【あの人が買ったメイドインニッポン】#26 エッセイスト・松浦弥太郎さんが“最近買ったもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

今回からゲストは、エッセイスト/クリエイティブディレクターの松浦弥太郎さん。初回は、「最近買ったメイドインニッポン」についてのお話です。

それでは早速、聴いてみましょう。

[松浦弥太郎さんの愛着トーク]
・最近買ったのは、「田端志音さんのぐいのみ」
・尾形乾山の「写し」として作られたもの
・ふつうは手にできない乾山の世界を日常の中で体験できる…!
・じつはあんまり買いものはしない?
・人や土地との出会いによってハッとすることを大切にしたい
・買うのではなく、買わせていただく感覚
・買わせていただく感覚になれるものと出会えると嬉しい
・お店は物を売る場所ではなく、出会いをつくる場所

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松浦弥太郎さんが一生手放したくないメイドインニッポン

松浦弥太郎さんが“最近買った”メイドインニッポンは、「田端志音さんのぐいのみ」でした。


ゲストプロフィール

松浦弥太郎

2002年、セレクトブック書店の先駆けとなる「COWBOOKS」を中目黒にオープン。2005年からの9年間『暮しの手帖』編集長を務める。その後、IT業界に転じ、㈱おいしい健康取締役就任。2006年より公益財団法人東京子ども図書館役員も務める。ユニクロの「LifeWear Story 100」責任編集。「Dean & Delucaマガジン」編集長。他、様々な企業のアドバイザーを務める。映画「場所はいつも旅先だった」監督作品。著書に「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」など著書多数。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回も引き続き、松浦弥太郎さんにお話を伺っていきます。3/22(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら

【はたらくをはなそう】商品部 青野洋介

青野洋介
商品部 商品一課


大学で建築とプロダクトデザインを学び、2018年に新卒で中川政七商店に入社。
以来、商品部でデザイナーとしてバッグを中心に、素材や製品のジャンルを問わず幅広い商品の開発に携わっています。



小さなころの夢は農家か大工でした。農家である田舎の祖父の存在が身近だったこともあり、暮らしに必要なものを自分の手で作ることに憧れがあったのだと思います。その後も漠然と「何かものを作る人になりたい」と思い続け、建築とデザインが学べる大学に進学しました。授業で工業デザインを中心に学びながら、様々な出会いを通して工芸や手仕事の領域に興味を深めていきました。

そのなかでも印象的だったのが、ゼミの活動で訪れた民藝の陶芸家・河井寛次郎の記念館。かつての住居兼仕事場であるその空間からは、地に足のついた実直な暮らしと仕事から、自然と美しさが生まれる光景が見て取れて、心に深く響きました。土地の素材と人の手から生まれるもの、その土台にある連綿と続いてきた豊かな文化風習。これを失ってしまうには惜しい。日本のものづくりや文化を残したいという思いを強くした瞬間です。そんな時に出会ったのが中川政七商店。幅広い暮らしの道具を作り、ものづくりを通して工芸や文化を守り育てていこうと取り組む姿勢に共感しました。

そうして入社してからは、陶磁器のうつわやガラスのコップ、木の掃除道具、帆布や革のバッグに小物、テキスタイル、ハンカチや香水など、幅広いものづくりに取り組んで来ました。なかでもやりがいを感じているのが、暮らしに近い道具を作ること。工芸の道具を使うには時にコツや手間も必要ですが、人とものの関わりのなかに生まれる喜びや愛着を伝えていきたいと思っています。できるだけ手に取りやすいデザインに落とし込み、入口のハードルは下げながら、先にある楽しさや価値を感じてもらえるようにものづくりに取り組んでいます。

デザイナーとして最も大切にしているのは、作り手である前に一番の使い手であること。生活のなかでものを使い、経験する物事をよく観察しよく知ること、とも言えます。暮らしの道具を作るうえで、作り手自らの生活の実感から生まれるアイデアや課題意識、「こんなものが欲しい」という素朴な欲求が、何よりも大切で共感を生むと考えているからです。

二つ目は、ものを深く理解すること。ご一緒する作り手さんたちの産地や現場に、どんな素材や設備、技術、経験があり、どんな人がどんな思いで作るのか。また素材や加工の特性に加え、その“もの”にはどんな歴史や文化があるのか。ものづくりは知れば知るほど面白く、無理のない自然な設計をすることがクオリティに繋がります。

