世界でここだけ。唯一の技術で染められる、星の布

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
日本でつくられている、さまざまな布。染めや織りなどの手法で歴史を刻んできた布にはそれぞれ、その産地の風土や文化からうまれた物語があります。
「日本の布ぬの」をコンセプトとするテキスタイルブランド「遊 中川」が日本の産地と一緒につくった布ぬのをご紹介する連載「産地のテキスタイル」。今回はどんな布でしょうか。

新潟の美しい星空をイメージしたテキスタイル「星紋」

新潟の夜空の星の美しさは、松尾芭蕉や川端康成の作品にも描写されるほど。その澄んだ夜空が夏の星座に変わるころには天の川が水面にうつりこみ、あたり一面が星で満たされるといいます。この濃紺の夜空に浮かぶ星をイメージしてデザインしたテキスタイル「星紋(ほしもん)」。この布は、新潟・見附で受け継がれてきた貴重な技術でつくられています。

遊中川の夏のテキスタイル「星紋」
遊中川の夏のテキスタイル「星紋」

世界で唯一、新潟・見附の職人だけが手がける「マンガン染」

手間がかかりどうしても高価になってしまう「織り絣」に対して、気軽に絣模様が楽しめる「染め絣」として、大正初期に新潟・見附で誕生した技法「マンガン染め」。気軽にとはいえ、大正時代からの手法とあってやはり手作業は欠かせません。

大正4年、見附でいちばん大きな織元であった矢島丑松(やじま・うしまつ)がマンガンを染色に利用して発明したという「マンガン染め」。白絣(白地に紺や黒)を中心に夏の着物に用いられ、昭和30年代まで新潟・見附を中心に、浜松、近江のあたりでも生産が行われていました。この「マンガン染めの白絣」は見附の特産品として人気を集め、大正9年には見附の綿織物の生産量1位に。昭和初期まで大流行したといいます。

マンガン染めの白絣
マンガン染めの白絣
こちらは紺地に白を染め抜いたマンガン染
こちらは紺地に白を染め抜いたマンガン染

現在、「マンガン染め」を手がけるのはなんと世界で唯一、見附の「株式会社クロスリード」1軒のみ。こちらの工場を訪ねました。

糸染めから織りあがりまで3ヶ月以上、職人の感覚技

お話を伺ったのは、代表の佐藤秀男(さとう・ひでお)さん。「マンガンというのは、鉱物。これを使って染めるのには、職人の感覚がとても大切なんです」と、佐藤さん。そもそも、マンガン染めとはどういうものなんでしょう。その工程を見せていただきました。

マンガン染めは、まず糸染めからスタート。マンガンを溶かした水溶液に、かせにした糸を浸け込み、酸化させることで発色。糸が濃い茶色に染まります。

これが原料のマンガン。ピンクに輝く自然の鉱物です
これが原料のマンガン。ピンクに輝く自然の鉱物です
「糸のご機嫌を伺いながらやってます」と、職人の西さん。目に薬品などが入らないようにサングラスで保護します
「糸のご機嫌を伺いながらやってます」と、職人の西さん。目に薬品などが入らないようにサングラスで保護します
はじめは白い糸にうっすら色がつく程度ですが‥‥
はじめは白い糸にうっすら色がつく程度ですが‥‥
酸化することですこしずつ茶色くなってきます
酸化することですこしずつ茶色くなってきます
最終的に整理された糸はこんなに濃い色に。マンガンが付着した糸です
最終的に整理された糸はこんなに濃い色に。マンガンが付着した糸です

じつはこの作業、1かせ1かせ職人さんの手によって染められています。空気に触れることで発色するため、ムラにならないように絞りながら、満遍なく手繰るのです。季節によっても反応の速度が違い、その日のお天気にも左右されるこの作業は、職人さんの感覚頼りなのだとか。しかも、手作業ながら1度に200〜300かせも染めるとあって、相当な力仕事です。

ではここで、マンガン染めの原理について。
この茶色の糸は、このあと中和剤をかけると、マンガンの色が抜けて白くなるんです。普通に染めた糸と、マンガン染めの糸を使って布を織り上げ、中和剤をかけると、マンガン染めの糸だけが白い糸にもどり、普通の染め糸はそのまま色が残るということです。

