【わたしの好きなもの】冬ならではの装いを楽しむ「かや織ニードルパンチのトートバッグ」

暑い日にはサラッとした麻や、汗をよく吸う綿素材の服を、寒い日には毛足が長くやわらかいウールニットや、生地の厚みが心強いコーデュロイを。そんな風に季節に応じて洋服を変えるように、バッグも季節ごとに使い分けたいなと思っていました。

季節のバッグと聞いて思い浮かぶのは、主に夏に活躍する籠バッグ。私も愛用者の一人です。一方、冬は?と考えてみたのですが、冬にしか使えないバッグは持っていない。手袋やマフラー、コートなど、まずは寒さをしのぐ衣服に気がいって、冬用バッグはここ数年、迎えていませんでした。

「何か、いいのないかなぁ」と探していたところ、出会ったのがこの「かや織ニードルパンチのトートバッグ小」。もこもこの見た目がいかにも秋冬用で、これはいいかも!と思い、さっそく使ってみたので、お気に入りポイントを紹介させてください。

①冬の景色を思わせる佇まい

一番気に入っているのは、何といっても冬の景色のような佇まい。こちらのバッグは“木枯らし”をイメージした「薄茶」と、“雪道”をイメージした「薄墨」の二色展開で、私は薄茶を使っています。

薄墨

確かに、ベージュのウール生地とななめに縫われた白いかや織生地の組み合わせは、寒々しい日にピューッと吹く木枯らしのような表情。そんなそっけなさや荒々しさを感じつつも、あたたかみのある素材感やころんとしたまるいフォルムがほどよく柔和にしてくれるので、全体的にはやさしい印象です。

ちょっぴりスパイスのきいたデザインで、ナチュラルなコーディネートのときにも、少しエッジをきかせたコーディネートのときにも、どちらにも活躍。シーズンが限定されるバッグは、せっかくなのでその時期にたくさん使っておきたいと思う派なのですが、しっかり出番の多いバッグになってくれました。

秋冬らしいこっくりした色のワンピースにも合って、使いやすい!

②軽くてふかふかの持ち心地

初めてバッグを手にしたとき、「何これ!ふかふか!!!」と心の声が。想像以上に生地がやわらかく、ふと撫でたくなるほどです。写真で見ていたときは「ウールだし、ちょっとごわごわした生地なのかな?」と思っていたのですが、もう一度言います。ふかふかでした。

特に好きなのは持ち手。やさしい肌あたりかつ、厚みのある生地、おまけに幅広なので、手に食い込む感じがなく、何なら触れている部分があたたかい。「持つだけで癒されるバッグ」なんて、キャッチコピーをつけたいくらいです。

このふかふかを実現できたのは、ウール生地の中にもこもことした綿を入れているから。ふんわり、ふかっとした佇まいと持ち心地は、そんな隠し技によるものなのです。

荷物が少し重いときはバッグを肘にかけて持つのですが、もちろんふかふか。持ち手が細いものだと、重い荷物を入れたら紐がぐいぐいと肌にめり込む感覚があり、家に帰って肌を見ると、紐を持っていた部分が赤く跡になっている‥‥という経験も一度や二度ではないのですが、このバッグは肌への食い込みはノーストレスでした。

③コンパクトながら、必要なものがしっかり入るサイズ感

私がいつも持ち歩くのは、財布とスマートフォン、ハンカチ、家のカギ、小さめの化粧ポーチ、そして本。ちょっと時間が空いたとき、SNSを見たい日もあれば、小説やエッセイが読みたくなることもあり、本は常に2冊ほど持っているので少し荷物が多いのが悩みです。

そのため大きめのバッグを使うことが多いのですが、コンパクトなバッグを持つことにも憧れる。「ちょっと小さいかな~?」と思いつつ荷物を入れてみると‥‥、嬉しい!しっかり入りました!!

