「佐賀へ旅行に行く」と言ったら、「佐賀に何があるの?」と聞かれることが多い。
確かに九州内に絞って言っても、観光地として名が上がることは少ないのかもしれません。
だけど、佐賀は思っていた以上に楽しかった。
2泊3日の旅日程だったけど、物足りずにもう延泊するほどに。
佐賀はどこへ行くべきか。現地で教えてもらった佐賀の魅力を、これから何日かに渡ってお伝えしていきます。
主に、肥前窯業圏と言われる地域、有田・嬉野を中心にご紹介。今週のさんちは、佐賀旅特集です。
これまで、日本各地の工芸を取材してきたさんち。
各所を訪れるたびに、「もっともっと多くの人たちに、まだ見ぬ地域の魅力を知ってもらいたい」と思う気持ちは強くなっていきました。
今回発足したのが、複数のメディアが手を取り合ってひとつの地域へ取材に伺う「#medeiacruise(メディアクルーズ)」のプロジェクト。
参加メディアは、
・明日の朝が楽しみになるような情報を届けるインスタマガジン「cocorone」
そして、「さんち」の5チームです!
これまで各々に各地を取材してきた5メディアが行動を共にしたら、どんな化学反応が起こるのでしょう?
行き先は佐賀県。
嬉野市、有田町、佐賀市を周った充実の2泊3日を、伝統工芸ライターの山越栞が2日に渡ってレポートします。
1日目: 今、佐賀を盛り上げている方々に出会う
都内で活躍したオーナーソムリエが営む「trattoriYa Mimasaka」
さんちチームが最初に向かったのは、佐賀県武雄市で2016年にオープンした本格イタリアンのお店「trattoriYa Mimasaka(トラットリヤ ミマサカ)」。
オーナーソムリエの鳥谷憲樹(とりや かずき)さんは、東京の一流ホテル内にあるイタリアンレストランでソムリエを務めた後に単身で本場イタリアに渡り、ワインの知識やサービスのノウハウを勉強。その後、地元にUターンしてこのお店をスタートさせました。
店舗となっているこの土地は、元々鳥谷さんの祖父母が暮らしていた場所。
窓の外に広がる完成された庭は、鳥谷さんのご家族が大事に育んできたものだそうです。
お皿は有田焼や伊万里焼、波佐見焼など、地元のものを中心に使用。
尋ねると、作り手である陶芸家さんのエピソードを織り交ぜながら、お皿の説明をしてくださいました。
「Uターンするつもりは元々ありませんでした。東京に憧れてこの町を出ていったけど、大人になった今だからこそ、ここに生きる人々の魅力を感じるようになったんです。今は圧倒的に、佐賀が魅力的だと思います」
地元に戻ってからの鳥谷さんの取り組みは、レストラン経営に留まりません。
町の周年事業イベントや、嬉野茶時のサービス監修、空き家対策プロジェクトなど、地域のための活動に積極的に尽力する鳥谷さん。
「未来の子ども達のために、いいものを残していきたい」
そう言う鳥谷さんが、これからどんなお店、そして地域を作っていくのか。佐賀の未来が楽しみになるレストランでした。
和多屋別荘でmediacruiseクルーと合流!
美味しいコース料理でお腹もいっぱいになったところで、鳥谷さんのお店を後にしたさんちチームは、他の#mediacruiseクルーと合流!
