“多年を保つ”いつまでも丈夫なことから命名された「保多織」

衣服、寝具やインテリアなど、さまざまな場面で私たちの暮らしを支え、彩ってくれる「布」。改めてそれらを眺めてみると、実に多様な特徴を持っていることに気づきます。

気候や文化、つくり手の工夫などの影響を受け、日本の各地で生まれた個性豊かな「布ぬの」。

その魅力を多くの人に知ってもらいたい。好きになってもらいたい。そんな想いで「日本の布ぬのTシャツ」をつくりました。

今回選んだ3つの「布ぬの」。その歴史や特徴、つくり手の想いを取材しています。ぜひご一読ください。

香川県の伝統的工芸品「保多織」でつくるワッフル状の生地

保多織を中央に配置した「布ぬのTシャツ」

今回紹介するのは、香川県の伝統的工芸品である「保多織」。格子模様が目を引きますが、一体どんな「布」なのでしょうか。

岩部保多織本舗の四代目、岩部卓雄さん。高松市内にあるお店を訪ねました

その歴史や特徴を知りたくて、香川県の「保多織」の産地へ。つくり手である岩部保多織本舗の四代目、岩部卓雄さんを訪ねました。

夏は涼しく冬は温かい、凹凸が生み出す心地よさ

左側が保多織、右側は平織。保多織は凹凸がありワッフル状の生地になる

「保多織は、織り方によって生まれるワッフル状の凹凸によって、肌への接地面が少ないので、夏にはさらりと涼しく着られます。
冬には逆に、肌に触れたときの冷たさを感じづらいという特徴があります」

「機械ごとに癖があるから、じつは機械の扱いの方が難しかったりするんだよね」とも。

そう話しながら、その場でするすると、布を織っていく岩部さん。
製品はもちろん機械織ですが、高松市内のお店には手織機が置かれ、普段からその場で実演していると言います。

同じ布の表裏。表は緯糸が浮き、裏は縦糸が浮く。同じ布と言えど表裏で印象が異なります

「縦糸と横糸を1本ずつ交差させる平織りに対して、保多織は3回平織りで打ち込んで、4本目を浮かせる織り方です」

そうして織りあがった布には、美しいワッフル状の凹凸。一見ざっくりしているように見えて、実はしっかりと動きにくく、丈夫な布になるのだと言います。 

いつまでも丈夫なことから「多年を保つ」という意味で「保多織」

保多織のもうひとつの特徴が、丈夫であるということ。
なんと、保多織という名前そのものが、いつまでも丈夫なことから「多年を保つ」という意味で命名されたという歴史をもちます。

四季のある日本の風土の中で、気候の変化に寄り添い、丈夫。
生活の中で非常に扱いやすい保多織の布、一体どのようにして生まれてきたのでしょうか。

始まりは江戸時代。蒸し暑い香川の地に最適な布を求めて

「始まりは江戸時代。高松藩主が、京都から織物師の北川伊兵衛常吉という人物を招いたそうです。

今でこそエアコンがあるけど、当時はそんなものはないし。香川の夏は本当に蒸し暑いから、それに対処してさらっとした感触の物をつくってほしいというオーダーから、凹凸のある生地をつくっていったんでしょうね」

香川の風土にあわせて開発された、生活の為の布だったのですね。

たしかに、今でも夏になると「暑い暑い」と口癖のように言ってしまうのに、エアコンがない当時、蒸し暑い日本の夏をいかに涼しく過ごすかというのは至上命題だったに違いありません。

「糸を浮かせることで欠点も生まれるんです。ひっかかりやすくなってしまったり。でもその欠点を最小限にとどめるようにつくったのが保多織だったんだと思います。

平織のアレンジで3本ががっちり組まれているおかげで、4本目に少し遊びがあるんですが、それがかえって長くもつ事に繋がってるとも言われています」

京都で装束師として活躍されていた織物師さん。それまでに磨いてきた確かな技術で、蒸し暑い日本の夏に最適な布を生み出していったようです。
布が生まれた背景を聞くと、しみじみと、生活の中でかけがえのない大切なものだったのだと感じます。