紺色に染めた糸とマンガン染めの茶色い糸を交互に並べて織った状態が左。これを中和させたものが右。マンガン染めの茶色かった糸は白くなり、紺色はそのまま残ります
紺色に染めた糸とマンガン染めの茶色い糸を交互に並べて織った状態が左。これを中和させたものが右。マンガン染めの茶色かった糸は白くなり、紺色はそのまま残ります

この原理で、布にどれだけマンガン染めの糸を織り込むかや、中和剤でどんな柄を描くかを考えて、布をデザインします。クロスリードの敷地内には、布を織る工場も。糸染め、織り、加工まで一貫して製造手がけられ、なんでもできるというその技術の幅には驚きです。

木造の建物に、織機がずらり
木造の建物に、織機がずらり
クロスリードの佐藤さん
クロスリードの佐藤さん

織り上がった生地に型を使って中和剤をつけると、マンガン染めの糸色が変化して柄が浮き出てきます。柄の細かさや生地の厚さによって、都度、中和剤の液体の硬さを調整しなくてはいけないそう。この調整は完全に職人の感覚。湿度や温度を肌に感じながら、経験値での勝負です。

銅製のロール型の表面に彫られた「星紋」の柄。この彫刻は京都で手がけられています
銅製のロール型の表面に彫られた「星紋」の柄。この彫刻は京都で手がけられています
中和剤の調合。少しでもゴミが入ると型を傷つけることになるので、このあと2回も漉します
中和剤の調合。少しでもゴミが入ると型を傷つけることになるので、このあと2回も漉します
型に中和剤をなじませます
型に中和剤をなじませます
柄のとおり、布に中和剤が置かれます
柄のとおり、布に中和剤が置かれます

このあとは、中和剤の力で徐々にマンガン染めの糸の色が変化していくのですが、その時、布におがくずをまぶします。おがくずが布の間に空気を含ませ、その空気が糸色の変化を促進させるのです。また、布の移染も防いでくれます。

おがくずの中に布を通します
おがくずの中に布を通します
スコップでおがくずを布にかける作業も。広い工場で布がどんどんと変化していきます
スコップでおがくずを布にかける作業も。広い工場で布がどんどんと変化していきます
すぐには色の変化は見られませんが‥‥
すぐには色の変化は見られませんが‥‥
30分も経つと、ほら、模様が浮かんできました!
30分も経つと、ほら、模様が浮かんできました!

このあとは、布を水洗いし、加工整理して生地が完成。生地に無駄なテンションをかけないように、こちらでは桜の木材をつかった乾燥機を使っているのだそう。生地に触れる部分が木で、まるで赤ちゃんを抱くように生地をやさしく扱いながら乾かすと、風合いのよい生地に仕上がるのだそうです。

今やこの「マンガン染め」を行っているのは、全世界の中で新潟のこの工場だけ。「もう、ここだけになってしまったから、何としてでも残したいけれど、職人の感覚に頼る仕事ばかり。人がいないと続けられない」と、職人の高齢化を懸念している佐藤さん。「これまで、みんなでたくさん失敗もしてきました。失敗の数だけ、いろいろなものが作れるようになったと思ってます。これから、若い人が来てくれるといいんだけどね」。

大正時代には画期的な技術だったものの、平成の現代ではとても手のかかるものづくりとなった「マンガン染め」。貴重な布になりました。変わりゆく時代の中で、変わらずにつくりつづけていくことは容易ではありません。だからこそ、いまこの日本に残る、さまざまな布ぬののことを伝えていきたいなと思います。

「星紋」のテキスタイルシリーズ

今回「遊 中川」がつくった、「星紋」のテキスタイルシリーズをご紹介します。新潟の美しい星空やものづくりの背景を思い浮かべて、身にまとってみてください。

バッグ 星紋
バッグ 星紋
巾着 星紋
巾着 星紋
プルオーバー 星紋、ワンピース 星紋
プルオーバー 星紋、ワンピース 星紋
ストール 星紋
ストール 星紋
梅のコサージュ
梅のコサージュ

<掲載商品>
「星紋」シリーズ(遊 中川)
遊 中川の各店舗でもご購入いただけます
(在庫状況はお問い合わせください)