そして人と関わり、生活の背景にある社会で起こる出来事をよく知り考えること。購入は投票だとたびたび言われますが、作ることもまた強い投票です。複雑な社会のなかで、明るい未来に繋がる選択ができるように心がけています。

仕事をするなかで楽しいのは、ものづくりがドライブするのを感じる瞬間。達成すべき要素や制約について、どうすればうまく繋がるのかを模索していくのですが、考えあぐねた末に奇跡の1ピースを見つける瞬間があります。メーカーさんの得意不得意に合わせてデザインを調整したり、逆にこちらの意図を汲んで新しい提案をしてくださったり。アイデアが人との関わりを通してよりよいものになっていく。ぐるんぐるんとエンジンが回り始めた時はたまりません。

時には意図したものとちょっと違うな‥‥というサンプルが上がってくることもあるのですが、それをうまく活かしていくのも、人と一緒にものを作る面白さの一つ。ひたすら合理的にデザインしてコントロールするのではなく、対話しながら両者のいい落としどころを探っていく。人の至らなさや弱さも含めた人間らしさを包括したところに、美しさや愛らしさが生まれると思っています。

そして苦労して作った商品が人に届き、喜んでもらえた時の喜びはひとしおです。目の前の人はもちろん、いつか、何十年後か古道具屋に出ても、人の手を渡りながらどこかで誰かの暮らしを豊かに彩るものを作りたいと励んでいます。


<愛用している商品>

うつわになる硝子の片口浅漬鉢

数日で食べきれる適度な量の浅漬けを手軽に作れる機能性と、なんといってもこの見た目の美しさ。ずっしりとした肉厚なガラスの氷のような存在感、ゆらぎあるテクスチャー、片口型の愛らしい佇まい。もう一品浅漬けでも作ろうかと、怠惰な自分を勇気づけてくれます。かぶらと柚子で作る千枚漬けは我が家の冬の定番。食卓に欠かせない道具です。

伊賀焼のスープボウル

火にかけられるうつわって、なんだかロマンがあります。タフで気負わず使えて、食卓でぐつぐつとしている様は臨場感たっぷり。そしてアイコニックな持ち手とコロンとした佇まいの愛らしさ。質感は豊かながら、国籍をあまり感じない形なので、和食にも洋食にも、アジア料理にも合わせやすいです。半人前だけどよく働く「土鍋の弟分」みたいな存在感がお気に入りです。

こはぜ留めのコンパクト財布

自分が担当した商品のなかでも、特に気に入っている商品の一つ。コンパクト財布のライトユーザーに向けた、程よい落としどころを提案しました。持っていることを忘れるほどのコンパクトさ、それでいて必要十分な使い勝手と、幅広いシーンに馴染むきちんとした佇まいがとても気に入っています。「わたしの好きなもの」の記事ではより詳しく書いたのでよろしければこちらもご覧ください。



中川政七商店では、一緒に働く仲間を募集しています。
詳しくは、採用サイトをご覧ください。

【旬のひと皿】菜の花と白身魚のカルパッチョ

みずみずしい旬を、食卓へ。

この連載「旬のひと皿」では、奈良で創作料理と玄挽きの蕎麦の店「だんだん」を営む店主の新田奈々さんに、季節を味わうエッセイとひと皿をお届けしてもらいます。



今は奈良で暮らしていますが、高校卒業までは島根県で育ちました。その頃は身近にあるものの魅力に気がつかず、漠然と都会に憧れていました。

ずいぶんと時間が経って奈良でお店をすることになり、今は(奈良にも素晴らしい食材がたくさんあるのですが、出雲そばをお出しするお店ということもあり)島根からさまざまな食材を送ってもらっています。

以前読んだ本で、素晴らしいなと思っているお店の店主さんが「地方は都会の母である」と書いておられ、それがずっと記憶に残っています。食事を作って食べることは、全て自然の産物のおかげ。緑豊かな場所が、本当の意味で豊かな場所なんだなぁと思うようになりました。