暮らしに取り入れたい、布ぬの

年々暑さが増し、香川だけでなく日本全国蒸し暑い中、扱いやすい保多織は、生活の中で気負わず使っていきたい布です。
お店でも、保多織でつくられた商品を多数扱っていたので、おすすめを聞いてきました。

「シーツは、県内でお中元の御三家とも言われていたくらい、進物として活用されてきました。買わなくても押し入れに3~4枚ありますよという家がほとんどだったくらいです。

法事なんかあると親戚を家に泊めてた時代背景もあって。親戚の家で初めて保多織のシーツに触れていいなと思って、遠方から買いにきてくれたり」

たしかに触ってみるとさらりとしていて、これは夏の寝苦しい夜に気持ちいいだろうなと感じます。

パジャマ。シーツ同様さらりとして気持ちいい肌触り
シャツやワンピースなど、服もたくさん。現在では服に使われることが多いそうです

「皆さんに言うのですが、荒っぽく扱っていいよ、って。
布の方が寄り添ってくれるから。着るものに気を遣わず、洗濯機で回して干して。丈夫だから、気にせず着たらいいよって」

小物類や、生地の切り売りも

「保多織は生活の中で、非常に扱いやすい布。
着るものなら汗をとってくれるし、夏には涼しく、冬には冷たさを感じづらい。洗っても、あらっぽく扱える。
少しでもたくさんの方に、使ってみてほしいです。

丈夫でずっともつから、全然買い替えてもらえなくて困っちゃうんだけどね。笑」

生活の中で非常にいいんですよ、と話す姿に、ものづくりへの愛着がたしかに感じられました。

今回の「布ぬのTシャツ」の取材で、香川の保多織と、徳島の阿波しじら織の産地を回ってきました。
取材に出かける前、デザイナーの山口さんが言っていた
「今回はTシャツだから、夏にふさわしい布を選びました」という言葉の意味が、2か所の取材を通してよく分かりました。

奇しくも、どちらも四国の蒸し暑い地域の中で、育まれてきた生活の布。始まりはそれぞれですが、生活の中で求められて育まれてきたものづくりでした。

工芸は、日本の風土の中で生まれ育まれてきたもの。布の産地をめぐる中で、改めてそんなことを感じ取りました。

<関連特集>

<取材協力>
岩部保多織本舗
香川県高松市磨屋町8-3
087-821-7743
サイトはこちら

写真:直江泰治
文:上田恵理子

高温多湿な日本の夏に最適。一人の女性の想いが生んだ「阿波しじら織」

衣服、寝具やインテリアなど、さまざまな場面で私たちの暮らしを支え、彩ってくれる「布」。改めてそれらを眺めてみると、実に多様な特徴を持っていることに気づきます。

気候や文化、つくり手の工夫などの影響を受け、日本の各地で生まれた個性豊かな「布ぬの」。

その魅力を多くの人に知ってもらいたい。好きになってもらいたい。そんな想いで「日本の布ぬのTシャツ」をつくりました。

今回選んだ3つの「布ぬの」。その歴史や特徴、つくり手の想いを取材しています。ぜひご一読ください。

徳島の「阿波しじら織」でつくる凹凸のある生地

今回紹介するのは、徳島県の「阿波しじら織」。凹凸が生む陰影がさりげなく目を引き、織物ならではの味わいがあります。

「今回はTシャツだから、夏にふさわしい布を選びました」と、デザイナーの山口さん。
触ってみると、たしかにさらっとしていて気持ちいい。

Tシャツの中央、絵画のように飾られたこの一枚の布に、どんなものづくりがあるのでしょうか。
一枚の絵画を愉しむような、ものづくりへの愛着を求めて、徳島県の「阿波しじら織」の産地へ。つくり手である長尾織布合名会社の三代目、長尾伊太郎さんに話を聞きに出かけました。