<取材協力>
株式会社 クロスリード

文・写真:杉浦葉子

かつては琵琶湖の底だった、伊賀の土でつくった土鍋

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
—— なにもなにも ちひさきものは みなうつくし
清少納言『枕草子』の151段、「うつくしきもの」の一節です。
小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。
そう、小さいものはなんでもみんな、かわいらしいのです。
日本で丁寧につくられた、小さくてかわいいものをご紹介する連載、第7回目は三重県・伊賀の「土鍋」です。

ずんぐりむっくり、丸くて小さな土鍋

6月、暑くなってきました。徐々に梅雨入りのニュースも耳にし、気候も不安定なこのごろ。体調を崩される方も多いかもしれませんね。冷たいものをとりがちですが、お腹の中に少しあたたかなものを入れてあげると、夏をのりきる体力が保てそうです。こんなとき便利なのが、ずんぐりむっくりした小さな丸い鍋。伊賀焼の「あたため鍋」です。おかゆを炊くのはもちろん、牛乳や豆乳、チャイなどをあたためるのに最適。ちょっとしたスープやお味噌汁をあたため直すのにもちょうど良い。赤ちゃんのミルクをあたためるのにも使えるので、出産のお祝いなどにもおすすめです。

手前が「あたため鍋・小」、奥は「あたため鍋・大」。口が少しすぼんでいるのは、ふきこぼれないようにという工夫
手前が「あたため鍋・小」、奥は「あたため鍋・大」。口が少しすぼんでいるのは、ふきこぼれないようにという工夫

琵琶湖の底の土でつくられた、伊賀の土鍋

この「あたため鍋」は、三重県・伊賀の「松山陶工場」がつくっているもの。土鍋といえば伊賀焼というほどの代表的な土鍋の産地です。伊賀は昔、琵琶湖の底だったそうで、耐熱性と保温性に優れた良質の粘土がとれたことにより、土鍋づくりが盛んになりました。陶土にもさまざまな特徴がありますが、細かな穴(気孔)をたくさん含んだ伊賀の土は特に火と相性が良いようです。使いはじめにはちょっとしたお手入れを。おかゆを炊くか米のとぎ汁を入れて煮立たせて、土鍋の表面の細かな穴をふさぐ「目止め」をします。このちょっとしたひと手間で、鍋に愛着がわくだけでなく、長く使うことができますよ。

みんなでお鍋を楽しめるサイズの土鍋は径31センチ。「あたため鍋」は小回りをきかせたいときにおすすめ
みんなでお鍋を楽しめるサイズの土鍋は径31センチ。「あたため鍋」は小回りをきかせたいときにおすすめ
松山陶工場では伊賀の土をつかった大小さまざまな土鍋をつくっています
松山陶工場では伊賀の土をつかった大小さまざまな土鍋をつくっています

火のあたりがゆっくりな土鍋であたためたものを摂ると、心も体もゆっくりじんわりあたたまりそうです。あたたかいもの、ほっとします。

<掲載商品>
あたため鍋(松山陶工場)
中川政七商店の各店舗でご購入いただけます
(商品の在庫についてはお問い合わせください)
土鍋 飴釉(中川政七商店)
月山段通の鍋敷き(中川政七商店)
吉野桧の鍋しき(中川政七商店)
汁用レンゲ(中川政七商店)

<取材協力>
松山陶工場

文:杉浦葉子
写真:木村正史、杉浦葉子

【はたらくをはなそう】日本市デザイナー 村垣利枝

日本市ブランドユニットデザイナー)

2014年入社。新卒7期生。
2015年、遊 中川奈良近鉄店 店長に就任。
2016年から日本市ブランドユニットデザイナーとして勤務。

幸運にも入社することができ、お店を任せてもらえ、去年の1月からデザイナーとしての一歩を踏み出しました。あっという間に今年で4年目になります。
絵を描いたり、雑貨を集めたりすることが好きで、デザイナーになりたいと思って勉強していましたが、自信が持てず入社前は堂々とデザイナーになりたい。と言う事ができませんでした。

入社してから、はたらくことに、目標にどんどん貪欲になっていく自分に驚いています。

社長や上司のまっすぐで、うそをつかない姿勢が好きで、私も話す時は正直に話をしたいと考えていました。なので、年に2回の社長と上司との面談の時は自分と向き合い、話すことを準備して、目標をたてて挑むように意識していたら、すごく前向きに話ができるようになりました。

