木目込みの雛人形で祝う初節句。制作現場を訪ねて

女の子の健やかな成長を願って飾る雛人形。幾重にも衣裳を着飾った「衣裳着 (いしょうぎ) 人形」と人気を二分する「木目込み人形」の存在をご存知でしょうか?

木目込み人形とは?

木目込み人形とは、人形の土台に彫りこまれた溝(木目)に布を「木目込み」、人形のかたちに沿って衣裳を貼り重ねていく人形のこと。一方の衣裳着人形は、縫ってある着物をワラや木の芯に着付けてつくります。

「他にも木目込みは顔立ちは手書き、飾りは燭台、花は紅梅白梅、段飾りで一緒に飾るのは雅楽の人形。一方衣裳着はガラスの目に飾りはぼんぼり、花は桜や橘、段飾りには五人囃子というのが定番です。木目込みは上品な印象で、衣裳着は華やか、というのが従来のイメージでしょうか」

そう語るのは東京・上野にある真多呂人形の三代目、金林真多呂さん。真多呂人形は、木目込み人形発祥の地、京都の上賀茂神社から唯一「正統伝承者」として認定を受ける、由緒あるつくり手です。中川政七商店の木目込み人形も、真多呂人形さんにつくってもらっています。

中川政七商店の木目込みの雛人形。創業のルーツである麻生地で衣裳を仕立ててもらいました

「明かりをつけましょぼんぼりに/五人囃子の笛太鼓〜」という雛祭りの歌は、思えば衣裳着の雛人形の様子を歌ったものだったのかもしれません。一方の木目込み人形は、長く愛される存在でありながら、意外とその詳細を知られていません。

今回は、制作の過程を覗かせていただきながら、280年受け継がれてきた木目込み人形の魅力をたっぷり伺ってきました。

木目込み人形は京都生まれ、東京育ち

木目込み人形は江戸時代中期、京都の上賀茂神社に仕えていた、髙橋忠重が神事に用いる柳筥(やないばこ)という箱の残り木でつくったのが始まりと言われています。衣裳は神官の服装の余り布でした。

当初はサイズも小さなものでした

いわば仕事の傍らの余技として生まれた人形でしたが、次第に評判を呼び、その技術が江戸の町に伝わると、独自の発展を遂げるように。昭和に入ると雛人形として定着し、さらに「江戸木目込人形」として国指定の伝統的工芸品に指定されました。

「木目込み人形が東京で発展したのは、人形師の吉野栄吉が京都で木目込みの技術を学んで持ち帰ったのがきっかけでした。我々の初代・金林真多呂は栄吉の息子の喜代治に師事し、新たに創意工夫を加えながら木目込み人形を継承してきたと聞いています」

初代から受け継ぐ木目込み人形づくり

木目込み人形はその名の通り元々は木製でしたが、現在は桐塑(とうそ。細かい桐の木屑とノリを混ぜて粘土状にしたもの)という素材で本体を作ります。

この製法は、吉野栄吉が考案し業界に浸透していったもの。桐塑は木よりも軽く、切ったり削ったりも木と同じようにでき、何より数をたくさんつくることができます。さらにそれまで木を彫ってつくっていた原型も粘土型に変更。どちらも木目込み人形の量産を可能にした、画期的なアイデアでした。

 原型から起こした鋳型(かま)に桐塑を詰めて、人形の本体をつくります
本体の基礎が登場!ここから細かな凹凸を整えます
よく乾燥させた後に、竹ベラややすりで表面をなめらかに整えていきます

ここから工程は衣裳を着せていく「木目込み」に向かっていきます。胡粉(貝殻を焼いてつくる白色の顔料)をにかわで溶かして本体に塗っていく「胡粉塗り」は、本体の強度を保ち、後の「木目」を彫りやすくする効果があるそう。ひと工程ごとに、美しく仕上げるための工夫を感じます。

白く塗ることで、薄手の生地を着せた時も本体の色が透けず自然な印象になる
布を木目込むための溝を彫刻刀で彫っていきます

すべてが手作業。いよいよ木目込みの工程へ

ここからいよいよ木目込みへ。布地を定着させるために水に溶かした「寒梅粉(かんばいこ)」を溝に塗り、生地を一枚一枚入れ込みながらカットしていきます。

パーツのサイズに生地を切っておくのではなく、生地を木目込みながらパーツの形に合わせてカットしていく。その方が生地をむだにしないそう。
今回依頼した手績み手織りの麻は、生地に張りがある為、丸みのある本体に沿わせてよれずに木目込むのが難しかったと言います。
一枚ずつ丁寧に木目込んで、徐々に衣裳全体が見えてきました。
覗かせてもらった生地棚は圧巻の量!人形に合わせて、オリジナルの生地を仕立てることもあるそう

人形の印象を決める頭師の仕事とは?