昨春、いつも食材を送ってくださっている生産者さんへ会いに、島根県浜田市の海辺の町へ行ってきました。もう5年も電話ではお話をしているのに、初めて直接お会いできたことに感激。電話越しでも楽しい方だなと思っていたのですが、改めてお話するのの面白いこと!楽しい冗談も交わしつつ、地方ならではの難しい現実も聞いて、なんとかしたいなぁと帰ってきてから考えたり。

あまりに皆さんよくしてくださって、時間が経った今も嬉しい、楽しい気持ちが忘れられません。次はいつ行けるかなぁと楽しみにしています。

そんな素晴らしい方から届くお魚を使って、今回は奈良の野菜と合わせたカルパッチョをご紹介します。

にんじんソースや生姜醤油ソースは、お野菜にかけてサラダにしても、お肉にかけても。春の爽やかな新しい気持ちに合わせて、彩り豊かなお皿にしてみました。

<菜の花と白身魚のカルパッチョ>

材料(2~3人分)

・鮮度のいい白身魚やホタテなど(今回はヒラメを使用)…130~150g
・菜の花…1束 

◆にんじんソース
・にんじん…小1本
・塩…ひとつまみ
・はちみつ…小さじ1
・白バルサミコ酢(他のお酢でも代用可)…小さじ1
・オリーブオイル…大さじ1

◆生姜醤油ソース
・生姜…ひとかけ
・醤油…大さじ1
・酢…大さじ1/2
・オリーブオイル…大さじ1

作り方

下準備として、菜の花は軸の根もとを切ってぬるま湯に浸けておく。このひと手間でシャキッとする。

まずはにんじんソースを作る。にんじんは皮をむいて鬼おろしですりおろす(普通にすりおろしても良いが、鬼おろしを使うことで食感がザクザクになる)。ボウルににんじんソースの材料(オリーブオイル以外)を入れて混ぜ、最後にオリーブオイルを入れて混ぜる。オイルが先だと味が入りにくいので注意。

続いて生姜醤油ソースを作る。生姜はスプーンなどで皮をこそげ取り、すりおろす。先ほどと別のボウルに生姜醤油ソースの材料(オリーブオイル以外)を入れて混ぜたら、オリーブオイルを入れて再度混ぜる。

白身魚の水分を拭き取り、軽く塩(分量外)をしてしばらく置く。菜の花は手で葉と本体にちぎり分けたら、軸表面の筋を包丁でとっておく。こうすることで食感がよくなる。
※菜の花の本体と葉を分けるのは、茹で加減を揃えるため

鍋に湯を沸かし、塩(分量外)をひとつまみ入れ、菜の花(本体)を軸の方から入れる。軸だけで30秒ほど茹でたら、分け置いた葉の部分とともに丸ごと湯に入れて1分ほど茹でる。茹で上がったら冷水にとって水分をきっておく。

菜の花の水分を拭き取り、食べやすい大きさに切る。魚の水分も拭き取り、こちらも食べやすい大きさに薄く切る。

皿に菜の花と白身魚を彩りよく盛り付け、生姜とにんじんのソースをかけたら完成。

うつわ紹介

瀬戸焼の平皿 黄瀬戸

写真:奥山晴日


料理・執筆

だんだん店主・新田奈々

島根県生まれ。 調理師学校卒業後都内のレストランで働く。 両親が母の故郷である奈良へ移住することを決め、3人で出雲そばの店を開業する。  

野に咲く花を生けられるようになりたいと大和末生流のお稽古に通い、師範のお免状を頂く。 父の他界後、季節の花や食材を楽しみながら母と二人三脚でお店を守っている。

修繕しながら長く使う#2「服の染め直し」

修繕現場を取材しながら、末永く付き合うお手入れのコツを教えてもらう短期連載。前回は、「漆椀」の修繕現場を取材しました。
今回は、「染めの服」の染め直しについて、お届けします。

#2 服の染め直し

今回訪ねたのは、宝島染工の大籠千春さん。
宝島染工は、天然染料のみを使用し手染めで染める、福岡県を拠点とする工場。1点ずつ染める手染めでありながら、製造工程を整え中量生産に重きを置き、作品ではなく商品としてのものづくりに特化しています。

「染め直しは自社で染めた商品のみ対応していますが、最近では月に10件ほど依頼いただくようになりました。個人の方だと、2~3年ほど着てから染め直しに出していただく方が多いです。

