夏に太陽の下に出掛けたくなる「ムラ染めの服」

5月だというのに、夏かのように暑い日々が続きますね。
この先の数か月が不安になるような気候ですが、そんな懸念も何のその、蒸し暑い夏に太陽の下に出掛けたくなるような、「ムラ染め」の服を作りました。

藍染めや手染めの服って、美しいな、とは思いつつも、二の足を踏んでしまう方も多いのではないでしょうか。
私も普段は無地の服が多いので、着てみるまでは、自分には難しいんじゃないかな、という気持ちがありました。

でも、
「とりあえず袖を通してみてください。染めの服は着てみるといいじゃんってなるから」

作り手の方に言われたそんな言葉を信じて着てみると、印象がガラッと変わりました。これを着て夏のお出掛けを楽しみたい!とわくわくしたので、私が感じたままの魅力を素直にお届けしていきたいと思います。

自分には関係ないかも、と思ってる方にこそ伝えたい、「ムラ染めの服」の魅力をお届けします。

天然染料の魅力とは

今回一緒にものづくりを行ったのは、宝島染工の大籠千春さん。
草や木などを材料とした天然染料と、伝統的な手作業による染色技法を用い、「中量生産」の染工場を営まれています。

早速、天然染料の魅力について聞いてみると、

「単純に言うと、美しさですね。
色のクリアさというか、ちょっとこう透き通るみたいな色のきれいさがあったりして。中でも藍染の色って魅力的で思わず目がいっちゃうんですよね」

たしかに、工場に到着した際、ずらっと染めた服が並んでいて、思わず歓声をあげてしまいました。実物を見ると圧巻の美しさ。ついつい見てしまって目が離せなくなるくらい魅力的。
写真の比じゃないくらい実物が美しいので、お近くに店舗がある方はぜひ見てみていただきたいです。

「藍染めは、染着性が弱くて染まるスピードが遅いので、線がばきばきっと残りやすいんです。色のばきっとした強さが藍染めの場合はすごく魅力的なんですよね。
計算できるのは7割で、2~3割は計算できないのりしろがあって…長年染めてますけど、毎回ちょっと驚くんですよね。ただ、それがどう動いても、あんまりストレスに感じない染料だなと思っています」

手でぎゅっと持って、染料に浸して染める、ごくシンプルな染めかた

「今回の染めは、紐でしばったり板で挟んだりせずに、指でストレスをかけて染めているだけなんです。全く器具を使わずに手だけでできるので、かなり古い時代からあった染め方だろうと思うのですが、それがずっと残ってるっていうのが、何よりみんなに愛されてきたっていうことですよね」

「器具を使うほど、装飾性も高くなりますが、今回は指だけ。中川政七商店さんで販売するということで、ベーシックな染め方になりました。最終の物になるまでに、何度か修正を重ねたんですけど、まずは染めの面白さを知っていただくために、あまり個性的過ぎるものではなく、シンプルに藍染めらしさが楽しめるような染め方が選ばれました」

手で染めていくので、柄の出方が一枚ごとに異なるのがまた面白いところ。自分の元に届く一枚に愛着をもって着ていただきたいです。

着ることで、どんどん育つ服

天然染料と言えば、育てるイメージもあります。どのように育っていくのかを知りたくて、大籠さんが長年着ている服を見せていただきました。

左が新品。右が6年ほど使用したもの

「元は同じく真っ黒の物なのですが、6~7年程使うと右のように変化します。買った時が100%じゃなくて、どんどんよくなったり、味がでたり、育てていく面白さはあると思います。
染め直しも行っているので、また黒くしたい場合は黒くもできますね」

育てる楽しみがある一方、お手入れが大変なイメージもあります。大籠さんはどのようにお手入れしているのか、尋ねてみました。

「よく言われる色落ちに関しては、最初の2~3回気を付けていただいたら後は大丈夫です。
お手入れに関して、私が気を付けているのは、単純によく着てよく洗うことですね。水を通してあげると黄ばみも浅い日焼けも抜けるんですよ。反面、忘れて放置すると日焼けや汗じみで黄ばんでしまいます。
シーズンが終わってクローゼットに閉まっても、3か月くらい着てないなって思ったら一回洗うと、すっきりした鮮やかさがよみがえってくれます」