人形づくりは分業制。職人さんも工程ごとに分かれています。特に髪の毛を付けたり顔立ちを描く頭部は、「頭師(かしらし)」と呼ばれる専門の職人さんが一手に引き受けます。

真多呂さんが信頼を置く頭師が、埼玉県岩槻市の人形工房中村さん。岩槻市は江戸から続く人形の町として知られています。頭づくりの様子も、岩槻の工房にお邪魔して間近で見学することができました。

こちらは面相書きがしやすいように顔の表面をやする工程。人形も、メイクは下地づくりが大切です

顔を描く面相書きの職人さんの傍には、頭部がたくさん差し込まれた藁の束。昔ながらの道具がある一方で、目の前にはタブレットが。この画面で人形ごとの顔立ちを細かく確認して描き分けているそうです。人形づくりの道具も日々アップデートされていることがうかがえます。

「表情は、一筆書きでさっと描かれているように見えますが、実際は細かく何度も重ねて描いていきます。目は中心から外側へ描くのでなく、どちらの目も左から右へと一方方向に描いていくのが基本なんですよ」

こうした雛人形の顔立ち、昔は切れ長の目がスタンダードでしたが、今では表情も多様化し、かわいらしい印象のものも多いそう。中川政七商店の雛人形も、真多呂さんと相談しながら、大人も子どもも親しみやすい表情を模索していきました。

顔が出来上がったら、髪つけの工程へ。人形の髪は「菅(すが)糸」という撚りをかけていない糸を使用しています。

おでこ、脇、後ろとパーツに分けてセット完了!流れるような手つきであっという間に髪型ができてきました
生え際に墨をぬり、髪と馴染ませます

どこから見てもかわいいように。仕上げの工程へ

こうして完成した頭部が真多呂さんに届くと、いよいよ仕上げの工程です。頭部や手を本体につけたら、持ち物や被り物も仕立てていきます。

こちらは五月人形の組み立ての様子。紐飾りなどの細かいパーツも、職人さんが全て手で結んでいきます。

「頭部も本体も一つずつ個体差があります。五月人形なら兜の被り具合も人形ごとにちょっとずつ変わるんですよ」

どこから見てもかわいいようにつくっている、と職人の高野さん。

仕上げで印象的だったのは髪をセットする工程。櫛でとかし、水で濡らしてドライヤーで乾かしてクセを直して…と、まるで美容師さんが髪をセットしているようでした。

こうして、少しずつ命を吹き込まれていった人形がついに完成しました。

次の100年も、愛される雛人形を目指して

工程を見せていただいて感じたのは、つくり方もお雛様の表情も、時代に合わせて変化や工夫を重ね続けてきているということ。

「100年変わらないものを、といいますが、必要とされなければなくなってしまいます。時代に合わせてあり方を変えて、欲しいと思ってもらえるものを今後もつくり続けていきたいです」と金林さん。

子どもの健やかな成長を願う親の気持ちはいつの時代も変わりません。ただ、家族のあり方や暮らし方は時代ごとに変わります。表情を描くひと筆、衣裳を木目込むひと手間に、いつの時代も親心に応えてきた木目込み人形の「変化の歴史」を感じました。

<取材協力>
真多呂人形

文:尾島可奈子

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そろそろ冬支度。冬のおうち時間を心地好く過ごす、温活のすすめ

あっという間に10月ですね。
まだまだ昼間は暖かくて過ごしやすい日が続きますが、夜になると足元が冷えるようになってきました。

昨年は湯たんぽを手に入れて、ネットフリックスのおともに、就寝のおともにと、暖房に頼らないポカポカとした夜の時間を過ごすことができました。
さらに心地好い冬の我が家を目指して、今年も新たに温活アイテムを手に入れようかと思案中です。

そこで今日は、温活にまつわる暮らしの道具をご紹介します。

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冬の部屋着に。まるでお布団のように、軽くて暖かいちゃんちゃんこベスト

冬の部屋着におすすめの、体を優しく包み込んでくれる一着です。ふわーっと軽くて暖かい着心地のよさは、「まるでお布団」とも言われるほど。
つくり手の光延織物さんに取材に伺った際、
「布団にかけて寝ると、夜にお手洗いに行くときや、朝起きたときもさっと羽織れて冷えを感じませんよ」と聞き、軽いから布団の上に置いておけるというのがとてもいいな、と感じました。
昔から使い続けられている道具には暮らしの知恵が詰まっているものですね。

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冬の朝が億劫にならない、発熱素材で足元ぽかぽかのスリッパ

冬の朝がずいぶん楽になった、とスタッフからおすすめされた発熱綿の室内履き。
朝、足を入れた瞬間もほとんど冷たさを感じず、ベッドから出て、ほんの数分の間にもう足元がぽかぽかとしているのだそう。
冬の朝、布団から出る億劫さはまだまだ解決策が見つかっていないので、今年はこれもいいな、と検討中です。

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冬の毛布の気持ち良さを湯たんぽに。無理なく楽しく続ける「ながら温活」

こちらは昨年手に入れた湯たんぽ。布団の中なら一晩中ポカポカですし、室内でも2~3時間はあたたかさが持続します。
ネットフリックスのお供に、就寝のおともにと、昨年の冬は大活躍してくれました。今年も使うのが楽しみです。