軽くて涼しい。高温多湿な日本に最適な織物

阿波しじら織は、この凹凸のあるシボが何よりの特徴です。
凹凸があるから空気をよく通し、軽くて涼しい。肌に接地する面積が少ないこともあり、高温多湿な日本の春夏の衣料に適しています。
着心地のよさはもちろん見た目にも涼しく、綿素材なので吸湿性にも富んでいます。

はじまりは、一人の女性の「美しい布を身にまといたい」という想いから

阿波しじら織のシボは、明治時代の初めに、ある一人の女性からはじまったと言います。

「折に触れて贅沢禁止令が出されていた当時、絹は贅沢品として、庶民が使うことは禁じられていました。
当時は全国的にそうですが、徳島も例に漏れず綿織物が盛んな地域だったので、綿織物に柄をいれたり色を差したり、なるべく華やかになるように工夫を凝らしながら仕立てていました」

そんな折、海部ハナさんという一人の女性が、
織りかけの布を夕立で濡らしてしまい縮んだ生地をヒントに、工夫を重ねてつくったのが阿波しじら織の始まりです。
雨で濡れて凹凸ができたのは、奇しくも糸の本数を間違って織った部分のみ。これをヒントに、糸の本数を増やし熱湯に浸すなどして、試行錯誤を繰り返しシボをつくっていきました。

偶然をヒントに生まれた美しい布。
一枚の布を美しく仕立てることに、どれだけ切実な想いが込められていたのかを想像すると、より一層愛着が沸くようです。

所狭しと並べられたシャトル織機が、生地を織りあげている様子

布のシボは、糸の撚り具合によってつくられることが多い中、
阿波しじら織では、海部ハナさんが編み出した、縦糸と緯糸の張力差の違いによって、シボを生み出しているそうです。

阿波と言えば、藍染?阿波しじら織と藍染の関係

長尾織布合名会社の三代目、長尾伊太郎さん。藍染の作務衣で登場

シボのある「阿波しじら織」はこうして生まれたわけですが、「阿波」と聞くと藍染のイメージがあります。

今回訪問した長尾織布さんの工場にも、そこかしこに藍、藍、藍。

「しじら織の技法が生まれる前から、阿波では藍染が盛んでした。

昔は化学染料なんてないので、日本各地で盛んだったのですが、中でも阿波産の物は質量ともに優れていた為、阿波藍と呼ばれ、藍染の代表的な産地として数えられるようになりました。

染織には水を大量に使うので、この辺りで染織が盛んになったのは、近くに川が通っていることが大きいと思います。

徳島には吉野川という一級河川が通っているのですが、藍染はその下流域に広がっていったので。このすぐ近くにも、吉野川の支流の鮎食川が通っています」

工場のすぐ近くにある鮎食川。現在では、雨の少ない時期は水の流れがない伏流水となっている

「もともと盛んだった藍染と、明治に生まれたシボのあるしじら織の技術が合わさって、阿波しじら織になりました。
ただ、阿波しじら織といえば藍染と決まっているわけではありません。

国の伝統工芸品として指定されているのは、本藍で染めた“阿波正藍しじら織”ですが、
これまで育んできた染織の技術と織物の技術を、つくる物に合わせて生かしながらうまく使い分けています」

全工程一貫作業ならではの多種多様なデザイン

実際に工場を見学させていただくと、藍に限らず多種多様の布が保管されていました。

「THE阿波しじら織」といった印象の布もあれば、

海外のアーティストとのコラボレーションで生まれたデザイン

少し洋風の印象を受けるようなデザインの布も。

長尾織布さんでは、染めから織り・仕上げまで全工程を一貫作業で手掛けているため、
糸の色を変えてみたり、色幅を変えて織ってみたり、常に新しいデザインの布開発に取り組んでいるそうです。