何なら少しゆとりがあるので、水筒を持ち歩くのも、外出先でちょっとした物を購入して入れるのも、外した手袋やカイロを入れておくのもへっちゃら。思ったよりも大容量でした。

また全体はもこっとしたシルエットですが、重さのある布ではないため、カバン本体の重さに関してはまったく気になりません。この軽さは結構驚きなので、できるものなら皆さんにも一度、手に持ってみていただきたいくらいです。

軽くてコンパクトなのにしっかり荷物も入るとは、頼もしい限り。ちなみに同シリーズには「トートバッグ大」「ポーチ」「ポシェット」など、形や大きさを変えたラインナップもあるので、それぞれのお好みや用途にあった一つを選んでいただけます。

④アップサイクル商品を使える嬉しさ

最後に一つ、使用感ではないのですが、お伝えしたいこと。このバッグ、実は中川政七商店の定番商品である、かや織ふきんの端材をあしらって作られています。

使用したのはニードルパンチという加工技術。剣山を思わせる無数の針で生地を刺し、重ねた生地の繊維を絡み合わせて結合する加工方法です。

ふきんを製造する際にはどうしても一定量、生地の端材が発生します。通常は廃棄へ向かうのですが、せっかく作るものは、できるだけ有効活用したい。そんな一人のデザイナーの想いがこの商品へと至りました。

ものの寿命を延ばしたり、最後まできちんと使い切ったりすることに想いがいく最近。自分が使うものがその貢献になっていることに、少し誇らしい気持ちを持てたりするのです。

せっかく四季の巡る日本。うだるような暑さの夏にも、身体が芯から冷える冬にも、その時期にしか出会えないお洋服やバッグで、季節が移ろうことの楽しさを感じていけたらなと思います。


<掲載商品>

かや織ニードルパンチのトートバッグ小 薄茶

編集担当:谷尻

【あの人の贈りかた】自分の好きを込めた、自分らしい贈りもの(スタッフ立石)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回はカンパニーデザイン事業部の立石がお届けします。

自分が「いい!」と思い、愛用しているものを。
「花ふきん」

誰かへ贈りものを選ぶ時。もちろん、「あの人が喜ぶものは何かな?」と、基本的には相手のことを考えます。

でも親しい人には、自分が心から「いい!」と思っているという理由で、選ぶ贈りものもあります。

例えば、私にとってそれは「花ふきん」。

なんといっても、使い心地が「いい!」のです。よく吸ってすぐ乾き、使うほどふわふわに。大判薄手なので、食器拭き・台拭き・お弁当包みと、色々な用途で毎日お世話になっています。中川政七商店のロングセラー商品なので、ご存知の方も多いかもしれませんが、私も愛用者の一人です。

使い心地にプラスして、もう一つ「いい!」と思うポイントは、ものづくりの背景。私は中川政七商店で働いて約10年になるのですが、数ある商品のなかで、縁あって一番関わりを深く持たせてもらった商品が「花ふきん」です。

たかが、ふきん。されど、ふきん。

目が粗くて加工しづらい生地を、形が崩れないように、慎重に染めたり柄を描く。一枚一枚、丁寧にミシンで縫う。そんなふきん一枚にこめられた、つくり手さんのクラフトマンシップを知り、より一層好きになりました。

自分が心から信頼している品を、贈った相手にも「いい!」と思ってもらえたら、とても嬉しい。「クタクタになるまで使ったから、新しいものを自分で買い足して使っているよ」なんて連絡をもらえると、気に入ってくれたのだなとさらに嬉しくなるのです。

<贈りもの>
・中川政七商店「花ふきん」

自分が暮らす奈良の品で、旅行気分を楽しんでもらえたら。
「鹿アイテム」

妻の実家が九州とあって、ありがたいことに“九州のもの”を、定期的に送ってもらいます。お菓子からお酒のアテまで、奈良ではお目にかかれないものばかりで、ちょっとした九州旅行の気分に。

その人が暮らす土地のものには、その人らしさも含まれているような気がして、受け取ると何だかホッとしたり、心があたたかくなったりします。そのため、私も地元である“奈良のもの”を、贈りものにすることがしばしばあります。

私は、生まれも育ちも、いま暮らしている場所も奈良。
奈良公園から歩ける距離にある実家には、庭に鹿が遊びに来る日もあります。

(そして、花や植物を食べていきます)

そんな私にとって、鹿はペットに近いような、特別な存在。

私と同じく、生まれも育ちも奈良の中川政七商店には、鹿をモチーフにした商品がたくさんあります。奈良の店舗には、限定の鹿商品まであるほど。その中から、相手が喜んでくれそうな“鹿”を探します。