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毛布の一大産地でつくる、ふっくらとした起毛が心地好いひざ掛け

フワッとした毛布に身をくるむ瞬間を思い浮かべると、なんとも幸せな気分になりますよね。布団の中だけでなく、ソファで過ごす時間にも、ちょうどいいサイズの毛布があればいいのに…。
そんな希望を叶えてくれる、毛布の一大産地でつくったハーフケットがあります。毛布やさんがつくっているからこそ、ふっくら嵩を出す起毛が実現。ボリュームがあってふんわりやわらかな冬のソファのおともに嬉しいアイテムです。

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心地好い冬のおうち時間を過ごせるよう、冬支度をして備えようと思います。

冬の部屋着に。まるでお布団のように、軽くて暖かいちゃんちゃんこベスト

おうち時間が増えたいま、毎日を 心地好く過ごせる服を選びたいもの。これからの寒い日を快適に過ごすために着たいのが、ぽかぽかと暖かいはんてんです。
はんてんは、日本で古くから愛用されてきた防寒具。子どものときに着ていた方も多いのではないでしょうか。(ちなみに袖のあるものがはんてん、袖のないものがちゃんちゃんこと呼ばれています。)

この冬、そんな日本の冬の定番着から着想を得た「ちゃんちゃんこベスト」をつくりました。はんてんよりもコンパクトだけど、しっかりと暖かく、どんな服装でも羽織れて、ふんわり軽くて動きやすい。ちょっとした外出も、そのまま行けるものを目指しました。

少し肌寒いけど歩いている内に暖かくなるしコートを着るほどでもない。近所へのちょっとしたお買い物などにもさっと羽織って出かけられるデザインに。

はんてんの産地、福岡県筑後市へ。職人さんに聞いてみました。

現在、国内のはんてん製造シェア1位を誇るのが、福岡県筑後市 。筑後市では、綿入れはんてんと呼ばれ、昭和40年頃から製造が盛んになり、現在は全国シェア90%を超えるまでに成長しました。

今回はそんな筑後市 で、はんてん製造を手がける「光延織物」にちゃんちゃんこベストづくりを依頼。筑後地方を中心に伝わる久留米織の技術を受け継ぎながら、糸選びから生地織り、デザイン、縫製まで一貫生産体制にこだわってものづくりをされています。

「はんてんは、江戸時代の頃から庶民の間で寒い時期の農作業や家事、漁に出る時に重宝され、もともとは各地でつくられていました。それがどうして暖かい地域で発展したの?とよく言われますが、綿入れはんてんは、ものすごく寒いところでは着ない。ほどほどの寒さがよかったんじゃないでしょうか」と、代表の光延俊郎さんは言います。

筑後地域は、久留米絣や久留米織 の産地で織物業が発展する下地が整っていたため、はんてんが大量生産でき、価格が抑えられたことも関係しているそうです。

「他にも生産が盛んな地域はありましたが、筑後が生き残れたのは、暖かくて着心地がよかったからじゃないかと思います 」

そうして長年発展してきた中で見つけた、綿入れの黄金比があると言います。

まるでお布団、とも言われる心地好さの理由

「日本の冬と言えば、みかんとこたつと綿入れはんてん。暖かくて、着心地がいい。ふわーっと軽くて肩が凝らないから、リラックスできます」

はんてんは、表地と裏地の間に綿(わた)を入れてとじたもの。光延織物では、綿70%にポリエステル30% と、はんてんに適した比率の綿を入れています。綿屋さん と、暖かさや重さも踏まえて編み出した黄金比率とのこと。綿100%のほうが良さそうなイメージでしたが、ポリエステルを入れることで、綿の形状を保つことができ、暖かさをキープする事ができます。

「はんてんは、静電気が起きにくいので、乾燥するとバチッと来る方にもおすすめです。布団にかけて寝ると、夜にお手洗いに行くときや、朝起きたときも冷えを感じません」と娘の浩子さん。はんてんを愛用されていて、いつも本当に暖かいとしみじみ感じられているそうです。

浩子さんに、製造工程を案内していただきながら、お話を伺いました。

一つひとつ手作業でしかつくれないもの。

ちゃんちゃんこベストは、職人の手によって一つひとつ丁寧に仕立てられています。生地のすみずみまで綿を入れたり、綿が出たりずれたりしないように生地をとじていく作業は、熟練の技術と細かい気配りが必要で機械ではつくることはできません。さらに、従来のはんてんと違うことも多く、新しい挑戦だったそうです。

まずは裁断した生地を縫い合わせていきます。

表地の背中の部分は、綿どめのためにわざと半分に切ったものをつなぎ合わせています。表地は、あったかもんぺパンツと同じ暖かみのある起毛生地。触り心地は抜群ですが、柔らかく伸びるので、扱いが難しかったと言います。