「定番の生地はあるのですが、毎年実験しながら少しずつ新しいものに入れ替えています」

暮らしに取り入れたい、布ぬの

工場には店舗が併設されていて、阿波しじら織の商品を購入することもできます。
生地の切り売りをはじめ、甚兵衛、シャツなどの衣料品。ブックカバーやポーチなどの小物も。

これからの高温多湿なシーズンに向けて、シボのある生地の肌触りを存分に活かすには、クッションや衣料品など、肌への接地面が大きな物を取り入れるのがおすすめです。

生地の切り売り。反物からm単位で購入することもできます

藍染のクッション
子ども用の甚兵衛。暑がりなお子さんにおすすめです

お土産におすすめの小物類

工場では、予約制で、藍染の見学・体験を行うこともできます。
職人さんのものづくりの様子を間近で見学しながら、30分ほどでハンカチやストールなどオリジナルのお土産をつくれます。

徳島に遊びに行く機会があれば、ぜひ体験してみてください。

最後に、出していただいたお茶の下に敷かれたコースター。触り心地だけでなく、藍の色は視覚的な涼やかさも抜群です。
夏の蒸し暑い日にさらっと出せると、目にも涼やかで心地好いおもてなしとなりそうです。

高温多湿な日本の夏に最適な布。
服と同じように、暮らしの布も模様替えしたいと思い、私も切り売りの布を購入しました。夏場にソファの掛け布にしたいと思います。

<関連商品>

<取材協力>
長尾織布合名会社
徳島県徳島市国府町和田189
088-642-1228

藍染見学・体験の予約はこちら

写真:直江泰治
文:上田恵理子

【工芸の解剖学】大人のためのTシャツを目指してつくった「布ぬのTシャツ」

最近なんだかTシャツが似合わない。
「Tシャツがさらっと着こなせる大人」って素敵だなと思うのですが、
年を重ねるごとに、Tシャツを着た自分に違和感が…。

肩が厚く見えてしまったり、だらしない印象に見えてしまったり…。
きれいに着れるシルエットで、カジュアル過ぎず、さらっと1枚着れば決まるようなTシャツがほしい。

そんな大人のTシャツ願望を叶えるために、中川政七商店がつくったのが「布ぬのTシャツ」です。
シルエット、素材、デザインの3つの方向から、大人にふさわしいTシャツを模索していきました。

解剖ポイント①どんな体形の方でも着やすいシルエット

「大人のTシャツ」を目指してつくったというだけあって、シルエットには並々ならぬこだわりがあると、デザイナーの山口さん。

「自分自身そうなのですが、年を重ねるごとに体のラインにコンプレックスをもつようになって…
でもコンプレックスは人それぞれなので、体のラインによって似合わない、ということがないようなものを目指しました」

そのポイントになったのが、「肩のシルエット」と「首元のつまり具合」だったそうです。

「肩のシルエット」は、着る人の体形に添うように、パーツを工夫したと言います。

通常のTシャツは、袖と身頃のパーツを分けてつくることで、肩のラインに合わせて立体的にシルエットが変化します。
ただ人によって肩幅や腕回りの太さは違うもの。
今回のTシャツはあえて、前と後ろだけの2パーツでつくり、着る人の体に添うようにしました。

また「首元のつまり具合」も、何度も修正を重ねて絶妙なバランスを目指したと言います。
好みは人それぞれ。年を重ねるほど自分に似合う形を自覚している人も多いのではないでしょうか。

そこで、好みに左右されないよう、広がりすぎずつまり過ぎない首元の空き具合にこだわりました。

解剖ポイント②大人が着て様になる、品のある素材感

Tシャツというと、カジュアルなイメージがありますが、カジュアルすぎるとまた違和感が出てしまったりも…

そこで、素材には、光沢感を生むシルケット加工をほどこした綿素材を採用。
綿100%でありながら、シルクのような光沢感が出て、上品な印象になるので、大人が着ても様になります。

