季節の行事や家族の誕生日、人生の節目になるようなタイミング。
ハレの日は、食卓もいつもより少し特別です。
この記事はそんなハレの日の過ごし方が気になって企画した、この時期だけの短期連載。
暮らしを楽しむ作り手さんに、どんな料理でハレの日の食卓を囲んでいるのか教えていただきました。
今回は、奈良県東吉野村で家具工房とカフェが併設した場を夫婦で運営する、中峰さんの「ハレの日の食卓」を訪ねます。
今回の取材先:
MINE PRODUCT & FURNITURE 中峰渉さん / Little oven 中峰瞳さん
山と川と家具とお菓子。奈良県・東吉野村で、家具工房とカフェが併設した場を夫婦で運営。夫の渉さんは、中川政七商店 奈良本店で扱う神棚も製作。今回のガトーショコラは、妻の瞳さんが営むカフェでも提供する。
https://mine-littleoven.com/
渉さん:
もともとは飛騨高山の木工家具メーカーに務めていて、その後、会社員生活を経て東吉野村に移住しました。
飛騨高山での仕事は楽しかったんですが、地元である関西に戻りたいなと思って。でも転職活動をしたものの、家具の製作に携われる企業となかなか縁がなかったんですよね。であれば一度会社員をやってみようと、家具とは全く異なる分野の企業に就職しました。ただ、木工に全然関わらなくなるのは寂しいので、自由に作業できる場所を探していて。そんなときに知人の紹介で出会ったのが東吉野村です。
それから5年くらいは、平日は兵庫で会社員、休日は東吉野村で趣味の家具製作という日々。最初は自宅の家具を作る程度だったんですけど、ありがたいことにいろんな方からの注文も増えてきて。忙しくなり体力的にも働きかたを見直そうかなと、移住と独立を決意して今に至ります。
今は自宅から歩いてすぐの場所に、僕が家具を製作する工房と妻が営むカフェを併設した場所を設けています。もともと僕が使っていた工房に少しスペースを増築して、カフェをオープンした形ですね。
一部、中川政七商店さんに販売いただいている神棚なども作っていますが、仕事のほとんどはオーダー家具の製作。お店や個人宅問わず、机や棚、椅子などの依頼をお受けしています。
瞳さん:
工房横のカフェでは季節の果物を使ったケーキや、今回紹介するガトーショコラなどの生菓子と焼き菓子を中心に、プリンや珈琲などもお出ししています。もともとケーキ屋さんやパン屋さんで働いた後、数年間は子育てをしながら自宅で小さいお菓子教室を時々開いたり、イベントに出店したりしていて。移住して子育てが少し落ち着いてきたタイミングで、3年ほど前にお店を開いたんです。
今は月火水で仕込みをして、木金土の3日間お店を開いています。お店には県外の方が来てくださることもあれば、村内の方や移住者の方も来られますね。クリスマスや誕生日のホールケーキを作らせていただくことも多くて、お役に立ててとっても嬉しいです。
渉さん:
「地方への移住」と聞くとハードル高く感じる方もいらっしゃると思うんですが、僕たちの場合は、僕がしばらく週末だけ過ごしていたこともあったので、わりとギャップなく東吉野村での暮らしになじめました。コンビニが遠いことも、もともと知ってたしね(笑)。いろいろ遠くて不便もあるけど、住んでみたら意外となじみますよ。コンビニがなくてもそれならそれで潔く暮らせるし、僕の仕事柄、大きな音も出てしまうので逆にこの環境はありがたいですね。
瞳さん:
うん、ストレスはないですね。村の皆さんの人柄もいいし、適度な距離感で応援してくださるので心強いです。秋になると「栗が採れたよ」って電話がかかってきたり、釣り好きのご近所さんからその日釣れた魚を頂いたり、そんな、街中に住んでいるときにはあまりなかった旬の豊かな暮らしを楽しんでいます。
中峰さんの、ハレの日の食卓
瞳さん:
うちは、お正月は実家に帰るのでおせち料理は作ってなくて。クリスマスは自分が(お店で)作る側に回るので疲れ果てちゃって、しっかり準備をできるほどの余裕もないから、お店で余ったケーキを持って帰って、余った材料でサンタクロースをちょこっと作って載せるとか、その程度(笑)。だから、ハレの日の食卓と聞いて一番先に浮かぶのは娘の誕生日です。
娘が二人いるんですが、上の子は特に、生クリームが好きじゃなくてチョコレートが好き。だからガトーショコラのリクエストがよく入ります。
渉さん:
誕生日だからケーキ以外の料理にも気合いを入れたいんだけど、子どもからは普段食べない某店のフライドチキンとかの希望が入る(笑)。いつもは飲食店が近くにないから食事は家で作るんですけど、イベントのときは普段食べられないものが食べたいんでしょうね。
瞳さん:
だからだいたい娘の誕生日はメインを買ってきて、スープや副菜を作って、ケーキも置いて皆で祝ってます。
ガトーショコラのレシピは娘が小さい頃からずっと作っているもの。お店で出しているレシピと一緒で、お酒は入れないようにして、いろんな世代の方に食べていただける味わいに仕上げています。
中峰さんの「ガトーショコラ」
材料(直径15cmの丸型1台分):
・チョコレート(ビター)…70g
・無塩バター…45g
・生クリーム…45ml
・ココアパウダー…40g
・薄力粉…15g
A卵黄…3個分(約50g)
Aグラニュー糖…30g
B卵白…4個分(約130g)
Bグラニュー糖…60g
準備:
・オーブンを170度に予熱する
・ココアパウダーと薄力粉は合わせて振るっておく
・型に製菓用ペーパーを敷く
作りかた:
1. チョコレートを細かく砕く。バター・生クリームと共にボウルに入れ、湯煎で溶かす。
2. 別のボウルにAを入れて混ぜ合わせたら、1へ加えて軽く混ぜておく。
3. 次にメレンゲを作る。
Bの卵白にBのグラニュー糖を少し入れ、ハンドミキサーで混ぜて馴染ませる。
残りのグラニュー糖を入れ、ツノがやさしくおじぎする程度まで泡立てる。
4. 2に3のメレンゲをひとすくいほど入れてヘラで少し混ぜ、
振るっておいた粉を入れてしっかり混ぜる。
残りのメレンゲを入れ、泡が潰れないようやさしく混ぜ合わせる。
5. 4を型に流し入れ、オーブンで35分ほど焼く(湯煎焼きにすると、しっとりと焼き上がる)。
6. 型ごと冷蔵庫で1日寝かせて完成。2日後くらいがおいしく食べられておすすめ。
使った商品はこちら:
・(写真中央)HASAMI プレート イエロー
※その他は取材先私物
文:谷尻純子
写真:奥山晴日