入社後、配属先のお店で出来るようになりたいことを挙げてみると、できるようになったら店長が出来るかもしれない。と思い、目標を店長に設定し、目標を達成したら店長になりたいです!と宣言しました。

店長になったら、自分が思う店長像を描き、やり切ってみよう。

やりきる事ができたら、次はデザイナーとして目標を持ちたい。と打ち明けました。

社長も上司もしっかり話を受け止めてくれて、指導してもらえ、運とタイミングが合い、今デザイナーとしてチャンスをもらった状態です。

自分が望んで、与えてもらった仕事の責任は大変重いです。

結果を出さないと次の仕事は回ってきません!

力不足でいっぱいいっぱいになり、落ち込みそうになったら、自分が望んだ事だ!と言い聞かせると前向きな気持ちになります。

お店の経験を大切に、貪欲に、なりたいデザイナー像を描いていこうと思います!

6月4日、虫歯予防の日。天然のちからで歯を守る、歯みがきツール

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
日本では1年365日、毎日がいろいろな記念日として制定されています。国民の祝日や伝統的な年中行事、はたまた、お誕生日や結婚記念日などのパーソナルな記念日まで。数多ある記念日のなかで、こちらでは「もの」につながる記念日をご紹介していきたいと思います。
さて、きょうは何の日?

6月4日は、「虫歯予防の日」?

1928年に日本歯科医師会が「6(む)・4(し)」の語呂合わせにちなんで制定した「虫歯予防の日」。実は、この記念日は1938年までの実施だったそうで、いまは正式には残っていません。「虫歯予防の日」という言葉は小さい頃からよく耳にしたような気もしましたが、80年近くも前になくなっていた記念日だったのですね。

そして、これを復活させる形で1949年に「口腔衛生週間」が生まれ、1952年には「口腔衛生協調運動」になり、その後も何度か名前を変えて‥‥現在では、厚生労働省、文部科学省、日本歯科医師会が6月4日から10日の間を「歯の衛生週間」と定めています。やっと名前が定着、ですね。
歯の衛生に関する正しい知識を普及啓発するとともに、歯科疾患の予防処置、早期発見と治療を行う。つまり、「歯を大切にしましょう」というのが大きな目的です。

水だけで、歯がつるつるになる歯ブラシ

毎日の歯みがきグッズ、みなさんはどんなものをお使いですか?お気に入りの歯ブラシや歯みがき粉があるかもしれませんね。私の愛用品はこちらです。
立つ歯ブラシ、「THE TOOTHBRUSH by MISOKA」。世の中の定番を新たに生み出すブランド「THE」と、累計200万本以上の販売実績を持つ人気歯ブラシ「MISOKA」(株式会社夢職人)とのコラボレーションによって生まれた商品。

「MISOKA」は、歯ブラシの毛先を水につけ、いつも通りにブラッシングするだけで歯がつるつるになるという優れもの。しかも、汚れを洗い上げるだけでなく汚れをつきにくくするという画期的な歯ブラシです。これは独自のナノミネラルコーティング技術によるもので、磨いた後の歯はガラス表面のように滑らかで艶やかに仕上がるのです。水だけで歯みがきができるので、オフィスや学校で使うのにも便利。そして、今回のコラボ歯ブラシでは自立するというのもポイント。ごちゃつきがちな洗面所がシンプルに収まるのが嬉しく、白・赤・紺のトリコロールカラーも清潔感があって好みです。

通常の「MISOKA」よりも極細毛で、歯と歯茎にもやさしい
通常の「MISOKA」よりも極細毛で、歯と歯茎にもやさしい

グリップが三角形なのでペンのように持つことができ、余計な力をかけずに細部までていねいに磨けます
グリップが三角形なのでペンのように持つことができ、余計な力をかけずに細部までていねいに磨けます

さらに、この歯ブラシと一緒に使いたいのが「THE MOUTHWASH」。こちらのマウスウォッシュは、同じく「THE」と、オーガニックコスメを扱う「Cosme Kitchen」を運営する株式会社マッシュビューティーラボとの共同企画から生まれたもの。成分は100パーセント植物由来で、7種の保湿成分が口の中にうるおいを、またハッカ由来のメントールやスペアミントの精油の香りはすっきりと清涼感を与えてくれます。