2人一組で綿を入れていきます。まず、裏地を表にした生地の上一面に綿を広げます。

生地に合わせて綿をちぎったら、綿を包むようにして生地を表に返します。

声を掛け合わなくても阿吽の呼吸で、あっという間に完了。

巧みな手さばきで、綿を入れていく様子を撮影してきました。
日本の定番着を手掛ける伝統の職人技を、ぜひご覧ください。


「はんてんよりも薄くコンパクトにしたいというご依頼でしたので、綿を裂くなど、できるだけ平たく薄くなるように工夫しました。ただ薄くし過ぎると、端の綿が足りなくなってしまうので慎重さが求められます。外からは見えませんが、衿や裾のすみずみまでしっかりと綿を入れています」

また、薄くコンパクトに仕上げながらも、腰のあたりに綿を二重に入れているので暖かさを感じていただけます。

綿が全体に均一に入っているように調整するのは、とじ職人の役目。
綿の入り具合を見ながら全体が均一に、ふっくらと仕上がるように調節しながら、一針一針丁寧にとじていきます。

「これまで何十年もはんてんに厚みがでるようにつくってきたので、何気なくいつも通りに綿を足してしまうことも。慣れない作業は、難しかったです」

とじの工程で驚いたのが、縫い目が表に出ないように縫いしろ(左手に持っている部分)に縫いつけていること。内側にあって見えないのにどうやって縫うの?と聞くと、「手の感覚で縫ってるよ」と職人さん。まさに熟練の職人技です。

衿には綿を平らになるように入れて、縫い目が見えないようにくけ縫いします。
2つ前の写真と縫い方が違うのが分かるでしょうか。
手縫いというだけでも驚きなのに、同じ場所を2回縫っているのです。
1回目は綿をとじるために。2回目は衿をつくるために。初回のサンプルでは、衿がないタイプをつくってもらいましたが、衿はとじ糸を隠す役割もあるため残すことに。

綿とじが終わったら、縫い目が粗くなっていないかなどすみずみまでチェックして、ようやく完成です。わずかなほつれも見逃さない厳しい検品基準は、初めての職人さんには驚かれることも。一つひとつの工程を丁寧に、最後まで気を抜かず行うことで、体を優しく包み込んでくれる一着ができあがります。

昔はどの家庭でもつくられていた寒い季節の必需品。見ただけでは気づかない、熟練の技と時間がかかっています。俊郎さんは、他の上着を着るたびに、改めてはんてんの暖かさを実感されるそう。昔から変わらない暖かさと着心地の良さ。この冬、手放せない存在になりそうです。

<取材協力>
光延織物
福岡県筑後市大字高江612
https://www.mitunobu.com/

<掲載商品>
ちゃんちゃんこベスト

文:眞茅江里

秋の贈りものに。ときめきのある暮らしの道具たち。

ここ数年、秋になると結婚や出産、転居など、何かしら友人のハレの日が続いています。
先日も仲のいい友人が関西に引っ越してきたので、新築のお祝いを贈りました。

年を重ねるほど人それぞれ暮らしぶりが違うことを実感し、贈りものには無難なものを選ぶことが多くなりましたが、学生時代から気心の知れた仲ということもあって、ひさびさに少し遊び心のある品を贈ってみました。
必需品ではないけれど、中々自分では買わないからこそもらうと嬉しいようなもの。
渡すときには少し心配でしたが、想像した以上に喜んでくれた姿を見て、贈りものの醍醐味ってこういうことなのかも、とも感じました。

そこで今日は、秋の贈りものにおすすめの、暮らしを豊かにしてくれるちょっと遊び心のある道具たちを紹介します。

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癒しのひと時を与えてくれる、アロマオイルウォーマー

香りを楽しむだけでなく、その佇まいや使う時間の心地好さもあわせて癒しのひとときを与えてくれるアロマオイルウォーマー。
必需品ではないからこそ、宝物のように大切にしたくなる一品です。

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心までととのえてくれる、爪のお手入れ道具

爪のお手入れをただの作業ではなく、心までととのう大切な時間に変えてくれるガラスの爪磨き。一つひとつ職人の手でカットされた江戸切子の美しさが、使う時間をほんの少し贅沢なものに引き上げてくれます。

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日常に、得も言われぬかわいさを。猫のドアストッパー

置いておくだけで、「かわいい!」と癒される猫のドアストッパー。猫がお座りしてるような、ちょっとかまってほしそうにこっちを見ているような、なんともいえない可愛さがあります。
自分の身近でも最近「ぬいぐるみ買ったんだよね」とちょっと嬉しそうに話す友人がいて、大人になってもぬいぐるみってちょっとときめくよね、と思ったのでした。
得も言われぬ可愛さがあるような、大人の為のぬいぐるみも贈りものにおすすめです。

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一度使うと手放せない、真鍮の靴べら

皆さん靴べらって使いますか?
かく言う私も、人にいただいてから使い始めたのですが、一度使ってからは手放せなくなってしまいました。
毎日当たり前すぎて見過ごしていたけど、靴を履くことってちょっとしたストレスの積み重ねだったのかも、と思うほど、初めて使った時の心地好さには感動しました。