綿なので気兼ねなく着られるし、伸縮性が増して肌触りがなめらかになる為、着心地も抜群です。

解剖ポイント③一枚で主役になる、好みで選べるラインアップ

全17種類のラインアップ

様になるかどうかは、シルエットや素材も大切ですが、
服を選ぶ愉しみは「見た目が好きかどうか、自分らしいかどうか」も大切ですよね。
好きな服を身にまとうと、少しだけ前向きな気持ちで一日を過ごせるようにしてくれるもの。

そこで、好みで選んでいただけるよう、「日本の布」をテーマに17種類のバリエーションをつくりました。
真ん中に刺繍された四角い布には、一枚の絵画を選ぶような愉しみがあります。

今回はTシャツということで、夏にふさわしい3つの産地を選びました。
徳島の阿波しじら織と、香川の保多織は、どちらも布に凹凸がある為、肌への接地面が少なく、夏を快適に過ごすために生み出されたもの。
富山のボーラレースは、穴が開いていて、見た目にも涼しげな表現です。

プリントではなく、布なので、視覚的にも触覚的にも、涼しげで手ざわりのある風合いが愉しめます。

左から、阿波しじら織、保多織、ボーラレース

実は、この「布」をTシャツにあわせることも、困難があったと言います。

「Tシャツは編物で、刺繍された布は織物なので伸縮率が違ったり、色落ちの問題もあります。
Tシャツは日常で使うものなので、洗濯した際に大きく縮んでしまったり色落ちしてしまうとすぐに使えなくなってしまいます。
なるべく、問題なく日常で使っていただけるよう調整していきました」

そして、アクセントとして効いているのが、布を囲む刺繍糸。

「色の組み合わせやどういうステッチにするかはすごく気を配りました。
土着性の強い布にはあえて派手な色を差したり、逆にペールトーンの布にはあまり強くない色にしたり、
布と刺繍の組み合わせで、より心が惹かれるようなデザインになるように調整を重ねました」

たしかに、私は保多織のTシャツが好きなのですが、
この刺繍が差し色として効いていることが一つの理由のようにも思います。

「布ぬのTシャツ」のおかげで、今年の夏は、屈託なくTシャツライフを愉しめそう。今から夏が来るのが待ち遠しいです。

<掲載商品>

気候や文化、つくり手の工夫などの影響を受け、日本の各地で生まれた個性豊かな「布ぬの」。ぜひそれぞれの「布」のものづくりにも触れてみてください。
産地の取材記事はこちらから
 ー徳島県「阿波しじら織」
 ー富山県「ボーラレース」
 ー香川県「保多織」

文:上田恵理子

金鳥×中川政七商店 第五弾コラボ予告

奈良の工芸「蚊」帳織ふきんをはじめとした暮らしの道具を手掛ける中川政七商店と、「蚊」取り線香を製造する金鳥によるコラボレーションは、今年で5年目。

毎年完売が続く人気のラインアップに加え、
今年はとんでもなく「高額なあるもの」をつくりました。

こちらの商品、限定数での製造になる為、オンラインショップでの販売が中心となります。

でも、手仕事ならではの魅力がぎゅっと詰まった商品。有田焼でつくるとこうなるんだ!という面白さを、できることなら沢山の方に見ていただきたい…
そんな思いで、発売前ではありますが、サンプルを奈良と東京で展開します。
お近くにお住まいの方は、ぜひ見にいらしてください。

5月6日(金)~5月15日(日):中川政七商店 奈良本店(鹿猿狐ビルヂング)
5月18日(水)~5月31日(火):中川政七商店 渋谷店

左が有田焼でつくる「金鳥の渦巻蓋物」、右がオリジナルの「金鳥の渦巻 ミニサイズ」

第五弾の新商品は、有田焼でつくる「金鳥の渦巻蓋物」の他にも、日本の工芸の豊かさを感じられるアイテムを予定しています。
6月1日(水)の発売を楽しみにお待ちください。