今回のお宿は、以前取材をさせていただいた和多屋別荘さんです。
何度訪れても美しい館内では、代表の小原さん自らがデザインしたというオリジナルの装飾や、200〜300箇所に飾られているお花が出迎えてくれました。
そして、今回の取材ツアーをプロデュースしてくださったのは、こちらの古田清悟(ふるた せいご)さん。
今回の取材のメインエリア・嬉野市出身の古田さん。
代表を務める株式会社嬉野創生機構は、廃業していた旅館を事務所とし、地域の魅力を発信する様々な取り組みをしているまちづくり会社。
古田さんは、他にも東京で映像制作会社を運営しており、地元と東京の2拠点を往復しながら、嬉野地域おこし協力隊の受け入れ先となっており、嬉野と他の地域とを結ぶハブとなっている方です。
手間暇かけてつくられる嬉野茶の工房へ
「修学旅行みたい!」なんて盛り上がりながら集合写真を撮影した後は、嬉野の若き茶師、松尾俊一(まつお しゅんいち)さんの茶畑へ。
医療機関に勤務した後、現在は松尾製茶工場の6代目として茶作りに邁進する松尾さん。
茶師になってたったの2年で農林水産大臣賞を受賞するなど、「革命児」との呼び声も高い方です。
一つひとつ手摘みをした茶葉を、炒っては揉み、
炒っては揉みを繰り返していきます。
摘んだばかりの生の茶葉はこんな風にみずみずしさが残った状態。
熱を加えて炒っていくことで、私たちが普段目にするようなお茶の葉にだんだんと変貌していきます。
手摘みだと、1時間摘んでやっと1キロの茶葉が採れる程度。
この状態から約5時間半をかけて、わずか400グラムのお茶を丹精込めて生み出していきます。
気の遠くなるような作業に、美味しいお茶づくりへの深いこだわりを実感しました。
樹齢300年超えの「大茶樹」に圧倒される
次に向かった先は、嬉野のお茶の原点となっている「大茶樹(だいちゃじゅ)」のある場所です。
おおー大きい!!
お茶の木って、こんなに育つんですね。
約550年前に、明から渡ってきた人々がこの地に伝えたといわれる嬉野茶。それを現在の嬉野茶の原型へと整備した嬉野茶の祖・吉村新兵衛が、慶長年間(1648~1652年)に植えた1本とされるこのがこの大茶樹です。
なんと推定樹齢約350年以上。枝張り約8メートル、樹高約4.6メートルの大木です。
嬉野のお茶に触れた後は、ふたたび宿に戻ってひとやすみ。
害獣のイノシシを、貴重な食材としていただく
夕食はなんと、イノシシ肉のバーベキューをいただきました!
ご馳走してくださったのは、嬉野でイノシシの狩人として活動している太田政信(おおた まさのぶ)さん。
元々は茶葉の栽培をしていた太田さんですが、イノシシの獣害に苦しむ茶農家の現状を見かねて、現在はイノシシ猟を本業としています。
意外に臭みもなくさっぱりとした豚肉のような味わいで、どんどん箸が進みます。
取材初日から、贅沢な夕ご飯をいただいてしまいました。
2日目:有田町で焼きもの文化の根付く場所を訪ねる
人の手によってつくられた神秘的な空間「泉山磁石場」
2日目は有田町の各所を取材。さんちチームは有田焼にまつわる取材にどっぷり浸かった1日となりました。
まずはみんなで朝一番に向かったのは、有田焼に欠かせない、陶磁器の原料となる「陶石」をかつて大量に採掘していた泉山磁石場です。
約400年前、李参平が率いる陶工たちがこの場所で陶石を発見し、元々は山だった場所を掘り下げていってできたのがここ。
白い岩肌がのぞく不思議な空間に、思わず息を呑みます。
今回は、掘り起こされて洞窟のようになっている空間にも特別に入れてもらいました。
この日の小雨と相まって、さらに神秘的な顔を見せてくれました。
ここからは、メディアごとに有田の町でのお土産の調達と、取材へ。
複数のメディアで合同取材をしたり、独自で訪ねたいところに足を運んだり… それぞれのメディアらしい訪問先を訪ねました。
さんちは、有田のものづくりを中心に5軒のお店、飲食店へ。老舗のメーカーから、オープンして1ヶ月たらずの新店まで、有田の魅力を存分に感じる2日間となりました。
その2日目の様子は、明日の記事で公開予定です。どうぞ明日もご覧いただけると嬉しいです。
同時取材した5メディアで、佐賀旅の記事を公開中です
それぞれのメディアが切り取った佐賀。どうぞ合わせてご覧ください。
・cocorone:cocorone TRIP 佐賀特集始まります
・灯台もと暮らし:「佐賀県嬉野・有田で見つけた新しいメディアと取材の在り方。「#mediacruise」に行ってきました!【ファインダーと私】」
・箱庭:「地域とメディアを繋ぐ新しい取材のかたち「#medeiacruise」。
箱庭が選ぶ佐賀の「おみやげBOX」つくりました!」
・drip:「知っているけど、知らない世界。”mediacruise 佐賀 嬉野編」
文:山越栞
写真:藤本幸一郎 ・ mitsugu uehara