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贈りものを選ぶ時間は、相手との繋がりを改めて大切に感じられる楽しいひと時ですよね。

海外のつくり手も元気にする。台湾発「KŌGA – 許家陶器品」デビューの道のり

2021年9月、中川政七商店の工芸再生支援を経て新たなブランドが日本でデビューします。

名前は許家陶器品(KOGA tableware)。

つくり手は、台湾で100年近く続く陶磁器メーカーです。

今回は、「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げる中川政七商店が、初めて海外のつくり手を元気にするために取り組んだ、台湾の工芸再生支援のお話です。

工芸の衰退は、世界共通の問題


きっかけは3年前に届いた、1通のメールからでした。

「この国の工芸の復興を目指したい。力を貸してもらえませんか?」

送り主は企業支援などを行っている台湾デザイン研究院(TDRI)。ちょうど中川政七商店の社内では、社長が十三代 中川政七から十四代 千石あやに交代したばかりの頃です。

「社長交代の節目に、改めて私たちが海外でできることがあるのか、あるとしたらどんなかたちなのか。まさに可能性を検討しようとしていたタイミングでした」

2019年、プロジェクト始動時の記者会見で話す十四代の様子

そう振り返る十四代が当時、社内で話し合っていたのは4つのことです。

  • 工芸が失われつつあるのは日本に限らず、世界共通。そこに対して私たちが何かできることは無いか?
  • 日本の工芸の衰退は、戦後先進国から持ち込まれた大量生産大量消費のものづくりの影響も大きい。自分たちが海外で取り組みをする時、そうなってはいけない。
  • 日本の工芸の輸出ではなく、その土地らしさを活かしたものづくりのノウハウを伝えることなら、私たちが取り組む意味があるのでは。
  • 中川政七商店が扱うのは暮らしの道具。生活様式が似ている国なら、これまで積み上げてきたブランディングの手法が生きるかもしれない。

これまで中川政七商店では、自社の経営再建やブランディングの経験を活かし、全国60社のつくり手の工芸再生支援を行ってきました。「ものを売るという視点ではなくブランドをつくる」。このノウハウなら、海外のものづくり復興にも役立つかもしれない。そう海外との関わりを検討する中で飛び込んできた、台湾からの工芸再生支援依頼でした。

「国を超えて協業してほしいと言われるのはありがたいことだと感じましたし、直感的にお受けすべきだと思いました。ただ十三代会長からは当初『先に国内でやるべきことがあるのでは』と問われ、ずいぶん悩みました」

そんな時に「絶対にやるべき」と声をかけたのが、後に台湾工芸再生支援でタッグを組むことになる、method代表の山田遊さん。バイイングからショップや地域イベントの監修まで幅広く手掛け、中川政七商店のよきアドバイザーでもあります。

「白か黒かでなく、やり方を考えればいい。必要なら手伝うよ」

その言葉に力を得て、また会長からも最後には「やるからには絶対に結果を残さないといけないよ」と背中を押され、十四代と社内で結成された工芸再生支援チームは台湾へ向かいました。

初めての海外工芸再生支援先は、陶磁器メーカーのご夫婦

佳鼎の四代目、許世鋼氏

TDRIからのオファーは、日本のケースと同じく地域の中小規模の企業への経営コンサルティングとブランディング指導。手をあげた数十社から支援先に決定したのが、鶯歌(イングー)という土地の陶磁器メーカー「佳鼎(ジャーディン)」です。

実際に現地での工芸再生支援を担当した島田智子は、最初の印象をこう話します。

「鶯歌は台湾陶磁器の代表的な産地で、日本で言えば有田のような、観光もさかんな土地です。佳鼎はそこで100年近く続く歴史あるつくり手ですが、最終候補数社の視察に伺った時、お店の前では観光客向けに、仕入れた日本の焼き物の企画展が行われていました。

自社ですでにたくさんの商品も出されていましたが、売り上げの主力となるブランドが無い。ちょうど、私たちが最初に工芸再生支援を行った波佐見焼メーカー「マルヒロ」の初期の頃のように、ブランドの整理がされていない状態でした。

旧工場を観光地化。二階は歴史資料館のようになっている

それでも二階にあがると窯元の歴史資料館のようになっていて、語れる魅力が眠っていそうでした。日本で学んで現地で素材を集めて再現したという独自の釉薬も美しかった。整理すれば、台湾を代表するようなうつわのブランドが生まれるかもしれない、と感じました。

窯元独自の釉薬で開発した丹青碗。祖業である瓦工場から、日用食器へと転換するきっかけとなった商品

何より、佳鼎の経営を担う許さんご夫婦がとても勉強熱心で、これにかけるという強い意気込みを感じたんです」

こうして支援先が決定。経営面を中川政七商店のチームが、プロダクトの開発を山田遊さん率いるmethodのチームが引き受けることに。いよいよ台湾での工芸再生支援が本格化していきました。