こちらは、中川政七商店で昨年販売していた『ムラ染めのワンピース』。日焼けしてしまったので、せっかくなら全体を染め重ねしてみたいという依頼でした。どのように染め直したいかは人それぞれなので、全体に色を染め重ねるのか、柄を足すように染めるのか、お客さまと相談しながら決めています。もともと商品を作る時も1着ずつ染めていくスタイル。染め直しの際も、ヒアリングしながら個別に対応していきます」

「経年変化によっていい味に育っているものもあるので、状態によっては『このまま着ていただいた方がいいんじゃないですか』と聞いてみることもあります」

BEFORE

赤枠で囲った部分が、日焼けしてしまった部分

AFTER

写真では分かりづらいですが、元のムラ染めの模様がうっすら見えていい味になっています

「染め直し」で対応できること

染め直しは基本的に、宝島染工のオリジナル商品にのみ対応されており、色や方法は個別に相談に乗ってもらえます。
基本は無地で全体を染め直す事が多いそうですが、一部だけシミができたり、漂白してしまった場合などもあるため、一つひとつの服に応じて、適した方法での染め直しに対応されているそうです。
お問い合わせは宝島染工の問い合わせ窓口で受けられています。

※本商品は中川政七商店と一緒に作った商品ですが、特別に染め直し対応いただきました

日々のお手入れのコツ

「天然染料で染めた服は、構ってあげるというか、定期的に着て洗うことが大事です。特に藍染の場合、どんな保存状態でも経年変化はしますが、定期的に洗ってあげることで、すっきりした鮮やかさがよみがえってくれます。水に通すことでアクが抜けるようなイメージです。例えば半袖の商品で冬場には着ない場合も、2~3か月に1回は洗っていただけると、コンディションよく保てます。」

<取材協力>
宝島染工

文:上田恵理子
写真:藤本幸一郎

【あの人が買ったメイドインニッポン】#25 文筆家・ツレヅレハナコさんが“一生手放したくないもの”

こんにちは。
中川政七商店ラヂオの時間です。

ゲストは引き続き、文筆家のツレヅレハナコさん。今回は、「一生手放したくないメイドインニッポン」についてのお話です。

それでは早速、聴いてみましょう。

[ツレヅレハナコさんの愛着トーク]

・鍛造作家・成田理俊さんの鉄のフライパン
・「成田パン」とも呼ばれ、今では4年待ちの人気作家さん
・美しさ、機能性はなにより、使っていると気分がいい
・いい道具とは、つい手に取っちゃうもの
・台所は、好きな調理器具でぎゅうぎゅうに
・どれを取っても語れる、大好きなものだけに囲まれる幸せ
・何を選ぶかは、生きかたそのもの
・2月末に新刊『世界の現地ごはん帖』を発売!

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ツレヅレハナコさんが一生手放したくないメイドインニッポン

ツレヅレハナコさんが“一生手放したくない”メイドインニッポンは、「成田理俊さんの鉄のフライパン」でした。

2月末に、新刊『おいしいトコだけ世界一周食べ歩き ハナコの書き留めた味コピ! 世界の現地ごはん帖』を発売されています。旅先では必ず現地の方に料理を習うというツレヅレハナコさんが、世界24カ国を巡って書き留めた現地ごはんレシピ&コラム集です。日本でも作りやすいようアレンジしたレシピになっているそうなので、ぜひお手に取ってみてください。


ゲストプロフィール

ツレヅレハナコ

食と酒と旅を愛する文筆家。著書に『まいにち酒ごはん日記』(幻冬舎)、『ツレヅレハナコのじぶん弁当』(小学館)、『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』(PHP)、『女ひとり、家を建てる』(河出書房)『ツレヅレハナコのおいしい名店旅行記』(世界文化社)、『47歳、ゆる晩酌はじめました』など。食や日常を綴るSNSも人気。


MCプロフィール

高倉泰

中川政七商店 ディレクター。
日本各地のつくり手との商品開発・販売・プロモーションに携わる。産地支援事業 合同展示会 大日本市を担当。
古いモノや世界の民芸品が好きで、奈良町で築150年の古民家を改築し、 妻と二人の子どもと暮らす。
山形県出身。日本酒ナビゲーター認定。風呂好き。ほとけ部主催。
最近買ってよかったものは「沖縄の抱瓶」。