アルコールフリー。お子さまにも安心な「THE MOUTHWASH」
アルコールフリー。お子さまにも安心な「THE MOUTHWASH」

やっぱり口に入れるものや肌にふれるものって、天然のものが気持ちいいなと感じます。人間も自然の生きもの。やっぱり相性がいいんですね。
この歯ブラシとマウスウォッシュで、オーラルケアも完璧です。あとは歯みがきするのを忘れないようにだけ‥‥。
みなさんもどうぞ、歯を大切に。

<掲載商品>
THE TOOTHBRUSH by MISOKA
THE MOUTHWASH

<取材協力>
THE株式会社
http://the-web.co.jp

文:杉浦葉子

世界中に多くの愛好家をもつ、竹の編み針

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
—— なにもなにも ちひさきものは みなうつくし
清少納言『枕草子』の151段、「うつくしきもの」の一節です。
小さな木の実、ぷにぷにの赤ちゃんの手、ころっころの小犬。
そう、小さいものはなんでもみんな、かわいらしいのです。
日本で丁寧につくられた、小さくてかわいいものをご紹介する連載、第6回目は奈良・生駒の「竹製品」です。

小指とどっちが長い?ちいさな編み針

思わず手にとりたくなる、小指の長さほどの竹の棒。こちらは、奈良の生駒でつくられている竹の編み針です。とにかく小さい。手のひらサイズ‥‥よりもかなり小さいです。小さいけれど、もちろん実際に編むことができます。特にかぎ針のほうは指先でつまんでちょちょいと編めてしまう感じ。棒針のほうももちろん編むのに使えますが、これを両手に持って編む姿を想像すると、さすがにちょっと編みにくそうな‥‥。こちらは、編み物用のまち針としても使われているのだそうです。

いちばん奥のものは23cmの竹の編み針。比べてみると小さなものは、もはや爪楊枝のよう!手前の3点は大小のかぎ針です
いちばん奥のものは23cmの竹の編み針。比べてみると小さなものは、もはや爪楊枝のよう!手前の3点は大小のかぎ針です

厳選した日本の竹で、きめ細かくしなやかに

奈良県生駒市の北端、高山地区は茶筅や茶道具などの竹製品の生産が盛んな産地として知られています。茶道具の生産が多いなか、大正時代から竹の編み針をつくり続けてきたのが2016年に創業100年を迎えた「近畿編針株式会社」です。
竹あみ針は、昔から世界中にたくさんの愛好家を持つロングセラー商品。竹は繊維が強くて軽くしなやかで、編針には最適な素材。特に、日本で成長する竹は硬くて弾力性があり、きめの細かさや色つやも優れているのだそう。こちらでは、厳選した日本の竹を使用して質のよい竹編み針を製造しています。とはいえ、竹は産地や品種、季節によっても性質が異なるので、品質の安定した竹の編み針をつくるには、その時の竹の状態にあわせて柔軟に対応するという高い製造技術が必要なのだそう。

編み針に求められるのは一定の太さ。天然素材とはいえ、厳格にサイズを合わせます
編み針に求められるのは一定の太さ。天然素材とはいえ、厳格にサイズを合わせます
重要なのは針先の成形には熟練職人の腕がかかせません
重要なのは針先の成形には熟練職人の腕がかかせません

白く美しい、竹のきめやしなりを生かした滑らかな編み針は、天然の植物蝋で磨かれて完成します。このていねいな手仕事は、海外のニッターからも評価が高いのだそう。日本の誇りです。

編み物をするにはちょっと季節はずれ?いえいえ、今からじっくり用意して、この冬に向けてなにか作りはじめてみるのもよいのではないでしょうか。もちろん、夏らしい綿や麻の糸でレース編みなどもおすすめです。艶やかな竹に触っているだけで、涼しい気分になりそうです。

<掲載商品>
ミニ玉つき2本針
竹まち針
竹小かぎ針
チャーム用ミニ竹あみ針
白竹玉つき2本針(23cm/8号4.5mm)
白竹かぎ針(15cm/9mm、15cm/5mm)
(以上、すべて近畿編針株式会社オンラインショップ