似ているものづくり事情、異なる食卓事情

現地でのMTG風景(2019年)。窯元の歴史を掘り下げながら、ブランドを組み立てていった

「実際に始まってみると、日本も台湾も、国に関係なく『工芸あるある』、つまり中小規模のつくり手が抱える課題は同じでした。帳簿に材料費が載っていたりいなかったりと利益計算が曖昧だったり、複数ある自社ブランドの住み分けができていなかったり。

解決すべき課題が日本のつくり手と共通だったので、経営のフェーズは日本と同じプロセスをそのまま生かして進めることができました」

一方で明らかになったのが、台湾と日本の食卓文化の違いです。

実は台湾は屋台などの外食文化が根強く、日本のように毎食自炊する人は少数派です。そのため自宅に揃えている食器の数も少なく、キッチンが無いマンションも珍しくないそう。

「それでも、少ないながらも自炊する人たちはどううつわを選んでいるのか。TDRIのスタッフさんを通じて、台湾で自炊する人の食器棚を撮ってきてもらったりしながら、台湾の食卓事情をリサーチしました」

実際に撮影してきていただいた写真の一部

一方で許さんご夫妻には、4代続く窯元の歴史を調べてもらい、メーカーとしてのらしさを掘り下げていきました。こうして、山田遊さん率いるmethodの伴走のもと生まれたのが、台湾発の陶磁器ブランド「KŌGA – 許家陶器品」(翻訳すると「許さんの家のテーブルウェア」)。そのデビューを飾ったのが、根強い外食文化を逆手にとった「台湾の食卓で使えるきほんの一式」です。

「台湾の食卓で使えるきほんの一式」

50近いご家庭のキッチンの風景から、「台湾の人が初めて自分のためにうつわを揃えるなら、この一式を」という提案が導き出されました。

例えば、おかずを盛り付けるうつわの深さは4cm以上。お粥や煮物など汁物の多い台湾の食文化に対応します。

出来立ての熱々をいただく食事も多いため、持ちやすいように底部分には高台を設けました。

そして、どのうつわも台湾では一家に一台あるという保温・炊飯道具「万能電気釜」に必ず入るサイズに。

うつわの色は、窯の炎の色や、代々生み出されてきた佳鼎独自の釉薬の色、鶯歌の風景をイメージした色など、許さんの窯元らしさの出る4色に。

組み合わせれば、食卓がカラフルに彩られます。

海外の工芸再生支援を通じて見えたもの

ブランドのデビューはまず昨年の12月に台湾で記者発表され、年明けの2021年1月に台湾国内で販売のためのクラウドファンディングを実施。目標の10倍を超える額を達成することができました。

「もちろん日本のこれまでの事例と同じで、ブランドをつくって終わりではありません。あとはどうやって人の手に届けていくか。ここからがスタートです。

それでも、クラウドファンディングは台湾の人たちにどう受け止められるかのひとつの試金石でした。やはり食器に興味がないのではないかと、はじめは心配でしたが、早々に目標額を達成して手応えを感じました。

私たちがこれまで大事にしてきた、土地の風土や技術を生かしたものづくりのあり方が、台湾の人たちにも届いたのだなと」

また、今回のプロジェクトを後押しし、プロダクトの開発支援を担当したmethodの山田遊さんはプロジェクトの道のりと意義をこう振り返ります。

「このプロジェクトが始まる際、台湾でも若い世代を中心に、日々の食事と、その際に用いる器や道具も大事に選びたい、という気運が少しずつ盛り上がりつつあるように感じていました。

ちょうどプロジェクトの道半ばで、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、全てオンラインで進めざるを得ませんでしたが、台湾の食生活を考慮しながら、台湾で作られた新しい食器で、日常の食卓を彩り、食事を楽しむ、という意義は、より強くなったように思います。」

「KŌGA – 許家陶器品」は2021年9月22日に日本でもブランドデビューを迎えます。日本の使い手にとっては、また新たなうつわとの出会いです。

国に関係なく、土地の風土や技術が生きた工芸はきっと面白い。台湾、日本、どちらの使い手にとっても、「KŌGA – 許家陶器品」が暮らしと工芸を楽しむきっかけとなりますように。

<掲載商品>
「KŌGA – 許家陶器品」

文:尾島可奈子

スープ作家・有賀薫さんに聞いた、「長いおつき合いになりそうな予感がするキッチンツールたち」

一流シェフが愛用する調理道具や、長年お店で道具と向き合ってきた店主が「これは」と手に取るもの。
道具を使うことに長けている各分野のプロフェッショナルが選ぶものには、どんな秘密があるのでしょうか。
私たちが扱う暮らしの道具を実際に使っていただいて、ものの良さだけでなく至らなさも含めて感想を教えてもらいました。

本日紹介するのは、スープ作家として365日、毎日スープをつくっている有賀薫さん。
さまざまなキッチンツールを使ってみての感想を記事にまとめていただきました。


スープ作家。1964年生まれ、東京出身。
ライター業のかたわら、家族の朝食に作り始めたスープが2020年2月時点で約2900日以上になる。
著書に『スープ・レッスン』『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』『朝10分でできる スープ弁当』など。レシピ提供、コラム執筆、イベントなどを通じて、現代家庭の料理改革を推進中。