よく着てよく洗う。思ったより単純なお手入れ方法ですね。どんどん育っていく楽しみも相まって、つい手が伸びてしまいそうです。

年を重ねるごとに、似合う服になる

「柄物とかもそうですけど、服自体に主張があるじゃないですか。何か喋ってるみたいな。そういうものって、年を重ねた方が着こなせる力があると思うんです。年を重ねると、その人にも個性が出てくるから、物の個性と釣り合う感じがします。

アクセサリーとかもそうですよね。若い指にはシンプルなものでいいんだけど、節が太くなってくると、大きい石が似合ったり。
私も年を重ねたことで、個性的な服が釣り合うようになってきたな、という実感があります。
お洋服が好きな方も、そうやって自分とのバランスを楽しまれているのかなという気がしますね」

「私が今回の服を着るなら、きれいな色とあわせて着たいです。これだけテキスタイルの主張がちゃんとあるので、例えば赤い靴下に黒い靴とかで。ナチュラルにし過ぎずピリッと着るのが、私の年齢くらいだとよさそうな気がします。
私は身長が167㎝あって脚が出すぎちゃうと思うので、インナーパンツにきれいな色もってくるのもよさそうです。背が低い方は厚底のサンダルと合わせてもかわいいでしょうね」

「中川政七商店さんの服の色のラインナップを見てると静かな色合いが多いので、普段はこういう染めの服は選びませんっていうお客さんもいらっしゃると思いますが、
着てみると全然違うので、袖を一度通していただきたいなと思います。染めの服って着てみると意外といいじゃんってなるんです。

柄物って香辛料みたいな感じなんですよ。1個あるだけで全然違います。普段着ているものと合わせるだけで、それが全然違う表情になったりします。
今回、服の形はスタンダードですが、普段着ているものとは全然違う印象になるはずなので、そこを楽しんでもらえたら嬉しいです」

私自身、普段は絶対選ばないなという服でしたが、そんな言葉を信じて袖を通してみると、本当に印象が変わりました。服の印象というよりも、知らない自分に出会ったような感覚。
年を重ねることでどんどん似合うようになる、というのも、年を重ねるのが楽しみになるような嬉しいお話です。
主張のある服を着る楽しさを教えていただいたので、この服とともにたくさん出掛けて、この夏を楽しもうと思います。

< プロフィール>
大籠千春:宝島染工 代表
草や木などを材料とした天然染料と、伝統的な手作業による染色技法を用い、中量生産の染工場「宝島染工」を営んでいる。
アパレルブランド向けに洋服、服飾雑貨の染色加工を行う他、自社ブランドのオリジナル商品制作も行う。オリジナル商品は、「年齢や性別も無く楽しめるデザイン」をテーマに開発。

<関連特集>

文:上田恵理子
写真:藤本幸一郎

【季節の手ざわり】整える、初夏のお茶時間

こんにちは。中川政七商店ラヂオの時間です。

中川政七商店ラヂオ「季節の手ざわり」は、月に一度、季節ごとの風習や、暮らしに取り入れたい日本の文化についてお届けしています。
季節の移ろいを感じ暮らしを整える、そんなひと時をご一緒しませんか。

5月は「さつき」と呼ばれていますが、田植えの時期ということもあり「早苗月(さなえづき)」と呼ばれ、それが「さつき」へと変化したとも言われています。

二十四節気では「立夏(りっか)」、暦の上では夏の始まり。
木々が若葉を成長させて、生き物が活発に動き出す頃です。
さわやかな青空が広がる晴れた日を「五月晴れ(さつきばれ)」というように、1年のうちで最も過ごしやすい時期ですね。