今後、読みものも公開予定です。

①5月18日(水)有田焼でつくる「金鳥の渦巻蓋物」窯元さん取材記事
窯元さんに「ロストテクノロジーの復活」と言わしめたものづくり。一見しただけでは分からないような細部にも、つくり手のこだわりが凝縮されています。
つくり手達の高みのセッションで生みだされた、55,000円の理由をお届けします。

②6月1日(水)金鳥さんインタビュー記事
有田焼でつくる「金鳥の渦巻蓋物」のサンプルを見て感じたのは、オリジナル「金鳥の渦巻」の圧倒的な存在感。日本の夏の風物詩とも言える「金鳥の渦巻」のデザインが生まれた裏側をインタビュー取材してお届けします。

5月18日(水)の記事公開、6月1日(水)の発売をお楽しみに。

GWは「中川政七商店ラヂオ 暮らしの手ざわり。」を聞いてみませんか

こんにちは。
今年のゴールデンウィークは最大10連休。長期休暇を楽しみにしていらっしゃった方も少なくないと思います。

私も明日から実家の用事で岡山へ。道中「中川政七商店ラヂオ 暮らしの手ざわり。」を改めて聞いてみようと思っています。

モデルのはなさんや浜島直子さんが繰り広げる、暮らしの道具への愛着トーク。思わず「わかる!!」と頷いてしまうような熱量あふれる会話に、わたしたちスタッフも、毎回ワクワクしながら聴き入っていしまいました。

まだ聞いてないという方に、ぜひこの機会におすすめしたいと思い、これまでの放送をまとめてみました。
家事をしながら、移動をしながら、暮らしの合間に、ぜひ気軽にご視聴くださいね。

ラヂオは7つのプラットフォームで配信しています。
お好きなプラットホームでお楽しみください。

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1月からスタートした「中川政七商店ラヂオ 暮らしの手ざわり。」
第1シーズンを終えてしばらくおやすみしていましたが、次回6月末にスタート予定の第2シーズンに向けてコンテンツを準備中です。

そこで、番組を聞いてくださっている方、中川政七商店の商品を愛用いただいている方に、番組で紹介させていただく質問や感想などの投稿を募集しています。

①職人さんへの質問募集

次回からの配信では、中川政七商店と一緒にものづくりをしている日本全国の職人さんの製造現場へ伺い「地域の手ざわり」をお届けするコーナーをスタートします。

最初の訪問先は、福井県鯖江市。
越前漆器のつくり手である漆琳堂の内田徹さんにご案内いただき、漆器づくりの現場を見学させていただきます。

漆琳堂さんは、中川政七商店で販売する「食洗機で洗える漆椀」や「RIN&CO.」、「お椀や うちだ」の商品をつくっている越前漆器の老舗です。

漆器にまつわる質問や、自分が持っている商品についての愛着など、漆琳堂さんにお聞きしたいこと、お伝えしたいことがあれば、お気軽にコメントをお寄せください。
5月15日(日)までの募集となります。

②「中川政七商店のある暮らし」をお話してみませんか

日本の工芸が暮らしの中にあることの豊かさや、心地好さ。季節の移ろいを感じることの小さな幸せ。
わたしたち中川政七商店の暮らしの道具が、「日本の暮らしの心地好さ」をお届けできていれば嬉しく思います。
番組ゲストの皆さまにお話しいただいたように、「中川政七商店のある暮らし」をお話してみませんか。皆さまからのご投稿を、番組内で紹介させていただきたいと思います。

「わたしの心地好い暮らしをつくる道具」をテーマに、お気に入りのアイテムや、しつらいの風景、意外な使いかたなど皆さんの暮らしの中のこだわりや想いをお聞かせください。
見る度に心が和んだり、少し嬉しくなるような普段の愛着をそっと教えていただけたら、とっても嬉しく思います。