<取材協力>
近畿編針株式会社
http://www.amibari.jp

文:杉浦葉子
写真:近畿編針株式会社、杉浦葉子

ハレの日を祝うもの はじめての日から、ずっと使える漆椀

こんにちは。さんち編集部の杉浦葉子です。
日本人は古くから、ふだんの生活を「ケ」、おまつりや伝統行事をおこなう特別な日を「ハレ」と呼んで、日常と非日常を意識してきました。晴れ晴れ、晴れ姿、晴れの舞台、のように「ハレ」は、清々しくておめでたい節目のこと。こちらでは、そんな「ハレの日」を祝い彩る日本の工芸品や食べものなどをご紹介します。

子どもが一生、食べることに困らないように

赤ちゃんの生後100日目に行われる「お食い初め」。「一生食べるのに困らないように」との願いを込めて、赤ちゃんに食事の真似をさせる風習です。

「お食い初め」の起源ははっきりとはわかっていませんが、平安時代から行われていた儀式だとか。平安時代は赤ちゃんにお餅を食べさせる「百日(ももか)」という儀式があり、その後鎌倉時代には餅から魚肉に変わって「真魚はじめ」と呼ばれるようになったそう。この「真魚はじめ」で初めてお箸にふれることから、「箸揃え」や「箸初め」という呼ばれ方を経て、室町時代にはようやく「お食い初め」と呼ばれるようになりました。

生後100日というと、ちょうど赤ちゃんに乳歯が生えるころ。それを祝って、新しい茶碗や汁椀、皿などを用意します。そのとき料理に「歯固め」の石を添えることもあります。「お食い初め」の風習も地方によってさまざまで、関西では歯固めの石の代わりにタコを添えたり、固い栗の実を添えるという地域もあるのだそうですが、いずれも「赤ちゃんの歯が固くなるように」という願いをこめて添えられるものです。

ずっと使える、越前漆器のうつわ

福井県鯖江市で8代200年に渡って越前漆器をつくりつづけてきた「漆琳堂」。塗りを専門とした「塗師屋(ぬしや)」のこちらでは、一つひとつ漆を手塗りしてさまざまな漆のうつわをつくっています。

「漆琳堂」8代目の内田徹さん
「漆琳堂」8代目の内田徹さん

記念すべき「お食い初め」の日、子どものために用意する新しいうつわは、どんなものがいいだろう?鯖江の「漆琳堂」と奈良の「中川政七商店」が一生懸命考えてつくったうつわが、「ずっと使える入れ子の漆椀セット」です。

子どもがはじめて使ううつわは、やっぱりいいものに触れさせてあげたい。でも、「お食い初め」のためだけに使うのはもったいない。だから「お食い初め」の時から、大人になるまでずっと使える漆器のセットを。漆器は軽くて割れづらいため、子どもがはじめて持つ食器にぴったりです。

椀・鉢・皿の3点セット。大人になったら小鉢や豆皿としても
椀・鉢・皿の3点セット。大人になったら小鉢や豆皿としても

めでたいことが重なるようにと、うつわも「入れ子」で縁起よく。桐箱入りで、「ハレの日」ご出産のお祝いにぴったり
めでたいことが重なるようにと、うつわも「入れ子」で縁起よく。桐箱入りで、「ハレの日」ご出産のお祝いにぴったり

漆によく見られる朱や黒ではなく、このうつわは白い漆をつかっています。はじまりの色とされる「白」の漆はその神聖さから神の色ともされているのだそう。使いはじめはベージュのような色味ですが、経年変化で少しずつ白くなっていくので、子どもの成長とともにうつわの変化も楽しめます。

小さいころから本物のうつわに親しんで、ものを長く大切に使う習慣になりますように。なにより、食べものを美味しく楽しくいただくうつわになると良いな、と思います。
今は小さな赤ちゃんがいつか大人になって、より白くなった漆椀を大きな手にちょこんと持つ日が楽しみです。

 

<掲載商品>
ずっと使える入れ子の漆椀セット(中川政七商店)

<関連商品>
ずっと使えるベビースプーン(中川政七商店)
ずっと使えるベビーマッシャー(中川政七商店)
ずっと使えるベビーコーム(中川政七商店)

<取材協力>
株式会社 漆琳堂
福井県鯖江市西袋町701
0778-65-0630
http://www.shitsurindo.com

文:杉浦葉子