今回は「お茶」をテーマに、「整える、初夏のお茶時間」をお送りします。


ナビゲーター:クリス智子
ハワイ生まれ。大学卒業時に、東京のFMラジオ局 J-WAVE でナビゲーターデビュー。現在は、同局「GOOD NEIGHBORS」(月曜〜木曜13:00〜16:00)を担当。ラジオのパーソナリティのほか、MC、ナレーション、トークイベント出演、また、エッセイ執筆、朗読、音楽、作詞なども行う。得意とするのは、暮らし、デザイン、アートの分野。幼少期より触れてきたアンティークから、最先端のデザインまで興味をもち、生活そのもの、居心地のいい空間にこだわりを持つ。ラジオにおいても、居心地、耳心地の良い時間はもちろん、その中で、常に新しいことへの探究心を共有できる場づくりを心がける。


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「わたしの心地好い暮らしをつくる道具」をテーマに、お気に入りのアイテムや、しつらいの風景、意外な使いかたなど、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いをお聞かせください。


昨年の6月から月一回、配信してきました中川政七商店ラヂオ「季節の手ざわり」で
すが、今回の5月配信を持って、最終回になります。

中川政七商店ラヂオは、今後も新たな展開をしていく予定です。
引き続き、お楽しみいただけますと幸いです。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら

【工芸うんちく旅】奈良「祈りと工芸」

こんにちは。
中川政七商店ラヂオのお時間です。

「工芸うんちく旅」は、工芸好き男子ふたりが、日本の工芸産地をめぐり、職人さんや地元の方々から聞いてきたうんちくや小ネタ、地域の風習、食文化などを紹介する番組です。

奈良県/祈りと工芸

工芸好きアラフォー男子ふたりが工芸産地を巡り、職人さんや地元の方々から聞いてきたうんちくを紹介する番組「工芸うんちく旅」。今回は中川政七商店の本拠地、奈良県を巡ります。

かつて日本の中心地であった奈良。その歴史を語る上で、神社仏閣とは切っても切り離せない関係にあります。そこで今回は「祈りと工芸」というテーマを軸に、奈良を巡りました。祈りの対象として工芸が発展してきた歴史を訪ねて、神社仏閣や工芸に通じるものづくりの現場に伺いました。

初回は、観光スポットの大定番にもなっている、東大寺の大仏を見に行ってきました。ご案内いただいたのは、奈良で宿泊施設や飲食店を経営されており、奈良の文化や仏像に詳しい古白の境 祐希さん。

現在でも謎多き、東大寺の歴史や、過去に2度の焼失を経て再建された経緯、南大門の金剛力士像にまつわるうんちく、さらには東大寺の3月の風物詩である『お水取り』の様子などなど、目白押しの内容でお届けします。これを聴けばあなたも奈良に行ってみたくなる!?奈良のディープなうんちく旅のスタートです。

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ナビゲータープロフィール

高倉泰(たかくらたいら)

中川政七商店による産地支援事業「合同展示会 大日本市」のディレクター・バイヤー。
大学卒業後、店舗デザイン・設計の会社を経て、2014年に中川政七商店に入社。日本各地のつくり手と共に展示会やイベントを開催し、商品の仕入れ・販売・プロモーションに携わる。
古いものや世界の民芸品が好きで、ならまちで築150年の古民家を改築し、 妻と2人の子どもと暮らす。山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。ほとけ部主催。
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引地海(ひきじかい)

Pomalo 株式会社 クリエイティブ・ディレクター。大学卒業後、広告代理店を経てフリーの編集者に。雑誌やWEBサイト、イベントの企画・制作・プロデュースを手がけ、2019年よりコンテンツ・エンジニアリング・カンパニー Pomalo(ポマーロ)に参加。11歳から17歳までをアメリカ・サンディエゴで過ごした帰国子女。2児のパパで、趣味はお弁当づくりとキャンプ。
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次回「工芸うんちく旅」は、4月21日(金)配信を予定しています。

「中川政七商店ラヂオ」では、別番組「季節の手ざわり」も配信中です。
こちらは、月に一度、季節ごとの風習や、暮らしに取り入れたい日本の文化についてお届けしています。
次回は5月5日(金)配信予定です。