“奈良のもの”をきっかけに、ちょっとした奈良旅行の気分を楽しんで、何だったら実際に奈良に遊びに来てくれたらいいな。なんて思いながら選ぶ、贈りものです。

<贈りもの>
・中川政七商店「鹿の商品」(写真は「新郷土玩具 奈良 鹿コロコロ」

手書きの文字を添える「メッセージカード」

贈りものをもらったとき、短くても一筆が添えられていると、より一層嬉しくなります。

「そういえば、こんな字だったな」と懐かしくなったり、逆に「あれ、こんな字だったっけ?」と不思議な気持ちになったり。

いずれにせよ、「自分のために書く時間をつくってくれたんだな」と想像をして、嬉しくなります。その人のぬくもりが伝わる手書きの文字って、やっぱりいいですよね。

だから私も、贈りものにはなるべく言葉を添えたい派。

そのときのために、いいなと思ったメッセージカードがあれば、家族でちょこちょこ買い足しています。贈る相手によって添えたいカードのイメージは変わるので、選択肢は広い方がありがたいのです。

奈良で毎年開催される「正倉院展」文様をデザインした中川政七商店のカードも、愛用しているものの一つ

最近購入したのは、Holiday Stationeryさんのポストカード。

「花束のように手紙を贈ろう」を合言葉に描かれた、実直な花の絵に惹かれました。いつか大切な人への贈りものに、添えられたらいいなと思います。

今回の連載を書くにあたり、「贈りかた」について改めて色々と考えましたが、その人らしさが伝わることって、なかなか大切な気がしました。もしかすると、相手のことを考えすぎず、自分らしさがある方が、喜んでくれる場合もあるのかも。そう考えると、贈りものを考えるときの気持ちが、少しだけ軽くなりそうです。

<贈りもの>
・Holiday Stationery「メッセージカード」
・Instagram:https://www.instagram.com/holidaystationery/

※中川政七商店での販売はありません

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 カンパニーデザイン事業部 立石哲也

【暮らすように、本を読む】#05『道具のブツリ』

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出会うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出会いをお届けしてもらいます。


<お知らせ: 中川政七商店「茶花番茶」をプレゼント>

先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、中川政七商店の「茶花番茶」が書籍と一緒にお手元に届きます。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。


道具への愛着が深まる、やさしい物理学の入門書
『道具のブツリ』

離乳食からはじまり、スプーンは私たちにとって最も身近な道具のひとつ。でも、あの丸く少しくぼんだ形状について、深く考えをめぐらせる人は多くはないでしょう。

「ながす道具」「さす道具」「きる道具」「たもつ道具」「はこぶ道具」の5つの章にわたって、日々活用する暮らしの道具の仕組みを解説する本書。スプーンのほかにも、ハサミ、扇風機など、生活に欠かせない道具に隠されたブツリを、弾むような文章でやさしく紐解いていきます。

突然ですが、私はお酒が好きです。外でおいしい料理と共に嗜むお酒もいいけれど、自宅でのんびり夜が耽るまで飲むのも大好きな時間です。常にストックをするビールや日本酒、そしてワイン。簡単なおつまみとお気に入りのグラスを用意し、いざ飲むぞ!という瞬間に、盛り上がった気分が、しおしおと萎んでしまうことがあります。それは、ワインの開栓に失敗した時。ぼろぼろと砕けたコルク栓を前に、悲しみに打ちひしがれてしまった経験は、一度や二度ではありません。

本書で紹介される25の道具のうち、酒飲みにとって身近なアイテムであるワインオープナーが「さす道具」のひとつとして紹介されています。らせん構造を用いることで、コルクを引き抜く役目をはたしているのは、一目瞭然ですが、そこに「摩擦」の力を意識して、じわじわと、慌てず引き続けることで、スポンっとうまく開けることができるのだそう。ブツリを学ぶことは、道具を効率よく使う助けになるのです。仕組みがわかれば、あれだけ憎たらしく感じていたワインオープナーも、不思議と頼もしい相棒のように感じられます。