では早速、有賀さんによる「長いおつき合いになりそうな予感がするキッチンツールたち」を見ていきましょう。

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サイズと自分の手の関係って大事だなと気づかせてくれた、DYKのペティナイフ

多くの道具は、手で触れ、手で扱うものです。だから、使う自分自身の手の大きさや形にその道具がフィットするかどうかはわりと大事にしています。でも、一度使い慣れてしまうと多少不便なものでも案外気にならなくなってしまうんですよね。
そのことに気づかされたのは、DYKのペティナイフを握ったときでした。

DYK 包丁 ペティナイフ

包丁やナイフはやっぱり道具の中でも最も握っている時間が長いものなので、持った感覚、切った感覚がしっくりくるものを選ぶようにしています。

写真を見ておわかりになるでしょうか。この包丁、普通のペティナイフと違って、刃渡りはとても短いのですが、柄は普通の包丁に近いぐらいしっかり太くて長さもあります。軽いけれどちゃんと握れる。それまで使っていたペティナイフの柄は細くて力が入りにくかったのに、使い慣れていたので不満に思うことを忘れていたんです。でもDYKのナイフを握った瞬間、これこれ!と、一気に喜びがあふれました。


刃が短いので、フルーツを切ったり、ハムやチーズをちょこっと切ったり。お蕎麦の薬味のネギやスープのトッピングのパセリが少しだけ刻みたい、そんなシーンは日々の料理の中に頻繁に出てきます。その都度、気持ちよく手にフィットする道具があるとないとでは、一日のトータルの幸福量が違ってきます。

++
サイズといえば、実は同じDYKのおたまも使ってみたのですが、こちらは我が家の日常使いには少し大きすぎました(笑)

DYK ステンレス お玉

肉じゃがをよそおうとしまして、

小さめのお椀や小鉢だと、はみだしてしまいます。実はおたまって、通常のサイズでもかなり大きいんですね。なので私はかなり小さなサイズのものを使っています。写真で比べるとわかっていただけると思います。

おたまだけでなくキッチン道具は、手の大きい人か小さい人か、力のあるなし、なんだったらキッチンの大きさにもよるので、決してこの製品が悪いってことじゃないんです。でも、使うのは誰でもなく自分なので、誰がおすすめしたではなく、自分の手の感覚を信じることが大事だなとあらためて思いました。

++

ささいなことも我慢しちゃいけないんだと思えた、THEの醤油差し

長年、ストレスに思っていた道具がありました。醤油差しです。よさそうなものを買って使っても、いつも失望させられます。醤油がたれたり、口のところに醤油がガビガビ固まったり。しまおうとして、テーブルの上に醤油の輪ができていたりすると、ブルーな気持ちに。

それまで使っていたのは機能は良くてもデザインがちょっと古くさかっとり、スタイリッシュだけど頻繁に詰まったり。満点というものがなかったんです。

今回、思わぬご縁で理想の醤油差しと出会えました。それがTHE 醤油差し!

THE 醤油差し

まず、構造です。注ぎ口がどこにもありません。構造的にはふたに切れ込みが入っていて、そこから醤油が出てくるしくみ。醤油を入れて醤油をたらしてみると、素晴らしくキレがよく、思わず何度か無駄に醤油を出してしまいました。

注いで残った醤油が、微妙な角度がついた切れ込みに戻っていくため、まったく垂れない。もちろん切れ込みは醤油が行ったり来たりするので汚れますが、醤油がまだ残っていてもふたをとってふただけ洗う、みたいなこともできるのです。醤油が固まって注ぎ口に詰まるという、あのストレスから解放されます。

サイズもちょうどいい。醤油差しに入れた醤油はどうしても劣化が早く、どろっとなってしまいがち。でもこのサイズなら少量入れてさまになります。

そして、なんといっても美しさ。醤油差しは卓上で使うものなので、デザインが気になります。この醤油差しはぽってりとあたたかみを持ちながらも洗練されたイメージです。
似ていると思いませんか?そう、あの赤いふたのついた有名メーカーの醤油差しに。真似ではなく、絶対リスペクトしているよね!と、なんだか嬉しくなりました。

それまで私は、醤油差しという商品に対してそんなにパーフェクトを求めちゃいけないのかなと、なんとなくあきらめていました。でも、使ったあとでネットの紹介ページをよく読んだら、私が感じたことがそこに全て書いてあったんです。
考えている作り手はちゃんと考えてくれている。だから使う側の私たちも我慢したり妥協するのではなく、こうなっているほうがいいよね、という「使い手の気持ち」をもっと伝えなくちゃいけないんだなと思いました。

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さて、我慢と言えば、スープ作家としてなんとなく不満だったのが、だしを漉すあみ。通常のザルはどうしてもかつおぶしの細かいくずがあみの目を通ってしまいます。撮影などではさらし布を使って漉していましたが、それも面倒です。