お楽しみに。

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【季節の手ざわり】進化する素材、麻を纏う

こんにちは。中川政七商店ラヂオの時間です。

中川政七商店ラヂオ「季節の手ざわり」は、月に一度、季節ごとの風習や、暮らしに取り入れたい日本の文化についてお届けしています。
季節の移ろいを感じ暮らしを整える、そんなひと時をご一緒しませんか。

4月、「卯月」。
新年度には、職場や学校で新しいスタートを切る方もいらっしゃるかもしれません。
この時期、二十四節気では「清明」と呼ばれています。
万物が清らかでいきいきした様子を表す「清浄明潔」という 言葉を省略したもので、晩春の季語のひとつです。「清らかで明るい」という字の通り、清々しい陽気になり、草木が芽吹き、花が咲き、鳥や蝶が舞う…、心が華やぐこの時期にぴったりの言葉ですね。

今回は、中川政七商店のルーツである「麻」をテーマに、「進化する素材、麻を纏う」をお送りします。


ナビゲーター:クリス智子
ハワイ生まれ。大学卒業時に、東京のFMラジオ局 J-WAVE でナビゲーターデビュー。現在は、同局「GOOD NEIGHBORS」(月曜〜木曜13:00〜16:00)を担当。ラジオのパーソナリティのほか、MC、ナレーション、トークイベント出演、また、エッセイ執筆、朗読、音楽、作詞なども行う。得意とするのは、暮らし、デザイン、アートの分野。幼少期より触れてきたアンティークから、最先端のデザインまで興味をもち、生活そのもの、居心地のいい空間にこだわりを持つ。ラジオにおいても、居心地、耳心地の良い時間はもちろん、その中で、常に新しいことへの探究心を共有できる場づくりを心がける。


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進化する素材「麻」を楽しむ衣服

「麻布Tシャツ」

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麻のインナー「更麻」

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麻デニム

麻デニムパンツ

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次回「季節の手ざわり」は、5月5日(金)配信を予定しています。

「中川政七商店ラヂオ」では、別番組「工芸うんちく旅」も配信中です。
こちらは、工芸好き男子二人が日本全国の工芸産地を訪ね知った工芸のうんちくを語る番組。
次回は4月8日(金)配信予定です。

お楽しみに。

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【職人さんに聞きました】一生ものの「竹の収納籠」ができるまで

なるべく天然素材に囲まれて暮らしたい。
少しずつ、家具や暮らしの道具を買いそろえて、自分の好きな素材を身の回りに置けるようになってきました。
何を取り入れると心地好いかはそれぞれですが、天然素材好きならついつい集めてしまうのが、籠ではないでしょうか。

あらゆる物を受け止め、程よく目隠ししてくれる大らかさが頼もしくて、気が付けばふたつ、みっつと増えています。

籠と言っても、色々ありますよね。
竹、あけび、籐、い草、やまぶどう...どんな素材にもそれぞれの魅力がありますが、今日はその中のひとつ、中川政七商店からこの春発売となる、竹籠についてお話していきます。

初めて見た時、その美しさにほれぼれしてしまった編み目の精緻さ。
産地を訪ねてみれば、作りがいいものとはこのこと、と納得のものづくりを見せていただきました。

竹籠が作られる場所を訪ねて大分県の山里へ

竹と言えば、大分県別府市。
作り手である竹工房オンセの高江雅人さんの工房は、別府から山に車を走らせ、30分ほどの山里に位置します。

「若い頃から、自然の中で、なるべく自給自足で暮らしていきたいというのが夢でした。土に近い暮らしをしたかったんです。
それに沿う形で土地を買って、まずは家を自分の手で作るところから始めました。
竹職人になったのはその後ですが、幸い職業も自然の物を扱えているからか、楽しくやれています」

そう話すのは、竹工房オンセの代表、伝統工芸士の高江雅人さん。

高江雅人さん。背景に写る家は、丸太を購入して少しずつ自分で建てていったそう

竹籠と言えば、人が手で編んでいるのだろうという想像はつきますが、意外と編む以外の工程は知られていないものです。

現場を見せていただくと、1から10まで自然と向き合う、本当に手間ひまのかかるお仕事。じつは、編むまでの素材の準備だけで工程の半分ほどを費やすと言います。

竹を割って、、、

剥いで、、、

薄くして、、、
この間にも、選別したり面取りしたりと細やかな作業が沢山あります。

「竹はものすごく弾力があって、人と一緒で1本1本性質もちがう。全然思うようにならないんですよ。
だからこそ面白くもあって、飽きずに40年近く続けてこられたのかもしれません」