ポップでわかりやすいイラストや、背中の綴じ糸をそのまま見せた美しい装丁も、本書を暮らしのそばに置きたくなる理由のひとつ。身近な道具を使うシーンを想像しながら、ブツリの世界に足を踏み入れてみる。使い慣れた道具への愛着がちょっぴり深まった気がします。

ご紹介した本

『道具のブツリ』
田中 幸(著)、結城 千代子(著)、大塚 文香(イラスト)

本が気になった方は、ぜひこちらで:
VALUE BOOKSサイト『道具のブツリ』

先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、中川政七商店の「茶花番茶」が書籍と一緒にお手元に届きます。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。


VALUE BOOKS

長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/

文:北村有沙

1992年、石川県生まれ。
ライフスタイル誌『nice things.』の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働きながらライターとしても活動する。
暮らしや食、本に関する記事を執筆。趣味はお酒とラジオ。保護猫2匹と暮らしている。


<同じ連載の記事はこちら>
【暮らすように、本を読む】#01『料理と毎日』
【暮らすように、本を読む】#02『おべんとうの時間がきらいだった』
【暮らすように、本を読む】#03『正しい暮し方読本』
【暮らすように、本を読む】#04『なずな』

【家しごとのてならい】刺し子をする

毎日の家しごと。それなりに何とかできるようになり、だいたいは心得たつもりだけれど、意外と基本が疎かだったり、何となく自己流にしていたりするものってありませんか?

そのままで不都合はないものの、年齢を重ねてきたからこそ、改めて基本やコツを学んでみたい。頭の片隅にはうっすら、そんな思いがありました。

この連載では、大人になった今こそ気になる“家しごとのいろは”を、中川政七商店の編集スタッフがその道の職人さんたちに、習いに伺います。

とはいえ、難しいことはなかなか覚えられないし、続きません。肩ひじ張らず、構えずに、軽やかに暮らしを楽しむための、ちょっとした術を皆さんにお届けできたらと思います。

今回のテーマは「刺し子をする」。岩手県大槌町にて、地域に暮らす刺し子さん(職人)たちと共に日本の手しごとの価値を伝える活動に取り組む、大槌刺し子・佐々木加奈子さんを講師に迎え、編集チームの谷尻が習いました。

今回の講師:大槌刺し子 佐々木加奈子さん

「大槌刺し子」運営メンバーの一人。大槌刺し子は、東日本大震災をきっかけに震災からの復興を目的として、岩手県大槌町で始動した「大槌復興刺し子プロジェクト」をルーツとする団体。現在は日本の伝統技術の一つである「刺し子」を専門とした事業を展開する。大槌町の職人(刺し子さん)と一緒に、「刺し子」という日本の手しごとの価値を伝えることを通じ、持続可能な社会に貢献する商品作りに取り組んでいる。
URL:https://sashiko.jp/


刺し子の基本

今回のテーマである「刺し子」とは、布地を刺し縫いする針しごとのこと。シンプルな布に針と糸だけで様々な模様を施していくその術は、精緻な技法ながら手しごとならではの揺らぐ表情も美しく、ずっと「こんな趣味が身につけられたらなぁ」と想いを寄せていました。

しかし、普段縫い物といえば取れたボタンを洋服につける程度の私。「自分にはハードルが高そう」と、憧れながらも遠巻きに見ていた家しごとの一つでした。

「実は、基本の縫い方はとってもシンプルで、そんなに難しくないんですよ」と朗らかにおっしゃるのは、講師を務めてくださる佐々木さん。だったら一度挑戦してみようと、重い腰をあげて挑戦です。技術の習得に臨む前に、刺し子の基本から教えていただきましょう。

そもそも、刺し子とは

工芸の技術として伝え続いてきたとともに、現代では暮らしのなかで手芸の一つとしても楽しまれている刺し子。そもそも、何を背景として生まれた技術なのでしょうか。

佐々木さん:
「刺し子は昔、布が貴重とされた時代に、布を長く使い続けるために生まれた知恵が始まりとされています。

当時は布がなかなか手に入らなかったので、持っているものを長く使いたいと、弱くなった部分を繰り返し補修して使っていました。特に東北では厳しい寒さを凌ぐために、布を何枚にも縫い重ねて丈夫にしたり、保温したりするなかで独自の技術が広まったと言われています」

