぼうがしんなりしてきたら豚肉も入れて炒める。

出汁を注ぎ、軽く沸騰するまで火にかける。少ししてから灰汁をとり、新玉ねぎを入れてしばらく煮る。春キャベツ、菜の花、油揚げを加えたら味噌を溶き入れて火を消す。

小さめの別の鍋を用意し、そばがきを作る。鍋にそば粉を入れて火にかけ、少しずつ水を加えてダマにならないように練っていく。ゆるさはお好みで。

※小麦粉や米粉を使用する場合は鍋に入れて練り上げず、すいとんを作る要領で、粉を水で溶き別鍋で茹でてから汁に加える。水を粉の同量弱くらいで溶くと、ゆるくて形は整えられないが汁に入れた時に柔らかく食べやすい。

うつわに豚汁をよそい、真ん中に先ほど作ったそばがきを入れて完成!

6歳の友達からもらった折り紙の手紙。「おいしーのつくろーね」

うつわ紹介

食洗機で洗えるお椀 ハンノキ
陶器の箸置き

写真:奥山晴日

料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  
野に咲く花を生けられるようになりたいと大和未生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。
https://dandannara.com/