ままならなさが面白いのだと、あるがままの自然に向き合い、カラッと笑う姿が素敵ですが、完成した収納籠は“美しい”の一言に尽きます。
ものづくりにどんなこだわりがあるのか聞いてみました。

こだわりは、美しさと耐久性の両立

「こだわったのは、まず見た目の美しさ。そして、数十年と使っていただけるような耐久性です。
もともと自分の仕事として籠バッグを作ることが多いので、普段から大切にしている点でもあります」

「竹は昔からあるので、日用雑貨としては、人の歴史とともにずっとあるものですが、日用品を超えて、芸術性をもつのは日本ならではの特性ですね。

今回の編み方は“四つ目編み”と言って、シンプルな技法で、竹の素材感がよく出ています。編もうと思えば誰にでも編めるくらいのシンプルさなのですが、隙間を均一に美しく作るのは意外と難しい。“四つ目にはじまり、四つ目に終わる”と言われるような奥深い技法でもあります。
工程ごとにチェックを重ねながら、美しく仕上げることに注力しました」

「また、今回の収納籠は、物を入れたまま運べるように、耐久性のある設計にもこだわっています。
取手は籐で巻き付ける前に、竹釘で打ち付けて強度をあげました。籐も太いものを使い丈夫に仕上げています。

実際に検証はできないのですが、30年使っても大丈夫だったと言っていただけるように、丈夫な作り込みをしています」

外側からは見えないが、実は竹の釘を打ち付けて、補強されている
工房で重いものを入れて、耐荷重チェックをしている様子

「普段作っている籠バッグは、それこそ持ち歩くものなので、耐久性は大切です。ひとつ作るのに時間もかかるし、せっかく購入したのにすぐに壊れてしまっては僕らとしてもやるせない。
安心して長く使ってもらいたいから、強度のある設計をしています」

その美しさと耐久性のこだわりが何より活きているのが、取手の部分です。

「一周ぐるっと巻きついているだけなんですが、これが大変で。
竹は弾力性があるから、自然に作ると形が丸くなるんです。今回の商品は四角いので、それにあわせて均一の隙間でまっすぐ付けるのに、神経を使いました」

今回の製造に併せて作った、四角い形を出すために押さえこむ器具

「この籠のために、新しい道具を作ったりして。竹の張りで丸くなろうとするところを、ぐーっと押さえこむ器具を作って、ドライヤーであぶりながら角を出しました。
編み方も含め一見シンプルな籠ですが、この籠をひとつ作るために、いろんな器具を作っています」

飴色になるまで。一生ものの暮らしの道具

ままならない素材に向き合いながらも、使う人が心地好いように。美しく使い勝手のよい収納籠は、こうして一つひとつ職人の手で丁寧に作られています。

今回の収納籠は、ひとつ作るのに約1日かかるそうです。
手間ひまかけて作られるもの。使い手としても長い付き合いにしたいものです。

自然の素材は使う中で育つ、という魅力もあると思い、長く使ったものを見せていただきました。

上が18年使った籠バッグ。下が新品の籠バッグ。使い込むうちに飴色に育っていく

左上のものが18年使ったもの。右下の新品のバッグと比べると、色と艶が増しているのがよくわかります。

自分の暮らしを積み上げる中で一緒に育っていくと思うと、未来の暮らしを思い描くのが楽しみになります。

最後に高江さんに、購入される方にお届けしたい言葉はありますか?と聞いてみました。

「竹は一生ものの道具です。飴色になるまで使って育ててください」

自然の素材を活かしながら、人の手で丁寧に編みこまれて出来上がる、「取手のある竹の収納籠」。
ぜひ長く愛用いただけたら嬉しく思います。

< プロフィール>
高江雅人:伝統工芸士/竹工房オンセ代表
「土に近い暮らし」にあこがれ、自給自足の生活をすることを目指して、脱サラ。以来、40年に渡り竹職人として、バッグや花籠を中心とした作品づくりを行ってきた。
現在では、独立を目指す若者が修行に集まる代表的な工房にもなっている。