古い布を何枚も重ねて丈夫にした布
刺し子で作られた野良着。厚みがあり、頑丈さを感じる着心地

必要な道具

刺し子に必要な道具はいたってシンプルで、針と糸、糸切りバサミ、そして刺し子をしたい布です。針の長さや形、糸の太さや色に厳密な決まりはありませんが、刺し子専用のものを使う方がすいすいと楽しく縫い進められるのでおすすめ、と佐々木さん。

柄の下書きにはチャコペンなどの、水洗いやアイロンがけで線が落とせるものを使いましょう。

佐々木さん:
「刺し子用の針って、直径が長いんです。また『刺し子糸』と呼ばれる専用の糸は、普通の糸と比べると撚(よ)りがかかっていて少し太め。色もたくさんあるので、布とのコントラストや気分に合わせて選んでいただけます。ワークショップをするときも、みなさん糸の色を選ぶときは楽しそうに迷われていますね。生地は極端に厚いものでなければ特に素材は問いません」

刺し子で縫い描かれた模様の例。「慣れた方だと1~2週間で作れます」とのこと

<刺し子をする心得:準備する道具>

・針と糸、糸切りバサミ、布を用意する
・針と糸は専用のもの用意すると作業しやすい
・布は、厚すぎるものでなければ素材は問わない

縫い方のパターン

続いて、縫い方について習います。

佐々木さん:
「もともとは布を補修するために使われていた技術なので、布にそのまま刺し子を施していましたが、柄そのものを楽しんでいただく現代の刺し子では、アイロンをかけると消えるペンなどを使って下書きをされることがほとんどです。

補修をしたり強度を上げる目的を持つ前者には、『運針』という基本の技法を使います。皆さんには『なみ縫い』と言うと分かりやすいでしょうか。柄を描くための後者の刺し方には、『一目(ひとめ)刺し』と呼ばれる技法が主に使われます」

【1】基本の技法:運針(なみ縫い)

刺し子の基本である「運針」とは、縫い目の間隔に縛られずチクチクと直線に縫っていく、いわゆるなみ縫いのこと。上述の通り、布の穴を防ぎ強度をつけるために昔から使われてきました。

早く仕上げるポイントとして、職人さんたちは針を刺した後にすぐには抜かず、何針も続けて縫うそうです。こうすることで一度に長い距離が縫え、作業が進みやすいのだとか。

佐々木さん:
「先ほどもお話したように刺し子用の針は長い距離を一度に縫えるよう、少し長いんです。そのぶん扱いにくくはあるんですけど、慣れるとラクに縫えるので便利ですよ」

【2】アレンジの技法:一目刺し

一方、なみ縫いと異なり均等な幅で縫っていくのが「一目刺し」。布を縫い合わせるというよりも、布に模様をつけるために使われる技法です。今の暮らしでよく見かける刺し子の柄は、主にこの技法を使って表現されています。

それぞれの柄はすぐ縫い始めるのではなく、まずは柄に合わせた幅で方眼のマス目を布に下書きし、その幅を参考に針を刺して描くそう。柄の種類やマス目の下書きは専用書を参考にするのがおすすめです。

下書きの線は、完成後に消します

佐々木さん:
「刺し子には昔から受け継がれている伝統の柄があって、それぞれの柄に意味があるんです。うちの刺し子もオリジナルの柄ではなく本や資料を見ながら決めています。

初心者の方はさまざまな刺し子の柄が載っている本を購入すれば、下書きや縫い方の参考にしていただけますよ」

一つのマスを“一目”として縫う。柄によってはマスの途中からを“一目”のスタートにするものも

<刺し子をする心得:縫い方>

・基本の縫い方は運針と呼ぶ。幅のリズムに規則はなく、直線に縫う技法=なみ縫いのこと
・均等な幅で縫う技法を一目刺しと呼ぶ。この場合、縫いたい柄に合わせ方眼のマス目を下書きする

刺し子をする

刺し子の基本を確認したところで、いざ実践。今回はコースター作りに挑戦します。柄に選んだのは初心者でも縫いやすいという「十字花刺し」。十には「完全・満ち足りている」という意味があり、縁起がよい模様とされているそうです。今回の柄は、その十字をもとに花を描くように刺すもの。ちなみに佐々木さんいわく、初心者だと1時間程度、プロの方々は30分もあれば縫えるくらいの難易度とのことでした。