皆さまからの「ことつて」をお待ちしています。

【心地好い暮らし】第6話 庭仕事の季節

実家は田舎だったのでそこそこ広い庭があった。祖父が作ったという鯉が泳ぐ小さな堀もあって、その周辺に四季折々の草花が植えてある。主に世話をしていたのは祖母のように記憶している。休みの日には父も加わって、私たち子供も掃除を手伝わされていた。大きな竹箒を使って草刈りの済んだ庭を掃くのが仕事なのだけれど、掃いた後の筋目がきれいになるようにと言われ、えーめんどくさいー…と思いながらも一生懸命掃いた記憶がある。子供ながらにもめんどうくさいが、そういうとこが大事なんだろうなと薄々気がついていた。いや気がつく機会だったのかもしれない。

庭には季節ごとに花が咲くので、祖母や母は時々の花を玄関に飾っていた。春は水仙にはじまり、その後はシャガ、八重山吹、菖蒲、紫陽花、向日葵、カンナ、秋桜、ケイトウ、お正月には松と千両なども活けられていた。そういえば神棚の榊も裏の山に採りに行っていた。スーパーではコンパクトに売られている枝ものだが、山の榊はりっぱな木だった。手が届く範囲のものを頂きますと挨拶してから採るように教えられた。

二人とも流派があるような活け方ではなかったが、聞けば何の花か教えてくれた。ひいおじいさんが好きだったとか、これは外国から来た花だとか、たわいもない話だったけれどどの花もシンプルに美しくて、いつのまにか当たり前に庭の花を自分の部屋にも飾る習慣ができたように思う。
何はともあれ、実家の庭が私の後の感性みたいなものに多分に影響したのは間違いない。

大学時代はまだその感覚を引きずっていてその辺に咲いている雑草を摘んできて飾ったり、バイト代に余裕があれば買ってきたりもしていたが、大阪で就職して忙しい日々が始まると一気に世界が変わってしまった。まず季節ごとにそろそろあの花が咲く時期だと察する感覚も、それを感じる時間の余裕もなくなってしまった。その代わり仕事を覚え、自分の経験が積みあがっていく楽しさに夢中になった。たまに花を買ってもすぐに枯らしてしまう。都会の暮らしもそれなりに楽しくて、そのことを疑問にも思わなかった。「忙しいから仕方ない」と切り替えるスピードがぐんぐん早くなっていったのだなと今振り返ればそう思う。

で、35歳で転職の為に奈良に来た。大阪から電車で1時間程度なのに住環境がぐっと野山に近くなった。それでもまだまだ自分で育てるほどの場所も余裕もなかったが、毎日の自転車通勤で季節ごとの花が咲くことを視覚から取り戻していった。あぁもう梅が咲いた。鈴蘭が咲いた。そういう気づきが体にしみ込んでいくような感覚。別に心身が弱っていたわけではなかったけれど、人間はそういうことに癒されるとこがある。あまりにも自然から切り離されると単純に疲れるんだと思う。

一昨年奈良市内ですぐ裏に雑木林があるようなマンションに引越して、少し広いテラスも使えるようになった。というかテラスに惹かれてその物件に決めた。あぁこれで大きな木も植えれるぞ!(植木鉢だけどね)と思ってからテラスの半分が埋まるまであっという間だった。
暖かくなってきたらプランターに新しい苗を植え、冬の間は控えていた鉢の植え替えを始める。本当は手袋をした方が汚れなくていいのだけれど、根元を押さえたり土を足したりしているとついつい素手になってしまう。その方がダイレクトに土の密度を感じ取れる気がして。爪に入った土を取る時にたいてい後悔するのだけれど…。
ふと見渡すと実家の庭にあった植物ばかりに囲まれている。三つ子の魂というけれど、私の中には確実にあの頃の風景が生きている。


<掲載商品>
信楽丸鉢
近藤製作所 移植ゴテ 小

書き手 千石あや


この連載は、暮らしの中のさまざまな家仕事に向き合いながら「心地好い暮らし」について考えていくエッセイです。
次回もお楽しみに。