「土に近い暮らし」を実践される、高江さんの生き方に興味を持たれたかたは、「中川政七商店ラヂオ 工芸うんちく旅」で、より詳しくご紹介しています。
ぜひご視聴ください。

<掲載商品>
取手のある竹の収納籠 大
取手のある竹の収納籠 小

文:上田恵理子
写真:藤本幸一郎

【工芸うんちく旅】合同展示会「大日本市」

こんにちは。
中川政七商店ラヂオのお時間です。

「工芸うんちく旅」は、工芸好き男子ふたりが、日本の工芸産地をめぐり、職人さんや地元の方々から聞いてきたうんちくや小ネタ、地域の風習、食文化などを紹介する番組です。

工芸を中心としたものづくりメーカーが集う展示会「大日本市」

工芸好きアラフォー男子ふたりが工芸産地を巡り、職人さんや地元の方々から聞いてきたうんちくを紹介する番組「工芸うんちく旅」。今回は少し趣向を変え、中川政七商店が開催する小売店向けの合同展示会「大日本市」に出展されている作り手さんたちを取材します。今年の2月に東京・恵比寿で開催された第10回目となる大日本市のテーマは「新しいものづくりが集まる場所」。全国津々浦々から集まった作り手さんたちのブースにナビゲーターの引地海が訪問し、インタビューを実施。その模様をナビゲーターふたりで振り返ります。

初回は、まず京都で400年以上続く香りの総合ブランド薫玉堂(くんぎょくどう)さんをご紹介。お話を伺ったのはブランドマネージャーの負野千早さん。桃山時代文禄三年(1594年)から続く、日本最古の御香調進所として、伝統を受け継ぎながら、その時代にあった香りを作り続けています。美しいパッケージやもともと日本にあった香りの風習など、興味深いお話をたくさん紹介します。

続いて、北海道北見市に拠点を構える環境大善株式会社さんの消臭剤「きえ〜る」について、代表取締役社長の窪之内誠さんにインタビュー。その驚きの天然原料とは!?この商品を開発された窪之内さんのお父様のストーリー、さらにそんなことまで言っていいんですか!?という商品の裏側のお話まで。北海道の地から発信される消臭剤の未来について、語っていただきます。

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高倉泰(たかくらたいら)

中川政七商店による産地支援事業「合同展示会 大日本市」のディレクター・バイヤー。
大学卒業後、店舗デザイン・設計の会社を経て、2014年に中川政七商店に入社。日本各地のつくり手と共に展示会やイベントを開催し、商品の仕入れ・販売・プロモーションに携わる。
古いものや世界の民芸品が好きで、ならまちで築150年の古民家を改築し、 妻と2人の子どもと暮らす。山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。ほとけ部主催。
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引地海(ひきじかい)

Pomalo 株式会社 クリエイティブ・ディレクター。大学卒業後、広告代理店を経てフリーの編集者に。雑誌やWEBサイト、イベントの企画・制作・プロデュースを手がけ、2019年よりコンテンツ・エンジニアリング・カンパニー Pomalo(ポマーロ)に参加。11歳から17歳までをアメリカ・サンディエゴで過ごした帰国子女。2児のパパで、趣味はお弁当づくりとキャンプ。
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パーソナリティへの質問や、ご視聴の感想、ここに行ってほしい!といったリクエストなど、お聞きしたいこと、お伝えしたいことがあれば、お気軽にコメントをお寄せください。

皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回「工芸うんちく旅」は、3月17日(金)配信を予定しています。

「中川政七商店ラヂオ」では、別番組「季節の手ざわり」も配信中です。
こちらは、月に一度、季節ごとの風習や、暮らしに取り入れたい日本の文化についてお届けしています。
次回は4月7日(金)配信予定です。

お楽しみに。

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