柄の見本がこちら

1:縫いたい柄を決め、下書きする

刺し子の柄を集めた本などを参考に、縫いたい柄を決めたら専用のペンで布に下書きします。今回は10cm×10cmのコースターに対して、布の中央部に縦6本×横13本の線を、6mmの方眼になるよう書きました。

佐々木さん:
「方眼の幅は柄によって変わりますが、広すぎると表面の糸が引っかりやすくなるので、なるべく小さいマスで書くものが多いです」

完成図。柄の背景にうっすらと見えているのが、方眼の下書きです

2:布と糸を選ぶ

次に布と糸を選びます。糸はさんざん迷った結果、2色を使うことにしました。また布は大槌刺し子さんにご用意いただいたリネンコットンの生地を使っています。

※コースターとしてすぐ利用できるよう、布端は予めミシンで処理しています

3:針に糸を通し、縫っていく

選んだ糸を針に通し、いざ縫い始めます。なお今回は片方だけを玉結びする「1本取り」で進めました。縫い目に太さを出したいときは両方の端を結ぶ「2本取り」でも。適宜使い分けてください。

■3-1:横の行すべてを等間隔で縫う

まずは横の線から。布の裏側から、マス目の右上角へ糸が抜けるように針を刺し、その針を隣の列まで一目渡します。裏で一マスあけて、また同じようにマスの角から針を抜き、それを繰り返しながら端まで刺しましょう。

一行縫ったら、次の行へ糸を運び、縫い目が互い違いになる位置の角から糸を出し、また同じように縫っていきます。糸がなくなってきた場合は一度玉結びをして、もう一度縫い始めれば大丈夫。最後の行まで縫えたら玉結びして余分な糸を切ります。

佐々木さん:
「針を抜いて糸を引っ張るときは、縫い目が縮んでしまわないよう布をしごいてください。また、裏側の糸はふんわりと緩めに張るようにしましょう」

一行ごとに糸の出発点が互い違いになるよう、布の裏で糸を運びながら縫っていく

3-2:先ほどの横糸に対して十字になるように、縦の列を等間隔で縫う

先ほどの横糸に対して、縦に十字となるよう縫っていきます。十字模様にするために、糸が各マス目の中央から出るように針を運んでいきましょう。すべての列にチクチクと糸を通したら玉結びして余分な糸を切ります。

佐々木さん:
「ここは下書きがないので、自分の感覚で縦と横がちょうどいいバランスになるように縫っていただければ大丈夫です」

3-1で縫った箇所に対して、十字に糸を入れていく

3-3:十字模様を活かしながら、ダイヤ模様(右斜め側)を縫い進める

続いて十字模様を活かしながら、ダイヤ模様を縫っていきます。糸は十字模様と同じ色でも素敵なのですが、今回は糸の色を変えてみました。

十字のトップと同じ位置から糸を出し、斜め上にある十字の右端と同じ位置まで一目を刺して、端まで進んだら折り返します。今度は、同じ十字の下端と左端をつなぐように同じリズムで繰り返して、下まで縫い進めます。

十字を繋ぐイメージで斜めに縫っていく

3-4:先ほどと反対の方向(左斜め)へ縫い、ダイヤ模様を仕上げたら完成

先ほどと同じ十字に対して、今度は反対の斜め方向へ繰り返します。下まで仕上げたら完成です。

佐々木さん:
「最初に刺す位置さえ間違わなければ、意外と簡単に縫っていけますよね。最初は慣れず、針を刺す場所を間違えてしまうこともあると思いますが、縫い方自体はシンプルなので、根気よく続けてみてください」

3-3と同じ要領で、反対の斜めのラインを縫えばこの柄に

手とり足とり教えていただき、コースターが完成。佐々木さんのおっしゃった通り、初心者でも1時間ほどあれば出来ました。

柄の完成後にアイロンをあて、下書きの線をとってから撮影しました(撮影:編集部)