番組へのご感想をお寄せください

番組をご視聴いただきありがとうございました。
番組のご感想やゲストに出演してほしい方、皆さまの暮らしの中のこだわりや想いなど、ご自由にご感想をお寄せください。
皆さまからのお便りをお待ちしております。

次回予告

次回は、エッセイスト / クリエイティブディレクターの松浦弥太郎さんにご出演いただきます。3/15(金)にお会いしましょう。お楽しみに。

中川政七商店ラヂオのエピソード一覧はこちら

修繕しながら長く使う#1「漆椀の塗り直し」

若い頃は「とりあえず」で購入することもしばしばありましたが、最近は長く使えるかどうかの視点で物を選ぶことが増えました。
そういう気持ちで購入するのだから、ちょっとした不注意で欠けてしまったり、汚れてしまったものも、なにかあれば修繕しながら長く付き合いたいと思っています。

でもそう言えば、修繕サービスに出す発想って、私自身、中川政七商店に入社してから身近になったことでした。中川政七商店のお客様は、道具に何かあれば相談してくださる方がたくさんいらっしゃいます。作り手さんに聞いてみると、思っていた以上に修繕できるものも多く、こういうものも修繕できるのだな、と日々学びがあります。

何かあれば修繕しながら長く付き合う。物との向き合い方が素敵だなと感じたので、今回改めて、「漆椀・染めの服・包丁」の修繕現場を取材しながら、末永く付き合うお手入れのコツを教えてもらいました。

「漆椀」「染めの服」「包丁」の全3回でお届けします。
今日は、漆椀のお話です。

#1 漆椀の塗り直し

最初に訪ねたのは、漆琳堂の内田徹さん。福井県河和田で200年余り8代に渡り、越前漆器を継承しています。「食洗機で洗える漆椀」や、洋食器の佇まいを持つ「RIN&CO.」など、現代の生活に合う漆器作りに取り組まれています。

「塗り直しの依頼は、少ない時でも週に数件あります。新年に使ったハレの器を塗り直しに出してくださる方が多く、例年1月から4月にかけて依頼が増えます。

今回のは『お椀やうちだ』のもので、毎食のように使ってくれていると聞いています。2017年に工場に併設する直営店で購入いただきました。翌年の2018年にも再訪いただいて、その際に一度塗り直ししています。そこから6年経って、再度塗り直しに出してくださいました」

「修理があることで、お客さまとも長く付き合える感覚があります。漆器を販売する時は、そこから関係性が始まるような感覚で、10年以上会わないままにやり取りしているお客さまもいます。その方の生活に寄り添えているようで嬉しいです」

BEFORE

AFTER

「塗り直し」で対応できること

塗り直しの方法は、個別に相談に乗ってもらえます。
漆琳堂では、漆器の割れているもの欠けているものを下地から補修していき、漆の塗り直しまで対応してもらえるそうです。
蒔絵や沈金などの加飾のあるものも、絵型をとって再生できるのだとか。お椀に限らず重箱、お盆、菓子器、屠蘇器、盃、など漆器の全てを修理できます。

また、他産地の物や、骨董市で購入した物にも対応してもらえるそう。少し傷んできたな、という方は、ぜひ一度お問い合わせしてみてください。
中川政七商店で購入されたものは、店舗にお持ちいただいても大丈夫です。

「漆琳堂」お問い合わせフォームはこちら

日々のお手入れのコツ

写真:奥山晴日

「堅いものを当てないのが傷つけないコツになるので、スポンジの柔らかい面を使って洗ってください。水で洗っても問題ありませんが、うつわに付いた汚れを無理にこすると塗膜が削れるため、お湯で浮かせながら洗うのがおすすめです。
乾かしたり運んだりする際には、陶磁器などの堅いものが当たらないように気を付けていただくことも大切です。洗ったあとそのまま食器置きに伏せて乾かしてもいいのですが、ふきんなどで水気を取りながら拭くと、ツヤが増していきます」


さらに詳しく、漆器の扱い方を知りたい方はこちら

<関連商品>
漆琳堂
RIN&CO. -北の地のものづくり-
食洗機で洗える漆椀
※複数のブランドがありますが、全て漆琳堂さんが手がける商品です。

<取材協力>
漆琳堂

文:上田恵理子
写真:阿部高之