こんにちは。細萱久美です。
和菓子派か洋菓子派か、と聞かれることがあります。私はどちらも好きで、特にクラシックな菓子が好みです。洋で言えばプリン、シュークリーム、パウンドケーキなど。和で言えばどら焼き、大福、わらび餅。ここ数年進化の激しいかき氷でも、宇治金時やイチゴなど、伝統工芸ならぬ伝統菓子を勝手に重んじています。
それらには少しばかりうるさくて、どこのでも美味!とはならず、結果老舗と言われる店のお菓子が好物となることが多いです。
100歳で亡くなった京都の祖母は、小魚などを好む健康的な食道楽でしたが、漬物は○○、蕎麦は△△、上生のきんとんは□□、などほぼ決まった店を贔屓にしていました。タクシー会社も決まっていたのは孫ながら驚きでした。
私は、そこまでの固執はないものの、歳を重ねるほどに特に食に関しては保守的で、老舗への信頼感が強まっています。食は一期一会なので、いつでも裏切らない味を長年保ち続けていることには尊敬の念を抱きます。
東京都阿佐ヶ谷 うさぎやのどら焼き
祖母に習い、ほぼ同じ店から浮気をしていない和菓子の一つが、「どら焼き」です。ご贔屓は阿佐ヶ谷の「うさぎや」。実家のある三鷹から電車で10分程度なので、どうしても食べたくなると気楽に買いに行けるほどの距離。
どら焼きはハレの菓子ではなく、ケの菓子なので、気取った店ではなく地元に根付いた素朴な店が似合います。うさぎやは、店構えもまさにそんな感じ。
気取りのないガラスの引き戸をガラガラと開けたら、中には小振りですが、お手入れされているショーケースに、どら焼きだけでなく季節の生菓子や、定番の可愛らしいうさぎ饅頭が並びます。
どら焼きは大ぶりですが、あまりの美味しさにいつも2個目に手が伸びそう。皮はしっとりと弾力があって、きめが細かくパサつき感は一切ありません。ハチミツやみりんが効いているのでしょうか。
そしてたっぷり入った粒あんは、初めて食べた時「みずみずしい粒あん」という印象でした。しっとりしているので、皮に程よく馴染んでいます。しっかり甘みもありつつ、くどさがなくバランスが良いので飽きがありません。
次の日は餡の水分が落ち着いてきて、馴染んだ美味しさがありますが、是非とも当日出来立てのフレッシュなどら焼きを食べていただきたいと思います。
店内で味わう、ローカル名店ならではの楽しみ
生菓子ゆえ通販もなく、百貨店などへの出店や催事さえも恐らく無いので、店に行かねば食べられぬ味。地方でも観光地には訪れる機会があっても、東京のどちらかと言えば住宅地には、よほどでないと行く機会が無いものです。
東京に住んでいても、近くて遠い、これぞローカルという感じもありますが、和菓子や餡に目のない方には是非一度お試しを。遠路はるばるでもその価値あり。店内でお茶することもできるので、ひと休みしてください。
ちなみにどら焼きの名店として有名なうさぎやは、日本橋・上野・阿佐ヶ谷の3箇所に同名店舗が存在するのはご存知でしょうか。どうやら親族関係はあるものの、本店、支店などの関係ではなく、それぞれ独立して店舗で、材料や製法も違うそうです。
日本橋のどら焼きは食べたことがありますが、美味しいけれど、場所柄かいつものおやつ、というよりも箱入りのおもたせの用途が多そうです。あくまでもお好みは人それぞれ。
阿佐ヶ谷のうさぎやでは、どら焼きの袋にうさぎの絵があるのと、自家用の飾らない素朴な包みも好み。寒天、こしあん、求肥の潔いあんみつも店のイメージにぴったりです。
平日でも入れ替わり立ち替わり来店が途切れず、接客の女性数名がチャキチャキと対応されているのも気持ちが良いのです。
阿佐ヶ谷が比較的近いということ以外に、お店とお菓子とデザインのトータルな「らしさ」が、私の中でリピートしたくなる良店という存在です。
<紹介したお店>
うさぎや
東京都杉並区阿佐谷北1-3-7
03-3338-9230
細萱久美 ほそがやくみ
元中川政七商店バイヤー
2018年独立
東京出身。お茶の商社を経て、工芸の業界に。
お茶も工芸も、好きがきっかけです。
好きで言えば、旅先で地元のものづくり、美味しい食事、
美味しいパン屋、猫に出会えると幸せです。
断捨離をしつつ、買物もする今日この頃。
素敵な工芸を紹介したいと思います。
文・写真:細萱久美
*こちらは、2019年4月10日公開の記事を再編集して掲載しました。同じどら焼きでもお店によってこだわりは違うもの。自分のお気に入りを見つけに出かけてみてはいかがでしょうか。