柄だけを見ると難易度が高そうに思えてしり込みしていた刺し子ですが、一つひとつの作業は至ってシンプル。針を刺す位置さえ間違えなければ、縁遠く思えた柄への挑戦も怖くありません。チクチクと手を動かすことで無心になれ、また時間はかかるものの確実に完成へと近づいてゆく姿には達成感も覚え、楽しく作業できました。

職人さんたちが織りなす柄には全く至りませんでしたが、少し不格好な表情も、自分の手しごととして愛せそうです。佐々木さん、どうもありがとうございました。


<関連特集>
この秋、中川政七商店よりデビューした、工芸の魅力をもったインテリアコレクション「くらしの工藝布」の一部を、大槌刺し子さんと作っています。ぜひサイトをご覧ください。

文:谷尻純子
写真・動画:阿部高之

【あの人の贈りかた】相手や自分の出身地を、笑顔の頼りに(スタッフ村田)

贈りもの。どんな風に、何を選んでいますか?

誕生日や何かの記念に、またふとした時に気持ちを込めて。何かを贈りたいけれど、どんな視点で何を選ぶかは意外と迷うものです。

そんな悩みの助けになればと、中川政七商店ではたらくスタッフたちに、おすすめの贈りものを聞いてみました。

今回は広報担当の村田がお届けします。

出身地の工芸品を頼りに。「小さな工芸のピンブローチ」

贈り物を開けるときの、あのワクワク感。

期待はそのままに、そのうえでどんなものだと笑ってくれるだろう。
気持ちまでしっかり届けたくて、メッセージやさりげないイラストを添えることもしばしばです。

そんな風に、贈り物は相手の反応と、使っている姿を想像して選んでいます。

ちょこっとお礼がしたいけれど、まだしっかりと好みを把握できているわけではない。
そんな方には、相手の出身地を頼りに選びます。

「小さな工芸のピンブローチ」は、日本の工芸の技術や素材の魅力がぎゅっと凝縮されている小さなアクセサリー。衿元・胸元でさりげないアクセントとなるブローチで、どんなコーディネートにも合わせやすく、女性・男性問わず使っていただけると思います。

佐賀、大阪、三重、愛知、群馬など産地も様々で、お世話になった目上の方へ、相手の出身地の工芸をひとつ選んで贈ったところ、その技法の巧妙さや美しさに「なんだか出身地を“誇り”に思った」と連絡が来ました。それからは「背筋が伸びる気がするから」と、大事なお仕事の時には必ずつけてくださっているそう。

そんなお話に、私まで嬉しくなりました。

<贈りもの>
・中川政七商店「小さな工芸のピンブローチ」

自分も毎日癒されている、お気に入り。
「そろばん屋のほぐしローラー」

「そろばん屋のほぐしローラー」は、文字通りそろばん屋さんと作ったマッサージローラー。私自身も普段の生活に欠かせないもので、出張にも持っていくほど愛用しています。

もう、見た目が面白いですよね。インパクトのある佇まいに、クスッと笑ってもらえたら。そんな想いもあって選んでいます。

でも実はこちら、見た目だけでなく使ってみてこそ思わず表情が緩むアイテムなんです。

そろばん玉のコロコロとなめらかな動きがコリをほぐし、ヘッドや持ち手はツボ押しにも使えて、一本二役。小ぶりだけれど頼りになる存在で、なんといっても木製の質感がやさしく、1日の疲れを癒してくれます。

自分も愛用していてよさがわかるからこそ、気持ちものりやすいもの。

いつも頑張っている後輩に、ささやかながら応援を届けたい時。
毎日を元気に過ごしてほしい友人や身近な人に、想いを伝えたい時。
大切な人へお守りを渡すように贈っています。

<贈りもの>
・中川政七商店「そろばん屋のほぐしローラー」

家族で楽しんでもらえる「ご当地飲料」

取引先の企業さんや友人家族などへ、差し入れや季節のご挨拶を贈る場合には、全員が楽しめるように飲料を選ぶことが多くあります。

こだわりは、私の地元・奈良県のものを選ぶこと。

実は奈良県は清酒発祥の地といわれており、日本酒の蔵元も多くある他、最近はクラフトビールのブランドも増えてきています。

お酒を贈るのも定番なのですが、お子さまのいるご家庭でも楽しめるようにと、奈良県産の果物を使ったジュースのリサーチも欠かせません。

お気に入りは「古都華(ことか)サイダー」。古都華は奈良県生まれのいちごの品種で、その果汁が100%入った贅沢なサイダーはとても喜ばれます。そして「奈良のいちごはおいしい」と知っていただくことにより、「私の住む地域にはこんな飲み物があるよ」と逆に教えてもらうなど、気が付くとお互い地元トークに火がついて盛り上がるなんてことも。