家事問屋のだしとりあみは網の部分がすごく細かいメッシュ状になっているので、袋の最後に残った粉状のかつおぶしを全部入れても写真の通り、クリアなだしがとれます。

家事問屋 だしとりあみ

こういう小さなストレスが解消されるのって本当に快感です。だしとりあみは使わない人も多いと思いますが、よくだしを取る人にはおすすめ。

使っているうちに、その良さがじわじわきた漆器

第一印象はいまいちだったんだけど、付き合ってみるとその人柄に引き込まれる人っていますよね。この器は私にとって、そういう人のようでした。RIN&COの越前硬漆シリーズです。

RIN&CO. 越前硬漆

スープを盛り付ける色つきの器で、いいものがないかなと思って探していました。漆器なのに洋食器に寄せた形がいいかな、と気軽に選んだものの、届いてみると、思った以上にカラフル。うちにある器と馴染むかとひいてしまいましたが、こわごわ使い始めてみると、あれ?とても使いやすい。

漆器といってもカジュアルです。とくに、上の写真で使っている、口の広い形の平椀は盛り付けやすく使い勝手が幅広い。スープはもちろん、ちょっとした常備菜を盛り付けるにも大活躍だし、ふだんのご飯茶わんをこういう塗りものに変えるの、ありかもと思いました。刷毛目がついていて傷もつきにくく、気楽に使えます。

しかもこれ、なんと食洗機対応なんです。漆器としては本当に画期的ですよね。「硬漆」は新しく開発された技術で傷つきにくい強い漆なんだそうです。(じつは途中までそのことを知らずに手洗いしていました…)

漆器は軽く、手ざわりや口当たりがよく、熱いものを入れても持ちやすくて、かつ保温性もある。せとものと違って割れにくいから子どもが使っても安心です。それは私たちも普段の生活で実感しているはず。
こんなに高性能なのに、なぜみんなが漆器をお椀以外に使わないかといったら、お手入れが大変そうということと、なんとなくイメージとして感じる格式の高さ、現代の食卓に合わないデザインかなと思います。

昔の物事から新しい知恵を開かせる「温故知新」という言葉がありますが、いまどき、それをやっていると昔の良いものはどんどんなくなってしまう。今必要なのは、目の前のみんなの暮らしをよーく見て、そこに古い知恵をどう使うか考えていく「温新知故」なんじゃないか。この器を使いつつそんなことを考えました。

多くの人が求めているのは、特別な日に使う特別な器ではなく、日常に気兼ねなく使えるシンプルで飽きのこない器です。その点、この漆器は、お手入れの点は完全にクリアしていますし、カジュアルな雰囲気もあります。
ブルーなどはおいしそうに見せるのが若干難しい色なので、もう少しおだやかな色のものも選べると、色物をアクセントに使って今っぽい食卓につながるかもしれないと感じました。

売る人が「気軽ですよ、今の暮らしに合いますよ」というのではなく、商品そのものが暮らしを語りかけてきたら最高です。

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同じくじわじわと良さを感じたもうひとつの商品が、この越前木工の丸いトレー。お盆って、これまでほとんど使いませんでした。もちろんいくつか使ってみたのですが、どうもしっくりこない。うちは少人数家庭なのでお盆なしでも困りません。

RIN&CO. 越前木工 丸トレー

このトレーは気がつくとつい使っているのです。さりげないというか、お茶にもコーヒーカップにも汁物碗にも合う感じ。
なにより、手に持ったときの縁のカーブがなんとも気持ちいいんです。急に立ち上がっているわけでもないし、かといって浅すぎない。指をかけるとほっと落ち着くこの感じ。

なにがいいのか、理由はよくわからないです。なんだか自分に合ったんですね。道具にはそういうところがあると思います。

撮影にもよく使わせてもらっています。

このお盆の上の、THE SOUP SPOONも、自然に手に取ってしまう道具でした。柄が丸くて適度な重みがあって、持って落ち着くカトラリーです。

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さて、ご紹介した道具たち、いかがでしたでしょうか。今回は私が選ばせてもらっていくつか使った商品の中から、特に良いと思ったもの、紹介したいと思ったものを書いてみました。ひとめぼれのもの、使った瞬間すぐわかるもの、じわじわ良さがわかるもの。道具は人にも似ています。

自分のこれ!という道具と出会うことはそう簡単なことでもないと思っています。でも、考えてみてください。この先の人生から食べるということがなくなるとしたら、それは死ぬとき。だからキッチン道具選びには長い時間をかけてもいいのです。出会ったり別れたりを繰り返しながら、これ!という一生ものの道具と出会えたら、暮らしは少しずつ豊かになっていくはずです。

みなさんも、自分にぴったりの道具を探し当てられますように。

文:有賀薫
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<掲載商品>
DYK ペティナイフ
DYK ステンレス お玉
THE 醤油差し
THE SOUP SPOON
家事問屋 だしとりあみ
RIN&CO.

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*この記事は、中川政七商店が運営する合同展示会「大日本市」の「カタリベ」企画で書かれた記事を再編集して掲載しました。