贈り物からどんな会話ができそうか、そのあとの繋がりも大切にしたいですね。

<贈りもの>
・商品名:古都華サイダー
・販売サイト:https://nara-izumiya.co.jp/ ※奈良の酒屋さんのオンラインショップです

贈りかたを紹介した人:

中川政七商店 広報担当 村田あゆみ

【暮らすように、本を読む】#04『なずな』

自分を前に進めたいとき。ちょっと一息つきたいとき。冒険の世界へ出たいとき。新しいアイデアを閃きたいとき。暮らしのなかで出合うさまざまな気持ちを助ける存在として、本があります。

ふと手にした本が、自分の大きなきっかけになることもあれば、毎日のお守りになることもある。

長野県上田市に拠点を置き、オンラインでの本の買い取り・販売を中心に事業を展開する、「VALUE BOOKS(バリューブックス)」の北村有沙さんに、心地好い暮らしのお供になるような、本との出合いをお届けしてもらいます。


<お知らせ: 「本だった栞」をプレゼント>
先着50冊限定!ご紹介した書籍をVALUE BOOKSさんでご購入いただくと、同社がつくる「本だった栞」が同封されます。買い取れず、古紙になるはずだった本を再生してつくられた栞を、本と一緒にお楽しみください。詳細は、VALUE BOOKSさんのサイトをご覧ください。



小さな命を通して映す、やわらかな日常。
『なずな』

「なにかにつけて勝手気ままに生きてきた私が、自分のことを後回しに考えるようになって、まだそれほどの時は経っていない」。

40代独身、タウン誌の記者を務める菱山秀一のもとに、ある日突然、生後2か月の赤ん坊「なずな」がやってきます。両親である弟夫婦はともに長期入院中、唯一頼れる存在として選ばれたのが、叔父である秀一でした。

おむつを替え、ミルクをあげ、散歩へ連れ出す。はじめての育児に奮闘しながらも、かけがえのない時間を過ごします。

なずなへ向ける眼差しはいつも、愛おしさに溢れています。丁寧に髭を剃り、赤ん坊に頬擦りする場面では、やわらかい肌の心地やミルクの甘い香りまで漂ってくるようです。

親身になってくれる小児科の先生や看護師さん、理解のある同僚など、なずなを取り巻く人たちは、即席の家族となって、代わるがわるなずなの世話を焼きます。ささくれほどの棘もない、純粋な優しさに触れながら、わたしたち読者もご近所さんのように、または家族のような気分で、ふたりの成長から目が離せなくなっているのです。

育児を中心とした日常のなかで、たびたび登場するのが食事のシーン。入居するマンションの一階にあるバー「美津保」では、ママの作る鍋焼きうどんをおいしそうにすすり、育児の合間にバターと和辛子を塗ったサンドイッチをこしらえ、“震えながら”食べる。秀一の食べっぷりを目の当たりにするたび、冷蔵庫の扉に手がかかりそうになります。

ベビーカーに乗ったなずなを連れて歩きながら、主人公の世界は、狭まるどころか緩やかに広がっていく。そして、読み手の気持ちも外へ、外へと開かれていきます。

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本書を読み終えた時、足早になりがちな都会のリズムを手放して、ゆっくり街を歩きたくなった。いつもは通り過ぎていた喫茶店に入り、カレーを注文する。いつの間にか空腹になっていた体で、”震えながら”スプーンを口に運んだ。

ご紹介した本

・堀江敏幸 『なずな』

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VALUE BOOKSサイト『なずな』

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VALUE BOOKS
長野県上田市に拠点を構え、本の買取・販売を手がける書店。古紙になるはずだった本を活かした「本だったノート」の制作や、本の買取を通じて寄付を行える「チャリボン」など、本屋を軸としながらさまざまな活動を行っている。
https://www.valuebooks.jp/


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